(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083886
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】筆先ユニット、筆先ユニットの製造方法、及び、筆先ユニットを用いた液体塗布具
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20230609BHJP
B43K 1/12 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
A45D34/04 510B
B43K1/12 A
A45D34/04 525A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197853
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000109440
【氏名又は名称】テイボー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】傘 俊人
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA05
2C350HA14
2C350HC01
2C350NC02
2C350NC20
2C350NC30
2C350NC33
2C350NC39
2C350NE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一度に複数本のラインを安定して塗布でき、塗布するラインの制御が容易であり、かつ、液体の吐出不良が発生しにくい液体塗布具を提供する。
【解決手段】先端部分がテーパー加工されたモノフィラメントで構成された1つの筆先と、前記筆先の先端部分のうち、先端側の穂先を除く部分の外周を覆うように設けられたマウスピースと、を備え、前記マウスピースの先端部の開口部は、1以上の仕切で分割されて、複数の孔が形成されており、前記筆先の前記穂先は、前記マウスピースの前記複数の孔に沿って分岐された液体塗布具の筆先ユニットを提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部分がテーパー加工されたモノフィラメントで構成された1つの筆先と、
前記筆先の先端部分のうち、先端側の穂先を除く部分の外周を覆うように設けられたマウスピースと、
を備え、
前記マウスピースの先端部の開口部は、1以上の仕切で分割されて、複数の孔が形成されており、
前記筆先の前記穂先は、前記マウスピースの前記複数の孔に沿って分岐された、筆先ユニット。
【請求項2】
中継芯を更に備え、
前記中継芯の先端部分の外周は、前記筆先の後端部分で覆われた、請求項1に記載の筆先ユニット。
【請求項3】
前記マウスピースの先端部の開口部の横断面は、楕円形又は角が丸い長方形である、請求項1又は2に記載の筆先ユニット。
【請求項4】
前記開口部の横断面において、2以上の前記仕切の長手方向の向きが平行である、又は、前記仕切は1つである、請求項1~2いずれか一項に記載の筆先ユニット。
【請求項5】
前記開口部の横断面において、2以上の前記仕切の長手方向の向きが平行であり、かつ、前記開口部の長辺方向と直角である、請求項3に記載の筆先ユニット。
【請求項6】
前記開口部の横断面において、前記複数の孔は、前記開口部の長辺方向に対し一列に配置される、請求項3に記載の筆先ユニット。
【請求項7】
前記仕切は、前記マウスピースと一体に成型された、請求項1~6いずれか一項に記載の筆先ユニット。
【請求項8】
前記筆先の素材は、ポリエステル製テーパーフィラメント、又は、ナイロン製テーパーフィラメントである、請求項1~7いずれか一項に記載の筆先ユニット。
【請求項9】
前記中継芯の素材は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、又は、これらの混合繊維である、請求項2に記載の筆先ユニット。
【請求項10】
請求項1に記載の筆先ユニットの製造方法であって、
前記筆先を、前記マウスピースの後端部から挿入するステップと、
前記筆先の穂先を、前記マウスピースの前記開口部の前記複数の孔に沿って分岐するステップと、
を含む、筆先ユニットの製造方法。
【請求項11】
中継芯の先端部分を、前記筆先の後端部分に挿入するステップをさらに含む、請求項10に記載の筆先ユニットの製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の筆先ユニットを用いた液体塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用具や筆記具等の液体塗布具に用いられる筆先ユニット、筆先ユニットの製造方法、及び、該筆先ユニットを用いた液体塗布具に関する。特に、一度に複数本のラインを描くことが可能な液体塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
液体塗布具には、液体を筆先の後端部分から先端部分に中継するタイプ、液体を筆先の先端部分に浸漬するタイプ等がある。かかるタイプの液体塗布具は、上市されてから現在に至るまで化粧用具や筆記具等に欠かせないものとして広く普及している。
なお、液体を中継するタイプの液体塗布具の筆先には、多孔質材料が用いられ、合成繊維の集束体を樹脂で接着するタイプ、先端がテーパー加工されたモノフィラメントを集束するタイプ等が知られている。
【0003】
従来、このような液体塗布具において、一度に複数本のラインを描く場合、合成繊維の集束体を樹脂で接着した合繊芯が使用されている。
図6(a)の左側に示されるように、先端部を適切な先端形状に切削加工した合繊芯を複数本一列に並べ、合繊芯同士を接着し、マウスピースに挿入するもの、あるいは、
