(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083784
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】離型コーティング剤、硬化物及び積層物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/06 20060101AFI20230609BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20230609BHJP
C09D 183/10 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D133/14
C09D183/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197676
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸上 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】久米 啓太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰寛
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG131
4J038DL032
4J038GA03
4J038GA11
4J038KA03
4J038KA04
4J038NA01
4J038NA04
4J038NA10
4J038PA17
(57)【要約】
【課題】離型コーティング剤、硬化物及び積層物を提供すること。
【解決手段】本開示は、イソシアネート基含有シリコーン、水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含む、離型コーティング剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有シリコーン、
水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート及び
光重合開始剤を含む、
離型コーティング剤。
【請求項2】
熱硬化触媒を含む、請求項1に記載の離型コーティング剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の離型コーティング剤の硬化物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化物を含む、積層物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、離型コーティング剤、硬化物及び積層物に関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等のキャスト製膜用の工程フィルム、粘着テープ、粘着シート、粘着フィルム等の粘着剤層の保護フィルム、セラミックグリーンシートやプリント基板等の電子部品製造用の工程フィルムとして利用されている。
【0003】
出願人は、特定分子量かつ特定水酸基価を有するポリオール、水酸基含有シリコーン、ポリイソシアネートを含む熱硬化性離型コーティング剤を開発している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の離型コーティング剤の発展に伴い、良好な耐溶剤性及び剥離力に加えて、良好な面精度を有する硬化物を製造できる離型コーティング剤が求められている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、良好な耐溶剤性、剥離力及び面精度を有する硬化物を製造できる離型コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の成分を用いることにより、上記課題が解決されることを見出した。
【0008】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
イソシアネート基含有シリコーン、
水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート及び
光重合開始剤を含む、
離型コーティング剤。
(項目2)
熱硬化触媒を含む、上記項目に記載の離型コーティング剤。
(項目3)
上記項目のいずれか1項に記載の離型コーティング剤の硬化物。
(項目4)
上記項目に記載の硬化物を含む、積層物。
【0009】
本開示において、上述した1又は複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得る。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態の離型コーティング剤を用いることにより、耐溶剤性、剥離力、面精度が良好な硬化物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの上限及び下限としてA3、A2、A1(A3>A2>A1とする)等が例示される場合、数値αの範囲は、A3以下、A2以下、A3未満、A2未満、A1以上、A2以上、A1より大きい、A2より大きい、A1~A2(A1以上A2以下)、A1~A3、A2~A3、A1以上A3未満、A1以上A2未満、A2以上A3未満、A1より大きくA3未満、A1より大きくA2未満、A2より大きくA3未満、A1より大きくA3以下、A1より大きくA2以下、A2より大きくA3以下等が例示される。
【0012】
本開示において、各成分、条件、数値等は、明細書で具体的に例示されたものに限定されるわけではない。本発明が解決しようとする課題が解決される限りにおいて、各成分、条件、数値等は、特に限定されない。
【0013】
本開示において「不揮発分」は、有機溶剤及び水以外の成分の合計質量である。1つの実施形態において、対象物Aの不揮発分は、対象物A 1gを105℃で加熱して恒量に達した時点で残存した成分の合計質量とする。
【0014】
本開示において「(メタ)アクリル」は「アクリル及びメタクリルからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。また「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル及びメタクリロイルからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。
