(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083826
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/12 20170101AFI20230609BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230609BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20230609BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230609BHJP
【FI】
G06T7/12
H04N5/232 290
G06T5/00 705
G06T5/00 720
G06T7/00 650Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197759
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 敏暢
【テーマコード(参考)】
5B057
5C122
5L096
【Fターム(参考)】
5B057AA16
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE08
5B057CE20
5B057DA08
5B057DA17
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC16
5C122DA14
5C122EA12
5C122FH03
5C122FH09
5C122FH11
5C122FH18
5C122FH21
5C122GA01
5C122GA23
5C122HA13
5C122HA35
5C122HB01
5L096BA04
5L096EA37
5L096FA06
5L096FA69
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両に搭載する画像の画像処理を行い、補完する領域をワイパーが写り込む部分を除去することが可能な最小限の領域とする補完画像を生成する画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、画像に写るワイパーの輪郭を抽出する輪郭抽出処理320と、輪郭抽出処理320により得られた輪郭で囲まれるワイパー領域を画像から除去し、除去部分を補完した補完画像を生成する画像補完処理330と、を実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載するカメラが撮像する画像の画像処理を行う画像処理装置であって、
前記画像に写るワイパーの輪郭を抽出する輪郭抽出処理と、
前記輪郭抽出処理により得られた輪郭で囲まれるワイパー領域を前記画像から除去し、除去部分を補間した補完画像を生成する画像補完処理と、
を実行する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記輪郭抽出処理は、動的輪郭モデルにより前記輪郭を抽出するように構成され、
前記動的輪郭モデルの初期値は、前記ワイパーの前記画像上の位置であるワイパー位置を基点として与えられる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
画像認識により前記画像に写る前記ワイパーを検出し、前記ワイパー位置を特定するワイパー検出処理をさらに実行するように構成され、
連続的に撮像された前記画像について前記画像処理を順次行う場合、
前記輪郭抽出処理において、前記画像処理装置は、
前回処理実行時の前記画像において前記ワイパーを検出しており、今回処理実行時の前記画像において前記ワイパーの検出が継続しているとき、前回処理実行時に抽出した前記輪郭を前記初期値として与える
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記ワイパーの作動情報を取得し、前記ワイパーの作動がオンであることを受けて、前記輪郭抽出処理及び前記画像補完処理を実行するように構成されている
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記作動情報に基づいて、前記ワイパー位置を予測するワイパー位置予測処理をさらに実行するように構成されている
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、
前記画像の撮像時刻及び前記作動情報の作動時刻に基づいて、前記ワイパー位置予測処理において予測する前記ワイパー位置と前記画像との時間的な同期をとる同期処理をさらに実行するように構成されている
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
連続的に撮像された前記画像について前記画像処理を順次行う場合、
前記輪郭抽出処理において、前記画像処理装置は、
前回処理実行時において前記ワイパーの作動がオンであり、今回処理実行時において前記ワイパーの作動がオンで継続しているとき、前回処理実行時に抽出した前記輪郭を前記初期値として与える
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記カメラが所定期間過去の間に撮像した前記画像を記憶するように構成され、
前記画像補完処理において、前記画像処理装置は、
所定期間過去の間に撮像された前記画像を用いて前記除去部分の補間を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
車両に搭載するカメラが撮像する画像の画像処理を行う画像処理方法であって、
前記画像に写るワイパーの輪郭を抽出する輪郭抽出処理と、
前記輪郭抽出処理により得られた輪郭で囲まれるワイパー領域を前記画像から除去し、除去部分を補完した補完画像を生成する画像補完処理と、
を含む
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の画像処理方法であって、
前記輪郭抽出処理は、動的輪郭モデルにより前記輪郭を抽出することを含み、