図6(a)の右側に示されるように、1本の合繊芯の先端をフォーク状に打ち抜き、マウスピースに挿入するもの等が例示される。
しかしながら、合繊芯を用いて、たとえばファンデーションを塗布した上や絵具を塗布した上にラインを描くと、筆先の先端部分において、ファンデーションや絵具の詰まりや吐出不良を起こすという問題があった。接着された繊維と繊維の間にできる空間が液体導通路となるが、筆先の先端部分に切削加工や打ち抜き加工を施したときに、先端部分の液体導通路の途中が潰れたり、バリが発生したりして、液体導通路を塞いでしまい、液体がスムーズに穂先に供給されないことも相俟って、塗布済のファンデーションや絵具の粒子が筆先の先端部分に付着し入り込み、さらに液体導通路が塞がってしまうからである。
図6(b)及び
図6(c)に、ファンデーションの粒子が詰まった合繊芯の筆先の先端部分の例を示す。
また、合繊芯は、先端がテーパー加工されたモノフィラメントを集束した穂先に比べ、弾力性に劣るため、筆線(ライン)を描く際に、細かいコントロールができず、特に線の太さを調節しにくいという課題があった。
【0004】
特許文献1には、上記合繊芯等の多孔質材料を複数本並べてマウスピースに挿入し、一度に複数本のラインを描くことを可能とする液体塗布具が開示されている。しかしながら、1つの液体塗布具に対し複数本の筆先を使用するため、コストが高くなるという課題があった。また、筆先が合繊芯の場合は、上述したように、ファンデーションを塗布した上や絵具を塗布した上にラインを描くと、筆先の先端部分において、ファンデーションや絵具の詰まりや吐出不良を起こすという問題があった。
【0005】
特許文献2には、先端がテーパー加工されたモノフィラメントを集束した筆先に中継芯で液体を供給する液体塗布具が開示されている。しかしながら、筆先の先端部は1つであるため、一度に複数本のラインを描くことはできないという課題があった。また、複数本のラインを別々に描いた場合、塗布するラインの制御が難しく、太さや幅の揃ったラインを塗布することができないという課題もあった。
【0006】
先端がテーパー加工されたモノフィラメントを集束した筆先を複数本使用し、マウスピースに組み付ける方法も検討されている。しかしながら、それぞれの筆先に対してそれぞれ中継芯を挿入する必要があり、物理的に難しいという課題があった。中継芯を使用しない場合は、筆先の弱い毛細管力のみで液体を供給する必要があるため、塗布ラインにカスレ等が生じやすいという課題があった。また、1つの液体塗布具に対し複数本の筆先と複数本の中継芯を使用する必要があるため、コストがより高くなるという課題もあった。
【0007】
特許文献3には、複数本の合繊芯を穂先とは反対側で溶着して連結させることが開示されている。しかしながら、特許文献1と同様に、1つの液体塗布具に対し複数本の筆先を使用するため、コストが高くなるという課題や、ファンデーションを塗布した上や絵具を塗布した上にラインを描くと、筆先の先端部分において、ファンデーションや絵具の詰まりや吐出不良を起こすという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3137562号公報
【特許文献2】実開平7-35084号公報
【特許文献3】特開2010-207301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、一度に複数本のラインを安定して塗布でき、塗布するラインの制御が容易であり、かつ、液体の吐出不良が発生しにくい液体塗布具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の筆先ユニットは、先端部分がテーパー加工されたモノフィラメントで構成された1つの筆先と、前記筆先の先端部分のうち、先端側の穂先を除く部分の外周を覆うように設けられたマウスピースと、を備え、前記マウスピースの先端部の開口部は、1以上の仕切で分割されて、複数の孔が形成されており、前記筆先の前記穂先は、前記マウスピースの前記複数の孔に沿って分岐されたことを特徴とする。
【0011】
中継芯を更に備え、前記中継芯の先端部分の外周は、前記筆先の後端部分で覆われていてもよい。
【0012】
前記マウスピースの先端部の開口部の横断面は、楕円形又は角が丸い長方形であってもよい。
【0013】
前記開口部の横断面において、2以上の前記仕切の長手方向の向きが平行である、又は、前記仕切は1つであってもよい。
【0014】
前記開口部の横断面において、2以上の前記仕切の長手方向の向きが平行であり、かつ、前記開口部の長辺方向と直角であってもよい。
【0015】
前記開口部の横断面において、前記複数の孔は、前記開口部の長辺方向に対し一列に配置されることが好ましい。
【0016】
前記仕切は、前記マウスピースと一体に成型されてもよい。
【0017】
前記筆先の素材は、ポリエステル製テーパーフィラメント、又は、ナイロン製テーパーフィラメントであることが好ましい。
【0018】
前記中継芯の素材は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、又は、これらの混合繊維であることが好ましい。
【0019】
本発明の筆先ユニットの製造方法は、前記筆先を、前記マウスピースの後端部から挿入するステップと、前記筆先の穂先を、前記マウスピースの前記開口部の前記複数の孔に沿って分岐するステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
