(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083891
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197860
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 絢子
(72)【発明者】
【氏名】望月 史生
(72)【発明者】
【氏名】大橋 穣
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 ひかる
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD15
4C601EE10
4C601EE11
4C601FF08
4C601GA40
4C601GB04
4C601JB40
4C601JB48
4C601KK01
4C601KK16
4C601KK31
4C601KK36
4C601KK47
4C601LL03
(57)【要約】
【課題】診断に用いる誘導法を効率的に選択すること。
【解決手段】本実施形態に係る超音波診断装置は、収集部と、取得部と、検知部と、選択部とを備える。収集部は、被検体に対して超音波走査を行うことにより反射波データを収集する。取得部は、複数の誘導法により計測される被検体の心電図信号を夫々取得する。検知部は、被検体の超音波走査が行われていない非診断状態を検知する。選択部は、非診断状態が検知されると、複数の誘導法の各々で計測された心電図信号の波形に基づいて、超音波走査で使用する誘導法を選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波走査を行うことにより反射波データを収集する収集部と、
複数の誘導法により計測される前記被検体の心電図信号を夫々取得する取得部と、
前記被検体の超音波走査が行われていない非診断状態を検知する検知部と、
前記非診断状態が検知されると、前記複数の誘導法の各々で計測された前記心電図信号の波形に基づいて、前記超音波走査で使用する誘導法を選択する選択部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記被検体を超音波走査する診断状態において、前記選択部により選択された前記誘導法の前記心電図信号を取得する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記非診断状態が検知されると、前記心電図信号の取得を開始し、前記複数の誘導法により計測される前記被検体の前記心電図信号の夫々を順次又は同時に取得する、
請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記被検体を超音波走査する診断状態において、前記選択部で選択された前記誘導法の前記心電図信号の波形に基づいて、前記反射波データの収集を前記収集部に行わせる制御部を更に備える、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記心電図信号の波形に含まれるR波が検出されたタイミングに合わせて、前記反射波データの収集を前記収集部に開始させる、
請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記超音波診断装置が前記超音波走査を一時停止するフリーズ状態となった場合、前記非診断状態を検知する、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記反射波データに基づいて生成される超音波画像を構成する各画素の輝度値の統計値が閾値を下回る場合、前記非診断状態を検知する、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記選択部は、前記複数の誘導法で計測された前記心電図信号の波形のうち、前記心電図信号の波形に含まれるR波の振幅が最も大きく計測される前記誘導法を選択する、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記取得部により取得された誘導法で計測された前記心電図信号の波形の何れからもR波が検出されない場合、前記心電図信号を計測するために前記被検体に装着される複数の電極の装着状態を確認するようユーザに対して促す報知部を更に備える、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心エコー検査においては、心電計から出力される心電図(Electrocardiogram:ECG)信号の波形からR波を検知し、診断に利用している。R波を用いた診断としては、例えば、検知したR波をトリガとして、スキャンを開始する心電同期スキャン等が挙げられる。
【0003】
