(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083791
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】二次電池用電極、及び二次電池用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20230609BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230609BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230609BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20230609BHJP
C01B 32/20 20170101ALI20230609BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/36 D
H01M4/1393
C01B32/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197689
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】常深 剛
(72)【発明者】
【氏名】河口 優祐
(72)【発明者】
【氏名】山村 英行
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB02
4G146AB10
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC22A
4G146AD23
4G146AD24
4G146AD25
4G146CB07
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB29
5H050EA10
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5H050EA27
5H050EA28
5H050FA08
5H050FA12
5H050FA17
5H050GA01
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】電池抵抗を低減しつつ高容量且つ高耐久性を備えた二次電池用電極、及び二次電池用電極の製造方法を提供すること。
【解決手段】二次電池用電極E1は、集電箔10と、集電箔10の表面上に形成された合材層20と、を有し、合材層20は、球状炭素材料30及び扁平状黒鉛材料40を含み、扁平状黒鉛材料40の長軸方向と集電箔10の表面とのなす角度の平均が30°~70°となるように扁平状黒鉛材料40が配向している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電箔と、
前記集電箔の表面上に形成された合材層と、を有し、
前記合材層は、
球状炭素材料及び扁平状黒鉛材料を含み、
前記扁平状黒鉛材料の長軸方向と前記集電箔の表面とのなす角度の平均が30°~70°となるように前記扁平状黒鉛材料が配向している二次電池用電極。
【請求項2】
前記球状炭素材料と前記扁平状黒鉛材料との混合比が質量比で70:30~95:5である請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項3】
前記球状炭素材料のアスペクト比が1.0~2.0であり、前記扁平状黒鉛材料のアスペクト比が2.0~100である請求項1又は2に記載の二次電池用電極。
【請求項4】
前記球状炭素材料のタップ密度が0.9g/cm3以上であり、前記扁平状黒鉛材料のタップ密度が0.7g/cm3以下である前記請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
【請求項5】
球状炭素材料、扁平状黒鉛材料、及び溶媒を少なくとも含むペーストを集電箔の表面に塗工して塗膜を形成する塗工工程と、
前記塗膜に前記集電箔の表面に対して鋭角となる磁場を印加することにより前記塗膜に含まれる前記扁平状黒鉛材料を配向させる磁場配向工程と、
前記扁平状黒鉛材料を配向させた前記塗膜を乾燥して前記集電箔の表面上に合材層を形成する合材層形成工程と、
を有する二次電池用電極の製造方法。
【請求項6】
前記扁平状黒鉛材料を配向させた前記塗膜と前記合材層との少なくとも一方を前記集電箔の表面と直交する厚さ方向からプレスするプレス工程をさらに有する請求項5に記載の二次電池用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電極、及び二次電池用電極の製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や車両駆動用電源として広く用いられている。二次電池の中でも、特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車等の車両の駆動用高出力電源として好適に用いられている。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出する正極(正極板)及び負極(負極板)の電極間を、電解質中のリチウムイオンが移動することで充放電可能な二次電池である。