【0015】
アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基等が例示される。
【0016】
直鎖アルキル基は、-CnH2n+1(nは1以上の整数)の一般式で表現できる。直鎖アルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカメチル基等が例示される。
【0017】
分岐アルキル基は、直鎖アルキル基の少なくとも1つの水素原子がアルキル基によって置換された、環状構造を有さない基である。分岐アルキル基は、i-プロピル基、ジエチルペンチル基、トリメチルブチル基、トリメチルペンチル基、トリメチルヘキシル基等が例示される。
【0018】
シクロアルキル基は、単環シクロアルキル基、架橋環シクロアルキル基、縮合環シクロアルキル基等が例示される。なお、シクロアルキル基の少なくとも1つの水素原子がアルキル基によって置換された基もシクロアルキル基とする。
【0019】
本開示において、単環は、炭素の共有結合により形成された内部に橋かけ構造を有しない環状構造を意味する。また、縮合環は、2つ以上の単環が2つの原子を共有している(すなわち、それぞれの環の辺を互いに1つだけ共有(縮合)している)環状構造を意味する。架橋環は、2つ以上の単環が3つ以上の原子を共有している環状構造を意味する。
【0020】
単環シクロアルキル基は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル基等が例示される。
【0021】
架橋環シクロアルキル基は、トリシクロデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が例示される。
【0022】
なお、アルキル基には、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基を組み合わせた基も含まれる。上記組み合わせた基は、シクロアルキルアルキル基等が例示される。
【0023】
シクロアルキルアルキル基は、下記で表わされる基である。
Rcalkyl-Ralkyl-
(式中、Rcalkylは、シクロアルキル基を表し、Ralkylは、アルキル基を表す)
【0024】
アルキレン基は、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、シクロアルキレン基等が例示される。
【0025】
直鎖アルキレン基は、-(CH2)n-(nは1以上の整数)の一般式で表現できる。直鎖アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカメチレン基等が例示される。
【0026】
分岐アルキレン基は、直鎖アルキレン基の少なくとも1つの水素原子がアルキル基によって置換された基であって、環状構造を有さない基である。分岐アルキレン基は、ジエチルペンチレン基、トリメチルブチレン基、トリメチルペンチレン基、トリメチルヘキシレン基等が例示される。
【0027】
シクロアルキレン基は、単環シクロアルキレン基、架橋環シクロアルキレン基、縮合環シクロアルキレン基等が例示される。またシクロアルキレン基は、1つ以上の水素原子が直鎖又は分岐アルキル基によって置換されていてもよい。
【0028】
単環シクロアルキレン基は、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロデシレン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレン基等が例示される。
【0029】
架橋環シクロアルキレン基は、トリシクロデシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基等が例示される。
【0030】
縮合環シクロアルキレン基は、ビシクロデシレン基等が例示される。
【0031】
なお、アルキレン基には、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、シクロアルキレン基を組み合わせた基も含まれる。上記組み合わせた基は、シクロアルキレンアルキレン基、アルキレンシクロアルキレンアルキレン基等が例示される。
【0032】
シクロアルキレンアルキレン基は、下記で表わされる基である。
-Rcalkylene-Ralkylene-
(式中、Rcalkyleneは、シクロアルキレン基を表し、Ralkyleneは、アルキレン基を表す)
【0033】
アルキレンシクロアルキレンアルキレン基は、下記で表わされる基である。
-Ralkylene-Rcalkylene-Ralkylene-
(式中、Rcalkyleneは、シクロアルキレン基を表し、Ralkyleneは、アルキレン基を表す)
【0034】
芳香族基(アリール基、アリーレン基)は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。芳香族基の置換基は、アルキル基、チオアルキル基、チオアリール基、カルボニルアリール基等が例示される。
【0035】
アリール基は、単環アリール基、縮合環アリール基等が例示される。
【0036】
単環アリール基は、フェニル基、トリル基、メシチル基等が例示される。
【0037】
縮合環アリール基は、ナフチル基等が例示される。
【0038】
アリーレン基は、単環アリーレン基、縮合環アリーレン基等が例示される。
【0039】
単環アリーレン基は、フェニレン基、トリレン基、メシチレン基等が例示される。
【0040】
縮合環アリーレン基は、ナフチレン基等が例示される。
【0041】
[離型コーティング剤:コーティング剤ともいう]
本開示は、イソシアネート基含有シリコーン、水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含む、離型コーティング剤を提供する。
【0042】
<イソシアネート基含有シリコーン>
イソシアネート基含有シリコーンは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0043】
イソシアネート基含有シリコーンは、ポリイソシアネートと水酸基含有シリコーンとの反応物等が例示される。
