(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083763
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】車両用測距装置、車両用測距方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 15/931 20200101AFI20230609BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G01S15/931
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197638
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 義人
【テーマコード(参考)】
5H181
5J083
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC11
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL17
5J083AA02
5J083AB09
5J083AB13
5J083AC18
5J083AC29
5J083AD04
5J083AD13
5J083AD17
5J083AE01
5J083AF10
5J083BE53
(57)【要約】
【課題】ターゲットの形状とターゲットの位置とを正確に検知することができる車両用測距装置、車両用測距方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】送信波が出力された第1の時刻と、当該送信波の反射波が検出された第2の時刻とに基づいて、障害物までの距離を計測する測距部と、測距部が送信波を出力した車両の位置を特定する位置特定部と、測距部が計測した距離と位置特定部が特定した車両の位置とを、時刻に関連付けて記憶する記憶部と、記憶部が記憶した距離と車両の位置とに基づいて、車両の異なる位置のそれぞれで検出された距離が、障害物の同一の反射点までの距離であると仮定した場合に、当該反射点の座標と、位置特定部が特定した車両の位置から反射点に向かう方位角とを算出する反射点位置算出部と、反射点のうち誤った反射点として除去する反射点を、車両の異なる位置における方位角の変化に基づいて決定するフィルタ演算部と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて、当該車両から周囲の障害物までの距離を測定する車両用測距装置であって、
送信波が出力された第1の時刻と、当該送信波の反射波が検出された第2の時刻とに基づいて、前記障害物までの距離を計測する測距部と、
前記測距部が前記送信波を出力した前記車両の位置を特定する位置特定部と、
前記測距部が計測した距離と前記位置特定部が特定した前記車両の位置とを、時刻に関連付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶した距離と前記車両の位置とに基づいて、前記車両の異なる位置のそれぞれで計測された距離が、前記障害物の同一の反射点までの距離であると仮定した場合に、当該反射点の座標と、前記位置特定部が特定した前記車両の位置から前記反射点に向かう方位角とを算出する反射点位置算出部と、
前記反射点のうち誤った反射点として除去する反射点を、前記車両の異なる位置における方位角の変化に基づいて決定するフィルタ演算部と、を備える
車両用測距装置。
【請求項2】
前記フィルタ演算部は、
前記位置特定部が特定した前記車両の少なくとも異なる2つの位置において、前記反射点位置算出部が算出した方位角が、前記車両の進行方向に応じた単調増加傾向または単調減少傾向を示さない場合に、前記位置のうち、最新の位置において検出された反射点を除去する、
請求項1に記載の車両用測距装置。
【請求項3】
前記フィルタ演算部は、
除去された反射点のうち、当該反射点の方位角と次のタイミングで検出された反射点の方位角とが、前記車両の進行方向に応じた単調増加特性または単調減少特性を示す場合に、除去された反射点を元に戻す、
請求項2に記載の車両用測距装置。
【請求項4】
前記フィルタ演算部は、更に、
過去の複数の、前記車両の異なる位置における方位角の値に基づいて、前記車両の次の位置における方位角の推定値を推定する方位角推定部と、
前記方位角推定部による方位角の推定値と前記車両の次の位置における実際の方位角との差分値と閾値との大小関係に基づいて、前記車両の次の位置における方位角を、前記推定値と前記実際の方位角とに基づく方位角に補正するか、前記推定値に置換するかを判定する判定部と、を備える、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用測距装置。
【請求項5】
前記判定部は、
前記推定値と、前記車両の次の位置における実際の方位角との大小関係に基づいて、前記閾値を設定する、
請求項4に記載の車両用測距装置。
【請求項6】
前記判定部は、
前記車両が前進している場合であって、前記推定値が、前記車両の次の位置における実際の方位角以上である場合に、前記閾値を、通常よりも小さく設定して、
前記車両が前進している場合であって、前記推定値が、前記車両の次の位置における実際の方位角よりも小さい場合に、前記閾値を、通常よりも大きく設定する、
請求項5に記載の車両用測距装置。
【請求項7】
前記判定部は、
前記車両が後退している場合であって、前記推定値が、前記車両の次の位置における実際の方位角以下である場合に、前記閾値を、通常よりも小さく設定して、
前記車両が後退している場合であって、前記推定値が、前記車両の次の位置における実際の方位角よりも大きい場合に、前記閾値を、通常よりも大きく設定する、
請求項5に記載の車両用測距装置。
【請求項8】
前記判定部は、
前記車両の次の位置における方位角を、前記推定値と前記実際の方位角とに基づく方位角に補正する際に、補正された前記方位角が、前記車両の進行方向に応じた単調増加傾向または単調減少傾向を示すように、前記推定値と前記実際の方位角とに重み付けを行う、
請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の車両用測距装置。
【請求項9】
車両に搭載されて、当該車両から周囲の障害物までの距離を測定する車両用測距装置が行う車両用測距方法であって、
送信波が出力された第1の時刻と、当該送信波の反射波が検出された第2の時刻とに基づいて、前記障害物までの距離を計測する測距プロセスと、
前記送信波を送信した前記車両の位置を特定する位置特定プロセスと、
前記測距プロセスが検出した距離と前記位置特定プロセスが特定した前記車両の位置とを、時刻に関連付けて記憶する記憶プロセスと、
前記記憶プロセスが記憶した距離と前記車両の位置とに基づいて、前記車両の異なる位置のそれぞれで計測された距離が、前記障害物の同一の反射点までの距離であると仮定した場合に、当該反射点の座標と、前記位置特定プロセスが特定した前記車両の位置から前記反射点に向かう方位角とを算出する反射点位置算出プロセスと、
前記反射点のうち誤った反射点として除去する反射点を、前記車両の異なる位置における方位角の変化に基づいて決定するフィルタ演算プロセスと、を備える
車両用測距方法。
【請求項10】
車両に搭載されて、当該車両から周囲の障害物までの距離を測定する車両用測距装置が備えるコンピュータを、
送信波が出力された第1の時刻と、当該送信波の反射波が検出された第2の時刻とに基づいて、前記障害物までの距離を計測する測距部と、
前記測距部が前記送信波を出力した前記車両の位置を特定する位置特定部と、
前記測距部が計測した距離と前記位置特定部が特定した前記車両の位置とを、時刻に関連付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶した距離と前記車両の位置とに基づいて、前記車両の異なる位置のそれぞれで計測された距離が、前記障害物の同一の反射点までの距離であると仮定した場合に、当該反射点の座標と、前記位置特定部が特定した前記車両の位置から前記反射点に向かう方位角とを算出する反射点位置算出部と、
前記反射点のうち誤った反射点として除去する反射点を、前記車両の異なる位置における方位角の変化に基づいて決定するフィルタ演算部と、
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用測距装置、車両用測距方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超音波センサの位置を移動させながら、複数の位置で計測した距離に基づいて、対象物の位置と距離とを検知する駐車空間検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の駐車空間検知装置では、異なる超音波センサの位置からそれぞれ検出された測距値が、物標の同じ反射点で生じたものと仮定して、三角測量によって物標の座標を特定している。
【0005】
超音波センサは、所定の指向性の範囲の中で検出された最短距離の点までの距離を出力する。したがって、指向性が重複した範囲において、過去に検出した座標よりも遠方の座標が検出された場合、過去に検出した座標はノイズと判定して除去することができる。しかし、指向性が重複した範囲において、過去に検出した座標よりも遠方に誤座標が検出された場合は、当該遠方の誤座標をノイズとして除去することが困難であった。
【0006】
また、複数の物標が存在する場合に、当該複数の物体の組み合わせによって、本来はあるはずのない誤座標が検出される場合があった。
【0007】
本開示は、ターゲットの形状とターゲットの位置とを正確に検知することができる車両用測距装置、車両用測距方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る車両用測距装置は、車両に搭載されて、当該車両から周囲の障害物までの距離を測定する車両用測距装置であって、測距部と、位置特定部と、記憶部と、反射点位置算出部と、フィルタ演算部とを備える。測距部は、送信波が出力された第1の時刻と、当該送信波の反射波が検出された第2の時刻とに基づいて、障害物までの距離を計測する。位置特定部は、測距部が送信波を出力した車両の位置を特定する。記憶部は、測距部が計測した距離と位置特定部が特定した車両の位置とを、時刻に関連付けて記憶する。反射点位置算出部は、記憶部が記憶した距離と車両の位置とに基づいて、車両の異なる位置のそれぞれで計測された距離が、障害物の同一の反射点までの距離であると仮定した場合に、当該反射点の座標と、位置特定部が特定した車両の位置から反射点に向かう方位角とを算出する。フィルタ演算部は、反射点のうち誤った反射点として除去する反射点を、車両の異なる位置における前記方位角の変化に基づいて決定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る車両用測距装置によれば、ターゲットの形状とターゲットの位置とを正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、車両が備える車両用測距装置の動作概要を説明する図である。
