(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083774
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/15 20060101AFI20230609BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20230609BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H01R13/15 A
H01R13/11 A
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197660
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 真吾
(57)【要約】
【課題】相手導体が接続される端子において、電気抵抗が高くなるのを抑える。
【解決手段】端子は、第一壁、第二壁、および連結壁を有するケースと、第一弾性片を有し第一壁に取り付けられている第一ばね部材と、第二弾性片を有し第二壁に取り付けられている第二ばね部材と、第一弾性片よりも厚く第一方向を長手方向とする板状の第一導体と、第二弾性片よりも厚く第一方向を長手方向とする板状の第二導体と、を備え、第一導体は、別部材が接続される長手方向の一方側の第一接続部と、長手方向の他方側の第一板部と、を有し、第二導体は、別部材が接続される長手方向の一方側の第二接続部と、長手方向の他方側の第二板部と、を有し、第一弾性片は、第一板部を第二板部に接近させる方向に付勢し、第二弾性片は、第二板部を第一板部に接近させる方向に付勢し、第一板部と第二板部との間が、第一方向に沿って挿し入れられた相手導体が挟まれる領域である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状である相手導体を第一方向に沿って挿し入れて接続する端子であって、
前記第一方向の直交方向の一方側に位置する第一壁、前記直交方向の他方側に位置する第二壁、および、前記第一壁と前記第二壁とを連結する連結壁を有するケースと、
第一弾性片を有し前記第一壁に取り付けられている第一ばね部材と、
第二弾性片を有し前記第二壁に取り付けられている第二ばね部材と、
前記第一弾性片よりも厚く前記第一方向を長手方向とする板状の第一導体と、
前記第二弾性片よりも厚く前記第一方向を長手方向とする板状の第二導体と、
を備え、
前記第一導体は、別部材が接続される長手方向の一方側の第一接続部と、長手方向の他方側の第一板部と、を有し、
前記第二導体は、前記別部材が接続される長手方向の一方側の第二接続部と、長手方向の他方側の第二板部と、を有し、
前記第一弾性片は、前記第一板部を前記第二板部に接近させる方向に付勢し、
前記第二弾性片は、前記第二板部を前記第一板部に接近させる方向に付勢し、
前記第一板部と前記第二板部との間が、前記第一方向に沿って挿し入れられた前記相手導体が挟まれる領域である、
端子。
【請求項2】
前記第一接続部と前記第二接続部とは重なって設けられている、請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記第一ばね部材は、前記第一弾性片を複数有し、
複数の前記第一弾性片は、長手方向に離れる複数箇所で前記第一板部に接触する、請求項1または2に記載の端子。
【請求項4】
前記第一ばね部材は、前記第一壁に固定される第一座部と、前記第一座部から前記第一板部側へ延びて設けられている複数の前記第一弾性片と、を有し、
前記複数の第一弾性片には、
前記第一座部の前記第一方向側に位置する一部から前記第一方向の反対方向に延びて設けられ前記第一板部の前記第一方向の反対側に位置する第一対象部で接触する第一板ばねと、
前記第一座部の前記第一方向の反対方向側に位置する一部から前記第一方向に延びて設けられ、前記第一板部の前記第一方向側に位置する第二対象部で接触する第二板ばねと、が含まれる、
請求項3に記載の端子。
【請求項5】
前記第二ばね部材は、前記第二弾性片を複数有し、
複数の前記第二弾性片は、長手方向に離れる複数箇所で前記第二板部に接触する、請求項3または4に記載の端子。
【請求項6】
前記第一方向および前記直交方向の双方に直交する幅方向から、前記相手導体に対して接触する第三ばね部材を、さらに有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の端子。
【請求項7】
対向する前記第一板部と前記第二板部との間隔は、自然状態で、前記相手導体の厚さよりも小さい、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の端子。
【請求項8】
前記第一板部および前記第二板部それぞれは、前記相手導体に対して接触可能となる複数の凸部を有し、
複数の前記凸部は、前記第一方向および前記直交方向の双方に直交する幅方向に並んで設けられている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの電気機器を接続するために、各電気機器のコネクタは端子を備える。その端子として、相手導体が挿入される筒状のケースと、ケース内に設けられている弾性接触片とを有する端子が知られている(例えば、特許文献1)。弾性接触片は、ケースに挿入された相手導体をケースの内壁に向けて押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10は、従来の端子の概略構成を示す断面図である。この端子100は、片側ばね型式であり、弾性接触片として、ケース90内に設けられている一つのばね片92を有する。端子導体91とばね片92との間に、板状である相手導体99が挿し入れられ、端子導体91と相手導体99とが電気的に接続される。
【0005】
図11は、別の従来の端子の概略構成を示す断面図である。この端子100は、両側ばね型式であり、弾性接触片として、ケース90内に設けられている一対のばね片93,94を有する。一対のばね片93,94の間に、板状である相手導体99が挿し入れられ、端子導体91と相手導体99とがばね片93,94を介して電気的に接続される。