ところで、心エコー検査において、R波を診断に用いる際、検査技師及び術者等の操作者は、複数の誘導法(例えば、I誘導、II誘導、III誘導等)を切替えながら、夫々の誘導法のECG信号の波形を確認した上で、診断に用いる誘導法を選択している。しかしながら、手動で誘導法を切替えながら波形を確認することは、操作者にとって負担となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、診断に用いる誘導法を効率的に選択することにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る超音波診断装置は、収集部と、取得部と、検知部と、選択部とを備える。収集部は、被検体に対して超音波走査を行うことにより反射波データを収集する。取得部は、複数の誘導法により計測される被検体の心電図信号を夫々取得する。検知部は、被検体の超音波走査が行われていない非診断状態を検知する。選択部は、非診断状態が検知されると、複数の誘導法の各々で計測された心電図信号の波形に基づいて、超音波走査で使用する誘導法を選択する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る超音波診断装置が取得した1心拍分のECG信号の波形の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る超音波診断装置が取得した1心拍分のECG信号の波形の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る超音波診断装置が取得した1心拍分のECG信号の波形の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る超音波診断装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に関する超音波診断装置について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示す図である。
図1に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ11と、入力インタフェース(入力部)13と、ディスプレイ(表示部)15と、心電計17と、装置本体19とを有する。
【0010】
超音波プローブ11は、被検体に対して超音波走査を行うことにより反射波データを収集する。超音波プローブ11は、収集部の一例である。超音波プローブ11は、複数の圧電振動子、圧電振動子の超音波放射面側に設けられる整合層、圧電振動子の背面側に設けられ、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。複数の圧電振動子各々は、後述する送受信回路23から供給される駆動信号に応答して超音波を発生する。
【0011】
超音波プローブ11は、装置本体19と着脱自在に接続される1次元アレイプローブである。複数の圧電振動子は、装置本体19における送受信回路23から供給された駆動信号に基づいて、超音波を発生する。なお、超音波プローブ11には、フリーズ操作などの際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0012】
ユーザによってフリーズ操作が行われると、超音波診断装置1は、フリーズ状態に移行する。ここで、フリーズ状態とは、超音波診断装置1が超音波走査を一時停止する状態のことをいう。
【0013】
超音波プローブ11から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射される。反射された超音波は、反射波信号(以下、エコー信号と呼ぶ)として超音波プローブ11が有する複数の圧電振動子にて受信される。エコー信号は、反射波データの一例である。受信されたエコー信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。
【0014】
なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合のエコー信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して周波数偏移を受ける。超音波プローブ11は、被検体Pからのエコー信号を受信して電気信号に変換する。
【0015】
入力インタフェース13は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を超音波診断装置1に取り込む。入力インタフェース13は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、および表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース13は、操作者から受け取った入力操作を電気信号に変換する。
【0016】
なお、本明細書において入力インタフェース13は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限らない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を装置本体19へ出力するような電気信号の処理回路も入力インタフェース13の例に含まれる。
【0017】
ディスプレイ15は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。
【0018】
なお、ディスプレイ15は、装置本体19に組み込まれてもよい。また、ディスプレイ15は、デスクトップ型でもよいし、装置本体19と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0019】
