(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083762
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】散布機
(51)【国際特許分類】
A01B 45/00 20060101AFI20230609BHJP
A01G 20/30 20180101ALI20230609BHJP
【FI】
A01B45/00
A01G20/30
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197635
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】391020090
【氏名又は名称】初田拡撒機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡
【テーマコード(参考)】
2B022
2B034
【Fターム(参考)】
2B022AB07
2B034AA07
2B034BA01
2B034BB05
2B034BC06
2B034HA29
2B034HB14
2B034HB46
(57)【要約】
【課題】目砂、肥料等の散布材料を散布する際に、車輪で押さえつけられた芝生や自然な状態の密集された芝生の芝目を立たせた状態で散布することにより、芝生の芝目間に散布材料を深く入れることができる散布機を提供する。
【解決手段】走行可能な前輪及び後輪を持つ台車と、台車の後部の上方に設けられかつ目砂、肥料等の散布材料を収容するホッパーと、ホッパーの下部出口を通ってホッパーから供給される散布材料を後方へ送るコンベアと、コンベア後方にて散布材料を散布する散布機構とを備えた散布機であって、散布機構から散布された散布材料が芝生面に散布される散布領域より前方で、かつ台車に取り付けられている後輪より後方に、芝生の芝目を立たせることができるグルマー機構を設けたことを特徴とする散布機。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な前輪及び後輪を持つ台車と、台車の後部の上方に設けられかつ目砂、肥料等の散布材料を収容するホッパーと、ホッパーの下部出口を通ってホッパーから供給される散布材料を後方へ送るコンベアと、コンベア後方にて散布材料を散布する散布機構とを備えた散布機であって、散布機構から散布された散布材料が芝生面に散布される散布領域より前方で、かつ台車に取り付けられている後輪より後方に、芝生の芝目を立たせることができるグルマー機構を設けたことを特徴とする散布機。
【請求項2】
グルマー機構は、台車の進行方向に対して略垂直に直立して台車の幅方向に配置されたグルマー材が芝生内に入ることによって芝目を立たせることができるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の散布機。
【請求項3】
グルマー材の台車の幅方向における長さは、散布機の散布材料の芝生上の散布領域の幅の1.0~1.1倍に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の散布機。
【請求項4】
グルマー材は、コンベアの駆動時に芝生面に接地し、コンベアの停止時に芝生面への接地を解放するように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の散布機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場、公園などの芝生の芝目間に目砂、肥料等の散布材料を散布することができる散布機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場、公園などの芝地では、芝生の育成のために芝目間に目砂、肥料等を散布することが行われている。その作業には、台車で走行しながら、ホッパー内に収容された目砂、肥料等を散布する散布機が用いられることが一般的である(特許文献1参照)。散布終了後には、作業車によってマット(特許文献2参照)やブラシ(特許文献3参照)を使用して、芝生の芝目を立たせて芝目の奥に目砂等をすり込む作業が行われている。
【0003】
従来のこの種の散布機を、
図1~3を使用して説明する。
図1は、従来の散布機の全体平面図で、
図2は、その全体側面図である。
図3は、
