(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083884
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】ルームエアコンディショナーの微生物除去方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20230609BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20230609BHJP
A61L 101/34 20060101ALN20230609BHJP
A61L 101/36 20060101ALN20230609BHJP
A61L 101/32 20060101ALN20230609BHJP
A61L 101/02 20060101ALN20230609BHJP
A61L 101/06 20060101ALN20230609BHJP
A61L 101/26 20060101ALN20230609BHJP
A61L 101/30 20060101ALN20230609BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L9/14
A61L101:34
A61L101:36
A61L101:32
A61L101:02
A61L101:06
A61L101:26
A61L101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197846
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】仲田 恋
(72)【発明者】
【氏名】梅村 啓靖
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB07
4C058EE26
4C058JJ06
4C058JJ24
4C180AA07
4C180AA10
4C180AA19
4C180CB01
4C180EA30X
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4C180EC01
4C180GG08
4C180HH10
4C180LL06
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】エアコンを分解することなく、上面に空気取入口を有するエアコンの室内機の隅々まで噴霧液を到達させてカビや菌等の微生物を除去できると共に、エアコンの筐体や電装部に悪影響を与えにくいエアコンの微生物除去方法を提供する。
【解決手段】室内機200上面における空気取入口210に向けて、噴霧器100から噴霧液を噴霧する微生物除去方法であって、噴霧液は微生物除去作用を有する薬剤を5~75質量%、水を25~95質量%含有し、噴霧器100は、噴出部の中心から、噴霧器の噴出方向に沿って15cm離間した箇所における噴霧液の平均粒子径が、3.0~10.0μmとなるように、噴霧液を噴霧するものであり、噴霧液の噴霧量が、室内機200の体積あたり300~3800g/m
3である、ルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルームエアコンディショナーの室内機上面における空気取入口に向けて、前記空気取入口の上方に噴出部を配置した噴霧器から噴霧液を噴霧する微生物除去方法であって、
前記噴霧液は微生物除去作用を有する薬剤を5~75質量%、水を25~95質量%含有し、
前記噴霧器は、前記噴出部の中心から、前記噴霧器の噴出方向に沿って15cm離間した箇所における前記噴霧液の平均粒子径が、3.0~10.0μmとなるように、前記噴霧液を噴霧するものであり、
前記噴霧液の噴霧量が、前記室内機の体積あたり300~3800g/m3である、ルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【請求項2】
前記薬剤が水溶性である、請求項1に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【請求項3】
前記薬剤が、除菌剤、抗菌剤、除カビ剤、及び防カビ剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【請求項4】
前記噴霧器を、前記噴出部が、前記室内機の電装収容部から離間した側に位置するように設置する、請求項1~3のいずれか一項に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルームエアコンディショナーの微生物除去方法に関する。更に詳しくは、主として家庭用として使用される、室内機が壁掛け型であるルームエアコンディショナー(以下「エアコン」という場合がある。)の室内機の微生物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンの室内機は、内部にほこりが溜まりやすく、また、湿潤状態にあることが多いことから黴が発生しやすい。そのため、エアコン始動時や運転時に黴臭などの悪臭やほこりがいっしょに送風され、不快な思いをすることがある。
室内機内部のカビや菌を除去することが求められるが、室内機内部の構造は複雑である。そのため、技術を持っている者しか分解できず、生活者が自らエアコン内の隅々までカビや菌を除去することは困難である。
より簡便にエアコン内部のカビや菌等を除く方法として、微生物除去作用を有する噴霧液を噴霧する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、内部を観察する装置を備えた噴霧ノズルをエアコン内に挿入して噴霧液を噴霧することで、部品の分解を最小限としながらエアコン内部を清浄する装置が開示されている。
特許文献2には、洗浄や防カビ剤の噴霧のためのエアコンディショナー用スプレーとして噴霧液の跳ね返りを改善し、かつ速乾性を高めたエアゾール製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-291609号公報
【特許文献2】特開2009-155438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2の方法は、いずれも作業者がフラップを外す、もしくは前面パネルを開けて薬剤を吹き付ける必要がある上、作業者が薬剤を吹き付けた部分のみしか効果を発揮せず、エアコン内部隅々までのカビや菌を除くことはできない。
また、噴霧の仕方によっては噴霧した噴霧液が熱交換フィン下に設置されたドレインに入らず、エアコンのフラップからたれ落ちて室内を汚すなどの課題を有する。