ディスプレイ15は、後述する画像生成回路29等により生成された各種画像を表示する。ディスプレイ15は、各種画像の表示を実現する表示回路を有する。また、ディスプレイ15は、操作者が各種設定要求を入力するためのグラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface:GUI)を表示する。なお、複数のディスプレイが、超音波診断装置1の装置本体19に接続されてもよい。
【0020】
心電計17は、通信インタフェース31を介して装置本体19に接続される。心電計17は、超音波走査される被検体Pの生体信号として、被検体Pの心電図信号(以下、ECG信号ともいう)を取得する。なお、心電計17は、複数の誘導法のECG信号を取得することができる。心電計17は、指定された誘導法のECG信号を取得し、装置本体19に出力する。
【0021】
装置本体19は、送受信回路(送受信部)23と、Bモードデータ生成回路(Bモードデータ生成部)25と、ドプラデータ生成回路(ドプラデータ生成部)27と、画像生成回路(画像生成部)29と、通信インタフェース31と、メモリ(記憶部)33と、制御回路(制御部)35と、処理回路(処理部)37とを有する。
【0022】
送受信回路23は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ回路を有し、超音波プローブ11における複数の圧電振動子各々に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数fr(Hz)(周期:1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。
【0023】
送信遅延回路は、送信超音波をビーム状に収束し、かつ送信指向性を決定するために必要な遅延時間を、各レートパルスに与える。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11の圧電振動子ごとに電圧パルスを駆動信号として印加する。これにより、超音波ビームが被検体Pに送信される。
【0024】
送受信回路23は、プリアンプ、アナログディジタル(Analog to digital(以下、A/Dと呼ぶ))変換器、受信遅延回路、加算器をさらに有する。送受信回路23は、各圧電振動子によって発生された受信エコー信号に基づいて、受信信号を発生する。プリアンプは、超音波プローブ11を介して取り込まれた被検体Pからのエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された受信エコー信号をディジタル信号に変換する。
【0025】
受信遅延回路は、ディジタル信号に変換された受信エコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、遅延時間が与えられた複数のエコー信号を加算する。この加算により、送受信回路23は、受信指向性に応じた方向からの反射成分を強調した受信信号を生成する。この送信指向性と受信指向性とにより、超音波送受信の総合的な指向性が決定される。この総合的な指向性により、超音波ビーム(いわゆる「超音波走査線」)が決まる。
【0026】
Bモードデータ生成回路25は、包絡線検波器、対数変換器を有し、受信信号に基づいてBモードデータを生成する。包絡線検波器は、受信信号に対して包絡線検波を実行する。対数変換器は、包絡線検波された信号に対して対数変換を行い、包絡線検波された信号における弱い信号を相対的に強調する。Bモードデータ生成回路25は、対数変換器により強調された信号に基づいて、各走査線における深さごとの信号値(Bモードデータと称される)を生成する。
【0027】
具体的には、Bモードデータ生成回路25は、2次元走査による2次元Bモードデータを生成する。Bモードデータは、例えば、被検体Pの心尖部からの複数の心腔に向けの断面(心尖部四腔断面)に対する2次元的な超音波走査(以下、心尖四腔スキャンと呼ぶ)により、生成される。複数の心腔は、四腔のうち少なくとも2つである。
【0028】
以下、説明を具体的にするために、Bモードデータは、心尖四腔スキャンにより生成されたデータ(以下、心尖四腔データと呼ぶ)であって、心尖四腔スキャンの実施時における心電図の時相が関連付けられる。四腔は、左心房(Left Atrium:LA)、左心室(Left Ventricular:LV)、右心房(Right Atrium:RA)、右心室(Right Ventricular:RV)である。
【0029】
ドプラデータ生成回路27は、ミキサー、低域通過フィルタ(Low Pass Filter:以下、LPFと呼ぶ)等を有し、受信信号に基づいてドプラデータを生成する。ミキサーは、送信超音波の周波数f0を有する基準信号を受信信号に掛け合わせ、ドプラ偏移周波数fdの成分の信号と、(2f0+fd)の周波数成分を有する信号とを生成する。
【0030】
LPFは、ミキサーから出力された信号のうち、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除く。これにより、ドプラデータ生成回路27は、受信信号のうちドプラ偏移周波数fdの成分を有するドプラデータを生成する。
【0031】
画像生成回路29は、いずれも図示していないディジタルスキャンコンバータ(Digital Scan Converter:以下、DSCと呼ぶ)、画像メモリ等を有する。DSCは、Bモードデータおよびドプラデータからなる超音波スキャンの走査線信号列を、ビデオフォーマットの走査線信号列に変換する(スキャンコンバート)。