【
図2】
図2は、車両用測距装置のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
【
図3】
図3は、車両用測距装置が行う測距方法を説明する図である。
【
図4】
図4は、車両用測距装置が算出する方位角を説明する図である。
【
図5A】
図5Aは、車両が前進している際に、車両用測距装置が測定した反射点の一例を示す第1の図である
【
図5B】
図5Bは、
図5Aの状態において測定された反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図5C】
図5Cは、車両が前進している際に、車両用測距装置が測定した反射点の一例を示す第2の図である。
【
図5D】
図5Dは、
図5Cの状態において測定された反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図6A】
図6Aは、車両が、ポールの横を横切る状態の一例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aの状態における、反射点までの距離の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図6C】
図6Cは、
図6Aの状態における、反射点の方位角の余弦値の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図6D】
図6Dは、
図6Aの状態における、反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図6E】
図6Eは、車両が、駐車している車両の前を横切る状態の一例を示す図である。
【
図6F】
図6Fは、
図6Eの状態における、反射点までの距離の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図6G】
図6Gは、
図6Eの状態における、反射点の方位角の余弦値の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図6H】
図6Hは、
図6Eの状態における、反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図7A】
図7Aは、車両が後退している際に、車両用測距装置が測定した反射点の一例を示す第1の図である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aの状態において測定された反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図7C】
図7Cは、車両が後退している際に、車両用測距装置が測定した反射点の一例を示す第2の図である。
【
図7D】
図7Dは、
図7Cの状態において測定された反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の車両用測距装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の車両用測距装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第1の実施形態の車両用測距装置が行う角度フィルタ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11A】
図11Aは、第1の実施形態の車両用測距装置により測距を行う場面の一例を示す第1の図である。
【
図12A】
図12Aは、第1の実施形態の車両用測距装置により測距を行う場面の一例を示す第2の図である。
【
図13A】
図13Aは、第1の実施形態の車両用測距装置における角度フィルタの効果を評価する場面の一例を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、第2の実施形態の車両用測距装置が行う角度フィルタ処理の概要を示す第1の図である。
【
図14B】
図14Bは、第2の実施形態の車両用測距装置が行う角度フィルタ処理の概要を示す第2の図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態の車両用測距装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態の車両用測距装置が行う角度フィルタ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図17A】
図17Aは、第3の実施形態の車両用測距装置が行うトラッキング処理の概要を示す第1の図である。
【
図17B】
図17Bは、第3の実施形態の車両用測距装置が行うトラッキング処理の概要を示す第2の図である。
【
図17C】
図17Cは、第3の実施形態の車両用測距装置が行うトラッキング処理の概要を示す第3の図である。
【
図18】
図18は、第3の実施形態の車両用測距装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図19】
図19は、第3の実施形態の車両用測距装置が行うトラッキング処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、第3の実施形態の変形例(1)の車両用測距装置が行うトラッキング処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、第3の実施形態の変形例(2)の車両用測距装置が行うトラッキング処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示に係る車両用測距装置の第1の実施形態について説明する。
【0012】
(車両用測距装置の動作概要)
まず、
図1を用いて、車両20が備える車両用測距装置10aの動作概要を説明する。
図1は、車両が備える車両用測距装置の動作概要を説明する図である。
【0013】
車両用測距装置10aは、超音波センサ14が放射した超音波の反射波を検出することによって、反射波を発生させた反射点までの距離を測定(測距)する。超音波センサ14は、例えば、車両20の進行方向左側(Y軸正方向側)の側面に、左側を向けて設置される。なお、超音波センサ14は、車両20の進行方向右側(Y軸負方向側)の側面にも設置されるが、以降の説明では、超音波センサ14は、車両20の進行方向左側の側面に設置されているものとして説明する。
【0014】
超音波センサ14は、所定の時間間隔で、放射範囲Rの内部に超音波を放射する。そして、超音波センサ14は、放射した超音波の反射波を受信する。車両用測距装置10aは、超音波センサ14が超音波を放射してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、反射波を生じた反射点Pまでの距離を算出する。なお、車両20に設置される測距センサは、超音波センサ14に限定されるものではなく、レーザレーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging)等のアクティブ型センサを用いてもよい。
【0015】
車両20は、後述する車速センサ15と操舵角センサ16(
図2参照)を備える。車両用測距装置10aは、超音波センサ14が超音波の放射を行った際の車速センサ15と操舵角センサ16の出力を取得して、超音波の放射を行った際の超音波センサ14の位置を特定する。
【0016】
このようにして、車両用測距装置10aは、車両20がX軸正方向側に向かって前進した際に、超音波センサ14の位置と、反射点までの距離(以下、測距値とも呼ぶ)と関連付けて算出する。そして、車両用測距装置10aは、現在の測距値と、現在の超音波センサ14の位置と、過去の測距値と、過去の超音波センサ14の位置とに基づいて、反射点Pの座標を算出する。なお、このとき、車両用測距装置10aは、過去と現在とで反射点Pの位置は同じであると仮定する。車両用測距装置10aが行う測距方法について詳しくは後述する(
図3参照)。
【0017】
車両用測距装置10aは、このような測距を繰り返して行うことによって、
図1に示すように、車両20の左側に駐車している車両21の辺縁の形状を、反射点Pの集合として検出する。そして、車両用測距装置10aは、車両20が更に前進した際に、車両22の辺縁の形状も同様に検出する。
【0018】
検出された反射点Pの集合は、例えば、車両20が備える非図示の駐車支援装置(車両制御装置の一例)によって解析される。駐車支援装置は、駐車場80において、車両21と車両22との間に、車両20を駐車させることが可能なスペース25があることを認識する。そして、駐車支援装置は、車両20を、検出されたスペース25に自動駐車させる。なお、駐車支援装置の他に、駐車ブレーキ制御装置、自動運転制御装置等の車両制御装置においても、検出された反射点Pの集合を用いて、車両20を制御することができる。
【0019】
(車両用測距装置のハードウエア構成)
図2を用いて、車両用測距装置10aのハードウエア構成を説明する。
図2は、車両用測距装置のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
【0020】
車両用測距装置10aは、当該車両用測距装置10aの各部を制御するための制御部11を備える。制御部11は、CPU(Central Prоcessing Unit)11aと、ROM(Read Only Memоry)11bと、RAM(Randоm Access Memоry)11cと、を備える。CPU11aは、アドレスバス、データバス等の内部バス13を介して、ROM11bと、RAM11cと接続する。CPU11aは、ROM11bや記憶部12に記憶された各種プログラムを、RAM11cに展開する。CPU11aは、RAM11cに展開された各種プログラムに従って動作することで車両用測距装置10aを制御する。即ち、制御部11は、一般的なコンピュータの構成を有する。
【0021】
制御部11は、内部バス13を介して、記憶部12と、超音波センサ14と、車速センサ15と、操舵角センサ16と、操作スイッチ17と接続する。
【0022】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Sоlid State Drive)などの記憶装置である。また、記憶部12は、電源を切っても記憶情報が保持されるフラッシュメモリ等の不揮発性メモリであってもよい。記憶部12は、制御プログラム12aと、計測データファイル12bと、方位角データファイル12cとを記憶する。