【0006】
図10に示す端子100の場合、振動などの外力によって端子導体91を含む端子100が例えば
図10の下方向に変位すると、端子導体91と相手導体99との接圧が低下し、接触抵抗が増加する。
図11に示す端子100の場合、端子100が例えば
図11の下方向に変位すると、下側のばね片94と相手導体99との接圧は低下するが、上側のばね片93と相手導体99との接圧は高まる。このため、端子100全体として、前記のような変位に起因する接触抵抗の増加は低減される。
【0007】
しかし、
図11に示す端子100の場合、相手導体99に接触する部材がばね片93,94であり、ばね片93,94は相手導体99および端子導体91と比べて薄い。端子100における導電経路に、薄板であることで導体抵抗が高くなるばね片93,94が含まれるため、
図11に示す端子100の場合、電気抵抗が高くなる。
【0008】
そこで、本開示では、相手導体が接続される端子において、電気抵抗が高くなるのを抑えることを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る端子は、板状である相手導体を第一方向に沿って挿し入れて接続する端子であって、前記第一方向の直交方向の一方側に位置する第一壁、前記直交方向の他方側に位置する第二壁、および、前記第一壁と前記第二壁とを連結する連結壁を有するケースと、第一弾性片を有し前記第一壁に取り付けられている第一ばね部材と、第二弾性片を有し前記第二壁に取り付けられている第二ばね部材と、前記第一弾性片よりも厚く前記第一方向を長手方向とする板状の第一導体と、前記第二弾性片よりも厚く前記第一方向を長手方向とする板状の第二導体と、を備え、前記第一導体は、別部材が接続される長手方向の一方側の第一接続部と、長手方向の他方側の第一板部と、を有し、前記第二導体は、前記別部材が接続される長手方向の一方側の第二接続部と、長手方向の他方側の第二板部と、を有し、前記第一弾性片は、前記第一板部を前記第二板部に接近させる方向に付勢し、前記第二弾性片は、前記第二板部を前記第一板部に接近させる方向に付勢し、前記第一板部と前記第二板部との間が、前記第一方向に沿って挿し入れられた前記相手導体が挟まれる領域である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、相手導体が接続される端子において、電気抵抗が高くなるのを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態の端子(非接続状態)の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の端子(接続状態)の斜視図である。
【
図4】
図4は、端子の内部構造を説明する図である。
【
図5】
図5は、第一導体と第二導体とが一体となって構成される端子導体の斜視図である。
【
図6】
図6は、端子(非接続状態)の断面図である。
【
図8】
図8は、第一ばね部材および第二ばね部材の説明図である。
【
図9】
図9は、端子を挟み方向に沿って見た場合の断面図である。
【
図10】
図10は、従来の端子の概略構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、別の従来の端子の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本実施形態の端子は、板状である相手導体を第一方向に沿って挿し入れて接続する端子であって、
前記第一方向の直交方向の一方側に位置する第一壁、前記直交方向の他方側に位置する第二壁、および、前記第一壁と前記第二壁とを連結する連結壁を有するケースと、
第一弾性片を有し前記第一壁に取り付けられている第一ばね部材と、
第二弾性片を有し前記第二壁に取り付けられている第二ばね部材と、
前記第一弾性片よりも厚く前記第一方向を長手方向とする板状の第一導体と、
前記第二弾性片よりも厚く前記第一方向を長手方向とする板状の第二導体と、
を備え、
前記第一導体は、別部材が接続される長手方向の一方側の第一接続部と、長手方向の他方側の第一板部と、を有し、
前記第二導体は、前記別部材が接続される長手方向の一方側の第二接続部と、長手方向の他方側の第二板部と、を有し、
前記第一弾性片は、前記第一板部を前記第二板部に接近させる方向に付勢し、
前記第二弾性片は、前記第二板部を前記第一板部に接近させる方向に付勢し、
前記第一板部と前記第二板部との間が、前記第一方向に沿って挿し入れられた前記相手導体が挟まれる領域である。
【0013】
本実施形態の端子によれば、第一導体の第一板部と第二導体の第二板部とが相手導体に直接接触した状態となる。第一導体および第二導体は第一ばね部材および第二ばね部材よりも厚い板状であるので、端子における電気抵抗が高くなるのを抑えることが可能となる。第一弾性片および第二弾性片の付勢力によって、第一板部と第二板部とが相手導体を挟んだ状態となる。端子と相手導体とが相対的に前記直交方向に変位して、例えば第二板部と相手導体との接圧が低下しても、その反対側である第一板部と相手導体との接圧は確保される。このため、接触抵抗の増加が抑えられる。
【0014】
(2)好ましくは、前記第一接続部と前記第二接続部とは重なって設けられている。
この構成によれば、第一接続部と第二接続部とが1枚の厚板の導電板のように機能し、電気抵抗の低減に貢献する。
【0015】
(3)好ましくは、前記第一ばね部材は、前記第一弾性片を複数有し、複数の前記第一弾性片は、長手方向に離れる複数箇所で前記第一板部に接触する。
この構成によれば、第一ばね部材によって、第一板部と相手導体との間において、長手方向に離れた複数箇所で比較的高い接圧が作用する。前記直交方向を軸線とする相手導体と第一導体との相対的な回転に抗する作用が高まる。
【0016】
