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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083816
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197741
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 輝男
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴之
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA19
5H730AS08
5H730BB27
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE12
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG07
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】トランスの磁束密度の飽和を抑制しつつ、スイッチング損失を低減すること。
【解決手段】電源装置は、第1ブリッジ回路と、変圧器と、第2ブリッジ回路と、第1ブリッジ回路の内のスイッチ素子をスイッチング動作させる複数の1次側駆動パルスと、第2ブリッジ回路の内のスイッチ素子をスイッチング動作させる複数の2次側駆動パルスを出力し、第1ブリッジ回路と第2ブリッジ回路との間の位相差を制御することにより、第2ブリッジ回路から出力される直流電圧を制御する制御部と、を備える。制御部は、複数の1次側駆動パルス及び複数の2次側駆動パルスの少なくとも一方に、ハイサイドのスイッチ素子の全てがオン状態又はオフ状態になり、ローサイドのスイッチ素子の全てがハイサイドのスイッチ素子とは逆の状態となるパターンを付加し、かつスイッチ素子のスイッチング周波数を基準値よりも低くする制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がハイサイドのスイッチ素子及びローサイドのスイッチ素子を有する複数のアームを含み、直流電圧を交流電圧に変換して出力する、第1ブリッジ回路と、
第1巻線及び第2巻線を含み、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が前記第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を前記第2巻線から出力する、変圧器と、
各々がハイサイドのスイッチ素子及びローサイドのスイッチ素子を有する複数のアームを含み、前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する、第2ブリッジ回路と、
複数の1次側駆動パルスを前記第1ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子に出力して、前記第1ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子をスイッチング動作させ、複数の2次側駆動パルスを前記第2ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子に出力して、前記第2ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子をスイッチング動作させ、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の位相差を制御することにより、前記第2ブリッジ回路から出力される直流電圧を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、
複数の前記1次側駆動パルス及び複数の前記2次側駆動パルスの少なくとも一方に、ハイサイドの前記スイッチ素子の全てがオン状態又はオフ状態になり、ローサイドの前記スイッチ素子の全てがハイサイドの前記スイッチ素子とは逆の状態となるパターンを付加し、かつ前記スイッチ素子のスイッチング周波数を基準値よりも低くする制御を行う、
電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記1次側駆動パルス及び前記2次側駆動パルスの少なくとも一方のデューティ比を基準値よりも低くする制御を行うことで、前記スイッチ素子のスイッチング周波数を基準値よりも低くする、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1ブリッジ回路に入力される直流電圧と、前記第2ブリッジ回路から出力される直流電圧との比に基づいて、前記デューティ比を前記基準値よりも低くする制御を行うことで、前記スイッチ素子のスイッチング周波数を基準値よりも低くする、
請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の位相差と、前記デューティ比とに基づいて、前記スイッチング周波数を算出する、
請求項2又は3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路は、3相ブリッジ回路であり、
前記変圧器は、3相変圧器である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、DAB(Dual Active Bridge)方式のDC-DCコンバータが記載されている。DAB方式のコンバータは、1次側のブリッジ回路を駆動させる駆動パルスと、2次側のブリッジ回路を駆動させる駆動パルスとの間の位相を制御することで、双方向に電力の伝送が可能なコンバータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5027264号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DAB方式では、ソフトスイッチング動作が出来ない領域(例えば、軽負荷領域)が存在し、当該領域ではスイッチング損失が生じる。スイッチング損失を抑制するために、スイッチング周波数を低くすることが考えられる。しかしながら、DAB方式のDC-DCコンバータにおいて、単にスイッチング周波数を低くすると、トランスの磁束密度が飽和してしまうことがある。