【0003】
リチウムイオン二次電池等の二次電池に用いられる電極は、導電性の集電箔と、集電箔上に保持された活物質及び導電材等の電極材料を含む合材層と、を備えている。このような二次電池では、電池特性を向上させるために、合材層に含まれる電極材料の配向を制御することにより電池抵抗の低減が図られる。
【0004】
特許文献1には、集電箔と活物質層とを有する電極を備え、前記活物質層は、活物質粒子と鱗片状黒鉛とを含有し、前記鱗片状黒鉛の前記集電箔に対する平均角度は、20°以上56°以下であり、複数の前記活物質粒子が、前記鱗片状黒鉛の周縁部に夫々接っしていることにより、前記集電箔と前記活物質層との厚さ方向での導電経路を前記鱗片状黒鉛によって確保しつつ、前記活物質層の面方向での導電性のばらつきを抑えた蓄電素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン二次電池を構成する負極の活物質として、鱗片状の天然黒鉛(鱗片状黒鉛)が好適に用いられる。鱗片状黒鉛を含む負極の製造工程では、鱗片状黒鉛及び溶媒を含むペーストを集電箔上に塗工した後、高密度化するために高圧でプレスする方法がとられるが、このプレス等の応力により鱗片状黒鉛が集電箔に対して平行に配向しやすい。この場合、集電箔に対して平行に配向している鱗片状黒鉛の粒子同士が重なり合うことにより、負極内の粒子間に形成される空隙が減少したり、鱗片状黒鉛が蓋をした状態となったりして、負極内での電解液の流通や電解液中のリチウムイオンの移動が阻害され、電池抵抗が増大するという問題があった。
【0007】
このような問題に対し、磁場配向の技術を用いて鱗片状黒鉛を集電箔に対して垂直に配向させることにより、電池抵抗を低減できることが知られている。しかしながら、鱗片状黒鉛は充填性が低いため高容量化には不向きであり、鱗片状黒鉛のみを含む負極を用いた場合、容量低下・劣化が生じやすいという問題があった。さらに、集電箔に対して垂直に配向している鱗片状黒鉛は、高圧でのプレス等により破砕、亀裂、割れが生じる可能性があるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、電池抵抗を低減しつつ高容量且つ高耐久性を備えた二次電池用電極、及び二次電池用電極の製造方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態にかかる二次電池用電極は、集電箔と、集電箔の表面上に形成された合材層と、を有し、合材層は、球状炭素材料及び扁平状黒鉛材料を含み、扁平状黒鉛材料の長軸方向と集電箔の表面とのなす角度の平均が30°~70°となるように扁平状黒鉛材料が配向している。
【0010】
また、一実施の形態にかかる二次電池用電極の製造方法は、球状炭素材料、扁平状黒鉛材料、及び溶媒を少なくとも含むペーストを集電箔の表面に塗工して塗膜を形成する塗工工程と、塗膜に集電箔の表面に対して鋭角となる磁場を印加することにより塗膜に含まれる扁平状黒鉛材料を配向させる磁場配向工程と、扁平状黒鉛材料を配向させた塗膜を乾燥して集電箔の表面上に合材層を形成する合材層形成工程と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、電池抵抗を低減しつつ高容量且つ高耐久性を備えた二次電池用電極、及び二次電池用電極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかる二次電池用電極を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す二次電池用電極に含まれる扁平状黒鉛材料を示す図である。
【
図3】実施の形態1にかかる二次電池用電極の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示すフローチャートのプレス工程を説明する図である。
【
図5】扁平状黒鉛材料の配向角度と電池特性との関係を示すグラフである。
【
図6】扁平状黒鉛材料の混合割合と電池特性との関係を示すグラフである。
【
図7】扁平状黒鉛材料が集電箔に対して略平行に配向している場合の問題点を説明する断面図である。
【
図8】扁平状黒鉛材料が集電箔に対して略垂直に配向している場合の問題点を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0014】
以下、本実施形態にかかる二次電池用電極の好適な実施形態の一つとして、リチウムイオン二次電池の負極に具体化して説明する。リチウムイオン二次電池は、電気化学反応に際し、正極(正極板)と負極(負極板)との間で電荷担体であるリチウムイオンが電解液中を伝導することで、充放電が実現される二次電池である。このようなリチウムイオン二次電池は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両の駆動用電源として好適に用いられる。