【0044】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0045】
本開示において、「ポリイソシアネート」とは、2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物である。
【0046】
ポリイソシアネートは、直鎖脂肪族ポリイソシアネート、分岐脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート並びにこれらのビウレット体、イソシアヌレート体(ヌレート体)、アロファネート体、アダクト体等が例示される。
【0047】
直鎖脂肪族ポリイソシアネートは、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0048】
分岐脂肪族ポリイソシアネートは、ジエチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルブチレンジイソシアネート、トリメチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0049】
脂環族ポリイソシアネートは、単環脂環族ポリイソシアネート、架橋環脂環族ポリイソシアネート、縮合環脂環族ポリイソシアネート等が例示される。
【0050】
単環脂環族ポリイソシアネートは、水添キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、シクロヘプチレンジイソシアネート、シクロデシレンジイソシアネート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示される。
【0051】
架橋環脂環族ポリイソシアネートは、トリシクロデシレンジイソシアネート、アダマンタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が例示される。
【0052】
縮合環脂環族ポリイソシアネートは、ビシクロデシレンジイソシアネート等が例示される。
【0053】
芳香族ポリイソシアネートは、単環芳香族ポリイソシアネート、縮合環芳香族ポリイソシアネート等が例示される。
【0054】
単環芳香族ポリイソシアネートは、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート等のジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネート等のテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が例示される。
【0055】
縮合環芳香族ポリイソシアネートは、1,5-ナフチレンジイソシアネート等が例示される。
【0056】
ポリイソシアネートは、ビウレット体、イソシアヌレート体、アロファネート体、アダクト体等が例示される。
【0057】
ポリイソシアネートのビウレット体は、下記構造式で表される化合物等が例示される。
【化01】
[式中、n
bは、0以上の整数であり、R
bA~R
bEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R
bα~R
bβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化02】
(n
b1は、0以上の整数であり、R
b1~R
b5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R
b’~R
b''はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はR
bα~R
bβ自身の基である。R
b4~R
b5、R
b''は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。R
bD~R
bE、R
bβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
【0058】
ポリイソシアネートのビウレット体は、デュラネート24A-100、デュラネート22A-75P、デュラネート21S-75E(以上旭化成(株)製)、デスモジュールN3200A(以上住化コベストロウレタン製)等が例示される。
【0059】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体は、下記構造式で表される化合物等が例示される。
【化03】
[式中、n
iは、0以上の整数であり、R
iA~R
iEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R
iα~R
iβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化04】
(n
i1は、0以上の整数であり、R
i1~R
i5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R
i’~R
i''はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はR
iα~R
iβ自身の基である。R
i4~R
i5、R
i''は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。R
iD~R
iE、R
iβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
【0060】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の市販品は、デュラネートTPA-100、デュラネートTKA-100、デュラネートMFA-75B、デュラネートMHG-80B(以上旭化成(株)製)、コロネートHXR、コロネートHX、コロネートHK、コロネート2037(以上東ソー(株)製)、タケネートD-127N、タケネートD-131N、タケネートD-132N、タケネートD-204EA-1(以上三井化学(株)製)、VESTANAT T1890/100(以上エボニック・ジャパン(株)製)等が例示される。
【0061】
ポリイソシアネートのアロファネート体は、下記構造式で表される化合物等が例示される。
【化05】
[式中、nは、0以上の整数であり、R
Aは、アルキル基又はアリール基であり、R
B~R
Gはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R
α~R
γはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化06】
(n1は、0以上の整数であり、R
1~R
6はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R’’’はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はR
α~R
γ自身の基である。R
1~R
4、R’~R’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。R
B~R
E、R
α~R
βは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
【0062】
ポリイソシアネートのアロファネート体の市販品は、コロネート2793(東ソー(株)製)、タケネートD-178N(三井化学(株)製)等が例示される。
【0063】
ポリイソシアネートのアダクト体は、トリメチロールプロパンとポリイソシアネートのアダクト体、グリセリンとポリイソシアネートのアダクト体等が例示される。
【0064】
(トリメチロールプロパンとポリイソシアネートのアダクト体)
【化07】
[式中、n
adは0以上の整数であり、R
adA~R
adEは、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、R
ad1~R
ad2は、それぞれ独立に
【化08】
(式中、n
ad’は0以上の整数であり、
R
ad’~R
ad’’は、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
R
ad’’’は、R
ad1~R
ad2自身の基であり、
R
ad’~R
ad’’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)
であり、R
adD~R
adE、R
ad2は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
【0065】
(グリセリンとポリイソシアネートのアダクト体)
【化09】
[式中、n
ad1は0以上の整数であり、
R
adα~R
adεは、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
R
adA~R
adBは、それぞれ独立に
【化10】
(式中、n
ad1’は0以上の整数であり、
R
adδ’~R
adε’は、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
R
adB’は、R
adA~R
adB自身の基であり、
R
adδ’~R
adε’、R
adB’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)
であり、R
adδ~R
adε、R
adBは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
【0066】
ポリイソシアネートのアダクト体は、デュラネートP301-75E(以上旭化成(株)製)、タケネートD110N、タケネートD120N、タケネートD160N(以上三井化学(株)製)、コロネートL、コロネートHL(以上東ソー(株)製)等が例示される。
【0067】
ポリイソシアネート固形分のNCO含有率(NCO%)の上限及び下限は、30、25、23.5、23.3、23、22.7、22、20、19、18、17、16.4、15、14.6、11、10%等が例示される。1つの実施形態において、上記NCO含有率(NCO%)は、10~30%が好ましい。
【0068】
(水酸基含有シリコーン)
水酸基含有シリコーンは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0069】
水酸基含有シリコーンは、水酸基含有有機変性シリコーン等が例示される。
【0070】
本開示において、「有機変性シリコーン」は、シリコーンに有機基を導入したものをいう。有機変性シリコーンは、側鎖型有機変性シリコーン、両末端型有機変性シリコーン、片末端型有機変性シリコーン、側鎖両末端型有機変性シリコーン等が例示される。
【0071】
水酸基含有有機変性シリコーンは、水酸基含有アクリル変性シリコーン、水酸基含有ポリエステル変性シリコーン、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン、水酸基含有カルビノール変性シリコーン等が例示される。
【0072】
水酸基含有アクリル変性シリコーンの市販品は、ZX-028-G((株)T&K TOKA製)、BYK-SILCLEAN3700(ビックケミー・ジャパン(株)製)、サイマックUS-270(東亞合成(株)製)等が例示される。
【0073】
水酸基含有ポリエステル変性シリコーン又は水酸基含有ポリエーテル変性シリコーンの市販品は、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-SILCLEAN3720(ビックケミー・ジャパン(株)製)、X-22-4952、KF-6123(信越化学工業(株)製)等が例示される。
【0074】
水酸基含有カルビノール変性シリコーンの市販品は、X-22-4039、X-22-4015、X-22-4952、X-22-4272、X-22-170BX、X-22-170DX、KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003、KF-6123、X-22-176F(信越化学工業(株)製)、サイラプレーンFM-4411、サイラプレーンFM-4421、サイラプレーンFM-4425、サイラプレーンFM-0411、サイラプレーンFM-0421、サイラプレーンFM-0425、サイラプレーンFM-DA11、サイラプレーンFM-DA21、サイラプレーンFM-DA26(JNC(株)製)等が例示される。
【0075】
1つの実施形態において、水酸基含有シリコーンの水酸基数は、1~4個が好ましく、2個がより好ましく、剥離力と面精度が良くなる観点から両末端型水酸基含有シリコーンの両末端に1個ずつ水酸基を有することがさらに好ましい。
【0076】
