(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083848
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】オイル状態検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20230609BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20230609BHJP
G01N 27/02 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G01N27/00 L
G01N27/22 Z
G01N27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197792
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中津 彰
(72)【発明者】
【氏名】中川 健人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA19
2G060AE20
2G060AE30
2G060AF03
2G060AF10
2G060AF20
2G060EA06
2G060FA10
2G060HA02
2G060HC02
2G060JA07
2G060KA10
(57)【要約】
【課題】オイルに含まれる劣化物質の物質量を検出する。
【解決手段】本オイル状態検出装置は、コイル1およびコンデンサ2によって構成される第1発振回路と、第1検出装置とを備える。コイル1およびコンデンサ2のいずれか一方は、オイルに浸漬されている。第1検出装置は、発振回路の発振周波数を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルおよび第1コンデンサによって構成される第1発振回路と、
第1検出装置と
を備え、
前記第1コイルおよび前記第1コンデンサのいずれか一方は、オイルに浸漬されており、
前記第1検出装置は、前記第1発振回路の発振周波数を検出する、オイル状態検出装置。
【請求項2】
前記第1検出装置は、前記第1発振回路に、発振器およびPLL(Phase Locked Loop)回路を備え、
前記PLL回路は、前記発振器が出力する出力周波数が前記発振周波数と一致するように、前記発振器にチューニング電圧を入力する、請求項1に記載のオイル状態検出装置。
【請求項3】
前記第1検出装置は、前記チューニング電圧を電流に変換する電圧電流変換装置をさらに備える、請求項2に記載のオイル状態検出装置。
【請求項4】
前記第1検出装置は、前記出力周波数を所定の帯域内において掃引するPLL掃引装置をさらに備える、請求項2または3に記載のオイル状態検出装置。
【請求項5】
前記第1検出装置は、前記発振周波数に対する前記出力周波数の追従速度を制御するPLL制御装置をさらに備える、請求項2~4のいずれか1項に記載のオイル状態検出装置。
【請求項6】
前記第1発振回路に容量可変コンデンサと、
前記オイルの温度または当該オイル状態検出装置に構成された回路の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に従って、前記容量可変コンデンサの容量値を制御するDAC(digital to analog converter)回路とをさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のオイル状態検出装置。
【請求項7】
前記第1コイルは、前記オイルに浸漬されており、
前記第1コンデンサは、容量が互いに異なる複数のコンデンサを備え、
前記第1発振回路は、前記第1コンデンサとして、前記複数のコンデンサのいずれか1つと接続されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のオイル状態検出装置。
【請求項8】
前記第1コイルは、前記オイルに浸漬されており、
前記第1コイルは、平板状に形成された誘電体基板と、当該誘電体基板上に配置された金属パターンとで構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のオイル状態検出装置。
【請求項9】
前記第1コイルと対向する位置に設けられた導体板をさらに備え、
前記第1コイルと前記導体板とは、筐体によって一体化されている、請求項8に記載のオイル状態検出装置。
【請求項10】
第2コイルおよび第2コンデンサによって構成される第2発振回路と、
第2検出装置と
をさらに備え、
前記第1コイルおよび前記第2コンデンサは、オイルに浸漬されており、
前記第1検出装置は、前記第1発振回路の発振周波数に基づき、前記オイルに含まれる磁性体の量を検出し、