前記動的輪郭モデルの初期値は、前記ワイパーの前記画像上の位置であるワイパー位置を基点として与えられる
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の画像処理方法であって、
画像認識により前記画像に写る前記ワイパーを検出し、前記ワイパー位置を特定するワイパー検出処理をさらに含み、
連続的に撮像された前記画像について前記画像処理を順次行う場合、
前記輪郭抽出処理は、前回処理実行時の前記画像において前記ワイパーを検出しており、今回処理実行時の前記画像において前記ワイパーの検出が継続しているとき、前回処理実行時に抽出した前記輪郭を前記初期値として与えることを含む
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
請求項10に記載の画像処理方法であって、
前記ワイパーの作動情報を取得し、前記ワイパーの作動がオンであることを受けて、前記輪郭抽出処理及び前記画像補完処理を実行することを含む
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の画像処理方法であって、
前記作動情報に基づいて、前記ワイパー位置を予測するワイパー位置予測処理をさらに含む
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
請求項13に記載の画像処理方法であって、
前記画像の撮像時刻及び前記作動情報の作動時刻に基づいて、前記ワイパー位置予測処理において予測する前記ワイパー位置と前記画像との時間的な同期をとる同期処理をさらに含む
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載の画像処理方法であって、
連続的に撮像された前記画像について前記画像処理を順次行う場合、
前記輪郭抽出処理は、前回処理実行時において前記ワイパーの作動がオンであり、今回処理実行時において前記ワイパーの作動がオンで継続しているとき、前回処理実行時に抽出した前記輪郭を前記初期値として与えることを含む
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
請求項9乃至請求項15のいずれか1項に記載の画像処理方法であって、
前記カメラが所定期間過去の間に撮像した前記画像を記憶することを含み、
前記画像補完処理は、所定期間過去の間に撮像された前記画像を用いて前記除去部分の補間を行うことを含む
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項17】
請求項9乃至請求項16のいずれか1項に記載の画像処理方法をコンピュータに実行ささせる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載するカメラが撮像する画像の画像処理を行う画像処理装置、及び画像処理方法、並びに画像処理方法をコンピュータに実行させる画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行環境を撮像するために車両に搭載するカメラは、一般に車内に備えられ、ウィンドウガラスを通して撮像を行う。このとき、カメラが撮像する画像は、ワイパーの動作範囲にあるウィンドウガラスの部分を含むこととなる。このため、ワイパーが作動している場合、ワイパーの写り込みにより、画像認識の精度の低下や検知物体のトラッキング精度の低下の虞がある。
【0003】
特許文献1には、撮影中の外乱に起因するノイズを画像処理によって撮影画像から除去する画像処理装置が開示されている。特許文献1に係る画像処理装置は、所定の処理対象画像を基準にして、処理対象画像に近接する複数の関連画像のそれぞれについての動きベクトルを求め、複数の関連画像を動きベクトルにより動き補正し、動き補正された複数の関連画像及び処理対象画像の画素値を平均化処理して、処理対象画像に対応する合成画像を生成する。この合成画像により、特にワイパーが消された合成画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠隔運転、自動運転、運転支援等における制御の実施において撮像した画像を利用する場合には、ワイパーが写り込む部分に対処する一方で、それ以外の部分については処理が実行されないことが望ましい。特許文献1で開示される画像処理装置は、画像データの平均化処理による合成画像の生成であるため、ワイパーを画像から十分に除去できない虞がある。また、必要な画像の情報が意図せずして失われる恐れがある。
【0006】
本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、補完する領域をワイパーが写り込む部分を除去することが可能な最小限の領域とする補完画像を生成することが可能な画像処理装置、及び画像処理方法、並びに画像処理方法をコンピュータに実行させる画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の開示は、車両に搭載するカメラが撮像する画像の画像処理を行う画像処理装置に関する。
第1の開示に係る画像処理装置は、前記画像に写るワイパーの輪郭を抽出する輪郭抽出処理と、前記輪郭抽出処理により得られた輪郭で囲まれるワイパー領域を前記画像から除去し、除去部分を補完した補完画像を生成する画像補完処理と、を実行する。
【0008】
第2の開示は、第1の開示に係る画像処理装置に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理装置に関する。
前記輪郭抽出処理は、動的輪郭モデルにより前記輪郭を抽出するように構成される。
前記動的輪郭モデルの初期値は、前記ワイパーの前記画像上の位置であるワイパー位置を基点として与えられる。
【0009】
第3の開示は、第2の開示に係る画像処理装置に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理装置に関する。
画像認識により前記画像に写る前記ワイパーを検出し、前記ワイパー位置を特定するワイパー検出処理をさらに実行するように構成される。