【0023】
制御プログラム12aは、車両用測距装置10aの全体の動作を制御するプログラムである。
【0024】
計測データファイル12bは、車両用測距装置10aが計測した測距値d(
図3参照)と車両20の位置と時刻tとを関連付けたデータファイルである。
【0025】
方位角データファイル12cは、車両用測距装置10aが計測した方位角θ(
図4参照)と時刻tとを関連付けたデータファイルである。なお、計測データファイル12bと方位角データファイル12cとは同じデータファイルであってもよい。
【0026】
超音波センサ14と車速センサ15と操舵角センサ16の機能は、前述した通りである。
【0027】
操作スイッチ17は、例えば、車両用測距装置10aに動作開始を指示するスイッチである。なお、車両用測距装置10aは、駐車場に進入したことを検出した際に、自動的に起動されてもよい。
【0028】
(車両用測距装置が行う測距方法)
図3と
図4を用いて、車両用測距装置10aが行う測距方法を説明する。
図3は、車両用測距装置が行う測距方法を説明する図である。
図4は、車両用測距装置が算出する方位角を説明する図である。
【0029】
図3は、超音波センサ14を異なる2点、即ち点Bと点Cに置いて、ポール26の測距を行った例を示す。このとき、超音波センサ14は、放射範囲Rの内部に超音波を放射している。
【0030】
車両用測距装置10aは、点Bにおいて、測距値d1を得たとする。また、車両用測距装置10aは、点Cにおいて、測距値d2を得たとする。また、車両用測距装置10aは、点Bと点Cとの距離Wを計測したとする。
【0031】
このとき、点Bにおける測距値d1と、点Cにおける測距値d2とが、同じ反射点Pにおける反射波によって得られたと仮定すると、
図3において、三角形PBCの形状が一意に決定する。即ち、三角測量によって、反射点Pの座標を得ることができる。車両用測距装置10aが行う三角測量は、車両20を移動させることによって、点Bと点Cとを時系列で生成させるものであるため、特に、時系列三角測量と呼ぶ。
【0032】
車両用測距装置10aは、反射点Pの座標とともに、超音波センサ14の位置から反射点Pに向かう方向を特定する方位角θを算出する。
【0033】
方位角θは、Y軸に沿う方向を基準軸(0°)として、超音波センサ14の位置から反射点Pに向かう方向を示す角度である。
図4の例では、超音波センサ14が点Bにあるときに、測距値d1と方位角θ1(=-45°)が計測されることを示す。また、超音波センサ14が点Cにあるときに、測距値d2と方位角θ2(=-5°)が計測されることを示す。また、超音波センサ14が点Dにあるときに、測距値d3と方位角θ3(=40°)が計測されることを示す。
【0034】
(車両用測距装置が測定した反射点の方位角の時間推移)
図5Aから
図5Dを用いて、車両用測距装置が測定した反射点Pの方位角θの時間推移について説明する。
図5Aは、車両が前進している際に、車両用測距装置が測定した一例を示す第1の図である。
図5Bは、
図5Aの状態において測定された反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
図5Cは、車両が前進している際に、車両用測距装置が測定した反射点の一例を示す第2の図である。
図5Dは、
図5Cの状態において測定された反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
【0035】
車両用測距装置10aが行う時系列三角測量において、車両20が前進している場合、物標の反射点Pの方位角θは、超音波センサ14から見て、前方(θ<0)から真横(θ=0)に移動して、その後、後方(θ>0)に移動する。即ち、方位角θを時系列で観測すると、単調増加の傾向を示す。
【0036】
例えば、
図5Bのグラフ41aは、
図5Aに示すように、車両用測距装置10aを備える車両20が前進しながら、駐車している車両21と車両22とを横切った際に、方位角θを計測した結果を示すものである。なお、車両21と車両22の間には、ポール26が存在するものとする。
【0037】
このとき、車両用測距装置10aが車両21を計測している区間E1においては、方位角θが単調増加の傾向を示す。同様に、車両用測距装置10aがポール26を計測している区間E3と、車両用測距装置10aが車両22を計測している区間E5とにおいても、方位角θは単調増加の傾向を示す。なお、単調増加の傾向とは、必ずしもリニアに増加することを意味するのではなく、非線形に増加してもよいし、増加していないフラットな状態も含む。
【0038】
なお、車両21とポール26とが近接していることにより、車両21による反射波と、ポール26による反射波との組み合わせによって、
図5に示す、実際は存在しない誤反射点S1が発生する場合がある。
【0039】
誤反射点S1が発生すると、
図5のグラフ41aに示すように、当該誤反射点S1を含む区間E2においては、方位角θが単調増加の傾向を示さない。
【0040】
また、ポール26と車両22とが近接していることにより、ポール26による反射波と、車両22による反射波との組み合わせによって、
図5Aに示す、実際は存在しない誤反射点S2が発生する場合がある。
【0041】
誤反射点S2が発生すると、
図5Bのグラフ41aに示すように、当該誤反射点S2を含む区間E4においては、方位角θが単調増加の傾向を示さない。
【0042】
車両用測距装置10aは、方位角θの時間推移を分析して、車両20が前進している場合において、方位角θが単調増加の傾向を示さない場合に、当該単調増加の傾向を示さない反射点Pを除去する。これによって、誤った反射点Pを容易かつ確実に除去することができる。
【0043】
図5Dのグラフ41bは、
図5Cに示すように、車両用測距装置10aを備える車両20が前進しながら、駐車している車両24を横切った際に、方位角θを計測した結果を示すものである。
【0044】
車両24の表面において、ヘッドライトやフォグランプによる大きな凹凸が存在する場合、また、車両24のデザインに大きな凹凸が存在する場合には、
図5Cに示す、実際は存在しない誤反射点S3,S4,S5が発生する場合がある。
【0045】
誤反射点S3,S4,S5が発生すると、
図5Dのグラフ41bに示すように、例えば、区間E7、区間E9のように、方位角θ(t)が単調増加の傾向を示さない区間が発生する。
【0046】
車両用測距装置10aは、方位角θ(t)の時間推移を分析して、車両20が前進している場合において、方位角θ(t)が単調増加の傾向を示さない場合に、当該単調増加の傾向を示さない反射点Pを決定し、当該反射点Pを除去する。これによって、誤った反射点Pを容易かつ確実に除去することができる。
【0047】
(車両用測距装置が測定する反射点の方位角の時間推移の説明)
図6Aから
図6Hを用いて、反射点Pの方位角θが時間とともに単調増加の傾向を示すことについて、具体例を用いて説明する。
図6Aは、車両が、ポールの横を横切る状態一例を示す図である。
図6Bは、
図6Aの状態における、反射点までの距離の時間推移の一例を示すグラフである。
図6Cは、
図6Aの状態における、反射点の方位角の余弦値の時間推移の一例を示すグラフである。
図6Dは、
図6Aの状態における、反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。また、
図6Eは、車両が、駐車している車両の前を横切る状態の一例を示す図である。
図6Fは、
図6Eの状態における、反射点までの距離の時間推移の一例を示すグラフである。
図6Gは、
図6Eの状態における、反射点の方位角の余弦値の時間推移の一例を示すグラフである。
図6Hは、
図6Eの状態における、反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
【0048】
図6Aに示すように、車両20が前進して、左側方にあるポール26から距離Lの位置を通過する場合を想定する。車両用測距装置10aは、時刻tにおいて、測距値d(t)と方位角θ(t)とを計測する。
【0049】
測距値d(t)は、
図6Bのグラフ42aに示すように、時刻tの経過とともに単調減少を続ける。そして、車両20がポール26に最も接近した時刻tにおいて、d(t)=Lとなる。その後、測距値d(t)は、時刻tの経過とともに単調増加を続ける。
【0050】
方位角θ(t)から算出されるcosθ(t)は、
図6Cのグラフ42bに示すように、車両20がポール26に最も接近した時刻tにおいて、cosθ(t)=1となる。そして、当該時刻tの前後において、cosθ(t)は単峰性を呈する。
【0051】
そして、方位角θ(t)は、
図6Dのグラフ42cに示すように、車両20がポール26に接近するまではθ(t)<0、車両20がポール26を通過した後は、θ(t)>0となって、時刻tの経過とともに単調増加傾向を示す。
【0052】
一方、
図6Eに示すように、車両20が前進して、左側方に駐車した車両21の前方を横切る場合を想定する。車両用測距装置10aは、時刻tにおいて、測距値d(t)と方位角θ(t)とを計測する。
【0053】
測距値d(t)は、
図6Fのグラフ43aに示すように、時刻tの経過とともに単調減少を続ける。そして、車両20が車両21を横切る期間において、d(t)=Lとなる。その後、測距値d(t)は、時刻tの経過とともに単調増加を続ける。
【0054】
方位角θ(t)から算出されるcosθ(t)は、
図6Gのグラフ43bに示すように、車両20が車両21の前方横切る時刻tにおいて、cosθ(t)=1となる。そして、当該時刻tの前後において、cosθ(t)は単峰性を呈する。
【0055】
そして、方位角θ(t)は、
図6Hのグラフ43cに示すように、車両20が車両21に接近するまではθ(t)<0、車両20が車両21の前方を横切る間はθ(t)=0、車両20が車両21を通過した後は、θ(t)>0となって、時刻tの経過とともに単調増加傾向を示す。
【0056】
(車両が後退している場合の反射点の方位角の時間推移)
図7Aから
図7Dを用いて、車両20が後退している場合に測定される、反射点Pの方位角θの時間推移を説明する。
図7Aは、車両が後退している際に、車両用測距装置が測定した反射点の一例を示す第1の図である。
図7Bは、
図7Aの状態において測定された反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
図7Cは、車両が後退している際に、車両用測距装置が測定した反射点の一例を示す第2の図である。
図7Dは、
図7Cの状態において測定された反射点の方位角の時間推移の一例を示すグラフである。なお、
図7Aから
図7Dに示す内容は、