水酸基含有シリコーンの数平均分子量の上限及び下限は、15000、14000、13000、12000、11000、10000、9000、8000、7000、6000、5000、4000、3000、2000、1000等が例示される。1つの実施形態において、上記数平均分子量は、1000~15000が好ましい。
【0077】
(イソシアネート基含有シリコーンの物性等)
イソシアネート基含有シリコーン100質量%に含まれるポリイソシアネート由来構成単位の含有量の上限及び下限は、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は、20~65質量%が好ましい。
【0078】
イソシアネート基含有シリコーン100質量%に含まれる水酸基含有シリコーン由来構成単位の含有量の上限及び下限は、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は、35~80質量%が好ましい。
【0079】
イソシアネート基含有シリコーンを製造する際におけるポリイソシアネートのイソシアネート基当量と水酸基含有シリコーンの水酸基当量との比(NCO/OH)の上限及び下限は、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3等が例示される。1つの実施形態において、上記比(NCO/OH)は、3~12が好ましい。
【0080】
コーティング剤不揮発分100質量%中のイソシアネート基含有シリコーンの含有量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0.1~10質量%が好ましい。
【0081】
<水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート>
水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレートは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0082】
本開示において、「水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート」は、水酸基を1個以上及び(メタ)アクリロイル基を1個以上有する化合物を意味する。
【0083】
1つの実施形態において、水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレートが有する水酸基の個数は、1~2個が好ましい。
【0084】
水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレートは、水酸基含有グリセリン(ポリ)(メタ)アクリレート、水酸基含有(ポリ)ペンタエリスリトール(ポリ)(メタ)アクリレート、水酸基含有(ポリ)トリメチロールプロパン(ポリ)(メタ)アクリレート等が例示される。
【0085】
(水酸基含有グリセリン(ポリ)(メタ)アクリレート)
水酸基含有グリセリン(ポリ)(メタ)アクリレートは、下記構造式により示される化合物である。
【化11】
(式中、R
b1~R
b3はそれぞれ独立して、水素原子又は(メタ)アクリロイル基、アルキル基、アリール基、
【化12】
(式中、bは1以上の整数である。)又は
【化13】
(式中、n、cは1以上の整数である。)
であり、R
b1~R
b3の少なくとも1つが水素原子、
【化14】
(式中、bは1以上の整数である。)又は
【化15】
(式中、n、cは1以上の整数である。)であり、
R
b1~R
b3の少なくとも1つが(メタ)アクリロイル基である。
【0086】
水酸基含有グリセリン(ポリ)(メタ)アクリレートは、1,2-ジヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0087】
(水酸基含有(ポリ)ペンタエリスリトール(ポリ)(メタ)アクリレート)
水酸基含有(ポリ)ペンタエリスリトール(ポリ)(メタ)アクリレートは、下記構造式により示される化合物である。
【化16】
(式中、mは0以上の整数であり、R
b4~R
b9は、それぞれ独立に水素原子、(メタ)アクリロイル基、
【化17】
(式中、bは1以上の整数である。)又は
【化18】
(式中、n、cは1以上の整数である。)
であり、R
b4~R
b9から選択される少なくとも1つが水素原子、
【化19】
(式中、bは1以上の整数である。)又は
【化20】
(式中、n、cは1以上の整数である。)であり、
R
b4~R
b9から選択される少なくとも1つが(メタ)アクリロイル基である。なお、R
b7及びR
b8は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)
【0088】
また、「各構成単位ごとに基が異なっていてもよい」とは、例えば上記構造式において、mが2であるとき、
【化21】
R
b7AとR
b7Bとは異なる基であってよく、R
b8AとR
b8Bとは異なる基であってよいことを意味する(以下同様)。
【0089】
水酸基含有ペンタエリスリトール(ポリ)(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0090】
水酸基含有ポリペンタエリスリトール(ポリ)(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0091】
(水酸基含有(ポリ)トリメチロールプロパン(ポリ)(メタ)アクリレート)
水酸基含有(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレートは、下記構造式により示される化合物である。
【化22】
(式中、pは0以上の整数であり、R
b10~R
b13は水素原子、(メタ)アクリロイル基、
【化23】
(式中、bは1以上の整数である。)又は
【化24】
(式中、n、cは1以上の整数である。)であり、
R
b10~R
b13から選択される少なくとも1つが、水素原子、
【化25】
(式中、bは1以上の整数である。)又は
【化26】
(式中、n、cは1以上の整数である。)
であり、R
b1~R
b3の少なくとも1つが(メタ)アクリロイル基である。なお、R
b12は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)
【0092】
水酸基含有トリメチロールプロパン(ポリ)(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0093】
