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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008377
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】タラノキの酵素処理物又はその抽出物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20230112BHJP
   A61K 36/25 20060101ALI20230112BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230112BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230112BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230112BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20230112BHJP
   C12P 1/02 20060101ALI20230112BHJP
   C12N 9/42 20060101ALN20230112BHJP
   C12N 9/50 20060101ALN20230112BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20230112BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/25
A61P17/00
A61P43/00 105
A61Q19/00
A61Q19/08
A61P17/16
C12P1/02 A
C12N9/42 ZNA
C12N9/50
C12N1/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111901
(22)【出願日】2021-07-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1-A.刊行物名:化学工業日報2021年(令和3年)5月10日第11面 発行日:令和3年5月10日 1-B.掲載アドレス:https://www.chemicaldaily.co.jp/%E7%89%87%E5%80%89%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%97%E3%82%A2%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%80%81%E3%82%BF%E3%83%A9%E3%83%8E%E3%82%AD%E7%94%B1%E6%9D%A5%E3%81%AE%E5%8C%96%E7%B2%A7%E5%93%81%E5%8E%9F%E6%96%99%E3%80%81/ 掲載日:令和3年5月10日 2.企業への紹介 3.掲載アドレス:https://www.katakuraco-op.com/business/cosmetic/shousai660.html https://www.katakuraco-op.com/business/cosmetic/shousai659.html 掲載日:令和3年6月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 4-A.展示会名:第10回化粧品産業技術展(CITE JAPAN2021) 展示日:令和3年5月17日~令和3年5月21日(準備日含む) 4-B.掲載アドレス:https://drive.google.com/file/d/1N-bSYb575z-olmmtsktR9QGEq1NMyV6P/view 掲載日:令和3年5月19日 4-C.掲載アドレス:https://unifiedsearch.jcdbizmatch.jp/CITEJapan2021/jp/cite_japan/search?page=0&items=1&order=1 https://unifiedsearch.jcdbizmatch.jp/CITEJapan2021/jp/cite_japan/search?page=0&items=1&order=1&k=%u7247%u5009 https://unifiedsearch.jcdbizmatch.jp/CITEJapan2021/jp/cite_japan/details/DGVr60spcuA#product2 https://unifiedsearch.jcdbizmatch.jp/CITEJapan2021/jp/sem/cite_japan https://unifiedsearch.jcdbizmatch.jp/CITEJapan2021/jp/sem/cite_japan/seminar_details/6F7BpLelAzM 掲載日:令和3年2月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000240950
【氏名又は名称】片倉コープアグリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正明
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 誠
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 倫
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B050CC08
4B050DD03
4B050KK20
4B050LL05
4B064AH19
4B064CA05
4B064CA21
4B064CB05
4B064CB07
4B064DA01
4B064DA20
4B065AA60X
4B065AA67X
4B065AA70X
4B065AC14
4B065CA31
4B065CA44
4B065CA50
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB052
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC482
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD202
4C083AD532
4C083AD642
4C083BB51
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083EE06
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C088AB17
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA03
4C088CA04
4C088CA05
4C088CA25
4C088MA02
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB21
4C088ZC01
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】本発明の一以上の実施形態は、タラノキに由来する酵素処理物又はその抽出物及びその製造方法、並びに、それを有効成分とし、皮膚の老化防止等の有益な作用を有する新規組成物を提供する。
【解決手段】本発明の一以上の実施形態は、タラノキ(Aralia elata)の、セルラーゼ、キチナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1以上の酵素による処理物又はその抽出物、前記処理物又は抽出物を含む組成物、並びに、前記処理物又は抽出物の製造方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タラノキ(Aralia elata)の、セルラーゼ、キチナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1以上の酵素による処理物又はその抽出物。
【請求項2】
前記処理物が、タラノキの、前記酵素を産出する微生物による発酵生産物である、請求項1に記載の処理物又は抽出物。
【請求項3】
前記微生物が、アスペルギルス属、トリコデルマ属又はペニシリウム属に属する1種以上の微生物である、請求項2に記載の処理物又は抽出物。
【請求項4】