【0015】
なお、本実施形態における「長軸径」は、粒子の長軸方向の最も長い径の平均である。本実施形態における「短軸径」は、粒子の長軸方向に直交する短軸方向の最も長い径の平均である。短軸径及び長軸径は、SEM(Scanning Electron Microscope)観察により得られる負極板E1の断面画像に対する画像解析から、任意に選ばれる複数の粒子を選択して求めることができる。
【0016】
例えば、集束イオンビーム(FIB;Focused Ion Beam)にて試料(例えば、負極板E1)を加工し、当該試料の露出した断面をSEMにて観察することができる。試料を加工する方法としては、例えば、適当な樹脂で固めた試料を、所望の断面で切断し、その切断面を少しずつ削りながらSEM観察を行うとよい。
【0017】
まず、
図1を参照して本実施形態にかかる二次電池用電極(負極板E1)の概略を説明する。
図1は、実施の形態1にかかる二次電池用電極を示す断面図である。
図1に示す断面図は、集電箔10の表面に直交する負極板E1の断面の一部を示している。
【0018】
図1に示すように、負極板E1は、集電箔10と、集電箔10の表面上に形成される合材層20と、を有する。集電箔10は、板状又は箔状に形成され、導電性の良好な金属により構成される。集電箔10を構成する金属は、例えば銅、銅合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等が挙げられる。集電箔10は、例えば5μm~50μmの厚さを有する。
【0019】
合材層20は、幅方向の一方の縁に沿った縁部を除いて、集電箔10の少なくとも一方の表面上に形成される。また、負極板E1は、集電箔10の当該縁部に、合材層20が形成されず集電箔10が露出した露出部を有する。露出部は、外部端子と電気的に接続される部分である。合材層20は、球状炭素材料30及び扁平状黒鉛材料40を少なくとも含み、集電箔10に保持される。合材層20は、さらに結着剤及び増粘剤を含んでも良く、必要に応じてその他の添加剤を含んでも良い。
【0020】
合材層20に含まれる球状炭素材料30及び扁平状黒鉛材料40は、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な活物質として機能する。以下の説明では、球状炭素材料30及び扁平状黒鉛材料40をまとめて活物質と総称する場合がある。
【0021】
本実施形態では、合材層20が球状炭素材料30を含むことにより、扁平状黒鉛材料40のみを含む場合よりも負極板E1を高密度化することができる。また、合材層20に含まれる扁平状黒鉛材料40は集電箔10に対して非平行且つ非垂直となる所定の方向に配向制御されている。そのため、集電箔10に対して扁平状黒鉛材料40が略平行に配向することに起因する電池抵抗の増加と、略垂直に配向している扁平状黒鉛材料40に対して高圧でプレスした場合に生じ得る活物質の破砕等と、を抑制することができる。
【0022】
合材層20全体に占める活物質の割合は、高出力特性及び高エネルギー密度を実現する観点から、例えば、90.0質量%~99.9質量%が好ましく、95.0質量%~99.5質量%がより好ましく、特に98.0質量%~99.0質量%とすることが好ましい。
【0023】
結着剤としては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(BR)等のゴム類、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂等を用いることができる。
【0024】
増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)等のセルロース類を用いることができる。合材層20全体に占める結着剤及び増粘剤を合計した割合は、例えば、0.1質量%~5.0質量%が好ましく、0.3質量%~3.0質量%がより好ましく、特に0.5質量%~1.5質量%とすることが好ましい。
【0025】
合材層20に含まれる活物質の構成について、さらに詳細を説明する。まず、球状炭素材料30は、天然黒鉛又は人造黒鉛を主成分とした球状の粒子形態をなすものであることが好ましい。球状炭素材料30のアスペクト比は、1.0~2.0である。アスペクト比は、球状炭素材料30の短軸径に対する長軸径の比(長軸径/短軸径)の平均値として求めることができる。
【0026】
球状炭素材料30の平均粒径は、例えば3μm~20μmであることが好ましく、5μm~15μmがより好ましく、特に7μm~10μmとすることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折法で測定された体積基準の平均粒径(D50)である。
【0027】