図5Aから
図5Dにおいて、車両20の移動方向を反転させたものである。
【0057】
車両用測距装置10aが行う時系列三角測量において、車両20が後退している場合、物標の反射点Pの方位角θは、超音波センサ14から見て、後方(θ>0)から真横(θ=0)に移動して、その後、前方(θ<0)に移動する。即ち、方位角θを時系列で観測すると、単調減少の傾向を示す。なお、単調減少の傾向とは、必ずしもリニアに減少することを意味するのではなく、非線形に減少してもよいし、減少していないフラットな状態も含む。
【0058】
図7Aに示すように、車両22とポール26とが近接していることにより、車両22による反射波と、ポール26による反射波との組み合わせによって、実際は存在しない誤反射点S6が発生する場合がある。
【0059】
誤反射点S6が発生すると、
図7Bのグラフ44aに示すように、当該誤反射点S6を含む区間F2においては、方位角θが単調減少の傾向を示さない。
【0060】
また、ポール26と車両21とが近接していることにより、ポール26による反射波と、車両21による反射波との組み合わせによって、
図7Aに示す、実際は存在しない誤反射点S7が発生する場合がある。
【0061】
誤反射点S7が発生すると、
図7Bのグラフ44aに示すように、当該誤反射点S7を含む区間F4においては、方位角θが単調減少の傾向を示さない。
【0062】
また、車両用測距装置10aは、方位角θの時間推移を分析して、車両20が後退している場合において、方位角θが単調減少の傾向を示さない場合に、当該単調減少の傾向を示さない反射点Pを除去する。これによって、誤った反射点Pを容易かつ確実に除去することができる。
【0063】
図7Dのグラフ44bは、
図7Cに示すように、車両用測距装置10aを備える車両20が後退し、駐車している車両24を横切った際に、方位角θを計測した結果を示すものである。
【0064】
車両24の表面において、ヘッドライトやフォグランプによる大きな凹凸が存在する場合、また、車両24のデザインに大きな凹凸が存在する場合には、
図7Cに示す、実際は存在しない誤反射点S8,S9,S10が発生する場合がある。
【0065】
誤反射点S8,S9,S10が発生すると、
図7Dのグラフ44bに示すように、例えば、区間F7、区間F9のように、方位角θ(t)が単調減少の傾向を示さない区間が発生する。
【0066】
車両用測距装置10aは、方位角θ(t)の時間推移を分析して、車両20が後退している場合において、方位角θ(t)が単調減少の傾向を示さない場合に、当該単調減少の傾向を示さない反射点Pを決定し、当該反射点Pを除去する。これによって、誤った反射点Pを容易かつ確実に除去することができる。
【0067】
なお、車両20が前進しているか、後退しているかは、例えば、非図示のシフトポジションセンサの出力を検出することによって判定すればよい。
【0068】
(車両用測距装置の機能構成)
図8を用いて、車両用測距装置10aの機能構成を説明する。
図8は、第1の実施形態の車両用測距装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0069】
車両用測距装置10aの制御部11は、制御プログラム12aをRAM11cに展開して動作させることによって、
図8に示す測距部31と、車両位置特定部32と、測距値および車両位置記憶部33と、反射点位置算出部34と、方位角記憶部35と、角度フィルタ演算部36と、を機能部として実現する。
【0070】
測距部31は、送信波が出力された第1の時刻と、当該送信波の反射波が検出された第2の時刻とに基づいて、障害物までの距離を計測する。測距部31は、例えば超音波センサ14のようなアクティブ型センサによって構成される。
【0071】
車両位置特定部32は、測距部31が送信波を出力した車両20の位置を特定する。なお、車両位置特定部32は、本開示における位置特定部の一例である。より具体的には、車両位置特定部32は、車速センサ15の出力と操舵角センサ16の出力とに基づいて、送信波を出力した際の車両20の位置を特定する。また、車両位置特定部32は、車両20が前進しているか、後退しているかを判定する。
【0072】
測距値および車両位置記憶部33は、測距部31が計測した距離と車両位置特定部32が特定した車両20の位置と時刻tとを関連付けた計測データファイル12bを記憶部12に記憶する。なお、測距値および車両位置記憶部33は、本開示における記憶部の一例である。
【0073】
反射点位置算出部34は、測距値および車両位置記憶部33が記憶した距離と、車両20の位置とに基づいて、車両20の異なる位置のそれぞれで計測された距離が、障害物の同一の反射点Pまでの距離であると仮定した場合に、当該反射点Pの座標と、車両位置特定部32が特定した車両20の位置から反射点Pに向かう方位角θとを算出する。
【0074】
方位角記憶部35は、方位角θを時刻tとを関連付けた方位角データファイル12cを記憶部12に記憶する。
【0075】
角度フィルタ演算部36は、反射点Pのうち誤った反射点として除去する反射点を、車両20の異なる位置における方位角θの変化に基づいて決定する。なお、角度フィルタ演算部36は、本開示におけるフィルタ演算部の一例である。
【0076】
角度フィルタ演算部36は、更に、方位角の推移判定部36aと、角度フィルタ実行部36bとを備える。
【0077】
方位角の推移判定部36aは、時刻tの経過による方位角θの推移が、車両20の進行方向に応じた単調増加傾向または単調減少傾向を示すかを判定する。即ち、方位角の推移判定部36aは、車両20が前進している場合は、方位角θが時刻tの経過とともに単調増加傾向を示すかを判定する。また、方位角の推移判定部36aは、車両20が後退している場合は、方位角θが時刻tの経過とともに単調減少傾向を示すかを判定する。
【0078】
角度フィルタ実行部36bは、方位角の推移判定部36aの判定結果に基づいて、不適切な反射点Pを決定し、当該反射点Pを、誤った反射点として除去する。なお、角度フィルタ実行部36bが出力する反射点Pの座標は、車両20が備える非図示の駐車支援装置(車両制御装置の一例)に渡されて、車両20の駐車動作を制御するために用いられる。
【0079】
(車両用測距装置が行う処理の流れ)
図9を用いて、車両用測距装置10aが行う処理の流れを説明する。
図9は、第1の実施形態の車両用測距装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0080】
測距部31は、操作スイッチ17が操作されたことを契機として、超音波センサ14に対して測距の開始を指示する(ステップS11)。なお、測距開始の契機は、操作スイッチ17の操作を受けたタイミングに限定されるものではなく、例えば、車両20に設置されたナビゲーション装置が、駐車場に進入したことを検出したタイミングで、超音波センサ14に対して測距の開始を指示してもよい。
【0081】
測距部31は、測距を実行する(ステップS12)。
【0082】
車両位置特定部32は、測距部31が測距を実行したタイミングで、車両20の位置を特定する(ステップS13)。
【0083】
測距値および車両位置記憶部33は、測距部31が計測した測距値dと車両位置特定部32が特定した位置と時刻tとを関連付けた計測データファイル12bを、記憶部12に記憶する(ステップS14)。
【0084】
測距部31は、前回の測距から所定時間経過後に測距を実行する(ステップS15)。なお、この間に車両20は移動しているものとする。
【0085】
車両位置特定部32は、測距部31が測距を実行したタイミングで、車両20の位置を特定する(ステップS16)。
【0086】
反射点位置算出部34は、車両位置特定部32が特定した車両20の位置から反射点Pに向かう方位角θを算出する(ステップS17)。
【0087】
反射点位置算出部34は、現在取得した測距値dおよび車両20の位置と、1時刻前に取得した測距値dおよび車両20の位置とから、三角測量によって、反射点Pの位置を算出する(ステップS18)。なお、ステップS18の後でステップS17を行ってもよい。
【0088】
測距値および車両位置記憶部33は、測距値dと車両20の位置と時刻tとを関連付けて、計測データファイル12bに記憶する(ステップS19)。
【0089】
方位角記憶部35は、方位角θと時刻tとを関連付けて、方位角データファイル12cに記憶する(ステップS20)。
【0090】
角度フィルタ演算部36は、角度フィルタ処理を行う(ステップS21)。なお、ステップS21の詳細な内容は後述する(
図10参照)。
【0091】
非図示の駐車支援装置は、駐車支援が終了したかを判定する(ステップS22)。駐車支援が終了したと判定される(ステップS22:Yes)と、車両用測距装置10aは、
図9の処理を終了する。一方、駐車支援が終了したと判定されない(ステップS22:No)と、ステップS15に戻って、前述した処理を繰り返す。
【0092】
(角度フィルタ処理の流れ)
図10を用いて、
図9のステップS21で行う角度フィルタ処理の流れを説明する。
図10は、第1の実施形態の車両用測距装置が行う角度フィルタ処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、説明を分かり易くするために、時刻tにおける方位角θ(t)を、θ
i(i=1,2,…)で表す。例えば、方位角θ
nに対して、1時刻前に得られた方位角をθ
n-1で表すものとする。
【0093】
方位角の推移判定部36aは、反射点位置算出部34が算出した、現在の方位角θnを取得する(ステップS31)。
【0094】
次に、方位角の推移判定部36aは、方位角記憶部35が記憶している、1時刻前の方位角θn-1を取得する(ステップS32)。
【0095】
方位角の推移判定部36aは、方位角θの差分値Δθ=θn-θn-1を算出する(ステップS33)。
【0096】
方位角の推移判定部36aは、方位角θの差分値Δθの絶対値|Δθ|が、方位角閾値θth以下であるかを判定する(ステップS34)。方位角θの差分値Δθの絶対値|Δθ|が、方位角閾値θth以下であると判定される(ステップS34:Yes)と、車両用測距装置10aは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。一方、方位角θの差分値Δθの絶対値|Δθ|が、方位角閾値θth以下であると判定されない(ステップS34:No)と、ステップS35に進む。
【0097】
ステップS34において、方位角θの差分値Δθの絶対値|Δθ|が、方位角閾値θth以下であると判定されないと、車両位置特定部32は、車両20が前進しているか後退しているかを判定する(ステップS35)。車両20が前進していると判定されるとステップS36に進む。一方、車両20が後退していると判定されるとステップS37に進む。