【0006】
また、エアコンは軽量化のために筐体がプラスチックで作られており、薬剤が長時間付着するとクラックを起こしやすい。一方、電化製品のため、電装部への薬剤侵入を防ぐ必要がある。
以上のことから、噴霧液の噴霧にあたっては、エアコンに悪影響を与えない配慮も求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、エアコンを分解することなく、上面に空気取入口を有するエアコンの室内機の隅々まで噴霧液を到達させてカビや菌等の微生物を除去できると共に、エアコンの筐体や電装部に悪影響を与えにくいルームエアコンディショナーの微生物除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]ルームエアコンディショナーの室内機上面における空気取入口に向けて、前記空気取入口の上方に噴出部を配置した噴霧器から噴霧液を噴霧する微生物除去方法であって、
前記噴霧液は微生物除去作用を有する薬剤を5~75質量%、水を25~95質量%含有し、
前記噴霧器は、前記噴出部の中心から、前記噴霧器の噴出方向に沿って15cm離間した箇所における前記噴霧液の平均粒子径が、3.0~10.0μmとなるように、前記噴霧液を噴霧するものであり、
前記噴霧液の噴霧量が、前記室内機の体積あたり300~3800g/m3である、ルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
[2]前記薬剤が水溶性である、[1]に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
[3]前記薬剤が、除菌剤、抗菌剤、除カビ剤、及び防カビ剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、[1]又は[2]に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
[4]前記噴霧器を、前記噴出部が、前記室内機の電装収容部から離間した側に位置するように設置する、[1]~[3]のいずれか一項に記載のルームエアコンディショナーの微生物除去方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のルームエアコンディショナーの微生物除去方法によれば、エアコンを分解することなく、上面に空気取入口を有するエアコンの室内機の隅々まで噴霧液を到達させてカビや菌等の微生物を除去できると共に、エアコンの筐体や電装部に悪影響を与えにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のエアコンの微生物除去方法を実施するためのエアコンシステムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明で用いる噴霧器の一例を、斜め前面側から見た斜視図である。
【
図3】本発明で用いる噴霧器の一例を、斜め後方側から見た分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施例に係るエアコンの微生物除去方法の説明図である。
【
図5】本発明の実施例で評価に使用した試験片の設置場所の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のルームエアコンディショナーの微生物除去方法は、エアコンの室内機上面における空気取入口に向けて、空気取入口の上方に噴出部を配置した噴霧器から噴霧液を噴霧する微生物除去方法である。
なお、本発明における「微生物除去」とは、微生物を減らすこと、微生物の繁殖を防止すること、微生物を死滅させること、のいずれか又はこれらの組み合わせを意味する。
【0012】
<噴霧液>
本発明の一実施形態に係るルームエアコンディショナーの微生物除去方法に用いる噴霧液は、微生物除去作用を有する薬剤と水を含有する。
【0013】
微生物除去作用を有する薬剤は、除菌剤、抗菌剤、除カビ剤、及び防カビ剤からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
除菌剤とは、細菌の数を減らす作用を有する薬剤である。抗菌剤とは、細菌の繁殖を防止する作用を有する薬剤である。除カビ剤とは、カビの量を減らす作用を有する薬剤である。防カビ剤とはカビの繁殖を防止する作用を有する薬剤である。
微生物除去作用を有する薬剤は、細菌とカビの双方の微生物を減らす、又はその繁殖を防止できるものであることも好ましい。
微生物除去作用を有する薬剤は、殺菌剤や消毒剤であってもよい。
【0014】
微生物除去作用を有する薬剤としては、グリコール類、グリコールエーテル類、アルコール類、フェノール類、カルボン酸、四級アンモニウム塩、非環式アルデヒド類、天然物、塩素系化合物、金属錯体や金属のイオン化水溶液が挙げられる。
【0015】
グリコール類は、下記一般式(A1)で表される化合物である。
HO-R1-OH …(A1)
式(A1)中、R1は、炭素数2~20の2価の脂肪族炭化水素基である。R1の炭素数は、2~9が好ましく、2~4がより好ましい。
【0016】
グリコール類の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、trans-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、イソプレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,17-ヘプタデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,19-ノナデカンジオール、1,20-イコサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、1,2-オクタデカンジオールなどが挙げられる。
【0017】
なかでも、蒸気圧が適切な範囲であることから、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、trans-2-ブテン-1,4-ジオールが好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
【0018】
グリコールエーテル類は、下記一般式(A2)で表される化合物である。
R2O-(R3O)m-H …(A2)
式(A2)中、R2は炭素数1以上の炭化水素基を表し、R3は炭素数2以上のアルキレン基を表し、mは1以上の整数である。