【0005】
本開示は、トランスの磁束密度の飽和を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することのできる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電源装置は、各々がハイサイドのスイッチ素子及びローサイドのスイッチ素子を有する複数のアームを含み、直流電圧を交流電圧に変換して出力する、第1ブリッジ回路と、第1巻線及び第2巻線を含み、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が前記第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を前記第2巻線から出力する、変圧器と、各々がハイサイドのスイッチ素子及びローサイドのスイッチ素子を有する複数のアームを含み、前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する、第2ブリッジ回路と、複数の1次側駆動パルスを前記第1ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子に出力して、前記第1ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子をスイッチング動作させ、複数の2次側駆動パルスを前記第2ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子に出力して、前記第2ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子をスイッチング動作させ、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の位相差を制御することにより、前記第2ブリッジ回路から出力される直流電圧を制御する、制御部と、を備え、前記制御部は、複数の前記1次側駆動パルス及び複数の前記2次側駆動パルスの少なくとも一方に、ハイサイドの前記スイッチ素子の全てがオン状態又はオフ状態になり、ローサイドの前記スイッチ素子の全てがハイサイドの前記スイッチ素子とは逆の状態となるパターンを付加し、かつ前記スイッチ素子のスイッチング周波数を基準値よりも低くする制御を行う。
【0007】
本開示の電源装置において、前記制御部は、前記1次側駆動パルス及び前記2次側駆動パルスの少なくとも一方のデューティ比を基準値よりも低くする制御を行うことで、前記スイッチ素子のスイッチング周波数を基準値よりも低くする。
【0008】
本開示の電源装置において、前記制御部は、前記第1ブリッジ回路に入力される直流電圧と、前記第2ブリッジ回路から出力される直流電圧との比に基づいて、前記デューティ比を前記基準値よりも低くする制御を行うことで、前記スイッチ素子のスイッチング周波数を基準値よりも低くする。
【0009】
本開示の電源装置において、前記制御部は、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の位相差と、前記デューティ比とに基づいて、前記スイッチング周波数を算出する。
【0010】
本開示の電源装置において、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路は、3相ブリッジ回路であり、前記変圧器は、3相変圧器である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、トランスの磁束密度の飽和を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る電源装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係るトランス部の構成例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る制御部の構成例を示す図である。
図4図4は、比較例に係る電源装置の制御方法を説明するための図である。
図5図5は、第1実施形態に係る電源装置の制御方法を説明するための図である。
図6図6は、第1実施形態に係るデューティの定義を説明するための図である。
図7図7は、第2実施形態に係る制御部の構成例を示す図である。
図8図8は、第2実施形態に係るスイッチング周波数を設定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1を用いて、第1実施形態に係る電源装置の構成例を説明する。図1は、第1実施形態に係る電源装置の構成例を示す図である。
【0015】
図1に示す、電源装置100は、第1実施形態に係るDAB方式の電源装置である。電源装置100は、電源1から出力され平滑化コンデンサ2により平滑化された直流電圧である1次側電圧V1を受ける。電源装置100から出力された直流電圧は、平滑化コンデンサ3により平滑化され、2次側電圧V2が負荷4に入力される。
【0016】
電源装置100は、第1ブリッジ回路10と、第2ブリッジ回路20と、リアクトル31と、リアクトル32と、リアクトル33と、トランス部40と、制御部50と、を含む。
【0017】
第1ブリッジ回路10は、第1アーム10aと、第2アーム10bと、第3アーム10cと、を含む。第1ブリッジ回路10は、3個のアームを含む3相のブリッジ回路である。第1アーム10aは、U相のアームである。第2アーム10bは、V相のアームである。第3アーム10cは、W相のアームである。第1アーム10aと、第2アーム10bとの間の位相差は、120度である。第2アーム10bと、第3アーム10cとの間の位相差は、120度である。第3アーム10cと、第1アーム10aとの間の位相差は、120度である。
【0018】
第1アーム10aは、スイッチ素子11と、スイッチ素子12と、を含む。第2アーム10bは、スイッチ素子13と、スイッチ素子14と、を含む。第3アーム10cは、スイッチ素子15と、スイッチ素子16と、を含む。