【0098】
ステップS35において、車両20が前進していると判定されると、方位角の推移判定部36aは、方位角θの差分値Δθが0未満であるかを判定する(ステップS36)。方位角θの差分値Δθが0未満であると判定される(ステップS36:Yes)とステップS38に進む。一方、方位角θの差分値Δθが0未満であると判定されない(ステップS36:No)と、車両用測距装置10aは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0099】
一方、ステップS35において、車両20が後退していると判定されると、方位角の推移判定部36aは、方位角θの差分値Δθが0よりも大きいかを判定する(ステップS37)。方位角θの差分値Δθが0よりも大きいと判定される(ステップS37:Yes)とステップS38に進む。一方、方位角θの差分値Δθがよりも大きいと判定されない(ステップS37:No)と、車両用測距装置10aは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0100】
ステップS36において、方位角θの差分値Δθが0未満であると判定されるか、または、ステップS37において、方位角θの差分値Δθが0よりも大きいと判定されると、角度フィルタ実行部36bは、方位角θ
nに対応する反射点Pを除去する(ステップS38)。その後、車両用測距装置10aは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0101】
(角度フィルタ処理の適用例)
図11Aから
図11D、
図12Aから
図12D、および
図13A、
図13Bを用いて、車両用測距装置10aにおける角度フィルタの効果を示す例を説明する。
図11Aは、第1の実施形態の車両用測距装置により測距を行う場面の一例を示す第1の図である。
図11Bは、
図11Aの場面において計測された測距値の時間推移の一例を示すグラフである。
図11Cは、
図11Aの場面において計測された方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
図11Dは、
図11Aの場面において計測された反射点の座標の分布の一例を示すグラフである。
図12Aは、第1の実施形態の車両用測距装置により測距を行う場面の一例を示す第2の図である。
図12Bは、
図12Aの場面において計測された測距値の時間推移の一例を示すグラフである。
図12Cは、
図12Aの場面において計測された方位角の時間推移の一例を示すグラフである。
図12Dは、
図12Aの場面において計測された反射点の座標の分布の一例を示すグラフである。
図13Aは、第1の実施形態の車両用測距装置における角度フィルタの効果を評価する場面の一例を示す図である。
図13Bは、
図13Aの場面で実測した、角度フィルタの効果の一例を示すグラフである。
【0102】
図11Bに示すグラフ45は、
図11Aに示すように、車両用測距装置10aを備える車両20が前進して、隙間を空けて駐車している車両21と車両22とを横切った際に得られた測距値d(t)の例を示す。
【0103】
グラフ45の横軸は時刻tを表し、縦軸は測距値d(t)を表す。そして、グラフ45にプロットされた丸印が、測距値d(t)を表す。グラフ45からわかるように、車両21と車両22とにそれぞれ対応する測距値d(t)の点群が得られる。
【0104】
図11に示すグラフ46は、測距値d(t)が同じ反射点Pで得られたと仮定した場合の方位角θ(t)の推移を示す。グラフ46の横軸は時刻tを表し、縦軸は方位角θ(t)を表す。そして、グラフ45にプロットされた丸印が、各反射点Pの方位角θ(t)を表す。また、グラフ45にプロットされた×印は、前述した角度フィルタによって除去された反射点Pを表す。
【0105】
グラフ46には、単調増加傾向を示す2つの点群が観測される。これらの点群のうち、左側の点群は、車両21の測距結果に対応する。そして、右側の点群は、車両22の測距結果に対応する。そして、グラフ45の×印は、前述した角度フィルタによって、方位角θ(t)が単調増加傾向を示さないと判定された反射点Pを表す。
【0106】
図11に示すグラフ47は、グラフ45に示された測距値d(t)とグラフ46に示された方位角θ(t)とを、実際の座標値に換算した結果を示す。グラフ47の丸印は、角度フィルタで除去されなかった反射点Pを表す。そして、グラフ47の×印は、角度フィルタで除去された反射点Pを表す。
【0107】
グラフ47から、車両21に対応する点群と、車両22に対応する点群とが、隙間を空けて計測されていることがわかる。そして、車両21,22に関係しない×印に対応する反射点Pが、確実に除去されていることがわかる。また、特許文献1に開示された手法では除去することが困難な遠方の反射点が除去されていることがわかる。
【0108】
図12Bに示すグラフ48は、
図12Aに示すように、車両用測距装置10aを備える車両20が前進して、隙間を空けて駐車している車両21と車両22とを横切った際に得られた測距値d(t)の例を示す。なお、車両21と車両22との間には、ポール26が存在している。
【0109】
グラフ48の横軸は時刻tを表し、縦軸は測距値d(t)を表す。そして、グラフ48にプロットされた丸印が、測距値d(t)を表す。グラフ48からわかるように、車両21とポール26と車両22とにそれぞれ対応する測距値d(t)の点群が得られる。
【0110】
図12に示すグラフ49は、測距値d(t)が同じ反射点Pで得られたと仮定した場合の方位角θ(t)の推移を示す。グラフ49の横軸は時刻tを表し、縦軸は方位角θ(t)を表す。そして、グラフ49にプロットされた丸印が、各反射点Pの方位角θ(t)を表す。また、グラフ49にプロットされた×印は、前述した角度フィルタによって除去された反射点Pを表す。
【0111】
グラフ49には、単調増加傾向を示す3つの点群が観測される。これらの点群のうち、左側の点群は、車両21の測距結果に対応する。また、真中の点群は、ポール26の測距結果に対応する。そして、右側の点群は、車両22の測距結果に対応する。そして、グラフ49の×印は、前述した角度フィルタによって、方位角θ(t)が単調増加傾向を示さないと判定された反射点Pを表す。
【0112】
図12に示すグラフ50は、グラフ48に示された測距値d(t)とグラフ47に示された方位角θ(t)とを、実際の座標値に換算した結果を示す。グラフ50の丸印は、角度フィルタで除去されなかった反射点Pを表す。そして、グラフ50の×印は、角度フィルタで除去された反射点Pを表す。
【0113】
グラフ50から、車両21に対応する点群と、ポール26に対応する点群と、車両22に対応する点群とが、隙間を空けて計測されていることがわかる。そして、車両21,22とポール26に関係しない×印に対応する反射点Pが、確実に除去されていることがわかる。
【0114】
図13Bに示すグラフ51は、
図13Aに示すように、車両用測距装置10aを備える車両20が前進して、駐車している車両21と車両22とを横切った際に計測された反射点Pの、真値からのずれの大きさを評価した結果を示す。グラフ51の横軸は、真値からのずれの大きさを示す。ずれの算出方法については後述する。また、グラフ51の縦軸は、計測された反射点Pの点数を示す。なお、車両20は、車両21と車両22との先端から約0.5m離れた位置を、前進状態で直進したものとする。また、車両21と車両22とは、約3mの間隔を空けて駐車しているものとする。超音波センサ14は、車両20の左前方の位置に左向きに設置されて、放射範囲Rの内部に超音波を放射するものとする。
【0115】
車両用測距装置10aが検出した反射点Pのうち、車両21の右側面を示すと思われる反射点P、および車両22の右側面を示すと思われる反射点Pについて、真値からどれ位ずれているかを評価した。真値からのずれの方向は、
図13に示すように、X軸負方向にずれた場合を+側のずれ、X軸正方向にずれた場合を-側のずれとした。また、角度フィルタを作用させた場合と、角度フィルタを作用させない場合とについて、同じ評価を行った。
【0116】
評価の結果、グラフ51に示すように、角度フィルタを作用させないと、反射点Pは、真値に対して+側にずれる傾向があることがわかった。一方、角度フィルタを作用させると、反射点Pは、真値の位置に高いピークを呈することがわかった。また、角度フィルタを作用させると、反射点Pのばらつきがより小さくなることがわかった。
【0117】
(第1の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第1の実施形態に係る車両用測距装置10aは、車両20に搭載されて、当該車両20から周囲の障害物までの距離を測定するものであって、送信波が出力された第1の時刻と、当該送信波の反射波が検出された第2の時刻とに基づいて、障害物までの距離を計測する測距部31と、測距部31が送信波を出力した車両20の位置を特定する車両位置特定部32(位置特定部)と、測距部31が計測した距離と車両位置特定部32が特定した車両20の位置とを、時刻tに関連付けて記憶する測距値および車両位置記憶部33(記憶部)と、測距値および車両位置記憶部33が記憶した距離と車両20の位置とに基づいて、車両20の異なる位置のそれぞれで計測された距離が、障害物の同一の反射点Pまでの距離であると仮定した場合に、当該反射点Pの座標と、車両位置特定部32が特定した車両20の位置から反射点Pに向かう方位角θとを算出する反射点位置算出部34と、反射点Pのうち誤った反射点Pとして除去する反射点を、車両20の異なる位置における方位角θの変化に基づいて決定する角度フィルタ演算部36(フィルタ演算部)と、を備える。したがって、ターゲットの形状とターゲットの位置とを正確に検知することができる。
【0118】
また、第1の実施形態に係る車両用測距装置10aにおいて、角度フィルタ演算部36(フィルタ演算部)は、車両位置特定部32が特定した、車両20の少なくとも異なる2つの位置において、反射点位置算出部34が算出した方位角θが、車両20の進行方向に応じた単調増加傾向または単調減少傾向を示さない場合に、前記位置のうち、最新の位置において検出された反射点Pを除去する。したがって、ターゲットの位置を示す反射点Pを簡単かつ確実に検知することができる。
【0119】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示に係る車両用測距装置の第2の実施形態について説明する。
【0120】
第2の実施形態の車両用測距装置10bは、第1の実施形態で説明した車両用測距装置10aと同じハードウエア構成を有し、角度フィルタ処理の内容が異なる。
【0121】
(車両用測距装置が行う処理の概要)
図14Aと
図14Bを用いて、車両用測距装置10bが行う角度フィルタ処理の概要を説明する。