(4)前記(3)の端子において、好ましくは、前記第一ばね部材は、前記第一壁に固定される第一座部と、前記第一座部から前記第一板部側へ延びて設けられている複数の前記第一弾性片と、を有し、前記複数の第一弾性片には、前記第一座部の前記第一方向側に位置する一部から前記第一方向の反対方向に延びて設けられ前記第一板部の前記第一方向の反対側に位置する第一対象部で接触する第一板ばねと、前記第一座部の前記第一方向の反対方向側に位置する一部から前記第一方向に延びて設けられ、前記第一板部の前記第一方向側に位置する第二対象部で接触する第二板ばねと、が含まれる。
この構成により、第一弾性片が第一板部に対して長手方向に離れる二箇所で接触する構成が得られる。
【0017】
(5)好ましくは、さらに、前記第二ばね部材は、前記第二弾性片を複数有し、複数の前記第二弾性片は、長手方向に離れる複数箇所で前記第二板部に接触する。
この構成によれば、第二ばね部材によって、第二板部と相手導体との間において、長手方向に離れた複数箇所で比較的高い接圧が作用する。前記直交方向を軸線とする相手導体と第二導体との相対的な回転に抗する作用が高まる。
【0018】
(6)好ましくは、前記端子は、前記第一方向および前記直交方向の双方に直交する幅方向から、前記相手導体に対して接触する第三ばね部材を、さらに有する。
この構成によれば、相手導体は、第一ばね部材および第二部ばね部材によって第一導体および第二導体との間で挟まれた状態になるとともに、その挟まれる方向に直交する幅方向から第三ばね部材によって支持される。このため、端子において相手導体はさらに安定して接続された状態となる。
【0019】
(7)対向する前記第一板部と前記第二板部との間隔は、前記第一ばね部材および前記第二部材によって付勢されている弾性変形状態で、前記相手導体の厚さよりも小さい。
さらに好ましくは、対向する前記第一板部と前記第二板部との間隔は、自然状態で、前記相手導体の厚さよりも小さい。この場合、第一板部および第二板部の弾性変形による力を、相手導体に対する締め付けの補助として作用させることが可能となる。
【0020】
(8)好ましくは、前記第一板部および前記第二板部それぞれは、前記相手導体に対して接触可能となる複数の凸部を有し、複数の前記凸部は、前記第一方向および前記直交方向の双方に直交する幅方向に並んで設けられている。
この場合、端子と相手導体との間で前記第一方向を軸線の方向とする捻れが生じて、第一板部および第二板部それぞれにおいて、前記相手導体に対する幅方向の一方での接圧が下がっても、他方での接圧は確保される。
【0021】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0022】
〔端子10の全体構成について〕
図1および
図2は、本実施形態の端子10の斜視図である。
図1は、端子10に相手導体7が接続される前の状態を示し、
図2は、端子10に相手導体7が接続された状態を示す。端子10は、図外の2つの電気機器を接続するために用いられる。一方の電気機器のコネクタが端子10を備える。他方の電気機器のコネクタが相手導体7有する。端子10に相手導体7が接続されることで、2つの前記電気機器は接続される。本実施形態の前記電気機器は自動車の車載機器である。
【0023】
端子10は、相手導体7を第一方向(
図1では、左側から右側に向かう直線方向)に沿って挿し入れて、相手導体7と接続される。端子10は、前記第一方向を長手方向とする箱形状を有する。以下、第一方向を「長手方向」と呼ぶこともある。長手方向について相手導体7の差し込み口10a側(
図1では左側)を「開口側」と呼ぶ。長手方向について前記開口側と反対側(
図1では右側)を「奥側」と呼ぶ。端子10において、第一方向側が奥側となり、第一方向の反対側が開口側となる。
【0024】
後に説明するが(
図7参照)、端子10は、相手導体7を挟んだ状態として接続する。相手導体7を挟む方向は、長手方向(第一方向)に直交する方向であり、本開示では「挟み方向」と呼ぶこともある。長手方向と挟み方向との双方に直交する方向を「幅方向」と呼ぶ。各図にXYZ直交座標を示す。X方向は前記幅方向(幅方向一方から他方に向かう方向)であり、Y方向は前記長手方向(開口側から奥側に向かう方向)であり、Z方向は前記挟み方向である。
【0025】
相手導体7は、Y方向に長い板状の導電部材であり、バスバ(相手バスバ)とも呼ばれる。相手導体7は矩形の断面形状を有する。相手導体7は、X方向に広い板状であるが、Z方向に厚い。具体的説明すると、相手導体7は、後述する(
図4参照)第一導体11と第二導体12とを重ねた部分(第一接続部21および第二接続部23)と同じ厚さ寸法(Z方向寸法)、または、前記重ねた部分よりも大きい厚さ寸法を有する。
【0026】
図3は、
図1に示す端子10の分解斜視図である。本実施形態の端子10は、1つのケース15、1つの第一ばね部材13、1つの第二ばね部材14、1つの第一導体11、および1つの第二導体12を備える。さらに、端子10は2つの第三ばね部材19,19を有する。
図4は、端子10の内部構造を説明する図であり、ケース15を除いた状態を示す。
【0027】
〔ケース15〕
図3に示すように、ケース15は、Y方向に長い筒形状を有する。ケース15は、断面形状が四角形であり、Z方向の一方側に位置する第一壁16、Z方向の他方側に位置する第二壁17、および、第一壁16と第二壁17とを連結する一対の連結壁18を有する。ケース15は、金属製であり、剛性が高い。第一ばね部材13、第二ばね部材14、および第三ばね部材19からの反力を受けても、ケース15は変形しない。ケース15に、第一導体11などの端子10の構成部材を固定するために、切り欠きおよび開口が複数形成されている。
【0028】
〔第一導体11および第二導体12〕
第一導体11は、Y方向に長い板状の導電部材であり、バスバ(第一バスバ)とも呼ばれる。第一導体11は、相手導体7(
図1参照)よりも薄いが、後述する第一ばね部材13が有する第一弾性片31よりも厚く、横断面積が大きい。第一導体11は、長尺の金属片により構成されていて、その中間部で折れ曲がり形状を有する。第一導体11は、長手方向の一方側(奥側)の第一接続部21と、長手方向の他方側(開口側)の第一板部22と、第一接続部21と第一板部22とを繋ぐ前記中間部としての第一傾斜部41とを有する。