連続的に撮像された前記画像について前記画像処理を順次行う場合、前記輪郭抽出処理において、前記画像処理装置は、前回処理実行時の前記画像において前記ワイパーを検出しており、今回処理実行時の前記画像において前記ワイパーの検出が継続しているとき、前回処理実行時に抽出した前記輪郭を前記初期値として与える。
【0010】
第4の開示は、第2の開示に係る画像処理装置に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理装置に関する。
前記ワイパーの作動情報を取得し、前記ワイパーの作動がオンであることを受けて、前記輪郭抽出処理及び前記画像補完処理を実行するように構成されている。
【0011】
第5の開示は、第4の開示に係る画像処理装置に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理装置に関する。
前記作動情報に基づいて、前記ワイパー位置を予測するワイパー位置予測処理をさらに実行するように構成されている。
【0012】
第6の開示は、第5の開示に係る画像処理装置に対して、さらに以下の特徴を有る画像処理装置に関する。
前記画像の撮像時刻及び前記作動情報の作動時刻に基づいて、前記ワイパー位置予測処理において予測する前記ワイパー位置と前記画像との時間的な同期をとる同期処理をさらに実行するように構成されている。
【0013】
第7の開示は、第4乃至第6のいずれか1つの開示に係る画像処理装置に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理装置に関する。
連続的に撮像された前記画像について前記画像処理を順次行う場合、前記輪郭抽出処理において、前記画像処理装置は、前回処理実行時において前記ワイパーの作動がオンであり、今回処理実行時において前記ワイパーの作動がオンで継続しているとき、前回処理実行時に抽出した前記輪郭を前記初期値として与える。
【0014】
第8の開示は、第1乃至第7のいずれか1つの開示に係る画像処理装置に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理装置に関する。
前記カメラが所定期間過去の間に撮像した前記画像を記憶するように構成される。
前記画像補完処理において、前記画像処理装置は、所定期間過去の間に撮像された前記画像を用いて前記除去部分の補間を行う。
【0015】
第9の開示は、車両に搭載するカメラが撮像する画像の画像処理を行う画像処理方法に関する。
第9の開示に係る画像処理方法は、前記画像に写るワイパーの輪郭を抽出する輪郭抽出処理と、前記輪郭抽出処理により得られた輪郭で囲まれるワイパー領域を前記画像から除去し、除去部分を補完した補完画像を生成する画像補完処理と、を含む。
【0016】
第10の開示は、第9の開示に係る画像処理方法に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理方法に関する。
前記輪郭抽出処理は、動的輪郭モデルにより前記輪郭を抽出することを含む。
前記動的輪郭モデルの初期値は、前記ワイパーの前記画像上の位置であるワイパー位置を基点として与えられる。
【0017】
第11の開示は、第10の開示に係る画像処理方法に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理方法に関する。
画像認識により前記画像に写る前記ワイパーを検出し、前記ワイパー位置を特定するワイパー検出処理をさらに含む。
連続的に撮像された前記画像について前記画像処理を順次行う場合、前記輪郭抽出処理は、前記画像処理装置は、前回処理実行時の前記画像において前記ワイパーを検出しており、今回処理実行時の前記画像において前記ワイパーの検出が継続しているとき、前回処理実行時に抽出した前記輪郭を前記初期値として与えることを含む。
【0018】
第12の開示は、第10の開示に係る画像処理方法に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理方法に関する。
前記ワイパーの作動情報を取得し、前記ワイパーの作動がオンであることを受けて、前記輪郭抽出処理及び前記画像補完処理を実行することを含む。
【0019】
第13の開示は、第12の開示に係る画像処理方法に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理方法に関する。
前記作動情報に基づいて、前記ワイパー位置を予測するワイパー位置予測処理をさらに含む。
【0020】
第14の開示は、第13の開示に係る画像処理方法に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理方法に関する。
前記画像の撮像時刻及び前記作動情報の作動時刻に基づいて、前記ワイパー位置予測処理において予測する前記ワイパー位置と前記画像との時間的な同期をとる同期処理をさらに含む。
【0021】
第15の開示は、第12乃至第14のいずれか1つの開示に係る画像処理方法に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理方法に関する。
連続的に撮像された前記画像について前記画像処理を順次行う場合、前記輪郭抽出処理は、前記画像処理装置は、前回処理実行時において前記ワイパーの作動がオンであり、今回処理実行時において前記ワイパーの作動がオンで継続しているとき、前回処理実行時に抽出した前記輪郭を前記初期値として与えることを含む。
【0022】
第16の開示は、第9乃至第15のいずれか1つの開示に係る画像処理方法に対して、さらに以下の特徴を有する画像処理方法に関する。
前記カメラが所定期間過去の間に撮像した前記画像を記憶することを含む。
前記画像補完処理は、前記画像処理装置は、所定期間過去の間に撮像された前記画像を用いて前記除去部分の補間を行うことを含む。
【0023】
第17の開示は、第9乃至第16のいずれか1つの開示に係る画像処理方法をコンピュータに実行させる画像処理プログラムに関する。
【発明の効果】
【0024】
本開示に係る画像処理装置及び画像処理方法、並びに画像処理方法をコンピュータに実行させる画像処理プログラムによれば、ワイパーの輪郭を抽出し、抽出した輪郭で囲まれるワイパー領域の除去及び補完を行う。これにより、補完する領域をワイパーが写り込む部分を除去することが可能な最小限の領域とする補完画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る画像処理装置による画像処理の対象となる画像について説明するための概念図である。