図1,2の散布機の後輪部側面の拡大図であり、散布機が自走しながら散布を行う様子を概略的に示す。1はエンジン2により自走する走行台車で、前輪1aと後輪1bを有し、減速機3によって駆動される。4は目砂、肥料等の散布材料を入れるホッパーで、走行台車1の後輪1bの上方に設けられる。このホッパー4の下方は開放しており、開放部の下にコンベア5が配設される。このコンベア5は、ホッパー4の前方、後方にそれぞれ位置するコンベアローラー5a、5bによりベルト5cが後向きに駆動する。6はホッパー4に設けられたシャッターで、散布材料の送り出し量を調整する。6aはシャッター6の調整ハンドルで、送り出し量が調整される。7は散布機構としてコンベア5から送り出された散布材料を散布するロール状の回転ブラシで、
図3に示すようにこのロール状のブラシ7の回転により散布材料10は後輪1bの後方に散布され、散布領域10aが後方に広がって形成される。
【0004】
かかる散布機は、エンジン2により走行しながら、コンベア作動レバー8の操作によってコンベアベルト5cとロール状のブラシ7が駆動され、散布材料は、コンベアベルト5cによって台車の後方へ送り出され、回転するロール状のブラシ7によって芝生面へ散布される。
【0005】
従来のこの種の散布機は、自走するための車輪を必ず有しており、散布時には前輪1a、後輪1bが芝生を散布機の重量で押さえつけながら行うことになるため、
図4に示すように、押さえつけられた芝生9a上に散布材料10の散布を行うことになり、芝生の芝目間に散布材料10を入れることが困難であった。
【0006】
また、従来のこの種の散布機で前輪1a、後輪1bの影響を受けない箇所に散布材料の散布を行った場合、自然な状態の芝生9上に散布材料10は散布されることになるが、
図5に示すように、自然な状態の芝生は、密集していることが多いため、芝生の芝目間に散布材料10を入れることが困難であった。
【0007】
そのため、従来のこの種の散布機で散布材料の散布を行う場合、散布機での散布完了後に別途ブラシやマットを使用して散布材料をすり込む作業を、芝目間に十分入るまで回数をかけて行っているのが現状であった。
【0008】
なお、従来の目砂等の散布機の後部にブラシを取り付けて、目砂を散布した後にブラシですり込む作業を行えるようにした散布機(特許文献4参照)も提案されているが、この散布機は、前輪、後輪により押さえつけられた芝生や密集した自然な状態の芝生の上に散布材料を散布した後にブラシを一度かけているだけであるので、芝生の芝目間に散布材料を深く入れることができず、散布完了後に別途ブラシを複数回かける必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-152106号公報
【特許文献2】特開平9-37605号公報
【特許文献3】特開平9-238505号公報
【特許文献4】特公昭46-27685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消するために創案されたものであり、その目的は、車輪で押さえつけられた芝生や自然な状態の密集された芝生であっても芝生の芝目間に目砂、肥料等の散布材料を一度で深く入れることができる、作業効率の高い散布機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、自走台車の後輪より後方で、かつ目砂等の散布材料が芝生に散布される散布領域よりも前方に、芝生の芝目を立たせることができるグルマー機構を設け、それにより前輪、後輪に押さえつけられた芝生、または自然な状態の密集した芝生の芝目を強制的に立たせた直後に散布を行うことにより、一度で芝生の芝目間に散布材料を深く入れることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の(1)~(4)の構成を有するものである。
(1)走行可能な前輪及び後輪を持つ台車と、台車の後部の上方に設けられかつ目砂、肥料等の散布材料を収容するホッパーと、ホッパーの下部出口を通ってホッパーから供給される散布材料を後方へ送るコンベアと、コンベア後方にて散布材料を散布する散布機構とを備えた散布機であって、散布機構から散布された散布材料が芝生面に散布される散布領域より前方で、かつ台車に取り付けられている後輪より後方に、芝生の芝目を立たせることができるグルマー機構を設けたことを特徴とする散布機。
(2)グルマー機構は、台車の進行方向に対して略垂直に直立して台車の幅方向に配置されたグルマー材が芝生内に入ることによって芝目を立たせることができるように構成されていることを特徴とする(1)に記載の散布機。
(3)グルマー材の台車の幅方向における長さは、散布機の散布材料の芝生上の散布領域の幅の1.0~1.1倍に設定されていることを特徴とする(2)に記載の散布機。
(4)グルマー材は、コンベアの駆動時に芝生面に接地し、コンベアの停止時に芝生面への接地を解放するように構成されていることを特徴とする(2)又は(3)に記載の散布機。
【発明の効果】
【0013】