【0019】
スイッチ素子11と、スイッチ素子13と、スイッチ素子15とは、ハイサイドのスイッチ素子である。スイッチ素子12と、スイッチ素子14と、スイッチ素子16とは、ローサイドのスイッチ素子である。
【0020】
スイッチ素子11からスイッチ素子16は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、これに限定されない。スイッチ素子11からスイッチ素子16は、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などでも良い。
【0021】
スイッチ素子11からスイッチ素子16は、寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。寄生ダイオードは、トランジスタのオフ時の過渡的な逆起電力を逃すためのフリーホイールダイオードとして利用可能である。寄生ダイオードに加えて、各トランジスタのドレインとソース間にダイオード素子を付加しても良い。
【0022】
スイッチ素子11のソース端子は、スイッチ素子12のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチ素子11のドレイン端子は、スイッチ素子13のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチ素子12のソース端子は、スイッチ素子14のソース端子に電気的に接続されている。
【0023】
スイッチ素子13のソース端子は、スイッチ素子14のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチ素子13のドレイン端子は、スイッチ素子15のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチ素子14のソース端子は、スイッチ素子16のソース端子に電気的に接続されている。
【0024】
スイッチ素子15のソース端子は、スイッチ素子16のドレイン端子に電気的に接続されている。
【0025】
スイッチ素子11のドレイン端子と、スイッチ素子13のドレイン端子と、スイッチ素子15のドレイン端子との接続点N1は、電源装置100の一方の入力端子である。スイッチ素子12のソース端子と、スイッチ素子14のソース端子と、スイッチ素子16のソース端子との接続点N2は、電源装置100の他方の入力端子である。
【0026】
接続点N1は、平滑化コンデンサ2の高電位側に電気的に接続されている。接続点N2は、平滑化コンデンサ2の低電位側に電気的に接続されている。接続点N1と、接続点N2との間には、平滑化コンデンサ2により平滑化された直流電圧が入力される。
【0027】
スイッチ素子11のソース端子と、スイッチ素子12のドレイン端子との接続点N3は、第1ブリッジ回路10の1個目の出力端子である。スイッチ素子13のソース端子と、スイッチ素子14のドレイン端子との接続点N4は、第1ブリッジ回路10の2個目の出力端子である。スイッチ素子15のソース端子と、スイッチ素子16のドレイン端子との接続点N5は、第1ブリッジ回路10の3個目の出力端子である。
【0028】
第2ブリッジ回路20は、第1アーム20aと、第2アーム20bと、第3アーム20cと、を含む。第2ブリッジ回路20は、3個のアームを含む3相のブリッジ回路である。第1アーム20aは、U相のアームである。第2アーム20bは、V相のアームである。第3アーム20cは、W相のアームである。第1アーム20aと、第2アーム20bとの位相差は、120度である。第2アーム20bと、第3アーム20cとの位相差は、120度である。第3アーム20cと、第1アーム20aとの位相差は、120度である。
【0029】
第1アーム20aは、スイッチ素子21と、スイッチ素子22と、を含む。第2アーム20bは、スイッチ素子23と、スイッチ素子24と、を含む。第3アーム20cは、スイッチ素子25と、スイッチ素子26と、を含む。
【0030】
スイッチ素子21と、スイッチ素子23と、スイッチ素子25とは、ハイサイドのスイッチ素子である。スイッチ素子22と、スイッチ素子24と、スイッチ素子26とは、ローサイドのスイッチ素子である。
【0031】
スイッチ素子21からスイッチ素子26は、例えば、MOSFETであるが、これに限定されない。スイッチ素子21からスイッチ素子26は、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス、IGBTなどでも良い。
【0032】
スイッチ素子21からスイッチ素子26は、寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。寄生ダイオードは、トランジスタのオフ時の過渡的な逆起電力を逃すためのフリーホイールダイオードとして利用可能である。寄生ダイオードに加えて、各トランジスタのドレインとソース間にダイオード素子を付加しても良い。
【0033】
スイッチ素子21のソース端子は、スイッチ素子22のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチ素子21のドレイン端子は、スイッチ素子23のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチ素子22のソース端子は、スイッチ素子24のソース端子に電気的に接続されている。
【0034】
スイッチ素子23のソース端子は、スイッチ素子24のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチ素子23のドレイン端子は、スイッチ素子25のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチ素子24のソース端子は、スイッチ素子26のソース端子に電気的に接続されている。
【0035】
スイッチ素子25のソース端子は、スイッチ素子26のドレイン端子に電気的に接続されている。
【0036】