【
図2】ワイパーの動作状態が異なる画像の例を示す概念図である。
【
図3】本実施形態に係る画像処理装置による画像処理方法の概要について説明するための概念図である。
【
図4】前回処理実行時においてワイパーの輪郭を抽出しており、今回処理実行時において継続してワイパーの輪郭を抽出する場合に、今回処理実行時において与える初期値の例を示す概念図である。
【
図5】第1実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態に係る画像処理装置において、プロセッサが画像処理プログラムに従って実行する処理の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図6に示す処理の構成により実現されるアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る画像処理装置において、プロセッサが画像処理プログラムに従って実行する処理の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図8に示す処理の構成により実現されるアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図10】第3実施形態に係る画像処理装置において、プロセッサが画像処理プログラムに従って実行する処理の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構成等は、特に明示した場合や原理的に明らかにそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を附しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0027】
1.概要
本実施形態に係る画像処理装置は、車両に搭載するカメラが撮像する画像の画像処理を行う。
図1は、本実施形態に係る画像処理装置による画像処理の対象となる画像10について説明するための概念図である。
【0028】
図1の(A)は、画像10を撮像するカメラ110、及びカメラ110を搭載する車両1の例を示している。
図1の(B)は、カメラ110が撮像する画像10の例を示している。
【0029】
図1の(A)において、カメラ110は、車両1の前方の走行領域を撮像する。つまり、画像10は、車両1の走行映像を構成するデータである。画像10は、車両1の周囲環境を認識するための情報として利用することができる。例えば、自動運転技術、運転支援技術等において、画像10の画像認識により、車両1の周囲の物体(他車両、障害物等)の検知や白線検知等が行われる。あるいは、遠隔運転技術において、遠隔運転のオペレータは、画像10を視認することで車両1の周囲環境を認識する。
【0030】
ここで、カメラ110は、一般に、車両1の車内に備えられ、ウィンドウガラス2を通して撮像を行う。また、カメラ110の撮像領域は、ワイパー120の動作範囲にあるウィンドウガラス2の部分を含んでいる。これは、雨天時等におけるカメラ110のレンズの水滴の付着やウィンドウガラス2の表面に付着した水滴が残存することによる走行映像の乱れを防ぐためである。
【0031】
このため、
図1の(B)に示すように、ワイパー120を作動している間は、画像10にワイパー120が写り込むこととなる。画像10にワイパー120が写り込むと、画像認識の精度や検知物体のトラッキング精度が低下する虞がある。
【0032】
図2は、ワイパー120の動作状態が異なる3つの場合(A)、(B)、及び(C)における画像10の例を示す概念図である。それぞれの画像10には、検知の対象となる他車両3a及び3bが写っている。ここで
図2は、(A)、(B)、及び(C)の順に時間が進行する場合を示しており、例えば、他車両3aに続いて右折しようとする状況で撮像される画像10の例である。
【0033】
いま(A)において画像10の画像認識により他車両3aを検知し、その後、他車両3aのトラッキングを行う場合を考える。この場合に、(B)において、ワイパー120の写り込みにより他車両3aの一部が隠れているため、他車両3aを見失う虞がある。このとき、(C)において、再度、他車両3aの検知及びトラッキングを行うこととなり、トラッキング精度が低下してしまう。
【0034】
また、
図2に示す画像10の画像認識により他車両3bの検知を行う場合を考える。この場合に、(B)から(C)にかけてワイパー120の写り込みにより他車両3bの一部が隠れている。このため、他車両3bの検知が困難となる。このように、画像認識の精度が低下する虞がある。
【0035】
このような課題に対して、本実施形態に係る画像処理装置は、カメラ110が撮像する画像10を入力として、ワイパー120が写り込む部分を除去するように補完した補完画像を生成する。ここで、補完する領域は、ワイパー120が写り込む部分を除去することが可能な最小限の領域であることが望ましい。元の画像10の情報が失われることを抑制するためである。
【0036】
そこで、本実施形態に係る画像処理装置は、画像10に写るワイパー120の輪郭を抽出する。そして、抽出した輪郭で囲まれる領域(以下、「ワイパー領域」とも称する。)を画像10から除去し、除去部分を補完した補完画像を生成する。特に、本実施形態に係る画像処理装置は、動的輪郭モデル(Active Contour)によりワイパー120の輪郭を抽出する。
【0037】
図3は、本実施形態に係る画像処理装置による画像処理方法の概要について説明するための概念図である。
【0038】
まず(1)に示すように、ワイパー120の画像10上の位置であるワイパー位置121を特定する。
図3では、ワイパー位置121として、画像10上の一定の範囲を与えている。ただし、ワイパー位置121は、画像10の特定の点として与えられても良いし、画像10上の位置を規定する座標により与えられても良い。
【0039】
次に(2)に示すように、ワイパー位置121を基点として、動的輪郭モデルにより抽出する輪郭122の初期値を与える。