【0032】
画像生成回路29は、スキャンコンバートされたBモードデータおよびドプラデータに対して種々のパラメータの文字情報、目盛等を合成し、超音波画像のデータを生成する。超音波画像のデータは表示用のデータである。一方、Bモードデータ、ボリュームデータおよびドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0033】
画像メモリは、フリーズ操作の入力直前の一連のフレームに対応する複数の超音波画像(以下、超音波動画像と呼ぶ)を保存する。画像メモリに記憶された複数の超音波画像は、シネ表示に用いられる。
【0034】
例えば、画像生成回路29は、少なくともの被検体Pの1心拍以上に亘って実行された心尖四腔スキャンにより生成された心尖四腔データに基づいて、当該1心拍以上に亘る超音波動画像(以下、心尖四腔動画像と呼ぶ)を生成する。生成された心尖四腔動画像は、心電図における心時相とともに、画像メモリに記憶され、適宜シネ表示に用いられる。また、画像生成回路29は、心尖四腔動画像をメモリ33に記憶させる。
【0035】
通信インタフェース31は、ネットワークを介して、医用画像保管装置などの外部装置と接続する。通信インタフェース31は、被検体Pの四腔に関する超音波画像のデータ等を、医用画像保管装置から受信し、メモリ33に出力する。通信インタフェース31は、画像生成回路29、処理回路37等から出力された各種データを、外部装置へ転送する。
【0036】
メモリ33は、超音波送受信に関するプログラム、制御回路35および処理回路37で実行される各種処理に対応するプログラムなどを記憶する。メモリ33は、処理回路37で使用される各種の情報を予め記憶する。また、メモリ33は、生データ、超音波画像データ、処理回路37により生成・処理された各種データ等を記憶する。
【0037】
メモリ33は、例えば、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ33は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。
【0038】
制御回路35は、ハードウェア資源として、例えば、プロセッサとメモリを備える。制御回路35は、超音波診断装置1の中枢として機能する。具体的には、制御回路35は、メモリ33に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って超音波診断装置1の各種ユニットを制御する。制御回路35は、制御部の一例である。
【0039】
例えば、制御回路35は、ユーザによる超音波診断装置1の操作が所定時間行われない場合、超音波診断装置1を自動的にフリーズ状態に移行させる制御を行う。
【0040】
処理回路37は、ハードウェア資源として、例えば、プロセッサとメモリを備える。具体的には、処理回路37は、メモリ33に記憶されているプログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたプログラムに従って各種機能を実現する。処理回路37は、検知機能371、取得機能373、選択機能375、及び表示制御機能377を備える。
【0041】
なお、検知機能371及び検知機能371は、検知部の一例である。また、取得機能373は、取得部の一例である。また、選択機能375は、選択部の一例である。また、選択機能375及び表示制御機能377は、報知部の一例である。
【0042】
なお、
図1においては単一のプロセッサにて検知機能371、取得機能373、選択機能375、及び表示制御機能377にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路37を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0043】
また、
図1においては単一のメモリ33が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路37は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0044】
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device :CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0045】
プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリ33にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。
【0046】
なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0047】
検知機能371は、被検体Pの超音波走査が行われていない非診断状態を検知する。非診断状態の検知方法は特に問わず、種々の方法を採用することが可能である。例えば、検知機能371は、処理回路37が入力インタフェース13等を介して、ユーザからフリーズ操作を受付けた場合、非診断状態を検知する。
【0048】