球状炭素材料30のタップ密度は、0.9g/cm3以上が好ましく、1.1g/cm3以上がより好ましい。球状炭素材料30のタップ密度がこのような値であると、高密度の合材層20を形成することができるため、高容量化を実現できる。なお、タップ密度は、例えばタッピング式の密度測定装置を用いて、JIS K1469:2003に規定される方法によって測定することができる。
【0028】
このような球状炭素材料30としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛、アスペクト比が2.0以下の各種黒鉛系炭素材料(例えば、鱗片状黒鉛)を加工してアスペクト比が1.0~2.0の球状にしたもの、又はその非晶質体(例えば、表面に非晶質カーボンをコートした形態のもの)等が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。黒鉛系炭素材料を球状に加工するための球状化処理は、力学的エネルギーを与えることによって球状化する処理であっても、複数の微粒子を造粒して球状化する処理であってもよい。
【0029】
続いて、扁平状黒鉛材料40の詳細については、
図2を適宜参照して説明する。
図2は、
図1に示す二次電池用電極に含まれる扁平状黒鉛材料を示す図である。
図2に示すように、扁平状黒鉛材料40は、一方向に長い長軸と短軸とを有する扁平状の粒子形態をなしており、例えば鱗片状、鱗状、板状、塊状の粒子である。
【0030】
扁平状黒鉛材料40としては、炭素原子の六角網目構造が発達してグラフェン(黒鉛結晶構造における(002)面)が層状に積層された層状構造を有する天然黒鉛、人造黒鉛、又はその非晶質体(例えば、表面に非晶質カーボンをコートした形態のもの)等が挙げられる。扁平状黒鉛材料40には、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。このような扁平状黒鉛材料40は、粒子の内部に長軸方向に延びる複数の細孔41(層間に形成される空隙)を有している。また、このような扁平状黒鉛材料40は、磁場の印加により長軸方向に磁場配向可能である。
【0031】
合材層20に含まれる扁平状黒鉛材料40は、長軸方向と集電箔10の表面とのなす角度である配向角度θの平均が30°~70°となるように配向している。このように、本実施形態では、合材層20に含まれる扁平状黒鉛材料40が集電箔10に対して非平行且つ非垂直となるように略同一方向に配向している。
【0032】
ここで、層状構造を有する扁平状黒鉛材料40におけるリチウムイオンの挿入及び脱離は、層間が露出したエッジ面から行なわれる。したがって、合材層20に含まれる扁平状黒鉛材料40が集電箔10に対して非平行となるように配向していると、扁平状黒鉛材料40が集電箔10に対して略平行に配向している場合と比べて、エッジ面からのリチウムイオン受け入れ性が向上し、入出力特性が向上する。
【0033】
そして、合材層20は、活物質等の電極材料の粒子間に形成される微少な空隙を有している。リチウムイオン二次電池を構成する負極板E1では、粒子間の空隙に浸透した電解液中のリチウムイオンが、合材層20の主面から集電箔10まで直線的又は直線に近い経路で移動することが好ましい。例えば、負極板E1内におけるリチウムイオンの移動経路の曲路率(屈曲度)が低下するほど移動経路が直線的であって抵抗が低くなる一方、曲路率が高くなるほど移動経路が屈曲していて抵抗が高くなる傾向がある。
【0034】
したがって、合材層20に含まれる扁平状黒鉛材料40が集電箔10に対して非平行となるように配向していると、扁平状黒鉛材料40が集電箔10に対して略平行に配向している場合と比べて、負極板E1内における扁平状黒鉛材料40の粒子内外を通るリチウムイオンの移動経路の曲路率を低減できる。これにより、負極板E1内の空隙に浸透した電解液中のリチウムイオンの伝導性が向上し、その結果、電池抵抗を低減することができる。
【0035】
本実施形態において、扁平状黒鉛材料40の配向角度θは、FIB-SEM測定により得られた負極板E1の断面画像に対する画像解析から、任意に選ばれる複数の扁平状黒鉛材料40のそれぞれについて、長軸方向に沿った軸線Aと集電箔10の表面とのなす角度を計測した平均値を採用することができる。
【0036】
また、扁平状黒鉛材料40のアスペクト比は、2~100である。アスペクト比は、扁平状黒鉛材料40の短軸径に対する長軸径の比(長軸径/短軸径)の平均値として求めることができる。アスペクト比がこの範囲であると、扁平状黒鉛材料40の配向性を確保することができる。
【0037】
扁平状黒鉛材料40の平均粒径は、例えば3μm~40μmであることが好ましく、5μm~30μmがより好ましく、特に7μm~20μmとすることが好ましい。
【0038】
扁平状黒鉛材料40のタップ密度は、0.7g/cm3以下が好ましく、0.5g/cm3以下がより好ましい。扁平状黒鉛材料40のタップ密度がこのような値であると、負極板E1内の粒子間に適度な空隙が形成されることにより、当該空隙に浸透した電解液中のリチウムイオンのより直線的な移動経路を確保することができるため、リチウムイオンの伝導性が向上する。
【0039】