前記抽出物が、前記処理物の、水、親水性有機溶媒、及び、水と親水性有機溶媒との混合溶媒かならなる群から選択される1以上の溶媒による抽出物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理物又は抽出物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の処理物又は抽出物を含む組成物。
【請求項6】
皮膚外用剤である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
皮膚化粧料である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
抗老化のための、請求項5~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
20Sプロテアソームの活性を向上させるための、請求項5~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
サーチュインI遺伝子の発現を促進するための、請求項5~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
タラノキ(Aralia elata)を、セルラーゼ、キチナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1以上の酵素による反応に供して、タラノキの前記酵素による処理物を得る酵素処理工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の処理物又は抽出物の製造方法。
【請求項12】
前記酵素処理工程が、タラノキを含む培地中で、前記酵素を産出する微生物を培養して、タラノキの前記微生物による発酵生産物を得ることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記微生物が、アスペルギルス属、トリコデルマ属又はペニシリウム属に属する1種以上の微生物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記処理物を、水、親水性有機溶媒、及び、水と親水性有機溶媒との混合溶媒かならなる群から選択される1以上の溶媒による抽出処理に供して抽出物を得る抽出工程を更に含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タラノキの酵素処理物又はその抽出物及びその製造方法、並びに、前記処理物又は抽出物を含む、皮膚外用剤、皮膚化粧料等として用いることができる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢(エイジング)ケアや加齢による障害の抑制は、女性、男性を問わず関心が高い事項であり、アンチエイジング(老化抑制)や老化防止の効果をうたった化粧料やサプリメント、飲料、食料品等の様々な商品が流通している。加齢とともに皮膚における皮脂や水分の量が減少すると、皮膚表面の角質層の保湿力が失われ、乾燥などによる小ジワや肌のかさつきが生じやすくなるといわれている。
【0003】
また活性酸素による酸化傷害は老化の大きな原因の一つである。活性酸素は非常に反応性が高く、生体の組織成分を酸化することで変性、傷害する。活性酸素による酸化傷害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体病、筋萎縮性側索硬化症、白内障、動脈硬化、糖尿病性腎症、心筋梗塞、リウマチなどの原因になっており、皮膚における老化現象すなわち、しわ、たるみ、くすみ、しみなどにも大きく関与している(非特許文献1)。
【0004】
活性酸素増加の要因として、加齢、過度の運動、紫外線暴露、精神的ストレスなどがあげられるが、活性酸素の増加は、生体内の酸化タンパク質、いわゆる異常タンパク質の蓄積の原因となり、前述の疾患を引き起こす(非特許文献2)。特に皮膚においては紫外線暴露による酸化傷害の影響が大きく、表皮角化細胞や皮膚線維芽細胞などのDNA損傷や、皮膚の弾性成分であるエラスチンやコラーゲンの分解が起こり、しわやしみを促進する(非特許文献3)。
【0005】
活性酸素による酸化障害で生じた生体内の異常タンパク質を除去する物質としては、酵素であるプロテアソームが知られている。近年その生理機能研究が進められているプロテアソームは巨大な多成分複合体であり、タンパク質が立体構造を形成する過程で正常な折り畳みや分子集合を妨げる異常タンパク質を除去し、タンパク質の品質管理の役割を担う。皮膚においては加齢とともにプロテアソーム活性が低下し、酸化コラーゲンが増加することが知られている(非特許文献4)。プロテアソーム活性促進による老化防止効果剤として、皮膚化粧料への応用例としては、シリビン、シラン抽出物、アヤメ抽出物から選ばれる1種または2種の異常タンパク除去剤(特許文献1)、マンネンタケの溶媒抽出物配合物(特許文献2)、バラ科に属するモモの抽出物(特許文献3)がそれぞれ紹介されている。
【0006】
また、近年老化防止の観点から着目されるサーチュインは、ヒストン脱アセチル化酵素の一種で、遺伝子の転写制御においてテロメアの保護などの重要な役割を果たしており、ヒトでは、現在SirT1-7の7種類が同定されている。特に、サーチュインI(SIRT1)は、抗老化作用、糖尿病改善作用、心血管保護作用、腎疾患改善作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用、神経保護作用等、様々な機能を有することが明らかになった。また、SIRT1脱アセチル化活性の増強因子として、レスベラトロールやケルセチンなどの化合物を抗老化剤、糖尿病治療薬、心血管疾患治療薬、神経系疾患治療薬、抗炎症剤への研究がなされている(非特許文献4)。
【0007】
サーチュインI(SIRT1)活性化剤の皮膚化粧料への応用例としては、カッコンエキスを有効成分とする化粧料(特許文献4)、にはゴヨウマツ由来のリグニン配糖体を有効成分とする活性化剤(特許文献5)、キウイ及び/又はセンネンボクの抽出物を配合した皮膚化粧料(特許文献6)が示されている。
【0008】
生薬の原料としても利用されるタラノキ(Aralia elata)は北海道・本州・四国・九州・沖縄のほか、朝鮮半島、中国、千島列島、サハリンの東アジア地域に分布するウコギ科タラノキ属の落葉低木であり、新芽を「たらのめ」と呼び食用に供されている。
【0009】
古来よりタラノキは樹皮及び根皮がそれぞれ生薬として用いられ、乾燥させたタラノキ皮を煎じて服用すると、血糖降下、健胃、整腸、糖尿病、腎臓病に効用があるといわれ、服用されてきた。
【0010】
これまでに、これら生薬として薬効を持つタラノキについて、化粧品原料として使用する取り組みが検討され報告されている。例えば特許文献7では、各主成分と共にタラノキエキスを配合した脱毛予防、発毛促進のための養毛化粧料が示されている。特許文献8ではタラノキ抽出物を配合したヒアルロニダーゼ阻害活性を示す化粧品及び食品が示され、当該抽出物の化粧品への配合により皮膚かゆみの改善の可能性が示されている。特許文献9ではタラノキ族を含む植物群からの抽出物を含む治療剤、化粧料についてケラチノサイト増殖抑制効果が示され、ケラチノサイト異常増殖を伴う皮膚の外観変化を抑制する化粧料が示されている。また、特許文献10ではタラノキの粉末や抽出物による肌荒れ改善、炎症防止効果のある化粧料として使用することが示されている。
【0011】
抗老化に関して本開発を進めるに当たり、対照となる試験区試料の調製のため、先行技術検討した。たとえば特許文献11にはゲオトリクム・キャンディダム(Geotricum Candidum)によるスキムミルクを含む培地での培養物が、皮膚におけるシワの軽減や弾力性の回復、シミや肌荒れに対する予防的、治療的効果があると示されており、まだアンチエイジングという言葉が一般的になる前から、皮膚用外用剤への応用が進められている。ゲオトリクム・キャンディダムは今日ガラクトミセス・カンディダスの分類名で知られており、その培養液エキスは抗老化効果があるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007-99650号公報
【特許文献2】特開2002-29996号公報
【特許文献3】特開2016-124827号公報
【特許文献4】特開2010-270012号公報
【特許文献5】特開2014-185170号公報
【特許文献6】特開2020-189802号公報
【特許文献7】特開平3-284614号公報
【特許文献8】特開平6-329544号公報
【特許文献9】特開2010-189287号公報
【特許文献10】特開2010-241779号公報