スイッチ素子21のソース端子と、スイッチ素子22のドレイン端子との接続点N6は、第2ブリッジ回路20の1個目の入力端子である。スイッチ素子23のソース端子と、スイッチ素子24のドレイン端子との接続点N7は、第2ブリッジ回路20の2個目の入力端子である。スイッチ素子25のソース端子と、スイッチ素子26のドレイン端子との接続点N8は、第2ブリッジ回路20の3個目の入力端子である。
【0037】
スイッチ素子21のドレイン端子と、スイッチ素子23のドレイン端子と、スイッチ素子25のドレイン端子との接続点N9は、電源装置100の一方の出力端子である。スイッチ素子22のソース端子と、スイッチ素子24のソース端子と、スイッチ素子26のソース端子との接続点N10は、電源装置100の他方の出力端子である。
【0038】
接続点N9は、平滑化コンデンサ3の高電位側に電気的に接続されている。接続点N10は、平滑化コンデンサ3の低電位側に電気的に接続されている。平滑化コンデンサ3の2次側電圧V2が、電源装置100の出力電圧となる。
【0039】
平滑化コンデンサ3の高電位側は、負荷4の高電位側に電気的に接続されている。平滑化コンデンサ3の低電位側は、負荷4の低電位側に電気的に接続されている。
【0040】
リアクトル31の一端は、接続点N3に電気的に接続されている。リアクトル31の他端は、トランス部40に電気的に接続されている。
【0041】
リアクトル32の一端は、接続点N4に電気的に接続されている。リアクトル32の他端は、トランス部40に電気的に接続されている。
【0042】
リアクトル33の一端は、接続点N5に電気的に接続されている。リアクトル33の他端は、トランス部40に電気的に接続されている。
【0043】
トランス部40は、第1巻線と、第2巻線と、コアと、を含む。トランス部40は、変圧器の一種である。
【0044】
図2は、第1実施形態に係るトランス部の構成例を示す図である。図2に示すように、トランス部40は、トランス40aと、トランス40bと、トランス40cと、を含む。第1実施形態において、トランス部40は、3相変圧器である。図2に示す例では、トランス部40は、Y結線方式の3相変圧器である。図2では、トランス部40は、Y結線方式の3相変圧器であるものとして示しているが、本開示はこれに限定されない。例えば、トランス部40は、デルタ結線方式の3相変圧器であってもよい。
【0045】
トランス40aは、第1巻線41aと、第2巻線42aと、コア43aと、第1端子44aと、第2端子45aと、を含む。トランス40aは、U相のトランスである。
【0046】
第1巻線41aは、1次側の巻線である。第2巻線42aは、2次側の巻線である。第1巻線41aと、第2巻線42aとは、コア43aに巻かれている。第1巻線41aの一端は、第1端子44aに電気的に接続されている。第1端子44aは、リアクトル31の他端に電気的に接続されている。第2巻線42aの一端は、第2端子45aに電気的に接続されている。第2端子45aは、接続点N6に電気的に接続されている。
【0047】
トランス40bは、第1巻線41bと、第2巻線42bと、コア43bと、第1端子44bと、第2端子45bと、を含む。トランス40bは、V相のトランスである。
【0048】
第1巻線41bは、1次側の巻線である。第2巻線42bは、2次側の巻線である。第1巻線41bと、第2巻線42bとは、コア43bに巻かれている。第1巻線41bの一端は、第1端子44bに電気的に接続されている。第1端子44bは、リアクトル32の他端に電気的に接続されている。第2巻線42bの一端は、第2端子45bに電気的に接続されている。第2端子45bは、接続点N7に電気的に接続されている。
【0049】
トランス40cは、第1巻線41cと、第2巻線42cと、コア43cと、第1端子44cと、第2端子45cと、を含む。トランス40cは、W相のトランスである。
【0050】
第1巻線41cは、1次側の巻線である。第2巻線42cは、2次側の巻線である。第1巻線41cと、第2巻線42cとは、コア43cに巻かれている。第1巻線41cの一端は、第1端子44cに電気的に接続されている。第1端子44cは、リアクトル33の他端に電気的に接続されている。第2巻線42cの一端は、第2端子45cに電気的に接続されている。第2端子45cは、接続点N8に電気的に接続されている。
【0051】
第1巻線41aの他端と、第1巻線41bの他端と、第1巻線41cの他端とは、それぞれ、電気的に接続されている。第2巻線42aの他端と、第2巻線42bの他端と、第2巻線42cの他端とは、それぞれ、電気的に接続されている。
【0052】
制御部50は、第1ブリッジ回路10および第2ブリッジ回路20を制御する。制御部50は、例えば、CPU(Central ProceSSing Unit)やMPU(Micro ProceSSing Unit)などの情報処理装置と、RAM(Random AcceSS Memory)又はROM(Read Only Memory)などの記憶装置とを有する。制御部50は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部50は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0053】
制御部50は、1次側駆動パルスを第1ブリッジ回路10に出力することで、スイッチ素子11からスイッチ素子16のオン状態とオフ状態とを切り替える。具体的には、制御部50は、ハイレベルの1次側駆動パルスをスイッチ素子11からスイッチ素子16のゲート端子に出力することで、スイッチ素子11からスイッチ素子16をオン状態に切り替える。制御部50は、ローレベルの1次側駆動パルスをスイッチ素子11からスイッチ素子16のゲート端子に出力することで、スイッチ素子11からスイッチ素子16をオフ状態に切り替える。
【0054】
制御部50は、2次側駆動パルスを第2ブリッジ回路20に出力することで、スイッチ素子21からスイッチ素子26のオン状態とオフ状態とを切り替える。具体的には、制御部50は、ハイレベルの2次側駆動パルスをスイッチ素子21からスイッチ素子26のゲート端子に出力することで、スイッチ素子21からスイッチ素子26をオン状態に切り替える。制御部50は、ローレベルの2次側駆動パルスをスイッチ素子21からスイッチ素子26のゲート端子に出力することで、スイッチ素子21からスイッチ素子26をオフ状態に切り替える。