【0029】
第一接続部21は、ケース15から一部が突出した状態となる(
図1参照)。第一接続部21は、Y方向に直線形状である。第一接続部21は、第二導体12が有する第二接続部23と重なって設けられる(
図5参照)。第一接続部21は、第二接続部23と共に、別部材である電気機器の機器端子(図示せず)に電気的および機械的に接続される。
図5は、第一導体11と第二導体12とが一体となって構成される端子導体20の斜視図である。
第一傾斜部41は、第一接続部21から第一板部22に向かうにしたがってZ方向一方側に延びる傾斜形状を有する。つまり、第一傾斜部41は、第一接続部21から第一板部22に向かうにしたがって第二導体12(第二板部24)から離れる形状となる。
【0030】
第一導体11をケース15に固定するため、第一接続部21は一対の第一固定アーム部42,42を有する。第一固定アーム部42は、ケース15に設けられる切り欠き15a(
図3参照)を通ってケース15の外面に沿って設けられる。第一固定アーム部42は、ケース15の第一壁16に係合する第一爪部43を有する。第一導体11をケース15に装着した状態で(
図1参照)、第一固定アーム部42の先部を塑性変形させることで、第一爪部43は構成される。
図3および
図5では、前記先部を塑性変形させた状態で示している。この構成により、第一導体11とケース15とは一体となる。
【0031】
第一板部22は、ケース15に収容された状態となる(
図1参照)。第一板部22は、Y方向に直線形状であり、ケース15に挿入された相手導体7と直接的に接触して電気的に接続される。前記のとおり、第一導体11はケース15に固定される。第一板部22は、ケース15における固定部分(固定アーム部42)から、第一傾斜部41を介して、片持ち梁状となって前記開口側に延びて設けられている。本実施形態では、第一板部22のY方向の長さ寸法L1(
図5参照)は、第一板部22のX方向の寸法W1の3倍以上であり、第一板部22は長尺帯形状を有する。このため、第一板部22は、第一接続部21側を固定端として、Z方向の両方向に弾性変形可能となる。
【0032】
図3に示すように、第二導体12は、Y方向に長い板状の導電部材であり、バスバ(第二バスバ)とも呼ばれる。第二導体12は、相手導体7(
図1参照)よりも薄いが、後述する第二ばね部材14が有する第二弾性片32よりも厚く、横断面積が大きい。第二導体12は、長尺の金属片により構成されていて、その中間部で折れ曲がり形状を有する。第二導体12は、長手方向の一方側(奥側)の第二接続部23と、長手方向の他方側(開口側)の第二板部24と、第二接続部23と第二板部24とを繋ぐ前記中間部としての第二傾斜部44とを有する。
【0033】
第二接続部23は、ケース15から一部が突出した状態となる(
図1参照)。第二接続部23は、Y方向に直線形状である。第二接続部23は、第一導体11が有する第一接続部21と重なって設けられる(
図5参照)。第二接続部23は、第一接続部21と共に、別部材である電気機器の機器端子(図示せず)に電気的および機械的に接続される。
第二傾斜部44は、第二接続部23から第二板部24に向かうにしたがってZ方向他方側に延びる傾斜形状を有する。つまり、第二傾斜部44は、第二接続部23から第二板部24に向かうにしたがって第一導体11(第一板部22)から離れる形状となる。
【0034】
第二導体12をケース15に固定するため、第二接続部23は一対の第二固定アーム部45,45を有する。第二固定アーム部45は、ケース15に設けられる切り欠き15a(
図3参照)を通ってケース15の外面に沿って設けられる。第二固定アーム部45は、ケース15の第二壁17に係合する第二爪部46を有する。第二導体12をケース15に装着した状態で(
図1参照)、第二固定アーム部45の先部を塑性変形させることで、第二爪部46は構成される。
図3および
図5では、前記先部を塑性変形させた状態で示している。この構成により、第二導体12とケース15とは一体となる。
【0035】
第二板部24は、ケース15に収容された状態となる(
図1参照)。第二板部24は、Y方向に直線形状であり、ケース15に挿入された相手導体7と直接的に接触して電気的に接続される。前記のとおり、第二導体12はケース15に固定される。第二板部24は、ケース15における固定部分(固定アーム部45)から、第二傾斜部44を介して、片持ち梁状となって前記開口側に延びて設けられている。本実施形態では、第二板部24のY方向の長さ寸法L2(
図5参照)は、第二板部24のX方向の寸法W2の3倍以上であり、第二板部24は長尺帯形状を有する。このため、第二板部24は、第二接続部23側を固定端として、Z方向の両方向に弾性変形可能となる。
【0036】
第二導体12は、幅方向両側にカシメ片47,47を有する。カシメ片47は、重なった状態にある第一接続部21と第二接続部23とを一体化する。
図3では、カシメ片47を塑性変形させた状態として示している。なお、カシメ片47は、第一導体11が有していてもよい。
図5に示すように、第一接続部21と第二接続部23とは重なって設けられている。本実施形態では、カシメ片47によって第一接続部21と第二接続部23とは接合されている。これに対して、第一板部22と第二板部24とは離れて設けられている。第一板部22と第二板部24との間が、Y方向に沿って挿し入れられた相手導体7が挟まれる領域Qである。第一導体11と第二導体12とは、カシメ片47を除いて同じ形状であり、Z方向について反対向きとなって配置されている。
【0037】
図3に示すように、第一板部22は、相手導体7に対して接触可能となる複数の第一凸部25を有する。本実施形態の第一板部22は、その先端側の領域に、4つ凸部25を有する。2つの凸部25,25がX方向に並んで設けられている。X方向で並ぶ2つの凸部25,25が、Y方向に2列となって並んで設けられている。2つの凸部25,25がX方向に並んで設けられているのが好ましいが、凸部25の数および配置は変更可能である。
【0038】