図3では、輪郭122の初期値として、ワイパー位置121を基点とする長方形の形状を与えている。ただし、輪郭122の初期値は、車両1やカメラ110等の環境に応じて好適な形状を与えても良い。例えば、楕円の形状を与えても良い。
【0040】
なお、ワイパー位置121が画像10上の特定の点や画像10上の位置を規定する座標により与えられる場合は、特定の点や座標を基点として、一定の範囲を囲む所定の形状の輪郭122が初期値として与えられる。
【0041】
次に(3)に示すように、動的輪郭モデルによりワイパー120の輪郭122を抽出する。動的輪郭モデルは、初期値として与える形状を物体の形状に収束させるように漸次変形させる処理を繰り返すことで輪郭122を抽出する手法である。動的輪郭モデルにより、十分な繰り返し回数を与えることで、輪郭122の抽出漏れを抑制し、ワイパー120の写り込み部分に対応した輪郭122を確実に抽出することができる。なお、動的輪郭モデルのアルゴリズムは好適な公知技術を採用して良い。
【0042】
次に(4)に示すように、抽出した輪郭122で囲まれるワイパー領域123を画像10から除去する。
図3では、白抜きによりワイパー領域123の除去が行われている。そして(5)に示すように、除去部分を補完した補完画像11を生成する。
【0043】
このように、本実施形態に係る画像処理装置によれば、ワイパー120の輪郭122を抽出し、抽出した輪郭122で囲まれる領域(ワイパー領域123)の除去及び補完により補完画像11を生成する。特に、本実施形態に係る画像処理装置では、動的輪郭モデルにより輪郭122を抽出する。これにより、ワイパー120の写り込み部分に対応した輪郭122を確実に抽出し、補完する領域をワイパー120が写り込む部分を除去することが可能な最小限の領域とする補完画像11を生成することができる。
【0044】
ところで、動的輪郭モデルは、一般に、初期値を漸次変形させる処理の繰り返し回数が増えるほどより所望の輪郭122を抽出することができる。しかし、自動運転や運転支援等において、走行映像としての画像10の画像処理を行う場合、速やかに制御の判断を行うことが必要となるため処理時間は限られる。延いては、動的輪郭モデルにおける処理の繰り返し回数は限られる。一方で、輪郭122の初期値を物体の形状と近くなるように与えれば、少ない繰り返し回数で所望の輪郭122を抽出することができる。
【0045】
そこで、本実施形態に係る画像処理装置は、抽出したワイパー120の輪郭122を記憶する。そして、連続的に撮像された画像10(例えば、走行映像)について画像処理を順次行う場合、前回処理実行時においてワイパー120の輪郭122を抽出しており、今回処理実行時において継続してワイパー120の輪郭122を抽出する場合、今回処理実行時における動的輪郭モデルの初期値を、前回処理実行時において抽出した輪郭122とする。
【0046】
ワイパー120は、画像処理の実行間隔程度の時間では位置や形状が大きく変化することがないため、前回処理実行時において抽出した輪郭122は、今回処理実行時においても画像10に写るワイパー120の形状と近いことが予想される。従って、前回処理実行時において抽出した輪郭122を初期値として与えることで、今回処理実行時において限られた繰り返し回数で所望の輪郭122を抽出することができる。
【0047】
なお、初期値を与える位置は、今回処理実行時において特定したワイパー位置121を基点として良い。これにより、さらに初期値を画像10に写るワイパー120の形状と近くすることができる。
図4に、前回処理実行時においてワイパー120の輪郭122を抽出しており、今回処理実行時において継続してワイパー120の輪郭122を抽出する場合に、今回処理実行時において与える初期値の例を示す。
【0048】
また、このように動的輪郭モデルの初期値を与えることにより、ワイパー120が画像10に写り込んだ直後の画像10においては十分に輪郭122を抽出することができないとしても、その後の画像10においては所望の輪郭122を抽出することができる。延いては、設計の容易さやロバスト性の向上、要求性能の低減等が期待できる。
【0049】
2.第1実施形態
2-1.画像処理装置
図5は、第1実施形態に係る画像処理装置100の概略構成を示すブロック図である。画像処理装置100は、メモリ200と、プロセッサ300と、を備えるコンピュータである。画像処理装置100は、例えば、車両1に搭載されるECU(Electronic Control Unit)の1つである。ただしこの場合、画像処理装置100として機能するECUを示し、その他の機能を有するECUであっても良い。また、画像処理装置100は、複数のECUにより構成されていても良い。この場合、画像処理装置100は、メモリ200とプロセッサ300とを備える複数のECUにより構成されるシステムを示す。
【0050】
その他の画像処理装置100の例として、通信ネットワーク(典型的には、インターネット)上に構成されたサーバー(仮想的であっても良い)が挙げられる。
【0051】
画像処理装置100は、車両1に搭載するカメラ110が撮像する画像10を取得することができるように構成されている。例えば、画像処理装置100は、カメラ110とワイヤーハーネスを介して電気的に接続されるように構成される。あるいは、画像処理装置100は、カメラ110と有線又は無線による通信ネットワーク(典型的には、インターネット)を介して互いに情報を通信することができるように構成される。
【0052】
メモリ200は、種々のデータ210、及びプロセッサ300で実行可能なプログラム220を記憶する。特にメモリ200は、画像処理装置100が取得する情報(カメラ110から取得する画像10を含む)を、データ210として記憶する。ここで、画像処理装置100は、所定期間過去の間に取得する情報をデータ210としてメモリ200に記憶するように構成しても良い。例えば、所定期間過去の間の走行映像を構成する画像10のデータを記憶するように構成しても良い。
【0053】