図14Aは、第2の実施形態の車両用測距装置が行う角度フィルタ処理の概要を示す第1の図である。
図14Bは、第2の実施形態の車両用測距装置が行う角度フィルタ処理の概要を示す第2の図である。
【0122】
図14Aのグラフ52は、計測された方位角θ
nの時間推移の一例を示す。なお、
図14Aの横軸は、
図10の説明と整合をとるために、時刻tにおいて計測された方位角θ(t)を指し示すデータインデックスnを表す。第1の実施形態で説明した車両用測距装置10aは、
図10に示した角度フィルタを作用させることによって、グラフ52における反射点r1,r2,r3を除去する。しかしながら、反射点r3は、次の点群の単調増加の開始点であるため、削除しないのが望ましい。車両用測距装置10bは、反射点r3のように、単調増加傾向を示す点群の開始点を除去しない角度フィルタを作用させるものである。
【0123】
即ち、車両用測距装置10bによると、
図14のグラフ53に示すように、反射点r1,r2のみが除去される。そして、反射点r3は除去されずに残る。
【0124】
(車両用測距装置の機能構成)
図15を用いて、車両用測距装置10bの機能構成を説明する。
図15は、第2の実施形態の車両用測距装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0125】
車両用測距装置10bの機能構成は、車両用測距装置10aの機能構成(
図8参照)とほぼ同じであるが、方位角記憶部35の代わりに反射点座標および方位角記憶部65を備える点と、角度フィルタ演算部36の代わりに角度フィルタ演算部66を備える点が異なる。
【0126】
反射点座標および方位角記憶部65は、反射点Pの座標と方位角θを時刻tとを関連付けた方位角データファイル12cを記憶部12に記憶する。
【0127】
角度フィルタ演算部66は、車両20の異なる位置における方位角θの変化に基づいて、反射点Pのうち不適切な反射点Pを除去する。なお、角度フィルタ演算部66は、本開示におけるフィルタ演算部の一例である。角度フィルタ演算部66は、方位角の推移判定部66aと角度フィルタ実行部36bとを備える。
【0128】
方位角の推移判定部66aは、時刻tの経過による方位角θの推移が、車両20の進行方向に応じた単調増加傾向または単調減少傾向を示すかを判定する。なお、方位角の推移判定部66aは、現在時刻と、1時刻前の時刻と、2時刻前の時刻の少なくとも3時刻における方位角θの推移を判定する点が、車両用測距装置10aの角度フィルタ演算部36が備える方位角の推移判定部36aと異なる。
【0129】
(角度フィルタ処理の流れ)
図16を用いて、車両用測距装置10bが行う角度フィルタ処理の流れを説明する。
図16は、第2の実施形態の車両用測距装置が行う角度フィルタ処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、車両用測距装置10bが行う処理全体の流れは、
図9で説明したフローチャートと同じであるため、説明は省略する。
【0130】
方位角の推移判定部66aは、反射点位置算出部34が算出した、現在の方位角θnを取得する(ステップS41)。
【0131】
次に、方位角の推移判定部66aは、反射点座標および方位角記憶部65が記憶している、1時刻前の方位角θn-1を取得する(ステップS42)。
【0132】
方位角の推移判定部66aは、方位角θの差分値Δθn=θn-θn-1を算出する(ステップS43)。
【0133】
方位角の推移判定部66aは、方位角θの差分値Δθ
nの絶対値|Δθ
n|が、方位角閾値θth以下であるかを判定する(ステップS44)。方位角θの差分値Δθ
nの絶対値|Δθ
n|が、方位角閾値θth以下であると判定される(ステップS44:Yes)と、車両用測距装置10bは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。一方、方位角θの差分値Δθ
nの絶対値|Δθ
n|が、方位角閾値θth以下であると判定されない(ステップS44:No)と、ステップS45に進む。
【0134】
ステップS44において、方位角θの差分値Δθnの絶対値|Δθn|が、方位角閾値θth以下であると判定されないと、車両位置特定部32は、車両20が前進しているか後退しているかを判定する(ステップS45)。車両20が前進していると判定されるとステップS46に進む。一方、車両20が後退していると判定されるとステップS50に進む。
【0135】
ステップS45において、車両20が前進していると判定されると、方位角の推移判定部66aは、方位角θの差分値Δθnが0未満であるかを判定する(ステップS46)。方位角θの差分値Δθnが0未満であると判定される(ステップS46:Yes)とステップS47に進む。一方、方位角θの差分値Δθnが0未満であると判定されない(ステップS46:No)と、ステップS48に進む。
【0136】
一方、ステップS45において、車両20が後退していると判定されると、方位角の推移判定部66aは、方位角θの差分値Δθnが0よりも大きいかを判定する(ステップS50)。方位角θの差分値Δθnが0よりも大きいと判定される(ステップS50:Yes)とステップS47に進む。一方、方位角θの差分値Δθnが0よりも大きいと判定されない(ステップS50:No)と、ステップS51に進む。
【0137】
ステップS46において、方位角θの差分値Δθ
nが0未満であると判定されるか、または、ステップS50において、方位角θの差分値Δθ
nが0よりも大きいと判定されると、角度フィルタ実行部36bは、方位角θ
nに対応する反射点Pを除去する(ステップS47)。その後、車両用測距装置10bは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0138】
一方、ステップS46において、方位角θの差分値Δθ
nが0未満であると判定されないと、方位角の推移判定部66aは、方位角θの差分値Δθ
n-1が0未満であるかを判定する(ステップS48)。ここで、Δθ
n-1=θ
n-1-θ
n-2である。方位角θの差分値Δθ
n-1が0未満であると判定される(ステップS48:Yes)とステップS49に進む。一方、方位角θの差分値Δθ
n-1が0未満であると判定されない(ステップS48:No)と、車両用測距装置10bは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0139】
ステップS48において、方位角θの差分値Δθ
n-1が0未満であると判定されると、角度フィルタ実行部36bは、方位角θ
n-1に対応する反射点Pを元に戻す(ステップS49)。その後、車両用測距装置10bは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0140】
ステップS50に戻り、ステップS50において、方位角θの差分値Δθ
nが0よりも大きいと判定されないと、方位角の推移判定部66aは、方位角θの差分値Δθ
n-1が0よりも大きいかを判定する(ステップS51)。ここで、Δθ
n-1=θ
n-1-θ
n-2である。方位角θの差分値Δθ
n-1が0よりも大きいと判定される(ステップS51:Yes)とステップS52に進む。一方、方位角θの差分値Δθ
n-1が0よりも大きいと判定されない(ステップS51:No)と、車両用測距装置10bは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0141】
ステップS51において、方位角θの差分値Δθ
n-1が0よりも大きいと判定されると、角度フィルタ実行部36bは、方位角θ
n-1に対応する反射点Pを元に戻す(ステップS52)。その後、車両用測距装置10bは角度フィルタ処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0142】
(第2の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第2の実施形態に係る車両用測距装置10bにおいて、角度フィルタ演算部66(フィルタ演算部)は、除去された反射点Pのうち、当該反射点Pの方位角θn-2と次のタイミングで検出された反射点Pの方位角θn-1とが、車両20の進行方向に応じた単調増加特性または単調減少特性を示す場合に、除去された反射点Pを元に戻す。したがって、方位角θが単調増加特性を呈する最初の反射点Pを、除去せずに残すことができる。これにより、正しく検出された反射点Pを不用意に除去することがないため、駐車空間をより正確に検出することができる。
【0143】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示に係る車両用測距装置の第3の実施形態について説明する。
【0144】
第3の実施形態の車両用測距装置10cは、第1の実施形態で説明した車両用測距装置10aと同じハードウエア構成を有する。そして、車両用測距装置10cは、角度フィルタ処理の代わりに、過去に計測された方位角θの推移に基づいて、現在の方位角θを推定するトラッキング処理を行う。更に、車両用測距装置10cは、トラッキング処理によって推定された方位角θの推定値と、実際に計測された方位角θとを比較して、現在の方位角θを決定する。その際、推定された方位角と実際の方位角との差分の大きさに基づいて、前述した角度フィルタを作用させるか否かが判定される。即ち、車両用測距装置10cは、トラッキング処理と角度フィルタ処理とを行う点が、車両用測距装置10a,10bと異なる。
【0145】
(車両用測距装置が行う処理の概要)
図17Aから
図17Cを用いて、車両用測距装置10cが行う処理の概要を説明する。
図17Aは、第3の実施形態の車両用測距装置が行うトラッキング処理の概要を示す第1の図である。
図17Bは、第3の実施形態の車両用測距装置が行うトラッキング処理の概要を示す第2の図である。
図17Cは、第3の実施形態の車両用測距装置が行うトラッキング処理の概要を示す第3の図である。
【0146】
図17Aに示すグラフ54は、車両用測距装置10cが計測した方位角θ
nの時間推移の一例を示す。
図17Aの横軸は、時刻tにおいて計測された方位角θ(t)を指し示すデータインデックスnを表す。即ち、時間の推移とともに、(n-3)番目の点a1、(n-2)番目の点a2、(n-1)番目の点a3、n番目の点a4が順に計測されたとする。
【0147】
車両用測距装置10cは、(n-1)番目の点a3が計測された際に、点a3を含む過去3点の方位角θ
n、即ち、点a1、点a2、点a3の方位角θに基づいて、n番目の点a4の方位角θ
nを予測する。点a4における方位角θ
nの予測は、例えば線形予測によって行えばよい。推定された方位角θ
nを、推定方位角θs、即ち、
図17Aにおける点e1とする。また、実際に計測されたn番目の方位角θ
n、即ち、