【特許文献11】特開昭56-36419号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】老化のメカニズムと制御、藤本大三郎編著、株式会社アイピーシー、平成5年6月30日
【非特許文献2】BIO Clinica、11巻、第5号、1996年
【非特許文献3】化粧品の有用性・評価技術の進歩と将来展望、日本化粧品技術者会編、薬事日報社、2001年、共立出版社
【非特許文献4】実験医学 2010年28巻19号 3068-3076頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これら従来の知見によると皮膚化粧料としてのタラノキ抽出物の効果は、主としてタラノキ含有成分のサポニン由来する炎症防止などを期待されるものであり、アンチエイジングや老化防止に寄与する作用、効果については検討されていなかった。また20Sプロテアソーム活性促進剤やサーチュインI(SIRT1)活性化剤への応用についても、ウコギ科の植物やタラノキを原料とした事例については検討されていない。
【0015】
また、生薬としては、タラノキの通常熱水による抽出物が一般的に知られているが、樹皮や樹枝部分はセルロースとヘミセルロースがリグニンと強固な組織を形成している構造であるため、有効成分の抽出量という観点からは効率的な方法ではなく、有効成分抽出効率の向上が望まれていた。
そこで本発明は、タラノキに由来する酵素処理物又はその抽出物及びその製造方法、並びに、それを有効成分とし、皮膚の老化防止等の有益な作用を有する新規組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らが鋭意検討した結果、タラノキの、セルラーゼ、キチナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1以上の酵素を産出する微生物による発酵生産物は、皮膚組織細胞内の老化蛋白の分解を促す20Sプロテアソームの活性を上昇させる作用、SIRT1遺伝子を活性化し発現を促進する作用といった、皮膚の老化を抑制し改善する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下を包含する。
【0017】
(1)タラノキ(Aralia elata)の、セルラーゼ、キチナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1以上の酵素による処理物又はその抽出物。
(2)前記処理物が、タラノキの、前記酵素を産出する微生物による発酵生産物である、(1)に記載の処理物又は抽出物。
(3)前記微生物が、アスペルギルス属、トリコデルマ属又はペニシリウム属に属する1種以上の微生物である、(2)に記載の処理物又は抽出物。
(4)前記抽出物が、前記処理物の、水、親水性有機溶媒、及び、水と親水性有機溶媒との混合溶媒かならなる群から選択される1以上の溶媒による抽出物である、(1)~(3)のいずれかに記載の処理物又は抽出物。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の処理物又は抽出物を含む組成物。
(6)皮膚外用剤である、(5)に記載の組成物。
(7)皮膚化粧料である、(5)に記載の組成物。
(8)抗老化のための、(5)~(7)のいずれかに記載の組成物。
(9)20Sプロテアソームの活性を向上させるための、(5)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(10)サーチュインI遺伝子の発現を促進するための、(5)~(9)のいずれかに記載の組成物。
【0018】
(11)タラノキ(Aralia elata)を、セルラーゼ、キチナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1以上の酵素による反応に供して、タラノキの前記酵素による処理物を得る酵素処理工程を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の処理物又は抽出物の製造方法。
(12)前記酵素処理工程が、タラノキを含む培地中で、前記酵素を産出する微生物を培養して、タラノキの前記微生物による発酵生産物を得ることを含む、(11)に記載の方法。
(13)前記微生物が、アスペルギルス属、トリコデルマ属又はペニシリウム属に属する1種以上の微生物である、(12)に記載の方法。
(14)前記処理物を、水、親水性有機溶媒、及び、水と親水性有機溶媒との混合溶媒かならなる群から選択される1以上の溶媒による抽出処理に供して抽出物を得る抽出工程を更に含む、(11)~(13)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る処理物又は抽出物の好ましい実施形態では、高いプロテアソーム活性向上効果及びサーチュインI(SIRT1)活性化効果を有し、皮膚に対するアンチエイジング(老化抑制)及び老化防止、などの皮膚の状態改善効果を有し、皮膚外用剤又は皮膚化粧料として用いる組成物の有効成分として有用である。
【0020】
特に、所定の酵素を産出する微生物によるタラノキの発酵生産物は、発酵処理をしていないタラノキ抽出物と比較して、高い20Sプロテアソーム活性向上効果及びサーチュインI(SIRT1)発現促進効果を有し、老化防止効果及びアンチエイジング効果などの皮膚の状態改善効果が極めて優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、タラノキの発酵生産物を異なる濃度で含む培地中で培養しUVB照射した線維芽細胞の、20Sプロテアソーム活性の測定結果を示す。
図2図2は、タラノキの発酵生産物を含む培地中で、UVBを照射した条件(UVB(+))、及び、UVBを照射していない条件(通常培養)で培養した正常ヒト線維芽細胞NB1RGBの、サーチュインI(SIRT1)のmRNA発現量の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい一以上の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
1.タラノキの酵素処理物又はその抽出物の特徴
本発明の一以上の実施形態は、タラノキ(Aralia elata)の、セルラーゼ、キチナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1以上の酵素による処理物又はその抽出物及びその製造方法に関する。前記処理物は、特に好ましくは、タラノキの、前記酵素を産出する微生物による発酵生産物である。
【0024】
ここで、原料として用いるタラノキ(Aralia elata)としてはタラノキの樹枝、樹皮、根皮等の部位を利用することができる。タラノキとして、タラの芽栽培用やタラノキ茶用に栽培された原木を用いても良い。タラノキは、樹皮や葉枝が付いたものであってもよい。タラノキとしては、抽出効率向上の観点から乾燥し粉砕又は破砕したものが好ましい。タラノキを乾燥し粉砕又は破砕したものをタラノキの「粉砕物」又は「破砕物」と称する場合がある。
【0025】
粉砕物、破砕物等の形状のタラノキは、酵素処理中の雑菌の繁殖リスクを軽減するために殺菌処理してから酵素反応に供することが好ましい。このとき、粉砕物、破砕物等のタラノキを単独で殺菌処理しても良いし、タラノキを水に分散して滅菌処理しても良い。殺菌処理は、加熱殺菌、紫外線殺菌、放射線殺菌、オゾン殺菌等の任意の方法で行うことができる。例えば、タラノキを含む水は、65℃以上、例えば110~130℃又は120~130℃で加熱殺菌してもよく、一例では121℃で20分間処理することにより殺菌することができる。なお、加熱殺菌後は、少なくとも、酵素の至適温度まで冷却した後に反応に用いることが好ましい。
【0026】
タラノキの処理物は、タラノキを、セルラーゼ、キチナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1以上の酵素による反応に供して、タラノキの前記酵素による処理物を得る酵素処理工程により得ることができる。ここで、酵素処理工程は、微生物由来の市販能酵素をタラノキに作用させる工程であってもよいが、好ましくは、タラノキを含む培地中で、前記酵素を産出する微生物を培養して、タラノキの前記微生物による発酵生産物を得る工程である。前記酵素を産出する微生物としては、糸状菌が好ましく、特に、アスペルギルス属、トリコデルマ属又はペニシリウム属に属する1種以上の微生物が好ましい。2種以上の微生物を組み合わせても良い。アスペルギルス属に属する微生物としては、アスペルギルス・オリゼ、スペルギルス・アクレタス、アスペルギルス・ニガーが好ましい。トリコデルマ属に属する微生物としては、トリコデルマ・リーゼイ、トリコデルマ・アトリビリデが好ましい。ペニシリウム属に属する微生物としては、ペニシリウム・パプロゲニウム、ペニシリウム・デカンデンス、ペニシリウム・フニクロスムが好ましい。前記酵素としては、これらの微生物に由来する酵素であることが好ましいが、これには限定されず、他の微生物に由来する酵素や、動物に由来する酵素であってもよい。