プロセッサ300は、メモリ200からデータ210及びプログラム220を読み出し、データ210に基づいてプログラム220に従う処理を実行する。また、プロセッサ300は、処理の結果の一部をメモリ200に記憶しても良い。ここで、プログラム220には、画像10の画像処理を行うプログラム(以下、「画像処理プログラム」とも称する。)が含まれる。プロセッサ300が画像処理プログラムに従う処理を実行することにより、画像処理装置100による画像10の画像処理が実現される。そして、画像処理装置100は、画像10の画像処理を行った結果を出力する。
【0054】
プロセッサ300が画像処理プログラムに従って実行する処理には、画像10を入力として、ワイパー120が写り込む部分を除去するように補完した補完画像11を生成する処理が含まれる。そして、画像処理装置100は、画像10の画像処理を行った結果として、補完画像11を出力する。
【0055】
2-2.処理
以下、プロセッサ300が画像処理プログラムに従って実行する処理について説明する。
【0056】
図6は、プロセッサ300が画像処理プログラムに従って実行する処理の構成を示すブロック図である。プロセッサ300は、画像10を入力として、ワイパー検出処理310と、輪郭抽出処理320と、画像補完処理330と、を実行し、補完画像11を生成する。ワイパー検出処理310、輪郭抽出処理320、及び画像補完処理330は、画像処理プログラムの一部として記述される。
【0057】
ここで、プロセッサ300は、カメラ110により連続的に撮像された画像10について、画像処理プログラムに従う処理を順次実行する。例えば、カメラ110が車両1の走行映像を撮像する場合に、プロセッサ300は、走行映像を構成する画像10それぞれについて、時系列に沿って処理を順次実行する。
【0058】
ワイパー検出処理310において、プロセッサ300は、画像10に写るワイパー120を検出し、検出情報を算出する。ここで、画像10に写るワイパー120を検出した場合、検出情報には、ワイパー位置121の情報が含まれる。画像10にワイパー120が写っているか否か、及びワイパー位置121の検出は、画像10の画像認識により行われる。なお、画像認識は、公知の技術を採用して良い。
【0059】
プロセッサ300は、画像10に写るワイパー120を検出したことを受けて、輪郭抽出処理320及び画像補完処理330を実行する。
【0060】
輪郭抽出処理320において、プロセッサ300は、動的輪郭モデルによりワイパー120の輪郭122を抽出し、輪郭情報を算出する。また、算出した輪郭情報(今回処理結果)をデータ210としてメモリ200に記憶する。ここで、前回処理実行時に画像10に写るワイパー120を検出している場合、前回処理実行時に算出した輪郭情報(前回処理結果)をメモリ200から取得する。そして、前回処理実行時に抽出した輪郭122を動的輪郭モデルの初期値として与える。一方で、前回処理実行時に画像10に写るワイパー120を検出していない場合、所定の形状を初期値として与える。所定の形状は、プログラム220にあらかじめ記述されていて良い。あるいは、検出情報に基づいて定められる形状であっても良い。なお、初期値は、検出情報に含まれるワイパー位置121を基点として与えられる。
【0061】
画像補完処理330において、プロセッサ300は、輪郭抽出処理320により抽出した輪郭122で囲まれるワイパー領域123を画像10から除去し、除去部分を補完した補完画像11を生成する。ここで、除去部分の補間は、公知の画像補完技術を採用して良い。例えば、深層学習を利用した画像補完技術を採用して良い。
【0062】
図7は、
図6に示す処理の構成により実現されるアルゴリズムを示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートに係る処理は、処理の対象となる画像10毎に実行される。また、プロセッサ300が
図7に示す処理を実行することにより、
図3に示す画像処理方法が実現される。
【0063】
ステップS100において、プロセッサ300は、ワイパー検出処理310を実行し画像10に写るワイパー120を検出したか否かを判定する。画像10に写るワイパー120を検出した場合(ステップS100;Yes)、処理はステップS110に進む。画像10に写るワイパー120を検出していない場合(ステップS100;No)、処理は終了する。
【0064】
ステップS110において、プロセッサ300は、検出情報に基づいて前回処理実行時に画像10に写るワイパー120を検出しているか否かを判定する。前回処理実行時に画像10に写るワイパー120を検出している場合(ステップS110;Yes)、つまり前回処理実行時からワイパー120の検出が継続している場合、処理はステップS120に進む。前回処理実行時に画像10に写るワイパー120を検出していない場合(ステップS110;No)、処理はステップS130に進む。
【0065】
ステップS120において、プロセッサ300は、前回処理実行時に抽出した輪郭122を初期値として輪郭抽出処理320を実行する。ステップS120の後、処理はステップS140に進む。
【0066】
ステップS130において、プロセッサ300は、前回処理実行時に抽出した輪郭122を初期値として輪郭抽出処理320を実行する。ステップS130の後、処理はステップS140に進む。
【0067】
ステップS140において、プロセッサ300は、ステップS120又はステップS130において抽出した輪郭122をデータ210としてメモリ200に記憶する。ステップS140の後、処理はステップS150に進む。
【0068】
ステップS150において、プロセッサ300は、ステップS120又はステップS130において抽出した輪郭122で囲まれるワイパー領域123を画像10から除去する。ステップS150の後、処理はステップS160に進む。
【0069】
ステップS160において、プロセッサ300は、除去部分を補完するように画像補完処理330を実行する。ステップS160の後処理は終了する。
【0070】
3.第2実施形態
以下、第2実施形態に係る画像処理装置100について説明する。ただし、第1実施形態に係る画像処理装置100と重複する事項については適宜省略する。
【0071】
3-1.画像処理装置
第2実施形態に係る画像処理装置100は、第1実施形態に係る画像処理装置100に対して、ワイパー120の作動情報をさらに取得し、作動情報に基づいて、処理の実行の判断やワイパー位置121の予測を行うことを特徴とする。