図17Aにおける点a4の方位角を、方位角θaとする。なお、推定方位角θsは、本開示における推定値の一例である。
【0148】
車両用測距装置10cは、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|を計算する。そして、|θs-θa|と、予め設定された差分値閾値Dthとを比較する。なお、差分値閾値Dthは、本開示における閾値の一例である。
【0149】
|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下である場合、車両用測距装置10cは、
図17Bのグラフ55に示すように、方位角θa(点a4)と推定方位角θs(点e1)とにそれぞれ所定の重みを付けた演算値を算出する。例えば、方位角θaに重みαを付けて、推定方位角θsに重みβを付けて、式(1)によって、方位角θ
nを算出する。なお、α+β=1とする。
【0150】
θn=αθa+βθs・・・(1)
【0151】
例えば、α=β=0.5の場合、方位角θnは、方位角θaと推定方位角θsとの平均値となる。なお、α、βの値は適宜設定される。αを大きく設定すれば、方位角θnは、実際に計測された方位角θaに係る反射点Pに近い位置に補正される。一方、βを大きく設定すれば、方位角θnは、推定方位角θsに係る反射点Pに近い位置に補正される。
【0152】
そして、車両用測距装置10cは、式(1)によって算出した方位角θ
n、即ち、
図17Bにおける点a5を、n番目の反射点Pとする。このとき、車両用測距装置10cは、点a5、即ちn番目の反射点Pは、過去の反射点と同一反射点であると判定して、前述した角度フィルタをスルーさせる。
【0153】
一方、|θs-θa|が、差分値閾値Dthよりも大きい場合、車両用測距装置10cは、推定方位角θsをn番目の反射点Pとする。即ち、
図17Cのグラフ56に示すように、点e1を点a5とする。
【0154】
なお、車両用測距装置10cは、実際に計測された点a4を、前述した角度フィルタを作用させることによって除去する。
【0155】
図17A、
図17B、
図17Cは、車両20が前進している際に計測された方位角θの推移を示しているが、車両20が後退している場合であっても、車両用測距装置10cは、同様の処理を行う。
【0156】
(車両用測距装置の機能構成)
図18を用いて、車両用測距装置10cの機能構成を説明する。
図18は、第3の実施形態の車両用測距装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0157】
車両用測距装置10cの機能構成は、車両用測距装置10aの機能構成(
図8参照)とほぼ同じであるが、角度フィルタ演算部36の代わりに、角度フィルタ演算部67を備える点が異なる。角度フィルタ演算部67は、過去に計測された複数の方位角θの変化に基づいて、現在の方位角θを推定する。そして、推定された推定方位角θsと、実際に計測された方位角θaとの乖離の大きさに基づいて、現在の方位角を推定する。なお、角度フィルタ演算部66は、本開示におけるフィルタ演算部の一例である。角度フィルタ演算部67は、方位角推定部67aと、方位角判定部67bと、角度フィルタ実行部67cとを備える。
【0158】
方位角推定部67aは、過去の複数の、車両20の異なる位置における方位角θの値に基づいて、車両20の次の位置における推定方位角θsを推定する。
【0159】
方位角判定部67bは、方位角推定部67aによる推定方位角θsと、車両20の次の位置における実際の方位角θaとの差分値|θs-θa|と差分値閾値Dthとの大小関係に基づいて、車両20の次の位置における方位角を、推定方位角θsと実際の方位角θaとに基づく方位角に補正するか、推定方位角θsに置換するかを判定する。また、方位角判定部67bは、車両20の次の位置における方位角を、推定方位角θsと実際の方位角θaとに基づく方位角に補正すると判定された場合に、推定方位角θsと実際の方位角θaとに所定の重み付けを行うことによって、車両20の次の位置における実際の方位角θaを補正する。また、方位角判定部67bは、車両20の次の位置における方位角を推定方位角θsに置換すると判定された場合に、車両20の次の位置における方位角を推定方位角θsに置換する。なお、方位角判定部67bは、本開示における判定部の一例である。
【0160】
角度フィルタ実行部67cは、方位角判定部67bが、車両20の次の位置における方位角を、推定方位角θsに置換すると判定した場合に、角度フィルタを作用させることによって、車両20の次の位置において計測された実際の方位角θaに係る反射点Pを除去する。
【0161】
(トラッキング処理の流れ)
図19を用いて、車両用測距装置10cが行うトラッキング処理の流れを説明する。なお、車両用測距装置10cが行うトラッキング処理と角度フィルタ処理とを併せて、トラッキング処理と呼ぶことにする。
図19は、第3の実施形態の車両用測距装置が行うトラッキング処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、車両用測距装置10cが行う処理全体の流れは、
図9で説明したフローチャート(メインルーチン)において、角度フィルタ処理の代わりに、トラッキング処理(角度フィルタ処理を含む)を行う構成である。
【0162】
方位角推定部67aは、推定方位角θsを算出する(ステップS61)。
【0163】
方位角判定部67bは、反射点位置算出部34から、最新の方位角θaを取得する(ステップS62)。
【0164】
方位角判定部67bは、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あるかを判定する(ステップS63)。推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定される(ステップS63:Yes)とステップS64に進む。一方、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定されない(ステップS63:No)とステップS65に進む。
【0165】
ステップS63において、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定されると、方位角判定部67bは、推定方位角θsと実際の方位角θaとに所定の重み付けを行うことによって、実際の方位角θaを補正する(ステップS64)。その後、車両用測距装置10cはトラッキング処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0166】
一方、ステップS63において、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定されないと、方位角判定部67bは、推定方位角θsを方位角θaで置換する(ステップS65)。
【0167】
角度フィルタ実行部67cは、方位角θaに係る反射点Pを除去する(ステップS66)。その後、車両用測距装置10cはトラッキング処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0168】
なお、
図19に示すフローチャートは、車両用測距装置10cを備えた車両20が前進している場合であっても、後退している場合であっても、同様に作用する。
【0169】
(第3の実施形態の変形例(1))
車両用測距装置10cが行うトラッキング処理は、
図19のフローチャートに示す流れに限定されるものではない。
【0170】
例えば、
図19においては、差分値閾値Dthを、予め設定した定数としたが、推定方位角θsと、実際の方位角θaとの大小関係に応じた差分値閾値Dthを設定してもよい。本変形例の車両用測距装置10cの機能構成は、
図18で説明した機能構成と同じである。但し、方位角判定部67bが、推定方位角θsと、実際の方位角θaとの大小関係に応じて差分値閾値Dthを設定する機能を有する点のみが異なる。
【0171】
(トラッキング処理の流れ)
以下、
図20を用いて、推定方位角θsと、実際の方位角θaとの大小関係に応じた差分値閾値Dthを設定してトラッキング処理を行う具体例を説明する。
図20は、第3の実施形態の変形例(1)の車両用測距装置が行うトラッキング処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図20は、車両20が前進している場合について説明するものである。なお、車両20が後退している場合については後述する。
【0172】
方位角推定部67aは、推定方位角θsを算出する(ステップS71)。
【0173】
方位角判定部67bは、反射点位置算出部34から、最新の方位角θaを取得する(ステップS72)。
【0174】
方位角判定部67bは、推定方位角θsが最新の方位角θa以上であるかを判定する(ステップS73)。推定方位角θsが最新の方位角θa以上であると判定される(ステップS73:Yes)とステップS74に進む。一方、推定方位角θsが最新の方位角θa以上であると判定されない(ステップS73:No)とステップS75に進む。
【0175】
ステップS73において、推定方位角θsが最新の方位角θa以上であると判定されると、方位角判定部67bは、差分値閾値Dthを、通常よりも厳しめに設定する(ステップS74)。なお、差分値閾値Dthを通常よりも厳しめに設定するとは、推定方位角θsと最新の方位角θaとが同一の反射点Pであると見做す範囲を狭くすることに相当する。その後、処理はステップS76に進む。
【0176】
一方、ステップS73において、推定方位角θsが最新の方位角θa以上であると判定されないと、方位角判定部67bは、差分値閾値Dthを、通常よりも緩めに設定する(ステップS75)。なお、差分値閾値Dthを通常よりも緩めに設定するとは、推定方位角θsと最新の方位角θaとが同一の反射点Pであると見做す範囲を広くすることに相当する。その後、処理はステップS76に進む。
【0177】
なお、車両20が後退している場合は、ステップS73で行う判定方法が異なる。即ち、車両20が後退している場合、方位角判定部67bは、ステップS73において、推定方位角θsが最新の方位角θa以下であるかを判定する。そして、推定方位角θsが最新の方位角θa以下であると判定される(ステップS73:Yes)とステップS74に進む。一方、推定方位角θsが最新の方位角θa以下であると判定されない(ステップS73:No)とステップS75に進む。
【0178】
説明を、車両20が前進している場合に戻す。ステップS74またはステップS75に続いて、方位角判定部67bは、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あるかを判定する(ステップS76)。推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定される(ステップS76:Yes)とステップS77に進む。一方、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定されない(ステップS76:No)とステップS78に進む。