【0055】
[制御部の構成例]
図3を用いて、第1実施形態に係る制御部の構成例を説明する。図3は、第1実施形態に係る制御部の構成例を示す図である。
【0056】
図3に示すように、制御部50は、誤差算出部51と、位相差算出部52と、駆動パルス生成部53と、デューティ比算出部54と、1次側パルスパターン付加部55と、2次側パルスパターン付加部56と、1次側パルス駆動部57と、2次側パルス駆動部58と、を含む。
【0057】
以下では、制御部50は、第2ブリッジ回路20からの出力電圧を制御する場合の処理について説明する。
【0058】
誤差算出部51は、第2ブリッジ回路20に指令された電圧指令値Vcomと、第2ブリッジ回路20が実際に出力している2次側電圧V2とに基づいて、電圧指令値Vcomと、2次側電圧V2との誤差eを算出する。
【0059】
位相差算出部52は、誤差eに基づいて、第1ブリッジ回路10と、第2ブリッジ回路20の位相差φを算出する。
【0060】
駆動パルス生成部53は、位相差φに基づいて、複数の第1駆動パルスS1と、複数の第2駆動パルスS2とを生成する。駆動パルス生成部53は、第1駆動パルスS1を1次側パルスパターン付加部55に出力する。駆動パルス生成部53は、第2駆動パルスS2を2次側パルスパターン付加部56に出力する。
【0061】
デューティ比算出部54は、第1ブリッジ回路10の1次側電圧V1と、第2ブリッジ回路20の2次側電圧V2とに基づいて、1次側電圧V1と、2次側電圧V2との電圧比を算出する。
【0062】
デューティ比算出部54は、1次側電圧V1と、2次側電圧V2との電圧比に基づいて、第1ブリッジ回路10のハイサイドの各スイッチ素子の全てと、ローサイドの各スイッチ素子の全てとの、少なくとも一方を同時にオンするパルスパターンのデューティ比を算出する。本実施形態では、このようなパルスパターンのデューティ比を、第1デューティ比D1と呼ぶ。第1デューティ比D1は、0から1の範囲の値をとる。
【0063】
デューティ比算出部54は、1次側電圧V1と、2次側電圧V2との電圧比に基づいて、第2ブリッジ回路20のハイサイドの各スイッチ素子の全てと、ローサイドの各スイッチ素子の全てとの、少なくとも一方を同時にオンするパルスパターンのデューティ比を算出する。本実施形態では、このようなパルスパターンのデューティ比を、第2デューティ比D2と呼ぶ。第2デューティ比D2は、0から1の範囲の値をとる。
【0064】
1次側パルスパターン付加部55は、複数の第1駆動パルスS1に対して、第1デューティ比D1のパルスパターンを付加した第1出力パルスS5を生成する。第1出力パルスS5は、第1ブリッジ回路10のスイッチ素子11からスイッチ素子16のゲート端子に出力する駆動パルスの基になる基準信号である。
【0065】
2次側パルスパターン付加部56は、複数の第2駆動パルスS2に対して、第2デューティ比D2のパルスパターンを付加した第2出力パルスS6を生成する。第2出力パルスS6は、第2ブリッジ回路20のスイッチ素子21からスイッチ素子26のゲート端子に出力する駆動パルスの基になる基準信号である。
【0066】
1次側パルス駆動部57は、第1出力パルスS5に基づいて、第1ブリッジ回路10のスイッチ素子11からスイッチ素子16のオン状態とオフ状態とを切り替えるための、第1デューティ比D1のパルスパターンが付加された複数の1次側駆動パルスS7を生成する。1次側パルス駆動部57は、複数の1次側駆動パルスS7を第1ブリッジ回路10のスイッチ素子11からスイッチ素子16のゲート端子に出力する。
【0067】
2次側パルス駆動部58は、第2出力パルスS6に基づいて、第2ブリッジ回路20のスイッチ素子21からスイッチ素子26のオン状態とオフ状態とを切り替えるための、第2デューティ比D2のパルスパターンが付加された複数の2次側駆動パルスS8を出力する。2次側パルス駆動部58は、複数の2次側駆動パルスS8を第2ブリッジ回路20のスイッチ素子21からスイッチ素子26のゲート端子に出力する。
【0068】
(比較例の制御方法)
本実施形態を説明する前に、比較例に係る電源装置の制御方法について説明する。図4は、比較例に係る電源装置の制御方法を説明するための図である。比較例に係る電源装置の構成は、図1に示す電源装置100と同一である。
【0069】
図4は、2次側の各部のパルスパターンと各相の出力電圧を示す。各スイッチ素子に入力される2次側駆動パルスのスイッチング周波数は一定である。各部に入力される2次側駆動パルスのデューティ比は0.5である。
【0070】
波形111は、スイッチ素子21のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形112は、スイッチ素子22のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形113は、スイッチ素子23のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形114は、スイッチ素子24のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形115は、スイッチ素子25のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形116は、スイッチ素子26のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形117は、第1アーム20aからの出力電圧を示す。波形118は、第2アーム20bからの出力電圧を示す。波形119は、第3アーム20cからの出力電圧を示す。時間t0から時間t6が、電源装置100の1周期分の制御パターンとなる。
【0071】
時間t0から時間t3の間、スイッチ素子21のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子21は、時間t0から時間t3の間はオフ状態となる。時間t3から時間t6の間、スイッチ素子21のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子21は、時間t3から時間t6の間はオン状態となる。時間t6から時間t9の間、スイッチ素子21のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子21は、時間t6から時間t9の間はオフ状態となる。