【0027】
続いて、タラノキを含む培地中で、前記酵素を産出する微生物を培養して、タラノキの前記微生物による発酵生産物を得る工程の好ましい実施形態について説明する。
【0028】
タラノキを含む前記培地は、好ましくは、通常の糸状菌用に適した培地であり、代表的なものとしてはグルコースなどの糖のほかに酵母エキス、ペプトン等を含有する培地が例示できる。培養温度は、糸状菌が増殖できる温度であればよく、特に限定されないが、典型的には15~45℃、好ましくは25~40℃、例えば28~37℃とすることができる。培養時のpHは、糸状菌が増殖できるpHであればよく、特に限定されないが、3.0~6.0、好ましくは4.0~7.0、例えば5.0~6.0とすることができる。
【0029】
また、タラノキを前記酵素により処理する場合には、前記酵素の活性を補助するために市販の工業用酵素を加えてもよく、例えば糸状菌由来の酵素製剤であるスミチームC-G、(新日本化学工業)やセルラーゼSS(ナガセケムテックス)、スクラーゼC(三菱ケミカル)などが使用できる。
【0030】
また、微生物発酵によらずに、タラノキを前記酵素により処理する場合には、温度は特に限定されないが、典型的には30~70℃、好ましくは40~60℃、例えば45~55℃とすることができる。反応時のpHは活性が維持できるpHであればよく、特に限定されないが、3.0~8.0、好ましくは4.0~6.0とすることができる。
【0031】
前記酵素処理工程は、更に、酵素処理(微生物発酵による酵素処理を含む)後のタラノキに対する酵素失活処理を含むことができる。酵素失活処理は、典型的には60~121℃、好ましくは80~110℃、例えば90℃~100℃の温度で行うことができる。酵素失活処理の時間は十分に失活できればよく、特に限定されないが、15分~2時間、好ましくは30分~1時間とすることができる。
【0032】
前記酵素処理工程は、更に、酵素処理(微生物発酵による酵素処理を含む)後のタラノキを精製する工程を含むことができる。精製手段は特に限定されない。
【0033】
タラノキの前記酵素による処理物が、タラノキの微生物による発酵生産物である場合、前記微生物を培養した後に、タラノキと前記微生物とを含む培地を必要に応じて希釈、濃縮又は乾燥してもよい。希釈する場合、例えば水又は他の任意の溶媒を用いることができる。濃縮する場合、例えば、加熱蒸発濃縮法、凍結濃縮法、限外濾過法、透析法、クロマトグラフィー法等により行うことができる。乾燥する場合、例えば、真空凍結乾燥物などの凍結乾燥法、スプレードライ法などの熱乾燥法により行うことができる。
【0034】
本実施形態に係る組成物は、好ましくはタラノキの前記酵素による処理物の抽出物を有効成分として含む。当該抽出物は、タラノキの前記酵素による処理物を、抽出溶媒による抽出処理に供して調製することができる。
【0035】
ここで抽出溶媒は、特に限定されないが、好ましくは、水、親水性有機溶媒、及び、水と親水性有機溶媒との混合溶媒かならなる群から選択される1以上の溶媒である。親水性有機溶媒としては、エタノール、プロパノールなどの一価アルコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール等の多価アルコールが例示できる。
【0036】
抽出処理は、典型的には-20℃~100℃、好ましくは0℃~80℃、より好ましくは20℃~40℃の温度条件で行うことができる。抽出処理の時間は任意に設定できるが、12時間から96時間抽出を行うことが最も好ましい。
【0037】
抽出処理により得られた抽出液に対して、必要に応じて、ウィンタリング(脱ろう)処理を実施してもよい。すなわち、得られた抽出液を冷却し、低温で固まる成分(ろう分)を析出させ、濾過等の手段により固液分離することでろう分を除去することができる。
【0038】
タラノキの前記酵素による処理物の抽出物は、目的に応じて、抽出後に更に希釈、濃縮又は乾燥されたものであってもよく、そのためには任意の希釈法、濃縮法、乾燥法を用いることができる。希釈する場合、例えば水又は他の任意の溶媒を用いることができる。濃縮する場合、例えば、加熱蒸発濃縮法、凍結濃縮法、限外濾過法、透析法、クロマトグラフィー法等により行うことができる。乾燥する場合、例えば、真空凍結乾燥物などの凍結乾燥法、スプレードライ法などの熱乾燥法により行うことができる。
【0039】
タラノキの前記酵素による処理物の抽出物は、必要に応じて、更に精製することができる。精製方法は特に限定されないが、例えば、遠心濾過やメンブレンフィルター等のフィルターを使用して濾過する方法が挙げられる。
【0040】
上記の手順により得られた、タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物を、更に必要に応じて、殺菌又は滅菌処理することができる。殺菌又は滅菌処理には、任意の殺菌又は除菌方法を適用することができる。殺菌又は除菌方法としては、例えば、加熱殺菌、フィルター除菌、紫外線殺菌、放射線殺菌、オゾン殺菌等の方法を挙げることができる。
【0041】
上記の手順により得られた、タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物を、更に必要に応じて、脱臭及び/又は脱色処理することができる。脱臭及び/又は脱色処理は、任意の脱臭処理及び/又は脱色処理方法により行うことができる。脱臭処理及び/又は脱色処理方法としては、例えば、抽出液を活性炭に通過させ、臭気成分や着色成分を活性炭に吸着させる方法を挙げることができる。
【0042】
2.タラノキの酵素処理物又はその抽出物を含む組成物の特徴
続いて、タラノキの、セルラーゼ、キチナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1以上の酵素による処理物又はその抽出物を含む組成物の用途の好ましい実施形態について説明する。
【0043】
タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物は、20Sプロテアソーム活性向上効果及びサーチュインI(SIRT1)遺伝子発現促進効果を有し、皮膚に対する老化防止、アンチエイジングなどの優れた皮膚状態改善効果を有する。
【0044】
そこで前記組成物は、皮膚外用剤又は皮膚化粧料であることが好ましい。前記組成物は、皮膚外用剤、皮膚化粧料等の最終的な形態に応じて、タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物に加えて、他の成分を含むことができる。
【0045】
ここで、皮膚外用剤とは、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に有効な成分(主薬)を含む医薬品又は当該医薬品に使用される基剤を意味する。皮膚外用剤は、例えば、日本における「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定される医薬品及び医薬部外品を含む意味である。一方、皮膚化粧料とは、医薬品や医薬部外品に分類されない、人の皮膚に使用される化粧品を意味する。皮膚外用剤は、日本における「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定されるであってヒトの皮膚に使用される化粧品を含む意味である。
【0046】
皮膚外用剤は、任意の剤型であってよく、例えば、軟膏剤、貼付剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、エキス剤、流エキス剤、チンキ剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤、芳香水剤、液剤、懸濁化剤、乳剤、薬用入浴剤、薬用シャンプー、エアゾール剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等が挙げられる。
【0047】