本発明の散布機は、目砂、肥料等の散布材料を芝生に散布する際に、グルマー機構によって強制的に芝生の芝目を立たせた状態にした直後に散布材料を散布しているので、走行台車の車輪によって押さえつけられた芝生や自然な状態の密集した芝生であっても一度で芝生の芝目の奥まで散布材料を入れることが可能である。これにより、二次作業として行われている芝生に目砂をすり込む作業を不要にすることができ、作業従事者の負担を大きく軽減することができる。
【0014】
また、本発明の散布機は、グルマー機構のグルマー材を芝生面に押し当てる作用をコンベアの駆動に連動させることで、グルマー材を回送時に使用しないようにしているので、手動でのグルマー材の作動、解放の作業を不要にすることができる。これによっても、作業従事者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図3は、
図1の散布機が自走しながら芝生の上に散布を行っている状態の後輪部側面の拡大図である。
【
図4】
図4は、車輪で押さえつけられた芝生の上に散布材料を散布した状態を概略的に示す。
【
図5】
図5は、自然な状態で密集した芝生の上に散布材料を散布した状態を概略的に示す。
【
図6】
図6は、本発明の散布機の全体側面図である。
【
図7】
図7は、
図6の本発明の散布機が自走しながら芝生の上に散布を行っている状態の後輪部側面の拡大図である。
【
図8】
図8は、
図6の本発明の散布機が散布を行っている状態の要部拡大図である。
【
図9】
図9は、
図6の本発明の散布機が散布を停止している状態の要部拡大図である。
【
図10】
図10は、本発明の散布機を使用して散布材料を芝生の芝目に入れた状態を概略的に示す。
【
図11】
図11は、ローターを使用して散布を行う本発明の別の態様の散布機の全体側面図である。
【
図12】
図12は、グルマー機構のグルマー材が降下して使用している状態の本発明の散布機の要部斜視図である。
【
図13】
図13は、グルマー機構のグルマー材が上昇して使用していない状態の本発明の散布機の要部斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の散布機で使用されるグルマー機構のグルマー材の一例である。
【
図15】
図15は、本発明の散布機で使用されるグルマー機構のグルマー材の一例である。
【
図16】
図16は、本発明の散布機で使用されるグルマー機構のグルマー材の一例である。
【
図17】
図17は、本発明の散布機で使用されるグルマー機構のグルマー材の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の散布機の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の散布機は、芝生の芝目を立たせることができるグルマー機構を特定の位置に設けたことに特徴があり、本発明がベースとする散布機自体は、本発明の目的を損なわない限り、従来公知の散布機を使用することができる。本発明のベースとする散布機は、例えば
図1~
図3、
図6~
図9のように散布材料をロール状のブラシ7で散布する散布機構を有するタイプや、
図11のように散布材料をローター13の水平回転で散布する散布機構を有するタイプなどを使用することができる。
【0017】
本発明の散布機は、芝生の芝目を立たせることができるグルマー機構を、散布機の散布機構から散布された散布材料が芝生面に散布される散布領域より前方で、かつ台車に取り付けられている後輪より後方に設けたことに特徴がある。本発明の散布機の特徴を、
図6~
図17を使用して以下説明する。
【0018】
図6は、本発明の散布機の全体側面図、
図7は、自走して散布中の本発明の散布機の後輪部側面の拡大図、
図8は、散布中の本発明の散布機の要部拡大図、
図9は、散布停止中の本発明の散布機の要部拡大図、
図10は、散布材料を芝生の芝目に入れた状態、
図11は、散布装置としてローターを使用した本発明の別の態様の散布機、
図12は、グルマー機構のグルマー材が降下して稼働している状態の本発明の散布機の要部斜視図、
図13は、グルマー機構のグルマー材が上昇して非稼働状態の本発明の散布機の要部斜視図、
図14~17は、グルマー機構のグルマー材の例である。
【0019】
図6、
図7において、1はエンジン2により自走する走行台車で、前輪1aと後輪1bを有し、減速機3によって駆動される。4は目砂、肥料等の散布材料を入れるホッパーで、走行台車1の後輪1bの上方に設けられる。このホッパー4の下方は開放しており、開放部の下にコンベア5が配設される。このコンベア5は、ホッパー4の前方、後方にそれぞれ位置するコンベアローラー5a、5bによりベルト5cが後向きに駆動する。6はホッパー4に設けられたシャッターで、散布材料の送り出し量を調整する。6aはシャッター6の調整ハンドルで、送り出し量が調整される。7は散布機構としてコンベア5から送り出された散布材料を散布するロール状の回転ブラシで、