そして、本実施形態では、合材層20に含まれる球状炭素材料30と扁平状黒鉛材料40との混合比が、質量比で70:30~95:5の範囲内であることが好ましく、85:15~90:10の範囲内であることがより好ましい。扁平状黒鉛材料40の質量比が5重量%未満であると、扁平状黒鉛材料40を配向制御しても負極板E1内の曲路率を十分に低減することができず、電池抵抗を低減する効果が得られにくい。扁平状黒鉛材料40の質量比が30重量%を超えると、負極板E1内の曲路率を低減させることによる電池抵抗の低減効果は得られるものの、十分な電池容量が得られにくい。
【0040】
また、合材層20の密度は、例えば、1.0g/cm3~1.7g/cm3であることが好ましく、1.1g/cm3~1.5g/cm3がより好ましい。合材層20の密度を上記の範囲内とすることにより、粒子間の空隙を十分に確保しつつ曲路率を低減でき、且つ十分なエネルギー密度を得ることができる。合材層20の厚さは、例えば10μm~200μmであることが好ましく、20μm~100μmがより好ましい。
【0041】
次に、
図3を参照して、上記した負極板E1の製造方法について説明する。
図3は、実施の形態1にかかる二次電池用電極の製造方法を示すフローチャートである。
【0042】
図3に示すように、本実施形態にかかる二次電池用電極の製造方法は、以下のステップS1~S4の工程を有する。ステップS1の塗工工程では、球状炭素材料30、扁平状黒鉛材料40、及び溶媒を少なくとも含むペーストを集電箔10の表面に塗工して塗膜を形成する。ステップS2の磁場配向工程では、塗膜に集電箔10の表面に対して鋭角となる磁場を印加することにより塗膜に含まれる扁平状黒鉛材料40を配向させる。ステップS3の合材層形成工程では、扁平状黒鉛材料40を配向させた塗膜を乾燥して集電箔10の表面上に合材層20を形成する。ステップS4のプレス工程では、合材層20を集電箔10の表面と直交する厚さ方向からプレスする。
【0043】
上記の各工程について、より詳細に説明する。塗工工程では、まず、球状炭素材料30、扁平状黒鉛材料40、結着剤、増粘剤、及び必要に応じてその他の添加剤を含む粉体に溶媒を添加し、プラネタリミキサ等の混錬機を用いて混練することにより負極合材層形成用のペーストを調製する。
【0044】
ここで調製されるペーストの粘度は、低粘度であるほど扁平状黒鉛材料40の配向を制御することが容易になる。ペーストの粘度は、例えば3Pa・s以下であることが好ましく、1Pa・s以下がより好ましい。扁平状黒鉛材料40の配向度を高める観点から、ペーストの粘度は低いほど好ましい。ペーストの粘度の下限は、塗工性を損なわない範囲で適宜設定される。
【0045】
溶媒は、用いる結着剤に応じて適宜選択されるものである。溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン等の非水系溶媒、非水系溶媒を組み合わせた混合溶媒、水、水を主体とする混合溶媒等の水系溶媒を用いることができる。
【0046】
次いで、調製したペーストを集電箔10の表面に塗工することにより、集電箔10の表面上に塗膜を形成する。ペーストは、例えばダイコータ、スリットコータ、コンマコータ、グラビアコータ、ブレードコータ等の塗工方法を用いて集電箔10の表面に塗工することができる。
【0047】
続いて、磁場配向工程では、磁力線の向きが集電箔10に対して鋭角となるように磁場発生体を集電箔10の近傍に配置する。そして、集電箔10の表面に対して鋭角となる磁力線が発生する磁場を塗膜に印加する。この工程では、後述するプレス工程でのプレス圧による扁平状黒鉛材料40の配向の変化を考慮して、例えば扁平状黒鉛材料40の最終的な配向角度θに凡そ対応するように(例えば、配向角度θ+10°程度に)、磁力線の向きを設定することが好ましい。磁場発生体としては、所要の磁場を発生することができるものであれば特に限定されず、例えば、永久磁石や電磁石等を用いることができる。
【0048】
磁場配向工程において、塗膜に対して作用させる磁場の磁束密度は、例えば350mT~1Tであり、典型的には500mT~800mTである。磁場の磁束密度が大きいほど扁平状黒鉛材料40の配向角度θを容易に制御することができる。また、塗膜に対して磁場を印加する時間は、例えば1秒~120秒程度である。磁場が印加された塗膜に含まれる扁平状黒鉛材料40は、長軸方向が磁力線の向きに近づくように一方向に配向するため、集電箔10に対して非平行且つ非垂直となる鋭角に配向した状態となる。
【0049】
続いて、合材層形成工程では、上記のように配向させた扁平状黒鉛材料40を含む塗膜を乾燥させて、塗膜に含まれる溶媒を除去する。塗膜の乾燥方法としては、自然、熱風、低湿風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線等による乾燥を単独または組み合わせて用いることができる。
【0050】
そして、プレス工程では、塗膜の乾燥後に適宜の圧延処理を施すことによって、合材層20の密度及び厚さを調整することができる。
図4は、
図3に示すフローチャートのプレス工程を説明する図である。圧延処理には、例えばロールプレス、平板プレス等のプレス方法を用いることができる。