水酸基含有ポリトリメチロールプロパン(ポリ)(メタ)アクリレートは、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0094】
水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレートの水酸基価の上限及び下限は、400、300、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記水酸基価は、30~400mgKOH/gが好ましい。
【0095】
本開示において、水酸基価とは、以下の式による計算値である。
(水酸基価)=(水酸化カリウム分子量:56.1)×1000/(水酸基当量)
(水酸基当量)=(1分子の分子量)/(1分子中に存在する水酸基の数)
【0096】
水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル当量の上限及び下限は、180,170、160、150、140,130、120、110、100、90、80、70、60g/eq等が例示される。1つの実施形態において、上記(メタ)アクリル当量は、60~180g/eqが好ましい。
【0097】
本開示において、「(メタ)アクリル基当量」とは、(メタ)アクリル基1モル当たりの分子量であり、以下の式により求められる。
((メタ)アクリル基当量)=(1分子の分子量)/(1分子中に存在する(メタ)アクリル基の数)
【0098】
コーティング剤不揮発分100質量%中の水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレートの含有量の上限及び下限は、95、93、91、90、89、87、85、83、81、80、79、77、75、73、71、70質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は70~95質量%が好ましい。
【0099】
水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレートとイソシアネート基含有シリコーンとの質量比(水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート/イソシアネート基含有シリコーン)の上限及び下限は、950、900、750、500、250、100、90、80、70、60、50、40、30、28、26、24、22、20、18、16、14、12、10、7等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、7~950が好ましく、7~60がより好ましい。
【0100】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0101】
光重合開始剤は、α-ヒドロキシアルキルフェノン、無置換又は置換アルキルフェノン、無置換又は置換ベンジル、無置換又は置換ベンゾフェノン、アシルホスフィンオキシド、オキシムエステル、置換チオキサントン等が例示される。
【0102】
α-ヒドロキシアルキルフェノンは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン))、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン)等が例示される。
【0103】
無置換又は置換アルキルフェノンは、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、ベンゾイン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等が例示される。
【0104】
無置換又は置換ベンジルは、ベンジル、p-アニシル等の無置換又は置換ベンジル等が例示される。
【0105】
無置換又は置換ベンゾフェノンは、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-ベンゾイル安息香酸、4-ベンゾイル安息香酸、2-ベンゾイル安息香酸メチル等が例示される。
【0106】
アシルホスフィンオキシドは、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等が例示される。
【0107】
オキシムエステルは、1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](すなわち2-((ベンゾイルオキシ)イミノ)-1-(4-(フェニルチオ)フェニル)オクタン-1-オン)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(すなわち1-(((1-(9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル)エチリデン)アミノ)オキシ)エタン-1-オン)、5-(4-イソプロピルフェニルチオ)―1,2-インダンジオン,2-O-アセチル)オキシム、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)等が例示される。
【0108】
置換チオキサントンは、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等が例示される。
【0109】
上記以外の光重合開始剤は、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム、2-エチルアントラキノン、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が例示される。
【0110】
コーティング剤不揮発分100質量%中の光重合開始剤の含有量の上限及び下限は、20、19、17、15、13、11、10、9、7、5、3、2、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、含有量は1~20質量%が好ましい。
【0111】
<熱硬化触媒>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は熱硬化触媒を含む。
【0112】
熱硬化触媒は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0113】