第二板部24は、相手導体7に対して接触可能となる複数の第二凸部26を有する。本実施形態の第二板部24は、その先端側の領域に、4つ凸部26を有する。2つの凸部26,26がX方向に並んで設けられている。X方向で並ぶ2つの凸部26,26が、Y方向に2列となって並んで設けられている。2つの凸部26,26がX方向に並んで設けられているのが好ましいが、凸部26の数および配置は変更可能である。
【0039】
〔第一ばね部材13〕
図6および
図7は、端子10をX方向(幅方向)に沿って見た場合の断面図である。
図6は、相手導体7の接続前の状態を示し、
図7は、相手導体7の接続後の状態を示す。第一ばね部材13は、第一壁16に取り付けられており、ケース15と一体となる。第一ばね部材13は、第一壁16に固定される第一座部33と、第一座部33から第一板部22側に突出している第一弾性片31とを有する。
【0040】
本実施形態の第一ばね部材13は、複数の第一弾性片31を有する。複数の第一弾性片31に、第一板ばね35と第二板ばね36とが含まれる。これにあわせて、
図8に示すように、第一座部33は、第一板ばね35用の座部33aと、第二板ばね36用の座部33bとに別れており、これら座部33aと座部33bとは別の部材となっている。
図8は、第一ばね部材13および第二ばね部材14の説明図であり、第一ばね部材13では、座部33aと座部33bとを分離した状態が示されている。なお、第一ばね部材13が複数の第一弾性片31を有する場合であっても、座部33aおよび座部33bは一つの部材であってもよい。
【0041】
第一弾性片31は、第一板部22を第二板部24に接近させる方向に付勢する。つまり、第一板ばね35および第二板ばね36それぞれは、第一板部22を第二板部24に接近させる方向に弾性的に押圧する。このように、第一ばね部材13は、第一座部33から第一板部22側へ延びて設けられている複数の第一弾性片31として、第一板ばね35および第二板ばね36を有する。本実施形態では、第一板ばね35は、X方向について中央に1つ設けられている。第二板ばね36は、X方向について、第一板ばね35を間に挟むようにして、両側に2つ設けられている。なお、第一板ばね35と第二板ばね36との配置は反対であってもよい。
【0042】
図6、
図7および
図8において、第一板ばね35は、第一座部33の奥側(各図の右側)に位置する一部51から開口側の方向(各図の左方向)に延びて設けられている。第一板ばね35は、第一板部22の開口側(各図の左側)に位置する第一対象部56で接触する。2つの第二板ばね36,36それぞれは、第一座部33の開口側(各図の左側)に位置する一部52から奥側の方向(各図の右方向)に延びて設けられている。各第二板ばね36は、第一板部22の奥側(各図の右側)に位置する第二対象部57で接触する。
【0043】
このように、1つの第一板ばね35と2つの第二板ばね36,36とを含む第一弾性片31は、Y方向に離れる二箇所(第一対象部56および第二対象部57)で第一板部22に接触する。第一板ばね35および第二板ばね36,36は、第一板部22に対して、接触するとともに弾性的に押圧する。
さらに、第一板部22に関して、その第一面上の複数(4つの)の凸部25と、その第二面における第一対象部56および第二対象部57との、Y方向の位置に関して説明する。複数(4つの)の凸部25は、第一対象部56と第二対象部57との間に位置する。このため、複数の第一弾性片31による付勢力が複数の凸部25に対して分散して作用し、複数の凸部25それぞれが相手導体7に均等に接触することができる。
【0044】
第一板ばね35の形状についてさらに説明する。
図8において、第一板ばね35は、第一座部33の一部51から、開口側に向かうにつれて第一板部22に接近する傾斜形状の第一傾斜ばね部66を有する。第一板ばね35は、さらに、第一傾斜ばね部66の先端部66aから開口側に向かうにつれて、第一板部22から離れる傾斜形状の第一ばね先部67を有する。第一傾斜ばね部66と第一ばね先部67との間の部分(先端部66a)が、第一板部22の第一対象部56に対する接触部となる。
【0045】
第二板ばね36の形状についてさらに説明する。第二板ばね36は、第一座部33の一部52から、奥側に向かうにつれて第一板部22に接近する傾斜形状の第二傾斜ばね部68を有する。第二板ばね36は、さらに、第二傾斜ばね部68の先端部68aから奥側に向かうにつれて、第一板部22から離れる傾斜形状の第二ばね先部69を有する。第二傾斜ばね部68と第二ばね先部69との間の部分(先端部68a)が、第一板部22の第二対象部57に対する接触部となる。
【0046】
〔第二ばね部材14〕
第二ばね部材14は、第一ばね部材13と構成は同じであり、Z方向について反対向きとなってケース15に設けられている。
図6および
図7に示すように、第二ばね部材14は、第二壁17に取り付けられており、ケース15と一体となる。第二ばね部材14は、第二壁17に固定される第二座部34と、第二座部34から第二板部24側に突出している第二弾性片32とを有する。
【0047】
本実施形態の第二ばね部材14は、複数の第二弾性片32を有する。複数の第二弾性片32に、第三板ばね37と第四板ばね38とが含まれる。これにあわせて、第一ばね部材13(
図8参照)と同様に、第二座部34は、第三板ばね37用の座部34aと、第四板ばね38用の座部34bとに別れており、これら座部34aと座部34bとは別の部材となっている。なお、第二ばね部材14が複数の第二弾性片32を有する場合であっても、座部34aおよび座部34bは一つの部材であってもよい。
【0048】
第二弾性片32は、第二板部24を第一板部22に接近させる方向に付勢する。つまり、第三板ばね37および第四板ばね38それぞれは、第二板部24を第一板部22に接近させる方向に弾性的に押圧する。このように、第二ばね部材14は、第二座部34から第二板部24側へ延びて設けられている複数の第二弾性片32として、第三板ばね37および第四板ばね38を有する。本実施形態では、第三板ばね37は、X方向について中央に1つ設けられている。第四板ばね38は、X方向について、第三板ばね37を間に挟むようにして、両側に2つ設けられている。なお、第三板ばね37と第四板ばね38との配置は反対であってもよい。