中継芯の先端部分を、前記筆先の後端部分に挿入するステップをさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の液体塗布具は、上記の筆先ユニットを用いたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一度に複数本のラインを安定して塗布でき、塗布するラインの制御が容易であり、かつ、液体の吐出不良が発生しにくい液体塗布具を提供できる。穂先の切削加工や打ち抜き加工で発生するバリがないため液体導通路を塞がれにくく、液体を筆先の先端部分にスムーズに供給することができる。さらには塗布済のファンデーションや絵具等の粒子が筆先の先端部に付着しにくく、仮に粒子が付着しても供給される液体により流されて原状復帰しやすいため、この点においても液体導通路を塞がれにくく、液体を筆先の先端部分にスムーズに供給することができる。また、合繊芯に比べ、筆先に弾力性を持たせることができるため、細い線から太い線まで筆線のコントロールが可能な液体塗布具を提供できる。さらに、部材として使用する高価な筆先は1つであるため、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の筆先ユニットの概略図の例を示す。
図1(a)はマウスピースの先端部の開口部の短辺方向上から見た側面図、
図1(b)はマウスピースの先端部の開口部の長辺方向上から見た側面図、図(c)は斜視図である。
【
図2】本発明のマウスピースの一例を示す。
図2(a)はマウスピースの先端部の開口部の横断面図、
図2(b)は先端部の開口部の短辺の中心を通るように長辺方向に切った縦断面図、
図2(c)は先端部の開口部の長辺の中心を通るように短辺方向に切った縦断面図、
図2(d)は斜視図である。
【
図3】本発明のマウスピースの一例を示す。
図3(a)はマウスピースの先端部の横断面図、
図3(b)はマウスピースの後端部の横断面図、
図3(c)は先端部の開口部の短辺の中心を通るように長辺方向に切った縦断面図、
図3(d)は先端部の開口部の長辺の中心を通るように短辺方向に切った縦断面図である。
【
図4】本発明の筆先ユニットの製造(組み付け)工程の一例を示す。
図4(a)はマウスピース、筆先、中継芯を用意する工程、
図4(b)は筆先をマウスピースの後端部から挿入し、筆先の穂先をマウスピースの複数の孔で分岐する工程、
図4(c)は筆先の後端部分に中継芯を挿入する工程、
図4(d)は穂先の形状を整える工程である。
【
図5】
図5(a)は本発明の液体塗布具の縦断面図の一例、
図5(b)は本発明の筆先ユニットの縦断面図の一例を示す。
【
図6】従来例の合繊芯を用いた筆先ユニットの一例を示す。
図6(a)の左側は合繊芯複数本を組み付けたもの、右側は1つの合繊芯の先端をフォーク状にしたもの、
図6(b)はファンデーションを塗布した面上に合繊芯で塗布したときの筆先、
図6(c)は
図6(b)の拡大断面である。
【
図7】従来例の合繊芯を用いた液体塗布具の一例を示す。
図7(a)は縦断面図、
図7(b)はマウスピースの先端部の開口部の横断面図である。
【
図8】従来例のマウスピースの一例を示す。
図8(a)はマウスピースの先端部の開口部の横断面図、
図8(b)は先端部の開口部の短辺の中心を通るように長辺方向に切った縦断面図、
図8(c)は先端部の開口部の長辺の中心を通るように短辺方向に切った縦断面図、図(d)は斜視図である。
【
図9】従来例のモノフィラメントの集束体を用いた筆先ユニット用のマウスピースの一例を示す。
図9(a)はマウスピースの先端部の開口部の横断面図、
図9(b)は側面図、
図9(c)は縦断面図である。
【
図10】従来例のモノフィラメントの集束体を用いた筆先ユニット用のマウスピースの組み付け工程の一例を示す。
図10(a)はマウスピース、筆先、中継芯を用意する工程、
図10(b)は筆先をマウスピースの後端部から挿入する工程、
図10(c)は筆先の後端部分に中継芯を挿入する工程である。
【
図11】従来例のモノフィラメントの集束体の筆先を複数用いた筆先ユニットの製造(組み付け)の一例を示す。
図11(a)はマウスピースと複数の筆先を用意したもの、
図11(b)はマウスピースの後端部から複数の筆先を組み付けたものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の筆先ユニットは、筆先と、マウスピースを備えるものである。
図1~
図5に一例を示す。以下、符号を付して説明するが、本発明を限定するものではない。
なお、本願明細書において、「先端部」は各部品又は部分における液体塗布具の穂先側の最先端部(位置)を指し、「後端部」は各部品又は部分における液体塗布具の穂先と反対側の最後端部(位置)を指し、「先端部分」は各部品における先端部及び先端部の近辺部分を指し、「後端部分」は各部品における後端部及び後端部の近辺部分を指す。また、「先端側」は穂先側を指し、「後端側」は穂先と反対側を指す。
【0025】
(筆先の構成)
本発明の筆先3は、筆先3の後端部から後述する中継芯4によって供給される液体を用い、又は、筆先3の先端部分に浸漬した液体を用い、筆先3の先端部分の穂先で筆記するために設けられる。筆先3の先端部分うち、穂先を除く部分の外周を覆うマウスピース2等により筆先3は画定される。また、1つのマウスピース2に対し、筆先は1つ挿入される。
【0026】
筆先3は、先端部分がテーパー加工されたモノフィラメントで構成される。
筆先3の素材は、テーパー加工されたモノフィラメントであれば特に制限はなく、任意に選択される。筆先3の素材の一例としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製テーパーフィラメント、PET(ポリエチレンテレフタレート)製テーパーフィラメント、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)製テーパーフィラメント等のポリエステル製テーパーフィラメント、ナイロン製テーパーフィラメント、PPS(ポリフェニレンサルファイド)製テーパーフィラメント、フッ素樹脂製テーパーフィラメント等が挙げられる。中でも汎用性の面から、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製テーパーフィラメント、ナイロン製テーパーフィラメントが好ましい。