【0072】
時間t0から時間t3の間、スイッチ素子22のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子22は、時間t0から時間t3の間はオン状態となる。時間t3から時間t6の間、スイッチ素子22のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子22は、時間t3から時間t6の間はオフ状態となる。時間t6から時間t9の間、スイッチ素子22のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子22は、時間t6から時間t9の間はオン状態となる。
【0073】
時間t0から時間t1の間、スイッチ素子23のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子23は、時間t0から時間t1の間はオフ状態となる。時間t1から時間t4の間、スイッチ素子23のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子23は、時間t1から時間t4の間はオン状態となる。時間t4から時間t7の間、スイッチ素子23のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子23は、時間t4から時間t7の間はオフ状態となる。時間t7から時間t9の間、スイッチ素子23のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子23は、時間t7から時間t9の間はオン状態となる。
【0074】
時間t0から時間t1の間、スイッチ素子24のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子24は、時間t0から時間t1の間はオン状態となる。時間t1から時間t4の間、スイッチ素子24のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子24は、時間t1から時間t4の間はオフ状態となる。時間t4から時間t7の間、スイッチ素子24のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子24は、時間t4から時間t7の間はオン状態となる。時間t7から時間t9の間、スイッチ素子24のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子24は、時間t7から時間t9の間はオフ状態となる。
【0075】
時間t0から時間t2の間、スイッチ素子25のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子25は、時間t0から時間t2の間はオン状態となる。時間t2から時間t5の間、スイッチ素子25のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子25は、時間t2から時間t5の間はオフ状態となる。時間t5から時間t8の間、スイッチ素子25のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子25は、時間t5から時間t8の間はオン状態となる。時間t8から時間t9の間、スイッチ素子25のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子25は、時間t8から時間t9の間はオフ状態となる。
【0076】
時間t0から時間t2の間、スイッチ素子26のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子26は、時間t0から時間t2の間はオフ状態となる。時間t2から時間t5の間、スイッチ素子26のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子26は、時間t2から時間t5の間はオン状態となる。時間t5から時間t8の間、スイッチ素子26のゲート端子には、ローレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子26は、時間t5から時間t8の間はオフ状態となる。時間t8から時間t9の間、スイッチ素子26のゲート端子には、ハイレベルの2次側駆動パルスが入力される。スイッチ素子26は、時間t8から時間t9の間はオン状態となる。
【0077】
波形111から波形116に示すように、比較例に係る制御方法では、スイッチ素子21と、スイッチ素子23と、スイッチ素子25とのハイサイド側のスイッチ素子の全て同時にオン状態またはオフ状態となるパターンは存在しない。
【0078】
斜線部で示した領域R1は、第1アーム20aが、時間t6から時間t9においてトランス部40に印加した電圧の電圧時間積を示す。
【0079】
(第1実施形態の制御方法)
図5を用いて、第1実施形態に係る電源装置の制御方法について説明する。図5は、第1実施形態に係る電源装置の制御方法を説明するための図である。
【0080】
波形121は、スイッチ素子21のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形122は、スイッチ素子22のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形123は、スイッチ素子23の2次側駆動ゲート端子に入力されるパルスを示す。波形124は、スイッチ素子24のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形125は、スイッチ素子25のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形126は、スイッチ素子26のゲート端子に入力される2次側駆動パルスを示す。波形127は、第1アーム20aからの出力電圧を示す。波形128は、第2アーム20bからの出力電圧を示す。波形129は、第3アーム20cからの出力電圧を示す。
