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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083892
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20230609BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20230609BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
A47K1/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197864
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DA02
2D061DB03
2D061DE11
(57)【要約】
【課題】湾曲に伴うレリースワイヤの異常をより確実に防止することができる排水栓装置を提供する。
【解決手段】保持部43は、支持突起44が内周に形成された部位から下方に向けて突出し、保持部43の下部開口を形成する筒状の湾曲規制部432を具備する。レリースワイヤ5のうちケース部62の外に出てすぐの部位を湾曲させたときにおいてアウターチューブ52の外周面のうちの湾曲の始点となる部位を湾曲開始部Sとし、レリースワイヤ5の許容曲げ半径をR(mm)とする。そして、保持部43の中心軸CLを含む断面において湾曲開始部Sから中心軸CLと直交する方向にRだけ離れた点を中心とした湾曲開始部Sを通る仮想円VCをとったとき、この断面において、湾曲規制部432の少なくとも一部が仮想円VCと重なる又は仮想円VCの外に位置するように構成される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能な棒状の支持軸、及び、下方に開口するチューブ出口が形成されるとともに前記支持軸を上下動可能な状態で保持するケース部を有してなる支持軸機構と、
前記支持軸機構が内部に配置される筒状の保持部を具備するアタッチメント部材と、
前記支持軸の上下動に伴い槽体に形成された排水口を開閉可能な栓蓋と、
端部が前記ケース部に取付けられた筒状のアウターチューブ、及び、当該アウターチューブに対し往復移動可能な状態で挿通されたインナーワイヤを有してなる湾曲可能なレリースワイヤとを備え、
前記レリースワイヤは、前記チューブ出口を通って前記ケース部の下端から当該ケース部の外へと出て前記保持部の下部開口を通過した状態とされるとともに、
前記インナーワイヤの往復移動に伴い当該インナーワイヤから前記支持軸に駆動力が伝達されることで、前記栓蓋が動作するように構成された排水栓装置であって、
前記アタッチメント部材は、前記保持部の内周から突出し、前記支持軸機構を下方から支持する支持突起を有し、
前記保持部は、前記支持突起が内周に形成された部位から下方に向けて突出するとともに、当該保持部の前記下部開口を形成する、前記レリースワイヤの過度の湾曲を規制するための筒状の湾曲規制部を具備し、
前記レリースワイヤのうち前記ケース部の外に位置し前記チューブ出口の近傍に位置する部位を湾曲させたときにおいて、前記アウターチューブの外周面のうちの当該湾曲の始点となる部位を湾曲開始部とし、
前記レリースワイヤの許容曲げ半径をR(mm)とし、
前記保持部の中心軸を含む断面において、前記湾曲開始部から、前記インナーワイヤより離間する方向であって前記中心軸と直交する方向にRだけ離れた点を中心とした、前記湾曲開始部を通る仮想円をとったとき、
前記断面において、前記湾曲規制部の少なくとも一部が前記仮想円と重なる又は前記仮想円の外に位置するように構成されていることを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記湾曲開始部は、前記ケース部の下端よりも上方に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記支持軸機構は、前記保持部の下部開口を通して当該保持部内に配置されるものであり、
前記湾曲規制部は、前記ケース部の外径よりも大きな内径を有する円筒形状をなしており、
前記断面においては、前記湾曲規制部の少なくとも下端又はその近傍部分が前記仮想円と重なる又は前記仮想円の外に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を開閉するための排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水栓装置は、槽体(例えば、浴槽や洗面ボウルなど)の排水口に設けられた栓蓋を備えており、栓蓋を遠隔操作して排水口の開閉状態を切換えるためのものである。
【0003】
排水栓装置としては、前記栓蓋に加えて、支持軸機構、アタッチメント部材及びレリースワイヤを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。支持軸機構は、栓蓋を上下動させるための機構であり、上端部に栓蓋が取付けられた上下動可能な支持軸と、当該支持軸を上下動可能な状態で保持するケース部(筒状部)とを有している。アタッチメント部材は、支持軸機構を排水の流路にて保持するためのものであり、支持軸機構が挿通される筒状の保持部と、当該保持部の内周面から突出し支持軸機構を下方から支持する支持突起とを有している。レリースワイヤは、端部がケース部に取付けられた筒状のアウターチューブ(チューブ部材)と、アウターチューブに対し往復移動可能な状態で挿通されたインナーワイヤ(伝達部材)とを有している。このような排水栓装置においては、所定の操作部(例えば操作ボタン等)に対する操作に伴いインナーワイヤが移動することで、当該インナーワイヤから支持軸へと駆動力が伝達される。その結果、栓蓋が動作することで、排水口の開閉状態が切換えられる。