R2の炭素数は、1~11が好ましく、6~11がより好ましい。R3の炭素数は、2~5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0019】
グリコールエーテル類の具体例としては、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノヘプチルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノノニルエーテル、ジプロピレングリコールモノノニルエーテル、プロピレングリコールモノデシルエーテル、ジプロピレングリコールモノデシルエーテル、プロピレングリコールモノイソデシルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソデシルエーテル、プロピレングリコールモノウンデシルエーテル、ジプロピレングリコールモノウンデシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノノニルエーテル、ジエチレングリコールモノノニルエーテル、エチレングリコールモノデシルエーテル、ジエチレングリコールモノデシルエーテル、エチレングリコールモノイソデシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソデシルエーテル、エチレングリコールモノウンデシルエーテル、ジエチレングリコールモノウンデシルエーテルが挙げられる。
【0020】
なかでも、微生物除去効果の観点から、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルがより好ましい。
【0021】
アルコール類は、下記一般式(A3)で表される化合物である。
R4―OH …(A3)
式(A3)中、R4は炭化水素基を表す。炭化水素基の一部が酸素原子で置換されていてもよい。R4の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
【0022】
アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、3-メトキシー3-メチル-1-ブタノールなどが挙げられる。
なかでも、蒸気圧が適切な範囲であり、臭気の問題が少ない点から、3-メトキシー3-メチル-1-ブタノールが好ましい。
【0023】
フェノール類は、ベンゼン環に水酸基を1つ有する化合物である。
フェノール類の具体例としては、3-メチルー4-イソプロピルメチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-アリル-2-メトキシフェノール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、オルトフェニルフェノール、4-クロロフェノール、4-クロロ-3-メチルフェノール4-クロロ-3,5-ジメチルフェノールなどが挙げられる。
【0024】
カルボン酸は、下記一般式(A4)で表される化合物である。
R5―COOR6 …(A4)
式(A4)中、R5は炭化水素基を表す。R5の炭素数は、1~8が好ましく、1~3がより好ましい。R6は水素もしくはナトリウム、カリウム、カルシウムを表す。
カルボン酸の具体例としては、プロパン酸、プロパン酸ナトリウム、プロパン酸カルシウム、オクタン酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0025】
四級アンモニウム塩としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0026】
非環式アルデヒド類は、分子内に環構造を有さず、かつアルデヒド基を有する化合物である。
非環式アルデヒド類の具体例としては、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、トリメチルヘキシルアルデヒド、トランス-2-ヘキサナール、2,6-ノナジエール、シス-4-デセナールなどが挙げられる。
【0027】
天然物としては、キトサン、ロズマリン酸、エピガロカテキン3-ガレート水和物(カテキン)、アリルイソチオシアネート、シンナムアルデヒド、ヒノキチオールなどが挙げられる。
塩素系化合物としては、次亜塩素酸水、亜塩素酸水(エースネット社製、要時生成亜塩素酸水MA-T)などが挙げられる。
金属錯体や金属のイオン化水溶液としては、銀、亜鉛、チタン、銅などが挙げられる。
【0028】
これらの中でも、室内機への影響や室内の汚染などを生じにくいことから、溶剤類が好ましく、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類がより好ましい。
微生物除去作用を有する薬剤が溶剤類である場合、水溶性であることが好ましい。水溶性とは、25℃の水1Lに対して10g以上(1質量%)が透明に溶解することを意味する。水溶性であることにより、薬剤が均一になり、ムラなく溶剤を噴霧することができる。
【0029】
微生物除去作用を有する薬剤が溶剤類である場合、対象面に噴霧された後、経時により揮発し、揮発するまでの間に微生物除去効果を発揮するよう、蒸気圧(20℃)が0.5~8000Paであることが好ましい。蒸気圧(20℃)は、5~1000Paであることがより好ましく、5~100Paであることがより好ましい。
【0030】
蒸気圧(20℃)が0.5Pa以上であることにより、対象面が乾燥しやすくなり、べとつきが生じにくくなる。また、蒸気圧(20℃)が8000Pa以下であることにより、対象面へ到達する前に薬剤が蒸発してしまうことが避けられ、対象面に充分な量の薬剤を付着させやすくなる。また、対象面に付着後揮発するまでの時間を、微生物除去効果を発揮するのに充分な時間としやすい。
【0031】
微生物除去作用を有する薬剤は、1種類単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。
噴霧液に占める微生物除去作用を有する薬剤の含有量は、5~75質量%であり、20~45質量%であることが好ましく、25~40質量%であることがより好ましい。薬剤の含有量が下限値以上であることにより、充分な微生物除去効果が得られる。薬剤の含有量が上限値以下であることにより、薬剤が微生物除去の対象箇所に付着後に速やかに揮発でき、薬剤本来の微生物除去効果を発揮できる。
【0032】
水は、微生物除去作用を有する薬剤と混合され噴霧液を構成する。水を使用することにより、噴霧液の粘度を調整し、噴霧性を向上させることができる。また、対象物への付着時には微生物除去作用を有する薬剤の揮発時間を調整することができる。
水としては、超純水、イオン交換水、蒸留水、水道水を用いることができる。