熱硬化触媒は、有機金属触媒、有機アミン触媒等が例示される。
【0114】
有機金属触媒は、有機典型金属触媒、有機遷移金属触媒等が例示される。
【0115】
有機典型金属触媒は、有機錫触媒、有機ビスマス触媒等が例示される。
【0116】
有機錫触媒は、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等が例示される。
【0117】
有機ビスマス触媒は、オクチル酸ビスマス等が例示される。
【0118】
有機遷移金属触媒は、有機チタン触媒、有機ジルコニウム触媒、有機鉄触媒等が例示される。
【0119】
有機チタン触媒は、チタンエチルアセトアセテート等が例示される。
【0120】
有機ジルコニウム触媒は、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等が例示される。
【0121】
有機鉄触媒は、鉄アセチルアセトネート等が例示される。
【0122】
有機アミン触媒は、ジアザビシクロオクタン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、エチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン及びトリエチレンジアミン等が例示される。
【0123】
コーティング剤不揮発分100質量%中の熱硬化触媒の含有量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~10質量%が好ましい。
【0124】
<有機溶媒>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は有機溶媒を含む。
【0125】
有機溶媒は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0126】
有機溶媒は、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート及びセロソルブアセテート等のエステル溶媒;ソルベッソ#100及びソルベッソ#150(いずれも商品名。エクソンモービル社製。)等の石油系溶媒;クロロホルム等のハロアルカン溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒等が例示される。1つの実施形態において、上記コーティング剤のポットライフの観点より、有機溶媒はケトン溶媒が好ましく、ケトン溶媒の中でもアセチルアセトンを含むことが好ましい。
【0127】
コーティング剤100質量%中の有機溶媒の含有量の上限及び下限は、99、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~99質量%が好ましく、50~99質量%がより好ましい。
【0128】
<添加剤>
上記コーティング剤には、イソシアネート基含有シリコーン、水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート、光重合開始剤、熱硬化触媒、有機溶媒のいずれにも該当しない剤を添加剤として含み得る。
【0129】
添加剤は、重合禁止剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、顔料、帯電防止剤、金属酸化物微粒子分散体、有機微粒子分散体等が例示される。
【0130】
1つの実施形態において、添加剤の含有量は、コーティング剤100質量部に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。また、イソシアネート基含有シリコーン、水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート、光重合開始剤、熱硬化触媒、有機溶媒のいずれか100質量部に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。
【0131】
上記コーティング剤は、イソシアネート基含有シリコーン、水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート、光重合開始剤並びに必要に応じて熱硬化触媒、有機溶媒及び添加剤が、各種公知の手段により分散・混合されることにより製造され得る。なお、各成分の添加順序は特に限定されない。また、分散・混合手段としては、各種公知の装置(乳化分散機、超音波分散装置等)を用いることができる。
【0132】
上記離型コーティング剤は、活性エネルギー線硬化性離型コーティング剤、熱硬化性離型コーティング剤、活性エネルギー線及び熱硬化性離型コーティング剤として使用され得る。
【0133】
[硬化物]
本開示は、上記離型コーティング剤の硬化物を提供する。上記硬化物を製造する際の条件は後述のもの等が例示される。
【0134】
[積層物]
本開示は、上記硬化物を含む、積層物を提供する。
【0135】
1つの実施形態において、積層物の製造方法は、上記コーティング剤を基材の少なくとも片面に塗工する工程(塗工工程)、加熱工程及び活性エネルギー線照射工程並びに必要に応じてエージング工程を含む。
【0136】
(塗工工程)
塗工方法は、バーコーター塗工、ワイヤーバー塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が例示される。
【0137】
塗工量は、乾燥後の質量が0.01~30g/m2程度が好ましく、0.1~10g/m2程度がより好ましい。
【0138】
上記基材は、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ナイロン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等のプラスチックからなる基材等が例示され、これらの中でもポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。
【0139】
基材は必要に応じて表面処理(コロナ放電等)がなされていてもよい。また、基材は、その片面あるいは両面に、本開示のコーティング剤以外のコーティング剤による層が設けられていてもよい。
【0140】
基材の厚みは、10~300μm程度が好ましい。また、硬化物層の厚みは、0.1~10μm程度が好ましい。
【0141】
(加熱工程)