前記第2検出装置は、前記第2発振回路の発振周波数に基づき、前記オイルに含まれる誘電体および導体の量を検出する、請求項1~9のいずれか1項に記載のオイル状態検出装置。
【請求項11】
前記前記第1コイルは、平板状に形成された誘電体基板と、当該誘電体基板上に配置された金属パターンとで構成されており、
前記第2コンデンサを構成している一対の電極板のうちのいずれか一方は、前記第1コイルと対向するように設けられている、請求項10に記載のオイル状態検出装置。
【請求項12】
前記第1コイルおよび前記第2コンデンサは、筐体によって一体化されている、請求項11に記載のオイル状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オイルに含まれる劣化物質の物質量を検出するオイル状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両や建設機械などに潤滑油として用いられるオイルの劣化を判断する方法が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1では、潤滑油を収容する容器に装着された磁石が、潤滑油中の金属を吸着し、この磁石の磁束密度を検知することで、潤滑油の劣化を判断している。また、特許文献2では、エンジン油中に浸漬された静電容量型センサの一対の対向電極間に2種類の周波数の交流電圧を印加して、各周波数における電極間静電容量を測定し、各電極間静電容量から求められる誘電率、および、誘電率の差から、エンジン油の劣化を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4-34414号公報
【特許文献2】特開2003-114206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両や建設機械が動作すると、車両や建設機械などの各部が互いに擦れ合って摩耗する。このため、車両や建設機械などに用いられるオイル(潤滑油)に含まれる、オイルの劣化物質の物質量を検出することで、車両や建設機械などの各部の摩耗状態やオイルの劣化状態を把握し、故障を未然に防止することができる。この劣化物質は、例えば、車両や建設機械などの摩耗により生じる金属粉などが挙げられ、オイル中に一定量以上含まれると各部を機械的に損傷させる。また、それ自体でオイルを劣化させる物質(例えば水)や、オイルを酸化させることにより生成される物質(例えばスラッジ)など、オイルの劣化に関与する物質が挙げられ、オイルの寿命短縮や性能を阻害する。この劣化物質は、一般的に、磁性体や誘電体、導体などで構成される。
【0006】
そこで、本開示は、オイルに含まれる劣化物質の物質量を検出することが可能なオイル状態検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示の一実施形態に係るオイル状態検出装置は、第1コイルおよび第1コンデンサによって構成される第1発振回路と、第1検出装置とを備え、前記第1コイルおよび前記第1コンデンサのいずれか一方は、オイルに浸漬されており、前記第1検出装置は、前記第1発振回路の発振周波数を検出する、オイル状態検出装置。
【0008】
この構成によれば、第1発振回路を構成する第1コイルおよび第1コンデンサのいずれか一方がオイルに浸漬される。ここで、第1発振回路の発振周波数は、第1コイルのインダクタンス値および第1コンデンサの容量値によって定まるが、オイルに含まれる劣化物質(磁性体または誘電体)の物質量が増加すると、その増加量に応じて、第1発振回路の発振周波数が変化する。この発振周波数を第1検出装置が検出することにより、オイルに含まれる劣化物質の物質量を検出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、オイルに含まれる劣化物質の物質量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る、チューニング電圧Vと、オイルに含まれる磁性体の量との関係を示すグラフ。
【
図3】第1実施形態の変形例1に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態の変形例2に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【
図5】第1実施形態の変形例3に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【
図6】第1実施形態の変形例4に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【
図7】第1実施形態の変形例5に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【