【0033】
噴霧液に占める水の含有量は、25~95質量%であり、40~95質量%であることが好ましく、55~80質量%であることがより好ましい。
水の含有量が下限値以上であることにより、薬剤が充分に溶解でき、粘度が高くなりすぎることを回避できる。粘度が高くなりにくいと、噴霧器からの良好な噴霧性を確保しやすい。また、粘度が高くなりにくいと、薬剤が微生物除去の対象箇所に付着後に速やかに揮発でき、薬剤本来の微生物除去効果を発揮できる。
水の含有量が上限値以下であることにより、噴霧液中に充分な量の薬剤を含有できるため、充分な微生物除去効果が得られる。
【0034】
噴霧液における薬剤と水の合計含有量は、30~100質量%であることが好ましく、60~99.99質量%であることがより好ましく、80~99.99質量%であることがさらに好ましい。
噴霧液における薬剤と水の合計含有量が下限値以上であることにより、薬剤が微生物除去の対象箇所に付着後に速やかに揮発でき、薬剤本来の微生物除去効果を発揮できる。
噴霧液における薬剤と水の合計含有量が100質量%未満であることにより、その他の任意成分を必要に応じて加えることができる。
【0035】
噴霧液には、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含有させてもよい。他の成分としては、消臭剤、防臭剤、芳香剤、抗ウイルス剤などが挙げられる。
他の成分を含有する場合、他の成分も水溶性であることが好ましい。また、他の成分の蒸気圧(20℃)は、当該成分の目的に応じて適宜選択される。例えば、エアコンを通過させて室内に散布されることが望まれる成分(例えば芳香剤)の蒸気圧は、高い方が好ましい。
【0036】
<エアコンシステム>
本発明の一実施形態に係るルームエアコンディショナーの微生物除去方法は、例えば、
図1に示すようなエアコンシステムで実施される。
図1のエアコンシステムは、室内機200と、室内機200に取り付けられた噴霧器100とで構成されている。
【0037】
室内機200は、主として家庭用として使用されるエアコンの壁掛け型の室内機である。室内機200の上面203には、空気取入口210が設けられている。
噴霧器100は、その噴出孔33(噴出部が位置する箇所)が空気取入口210の上方に配置されるように、室内機200の左側面201に取り付けられている。
【0038】
室内機200の右側面202側には、電装部を収容する電装収容部250が設けられ、噴霧器100の噴出孔33は、空気取入口210の上方であって、電装収容部250から離間した側に配置されている。
室内機200の前面205は、電装収容部250も含めて前面パネル240で覆われている。
【0039】
室内機200の下面204は、前面205側がやや高い斜面とされている。下面204には、吹き出し口230が形成され、吹き出し口230を開閉自在に覆うフラップ231が設けられている。
空気取入口210には、通常フィルターが設けられるが、フィルターは、室内機200の上面と同じ高さ、あるいは、上面からやや下がった高さから前面パネル240の内側(電装収容部250を除く)にかけて設置されている。
【0040】
空気取入口210のフィルターの格子サイズは、5μm~5mmであることが好ましく、10μm~5mmであることがより好ましい。格子サイズとはフィルター繊維が構成する格子の1辺の長さ、またはその格子と同等の面積を有するフィルター孔の大きさを意味する。
フィルターは室内に浮遊するほこりなどが、空気とともにエアコン機体内に入るのを防ぐために設置されており、一般的に粗塵用フィルター、プレフィルター、または一部の中高性能フィルターが採用される場合が多い。
【0041】
空気取入口210の正面から見た幅は、35~85cmであることが好ましく、40~75cmであることがより好ましい。
空気取入口210の正面から見た幅が好ましい下限値以上であれば、噴霧器100から噴霧された噴霧液のミストが、空気取入口210の範囲を超えて室内機200の空気取入口210以外の部分に拡散してしまうことを防止しやすい。
空気取入口210の正面から見た幅が好ましい上限値以下であれば、噴霧器100から噴霧された噴霧液のミストを、空気取入口210全体に拡散させやすい。
【0042】
空気取入口210の奥行き(噴霧器100の吹き出し方向から見た際の幅)は、10~35cmであることが好ましく、12~32cmであることがより好ましい。
空気取入口210の奥行きが好ましい下限値以上であれば、噴霧器100から噴霧された噴霧液のミストが、空気取入口210の範囲を超えて室内機200の空気取入口210以外の部分に拡散してしまうことを防止しやすい。
空気取入口210の奥行きが好ましい上限値以下であれば、噴霧器100から噴霧された噴霧液のミストを、空気取入口210全体に拡散させやすい。
【0043】
噴霧器100は、室内機200の正面から見て左右いずれに配置してもよいが、電装収容部250から離間した側の面(
図1では左側面201)に配置することが好ましい。これにより、電装収容部250内の電装へのミストの侵入を、より防止しやすくなる。
噴霧器100は、噴出孔33が、空気取入口210の奥行き方向中央に位置するように配置することが好ましい。
【0044】
また、噴霧器100の噴出孔33における噴出部の中心と、空気取入口210の奥行き方向中央との水平方向における離間距離(
図4におけるdに相当)は、0~5cmであることが好ましく、0~3cmであることがより好ましい。
噴出部の中心と、空気取入口210との水平方向における離間距離が好ましい下限値以上であれば、空気取入口210の噴霧器100に近い側にも噴霧された噴霧液のミストを拡散させやすい。
噴出部の中心と、空気取入口210との水平方向における離間距離が好ましい上限値以下であれば、噴霧器100から噴霧された噴霧液のミストが、空気取入口210手前の室内機200や室内に拡散することを防止しやすい。
【0045】
また、噴霧器100の噴出孔33における噴出部の中心と、室内機200の上面203との鉛直方向の距離(
図4におけるHに相当)は、20~150mmであることが好ましく、30~150mmであることがより好ましく、30~100mmであることがさらに好ましい。
噴出部の中心と上面203との鉛直方向の距離が好ましい下限値以上であれば、勢いの強すぎるミストが、フィルターの一部に集中的に通過して、フィルター上に液だまりが発生する状況を回避しやすい。
【0046】
噴出部の中心と上面203との鉛直方向の距離が好ましい上限値以下であれば、噴霧器100から噴霧された噴霧液のミストが、空気取入口210の範囲を超えて室内機200の空気取入口210以外の部分に拡散してしまうことを防止しやすい。