加熱工程は、循風乾燥機等による乾燥が例示される。条件は90~130℃で10秒~2分程度静置等が例示される。
【0142】
(活性エネルギー線照射工程)
活性エネルギー線照射工程に用いられる活性エネルギー線は、紫外線や電子線等が例示される。紫外線の光源は、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置等が例示される。なお、光量や光源配置、搬送速度等は必要に応じて調整できる。また、紫外線の積算光量は10~200mJ/cm2が好ましく、搬送速度は5~50m/分程度が好ましい。
【0143】
(エージング工程)
フィルムを製造する際、必要に応じて乾燥の後にエージング処理が行われる。条件は20~50℃で1~3日間のエージング処理等が例示される。
【実施例0144】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、上述の好ましい実施形態における説明及び以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、各実施例及び比較例において、特に説明がない限り、部、%等の数値は質量基準である。
【0145】
製造例1:イソシアネート基含有シリコーンの製造
撹拌装置、冷却管を備えた反応容器に、サイラプレーンFM-0411(水酸基含有シリコーン)を100部、タケネートD-165N(ポリイソシアネート)を49.2部、酢酸エチルを350部仕込んだ後、系内の温度を30分かけて約55℃に昇温した。次いで、オクチル酸第一スズ(製品名「スタノクト」、三菱ケミカル(株)製)を0.2部仕込んだ。その後、系内の温度を30分かけて約67℃に昇温し、3時間反応させることにより、イソシアネート基含有シリコーンを得た。
【0146】
特段言及がない限り、製造例1以外の製造例は、下記表のように変更した以外は、製造例1と同様にして行った。
【0147】
【0148】
<略称の説明>
・水酸基含有シリコーン(以下JNC(株)製)
FM-0411:サイラプレーンFM-0411、数平均分子量1000、片末端に1個水酸基を有するカルビノール変性シリコーン、不揮発分100%
FM-DA21:サイラプレーンFM-DA21、数平均分子量5000、片末端に2個水酸基を有するカルビノール変性シリコーン、不揮発分100%
FM-4421:サイラプレーンFM-4421、数平均分子量5000、両末端に1個ずつ水酸基を有するカルビノール変性シリコーン、不揮発分100%
・ポリイソシアネート
D-165N:タケネートD-165N、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット体、NCO%=23.3%、不揮発分100%、三井化学(株)製
D-170N:タケネートD-170N、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、NCO%=20.7%、不揮発分100%、三井化学(株)製
MFA-75B:デュラネートMFA-75B、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、NCO%=13.7%、不揮発分75%、旭化成(株)製
【0149】
実施例1:離型コーティング剤の製造
製造例1のイソシアネート基含有シリコーン5部、水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート(A-TMM-3L)100部、光重合開始剤(Omnirad379)10部、熱硬化触媒(TC750)2.8部、メチルエチルケトン150部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150部をよく混合することによって、離型コーティング剤を製造した。
【0150】
特段言及がない限り、実施例1以外の実施例及び比較例は、下記表のように変更した以外は、実施例1と同様にして行った。
【0151】
【表2】
※1 耐溶剤性悪化のため未測定
※2 塗膜白化のため未測定
【0152】
<略称の説明>
・水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレート
A-TMM-3L:NKエステル A-TMM-3L、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(トリアクリレート約55%)、新中村化学工業(株)製
・光重合開始剤(以下、IGM Resins社製)
Omnirad379:2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン
Omnirad127D:2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン)
Omnirad907:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン
・熱硬化触媒
TC750:製品名「オルガチックスTC-750」、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、マツモトファインケミカル(株)製
【0153】
<離型フィルムの作製>
製造したコーティング剤を未処理PETフィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ(株)製、膜厚50μm)に膜厚1μmとなるように塗工した。次いで、125℃で30秒間加熱(熱乾燥)後、高圧水銀灯を用いて50mJ/cm2の紫外線を照射した。その後に23℃×3日の条件でエージングさせて表面に硬化物層を有する積層物を製造した。
【0154】
<耐溶剤性>
硬化物層にメチルエチルケトンを含浸させた綿棒で100往復擦った。評価基準を下記に示す。
○:硬化物層が溶けていない
×:硬化物層が溶けて、基材が露出する
【0155】
<剥離力>
硬化物層にポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製31Bテープ:20mm幅)を2kgローラーで1往復させて貼り付けた。常温で30分間静置した後、テンシロン万能試験機を用いて300mm/分の速度で剥離させて剥離力を測定した。
【0156】
<面精度>
硬化物層を目視にて観察した。評価基準を下記に示す。
○:硬化物層の表面が平滑
△:硬化物層の表面に凹凸があり面が粗い
×:硬化物層の表面が白化