【0049】
図6、
図7および
図8において、第三板ばね37は、第二座部34の奥側(各図の右側)に位置する一部53から開口側の方向(各図の左方向)に延びて設けられている。第三板ばね37は、第二板部24の開口側(各図の左側)に位置する第三対象部58で接触する。2つの第四板ばね38,38それぞれは、第二座部34の開口側(各図の左側)に位置する一部54から奥側の方向(各図の右方向)に延びて設けられている。各第四板ばね38は、第二板部24の奥側(各図の右側)に位置する第四対象部59で接触する。
【0050】
このように、1つの第三板ばね37と2つの第四板ばね38,38とを含む第二弾性片32は、Y方向)に離れる二箇所(第三対象部58および第四対象部59)で第二板部24に接触する。第三板ばね37および第四板ばね38,38は、第二板部24に対して、接触するとともに弾性的に押圧する。
さらに、第二板部24に関して、その第一面上の複数(4つの)の凸部26と、その第二面における第三対象部58および第四対象部59との、Y方向の位置に関して説明する。複数(4つの)の凸部26は、第三対象部58と第四対象部59との間に位置する。このため、複数の第二弾性片32による付勢力が複数の凸部26に対して分散して作用し、複数の凸部26それぞれが相手導体7に均等に接触することができる。
【0051】
第三板ばね37の形状についてさらに説明する。
図8において、第三板ばね37は、第二座部34の一部53から、開口側に向かうにつれて第二板部24に接近する傾斜形状の第三傾斜ばね部70を有する。第三板ばね37は、さらに、第三傾斜ばね部70の先端部70aから開口側に向かうにつれて、第二板部24から離れる傾斜形状の第三ばね先部71を有する。第三傾斜ばね部70と第三ばね先部71との間の部分(先端部70a)が、第二板部24の第三対象部58に対する接触部となる。
【0052】
第四板ばね38の形状についてさらに説明する。第四板ばね38は、第二座部34の一部54から、奥側に向かうにつれて第二板部24に接近する傾斜形状の第四傾斜ばね部72を有する。第四板ばね38は、さらに、第四傾斜ばね部72の先端部72aから奥側に向かうにつれて、第二板部24から離れる傾斜形状の第四ばね先部73を有する。第四傾斜ばね部72と第四ばね先部73との間の部分(先端部72a)が、第二板部24の第四対象部59に対する接触部となる。
【0053】
〔第三ばね部材19〕
図9は、端子10をZ方向(挟み方向)に沿って見た場合の断面図である。第三ばね部材19は、ケース15の幅方向両側に設けられている連結壁18,18それぞれに取り付けられている。一対の第三ばね部材19,19は、ケース15に挿入された相手導体7に対して幅方向から接触する。
図3および
図9に示すように、第三ばね部材19は、連結壁18に固定される第三座部60と、第三座部60から相手導体7側に突出する第三弾性片61とを有する。第三弾性片61は、板ばねにより構成されている。
【0054】
端子10に相手導体7が接続される前の状態で、一方の第三弾性片61と他方の第三弾性片61との間隔の最小部分は、相手導体7の幅方向寸法よりも小さい。端子10に相手導体7が接続されると(
図9参照)、第三弾性片61,61は、相手導体7に押されて弾性変形し、前記間隔の最小部分において、相手導体7の幅方向両側の側面7aを押圧する。前記間隔の最小部分が、第三ばね部材19における相手導体7の接触部となる。
【0055】
第三弾性片61の形状についてさらに説明する。なお、一方側と他方側とで第三ばね部材19の形状は同じである。第三弾性片61は、第三座部60の奥側(
図9の右側)に位置する一部76から開口側(
図9の左方向)に延びて設けられている。第三弾性片61は、第三座部60の一部76から、開口側に向かうにつれて相手導体7に接近する傾斜形状の第五傾斜ばね部74を有する。第三弾性片61は、さらに、第五傾斜ばね部74の先端部74aから、開口側に向かうにつれて相手導体7から離れる傾斜形状の第五ばね先部75を有する。第五傾斜ばね部74と第五ばね先部75との間の部分(先端部74a)が、相手導体7に対する接触部となる。
【0056】
相手導体7の幅方向の両側部に、図示しないが凹部が形成されていてもよい。端子10に相手導体7が接続された状態で、前記凹部に前記先端部74aが嵌合する。この嵌合により、端子10への相手導体7の接続状態の検知(感知)が可能となり、接続不良を防止することが可能となる。また、前記嵌合により、端子10からの相手導体7の抜け止めの機能が得られる。
【0057】
〔端子10の構成部材の材質について〕
第一ばね部材13、第二ばね部材14、および、第三ばね部材19の材質は、弾性に富んだ金属製であり、例えば、ばね用ステンレス鋼である。
第一導体11および第二導体12の材質は、第一ばね部材13および第二ばね部材14と異なっており、これらよりも導電性の高い材質であり、例えば銅合金製である。第一導体11および第二導体12も弾性を有する。
ケース15は、第一ばね部材13および第二ばね部材14よりも硬く、弾性係数の高い金属材料により構成されるのが好ましい。
【0058】
〔相手導体7と端子10との接続〕
前記のとおり(
図6および
図7参照)、第一板部22と第二板部24との間が、Y方向に沿って挿し入れられた相手導体7が挟まれる領域Qである。対向する第一板部22と第二板部24との間隔Eは、第一ばね部材13および第二ばね部材14によって付勢されている弾性変形状態で、相手導体7の厚さ寸法(Z方向寸法)Tよりも小さい。前記厚さ寸法Tは、第一板部22と第二板部24とによって挟まれる部分の寸法である。
【0059】
なお、前記間隔Eは、第一板部22および第二板部24が相手導体7に接触して挟持する部分である。第一板部22および第二板部24のうち、相手導体7に接触して挟持する部分を「挟持対象部」と称する。挟持対象部における間隔Eの最小値が、相手導体7の厚さ寸法Tよりも小さい。本実施形態では、第一板部22の挟持対象部に第一凸部25が設けられ、第二板部24の挟持対象部に第二凸部26が設けられている。よって、前記間隔E(最小部分)は第一板部22の第一凸部25と第二板部24の第二凸部26との間隔である。