【0047】
噴霧器100による鉛直方向の噴霧角度は、90゜以下が好ましく、70~90゜がより好ましく、75~90°がさらに好ましく、80~90°が特に好ましい。
なお、本明細書において鉛直方向の噴霧角度とは、鉛直方向下向きに対する、噴出部の中央から噴霧したミストの噴霧直後の飛散方向の角度(
図4におけるθに相当)である。
【0048】
すなわち、鉛直方向の噴霧角度90°は、噴出部の中央から噴霧したミストの噴霧直後の飛散方向が水平方向であることを意味し、0°を超え、90°未満である鉛直方向の噴霧角度は、噴出部の中央から噴霧したミストの噴霧直後の飛散方向が斜め下方であることを意味する。また、90°以上180゜未満である鉛直方向の噴霧角度は、噴出部の中央から噴霧したミストの噴霧直後の飛散方向が斜め上方であることを意味する。
【0049】
鉛直方向の噴霧角度が90°以下であれば、非常に軽い噴霧液のミストが、空気取入口210の範囲を超えて室内機200の空気取入口210以外の部分に拡散し、室内機200内部に到達しにくくなるのを防止できる。
【0050】
鉛直方向の噴霧角度が好ましい下限値以上であることにより、噴霧器100から噴霧された噴霧液のミストを、空気取入口210全体に拡散させやすい。そのため、空気取入口210の狭い範囲に大量のミストが通過することを防止できるので、空気取入口210のフィルターが目詰まりを生じたり、フィルターで凝集したミストが液だれしたりすることを防止しやすい。
図1には、噴出孔33からの噴出方向が室内機200の上面と平行な方向(鉛直方向の噴霧角度90°)である例を示した。
【0051】
また、噴霧器による水平方向の噴霧角度は、0~±15°が好ましく、0~±10゜がより好ましい。0°が最も好ましい。なお、本明細書において水平方向の噴霧角度とは、空気取入口210の正面から見た幅方向に対する、噴出部の中央から噴霧したミストの噴霧直後の飛散方向の角度(中心軸の角度)である。
【0052】
また、噴霧器による水平方向の噴霧角度範囲は、±0~15°が好ましく、±0~10°がより好ましい。なお、本明細書において水平方向の噴霧角度範囲とは、空気取入口210の正面から見た幅方向に対する、噴出部全体から噴霧したミストの噴霧直後の飛散方向の角度範囲である。
【0053】
水平方向の噴霧角度範囲が好ましい下限値以上であれば、噴霧器100から噴霧された噴霧液のミストを、空気取入口210全体に広げて落下させやすい。
水平方向の噴霧角度範囲が好ましい上限値以下であれば、噴霧器から噴霧された噴霧液のミストが、空気取入口210の範囲を超えて室内機200の空気取入口210以外の部分に落下したり、直接室内に落下したりすることを防止しやすい。
【0054】
[噴霧器]
図2、
図3に噴霧器100の一例として、超音波式噴霧器の一態様を示す。
図2、
図3の噴霧器100は、タンク1と、吸液芯ユニット2と、噴出口ユニット5と、超音波発振器8と、これらの部材と電池60を所定の位置に配置乃至収容するための前面ケース10と背面ケース50とを備える。
【0055】
タンク1は、噴霧液を収容するもので、上部にタンク給水口1aが設けられており、タンク給水口1aからタンク1内に噴霧液を供給できるようになっている。
噴霧液を室内機200に噴霧することによって、室内機200内に噴霧液に含まれる薬剤を送達させ、清潔に保つことが可能である。
【0056】
吸液芯ユニット2は、棒状の吸液芯3と、吸液芯3の周面を囲み吸液芯3を支持する保持筒4とで構成されている。また、噴出口ユニット5は、多数の孔が形成された円形の噴出部6と噴出部6の周囲を囲むリング状の超音波振動子7とで構成されている。噴出部6と超音波振動子7とは一体成形されている。
【0057】
吸液芯3は、第1の端部3aがタンク1内に挿入されている。また、第2の端部3bに、噴出口ユニット5の噴出部6が装着されている。吸液芯3は途中で屈曲しており、室内機200に取り付けられた際に、第1の端部3a側はタンク1の底部に向かってほぼ鉛直線上に沿って伸び、第2の端部3b側は、水平に伸びるように配置されている。この第2の端部3b側は、斜め下方向に伸びるように配置されていても構わない。
【0058】
吸液芯3の直径は、5~17mmであることが好ましく、8~12mmであることより好ましい。
吸液芯3の直径が好ましい下限値以上であることにより、充分な噴霧量を確保しやすい。
吸液芯3の直径が好ましい上限値以下であることにより、噴霧量が過剰となることによって噴出部6表面に液だまりが発生することを抑制しやすい。
【0059】
吸液芯3は毛細管作用により液剤を吸い上げる芯材である。吸液芯3の材質としては、通常、吸液芯として用いられる、例えばスポンジ、フェルト、綿、多孔質材などが挙げられる。
【0060】
保持筒4は、棒状の吸液芯3の周面を囲む筒状体であり、吸液芯3と共に一方の端部がタンク1内に挿入されている。また、他方の端部には、噴出口ユニット5の噴出部6が装着されている。
屈曲した吸液芯3の所定の配置を保つよう、保持筒4も屈曲している。そして、室内機200に取り付けられた際に、吸液芯3と共に、一方の端部側はタンク1の底部に向かってほぼ鉛直線上に沿って伸び、他方の端部側は、水平に伸びるように配置されている。
【0061】
保持筒4の噴霧液に浸漬される部分には、噴霧液が通液可能な複数の通液孔4aが設けられている。
保持筒4の屈曲した箇所の一方の端部側には、タンク給水口1aと嵌合する蓋部4bが形成されている。また、他方の端部には、噴出口ユニット5が嵌合する取付部4cが形成されている。取付部4cは、前面ケース10の内側に固定されるようになっている。
保持筒4は、吸液芯3を支持する強度があれば、特に材質に限定はないが、成形が容易であること、軽量であることから、樹脂製であることが好ましい。
【0062】
噴出口ユニット5の噴出部6は、多数の微細孔が形成されている。吸液芯3から放出された噴霧液は、超音波振動子7による振動によって噴出部6に形成された微細孔を通過し、微細なミストとなって放出される。
多数の微細孔の形成方法に特に限定はなく、例えば、網状としたり、平板に、レーザーを用いて多数の微細孔を設けたりする方法が挙げられる。中でも微細孔の大きさや数の調整によって噴霧量を容易に調整できるため、平板に微細孔を設ける方法が好ましい。
【0063】
噴出部6全体の直径は、吸液芯3の直径と同等であることが好ましい。
噴出部6に存在する微細孔の径は、3~10μmであることが好ましく、3~6μmであることより好ましい。
微細孔の径が好ましい下限値以上であることにより、ミスト粒子が小さくなりすぎることにより軽くなりエアコン内部へのミストの取込み効率が低下することを抑制しやすい。