【0027】
筆先3のモノフィラメントの径は、本筆先ユニット1が用いられる液体塗布具10の用途や目的により、適宜設定される。筆感や肌触りの面から0.05~0.30mmの範囲が好ましく、0.10~0.20mmの範囲がより好ましい。
【0028】
筆先3の後端部分が中継芯4の先端部分の外周を覆う構造にするため、たとえば中継芯4を筆先3に挿入する方法が取られてもよい。中継芯4を筆先3に挿入しやすくするために、好ましくは筆先3の後端部に穴が設けられる。該穴の径は、中継芯4の先端側の外径と同じか、やや小さい。中継芯4の弾力により挿入可能であれば、筆先3の穴の径が中継芯の先端側の外径よりもやや小さくてもよい。
【0029】
筆先3の先端部分のうち、穂先を除く部分の外周を覆うマウスピース2を筆先3の後端部分に位置ずれしないように配置するために、好ましくは、筆先3は先端部分のみならず穂先以外の部分全部(後端部分を含む)の外周をマウスピース2で覆うことや、筆先3の後端部にツバ部が設けることが好ましい。該ツバ部はマウスピース2の後端部の位置を固定することができる。
該穴と該ツバ部は、たとえば、先端部分がテーパー加工されたモノフィラメントの束を所定の長さ(筆先の全長よりやや長め)に後端部で切断し、切断面を加熱により溶着し、溶着時にツバ部を形成し、溶着された切断面の中央部を筆先3の該穴の径の円形状にくり抜き、くり抜いた切断面の中央部に溶着しているモノフィラメントごと取り出して除去することにより、設けることができる。
【0030】
なお、筆先3を固定可能な構成であれば、筆先3の後端部分の外周をマウスピース2で覆わない構成とすることもできる。
【0031】
筆先3の横断面の形状は、後述するマウスピース2の後端部分の内側の横断面の形状に沿って挿入することができれば特に限定されないが、円形や楕円形、正方形、長方形や、角が丸い多角形等が例示される。なかでも筆先3の穂先をマウスピース2にスムーズに挿入しやすくする観点からは、丸みを帯びた円形や楕円形、角が丸い多角形が好ましく、組み付け時に筆先3がマウスピース2内で周方向に回転しにくく挿入しやすくなる観点からは、楕円形や角が丸い長方形等が好ましい。
【0032】
(マウスピースの構成)
本発明のマウスピース2は、筆先3の先端部分のうち、先端側の穂先を除く部分の外周を覆うように設けられる。また、
図2(a)~
図2(d)に示すように、マウスピース2の先端部の開口部は、1以上の仕切5で分割されて、複数の孔が形成されている。
【0033】
マウスピース2の構成の一例を
図2で説明する。
図2(a)はマウスピースの先端部の開口部の横断面図、
図2(b)は先端部の開口部の短辺の中心を通るように長辺方向に切った縦断面図、
図2(c)は先端部の開口部の長辺の中心を通るように短辺方向に切った縦断面図、
図2(d)は斜視図である。
マウスピース2の後端部の開口部の横断面は円形状であるため、マウスピースの後端部の開口部の内径2a’と内径2b’は同じであり、2.5mm~5.0mm程度が例示される。
マウスピース2の先端部の横断面は楕円形状(角が丸い長方形状)である。マウスピース2の先端部の開口部の短辺の長さ2aは、後端部の開口部の短辺の長さ(内径)2a’より小さく、1.8mm~4.0mm程度が例示される。また、マウスピース2の先端部の開口部の長辺の長さ2bは、後端部の開口部の長辺の長さ(内径)2b’と同じかやや小さく、2.5mm~5.0mm程度が例示される。
マウスピース2の縦断面の長さ2cは10mm~20mm程度が例示される。
マウスピース2の先端部の開口部に、2つの仕切5が平行に配置され、かつ、仕切5の横断面の長手方向はマウスピース2の先端部の開口部の長辺方向と直角となっている。2つの仕切5により、先端部の開口部には3つの孔が形成されている。仕切5の厚みは0.3mm~1.0mm程度、仕切5の縦断面の長さ(仕切の深さ)5cは0.5mm~3.0mm程度が例示される。2つの仕切5は、マウスピース2の先端部の開口部の長辺を略等間隔で仕切るように形成される。仕切5はマウスピース2と一体に成型されることが望ましい。
【0034】
次に、マウスピース2の構成の他の一例を
図3で説明する。
図3(a)はマウスピース2の先端部の横断面図、
図3(b)はマウスピース2の後端部の横断面図、
図3(c)は先端部の開口部の短辺の中心を通るように長辺方向に切った縦断面図、
図3(d)は先端部の開口部の長辺の中心を短辺方向に切った縦断面図である。
マウスピース2の後端部の開口部の横断面は楕円形状であるため、マウスピース2の後端部の開口部の短辺の長さ2a’は後端部の開口部の長辺の長さ2b’より小さく、2a’<2b’の関係にある。2a’は2.0mm~4.0mm程度が例示され、2b’は2.5mm~5.5mm程度が例示される。
マウスピース2の先端部の横断面は楕円形状である。マウスピース2の先端部の開口部の短辺の長さ2aは、後端部の開口部の短辺の長さ2a’より小さく、1.8mm~3.6mm程度が例示される。また、マウスピース2の先端部の開口部の長辺の長さ2bは、後端部の開口部の長辺の長さ2b’と同じかやや小さく、2.5mm~5.0mm程度が例示される。
マウスピース2の縦断面の長さ2cは10mm~20mm程度が例示される。
マウスピース2の先端部の開口部に、2つの仕切5が平行に配置され、かつ、仕切5の横断面の長手方向は開口部の長辺方向と直角となっている。2つの仕切5により、先端部の開口部には3つの孔が形成されている。仕切5の厚み5b1、5b2はそれぞれ0.3mm~1.0mm程度、仕切5の縦断面の長さ(仕切の深さ)5cは0.5mm~3.0mm程度が例示される。2つの仕切5は、開口部の長辺を略等間隔で仕切るように形成される。先端部の開口部の横断面の仕切5の長さ5aは、開口部の横断面の長辺方向の各孔の長さ(2b1、2b2、2b3)より長いことが好ましいが、これに限定されない。仕切5はマウスピース2と一体に成型されることが望ましい。