【0072】
第2実施形態に係る画像処理装置100の構成は、
図5に示す第1実施形態に係る画像処理装置100と同等であって良い。ただし、第2実施形態に係る画像処理装置100は、ワイパー120の作動情報(オンオフ状態、間欠動作の周期等)を取得することができるように構成されている。例えば、画像処理装置100は、ワイパー120の駆動を制御するECUとワイヤーハーネスを介して電気的に接続するように構成される。あるいは、ワイパー120の駆動を制御するECUと有線又は無線による通信ネットワークを介して互いに情報を通信することができるように構成される。
【0073】
3-2.処理
以下、第2実施形態に係る画像処理装置100において、プロセッサ300が画像処理プログラムに従って実行する処理について説明する。
【0074】
図8は、第2実施形態に係る画像処理装置100において、プロセッサ300が画像処理プログラムに従って実行する処理の構成を示すブロック図である。第2実施形態において、プロセッサ300は、画像10及び作動情報を入力として、ワイパー位置予測処理340と、輪郭抽出処理320と、画像補完処理330と、を実行し、補完画像11を生成する。ワイパー位置予測処理340、輪郭抽出処理320、及び画像補完処理330は、画像処理プログラムの一部として記述される。
【0075】
ここで、プロセッサ300は、カメラ110により連続的に撮像された画像10(例えば、走行映像)について、画像処理プログラムに従う処理を順次実行する。
【0076】
ワイパー位置予測処理340において、プロセッサ300は、作動情報に基づいてワイパー位置121を予測して算出する。例えば、作動情報として、ワイパー120の間欠動作の状態(動作中又はポーズ中)及び間欠動作の周期を取得することで、プロセッサ300は、ワイパー120の動作の開始時点からの経過時間と間欠動作の周期からワイパー位置121を予測することができる。
【0077】
第2実施形態に係る画像処理装置100では、プロセッサ300は、ワイパー120の作動がオンであることを受けて、ワイパー位置予測処理340、輪郭抽出処理320、及び画像補完処理330を実行する。これにより、ワイパー120の作動がオフであり、画像10にワイパー120が写ることがない場合に不必要に処理が実行されることを抑止することができる。
【0078】
輪郭抽出処理320において、プロセッサ300は、動的輪郭モデルによりワイパー120の輪郭122を抽出し、輪郭情報を算出する。また、算出した輪郭情報(今回処理結果)をデータ210としてメモリ200に記憶する。ここで、前回処理実行時にワイパー120の作動がオンである場合、前回処理実行時に算出した輪郭情報(前回処理結果)をメモリ200から取得する。そして、前回処理実行時に抽出した輪郭122を動的輪郭モデルの初期値として与える。一方で、前回処理実行時にワイパー120の作動がオフである場合、所定の形状を初期値として与える。なお、初期値は、ワイパー位置予測処理340において算出したワイパー位置121を基点として与えられる。
【0079】
画像補完処理330は、第1実施形態に係る画像処理装置100と同等であって良い。
【0080】
図9は、
図8に示す処理の構成により実現されるアルゴリズムを示すフローチャートである。
図9に示すフローチャートに係る処理は、処理の対象となる画像10毎に実行される。
【0081】
ステップS101において、プロセッサ300は、作動情報からワイパー120の作動がオンであるか否かを判定する。ワイパー120の作動がオンである場合(ステップS101;Yes)、処理はステップS102に進む。ワイパー120の作動がオフである場合(ステップS101;No)、処理は終了する。
【0082】
ステップS102において、プロセッサ300は、ワイパー位置予測処理340を実行する。ステップS102の後、処理はステップS111に進む。
【0083】
ステップS111において、プロセッサ300は、作動情報に基づいて前回処理実行時にワイパー120の作動がオンであったか否かを判定する。前回処理実行時にワイパー120の作動がオンであった場合(ステップS111;Yes)、つまり前回処理実行時からワイパー120の作動がオンで継続している場合、処理はステップS120に進む。前回処理実行時にワイパー120の作動がオフであった場合(ステップS111;No)、処理はステップS130に進む。
【0084】
ステップS120、ステップS130、ステップS140、ステップS150、及びステップS160については、
図7において説明したものと同等であって良い。
【0085】
以上説明したように、第2実施形態に係る画像処理装置100であっても、第1実施形態に係る画像処理装置100と同等の機能を発揮することができる。また、ワイパー120の作動情報を取得してワイパー位置121を算出することにより、ワイパー位置121をより正確に特定することができる。延いては、動的輪郭モデルによる輪郭122の抽出をより高速に行うことができる。
【0086】
3-3.変形例
第2実施形態に係る画像処理装置100は、以下のように変形した態様を採用しても良い。
【0087】
3-3-1.変形例1
第2実施形態に係る画像処理装置100は、プロセッサ300が、
図6において説明したワイパー検出処理310をさらに実行するように構成されていても良い。これにより、ワイパー120の作動情報が取得できない場合にワイパー検出処理310により算出した検出情報を用いて処理を実行することを可能にするなど冗長な構成とすることができる。
【0088】
3-3-2.変形例2
第2実施形態に係る画像処理装置100は、プロセッサ300が、ワイパー位置予測処理340において予測するワイパー位置121と画像10との時間的な同期をとる同期処理をさらに実行するように構成されていても良い。この場合、画像10には撮像時刻の情報が付加され、ワイパー120の作動情報には作動時刻の情報が付加される。以下、同期処理の例について説明する。
【0089】
画像処理装置100は、ワイパー120の作動情報について所定期間過去までの時系列データを取得するように構成される。そして、プロセッサ300は、ワイパー位置予測処理340において、作動情報の時系列データそれぞれについてワイパー位置121を算出する。ここで、算出されるワイパー位置121は、作動情報に付加した作動時刻に対応する時系列データとなる。