図8】第1実施形態の変形例5に係る、オイルOLの温度変化時の、発振回路の発振周波数とチューニング電圧との関係を示すグラフである。
【
図9】(a)は第1実施形態の変形例6に係るオイル状態検出装置を示すブロック図、(b)は平面コイル101の正面図。
【
図11】第2実施形態に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【
図12】第2実施形態の変形例1に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【
図13】第2実施形態の変形例2に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【
図15】第1実施形態の他の例に係るオイル状態検出装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図1に示すように、本オイル状態検出装置は、コイル1(第1コイル)と、コンデンサ2(第1コンデンサ)と、発振器(例えば、VCO;Voltage Controlled Oscillator)3と、PLL(Phase Locked Loop)回路4とを備える。なお、発振器3およびPLL回路4が第1検出装置に相当する。
【0013】
図1に示すように、コイル1は、オイルOL(潤滑油)が充填されたケース10内に配置される。ケース10は、例えば、オイルパンやオイルタンクなどであり、車両や建設機械内においてオイルOLが循環するものである。また、ギアボックスやトランスミッションケースなどであり、車両や建設機械内においてオイルOLが滞留するものである。コイル1は、ケース10内において、オイルOLに浸漬されている。このため、オイルOLに含まれる磁性体の量に応じて、コイル1のインダクタンスが変化する。
【0014】
ここで、コイル1のインダクタンスをL、コンデンサ2の容量をCとしたとき、コイル1およびコンデンサ2で構成された発振回路(第1発振回路に相当する。以下、コイル1およびコンデンサ2で構成された発振回路を、単に「発振回路」ということがある。)の発振周波数Fは、
【0015】
【0016】
と表される。
【0017】
PLL回路4は、発振器3が出力する出力周波数が式(1)を満たすように、発振器3にチューニング電圧Vを入力する。
【0018】
図2は、チューニング電圧Vと、オイルに含まれる磁性体の量との関係を示すグラフである。
図2は、縦軸がチューニング電圧Vであり、横軸が磁性体の量を示している。
【0019】
図2に示すように、磁性体の量が増加するに従って、チューニング電圧Vの電圧値が高くなっている。これは、オイルOLに含まれる磁性体の量が増加すると、コイル1のインダクタンスLが変化(増加または減少)するためである。このため、PLL回路4は、発振回路の発振周波数に発振器3の出力周波数を追従させるため、発振器3の出力周波数を下げようとして、チューニング電圧Vを上昇させる(式(1)参照)。したがって、チューニング電圧Vの電圧値、すなわち、発振器3の出力周波数を検出することにより、オイルOLに含まれる磁性体の量(劣化物質の量)を検出することができる。
【0020】
また、
図1に示すように、本オイル状態検出装置は、コイル1と、コンデンサ2と、発振器3と、PLL回路4とで構成されている。このため、例えば、発振回路(コイル1およびコンデンサ2)の発振周波数を上昇させることで、コイル1のインダクタンス値を低下させることができる。これにより、オイル状態検出装置の小型化を図ることができる。なお、発振器3は、通常、半導体素子で構成されるため、出力周波数の変動により、サイズが変動しない。
【0021】
(変形例1)
図3は第1実施形態の変形例1に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図3に示すように、PLL回路4の出力が、電圧電流変換装置5に接続されている。
【0022】
電圧電流変換装置5は、PLL回路4から出力されたチューニング電圧Vの電圧値を、対応する電流値に変換して出力する。このとき、電圧電流変換装置5は、チューニング電圧Vに重畳されたノイズ成分を除去した電流を出力する。これにより、チューニング電圧Vに重畳された外乱ノイズを除去し、より正確に、オイルOLに含まれる磁性体の量(劣化物質の量)を検出することができる。
【0023】
(変形例2)
図4は第1実施形態の変形例2に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図4に示すように、コンデンサ2が複数のコンデンサ(この例では、コンデンサ2a~2c)で構成されている。また、コンデンサ2a~2cは、一端にスイッチSWが接続されており、互いに容量値が異なっている。このため、スイッチSWを切り替えることにより、発振回路におけるコンデンサ2をコンデンサ2a~2cに切り替えることができる。