微細孔の径が好ましい上限値以下であることにより、ミストの粒子が大きくなりすぎエアコンフィルターの濡れ・詰まりが生じ、送達性が低下することを抑制しやすい。
噴出部6の細孔数は、300~4000個であることが好ましく、500~2500個であることがより好ましい。
細孔数が好ましい下限値以上であることにより、充分なミストの噴霧量を確保できる。
細孔数が好ましい上限値以下であることにより、振動時の過負荷による噴出部の劣化を避けることができる。
【0064】
噴出部6と超音波振動子7とは一体成形され、全体がほぼ平板状の噴出口ユニット5とされている。
噴出口ユニット5は、保持筒4が、取付部4cにより前面ケース10の内側に取り付けられた際に、取付部4cと前面ケース10の間に挟まれて固定されるようになっている。
【0065】
超音波振動子7には超音波発振器8(基盤)が接続されており、電池60から供給される電力を受けて超音波発振器8が駆動すると、超音波振動子7が噴出部6と共に振動するようになっている。超音波発振器8は、前面ケース10の保持筒4が固定された近傍において、前面ケース10の内側に固定されている。
【0066】
超音波発振器8は、汎用的にUSBにて電源を供給される加湿器等の製品に用いられている振動数のものが容易に入手できることから好ましい。
振動数は噴霧器の機能、製造面、汎用性、価格の面から90~120kHzであることが好ましく、100~120kHzであることより好ましい。
超音波発振器8の振動数が好ましい下限値以上であることにより、噴霧液のミストの粒子径が過大となりにくく、室内機200内部の隅々まで噴霧液を噴霧しやすい。
超音波発振器8の振動数が好ましい上限値以下であることにより、適切な価格の超音波発振器8を入手しやすい。
【0067】
前面ケース10は、前面ケース本体部20と前面部30と前面ケース本体部20と前面部30とをつなぐ連結部40の部分で構成されている。
前面ケース本体部20は、下面から見た際に左右の周縁が立ち上がった凹版であり、
図3のように、背面から見た際に、右下部分が切り欠かれた略逆L字状とされている。この切り欠かれた右下部分に沿って、タンク嵌合部21が立設している。タンク嵌合部21は、
図3に示すように略逆L字状とされており、この部分にタンク1が嵌合するようになっている。また、タンク嵌合部21には、係止凹部22が設けられ、タンク1をタンク嵌合部21に嵌合させた際に、タンク1のタンク給水口1aに嵌合した保持筒4の蓋部4bが、係止凹部22に係止されるようになっている。
前面ケース本体部20には、下面から見た際の左側の周縁とタンク嵌合部21との間が、電池収容部23とされている。電池収容部23の上方には、電池用開口部24が設けられ、電池用開口部24には、電池蓋61が開閉自在に取り付けられている。
【0068】
前面部30は、前面板31と前面板31の周縁から、水平方向に伸びる筒状部32とで構成されている。前面板31には噴出孔33が形成されており、この噴出孔33部分に噴出部6が位置するように、保持筒4の取付部4cが、前面板31の内側に取り付けられている。
連結部40は、約90度の角度でなだらかに屈曲した形状とされており、連結部40により、前面ケース本体部20と前面部30とが連結されている。
【0069】
背面ケース50は、背面ケース本体部51と背面ケース屈曲部52の部分で構成されている。
背面ケース本体部51は、平面視で前面ケース本体部20と重なり合う形状とされており、前面ケース本体部20と嵌合するようになっている。
また、背面ケース屈曲部52は、約90度の角度でなだらかに屈曲した形状とされており、連結部40の背面側を覆って、背面ケース本体部51と、前面部30の筒状部32とを連結するようになっている。
【0070】
噴霧器100は、噴霧を自動的にオンオフ制御するタイミング信号を生成するタイマーと、前記タイマーを開始させる開始スイッチと、前記タイマーからのタイミング信号により噴霧のオンオフ制御を行う制御部と、を備えていることが好ましい。このようなプログラムにより噴霧の間欠運転を行うことで室内機200内部の隅々まで噴霧しやすく、また室内の汚れもさらに抑えることができる。
【0071】
噴霧器100は、室内機200に取り付けられた際に、吸液芯3の第1の端部3a側がタンク1の底部に向かい、吸液芯3の第2の端部3b側が水平または斜め下方に向かうよう配置される。
図1には、吸液芯3の第1の端部3aが鉛直方向に沿って伸び、かつ、吸液芯3の第2の端部3b側が水平に向かうように、すなわち、室内機200の上面と平行な方向に向かうように配置された例を示した。
【0072】
噴霧器100は、電池60から超音波発振器8に電力を供給し、超音波振動子7を振動させることにより、噴霧液を噴霧する。具体的には、吸液芯3によりタンク1から吸い上げられ第2の端部3bに至った噴霧液を、振動のエネルギーによりミスト化して、噴出部6から噴霧するようになっている。
【0073】
上記
図2、3を用いて説明した噴霧器100は、あくまで一例であり、本発明のエアコンの微生物除去方法を実施するためのエアコンシステムには、超音波式噴霧器の他、コンプレッサー式噴霧器、燻蒸式噴霧器など適宜の噴霧器を使用できる。また、噴霧器100が超音波式噴霧器の場合、上記
図2、3の具体的構造には限定されない。
【0074】
<噴霧方法>
本発明の微生物除去方法では、噴霧器の噴出部の中心から、噴霧器の噴出方向に沿って15cm離間した箇所における噴霧液の平均粒子径が3.0~10.0μmとなるように、室内機に向けて噴霧液を噴霧する。
上記箇所における平均粒子径は3.0~8.0μmが好ましく、3.5~7.0μmがより好ましい。
【0075】
上記箇所における平均粒子径が3.0μm以上であることにより、薬剤が対象面に送達する前に揮発してしまうことがなく、薬剤を対象面に付着させて微生物除去効果を発揮させることができる。
また、平均粒子径が3.0μm以上であることにより、電装収容部内に薬剤が浸入して、電装部に付着することを防止できる。
【0076】
また、上記箇所における平均粒子径が10.0μm以下であることにより、薬剤が対象面に付着した後に適度に揮発しやすく、薬剤本来の微生物除去効果を発揮やすい。また、エアコンや室内を汚染しにくい。また、薬剤が対象面に長時間残留しないため、エアコンのプラスチック製の筐体等に対して、クラックを発生させる等の悪影響を与えにくい。
上記箇所における平均粒子径は、例えば、噴出孔33に設ける噴出部(例えば
図3の噴出部6)の孔径により調整することができる。
【0077】