【0081】
図5に示すように、波形121から波形126には、図4に示す波形111から波形116に対して、追加のパルスパターンである追加パターンP1から追加パターンP9が付加されている。
【0082】
追加パターンP1は、時間t0から時間t1の間において付加されている追加パターンである。追加パターンP1は、ハイサイド側の各スイッチ素子のそれぞれのゲート端子にローレベルの2次側駆動パルスが入力され、ローサイド側の各スイッチ素子のそれぞれのゲート端子にハイレベルの2次側駆動パルスが入力されるパルスパターンである。すなわち、追加パターンP1においては、スイッチ素子21、スイッチ素子23、およびスイッチ素子25の全てがオフ状態となり、スイッチ素子22、スイッチ素子24、およびスイッチ素子26の全てがオン状態となる。追加パターンP1は、時間t0と時間t1との間の区間の中央に追加しているものとして示しているが、本開示はこれに限定されない。
【0083】
追加パターンP2は、時間t1から時間t2の間において付加されている追加パターンである。追加パターンP2は、ハイサイド側の各スイッチ素子のそれぞれのゲート端子にハイレベルの2次側駆動パルスが入力され、ローサイド側の各スイッチ素子のそれぞれのゲート端子にローレベルの2次側駆動パルスが入力されるパルスパターンである。すなわち、追加パターンP2において、スイッチ素子21、スイッチ素子23、およびスイッチ素子25の全てがオン状態となり、スイッチ素子22、スイッチ素子24、およびスイッチ素子26の全てがオフ状態となる。追加パターンP2は、時間t1と時間t2との間の中央に追加しているものとして示しているが、本開示はこれに限定されない。
【0084】
追加パターンP3は、時間t2から時間t3の間において付加されている追加パターンである。追加パターンP3のパルスパターンは、追加パターンP1のパルスパターンと同じなので、説明を省略する。
【0085】
追加パターンP4は、時間t3から時間t4の間において付加されている追加パターンである。追加パターンP4のパルスパターンは、追加パターンP2のパルスパターンと同じなので、説明を省略する。
【0086】
追加パターンP5は、時間t4から時間t5の間において付加されている追加パターンである。追加パターンP5のパルスパターンは、追加パターンP1のパルスパターンと同じなので、説明を省略する。
【0087】
追加パターンP6は、時間t5から時間t6の間において付加されている追加パターンである。追加パターンP6のパルスパターンは、追加パターンP2のパルスパターンと同じなので、説明を省略する。
【0088】
追加パターンP7は、時間t6から時間t7の間において付加されている追加パターンである。追加パターンP7のパルスパターンは、追加パターンP1のパルスパターンと同じなので、説明を省略する。
【0089】
追加パターンP8は、時間t7から時間t8の間において付加されている追加パターンである。追加パターンP8のパルスパターンは、追加パターンP2のパルスパターンと同じなので、説明を省略する。
【0090】
追加パターンP9は、時間t8から時間t9の間において付加されている追加パターンである。追加パターンP9のパルスパターンは、追加パターンP1のパルスパターンと同じなので、説明を省略する。
【0091】
波形121から波形126は、それぞれ、図4に示す波形111から波形116よりもデューティ比が小さい。
【0092】
図6は、第1実施形態に係るデューティ比の定義を説明するための図である。図6は、横軸が時間を示し、縦軸がスイッチ素子のゲート端子に入力される信号レベルを示す。周期Tは、制御の1周期分の期間である。デューティ比区間Tdutyは、追加パターン部の期間である。第1実施形態では、デューティ比Dは、以下のように定義される。
D=(周期T/2-デューティ比区間Tduty)/(周期T/2)・・・(1)
【0093】
第1実施形態では、式(1)に示すように、デューティ比Dは、デューティ比区間Tdutyが長いほど、小さくなる。
【0094】
斜線部で示した領域R2は、第1アーム20aが、時間t6から時間t9においてトランス部40に印加した電圧の電圧時間積を示す。領域R2は、波形121から波形126に追加パターンP7と、追加パターンP8と、追加パターンP9とが付加されているため、図4に示す領域R1よりも小さい。すなわち、第1実施形態に係る電源装置100は、トランス部40に印加される電圧が比較例よりも小さくなるため、トランス部40の磁束密度も比較例に比べて低減される。なお、第2アーム20bと、第3アーム20cとがトランス部40に印加する電圧は、第1アーム20aがトランス部40に印加する電圧と同様なので、説明を省略する。
【0095】
上述のとおり、第1実施形態では、ハイサイド側のスイッチ素子の全てをオン状態又はオフ状態にし、ローサイド側のスイッチ素子の全てをハイサイド側のスイッチ素子とは逆の状態となるパルスパターンを付加している。これにより、第1実施形態は、トランス部40で発生する磁束密度を低減することができる。
【0096】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態に係る電源装置について説明する。第2実施形態に係る電源装置の構成は、図1に示す電源装置100と回路構成は同一であり、制御部50の構成が異なっている。
【0097】
第1実施形態では、各スイッチ素子に入力されるパルスのスイッチング周波数は、一定であるものとして説明した。第2実施形態では、各スイッチ素子のスイッチング損失を抑制するためにスイッチング周波数を低くする。
【0098】
通常、比較例に係るDAB方式の電源装置においては、ソフトスイッチング動作が出来ない領域において、スイッチング損失を抑制するためにスイッチング周波数を低くすると、トランスの磁束密度が飽和してしまうことがある。
【0099】
これに対し、電源装置100においては、上述したようにトランス部40の磁束密度を比較例と比べて小さくすることができる。そのため、第2実施形態は、トランス部40の磁束密度を飽和させることなく、スイッチング損失を低減するためにスイッチング周波数を低くすることができる。