図4には、ロールプレス50を用いた圧延処理の一例を示している。
【0051】
圧延処理の際のプレス圧は、20MPa~100MPaが好ましく、40MPa~80MPaがより好ましい。圧延処理の際のプレス圧がこの範囲内であると、扁平状黒鉛材料40の配向角度θを大きく崩すことなく、最終的な配向角度θを適切な範囲とすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、圧延処理前に予め扁平状黒鉛材料40が集電箔10に対して鋭角に配向するように制御されている。そのため、集電箔10に対して略垂直に配向している扁平状黒鉛材料40にプレスを施す場合と比べて、扁平状黒鉛材料40にかかる応力が分散されることにより、活物質(球状炭素材料30、扁平状黒鉛材料40)の粒子同士が衝突することにより生じる得る破砕を防ぐことができる。その結果、活物質が破砕されることに起因する電池特性の低下を抑制できるとともに、合材層20の耐久性の低下も抑制することができる。また、上記した範囲のプレス圧とすることにより、扁平状黒鉛材料40に生じ得る亀裂や割れも抑制することができる。
【0053】
合材層20を圧密化するためのプレス工程は、磁場配向させた扁平状黒鉛材料40を含む乾燥前の塗膜に対して圧延処理を施す形態としても良い。また、プレス工程は、必要に応じて省略することもできる。
【0054】
以上の工程により、集電箔10の表面上に合材層20が形成された負極板E1を形成することができる。
【0055】
次に、扁平状黒鉛材料40の配向角度θ及び混合割合をそれぞれ変化させた負極板を含む複数の評価用電池セルを用意し、扁平状黒鉛材料40の配向角度θ及び混合割合が電池特性(電池抵抗、電池容量)に与える影響を調べた。まず、評価用電池セルは、下記の要領で構築した。
【0056】
[負極板の作製]
負極板は以下の通り作製した。球状炭素材料30は、鱗片状黒鉛を球状化処理することにより形成した粒子を用いた。球状炭素材料30のアスペクト比は1.4であり、平均粒径は7.6μmであった。扁平状黒鉛材料40は、鱗片状黒鉛を用いた。扁平状黒鉛材料40のアスペクト比は1:8であり、平均粒径は17μmであった。結着剤には、SBRを用いた。増粘剤には、CMCを用いた。また、溶媒には、イオン交換水を用いた。
【0057】
塗工工程において、球状炭素材料30と扁平状黒鉛材料40との少なくとも一方からなる活物質、SBR、及びCMCの質量比が、98:1:1となるようにそれぞれ秤量し、所要量のイオン交換水を添加して混練することにより粘度が3000mPa・sである負極合材層形成用のペーストを調製した。負極合材層形成用のペーストを調製する際、球状炭素材料30と扁平状黒鉛材料40とを種々の質量比で混合した。
【0058】
調製したペーストは、負極の集電箔10である銅箔(厚さ10μm)の両面に塗工した。なお、負極合材層形成用のペーストは、目付量が7.5mg/cm2となるように塗工量を調整した。これにより、銅箔の表面上に塗膜を形成した。
【0059】
磁場配向工程では、表面上に塗膜が形成された銅箔を上下方向から挟み込むように一対の永久磁石を配置し、塗膜に磁場を印加した。磁場の磁束密度は500mTであり、磁場の印加時間は5秒であった。磁場を印加する際、扁平状黒鉛材料40の最終的な配向角度θに凡そ対応する磁力線の向きとなるように一対の永久磁石の配置を調整した。これにより、長軸方向が銅箔の表面に対して種々の角度となるように、塗膜に含まれる扁平状黒鉛材料40を配向させた。
【0060】
合材層形成工程では、上記のように磁場配向させた扁平状黒鉛材料40を含む塗膜を乾燥した。その後、プレス工程において、合材層の密度が1.24g/cm3、厚さが60μmとなるように厚み方向からロールプレス50によるプレスを行い、これを所定の寸法に裁断することにより負極板を形成した。プレス後の最終的な配向角度θが種々の角度となるように扁平状黒鉛材料40の配向制御を行なった。
【0061】
[正極板の作製]
正極板は以下の通り作製した。正極活物質には、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で表される平均組成を有するニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC)を用いた。導電材には、アセチレンブラック(AB)を用いた。結着剤には、PVDFを用いた。また、溶媒には、NMPを用いた。
【0062】
NMC、AB、及びPVDFを所定の混合比で混合し、NMPを添加して混練することにより正極合材層形成用のペーストを調製した。調製したペーストは、正極の集電箔であるアルミニウム箔(厚さ15μm)の両面に塗工した。なお、正極合材層形成用のペーストは、目付量が10mg/cm2となるように塗工量を調整した。そして、塗工されたペーストを乾燥した後、合材層の密度が2.7g/cm3、厚さが45μmとなるようにプレスを行ない、これを所定の寸法に裁断することにより正極板を形成した。
【0063】