【0060】
端子10に相手導体7が接続されると(
図7参照)、第一弾性片31および第二弾性片32は、第一板部22および第二板部24を介して、相手導体7に押されて弾性変形する。第一弾性片31および第二弾性片32の弾性変形力をケース15が支持し、ケース15は弾性変形しない。このため、第一ばね部材13および第二ばね部材14の弾性変形による力(反力)を、第一板部22および第二板部24を介した、相手導体7に対する締め付け力として作用させることが可能となる。
【0061】
前記弾性変形状態では、前記間隔Eは相手導体7の厚さ寸法Tよりも小さい。さらに、本実施形態では、端子10の組み立て前、第一ばね部材13および第二ばね部材14によって第一板部22と第二板部24とが付勢されていない自然状態で(
図5参照)、対向する第一板部22と第二板部24との間隔(前記挟持対象部における最小寸法)eは、相手導体7の厚さTよりも小さい。このため、端子10に相手導体7が接続されると、第一板部22および第二板部24は、相手導体7に押されて弾性変形する。その結果、第一板部22および第二板部24の弾性変形による力(反力)を、相手導体7に対する締め付けの補助として作用させることが可能となる。
【0062】
第一板部22は、その端部において、開口側に向かうにしたがって第二板部24から離れる方向に傾斜する先部22aを有する。第二板部24は、その端部において、開口側に向かうにしたがって第一板部22から離れる方向に傾斜する先部24aを有する。このため、第一板部22の先部22aと第二板部24の先部24aとの間隔は、開口側に向かうにしたがって拡大する。先部22a,24aの間隔の最大値は、相手導体7の厚さ寸法Tよりも大きい。このため、端子10に相手導体7を接続する際に、第一板部22の先部22aと第二板部24の先部24aとは、相手導体7を挟み方向についてガイドする機能を有する。
【0063】
また、
図9に示すように、幅方向両側の第三ばね部材19,19に関して、一方の第三弾性片61が有する第五ばね先部75と、他方の第三弾性片61が有する第五ばね先部75との間隔は、前記先端部74aから開口側に向かうにしたがって拡大する。このため、第三ばね部材19の第五ばね先部75は、端子10に相手導体7を接続する際に、相手導体7を幅方向についてガイドする機能を有する。
【0064】
〔本実施形態の端子10について〕
本実施形態の端子10は(
図1および
図3参照)、板状である相手導体7をY方向に沿って挿し入れて、相手導体7と電気的に接続する。そのために、端子10は、ケース15、第一ばね部材13、第二ばね部材14、Y一方向を長手方向とする板状の第一導体11、および、Y方向を長手方向とする板状の第二導体12を備える。ケース15は、Z方向の一方側に位置する第一壁16、Z方向の他方側に位置する第二壁17、および、第一壁16と第二壁17とを連結する一対の連結壁18,18を有する。第一ばね部材13は、第一弾性片31を有し、第一壁16に取り付けられている。第二ばね部材14は、第二弾性片32を有し、第二壁17に取り付けられている。第一導体11は、第一弾性片31よりも厚く、第二導体12は、第二弾性片32よりも厚い。
【0065】
第一導体11は、奥側の第一接続部21と、開口側の第一板部22とを有する。第二導体12は、奥側の第二接続部23と、開口側の第二板部24とを有する。第一弾性片31は、第一板部22を第二板部24に接近させる方向に付勢し、第二弾性片32は、第二板部24を第一板部22に接近させる方向に付勢するように構成されている。第一板部22と第二板部24との間が、Y方向に沿って挿し入れられた相手導体7が挟まれる領域Qである。
【0066】
本実施形態の端子10によれば、第一導体11の第一板部22と第二導体12の第二板部24とが相手導体7に直接接触した状態となる。第一導体11および第二導体12は厚い板状であるので、端子10における電気抵抗が高くなるのを抑えることが可能となる。第一弾性片31および第二弾性片32の付勢力によって、第一板部22と第二板部24とが相手導体7を挟んだ状態となる。端子10と相手導体7とが相対的にZ方向に変位して、例えば第二板部24と相手導体7との接圧が低下しても、その反対側である第一板部22と相手導体7との接圧は確保される。このため、端子10における接触抵抗の増加が抑えられる。
【0067】
さらに、本実施形態の端子10によれば、ケース15の第一壁16が第一ばね部材13の反力を受け、ケース15の第二壁17が第二ばね部材14の反力を受ける。このため、第一ばね部材13による第一板部22と相手導体7との接圧が逃げ難く、第二ばね部材14による第二板部24と相手導体7との接圧が逃げ難く、接触抵抗の増加が抑えられる。第一板部22と第二板部24とが相手導体7を両側から挟むため、接点数が増加し、接触抵抗の低下に貢献する。本実施形態では、相手端子7のZ方向について一方側と他方側との両面に接点が得られ、しかも、一方側で4つの第一凸部25による接点が得られ、他方側で4つの第二凸部26による接点が得られる。接点の増加によって接触抵抗を低減することが可能となる。
【0068】
さらに、第一弾性片31および第二弾性片32は薄いことから、板ばねとして機能させるための所望形状(ばね形状)への加工が容易である。
第一導体11、第二導体12、第一ばね部材13、および、第二ばね部材14は、ケース15に固定されている。このため、相手導体7の接続の際、第一導体11などの前記構成部材は、Y方向に逃げないことから、接続作業が容易であり、接続状態が安定する。第一導体11、第二導体12、第一ばね部材13、および、第二ばね部材14は、ケース15と別部材であるため、各構成部材の形状を変更(調整)する場合であっても、その自由度が高く、容易に対応可能となる。
【0069】
図5に示すように、第一接続部21と第二接続部23とは重なって設けられている。このため、第一接続部21と第二接続部23とが1枚の厚板の導電板のように機能し、電気抵抗の低減に貢献する。第一接続部21と第二接続部23とが面接触していれば、カシメ片47は省略されていて、単に積層状態にあってもよい。または、カシメ片47の代わりに、第一接続部21と第二接続部23とは例えば超音波接合によって接合されていてもよい。