なお、平均粒子径は、マルバーン社製のレーザー回折式噴霧粒子測定器(Spraytec 2000 SPT5942、スペクトリス社マルバーン事業部製)を用いて、噴霧器の噴出部の中心が検出器から15cmの距離(噴霧器の噴出方向に沿った距離)に位置するように噴霧器を設置して3秒間噴霧し、体積基準50%径(DV50)を算出したものである。
【0078】
また、噴霧器の噴出部の中心が検出器から15cmの距離における平均粒子径を規定したのは、噴霧液の粒子径は、噴出部からの距離に応じて徐々に変化するため、室内機上及び室内機内における粒子径を代表する値を一義的に決めるためである。
なお、室内機は、通常天井から一定範囲の距離に設置されることから、噴霧器の噴出部の中心から空気取入口までの距離も、事実上一定の範囲内とされる。
【0079】
本発明の微生物除去方法では、噴霧液の噴霧量を、室内機の体積あたり300~3800g/m3とする。噴霧量は600~3700g/m3が好ましく、700~1200g/m3がより好ましい。噴霧量が500g/m3以上であることにより、薬剤をエアコン内隅々まで行き渡らせることができ、充分な微生物除去効果を得られる。噴霧量が3800g/m3以下であることにより、薬剤が対象面に付着した後に揮発しやすくなり、微生物除去効果を確保できると共に、エアコンや室内を汚染しにくい。
なお、噴霧量(g/m3)は噴霧する噴霧液の質量(g)を、室内機の体積(外形の高さ×幅×奥行)(m3)で除した値である。
【0080】
噴霧する際、エアコンは駆動状態でも停止状態でもよいが、停止状態であることが好ましい。
本実施形態では、室内機200の空気取入口210に上側から噴霧液を噴霧するので、室内機内の送風用ファンが駆動していなくても、噴霧された噴霧液のミストは、自重で、室内機200の内部に到達することができる。
そして、エアコンが停止状態であれば、噴霧液のミストは、室内機200の内部に充分な時間留まることができるため、噴霧液による消臭や防カビ等の効果を発揮しやすい。
【実施例0081】
実施例1~21、比較例1~7では、
図4に示すように、室内機200の左側面201側の上方に噴出部が位置するように噴霧器110を配置し、表1~3の記載に従い、種々の配合の噴霧液を種々の噴霧器を用い、種々のエアコンの室内機の空気取入口に向けて、種々の噴霧量で噴霧した。
そして、噴霧による微生物除去効果と、エアコンの筐体や電装部等に対する影響を評価した。結果を表1~3に示す。
【0082】
<噴霧液>
各例の噴霧液は、以下の成分を表1~3に示す配合で攪拌混合して調製した。なお、表1の噴霧液の配合における空欄は、その成分を含まないことを意味する。
プロピレングリコール:(株)ADEKA製、化粧用プロピレングリコール。
エチレングリコール:関東化学(株)製、エチレングリコール(鹿1級)。
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール:(株)クラレ製、ソルフィット(登録商標)。
【0083】
<噴霧器>
各例で使用した噴霧器とその使用方法は以下のとおりである。超音波式噴霧器については、表1~3の記載に従い、表4に示す噴出部1~8の何れかを使用した。
【0084】
[超音波式噴霧器]
Jisu Technology社製加湿器(商品名:SWEETDONUT)の吸液芯を中央で斜めに切断し、角度を付けて繋ぎ直し、下端を噴霧液を充填した容器に浸漬した噴霧器。吸液芯としては、ポリエステル製、直径10mm、長さ(全長)205mmのものを使用。
噴出部1~8は、何れも外径8mmの円形のステンレス(SUS304)製平板に、表4に示す孔径の微細孔が表4に示す孔数形成されたメッシュの外周に、外径16mmのリング状超音波振動子(振動数100kHz、駆動電源5V)が設けられたものを使用。
【0085】
超音波式噴霧器(
図4の噴霧器110)は、
図4に示すように、室内機200の上面203から噴出部の中心までの高さHが30mm、鉛直方向に対する噴霧角度θが90゜、噴出部の中心から空気取入口210左端までの水平方向の距離d(噴出部の中心と空気取入口210との水平方向における離間距離)が0mmとなるように、室内機200の左側面201に設置した。
【0086】
[コンプレッサー式噴霧器]
オムロン社製吸入器(商品名:コンプレッサー式ネブライザNE-C28)。吸入器の容器に噴霧液を充填し、室内機200の上面203から噴出部の中心までの高さHが30mm、鉛直方向に対する噴霧角度θが90゜、噴出部の中心から空気取入口210左端までの水平方向の距離dが0mmとなるように、室内機200の左側面201に設置した。
【0087】
[燻蒸式噴霧器]
ライオン(株)製「ルックプラスおふろの防カビくん煙剤」に使用されているブリキ缶(直径52mm×高さ67mm)の発熱部に、加熱剤として酸化カルシウム(吉澤石灰工業(株)製、商品名:CAg、ロータリーキルン炉焼成品(葛生産)、嵩比重0.80g/cm3(20℃))50gを充填し、専用の底蓋を取り付けたもの。噴霧液は、内容機に収容し、噴出部が斜め上方に向けて傾くようにして、室内機200の左側面201側に設置した。
【0088】
具体的には、室内機200の上面203から噴出部の中心までの高さHが50mm、鉛直方向に対する噴霧角度θ(噴出孔に対して垂直方向を噴出方向とした)が120゜、噴出部の中心から空気取入口210左端までの水平方向の距離dが0mmとなるようにして、室内機200の左側面201側に設置した。
【0089】
[ハンドスプレー式噴霧器]
カインズ社製スプレーボトル(商品名:高機能スプレーマイクロミスト350ml)。ボトルに噴霧液を充填し、室内機200の上面203から噴出部の中心までの高さHが30mm、鉛直方向に対する噴霧角度θが90゜、噴出部の中心から空気取入口210左端までの水平方向の距離dが0mmとなるようにして、室内機200の左側面201の上方側からでトリガーを操作した。
【0090】
<室内機>
各例で使用した室内機は以下のとおりである。なお、室内機の寸法は外形寸法である。
【0091】
[室内機A]
DAIKIN社製ルームエアコン(F22UTES-W7)の室内機。
室内機の高さ(mm):285
室内機の幅(mm);770
室内機の奥行(mm):233
室内機の体積(m3):0.0511
空気取入口の幅(mm):430
空気取入口の奥行き(mm):145
【0092】
[室内機B]
Panasоnic社製ルームエアコン(CS-X560D2)の室内機。
室内機の高さ(mm):295
室内機の幅(mm);799
室内機の奥行(mm):385
室内機の体積(m3):0.0907
空気取入口の幅(mm):620
空気取入口の奥行き(mm):280
【0093】
[室内機C]
コロナ社製ルームエアコン(RC-V4020Rの室内機。
室内機の高さ(mm):260