【0035】
マウスピース2に筆先3を組み付けると、マウスピース2の先端部の開口部に形成された複数の孔により、筆先3の先端側の穂先は分岐される。よって、孔の形状、面積、個数(一度に塗布したい線の最大の本数)は、穂先が挿入可能であれば特に限定されない。マウスピース2の先端部の開口部に対し、1つの仕切5を配置して2つに分割もよいし、2以上の仕切5をランダムに、あるいは、仕切5の長手方向の向きが平行となるように配置してもよい。さらに、長手方向の向きが平行である複数の仕切5を、マウスピース2の先端部の開口部の長辺方向と直角となるように配置してもよいし、角度をつけて斜めに配置してもよい。
また、マウスピース2の先端部の開口部の中心をハブのように中心点として、複数の仕切5を放射状に配置してもよい。さらに、複数の孔それぞれが略円形状となるように、仕切5の形状を加工してもよい。
なかでも、マウスピース2の先端部の開口部に形成された孔に筆先3の先端側の穂先を挿入しやすく分岐しやすくする観点からは、横断面における孔の輪郭の一部が円弧状となっている(丸みを有する)、及び/又は、ある孔の輪郭全てが直線であっても長辺を有する長方形状であることが望ましい。該長方形状の孔の長辺方向は、マウスピース2の先端部の開口部の長辺方向に対して、直角であることがより望ましい。マウスピース2の先端部の開口部の長辺方向に沿って変形する筆先3の穂先を、開口部の短辺方向(孔の長辺方向)に重ねて面積すなわち穂先の量(行き場)を確保することができるためである。また、孔の面積が所定の範囲であることが望ましく、1mm2~4mm2程度の範囲であることがより望ましい。
なお、実際に化粧用具や筆記具で一度に複数本のラインを描く場合、同じ太さ、同じ幅で塗布可能なことが求められるため、穂先は均等に分割され、一列に配置されることが望まれる。したがって、マウスピース2の先端部の開口部を楕円形もしくは角が丸みを帯びた長方形とした上で、2つの仕切5を平行にし、開口部の長辺方向と直角となるように配置し、3つの孔が開口部の長辺方向に一列に配置される構成がより好ましい。
【0036】
マウスピース2の後端部の開口部の横断面は、筆先3を挿入しやすく、かつ、該筆先3に十分な量の液体を供給できるように中継芯4が挿入可能な形状や面積となるように適宜選択される。円形状、楕円形状の他、角が丸みを帯びた三角形、正方形、長方形等の多角形状であってもよい。円形状の場合は、直径を最大化することにより断面積を最大化可能である。また、楕円形状や角が丸みを帯びた多角形状の場合、挿入時に筆先3がマウスピース2に対し周方向に回転せず、組み付けやすくなる。なかでも、筆先3の挿入時に筆先3の先端部分がスムーズにマウスピース2の先端部の開口部の形状に沿って縮小変形しやすくなるように、マウスピース2の後端部の開口部の形状が先端部の開口部の形状に略相似する、楕円形状や角が丸みを帯びた長方形が好ましい。
【0037】
マウスピースの素材は、筆先を固定できるものであれば特に制限はなく、ABS樹脂、PP樹脂等が用いられる。
また、マウスピースの外側の形状は、本筆先ユニットを収納する液体塗布具の形状を考慮して設計される。
【0038】
(中継芯の構成)
中継芯4は、筆先3の後端部から液体を供給する、すなわち液体を筆先3に「中継」するために設けられる芯であり、先端部分がテーパー状に研磨されている。中継芯4の後端部分は液体に浸漬され、中継芯4の有する毛細管力によって液体を先端側に吸い上げる。中継芯4の先端部分は筆先3に覆われ、毛細管力によって吸い上げられた液体を筆先に供給する。
筆先に覆われた中継芯の先端部分の後端側は、さらにマウスピースで覆われる。
【0039】
中継芯4の素材は、多孔質形状を有し、液体を毛細管力で筆先3へ供給できるものが任意に選択される。一例としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、又は、これらの混合繊維が挙げられる。また、中継芯4の気孔率も、特に制限はなく、たとえば30~90%程度のものが適宜選択される。
中継芯4のサイズは、挿入される筆先3の後端部の横断面形状や横断面積、液体塗布具10の用途等により適宜設定されるが、径は1.5mm~3.0mm程度、長さは25mm~60mm程度であることが望ましい。
【0040】
(筆先ユニット)
筆先ユニット1は、上述したような1つの筆先3と、筆先3の先端部分のうち、先端側の穂先を除く部分の外周を覆うように設けられたマウスピース2とを備え、1以上の仕切で分割されたマウスピース2の先端部の開口部には複数の孔が形成されており、筆先3の穂先がその孔に沿って分岐されている(
図1参照)。また、筆先ユニット1は、中継芯4をさらに備え、中継芯4の先端部分の外周が筆先3の後端部分で覆われた構成であってもよい。
【0041】
筆先ユニットの組み付け(製造)方法は、筆先3をマウスピース2の後端部から挿入するステップと、筆先3の穂先をマウスピース2の開口部の複数の孔に沿って分岐するステップとを含む(
図4(a)、
図4(b)参照)。さらに、中継芯4の先端部分を、筆先3の後端部分に挿入するステップを含んでもよい(
図4(c)参照)。
ここで、筆先3の穂先をマウスピース2の開口部の複数の孔に沿って分岐すると、穂先はバラバラになるが、液体が供給されると穂先の繊維同士はくっつくため、孔の数の本数の線をきれいに描くことが可能となる。
なお、部品としての出荷納入時の外観確認等のために、分岐した穂先の先端を整えるステップを含めてもよい(