また、例えば、検知機能371は、超音波診断装置1がフリーズ状態に自動的に移行した場合、非診断状態を検知する。一方、検知機能371は、処理回路37が入力インタフェース13等を介して、ユーザからフリーズ状態を解除する操作を受付けた場合、非診断状態が解除されたことを検知する。
【0049】
また、例えば、検知機能371は、超音波診断装置1がフリーズ状態でないとき、生成された超音波画像データを構成する各画素の輝度値の平均値を算出する。そして、検知機能371は、輝度値の平均値が予め定めた閾値未満である場合、非診断状態を検知する。一方、検知機能371は、輝度値の平均値が予め定めた閾値以上となった場合、非診断状態が解除されたことを検知する。
【0050】
これは、超音波画像データを構成する各画素の輝度値が全体的に低値になっている場合、エコー信号を受信できておらず、超音波プローブ11が空中に放置されている状態(以下、空中放置状態ともいう)であると推測できるからである。
【0051】
なお、平均値は、統計値の一例であり、本実施形態では、超音波画像データを構成する各画素の輝度値の平均値を用いて、超音波プローブ11の空中放置状態を検知しているが、超音波プローブ11の空中放置状態の検知に用いる各画素の輝度値の統計値は平均値に限定されない。例えば、超音波画像データを構成する各画素の輝度値の中央値を用いてもよい。
【0052】
取得機能373は、複数の誘導法により計測される被検体PのECG信号を夫々取得する。具体的には、取得機能373は、非診断状態が検知された場合、心電計17から出力される複数の誘導法のECG信号の波形を取得する。具体的には、取得機能373は、検知機能371が非診断状態を検知した場合、心電計17から、複数の誘導法のうち、予め指定された誘導法のECG信号の取得を開始する。
【0053】
また、取得機能373は、超音波診断装置1が診断状態(非診断状態が解除された状態)の場合、後述の選択機能375が選択した誘導法で計測されるECG信号を取得する。
【0054】
ここで、例えば、I誘導がECG信号を取得する誘導法として予め指定されており、かつ、I誘導、II誘導、及びIII誘導の3つの誘導法のECG信号を順次取得する場合について説明する。
【0055】
この場合、取得機能373は、まず、予め指定されているI誘導のECG信号を心電計17から1心拍分取得する。次いで、取得機能373は、取得する誘導法をI誘導からII誘導に切り替える。そして、取得機能373は、II誘導のECG信号を心電計17から1心拍分取得する。
【0056】
その後、取得機能373は、II誘導の場合と同様に、取得する誘導法をII誘導からIII誘導に切り替え、III誘導のECG信号を心電計17から1心拍分取得する。これにより、取得機能373は、I誘導、II誘導、III誘導夫々の1心拍分のECG信号を取得する。
【0057】
なお、本実施形態では、取得機能373は、夫々の誘導法について1心拍分のECG信号を取得しているが、取得するECG信号は1心拍分に限定されるものではない。例えば、2心拍分以上ECG信号を取得してもよい。
【0058】
図2乃至
図4は、取得機能373が取得した1心拍分のECG信号の一例を示す図である。ここで、
図2は、I誘導のECG信号の一例を、
図3は、II誘導のECG信号の一例を、
図4は、III誘導のECG信号の一例を示している。
図2乃至
図4に示すように、ECG信号は、心房の興奮を示すP波、心室の興奮を示すQRS波、及び心室の回復を示すT波で構成される。
【0059】
一般的に、超音波検査においては、QRS波の構成成分の1つであるR波が診断に用いられている。したがって、例えば、R波が適切に検出できない誘導法のECG信号を診断に用いると、正しく心臓等の状態を評価できない可能性がある。そこで、本実施形態に係る超音波診断装置1は、診断に用いるのに適切な誘導法を自動的に選択する処理を行う。以下、誘導法の選択処理について説明する。
【0060】
選択機能375は、非診断状態が検知されると、複数の誘導法の各々で計測されたECG信号の波形に基づいて、超音波走査で使用する誘導法を選択する。具体的には、選択機能375は、複数の誘導法のECG信号の波形のうち、R波の振幅が最も大きく計測される誘導法を、診断に用いる誘導法として選択する。ここで、取得機能373が、
図2乃至
図4に示すI誘導、II誘導、及びIII誘導の1心拍分のECG信号を取得した場合を例に説明する。
【0061】
この場合、まず、選択機能375は、I誘導、II誘導、及びIII誘導の1心拍分のECG信号の夫々について、R波を検出する。次いで、選択機能375は、検出したR波の振幅を算出する。
図2乃至
図4に示すように、R波の振幅は、II誘導が最も大きい。したがって、選択機能375は、II誘導を診断に用いる誘導法として選択する。
【0062】
なお、何れの誘導法からもR波が検出されない場合、ECG信号を検出するために被検体Pに装着される複数の電極が正しく装着されていない可能性が高い。そこで、選択機能375は、何れの誘導法からもR波が検出されない場合、後述する表示制御機能377と協働し、ディスプレイ15に、電極の装着状態を確認するようユーザに対して促すメッセージを表示させる制御を行う。
【0063】
また、R波の振幅の閾値を予め定めておき、何れの誘導法についてもR波の振幅が閾値未満の場合に同様の制御を行ってもよい。
【0064】
なお、メッセージの表示は報知の一例である。また、報知の方法はメッセージの表示に限定されない。例えば、スピーカから警告音を発する等の方法で報知を行ってもよい。また、例えば、メッセージの表示と警告音とを組み合わせて報知を行ってもよい。