また、皮膚外用剤又は皮膚化粧料は、溶液状、懸濁液状、乳化状、粉末状、ペースト状、ムース状、又はジェル状などの任意の形態の組成物であってよい。特に、皮膚化粧料は、好ましくは、皮膚に接触して使用され得る任意の形態であってよく、具体的には、例えば、化粧水、乳液、美容液、一般クリーム(フェイスクリーム、ハンドクリーム、ボディクリーム等)、洗顔料(クレンジングクリーム等)、パック、髭剃り用クリーム、日焼けクリーム、日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、日焼けローション、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、パウダー、口紅、リップクリーム、アイライナー、アイクリーム、アイシャドウ、マスカラ、入浴剤(浴用剤)、シャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアパック、スカルプケア剤、ボディリンス、ボディジェル、染毛料、頭髪用化粧品等が挙げられる。化粧水、乳液、美容液、フェイスクリーム、洗顔料等が特に好ましい。
【0048】
さらに皮膚外用剤、皮膚化粧料等の本実施形態に係る組成物において、タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物は、任意の形態で配合することができ、例えば、そのままの状態で他の成分と単に混合してもよいし、ゲル状、粉末状、顆粒状、又はカプセル封入体等の形態で配合することができる。
【0049】
皮膚化粧料は、タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物に加えて、化粧料において許容される添加剤、及び必要に応じて他の活性成分等を含むことができる。そのような添加剤や他の活性成分等は、用途及び形態に適したものを任意に選択して用いることができる。皮膚化粧料は、任意の化粧料製造方法に従って、例えば、原料を混合、攪拌、成形、充填等することにより、製造することができる。
【0050】
皮膚外用剤は、タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物を、皮膚に対する老化防止、アンチエイジングなどの優れた皮膚状態を改善する主剤として含む組成物とすることができる。或いは、皮膚外用剤は、所定の薬効成分(主剤)を含むとともに、タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物を、キメ改善効果や保湿効果といった皮膚の状態を維持・改善する基剤として含む組成物とすることもできる。皮膚外用剤は、タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物に加えて、製薬上許容される添加剤及び必要に応じて他の活性成分等を含むことができる。そのような添加剤や他の活性成分等は、医薬の用途及び形態に適したものを任意に選択して用いることができる。本発明に係る医薬は、任意の医薬製造方法に従って、原料を混合、攪拌、成形、充填等することにより、製造することができる。
【0051】
皮膚外用剤、皮膚化粧料等の本実施形態に係る組成物は、担体(固体又は液体担体)、賦形剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤、pH調整剤、着色料、香料、矯味剤、清涼剤、安定化剤、増泡剤、保存剤、緩衝剤等の製剤用の添加剤を1つ以上含んでもよい。
【0052】
皮膚外用剤、皮膚化粧料等の本実施形態に係る組成物は、例えば以下の任意の群から任意に選択される1つ又は2つ以上の成分を含んでもよい。コラーゲン、コラーゲン加水分解物、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、エラスチン、エラスチン加水分解物、ラクトフェリン、ケラチン、ケラチン加水分解物、カゼイン、アルブミン、ローヤルゼリー由来タンパク加水分解物、ハチミツ由来タンパク加水分解物等のタンパク質及びタンパク質の加水分解物から選ばれる任意の成分を含むことができる。ヒアルロン酸ナトリウム及びヒアルロン酸誘導体、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、アルギン酸及びその塩、ペクチン、コンドロイチン硫酸及びその塩、水溶性キチン、キトサン誘導体及びその塩、プルラン、デオキシリボ核酸、アラビアゴム、トラガントゴム等の天然高分子及びそれらの誘導体から選ばれる任意の成分を含むことができる。ホオズキ、ラカンカ、ナツメ、ハト麦、甘草、杜仲、ショウガ、ウドなどの生薬から選ばれる任意の成分を含むことができる。海藻末、海藻エキス、及び海藻由来の多糖類から選ばれる任意の成分を含むことができる。プラセンタエキス等の動物由来物から選ばれる任意の成分を含むことができる。炭酸水や温泉水、マイクロナノバブル水、精製水、蒸留水等の水から選ばれる任意の成分を含むことができる。カルボキシビニルポリマー及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシメチルセルロース及びその塩等の酸性ポリマー、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロースポリビニルメチルエーテル等の中性ポリマーから選ばれる任意の成分を含むことができる。カチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、カチオン化グアーガム等のカチオン性ポリマーから選ばれる任意の成分を含むことができる。エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類から選ばれる任意の成分を含むことができる。パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、アントラニエール酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。グリチルリチン酸及びその塩類、グアイアズレン及びその誘導体、アラントイン等の抗炎症剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアセレテン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、パラヒドロキシアニソール、没食子プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポール等の抗酸化剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。パラ安息香酸メチル、パラ安息香酸エチル、パラ安息香酸プロピル、パラ安息香酸ブチル等のパラ安息香酸エステル類、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、フェノキシエタノール、安息香酸等の防腐剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。エデト酸、エデト酸二ナトリウム等のエデト酸及びその塩類、フィチン酸、ヒドロキシエタンジスルホン酸等の金属イオン封鎖剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類から選ばれる任意の成分を含むことができる。L-アスパラギン酸、DL-アラニン、L-アルギニン、L-システイン、L-グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸類及びその塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン、蜂蜜等の糖類から選ばれる任意の成分を含むことができる。アンモニア水、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基類から選ばれる任意の成分を含むことができる。流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等の油脂類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等のエステル類から選ばれる任意の成分を含むことができる。レシチン及びその誘導体等のリン脂質類から選ばれる任意の成分を含むことができる。ウシ骨髄脂やウシ脳脂質などの動植物由来脂質から選ばれる任意の成分を含むことができる。ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸エタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのアルキル硫酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。