図4(d)参照)。たとえば、各穂先の先端にPVA(ポリビニルアルコール)0.1%水溶液を浸漬させることで、表面張力により繊維同士をくっつけて形状を整えることができる。
【0042】
(液体塗布具)
本発明の筆先ユニット1は、さまざまな化粧用具や筆記具等の液体塗布具10に適用可能である。
たとえば、アイライナー、アイシャドウ、アイブロー、リップライナー、リップグロス、コンシーラー、ネイルケア製品、まつ毛ケア製品等の化粧用液体塗布具に適用可能である。
また、たとえば、油性マーカー、水性マーカー、ボードマーカー、ラインマーカー、ぺイントマーカー、修正ペン、医療用マーカーの筆記用液体塗布具、薬液塗布具等に適用可能である。
【実施例0043】
以下に本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
―筆先―
先端部分がテーパー加工された直径0.15mmのPBT(ポリブチレンテレフタレート)製モノフィラメントを束ね、根本径が3.2mm、全長が21.0mmに、ツバ部外径が3.7mm、ツバ部厚みが0.5mm、中継芯挿入穴径が1.4mmの筆先3を用いた。
【0045】
―マウスピース―
ポリプロピレンを射出成型し、縦断面における長さ2cが14mm、後端部の開口部が円形状でその内径2a’、2b’が3.2mm、先端部の開口部が楕円形状で長辺2bが3.1mm、短辺2aが2.0mm、仕切5が2つ、仕切5の長さ5aが2.0mm、仕切5の厚み5b1、5b2がそれぞれ0.4mm、仕切5の深さ5cが2mm、先端部の開口部の孔が3つ、開口部の横断面の長辺方向の孔の長さ2b1が0.75mm、2b2が0.8mm、2b3が0.75mm、孔の中心間の距離が1.175mmのマウスピース2を用いた。中心の孔(長さ2b2を有する孔)の面積は1.60mm2であり、その両側にある孔(長さ2b1、2b3を有する孔)の面積はそれぞれ1.17mm2である。
【0046】
―中継芯―
外径が2.0mm、全長が35mmであり、単糸径が5d(デニール)であるポリエステル繊維とポリウレタン樹脂から成る気孔率60%の成形体の中継芯4を用いた。
【0047】
―筆先ユニットの組み付け―
マウスピース2の後端部から筆先3を挿入し、筆先のツバ部とマウスピースの筆先後端固定部を当接させた。次に、筆先3の後端部の穴に中継芯4を挿入した。筆先3の穂先の先端に、PVA0.1%水溶液を浸漬させ、形状を整えて乾燥させた。
組み付け時、マウスピース2の先端部の開口部の3つの孔に、穂先が詰まることはなく、スムーズに挿入することができた。
【0048】
-評価試験用の液体塗布具への組み付け-
組み付けられた筆先ユニットを、粘度2.5cps、比重1.00、pH7.4のアイブロー用染料インク0.7gが充填された中綿(単糸径5d、空隙率90%)を格納した容器に組み込み、評価試験用の液体塗布具10を得た。
【0049】
―筆記試験1―
評価試験用の液体塗布具10を用い、ファンデーションが塗布されたバイオスキンシート(ビューラック社製、型番P001-001)上に、10cmの線を10本筆記し、筆記後の液体塗布具10の筆先3の表面の状態を顕微鏡及び目視にて観察した。
ファンデーションの詰まりが見られない場合を○、詰まりが見られた場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
実施例1の筆先3の表面には、ファンデーションの詰まりは見られなかった。
【0050】
-筆記試験2-
評価試験用の液体塗布具10を用い、紙の上に1g、5g、10gの筆記荷重で複数本の線を筆記し、線幅、各線の間隔、カスレ、インクフローを確認した。
インクフローについては、筆線のカスレがない場合を○、筆線のカスレがある場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
実施例1では、どの筆線もカスレはなく、インクフローも良好であることが分かった。荷重を大きくすると、線幅が大きくなり、各線の間隔は小さくなることが分かった。具体的には、荷重1gのときの線幅平均は0.175mm、5gのときは0.715mm、10gのときは0.93mmであり、荷重1gの場合を基準とすると、5gのときは約4.1倍、10gのときは約5.3倍となることが分かった。また、線幅、間隔とも略一定にコントロール可能なことが分かった。
【0051】
(実施例2)
―筆先―
先端部分がテーパー加工された直径0.15mmのPBT(ポリブチレンテレフタレート)製モノフィラメントを束ね、根本の長辺が3.2mm、根本の短辺が2.4mm、全長が21.0mmに、ツバ部外径が3.7mm、ツバ部厚みが0.5mm、中継芯挿入穴径が1.4mmの筆先3を用いた。
【0052】
―マウスピース―
ポリプロピレンを射出成型し、縦断面における長さ2cが14mm、後端部の開口部が楕円形状で短辺2a’が2.4mm、長辺2b’が3.2mm、先端部の開口部が楕円形状で短辺2aが2.0mm、長辺2bが3.1mm、仕切5が2つ、仕切5の長さ5aが2.0mm、仕切5の厚み5b1、5b2がそれぞれ0.4mm、仕切5の深さ5cが2mm、先端部の開口部の孔が3つ、開口部の横断面の長辺方向の孔の長さ2b1が0.75mm、2b2が0.8mm、2b3が0.75mm、孔の中心間の距離が1.175mmのマウスピース2を用いた。中心の孔(長さ2b2を有する孔)の面積は1.60mm2であり、その両側にある孔(長さ2b1、2b3を有する孔)の面積はそれぞれ1.17mm2である。
【0053】
―中継芯―
外径が2.0mm、全長が35mmであり、単糸径が5d(デニール)であるポリエステル繊維とポリウレタン樹脂から成る気孔率60%の成形体の中継芯4を用いた。
【0054】
―筆先ユニットの組み付け―
マウスピース2の後端部から筆先3を挿入し、筆先のツバ部とマウスピースの筆先後端固定部を当接させた。次に、筆先3の後端部の穴に中継芯4を挿入した。筆先3の穂先の先端に、PVA0.1%水溶液を浸漬させ、形状を整えて乾燥させた。