【0004】
ところで、ケース部は、下方に開口するチューブ出口を有しており、レリースワイヤは、そのチューブ出口を通ってケース部の下端から当該ケース部の外へと出た状態となっている。そして、レリースワイヤにおけるケース部の外に位置し前記チューブ出口の近傍に位置する部位(つまりケース部の外に出てすぐの部位)は、装置の設置時やメンテナンス(例えば部品交換)時に、或いは、周囲に配置される部品(例えば排水を流すための配管など)との位置関係の都合上、湾曲した状態とされたり、その状態で維持されたりすることが少なからずある。例えば、装置を設置する際などにおいて、配管内に位置するレリースワイヤを当該配管の横孔などを通して配管外に引き出すときや、何らかの理由(例えば、保温材や各種配管との干渉等)によりレリースワイヤの経路調節等を行うときなどに、レリースワイヤが前記操作部側に引っ張られて、レリースワイヤの前記部位が湾曲した状態とされることがあり、また、その湾曲状態を維持したまま最終的に装置が設置されるといったことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-214813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レリースワイヤにおける前記部位が湾曲するときには、過度に小さな曲げ半径で湾曲してしまいやすい。レリースワイヤが過度に小さな曲げ半径で湾曲してしまうと、レリースワイヤに各種異常(例えば、損傷やインナーワイヤにおける移動抵抗の増大など)が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、湾曲に伴うレリースワイヤの異常をより確実に防止することができる排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.上下動可能な棒状の支持軸、及び、下方に開口するチューブ出口が形成されるとともに前記支持軸を上下動可能な状態で保持するケース部を有してなる支持軸機構と、
前記支持軸機構が内部に配置される筒状の保持部を具備するアタッチメント部材と、
前記支持軸の上下動に伴い槽体に形成された排水口を開閉可能な栓蓋と、
端部が前記ケース部に取付けられた筒状のアウターチューブ、及び、当該アウターチューブに対し往復移動可能な状態で挿通されたインナーワイヤを有してなる湾曲可能なレリースワイヤとを備え、
前記レリースワイヤは、前記チューブ出口を通って前記ケース部の下端から当該ケース部の外へと出て前記保持部の下部開口を通過した状態とされるとともに、
前記インナーワイヤの往復移動に伴い当該インナーワイヤから前記支持軸に駆動力が伝達されることで、前記栓蓋が動作するように構成された排水栓装置であって、
前記アタッチメント部材は、前記保持部の内周から突出し、前記支持軸機構を下方から支持する支持突起を有し、
前記保持部は、前記支持突起が内周に形成された部位から下方に向けて突出するとともに、当該保持部の前記下部開口を形成する、前記レリースワイヤの過度の湾曲を規制するための筒状の湾曲規制部を具備し、
前記レリースワイヤのうち前記ケース部の外に位置し前記チューブ出口の近傍に位置する部位を湾曲させたときにおいて、前記アウターチューブの外周面のうちの当該湾曲の始点となる部位を湾曲開始部とし、
前記レリースワイヤの許容曲げ半径をR(mm)とし、
前記保持部の中心軸を含む断面において、前記湾曲開始部から、前記インナーワイヤより離間する方向であって前記中心軸と直交する方向にRだけ離れた点を中心とした、前記湾曲開始部を通る仮想円をとったとき、
前記断面において、前記湾曲規制部の少なくとも一部が前記仮想円と重なる又は前記仮想円の外に位置するように構成されていることを特徴とする排水栓装置。
【0010】
尚、「レリースワイヤの許容曲げ半径」とは、損傷や機能阻害を招くことなくレリースワイヤを使用可能な曲げ半径のうちの最小値をいう。また、保持部内への支持軸機構の挿通を容易とすべく保持部にスリットを設けることがあるが、この場合、保持部の中心軸を含む断面は、スリットを避けた位置を通る断面をいう。
【0011】
上記手段1によれば、保持部の中心軸を含む断面において、保持部の下部に形成された湾曲規制部の少なくとも一部が仮想円と重なる又は仮想円の外に位置するように構成されている。従って、レリースワイヤのうちケース部の外に位置しチューブ出口の近傍に位置する部位(つまりレリースワイヤのうちケース部の外に出てすぐの部位)を湾曲させたときに、湾曲規制部にレリースワイヤが接触することで、レリースワイヤが許容曲げ半径(R)未満の曲げ半径で湾曲することをより確実に防止できる。これにより、湾曲に伴うレリースワイヤの異常(例えば、損傷やインナーワイヤにおける移動抵抗の増大など)をより確実に防止することができる。また、装置の設置やメンテナンス時などにおいては、特段意識することなく、レリースワイヤの過度の湾曲をより確実に防止可能となるため、装置の設置等に係る作業性の向上を図ることもできる。
【0012】
さらに、上記手段1によれば、比較的単純な構造の湾曲規制部によって、レリースワイヤの過度の湾曲を防ぐことができる。従って、装置の製造などに係るコストの増大抑制を図ることが可能となる。
【0013】