ポリオキシエチレン(2EO)ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン(なお、EOはエチレンオキサイド、EOの前の数値はエチレンオキサイドの付加モル数を示す;以下同様)、ポリオキシエチレン(3EO)アルキル(炭素数11~15のいずれか又は2種以上の混合物)エーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキル硫酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミンなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。ポリオキシエチレン(3EO)トリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、ラウロイルメチル-L-グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸-L-グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウムなどのN-アシルアミノ酸塩、エーテル硫酸アルカンスルホン酸ナトリウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、ウンデシノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム、オクチルフェノキシジエントキシエチルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸アミノスルホコハク酸二ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(炭素鎖12~15)エーテルリン酸(8~10EO)、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシル-N-ヒドロキシエチル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ヤシ油アルキル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムジナトリウムラウリル硫酸、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル-DL-ピロリドンカルボン酸塩などの両性界面活性剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12~14)エーテル(7EO)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルステアリルジエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール・ラノリン(40EO)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル等のノニオン性界面活性剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。イソステアリン酸ジエタノールアミド、ウンデシレン酸モノエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸モノエタノールアミド、硬化牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸エタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ラウリン酸エタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラノリン脂肪酸ジエタノールアミドなどの増粘剤から選ばれる任意の成分を含むことができる。鎖状又は環状メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール共重合体、ジメチルポリシロキサンポリプロピレン共重合体、アミノ変性シリコンオイル、第四級アンモニウム変性シリコンオイルなどのシリコンオイルから選ばれる任意の成分を含むことができる。チオグリコール酸及びその塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。システアミン及びその塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。過酸化水素、過硫酸塩、過ほう酸塩、過酸化尿素などの過酸化物から選ばれる任意の成分を含むことができる。臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどの臭素酸塩から選ばれる任意の成分を含むことができる。角質溶解剤、収斂剤、創傷治療剤、消臭・脱臭剤、抗アレルギー剤、血流促進剤、細胞賦活剤等の他の有効成分から選ばれる任意の成分を含むことができる。
【0053】
ところで、皮膚外用剤、皮膚化粧料等の本実施形態に係る組成物は、タラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物を含むため、皮膚に対する老化防止効果、及び、アンチエイジング効果を奏し、皮膚の状態を維持・改善することができる。ここで、皮膚の状態を維持・改善するとは、皮膚のシワを維持及び/又は改善すること、皮膚のキメを維持及び/又は改善すること、皮膚のくすみを防止及び/又は改善することを含む意味である。具体的に、シワ改善効果とは肌の柔軟性を増すことによりシワの数を減らし溝の深度を浅くする状態である。キメ改善効果とは肌をキメ細やかな状態、すなわち肌表面の皮溝が浅く、皮丘の一つ一つが鮮明で小さく綺麗な三角形を示す状態に改善する効果である。また、くすみ防止効果とは、くすみ肌と称される周囲に比べ明度が低くなっている肌部分に作用し、くすみ肌の面積を狭くし、かつ明度の低下の度合いを軽減することである。
【0054】
皮膚外用剤、皮膚化粧料等の本実施形態に係る組成物は、老化によるシワ、乾燥肌、くすみ肌及びキメ荒れ肌の少なくとも一つの症状を有する対象への投与又は適用が特に有用である。このような対象とは、例えば、乾燥肌、くすみ肌及びキメ荒れ肌の少なくとも一つを生じやすい因子を有する対象を挙げることができる。これらを有する対象に皮膚外用剤及び皮膚化粧料を適用することで、シワ、乾燥肌、くすみ肌及びキメ荒れ肌の少なくとも一つを改善し、健康上又は美容上の利益が期待できる。
【0055】
皮膚外用剤及び皮膚化粧料の投与量及び適用量は、対象の年齢、体重、適用/投与経路、剤型、投与回数等により異なり、当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。具体的には、その適用量又は投与量は、特に限定されないが、有効成分であるタラノキの前記酵素による処理物又はその抽出物の乾燥重量に換算して、例えば、0.001mg/回~10g/回とすることができる。皮膚外用剤及び皮膚化粧料は、限定するものではないが、例えば6~24時間間隔で繰り返し投与又は適用投与してもよい。
【0056】
本実施形態に係る組成物はまた、好ましくは、抗老化のための組成物であり、具体的には、上記で例示した皮膚外用剤及び皮膚化粧料のような、皮膚に適用され、老化によるシワ、乾燥肌、くすみ肌及びキメ荒れ肌の少なくとも一つの症状等の、皮膚の老化を抑制するために用いられる組成物である。
【0057】
本実施形態に係る組成物はまた、好ましくは、20Sプロテアソームの活性を向上させるための組成物であり、具体的には、上記で例示した皮膚外用剤及び皮膚化粧料のような、皮膚に適用され、皮膚に存在する細胞(特に線維芽細胞)における20Sプロテアソームの活性を向上させるために用いられる組成物である。20Sプロテアソームは、活性酸素による酸化障害で生じた生体内の異常タンパク質を除去する作用を有する。このため、20Sプロテアソームの活性を向上させるための組成物は、抗老化作用を有する組成物として有用である。20Sプロテアソームの活性の評価方法としては、実施例に記載の方法が例示できる。
【0058】
本実施形態に係る組成物はまた、好ましくは、サーチュインI遺伝子の発現を促進するための組成物であり、具体的には、上記で例示した皮膚外用剤及び皮膚化粧料のような、皮膚に適用され、皮膚に存在する細胞(特に線維芽細胞)におけるサーチュインI遺伝子の発現を促進するために用いられる組成物である。サーチュインIは、抗老化作用、糖尿病改善作用、心血管保護作用、腎疾患改善作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用、神経保護作用等、様々な作用を有する。このため、サーチュインI遺伝子の発現を促進するための組成物は、上記の様々な作用を有する組成物として有用である。サーチュインI遺伝子の発現量は、サーチュインI遺伝子のmRNA発現量に基づき評価することができ、具体的な評価方法としては、実施例に記載の方法が例示できる。サーチュインI遺伝子のmRNA発現量は、GAPDH遺伝子等の内部標準遺伝子のmRNA発現量で除した値に基づき評価することが好ましい。