組み付け時、マウスピース2の先端部の開口部の3つの孔に、穂先が詰まることはなく、スムーズに挿入することができた。また、マウスピース2と筆先3の後端部の開口部の断面形状が非円形の楕円形状であるため、挿入時に筆先3が周方向に回転したり、捻じれが生じたりすることはなかった。
【0055】
-評価試験用の液体塗布具への組み付け-
組み付けられた筆先ユニットを、粘度2.5cps、比重1.00、pH7.4のアイブロー用染料インク0.7gが充填された中綿(単糸径5d、空隙率90%)を格納した容器に組み込み、評価試験用の液体塗布具10を得た。
【0056】
―筆記試験1―
評価試験用の液体塗布具10を用い、ファンデーションが塗布されたバイオスキンシート(ビューラック社製、型番P001-001)上に、10cmの線を10本筆記し、筆記後の液体塗布具10の筆先3の表面の状態を顕微鏡及び目視にて観察した。
ファンデーションの詰まりが見られない場合を○、詰まりが見られた場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
実施例2の筆先3の表面には、ファンデーションの詰まりは見られなかった。
【0057】
-筆記試験2-
評価試験用の液体塗布具10を用い、紙の上に1g、5g、10gの筆記荷重で複数本の線を筆記し、線幅、各線の間隔、カスレ、インクフローを確認した。
インクフローについては、筆線のカスレがない場合を○、筆線のカスレがある場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
実施例2では、どの筆線もカスレはなく、インクフローも良好であることが分かった。荷重を大きくすると、線幅が大きくなり、各線の間隔は小さくなることが分かった。また、線幅、間隔とも略一定にコントロール可能なことが分かった。
【0058】
(比較例1)
―筆先―
繊維径1dのナイロン繊維をポリウレタン樹脂で接着した、空隙率75%の成型品の先端部分を円錐状に研削した合繊芯3本を筆先として使用した。合繊芯の外径は1.1mm、全長は30mmである。
【0059】
―マウスピース―
ポリプロピレンを射出成型し、縦断面における長さ102cが14mm、後端部の開口部が楕円形状で短辺102aが0.8mm、長辺102bが3.1mm、先端部の開口部が楕円形状で短辺102aが0.8mm、長辺102bが3.1mm、仕切はなく、先端部の開口部の孔は1つのマウスピース102を用いた。先端部の開口部の面積は1.95mm
2である(
図8参照)。
【0060】
―筆先ユニットの組み付け―
合繊芯3本を、先端を揃えた状態で一列に並べ、マウスピース102の後端部から挿入した。マウスピース102の後端部から後端側に飛び出した、合繊芯の後端部分に400℃のコテを当て、合繊芯3本を溶着した。このコテ当ての工程は実施例に不要なやや複雑な工程であり、製造コストも上がる。
合繊芯はナイロン繊維間の空隙が液体導通路となるため、中継芯は不要である。
【0061】
-評価試験用の液体塗布具への組み付け-
組み付けられた筆先ユニットを、粘度2.5cps、比重1.00、pH7.4のアイブロー用染料インク0.7gが充填された中綿(単糸径5d、空隙率90%)を格納した容器に組み込み、評価試験用の液体塗布具を得た。
【0062】
―筆記試験1―
評価試験用の液体塗布具を用い、ファンデーションが塗布されたバイオスキンシート(ビューラック社製、型番P001-001)上に、10cmの線を10本筆記し、筆記後の液体塗布具の合繊芯の先端部分の表面の状態を顕微鏡及び目視にて観察した。
ファンデーションの詰まりが見られない場合を○、詰まりが見られた場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
比較例1の合繊芯の表面に、ファンデーションの詰まりが見られた。なお、このファンデーションの詰まりの原因となる粒子を拭おうとすると、粒子はさらに合繊芯の内部に入ってしまうことも分かった。
【0063】
-筆記試験2-
評価試験用の液体塗布具を用い、紙の上に1g、5g、10gの筆記荷重で複数本の線を筆記し、線幅、各線の間隔、カスレ、インクフローを確認した。
インクフローについては、筆線のカスレがない場合を○、筆線のカスレがある場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
比較例1では、どの筆線もカスレはなく、インクフローは良好であることが分かった。ただし、実施例1、2に比べ、荷重を大きくしても線幅はあまり大きくならず、逆に荷重を小さくしても細い線を描けないことが分かった。具体的には、荷重1gのときの線幅平均は0.575mm、5gのときは0.605mm、10gのときは0.72mmであり、荷重1gの場合を基準とすると、5gのときは約1.1倍、10gのときは約1、25倍にしかならないことが分かった。すなわち、比較例1においては、多様な太さの線をコントロールして描くことが難しいことが分かった。
【0064】
(比較例2)
―筆先―
先端部分がテーパー加工された直径0.15mmのPBT(ポリブチレンテレフタレート)製モノフィラメントを束ね、根本径が2.9mm、全長が21.5mmに、ツバ部外径が3.7mm、ツバ部厚みが0.5mm、中継芯挿入穴径が1.4mmの筆先を用いた。
【0065】
―マウスピース―
ポリプロピレンを射出成型し、縦断面における長さが14mm、後端部の開口部が円形状でその内径が3.2mm、先端部の開口部が円形状でその内径が2.0mm、先端部の開口部の面積が3.14mm
2のマウスピース202を用いた(
図9参照)。
【0066】
―中継芯―
外径が2.0mm、全長が35mmであり、単糸径が5d(デニール)であるポリエステル繊維とポリウレタン樹脂から成る気孔率60%の成形体の中継芯を用いた。