【0024】
この変形例により、スイッチSWを切り替えることで、発振回路の発振周波数を変更することができる。これにより、検知可能な磁性体の量(劣化物質の量)の幅を広くすることができる。
【0025】
また、検知可能な磁性体の種類や磁性体のサイズ(厚みや大きさ)を変更することができる。例えば、磁性体の種類や磁性体のサイズ(厚みや大きさ)によって、透磁率の周波数特性が変化する。さらに、透磁率の周波数特性は、局所点(ピーク)を有する。このため、スイッチSWを切り替えて、発振回路の発振周波数を変更することで、検出可能な磁性体の種類や磁性体のサイズ(厚みやサイズ)を変更することができる。
【0026】
なお、本変例において、コンデンサ2(コンデンサ2a~2c)を、容量値を変化させることができる容量可変コンデンサとしても、同様の効果を得ることができる。
【0027】
(変形例3)
図5は第1実施形態の変形例3に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図5に示すように、PLL回路4の入力にPLL掃引装置6が接続されている。
【0028】
PLL掃引装置6は、PLL回路4を制御し、発振器3が出力する出力周波数を所定の帯域内において掃引する。具体的には、PLL掃引装置6は、発振器3が出力する出力周波数を周期的に変化させる制御を行う(例えば、出力周波数がsin波や三角波などの波形となるように制御する)。例えば、発振器3の出力周波数を一定とした場合、流体(オイルOL)の変化に反応してしまい、磁性体の量を安定して検出できない。そのため、発振器3の出力周波数を時間的に変化させ、得られたチューニング電圧Vを平均化することで、一定(特定)の周波数に影響することなく、磁性体の量を安定して検知することができる。
【0029】
(変形例4)
図6は第1実施形態の変形例4に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図6に示すように、PLL回路4の入力にPLL制御装置7が接続されている。
【0030】
上述したように、PLL回路4は、発振回路の発振周波数に発振器3の出力周波数を追従させる。PLL制御装置7は、PLL回路4の位相比較周波数を制御して、発振回路の発振周波数に対する、発振器3の出力周波数の追従速度を制御する。例えば、PLL制御装置7が、発振回路の発振周波数に対する、発振器3の出力周波数の追従速度を高くした場合、チューニング電圧Vの変動が大きくなるため、コイル1を通過する速度が速い磁性体の検出が可能となる。また、PLL制御装置7が、発振回路の発振周波数に対する、発振器3の出力周波数の追従速度を低くした場合、チューニング電圧Vの変動が小さくなるため、磁性体の量を安定して検知することができる。
【0031】
(変形例5)
図7は第1実施形態の変形例5に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図7に示すように、変形例に係るオイル状態検出装置には、コンデンサ8、温度センサ81およびDAC(digital to analog converter)回路82が設けられている。コンデンサ8は、容量可変コンデンサであり、コイル1、コンデンサ2、発振器3、PLL回路4に接続されている。
【0032】
温度センサ81は、オイルOLの温度、または発振器3等の回路周辺温度を検出するセンサである。DAC回路82は、温度センサ81から出力されたオイルOLの温度、または発振器3等の回路周辺温度に従って、コンデンサ8の容量を変化させる。
【0033】
図8は、オイルOLの温度変化時の、発振回路の発振周波数とチューニング電圧との関係を示すグラフである。
図8は、縦軸がコイル1およびコンデンサ2で構成される発振回路の発振周波数を示し、横軸がチューニング電圧Vを示している。また、
図8では、オイルOLの温度が高いときの発振周波数とチューニング電圧Vとの関係を破線で、オイルOLの温度が低いときの発振周波数とチューニング電圧Vとの関係を実線で示しており、いずれの場合もオイルOLに含まれる磁性体の量は同一であるとする。
【0034】
図8に示すように、温度が高くなると、発振回路の周波数が高くなるため、チューニング電圧Vが高くなる。これは、オイルOLの温度が高くなることにより、コイル1のインダクタンスLの値が大きくなるためである。このため、本変形例では、温度センサ81によってオイルOLの温度を検出し、検出結果に従って、DAC回路82がコンデンサ8の容量を低くする(式(1)参照)ことで、温度変化に伴うチューニング電圧V、すなわち、発振器3の発振周波数の変化を抑えることができる。
【0035】
(変形例6)