【0070】
図6、
図7および
図8に示すように、第一ばね部材13は、第一弾性片31を複数有する。複数の第一弾性片31は、Y方向に離れる複数箇所で第一板部22に接触する。この構成により、第一ばね部材13によって、第一板部22と相手導体7との間において、Y方向に離れた複数箇所で比較的高い接圧が作用する。このため、Z方向を軸線とする相手導体7と第一導体11(端子10)との相対的な回転に抗する作用が高まる。
【0071】
具体的には、第一ばね部材13は次のように構成されている。すなわち、複数の第一弾性片31に、第一板ばね35と第二板ばね36とが含まれる。第一板ばね35は、第一座部33の奥側に位置する一部51から開口側の方向に延びて設けられていて、第一板部22の開口側に位置する第一対象部56で接触する。第二板ばね36は、第一座部33の開口側に位置する一部52から奥側の方向に延びて設けられていて、第一板部22の奥側に位置する第二対象部57で接触する。
【0072】
第一ばね部材13と同様、第二ばね部材14は、第二弾性片32を複数有する。複数の第二弾性片32は、Y方向に離れる複数箇所で第二板部24に接触する。この構成により、第二ばね部材14によって、第二板部24と相手導体7との間において、Y方向に離れた複数箇所で比較的高い接圧が作用する。このため、Z方向を軸線とする相手導体7と第二導体12(端子10)との相対的な回転に抗する作用が高まる。
【0073】
具体的には、第二ばね部材14は次のように構成されている。すなわち、複数の第二弾性片32に、第三板ばね37と第四板ばね38とが含まれる。第三板ばね37は、第二座部34の奥側に位置する一部53から開口側の方向に延びて設けられていて、第二板部24の開口側に位置する第三対象部58で接触する。第四板ばね38は、第二座部34の開口側に位置する一部54から奥側の方向に延びて設けられていて、第二板部24の奥側に位置する第四対象部59で接触する。
【0074】
図9に示すように、端子10は、幅方向から相手導体7に対して接触する第三ばね部材19,19を有する。相手導体7は、第一ばね部材13および第二部ばね部材14によって第一導体11と第二導体12との間で挟まれた状態になるとともに、その挟まれる方向に直交する幅方向から第三ばね部材19,19によって支持される。その結果、端子10において相手導体7はさらに安定して接続された状態となり、相手導体7と第一導体11および第二導体との間の接圧抵抗を安定させることが可能となる。
【0075】
図3に示すように、第一板部22は、相手導体7に対して接触可能となる複数の凸部25を有し、このうち2つの凸部25,25はX方向に並んで設けられている。第二板部24は、相手導体7に対して接触可能となる複数の凸部26を有し、このうち2つの凸部26,26はX方向に並んで設けられている。この構成により、端子10と相手導体7との間でY方向を軸線の方向とする捻れが生じて、第一板部22および第二板部24それぞれにおいて幅方向の一方での接圧が下がっても、他方での接圧は確保される。
【0076】
〔その他の構成〕
本実施形態では、相手導体7に対する接点は、第一導体11側の4点(4つの凸部25)と、第二導体12側の4点(4つの凸部26)との合計8点である。接点の数は変更可能である。例えば、第一導体11側を3点とし、第二導体12側を3点としてもよい。
本実施形態では、相手導体7に対する接点が、第一導体11側と第二導体12側とで対称となっているが、非対称であってもよい。
第一ばね部材13の第一弾性片31は一つであってもよく、また、第二ばね部材14の第二弾性片32は一つであってもよい。
【0077】
図3を参考に第三ばね部材19に関して説明する。第三ばね部材19は、第一板部22と第二板部24との間に介在する支持部を有していてもよい。相手導体7が端子10に接続される前の状態で、前記支持部は、第一板部22と第二板部24とに接触する。これにより、第一板部22と第二板部24と間隔が維持される。つまり、第三ばね部材19によって、相手導体7が挟まれる領域Qが挟み方向に狭くなるのを防ぐことが可能となる。
【0078】
前記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、前記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0079】
7 相手導体
7a 側面
10 端子
11 第一導体
12 第二導体
13 第一ばね部材
14 第二ばね部材
15 ケース
15a 切り欠き
16 第一壁
17 第二壁
18 連結壁
19 第三ばね部材
20 端子導体
21 第一接続部
22 第一板部
22a 先部
23 第二接続部
24 第二板部
24a 先部
25 第一凸部
26 第二凸部
31 第一弾性片
32 第二弾性片
33 第一座部
33a 座部
33b 座部
34 第二座部
34a 座部
34b 座部
35 第一板ばね
36 第二板ばね
37 第三板ばね
38 第四板ばね
41 第一傾斜部
42 第一固定アーム部
43 第一爪部
44 第二傾斜部
45 第二固定アーム部
46 第二爪部
47 カシメ片
51 第一座部の一部
52 第一座部の一部
53 第二座部の一部
54 第二座部の一部
56 第一対象部
57 第二対象部
58 第三対象部
59 第四対象部
60 第三座部
61 第三弾性片
66 第一傾斜ばね部
66a 先端部
67 第一ばね先部
68 第二傾斜ばね部
68a 先端部
69 第二ばね先部
70 第三傾斜ばね部
70a 先端部
71 第三ばね先部
72 第四傾斜ばね部
72a 先端部
73 第四ばね先部
74 第五傾斜ばね部分
74a 先端部
75 第五ばね先部
76 第三座部の一部
E 第一板部と第二板部との間隔
L1 第一板部の第一方向の長さ寸法
L2 第二板部の第一方向の長さ寸法
Q 相手導体が挟まれる領域
T 相手導体7の厚さ寸法
W1 第一板部の幅方向の寸法
W2 第二板部の幅方向の寸法