【0065】
選択機能375が1の誘導法を選択すると、取得機能373は、取得するECG信号の誘導法を、選択機能375が選択した誘導法に切り替える。これにより、選択機能375による誘導法の選択後、取得機能373は、選択された誘導法のECG信号を取得することになる。
【0066】
このように取得された1の誘導法のECG信号が、超音波検査において診断に用いられる。本実施形態に係る超音波診断装置1の制御回路35は、例えば、R波をトリガとして、心尖四腔スキャンを開始する。
【0067】
表示制御機能377は、各種情報をディスプレイ15に表示する制御を行う。例えば、表示制御機能377は、ディスプレイ15に、心電計17から出力される、選択機能375が選択した誘導法のECG信号の波形を、超音波画像とともに表示させる制御を行う。また、例えば、表示制御機能377は、選択機能375と協働し、ディスプレイ15に、電極の装着状態を確認するようユーザに対して促すメッセージを表示させる制御を行う。
【0068】
次に、本実施形態に係る超音波診断装置1が実行する処理について説明する。
図5は、実施形態に係る超音波診断装置1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0069】
まず、検知機能371は、超音波診断装置1がフリーズ状態であるか否かを確認する(ステップS1)。具体的には、検知機能371は、ユーザからフリーズ操作を受付けた場合、又は超音波診断装置1がフリーズ状態に自動的に移行した場合、超音波診断装置1がフリーズ状態であると判断する。一方、検知機能371は、ユーザからフリーズ操作を受付けていない場合、又は、ユーザによる超音波診断装置の操作が行われてから所定時間が経過していない場合、超音波診断装置1がフリーズ状態でないと判断する。
【0070】
フリーズ状態であると判断した場合(ステップS1:Yes)、検知機能371は、超音波診断装置1が非診断状態であることを検知し、ステップS3の処理に移行する。一方、フリーズ状態でないと判断した場合(ステップS1:No)、検知機能371は、超音波プローブ11が空中に放置された状態であるか否かを確認する(ステップS2)。
【0071】
具体的には、検知機能371は、画像生成回路29が生成した超音波画像データの各画素の平均輝度値を算出し、平均輝度値が閾値未満の場合、超音波プローブ11が空中放置状態であると判断する。一方、検知機能371は、平均輝度値が閾値以上の場合、超音波プローブ11が空中放置状態でないと判断する。
【0072】
空中放置状態であると判断した場合(ステップS2:Yes)、検知機能371は、超音波診断装置1が非診断状態であることを検知し、ステップS3の処理に移行する。一方、空中放置状態でないと判断した場合(ステップS2:No)、ステップS1の処理へ移行する。
【0073】
検知機能371により、超音波診断装置1が非診断状態であることが検知された場合、取得機能373は、心電計17からECG信号の取得を開始する(ステップS3)。具体的には、取得機能373は、複数の誘導法のうち、指定された1の誘導法の1心拍分のECG信号を取得する。
【0074】
指定された1の誘導法の1心拍分のECG信号の取得後、取得機能373は、ECG信号未取得の誘導法の有無を確認する(ステップS4)。未取得の誘導法が無い場合(ステップS4:No)、ステップS5の処理へ移行する。一方、未取得の誘導法がある場合(ステップS4:Yes)、ECG信号を取得する誘導法を未取得の誘導法に切替えてステップS3の処理へ移行する。
【0075】
全ての誘導法について1心拍分のECG信号の取得後、選択機能375は、複数の誘導法夫々について、何れか1つの誘導法でも、ECG信号の波形からR波が検出できたか否かを確認する(ステップS5)。R波が検出できた場合(ステップS5:Yes)、選択機能375は、複数の誘導法のうち、R波の振幅が最も大きく計測される誘導法を診断に用いる誘導法として選択し、本処理を終了する(ステップS6)。
【0076】
選択機能375により1の誘導法が選択されると、取得機能373は、ECG信号を取得する誘導法を選択機能375により選択された誘導法に切り替える。これにより、心電計17から装置本体19に、選択機能375が選択した誘導法のECG信号が出力されることになる。
【0077】
一方、R波が検出できない場合(ステップS5:No)、選択機能375は、表示制御機能377と協働し、ディスプレイ15に、電極の装着状態を確認するようユーザに対して促すメッセージを表示させ、本処理を終了する(ステップS7)。これにより、被検体Pに電極が正しく装着されていない場合、ユーザは電極を正しく装着し直すことができる。
【0078】
以上に述べた本実施形態に係る超音波診断装置1によれば、超音波診断装置1が被検体Pの検査を行っていない非診断状態を検知した場合に、複数の誘導法のECG信号を取得し、ECG信号の波形に基づいて、複数の誘導法のうち、診断に用いる誘導法を選択することができる。
【0079】
これにより、超音波診断装置1が非診断状態になれば、ECG信号の波形に基づいて、診断に用いる誘導法が自動的に選択されるため、ユーザがECG信号の波形を目で確認して、診断に用いる誘導法を判断する必要がなくなる。つまり、本実施形態に係る超音波診断装置1によれば、診断に用いる誘導法を効率的に選択することができる。