【0100】
[制御部の構成例]
図7を用いて、第2実施形態に係る制御部の構成例を説明する。図7は、第2実施形態に係る制御部の構成例を示す図である。
【0101】
図7に示すように、制御部50Aは、誤差算出部51と、位相差算出部52と、駆動パルス生成部53Aと、デューティ比算出部54Aと、1次側パルス駆動部57Aと、2次側パルス駆動部58Aと、周波数算出部59と、パルスパターン付加部60と、を含む。
【0102】
デューティ比算出部54Aは、入出力電圧と、位相差算出部52の位相差の算出結果に基づいて、デューティ比Dを算出する。デューティ比算出部54Aは、1次側電圧V1と、2次側電圧V2との電圧比と、第1ブリッジ回路10と第2ブリッジ回路20との間の位相差φに基づいて、デューティ比Dを算出する。
【0103】
周波数算出部59は、位相差算出部52が算出した第1ブリッジ回路10と第2ブリッジ回路20の位相差φと、デューティ比算出部54Aが算出したデューティ比Dとに基づいて、各スイッチ素子のゲート端子に入力するパルスのスイッチング周波数ωを算出する。
【0104】
図8は、第2実施形態に係るスイッチング周波数を設定する方法を説明するための図である。図8は、横軸がデューティ比Dを示し、縦軸が設定可能なスイッチング周波数(比率)を示す。図8に示す例では、デューティ比Dが1の時のスイッチング周波数を1に正規化している。図8において、デューティ比Dが1、かつスイッチング周波数が1の状態が、比較例に係るDAB方式のスイッチング周波数の下限値を示す。第2実施形態では、スイッチング周波数が1の状態のことを、スイッチング周波数の基準値と呼ぶ。
【0105】
上述したとおり、比較例に係るDAB方式の電源装置においては、スイッチング周波数が基準値をよりも小さくなると、トランス部40の磁束密度が飽和してしまうことがある。第2実施形態では、トランス部40の磁束密度を抑制することができるので、波形130に従って、スイッチング周波数を基準値よりも小さくすることが可能となる。
【0106】
第2実施形態では、例えば、図8に示すようにデューティ比Dを0.8にすることで、スイッチング周波数ωを0.4まで低減することができる。すなわち、デューティ比算出部54Aがデューティ比Dを基準値よりも低く算出することで、周波数算出部59がスイッチング周波数ωを低く算出することができる。これにより、第2実施形態では、比較例においてトランスの磁束密度が飽和してしまう設計上の限界点よりも、スイッチング周波数を低くすることができる。例えば、第2実施形態では、デューティ比Dを約0.66から1の間に設定することができる。
【0107】
パルスパターン付加部60は、デューティ比算出部54Aが算出したデューティ比Dと、周波数算出部59が算出したスイッチング周波数ωを持つ第1出力パルスS11と第2出力パルスS12とを生成する。第1出力パルスS11と、第2出力パルスS12との位相差はφである。第1出力パルスS11は、第1ブリッジ回路10のスイッチ素子11からスイッチ素子16のゲート端子に入力される駆動パルスの基になる基準信号である。第2出力パルスS12は、第2ブリッジ回路20のスイッチ素子21からスイッチ素子26のゲート端子に入力される駆動パルスの基になる基準信号である。
【0108】
駆動パルス生成部53Aは、第1出力パルスS11に基づいて、第1ブリッジ回路10のスイッチ素子11からスイッチ素子16のゲート端子に入力するための複数の第1駆動パルスS13を生成する。駆動パルス生成部53Aは、第2出力パルスS12に基づいて、第2ブリッジ回路20のスイッチ素子21からスイッチ素子26のゲート端子に入力するための複数の第2駆動パルスS14を生成する。
【0109】
1次側パルス駆動部57Aは、第1駆動パルスS13に基づいて、第1ブリッジ回路10のスイッチ素子11からスイッチ素子16のオン状態とオフ状態とを切り替えるための、デューティ比Dのパルスパターンが付加された複数の1次側駆動パルスS15を生成する。1次側パルス駆動部57Aは、複数の1次側駆動パルスS15を第1ブリッジ回路10のスイッチ素子11からスイッチ素子16のゲート端子に出力する。これにより、第2実施形態は、トランス部40の磁束密度の飽和を抑制させつつ、第1ブリッジ回路10のスイッチ素子11からスイッチ素子16のスイッチング損失を低減させることができる。
【0110】
2次側パルス駆動部58Aは、第2駆動パルスS14に基づいて、第2ブリッジ回路20のスイッチ素子21からスイッチ素子26のオン状態とオフ状態とを切り替えるための、デューティ比Dのパルスパターンが付加された複数の2次側駆動パルスS16を出力する。2次側パルス駆動部58Aは、複数の2次側駆動パルスS16を第2ブリッジ回路20のスイッチ素子21からスイッチ素子26のゲート端子に出力する。これにより、第2実施形態は、トランス部40の磁束密度の飽和を抑制させつつ、第2ブリッジ回路20のスイッチ素子21からスイッチ素子26のスイッチング損失を低減することができる。
【0111】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0112】
1 電源
2,3 平滑化コンデンサ
4 負荷
10 第1ブリッジ回路
20 第2ブリッジ回路
10a,20a 第1アーム
10b,20b 第2アーム
10c,20c 第3アーム
11,12,13,14,15,16,21,22,23,24,25,26 スイッチ素子
31,32,33 リアクトル
40 トランス部
40a,40b,40c トランス
41a,41b,41c 第1巻線
42a,42b,42c 第2巻線
43a,43b,43c コア
44a,44b,44c 第1端子
45a,45b,45c 第2端子
50 制御部
51 誤差算出部
52 位相差算出部
53 駆動パルス生成部
54,54A デューティ比算出部
55 1次側パルスパターン付加部
56 2次側パルスパターン付加部
57,57A 1次側パルス駆動部
58,58A 2次側パルス駆動部
59 周波数算出部
60 パルスパターン付加部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8