【0067】
―筆先ユニットの組み付け―
マウスピース202の後端部から筆先を挿入し、筆先のツバ部とマウスピースの筆先後端固定部を当接させた。次に、筆先の後端部の穴に中継芯を挿入した。筆先の穂先の先端に、PVA0.1%水溶液を浸漬させ、形状を整えて乾燥させた。
組み付け時、マウスピース202の先端部の開口部は仕切で分割されていないため、また、筆先は1つのため、スムーズに挿入することができた。
【0068】
-評価試験用の液体塗布具への組み付け-
組み付けられた筆先ユニットを、粘度2.5cps、比重1.00、pH7.4のアイブロー用染料インク0.7gが充填された中綿(単糸径5d、空隙率90%)を格納した容器に組み込み、評価試験用の液体塗布具を得た。
【0069】
―筆記試験1―
評価試験用の液体塗布具を用い、ファンデーションが塗布されたバイオスキンシート(ビューラック社製、型番P001-001)上に、10cmの線を10本筆記し、筆記後の液体塗布具の筆先の表面の状態を顕微鏡及び目視にて観察した。
ファンデーションの詰まりが見られない場合を○、詰まりが見られた場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
比較例2の筆先の表面には、ファンデーションの詰まりは見られなかった。
【0070】
-筆記試験2-
評価試験用の液体塗布具を用い、紙の上に1g、5g、10gの筆記荷重で複数本の線を筆記し、線幅、各線の間隔、カスレ、インクフローを確認した。
インクフローについては、筆線のカスレがない場合を○、筆線のカスレがある場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
比較例2では、どの筆線もカスレはなく、インクフローも良好であることが分かった。実施例1、2に比べ、荷重を大きくすると、線幅が急激に大きくなることが分かった。ただし、筆先が1つで穂先が分岐していないため、1本ずつ塗布する必要があり、一度に3本の線を描くことができない。また、1本ずつ塗布するため、各線の間隔を略一定にコントロールしにくいことが分かった。
【0071】
(比較例3)
―筆先―
先端部分がテーパー加工された直径0.15mmのPBT(ポリブチレンテレフタレート)製モノフィラメントを束ね、根本径が1.5mm、全長が30.0mmに、ツバ部外径が2.2mm、ツバ部厚みが0.3mmの筆先を3つ用いた。
【0072】
―マウスピース―
実施例1と同じマウスピース2を用いた。
すなわち、ポリプロピレンを射出成型し、縦断面における長さ2cが14mm、後端部の開口部が円形状でその内径が2a’、2b’が3.2mm、先端部の開口部が楕円形状で長辺2bが3.1mm、短辺が2.0mm、仕切5が2つ、仕切5の長さ5aが2.0mm、仕切5の厚み5b1、5b2がそれぞれ0.4mm、仕切5の深さ5cが2mm、先端部の開口部の孔が3つ、開口部の横断面の長辺方向の孔の長さ2b1が0.75mm、2b2が0.8mm、2b3が0.75mm、孔の中心間の距離が1.175mmのマウスピース2を用いた。中心の孔(長さ2b2を有する孔)の面積は1.60mm2であり、その両側にある孔(長さ2b1、2b3を有する孔)の面積はそれぞれ1.17mm2である。
【0073】
―筆先ユニットの組み付け―
マウスピース2の後端部から筆先3つを挿入し、マウスピース2の先端部の開口部の孔3つに対し筆先をそれぞれ挿入した。筆先の穂先の先端に、PVA0.1%水溶液を浸漬させ、形状を整えて乾燥させた。
筆先の根本径が小さすぎるため、中継芯を挿入することはできない。そのため、筆先の後端部分をマウスピース2の後端部より後端側に出すように構成する。
組み付け時、1mm~2mmレベルの外径の筆先3つを、1mm以下の幅の孔にそれぞれ挿入する必要があり、また、溶着できない筆先において、筆先の先端部がずれないように組み付ける必要があるため、組み付けの難易度は高い。
さらに、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製モノフィラメントを束ねた筆先自体の製造コストも高く、しかも3つ用意する必要があるため、筆先ユニットとしての製造コストも高くなる。
【0074】
-評価試験用の液体塗布具への組み付け-
組み付けられた筆先ユニットを、粘度2.5cps、比重1.00、pH7.4のアイブロー用染料インク0.7gが充填された中綿(単糸径5d、空隙率90%)を格納した容器に組み込み、評価試験用の液体塗布具を得た。
【0075】
―筆記試験1―
評価試験用の液体塗布具を用い、ファンデーションが塗布されたバイオスキンシート(ビューラック社製、型番P001-001)上に、10cmの線を10本筆記し、筆記後の液体塗布具の筆先の表面の状態を顕微鏡及び目視にて観察した。
ファンデーションの詰まりが見られない場合を○、詰まりが見られた場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
比較例3の筆先の表面には、ファンデーションの詰まりは見られなかった。
【0076】
-筆記試験2-
評価試験用の液体塗布具を用い、紙の上に1g、5g、10gの筆記荷重で複数本の線を筆記し、線幅、各線の間隔、カスレ、インクフローを確認した。
インクフローについては、筆線のカスレがない場合を○、筆線のカスレがある場合を×とした。
筆記試験の結果を、表1に示した。
比較例3では、どの筆線もカスレがあり、インクフローは不良であることが分かった。比較例3は中継芯を備えることができない構造であり、筆先の毛細管力のみで液体を筆先に供給する必要があり、その毛細管力が不足することが分かった。
荷重を大きくすると、線幅が大きくなり、各線の間隔は小さくなる傾向は得られたが、インクフローが不良であるため、線幅、線間の間隔もコントロールができないことが分かった。
【0077】