図9(a)は第1実施形態の変形例6に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図9(a)に示すように、この変形例では、コイル1が平面コイル101で構成されおり、平面コイル101に対向するように導体板102が設けられている。導体板102は、例えば、鉄やアルミなどの金属で構成されてもよいし、誘電体で構成されてもよい。また、導体板102は、平板状でなくてもよく、メッシュ状であってもよい。
【0036】
図9(b)は平面コイル101の正面図である。
図9(b)に示すように、平面コイル101は、例えば、FR-4やフッ素などで構成された誘電体基板101aに、金属箔パターン101b(金属パターン)が形成されている。この平面コイル101に、導体板102を対向するように設けることで、平面コイル101の磁束の漏れを防止できる。また、コイル1を平面コイル101とすることで、平面コイル101をプリント基板で作成できるため、巻線型のコイルよりも高精度で作成可能であり、薄く作成することができる。また、大量生産した場合に、平面コイル101を安価に製造することができる。
【0037】
図10は
図9に係るオイル状態検出装置の断面図である。
図10に示すように、平面コイル101および導体板102がセンサ回路部91(筐体)により、一体化されている。具体的には、コンデンサ2や発振器3が格納されたセンサ回路部91の下面に、平面コイル101が設けられている。この平面コイル101と所定間隔を空け、平面コイル101を覆うように、導体板102が形成されている。これにより、
図1と同様の効果を得ることができる。
【0038】
(第2実施形態)
図11は第2実施形態に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図11は、
図1と比較すると、コイル1に代えて、コンデンサ2がオイルOLに浸漬されている。
【0039】
図11に示すように、コンデンサ2がオイルOLに浸漬されている場合、オイルOLに含まれる誘電体および導体の量が増加すると、コンデンサ2の電極間の誘電率が変化し、その結果、コンデンサ2の容量値Cが変化する。これに伴い、発振回路の発振周波数が変化する(式(1)参照)。したがって、チューニング電圧Vの電圧値、すなわち、発振器3の発振周波数を検出することにより、オイルOLに含まれる誘電体および導体の量(劣化物質の量)を検出することができる。
【0040】
(変形例1)
図12は第2実施形態の変形例1に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図12では、本変形例に係るオイル状態検出装置は、コイル11(第1コイル)、コンデンサ21(第1コンデンサ)、発振器31およびPLL回路41で構成された回路と、コイル12(第2コイル)、コンデンサ22(第2コンデンサ)、発振器32およびPLL回路42で構成された回路とを備える。なお、発振器31およびPLL回路41が第1検出装置に相当し、発振器32およびPLL回路42が第2検出装置に相当する。また、
図12では、コイル11およびコンデンサ21により第1発振回路が構成されており、コイル12およびコンデンサ22により第2発振回路が構成されている。
【0041】
図12に示すように、コイル11およびコンデンサ22がオイルOLに浸漬されている。これにより、PLL回路41,42のチューニング電圧V1,V2の電圧値、すなわち、発振器31,32の発振周波数を検出することで、オイルOLに含まれる磁性体の量、誘電体および導体の量(劣化物質の量)を検出することができる。
【0042】
(変形例2)
図13は第2実施形態の変形例2に係るオイル状態検出装置を示すブロック図である。
図13は、
図12と比較すると、コイル11が平面コイル101で構成されている。また、電極板222が電極板221および平面コイル101と対向している。この電極板221,222によりコンデンサ22が構成されている。この平面コイル101に電極板222を対向するように設けることで、平面コイル101の磁束の漏れを防止できる。なお、本変形例では、平面コイル101と電極板222とを対向させるように配置しているが、平面コイル101と電極板222とを対向させずに、平面コイル101に対向する導体板102を別途設けてもよい。これにより、平面コイル101に対する、電極板222による磁界、電界の回り込みなどの弊害を防止できる。
【0043】
図14は
図13に係るオイル状態検出装置の断面図である。
図14に示すように、平面コイル101および電極板221,222が、センサ回路部91(筐体)により、一体化されている。具体的には、発振器31,32やコイル12、コンデンサ21が格納されたセンサ回路部91の下面に、平面コイル101および電極板222が設けられている。この平面コイル101および電極板222と所定間隔を空け、平面コイル101および電極板221を覆うように、電極板222が形成されている。これにより、