【0080】
また、超音波診断装置1が非診断状態になれば、自動的に複数の誘導法のECG信号が順次取得されるため、超音波診断装置1のユーザは、手動で誘導法を切替えながら、複数の誘導法のECG信号を取得する必要がなくなる。
【0081】
また、本実施形態に係る超音波診断装置1は、フリーズ状態に移行すると、複数の誘導法の各々で計測されたECG信号の波形に基づいて、超音波走査で使用する誘導法を選択する。超音波診断装置1がフリーズ状態の場合は、超音波プローブ11による超音波の送受信は行われず、超音波画像データの生成等の処理も行われないため、超音波診断装置1が非診断状態となる。このため、超音波診断装置1は、被検体Pの検査に影響を与えることなく、診断に用いる誘導法を選択することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波画像を構成する各画素の輝度値の統計値が閾値を下回る場合に、複数の誘導法の各々で計測されたECG信号の波形に基づいて、超音波走査で使用する誘導法を選択する。超音波画像を構成する各画素の輝度値の統計値が閾値を下回る場合、超音波プローブ11が空中放置状態であると考えられるため、超音波診断装置1が非診断状態となる。このため、超音波診断装置1は、被検体Pの検査に影響を与えることなく、診断に用いる誘導法を選択することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波診断装置1がフリーズ状態でない場合、超音波画像を構成する各画素の輝度値の統計値が閾値を下回るか否かに基づいて、非診断状態を検知する。これにより、超音波診断装置1は、超音波診断装置1がフリーズ状態でないにも関わらず、被検体Pの超音波検査が行われていない場合でも、心電計17からECG信号を取得し、診断に用いる誘導法を選択することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る超音波診断装置1は、複数の誘導法のECG信号の波形のうち、R波の振幅が最も大きく計測される誘導法を、診断に用いる誘導法として選択する。一般的に、超音波検査においては、R波が診断に用いられるため、R波の振幅が最も大きく計測される誘導法のECG信号を取得することで、より正確に検査を行うことができる。これは、R波の振幅が大きいと、R波の誤検出の可能性が低減するためである。
【0085】
また、本実施形態に係る超音波診断装置1は、取得した複数の誘導法のECG信号の何れからもR波が検出されない場合、電極の装着状態を確認するようユーザに対して促すメッセージを表示する。これは、複数の誘導法のECG信号の何れからもR波が検出されていない場合、被検体Pに電極が装着されていないか、装着の仕方が不適切であると考えられるためである。これにより、ユーザは、被検体Pへの電極の装着の不備に気付きやすくなる。
【0086】
なお、上述した実施形態は、超音波診断装置1が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係る変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0087】
(変形例)
上述の実施形態では、超音波診断装置1が非診断状態の場合に、取得機能373が、複数の誘導法について、取得する誘導法の指定を切替えながら、順次ECG信号を取得する形態について説明した。しかしながら、取得機能373は、超音波診断装置1が非診断状態の場合に、複数の誘導法の各々で計測されたECG信号を全て同時に取得してもよい。
【0088】
本変形例では、心電計17は、複数の誘導法の各々で計測されたECG信号を、全て同時に装置本体19へ出力する。したがって、取得機能373は、複数の誘導法の各々で計測されたECG信号を全て同時に取得する。
【0089】
また、選択機能375は、検知機能371により非診断状態が検知されると、複数の誘導法の各々で計測されたECG信号のR波の振幅を夫々算出し、R波の振幅が最も大きくなる誘導法を診断に用いる誘導法として選択する。例えば、制御回路35は、選択機能375により1の誘導法が選択されると、当該誘導法により計測されるECG信号のR波をトリガとして、心尖四腔スキャンを開始する。
【0090】
なお、取得機能373は、選択機能375により1の誘導法が選択された後も選択されなかった誘導法のECG信号の取得を継続するが、診断に用いられたり、ディスプレイ15に出力されたりするのは、選択機能375により選択された誘導法により計測されたECG信号のみとなる。
【0091】
本変形例によれば、複数の誘導法の各々で計測されたECG信号を全て同時に取得し続けることにより、取得する誘導法を切替える処理が不要となるため、より効率的に診断に用いる誘導法を選択することができる。
【0092】
なお、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
1 超音波診断装置
11 超音波プローブ
13 入力インタフェース
15 ディスプレイ
17 心電計
19 装置本体
23 送受信回路
25 Bモードデータ生成回路
27 ドプラデータ生成回路
29 画像生成回路
31 通信インタフェース
33 メモリ
35 制御回路
37 処理回路
371 検知機能
373 取得機能
375 選択機能
377 表示制御機能