室内機の幅(mm);798
室内機の奥行(mm):167
室内機の体積(m3):0.0346
空気取入口の幅(mm):630
空気取入口の奥行き(mm):85
【0094】
<評価方法>
[微生物除去効果]
(供試用プラスチック板の作製)
ポテトデキストロース寒天(Difco社製)の斜面培地にて25°C、10日間培養したCladosporium cladosporioides HMC1064(浴室分離菌)を、滅菌した0.05%Tween80(関東化学製)水溶液にて約106CFU/mLの胞子液を調製した。次いで、該胞子液をプラスチック板(ポリプロピレン製板、25mm×25mm)に0.1mL接種し、室温にて4時間乾燥固定した(薄膜状、板上の菌数は約106CFU)。
【0095】
(除菌活性値の測定方法)
室温21℃、相対湿度60%に調温・調湿した6畳の密閉空間にて、供試用プラスチック板を室内機のクロスフローファン下の、正面向かって右端の吹き出し口230内側位置(
図5の設置箇所A)に3枚貼り付けた。
【0096】
なお、
図5は、設置箇所の説明の便宜上、前面パネル240とフラップ231を外した状態を示しているが、評価自体は、前面パネル240とフラップ231を外していない状況で行っている。
表1~3に示す各例の条件に従って噴霧液を空気取入口210に向けて噴霧した。
【0097】
噴霧後、6畳の密閉空間を24時間換気し、供試用プラスチック板3枚を回収した。回収した供試用プラスチック板にGPLP液体培地(日本製薬製)10mLを添加し菌を洗い出し、その液をポテトデキストロース寒天培地(三共化学薬品製)に塗抹接種して、25℃にて5日間培養した後のコロニー数を計測し、生菌数を算出し、その平均を求めた。
【0098】
対照として、作製後未処理のまま、室温21℃、相対湿度60%の条件で24時間保管した供試用プラスチック板3枚から菌を回収し、ポテトデキストロース寒天培地に塗抹接種して、25℃にて5日間培養した後のコロニー数を計測し、生菌数を算出し、その平均を求めた。生菌数は常用対数(lоg)に変換し、未処理の供試用プラスチック板の平均生菌数(常用対数)から処理後の平均生菌数(常用対数)を差し引いた値を平均除菌活性値とし、下記評価基準に従い、微生物除去効果を評価した。
【0099】
(評価基準)
◎◎◎:平均除菌活性値が3.0以上。
◎◎ :平均除菌活性値が2.5以上3.0未満。
◎ :平均除菌活性値が2.0以上2.5未満。
○ :平均除菌活性値が1.5以上2.0未満。
△ :平均除菌活性値が1.0以上1.5未満。
× :平均除菌活性値が1.0未満。
【0100】
[フィルターの濡れにくさ]
除菌活性値の測定方法において、噴霧液を空気取入口210に向けて噴霧する作業が終了した段階で、空気取入口210におけるフィルター220を観察し、下記評価基準に従い、フィルターの濡れにくさを評価した。
【0101】
(評価基準)
○○ :水滴が全く付着していない。
○ :水滴がごく僅かに付着している。
× :水滴がはっきりと付着しており、自然乾燥では乾かないレベルである。
【0102】
[エアコンへの影響]
室温21℃、相対湿度60%に調温・調湿した6畳の密閉空間にて、ABS製試験片を室内機の空気取入口210中央(
図5の設置箇所B)に1枚貼り付けた。また、SUS製試験片を室内機の電装収容部250の内側(
図5の設置箇所C)に1枚貼り付けた。
【0103】
なお、
図5は、設置箇所の説明の便宜上、前面パネル240とフラップ231を外した状態を示しているが、評価自体は、前面パネル240とフラップ231を外していない状況で行っている。
表1~3に示す各例の条件に従って噴霧液を空気取入口210に向けて噴霧後、6畳の密閉空間を3時間換気する作業を520回くり返した後(10年間使用相当)、各試験片を回収し、下記評価基準に従い、エアコンへの影響を評価した。
【0104】
(エアコン上部材質への影響)
○ :ABS製試験片が変色していない。
× :ABS製試験片に変色がある。
【0105】
(エアコン電装部への影響)
○ :SUS製試験片が変色していない。
× :SUS製試験片に変色がある。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
[平均粒子径]
表1~3に記載した平均粒子径は、マルバーン社製のレーザー回折式噴霧粒子測定器(商品名:Spraytec)を用いて、噴霧器の噴出部の中心が検出器から15cmの距離(噴霧器の噴出方向に沿った距離)に位置するように噴霧器を設置して3秒間噴霧し、体積基準50%径(DV50)を算出したものである。測定は3回行い、その平均値を平均粒子径(μm)として表1~3に記載した。
【0110】
超音波式噴霧器を用いた場合の平均粒子径を、噴出部1~8の各々について表4に示す。
コンプレッサー式噴霧器を用いた場合の平均粒子径は4.8μm、燻蒸式噴霧器を用いた場合の平均粒子径は4.8μm、ハンドスプレー式噴霧器を用いた場合の平均粒子径は42.5μmであった。
【0111】
【0112】
表1、2に示すように、何れの実施例においても、噴霧器110から最も遠い設置箇所Aにおいて高い微生物除去効果が得られた。このことから、本発明の微生物除去方法によればば、室内機内部の隅々にまで、噴霧液を到達させ、充分な微生物除去効果を達成できることを確認できた。
【0113】
また、何れの実施例においても、フィルターは濡れにくく、また、エアコン上部材質への影響は認められなかった。さらに、エアコン電装部への影響も認められなかった。このことから、エアコン内部の微生物除去が必要な部分には、隅々まで噴霧液が行き渡るにもかかわらず、電装収容部250内への噴霧液の浸入は阻止されており、電装収容部250内の電装部に悪影響を及ぼさないことを確認できた。
【0114】
これに対して表3に示すように、噴霧液に占める薬剤の量が少ない比較例1は微生物除去効果が殆ど得られなかった。また、薬剤の量が多すぎる比較例2は微生物除去効果が殆ど得られなかっただけでなく、エアコン上部材質に悪影響があった。
また、粒子径が小さ過ぎる比較例3は微生物除去効果が殆ど得られなかっただけでなく、電装収容部250内の電装部への悪影響が見られた。また、粒子径が大き過ぎる比較例4、5は微生物除去効果が殆ど得られなかっただけでなく、フィルターが濡れやすく、エアコン上部材質への影響が認められた。
【0115】
また、室内機の体積あたりの噴霧量が少ない比較例6は微生物除去効果が殆ど得られなかった。また、室内機の体積あたりの噴霧量が多すぎる比較例7は微生物除去効果が殆ど得られなかっただけでなく、フィルターが濡れやすく、エアコン上部材質への影響が認められると共に、電装収容部250内の電装部への悪影響が見られた。