図7に示すようにこのロール状のブラシ7の回転により散布材料10は後輪1bの後方に散布され、散布領域10aが後方に広がって形成される。
【0020】
8はコンベア作動レバーで、その操作によりコンベアベルト5cとロール状のブラシ7が駆動され、散布材料10は、コンベアベルト5cによって台車の後方へと送り出され、回転するロール状のブラシ7のような散布機構によって芝生面へ散布される。11は芝生の芝目を立たせることができるグルマー機構であり、グルマー機構11は、台車の進行方向に対して略垂直に直立して台車の幅方向に配置されたグルマー材11aが芝生内に入ることによって芝目を立たせることができるように構成されている。11b,11cはグルマー材11aを芝生に押し付けるように動かす揚動アームである。12は揚動ワイヤーで、揚動アーム11bと連結され、揚動アーム11bを引っ張ることによりグルマー材11aの上昇、下降を行なう。
【0021】
図8、
図9において、本発明の散布機で散布を行う場合も従来の散布機と同様に、コンベア5の作動を行うコンベア作動レバー8を前方に倒すことでコンベア5が作動する。この時、コンベア作動レバー8の下部に連結している揚動ワイヤー12は、コンベア作動レバー8を前方に倒すことでコンベア5が作動すると共に、レバー側の揚動ワイヤー12aが中間の揚動ワイヤーを押し込み、後輪側の揚動ワイヤー12bを押し出す形となる。そして、後輪側の揚動ワイヤー12bは、揚動アーム11bに連結されているので、グルマー材11aは、
図8、
図12に示されるように揚動アーム11bと揚動アーム11cの円弧の軌跡上に動き、芝生面に押しつけられて芝生面に接地する。また、コンベアの停止動作を行う時は、コンベア作動レバー8を引き上げる方向に動かすが、この時、レバー側の揚動ワイヤー12aは、中間の揚動ワイヤーを引っ張り、後輪側の揚動ワイヤー12bは、揚動アーム11bを引っ張る動きをし、グルマー材11aは、
図9、
図13に示されるように揚動アーム11b,11cにより芝面から離れて芝生面への接地を解放される。
【0022】
従来の散布機では、散布領域10aは、
図4または
図5のように芝生の芝目より上に散布材料10のほとんどが載っている状態になり、散布後に芝目中への散布材料のすり込み作業が必要となるが、本発明の散布機では、台車走行時には前輪1a、後輪1bなどに押さえつけられた芝生が発生したり、自然な状態で密集した芝生を通過したりしても、グルマー機構11のグルマー材11aを後輪1bの通過後に芝面に押し当てて芝生9aを立たせて
図10の9bに示すような状態にしてから散布材料10を芝面に散布するようにしているので、
図10に示すように芝生の芝目の奥深くに散布材料10を入れることができる。従って、本発明の散布機で散布材料を芝生に散布した後は芝生の芝目を立たせて芝生の芝目間に散布材料をすり込む作業を別途行う必要がない。
【0023】
なお、グルマー機構のグルマー材の台車の幅方向における長さは、散布機の散布材料の芝生上の散布領域の想定される幅の1.0~1.1倍に設定されていることが好ましい。また、グルマー材を芝生に押し当てる深さは、ゴルフ場のグリーンで使用する場合や育成中の芝生で使用する場合で異なるが、一般に後輪走行後の芝生面より1~10mmの範囲で設定することが好ましい。さらに、グルマー材は、芝生を立たせることができれば特に限定されないが、
図14に示す板状のブラシ、
図15に示す厚手のマットを折り返して板状にしたもの、
図16に示す弾性のある素材を櫛状にしたもの、
図17に示す円柱体の周囲に多数の突起を設けたものなどを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の散布機は、芝生の芝目を強制的に立たせた状態で散布材料を散布するようにしているので、散布後に芝目を立たせたり、または散布材料をすり込む作業を別途必要としない。そのため散布作業の効率が極めて高く、当業界において有用である。
【符号の説明】
【0025】
1 台車
1a 前輪
1b 後輪
2 エンジン
3 減速機
4 ホッパー
5 コンベア
5a 従動ローラー
5b 駆動ローラー
5c コンベアベルト
6 シャッター
6a シャッター調整ハンドル
7 ロール状のブラシ
8 コンベア作動レバー
9 自然な状態の密集した芝生
9a 押さえつけられた芝生
9b 立たせた芝生
10 散布材料
10a 散布領域
11 グルマー機構
11a グルマー材
11b 揚動アーム
11c 揚動アーム
12 揚動ワイヤー
12a 揚動ワイヤー
12b 揚動ワイヤー
13 ローター