[電解液の調整]
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比が1:1:1となるように混合した混合溶媒に、1mol/Lの濃度で支持塩LiPF6を溶解して電解液を調製した。
【0064】
[評価用電池セルの構築]
上記の要領でそれぞれ作製した負極板と正極板とを対向させて互いの間にポリエチレン(PE)製の多孔質セパレータを介在させた電極体をアルミラミネート製の外装材の内側に収納し、電解液を加えて密封することにより、ラミネート型の評価用電池セルを構築した。
【0065】
[扁平状黒鉛材料の配向角度の影響]
図5は、扁平状黒鉛材料の配向角度と電池特性との関係を示すグラフである。
図5に示すグラフの縦軸は評価用電池セルの電池抵抗及び電池容量のそれぞれについて増減を示しており、横軸は扁平状黒鉛材料40の配向角度θ(°)を示している。
【0066】
電池抵抗については、各評価用電池セルに対して3.0V~4.2Vでコンディショニング処理を行なった後、25℃の環境下でSOC(State Of Charge)50%に調整した後、交流インピーダンス法によって抵抗値の測定を行なった。測定条件は、入力電圧:100mV、周波数範囲:0.1Hz~100000Hzとした。測定により得られたインピーダンスのナイキストプロットから半円の直径を読み取り、各評価用電池セルの抵抗値を導いた。
【0067】
また、電池容量については、各評価用電池セルを25℃の環境下でSOC100%に調整した後、電池電圧が3.0Vとなるまで1Cで定電流放電し、放電した電池容量を測定した。なお、「C」は電流値の単位であり、「1C」とは、電池の定格容量を1時間で放電しきる電流値を意味する。
【0068】
ここで用いられる各評価用電池セルのそれぞれは、負極板を製造する際の磁場配向工程において、磁力線の向きを適宜調整することにより塗膜に含まれる扁平状黒鉛材料40の配向が制御され、扁平状黒鉛材料40の最終的な配向角度θが0°~90°の範囲で互いに異なるものである。一方、各評価用電池セルをそれぞれ構成する負極板に含まれる球状炭素材料30と扁平状黒鉛材料40との質量比は、90:10とした。
【0069】
図5に示すグラフからわかるように、電池抵抗は、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが30°から70°の間で最小となった。一方、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが30°未満の範囲では、当該配向角度θが小さくなるにしたがって電池抵抗が増加し、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが70°を超える範囲では、当該配向角度θが大きくなるにしたがって電池抵抗が増加した。
【0070】
また、電池容量は、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが30°から70°の間で最大となった。一方、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが30°未満の範囲では、当該配向角度θが小さくなるにしたがって電池容量が減少し、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが70°を超える範囲では、当該配向角度θが大きくなるにしたがって電池容量が減少した。
【0071】
この結果から、電池特性を向上するためには、負極板E1の合材層20に含まれる扁平状黒鉛材料40が集電箔10に対して非平行且つ非垂直となる30°~70°に配向していることが好ましいことがわかった。
【0072】
[扁平状黒鉛材料の混合割合の影響]
図6は、扁平状黒鉛材料の混合割合と電池特性との関係を示すグラフである。
図6に示すグラフの縦軸は評価用電池セルの電池抵抗及び電池容量のそれぞれについて増減を示しており、横軸は球状炭素材料30と扁平状黒鉛材料40との合計を100質量%としたときの扁平状黒鉛材料40の混合割合(質量%)を示している。
【0073】
ここで用いられる各評価用電池セルのそれぞれは、負極板を製造する際の塗工工程において、扁平状黒鉛材料40を0質量%~100質量%の混合割合とすることにより、球状炭素材料30と扁平状黒鉛材料40との質量比が互いに異なるものである。一方、各評価用電池セルをそれぞれ構成する負極板に含まれる扁平状黒鉛材料40の配向角度θは、60°とした。
【0074】
図6に示すグラフからわかるように、電池抵抗は、扁平状黒鉛材料40の混合割合が5質量%から30質量%の間で最小となった。一方、扁平状黒鉛材料40の混合割合が30質量%未満の範囲では当該混合割合が小さくなるにしたがって電池抵抗が増加し、扁平状黒鉛材料40の混合割合が70質量%を超える範囲では当該混合割合が大きくなるにしたがって電池抵抗が増加した。
【0075】
また、電池容量は、扁平状黒鉛材料40の混合割合が0質量%から大きくなるにしたがって徐々に減少するものの、当該混合割合が5質量%から30質量%の間であれば、0質量%と遜色ない容量が得られた。