図12と同様の効果を得ることができる。
【0044】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態について説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。
【0045】
なお、上記各実施形態および変形例では、各発振回路の発振周波数を、発振器およびPLL回路により構成される検出装置(オイル状態検出装置)で検出していたが、検出装置の構成は、発振器およびPLL回路以外の構成でもよい。検出装置は、発振回路の発振周波数を検出できればどのような構成であってもよい。
【0046】
例えば、検出装置は、
図15に示すように構成されてもよい。
図15では、検出装置は、コイル1と、コンデンサ2と、基準信号発生装置100aと、受信装置100bとを備える。基準信号発生装置100は、コイル1およびコンデンサ2に、所定の基準信号(パルス波やsin波など)を出力する。受信装置100bは、コイル1およびコンデンサ2を介して、基準信号発生装置100から出力された基準信号を受信する。上述したように、コイル1のインダクタンスLは、オイルOLに含まれる磁性体の量に応じて変化する。このため、受信装置100bが受信した基準信号と、基準信号発生装置100から出力された基準信号との信号強度を比較することにより、オイルOLに含まれる磁性体の量を検出することができる。なお、
図15では、コイル1がオイルOLに浸漬されているが、コイル1に代えてコンデンサ2をオイルOLに浸漬することにより、オイルOLに含まれる誘電体または導体の量を検出することができる。
【0047】
また、上記各実施形態および変形例では、検出装置がPLL回路4(41,42)を備える構成であったが、これに限られない。例えば、検出装置は、PLL回路4に代えて、入力された周波数を解析する演算回路や、入力された周波数を下げて周波数を解析する解析回路などを備えてもよい。
【0048】
また、第1実施形態の各変形例において、コイル1に代えて、コンデンサ2がオイルOLに浸漬されていてもよい。これにより、第1実施形態の各変形例において、対応する変形例の効果を得つつ、オイルOLに含まれる誘電体の量(劣化物質の量)を検出することができる。
【0049】
また、第1実施形態の変形例2(
図4)において、コイル1に代えて、コンデンサ2がオイルOLに浸漬された場合、コイル1は、インダクタンス値が互いに異なる複数のコイルで構成され、切り替え可能に構成されていてもよい。これにより、検知可能な誘電体および導体の量の幅などを広くすることができる。この場合、コイル1を、インダクタンス値を変化させることができる可変コイルとしてもよい。
【0050】
また、上記各実施形態および変形例では、各検出装置に、コイル1(11,12)およびコンデンサ2(21,22)が設けられているが、これに限られない。例えば、コイル1(11,12)は、検出装置内の回路基板に形成された半導体であってもよいし、配線のコイル成分であってもよい。また、コンデンサ2(21,22)は、検出装置内の回路基板に形成された半導体であったてもよいし、配線容量であってもよい。すなわち、コイル1(11,12)およびコンデンサ2(21,22)は、それぞれ素子として形成されている必要はない。
【0051】
また、上記各実施形態および変形例では、コイル1(11,12)、コンデンサ2(21,22)および発振器3(31,32)が並列に接続されているが、これは検出装置の回路構成の一例にすぎず、検出装置は、上記構成を備えていれば、どのような回路構成であってもよい。例えば、検出装置は、コイル1(11,12)、コンデンサ2(21,22)および発振器3(31,32)が直列に接続されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示のオイル状態検出装置は、建設機械や車両などに潤滑油として用いられるオイルに含まれる、磁性体および誘電体などの劣化物質の量を検出することができる。
【符号の説明】
【0053】
1(11) コイル(第1コイル、第1発振回路)
12 コイル(第2コイル、第2発振回路)
101 平面コイル
101a 誘電体基板
101b 金属箔パターン(金属パターン)
102 導体板
2(21,2a~2c) コンデンサ(第1コンデンサ、第1発振回路)
22 コンデンサ(第2コンデンサ、第2発振回路)
221,222 電極板
3(31) 発振器(第1発振器)
32 発振器(第2発振器)
4(41) PLL回路(第1PLL回路)
42 PLL回路(第2PLL回路)
5 電圧電流変換装置
6 PLL掃引装置
7 PLL制御装置
8 コンデンサ(容量可変コンデンサ)
81 温度センサ
82 DAC回路
91 センサ回路部(筐体)
OL オイル