【実施例0059】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]タラノキ発酵分解液供試試料及び対照区試料の調製
本実施例で使用するタラノキ粉砕物は全て秋田県産で5cm程度にカットした樹枝を80℃で一晩乾燥し、ピンミルを用いて粉砕したものを用いた。
【0061】
<製造例1>タラノキ酵素反応液の調製
タラノキ粉砕物150gを滅菌バッグに入れてオートクレーブにて滅菌処理(121℃、20分)を行い、タラノキ粉砕物(オートクレーブ滅菌品)を得た。
【0062】
これに酵素及び水を加え表1の組成で調製したスラリーを、広口瓶に入れて攪拌を行いながら酵素反応を行った。クエン酸を用いてpH5に調整後、50℃、16時間の酵素反応を行った。酵素反応後、90℃に昇温し2時間保持して酵素を失活させて降温したものを酵素反応液とした。この反応で用いたスミチームC-G(新日本化学工業製)は糸状菌由来のセルラーゼであり、後述する微生物発酵における微生物による酵素の活性を補助するために添加される。
また、比較例1として酵素を入れずpH、温度、攪拌などの条件を同一に操作したものも併せて調製した。
【0063】
【表1】
【0064】
<製造例2>糸状菌フラスコ前培養液の調製
表2の組成で、栄養源及び酵素誘導用としてタラノキ酵素反応液を加えて調製した培地150mlを、微生物培養用のバッフル付きフラスコに仕込み、121℃で20分間殺菌を行った。培養温度まで降温した後、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)AO-0101株の胞子懸濁液(胞子10個/ml)を1mL添加し、30℃で2日間振とう培養し、糸状菌フラスコ前培養液を得た(製造例2-1)。
【0065】
同様にトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)NBRC31326株、ペニシリウム・パプロゲニウム(Penicillium purpurogenum)NBRC4684株についても同じ条件で培養を行い、前培養液を得た(製造例2-2及び2-3)。
【0066】
【表2】
【0067】
<製造例3>タラノキ発酵物の調製
製造例1で調製したタラノキ酵素反応液を、3Lジャーファーメンター(高杉製作所)に仕込み121℃、20分滅菌した。これに、製造例2-1で調製したアスペルギルス・オリゼフラスコ前培養液を加えて、全体を表3に示した通りの組成として、発酵は30℃、0.2vvm、200rpmの条件とし、10%水酸化ナトリウムでpH6.0に調整しながら48時間行い、タラノキ-アスペルギルス発酵物を得た(製造例3-1)。他の2菌株についても同様に実施した(製造例3-2及び3-3)。対照区としてフラスコ前培養液の代わりに滅菌水を加えた以外は同じ条件で処理を行ったものを調製した(比較例2)。
【0068】
【表3】
【0069】
<製造例4>タラノキ酵素反応物エタノール抽出液と凍結乾燥品の調製
製造例3-1で調製した発酵物を、固形分を含む状態で1000g量りとり、同重量のエタノールを加えて攪拌しながら、室温で16時間抽出を行った。抽出後、7μmのろ紙を用いて固形分を粗濾過したのち、遠心機(トミー精工)で10000rpm、10分の条件で遠心分離し、更に1μガラスファイバーろ紙で吸引ろ過を行い清澄な濾過液を得た。濾過液をエバポレーターで濃縮後、凍結乾燥機を用いて凍結乾燥を行い、表4に示す通りの量の凍結乾燥粉末(試料1)を得た。
【0070】
製造例3-1で調製した発酵物の代わりに、製造例3-2、製造例3-3、比較例1、及び、比較例2で調製した試料に対して同様の操作を行い、表4に示した通りの試料を得た。
【0071】
【表4】
【0072】
<製造例5>タラノキ発酵分解液1,3ブタンジオール抽出品の調製
製造例3-1で調製した発酵分解液1000gに対して同重量の1,3ブタンジオールを加えて攪拌し、室温で16時間抽出を行った。抽出後、7μmのろ紙を用いて固形分を粗濾過したのち、遠心機(トミー精工)で10000rpm、10分の条件で遠心分離し、更に1μガラスファイバーろ紙で吸引ろ過を行い清澄な濾過液を得た。濾過液を4℃下で1週間静置したのち、0.45μmのフィルターでろ過して、1620gのタラノキ発酵分解物1,3ブタンジオール抽出品(試料4)を得た。
【0073】
<比較例3>ガラクトミセス-スキムミルク培養エキス及び凍結乾燥サンプルの調製
比較例3では、各種抗老化試験の対照試料として、ガラクトミセス・カンディダス(Galactomyces candidus)をスキムミルク培地で培養したエキスを調製し、比較試験用に供するサンプルとした。具体的には、前培養の基質として表5の組成の培地を調製し、バッフル付きフラスコに入れシリコセンで蓋をして121℃で20分間殺菌を行った。殺菌後、前培養培地を30℃まで冷却し、ガラクトミセス・カンディダスを1白金耳植菌し、30℃で48時間振とう培養を行った。
【0074】
本培養用として、スキムミルク10g、グルコース6g及び酵母エキス0.6gを精製水1950gに溶かした培地を調製し、微生物培養用の小型ジャーファーメンターに仕込み、121℃で20分間殺菌を行った。滅菌後の本培養培地を30℃まで冷却した後、前培養培地50gを添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0のpH調整を継続して行いながら、ガラクトミセス・カンディダスを30℃で48時間培養した。得られたスキムミルクガラクトミセス培養液を121℃で30分間、加熱処理し菌体成分を抽出した後、室温まで冷却した。得られた固形分を含む溶液を、プレフィルター、続いて0.45μmメンブランスフィルターにて濾過し、固形物が除去されたスキムミルクガラクトミセス培養液を得た。これをエバポレーターで濃縮したのち、凍結乾燥品15gを得た(比較試料3)。
【0075】
【表5】
【0076】
実施例2以下に実施例1で製造した各種培養液及び比較例の培養液を用いた評価試験方法および結果を示す。評価に供した試料の一覧を表6に示した。
【0077】
【表6】
【0078】
[実施例2]20Sプロテアソームの活性向上効果
細胞培養用96wellプレートに線維芽細胞を3500cells/wellで播種し、セミコンフルエント程度となるよう培養(37℃,5%CO)した後、表7に示す濃度となるように試料1を添加した培地に交換し、さらに一晩培養した。
【0079】
プレート培養の上澄をHanks bufferに交換(100μL/well)したのち、各ウェルに均一に紫外線(UVB)が当たる様に約20mJ照射した。再び試料1を添加した培地(FBS0.5%)に交換し、2日間培養を行ったのち、分析を行った。20Sプロテアソームの活性は20S Proteasome Assay kit(Cayman Chemical社製)を用いて行った。結果を表7及び図1に示す。一般的に20Sプロテアソーム活性はUVB処理により減少するが、発酵タラノキエキスを添加することで濃度依存的に活性化されることが示された。
【0080】
発酵工程無しの比較試料1及び2については、25ppm、50ppmの添加区において、発酵工程ありの試料1と比較して細胞生存率、20Sプロテアソーム比活性が低い値であった。
【0081】
また比較試料3(スキムミルク培養液)に関しては本濃度では20Sプロテアソーム活性を示さず、細胞生存率の向上も見られなかった。
【0082】
【表7】
【0083】
[実施例3]サーチュインI(SIRT1)の発現促進効果
正常ヒト線維芽細胞NB1RGB(理研セルバンクより分譲)を35mm dishに1×10cells播種し、3日間培養(37℃,5%CO)した。培地に試料1(タラノキ発酵分解物凍結乾燥品)を50ppmとなるように溶解調製し(FBS0.5%)、これを添加して一晩培養した。プレート培養の上澄をHanks bufferに交換(100μL/well)したのち、ディッシュ上の各ウェルに均一に紫外線(UVB)が当たる様に約20mJ照射した。再び試料添加培地に置き換えて2日間培養した。トリプシン処理により細胞を剥離し、遠心分離により上澄を除去して細胞ペレットを回収した。
【0084】