【0076】
この結果から、電池特性を向上するためには、負極板E1の合材層20に含まれる球状炭素材料30と扁平状黒鉛材料40との質量比が70:30~95:5の範囲内であることが好ましく、さらに好適な範囲は、85:15~90:10である。
【0077】
これらの結果が得られた原因について、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが30°~70°の範囲外である場合の問題点を挙げて説明する。ここで、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが0°以上30°未満である場合を集電箔10に対して扁平状黒鉛材料40が略平行に配向しているものと定義し、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが70°を超えて90°以下である場合を集電箔10に対して扁平状黒鉛材料40が略垂直に配向しているものと定義して説明する。
【0078】
まず、
図7は、扁平状黒鉛材料が集電箔に対して略平行に配向している場合の問題点を説明する断面図である。
図7に示すように、球状炭素材料30と、集電箔10に対して略平行に配向している扁平状黒鉛材料40と、を含む負極板E2を用いてリチウムイオン二次電池を構成すると、扁平状黒鉛材料40が負極板E2に蓋をする状態となる。これにより、負極板E2内の曲路率が高くなるため、電解液が負極板E2の深部にスムーズに浸透することができず、電解液中のリチウムイオンの伝導性が低下する。その結果、電池抵抗が増大するという問題がある。
【0079】
次に、
図8は、扁平状黒鉛材料40が集電箔に対して略垂直に配向している場合の問題点を説明する断面図である。
図8に示すように、扁平状黒鉛材料40を集電箔10に対して略垂直に配向するためには、扁平状黒鉛材料40の長軸方向が集電箔10に対して90°に近づくように磁場配向する必要がある。
【0080】
しかしながら、圧延処理において厚さ方向からプレスする場合、扁平状黒鉛材料40の配向角度θが90°に近づくほど扁平状黒鉛材料40にかかる応力が局所的に増大し、扁平状黒鉛材料40やその上下(扁平状黒鉛材料40の長軸方向における両側)に存在する球状炭素材料30は粒子同士が衝突することに伴って破砕される可能性が高まる。例えば、鱗片状天然黒鉛に亀裂が入って割れることにより新表面が生じると、この新表面において電解液の分解反応が生じるとともに、新表面に電解液の分解物である被膜が形成されるため、電解液が消費される。このように、容量劣化が進行するという問題がある。
【0081】
これに対し、本実施形態にかかる負極板E1は、集電箔10と、集電箔10の表面上に形成された合材層20と、を有し、合材層20は、球状炭素材料30及び扁平状黒鉛材料40を含み、扁平状黒鉛材料40の長軸方向と集電箔10の表面とのなす角度の平均が30°~70°となるように扁平状黒鉛材料40が配向している。
【0082】
このような構成により、圧延処理時等に、扁平状黒鉛材料40にかかる応力が分散されるため、活物質に生じ得る破砕、割れ、亀裂を抑制することができる。これにより、活物質に破砕、割れ、亀裂が生じることに起因する電池特性の低下を抑制できるとともに、合材層20の耐久性の低下も抑制することができる。また、扁平状黒鉛材料40のみを含む場合よりも負極板E1を高密度化することができ、電池容量の低下を抑制することができる。
【0083】
さらに、合材層20に含まれる球状炭素材料30と扁平状黒鉛材料40との混合比が質量比で70:30~95:5であることにより、扁平状黒鉛材料40を磁場配向させることによる負極板E1内の曲路率の低減と、球状炭素材料30を含有させることによる負極板E1の高密度化と、を両立することができる。したがって、電池抵抗を低減しつつ高い電池容量を保持した二次電池を得ることができる。
【0084】
さらに、球状炭素材料30のアスペクト比が1.0~2.0であり、扁平状黒鉛材料40のアスペクト比が2.0~100であることにより、扁平状黒鉛材料40の良好な配向性を確保することができる。
【0085】
さらに、球状炭素材料30のタップ密度が0.9g/cm3以上であり、扁平状黒鉛材料40のタップ密度が0.7g/cm3以下であることにより、球状炭素材料30の充填性を向上しつつ負極板E1内の粒子間の空隙を確保することができる。したがって、電池抵抗を低減しつつ高い電池容量を保持した二次電池を得ることができる。
【0086】
そして、本実施形態にかかる二次電池用電極の製造方法によれば、上記の効果を奏する二次電池用電極を製造することができる。
【0087】
このように、本実施形態によれば、電池抵抗を低減しつつ高容量且つ高耐久性を備えた二次電池用電極、及び二次電池用電極の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 集電箔
20 合材層
30 球状炭素材料
40 扁平状黒鉛材料
41 細孔
50 ロールプレス
E1、E2 負極板