【0179】
ステップS76において、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定されると、方位角判定部67bは、推定方位角θsと実際の方位角θaとに所定の重み付けを行うことによって、実際の方位角θaを補正する(ステップS77)。その後、車両用測距装置10cはトラッキング処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0180】
一方、ステップS76において、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定されないと、方位角判定部67bは、推定方位角θsを方位角θaで置換する(ステップS78)。
【0181】
角度フィルタ実行部67cは、方位角θaに係る反射点Pを除去する(ステップS79)。その後、車両用測距装置10cはトラッキング処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0182】
(第3の実施形態の変形例(2))
次に、
図21を用いて、車両用測距装置10cが行うトラッキング処理の別の変形例を説明する。
図21は、第3の実施形態の変形例(2)の車両用測距装置が行うトラッキング処理の流れの一例を示すフローチャートである。本変形例の車両用測距装置10cは、第3の実施形態で説明した、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が差分値閾値Dth以下である場合(
図19のステップS63がYesの場合)に、車両20が前進している際には、方位角θが、時刻とともに増加傾向となるように、また、車両20が後退している際には、方位角θが、時刻とともに減少傾向となるように、推定方位角θsに、より高い重みを付ける。
【0183】
本変形例の車両用測距装置10cの機能構成は、
図18で説明した機能構成と同じである。但し、方位角判定部67bが、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が差分値閾値Dth以下である場合に、推定方位角θsに、より高い重みを付ける機能を有する点が異なる。
【0184】
(トラッキング処理の流れ)
以下、
図21を用いて、トラッキング処理の具体例を説明する。
図21は、第3の実施形態の変形例(2)の車両用測距装置が行うトラッキング処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0185】
方位角推定部67aは、推定方位角θsを算出する(ステップS81)。
【0186】
方位角判定部67bは、反射点位置算出部34から、最新の方位角θaを取得する(ステップS82)。
【0187】
方位角判定部67bは、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あるかを判定する(ステップS83)。推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定される(ステップS83:Yes)とステップS84に進む。一方、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定されない(ステップS83:No)とステップS85に進む。
【0188】
ステップS83において、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定されると、方位角判定部67bは、推定方位角θsに、より高い重み付けを行って、実際の方位角θaを補正する(ステップS84)。その後、車両用測距装置10cはトラッキング処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0189】
一方、ステップS83において、推定方位角θsと方位角θaとの差分値の絶対値|θs-θa|が、差分値閾値Dth以下あると判定されないと、方位角判定部67bは、推定方位角θsを方位角θaで置換する(ステップS85)。
【0190】
角度フィルタ実行部67cは、方位角θaに係る反射点Pを除去する(ステップS86)。その後、車両用測距装置10cはトラッキング処理を終了して、
図9のメインルーチンに戻る。
【0191】
なお、
図21に示すフローチャートは、車両用測距装置10cを備えた車両20が前進している場合であっても、後退している場合であっても、同様に作用する。
【0192】
以上、第3の実施形態の2つの変形例について説明したが、これらの変形例は、組み合わせて実行してもよい。即ち、推定方位角θsと実際の方位角θaとの大小関係に応じた差分値閾値Dthを設定した後で、|θs-θa|が、設定された差分値閾値Dth以下である場合には、推定方位角θsに、より高い重みを付けて方位角θaを補正してもよい。
【0193】
(第3の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第3の実施形態に係る車両用測距装置10cにおいて、角度フィルタ演算部67(フィルタ演算部)は、更に、過去の複数の、車両20の異なる位置における方位角θの値に基づいて、車両20の次の位置における推定方位角θs(推定値)を推定する方位角推定部67aと、方位角推定部67aが推定した推定方位角θsと、車両20の次の位置における実際の方位角θaとの差分値|θs-θa|と差分値閾値Dthとの大小関係に基づいて、車両20の次の位置における方位角θaを、推定方位角θsと実際の方位角θaとに基づく方位角に補正するか、推定方位角θsに置換するかを判定する方位角判定部67b(判定部)と、を備える。したがって、過去の測距結果に基づいて、次のタイミングにおける測距結果を予測することができるため、処理の効率化を図ることができる。
【0194】
また、第3の実施形態の変形例(1)に係る車両用測距装置10cにおいて、方位角判定部67b(判定部)は、推定方位角θs(推定値)と、車両20の次の位置における実際の方位角θaとの大小関係に基づいて、差分値閾値Dth(閾値)を設定する。したがって、簡易な演算処理で、トラッキングを行うことができる。
【0195】
また、第3の実施形態の変形例(1)に係る車両用測距装置10cにおいて、方位角判定部67b(判定部)は、車両20が前進している場合であって、推定方位角θs(推定値)が、車両20の次の位置における実際の方位角θa以上である場合に、差分値閾値Dth(閾値)を、通常よりも小さく設定して、車両20が前進している場合であって、推定方位角θsが、車両20の次の位置における実際の方位角θaよりも小さい場合に、差分値閾値Dthを、通常よりも大きく設定する。したがって、車両20の移動状態に応じて、確実なトラッキングを行うことができる。
【0196】
また、第3の実施形態の変形例(1)に係る車両用測距装置10cにおいて、方位角判定部67b(判定部)は、車両20が後退している場合であって、推定方位角θs(推定値)が、車両20の次の位置における実際の方位角θa以下である場合に、差分値閾値Dth(閾値)を、通常よりも小さく設定して、車両20が後退している場合であって、推定方位角θsが、車両20の次の位置における実際の方位角θaよりも大きい場合に、差分値閾値Dthを、通常よりも大きく設定する。したがって、車両20の移動状態に応じて、確実なトラッキングを行うことができる。
【0197】
また、第3の実施形態の変形例(2)に係る車両用測距装置10cにおいて、方位角判定部67b(判定部)は、車両20の次の位置における方位角を、推定方位角θs(推定値)と実際の方位角θaとに基づく方位角に補正する際に、補正された方位角が、車両20の進行方向に応じた単調増加傾向または単調減少傾向を示すように、推定方位角θsと実際の方位角θaとに重み付けを行う。したがって、方位角θが、車両20の移動状態に応じた単調増加傾向または単調減少傾向を示しやすくなるようにトラッキングを行うことができる。
【0198】
以上、本開示の車両用測距装置を駐車支援装置に適用する場合について、種々の実施形態を説明したが、本開示の適用範囲は、駐車支援装置に限定されるものではない。例えば、移動中の車両20の横に存在する物標までの距離を測距するのが必要なシーンであれば、本開示の車両用測距装置を適用することができる。具体的には、車両の右左折時に、歩行者や自転車、オートバイ等の存在を検出して報知を行う巻き込み防止装置等にも適用することが可能である。
【0199】
なお、前述した実施形態では、1つの超音波センサ14を移動させて、異なる時刻tで得た複数の測距値を用いて、時系列三角測量によって反射点Pの位置を特定した。これは、異なる複数の測距センサで同時刻に得た測距値を用いて、反射点Pの位置を特定してもよい。この場合、各測距センサから反射点Pに向かう方位角θが既知であれば、三角測量によって、反射点Pの位置を特定することができる。そして、方位角の時間推移を見ることによって、前述した角度フィルタを適用することができる。
【0200】
例えば、測距センサとしてLIDARを用いれば、測距値とともに反射点Pの方位角を得ることができるため、測距範囲が重複するような状態で異なる位置に設置した複数のLIDARで、同時刻に反射点Pまでの測距値と方位角とを測定することができる。そして、方位角の時間推移を見ることによって、前述した角度フィルタを適用することができる。
【0201】
また、ミリ波レーダは、センサ自体に複数のアンテナを所持しているため、1度の計測で反射点Pの方位角を得ることができる。このようなミリ波レーダを車両20に設置して計測を行えば、方位角の時間推移を見ることによって、前述した角度フィルタを適用することができる。
【0202】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0203】
10a,10b,10c 車両用測距装置
14 超音波センサ
15 車速センサ
16 操舵角センサ
20,21,22 車両
31 測距部
32 車両位置特定部(位置特定部)
33 測距値および車両位置記憶部(記憶部)
34 反射点位置算出部
35 方位角記憶部
36,66,67 角度フィルタ演算部(フィルタ演算部)
36a,66a 方位角の推移判定部
36b,67c 角度フィルタ実行部
65 反射点座標および方位角記憶部
67a 方位角推定部
67b 方位角判定部(判定部)
80 駐車場
Dth 差分値閾値(閾値)
P,r1,r2,r3 反射点
R 放射範囲
θ,θ(t),θn 方位角
θs 推定方位角(推定値)
θth 方位角閾値
Δθ 差分値