回収した細胞ペレットからのTotal RNAの抽出はFastGene RNA Basic Kit(日本ジェネティクス)を使用して行った。このTotal RNA溶液を用い、Toyobo製ReverTra Ace qPCR RT Master Mix(FSQ-201)を用いてcDNAを合成しReal time PCRに供した。Real time PCRはToyobo製Thunderbird SYBR qPCR Mix(QPS-201)を用いて行い、サーチュインI(SIRT1)およびGAPDHのmRNA発現量を測定した。各試験区におけるSIRT1のmRNA発現量をGAPDHのmRNA発現量で除することにより評価を実施した。
SIRT1とGAPDHのプライマーを下記表に示した。
【0085】
【表8】
【0086】
紫外線(UVB)を照射した上記の条件(UVB(+))、及び、UVBを照射していない条件(通常培養)で培養した細胞の、GAPDHのmRNA発現量で除したSIRT1のmRNA発現量を図2に示す。
【0087】
[実施例4]角質水分量及び水分蒸散量による保湿性評価
表6に示した試料を用いて表9の組成のローションを作製し、40~50才代女性の被験者(10名)の前腕内側部に1日2回、4週間継続して塗布した。塗布前と塗布後2、4週間目の角質水分量をCorneometer(Courage+Khazaka社製)を用い、経皮水分蒸散量をTewameter(登録商標)(Courage+Khazaka electronic GmbH製)を用いてそれぞれ測定した結果を表10及び表11に示す。
【0088】
【表9】
【0089】
【表10】
【0090】
表10に示したように、角質水分量については、精製水を用いた対照区4に対し、試験区1-1、1-2、1-3において水分保持量の上昇がみられた。タラノキ発酵分解物エキス(試験区1-1、1-2、1-3)はタラノキ抽出エキス(対照区1)よりも保湿力が高く、スキムミルク培養液(対照区2)と同等がそれ以上の角質水分保持効果を示した。
【0091】
【表11】
【0092】
また、表11に示すように、水分蒸散量については、対照区4(精製水)において試験期間中に環境からの影響などにより水分蒸散量の増加が認められたが、その他の試験区および対照区では経皮水分蒸散抑制作用が確認された。
【0093】
[実施例5]キメ改善試験1
表9の組成のローションを40~50才代女性の被験者(10名)の前腕内側部に各試験区15mm×15mmの範囲をマーキングし、1日2回、4週間継続して塗布した。塗布前と塗布後のキメの状態をマイクロスコープ((株)キーエンス製)により撮影し比較を行った。画像を以下の3項目(皮溝の深浅、皮丘の形状、皮丘の大きさ)について下記の5段階の評点で評価を実施し、被験者10名の評点を平均した値を表12~14に示した。
【0094】
(1)皮溝の深浅
5 皮溝が大変浅い
4 皮溝がやや浅い
3 皮溝が通常程度
2 皮溝がやや深い
1 皮溝が大変深い
【0095】
(2)皮丘の形状
5 すべてきれいな三角形である
4 ほぼ三角形である。
3 三角形以外の皮丘がやや目立つ
2 三角形以外の皮丘が目立つ
1 三角形以外の皮丘が大変目立つ
【0096】
(3)皮丘の大きさ
5 とても小さく整っている
4 やや小さい
3 中程度の大きさである
2 やや大きい
1 大変大きい
【0097】
【表12】
【0098】
【表13】
【0099】
【表14】
【0100】
表12~14に示すように、精製水を用いた対照区4に対し、試験区1-1、試験区1-2、試験区1-3、対照区1、対照区2の順で良いスコアとなった。タラノキ発酵分解物エキスおいて優れたキメ肌改善効果が確認された。
【0101】
[実施例6]シワ改善試験
本実施例6では、表15に示す試料を40~50才代女性の被験者(10名)の左右の頬に1日2回、4週間継続して塗布した。右頬を試験区、左頬を対照区として、塗布前と塗布後のシワの状態を皮膚画像解析装置(VISIATM Evolution,Canfield社製)を用いて測定し、シワ評価を数値化した結果を表16に示した。
【0102】
【表15】
【0103】
【表16】
【0104】
表16に示すように、試験区(タラノキ発酵分解物)は対照区(スキムミルク培養液)よりもシワ改善効果が高いことが確認された。
【0105】
[実施例7]くすみ改善試験
本実施例7では、実施例6の試験と並行して、試験区と対照区でのくすみ改善効果を測定した。くすみの評価は測色装置である色彩色差計(コニカミノルタ製)を用い、L*a*b*表色系における明度指数L*値を求め解析した。塗布前と4週間連続塗布後の結果を表12に示した(表中、L*値は被験者(10名)の平均値である)。
【0106】
【表17】
【0107】
表17に示すように、試験区(タラノキ発酵分解物)及び対照区(スキムミルク培養液)の両方にシワ改善効果が確認された。
【0108】
[実施例8]肌のハリ(弾力)評価(官能試験)
本実施例8では、実施例6及び7の試験中に肌のハリ感について官能試験を行った。具体的には、試験の開始後1週間から4週間まで毎週下記5段階の評点で評価を実施した。被験者10名の評点を平均した結果を表18に示した。
【0109】
肌のハリを感じる評価
5:とてもハリがある
4:ややハリがある
3:普通
2:ややハリがない
1:とてもハリがない
【0110】
【表18】
【0111】
表18に示すように、基質成分としてタラノキ発酵分解物を配合した試験区の方がスキムミルク培養液を配合した対照区よりもより肌のハリ改善効果を与える結果となった。
【0112】
[実施例9]肌のハリ試験(肌弾力改善試験)
本実施例9では、実施例6及び7の試験中に肌のハリについて、皮膚粘弾性測定装置(Cutometer MPA580,Courage+Khazaka社製)を用いて、一定陰圧によりプローブ先端の開口部から皮膚表面を一定時間吸引後、吸引を解除した皮膚が元に戻る際の経時的な皮膚の高さの測定による弾力測定試験を行った。加齢による変化や皮膚のハリ、たるみを反映する肌の弾力性を示すパラメーターとしてUr/Uf値(瞬間的回復率)を用い、試験開始前を100とし、4週間塗布後の値との比を求め肌への弾力性に対する効果を測定した。被験者10名の評点を平均した結果を表19に示した。なお測定は市販の洗顔料で軽く洗顔した後、温度20±5℃、湿度50±10%の試験室にて15分馴化した後に行った。また各試験区の間は4週間の休止期間を置いて肌の状態を戻してから行った。
【0113】
【表19】
【0114】
[実施例10]化粧水の製造例
本実施例10では、表20の処方に従い、成分(1)~(10)を80℃で攪拌し、溶解後に室温まで冷却することにより、化粧水(タラノキ発酵分解物配合化粧水)を製造した。また、スキムミルク培養液添加区を添加(対照化粧水1)、および両方を配合しない(対照化粧水2)こと以外は全く同様にして対照化粧水を製造した。
【0115】
【表20】
【0116】
これらの化粧水について、40~50才代女性の被験者(10名)による官能試験を行った。4項目(肌のしっとりさ、肌の滑らかさ、肌のハリ、感覚刺激)について下記5段階の評点で評価を実施した。被験者(10名)の評点の平均値を表21に示した。
【0117】
(1)肌のしっとりさ
5:しっとりする
4:ややしっとりする
3:普通
2:ややかさつく
1:かさつく
【0118】
(2)肌の滑らかさ
5:滑らか
4:やや滑らか
3:普通
2:ややざらつく
1:ざらつく
【0119】
(3)肌のハリ
5:とてもハリがある
4:ややハリがある
3:普通
2:ややハリがない
1:とてもハリがない
【0120】
(4)感覚刺激
5:特に刺激を感じない。
4:やや刺激を感じるが気にならない。
3:ピリピリ感、ホテリ感、チクチク感、カユミ等の刺激をやや感じるが許容可。
2:ピリピリ感、ホテリ感、チクチク感、カユミ等の刺激が強い。
1:ピリピリ感、ホテリ感、チクチク感、カユミ等の刺激が非常に強い。
0:刺激が強く、試験継続は不可。
【0121】
【表21】
【0122】
表21に示すように、基質成分としてタラノキ発酵分解物を配合した化粧水は、対照化粧水1及び2より肌の滑らかさ及び肌のハリにおいて高い評点を得た。
【0123】
[実施例11]クリーム剤の製造
本実施例11では、表22に示す処方に従い、成分(1)~(7)を80℃で混合攪拌して得られた混合物に、別途、成分(8)~(12)を80℃で混合攪拌して得られた混合物を加え、ホモジナイズし、攪拌しながら室温まで冷却し、クリーム剤を製造した。
得られたクリーム剤は使用中にべたつかず、肌をしっとりとさせるものであった。
【0124】
【表22】
図1
図2
【配列表】
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