【0090】
同期処理において、プロセッサ300は、今回処理の対象となる画像10の撮像時刻と対応するワイパー位置121を選択する。そして、プロセッサ300は、同期処理において選択したワイパー位置121に基づいて、輪郭抽出処理320を実行する。
【0091】
さらに、画像補完処理330において生成した補完画像11についてワイパー120が写り込む部分の除去が十分でない場合、同期処理において、プロセッサ300は、1つ前の時刻又は1つ後の時刻のワイパー位置121を再度選択する。ここで、ワイパー120が写り込む部分の除去が十分でないことは、例えば、補完画像11に残るワイパー120の部分の面積から判断する。あるいは、画像認識によりワイパー位置121を与えた場合に生成される補完画像11との比較によって判断する。
【0092】
このように変形した態様を採用することにより、ワイパー位置121と画像10との時間的な同期がとれていないことにより、ワイパー120が写り込む部分の除去が十分でない補完画像11が生成されることを抑制することができる。
【0093】
4.第3実施形態
以下、第3実施形態に係る画像処理装置100について説明する。ただし、第1実施形態に係る画像処理装置100と重複する事項については適宜省略する。
【0094】
4-1.画像処理装置
第3実施形態に係る画像処理装置100は、第1実施形態に係る画像処理装置100に対して、所定期間過去の間に撮像された画像10を記憶し、所定期間過去の間に撮像された画像10を用いて、除去部分の補間を行うことを特徴とする。
【0095】
第3実施形態に係る画像処理装置100の構成は、
図5に示す第1実施形態に係る画像処理装置100と同等であって良い。ただし、第3実施形態に係る画像処理装置100は、所定期間過去の間に撮像された画像10を、データ210としてメモリ200に記憶するように構成されている。例えば、画像処理装置100が走行映像を構成する画像10を順次取得する場合に、画像処理装置100は、所定期間過去の間の走行映像をデータ210としてメモリ200に記憶する。
【0096】
3-2.処理
以下、第3実施形態に係る画像処理装置100において、プロセッサ300が画像処理プログラムに従って実行する処理について説明する。
【0097】
図10は、第3実施形態に係る画像処理装置100において、プロセッサ300が画像処理プログラムに従って実行する処理の構成を示すブロック図である。
【0098】
プロセッサ300は、画像10を入力として、ワイパー検出処理310と、輪郭抽出処理320と画像補完処理330と、を実行し、補完画像11を生成する。ワイパー検出処理310、輪郭抽出処理320、及び画像補完処理330は、画像処理プログラムの一部として記述される。
【0099】
ここで、プロセッサ300は、カメラ110により連続的に撮像された画像10について、画像処理プログラムに従う処理を順次実行する。
【0100】
ワイパー検出処理310、及び輪郭抽出処理320は、第1実施形態に係る画像処理装置100と同等であって良い。
【0101】
画像補完処理330において、プロセッサ300は、輪郭抽出処理320により抽出した輪郭122で囲まれるワイパー領域123を画像10から除去し、除去部分を補完した補完画像11を生成する。ここで、プロセッサ300は、メモリ200から所定期間過去の間に撮像された画像10(過去画像)を取得し、過去画像を用いて除去部分を補完する。
【0102】
ワイパー120は継続的に動作していることから、今回処理の対象となる画像10においてワイパー120が写り込む部分(除去部分)の環境は、所定期間過去の間に撮像した画像10に写しだされていることが想定される。このため、第3実施形態に係る画像処理装置100においては、過去画像を用いて除去部分を補完することにより、より正確に除去部分の補間をすることができる。
【0103】
除去部分の補間は、除去部分の環境が写し出されている過去画像を除去部分に当てはめるように行っても良いし、公知の画像補完技術により過去画像の情報を利用して行っても良い。
【0104】
図10に示す処理の構成により実現されるアルゴリズムは、
図7に示すフローチャートと同等であって良い。
【0105】
以上説明したように、第3実施形態に係る画像処理装置100であっても、第1実施形態に係る画像処理装置100と同等の機能を発揮することができる。また、画像補完処理330において、所定期間過去の間に撮像した画像10を用いて除去部分の補間を行うことで、より正確な補完を実現することができる。
【0106】
5.その他の実施形態
第2実施形態に係る画像処理装置100に対して、プロセッサ300が、画像補完処理330において、所定期間過去の間に撮像された画像10を用いて、除去部分の補間を行うように画像処理装置100を構成することも可能である。
【0107】
6.効果
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理装置100及び画像処理方法によれば、ワイパー120の輪郭122を抽出し、ワイパー領域123の除去及び補完により補完画像11を生成する。特に、本実施形態に係る画像処理装置100では、動的輪郭モデルにより輪郭122を抽出する。これにより、ワイパー120の写り込み部分に対応した輪郭122を確実に抽出し、補完する領域をワイパー120が写り込む部分を除去することが可能な最小限の領域とする補完画像11を生成することができる。
【0108】
延いては、遠隔運転技術、自動運転技術、運転支援技術等において、生成した補完画像11を車両1の周囲環境を認識する情報として利用することにより、環境の認識性能の向上、運転の安全性の向上、マッピング精度の向上が期待できる。
【符号の説明】
【0109】
1 車両
10 画像
11 補完画像
100 画像処理装置
110 カメラ
120 ワイパー
121 ワイパー位置
122 輪郭
123 ワイパー領域
200 メモリ
210 データ
220 プログラム
300 プロセッサ(画像処理プログラム)
310 ワイパー検出処理
320 輪郭抽出処理
330 画像補完処理
340 ワイパー位置予測処理