手段2.前記湾曲開始部は、前記ケース部の下端よりも上方に位置するように構成されていることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0014】
上記手段2によれば、湾曲開始部は、ケース部の下端よりも上方に位置する(例えばチューブ出口内に位置する)ように構成されている。これにより、前記断面において、湾曲規制部の少なくとも一部が仮想円と重なる又は仮想円の外に位置する構成としながら、湾曲規制部のサイズ(例えば湾曲規制部の上下方向の長さ等)をより小さなものとすることができる。その結果、装置の取り扱いに係る利便性の向上や材料コストの低減などを図ることができる。
【0015】
手段3.前記支持軸機構は、前記保持部の下部開口を通して当該保持部内に配置されるものであり、
前記湾曲規制部は、前記ケース部の外径よりも大きな内径を有する円筒形状をなしており、
前記断面においては、前記湾曲規制部の少なくとも下端又はその近傍部分が前記仮想円と重なる又は前記仮想円の外に位置するように構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の排水栓装置。
【0016】
上記手段3によれば、保持部の下部開口を通して保持部内に支持軸機構を配置(挿通)する際において、湾曲規制部を支持軸機構のガイドとして利用することができる。従って、保持部内への支持軸機構の配置(挿通)を容易に行うことができ、装置の設置などに係る作業性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】排水栓装置の断面図である。
図2】支持軸機構などの断面図である。
図3】排水栓装置の部分拡大断面図である。
【0018】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、排水栓装置1は、槽体としての浴槽100に取付けられている。尚、浴槽100は、その底面を構成する底面部101を備えており、当該底面部101には排水口102が貫通形成されている。
【0019】
排水栓装置1は、排水口部材2と、配管3と、アタッチメント部材4と、レリースワイヤ5と、支持軸機構6と、栓蓋7とを備えている。
【0020】
排水口部材2は、円筒状に形成されており、自身の中心軸と排水口102の中心軸とがほぼ一致するように排水口102に挿設されている。排水口部材2は、その上端部において径方向外側に突出形成された鍔部21と、当該鍔部21よりも下側の外周に形成された雄ねじ部22とを備えている。
【0021】
配管3は、排水口102を流れる排水の流路を構成するものであり、少なくとも上側が円筒状をなす管である。配管3は、その上端側内周に前記雄ねじ部22を螺合可能な雌ねじ部31を備えている。そして、底面部101の下方において排水口102とほぼ同軸となるように配管3を配置した上で、底面部101の上方から排水口102及び配管3内に対し排水口部材2を挿通しつつ雄ねじ部22を雌ねじ部31に螺合し、鍔部21及び配管3の上端面により底面部101を挟み込むことで、排水口部材2及び配管3が接続されるとともに、両者が浴槽100に取付けられた状態となっている。
【0022】
尚、本実施形態において、鍔部21と底面部101の表面(上面)との間、及び、配管3の上端面と底面部101の裏面(下面)との間には、それぞれ弾性変形可能な材料(例えば、樹脂やゴム等)により形成された環状のシール部材8,9が配置されている。これらシール部材8,9によって、排水口部材2及び配管3と浴槽100との間からの漏水防止が図られている。
【0023】
アタッチメント部材4は、排水の流路、つまり、排水口部材2や配管3の内部において支持軸機構6を保持するためのものである。アタッチメント部材4は、外環部41、連結部42及び保持部43を備えている。
【0024】
外環部41は、円環状をなしており、排水口部材2や配管3に対するアタッチメント部材4の取付部として機能する。本実施形態において、外環部41は、排水口部材2の内周に設けられた段部に載置されること等により、排水口部材2に取付けられている。尚、外環部41(アタッチメント部材4)を、配管3の内側部分に取付けるようにしてもよいし、排水口部材2から配管3にかけた両者の内側部分に取付けるようにしてもよい。
【0025】
連結部42は、外環部41の内周面と保持部43の外周面とを連結する部位であって、保持部43の周方向に沿って間隔をあけた状態で複数(例えば等間隔に4つ)設けられている。排水は、各連結部42間の隙間を通って下流へと流れることとなる。尚、連結部42の数や形状については適宜変更してもよい。
【0026】
保持部43は、全体として円筒状をなしており、当該保持部43の内部に支持軸機構6が配置されている。保持部43には、上下方向に延びるとともに、保持部43の下端にて開口する複数本(本実施形態では4本)のスリット431が形成されている。そして、当該スリット431の幅が拡大するように保持部43を弾性変形させることで、保持部43の下部開口を拡大させることが可能となっている。本実施形態において、保持部43の下部におけるスリット431の幅は、レリースワイヤ5の外径の半分以下とされている。尚、アタッチメント部材4については、後にさらに説明する。
【0027】
レリースワイヤ5は、所定の操作部(例えば操作ボタンなど)の変位による駆動力を、支持軸機構6の後述する支持軸61へと伝達するためのものである。レリースワイヤ5は、金属製のワイヤー部品等からなるインナーワイヤ51と、樹脂等からなる長尺筒状のアウターチューブ52とを備えている。インナーワイヤ51は、アウターチューブ52に挿通されており、アウターチューブ52に対し往復移動可能とされている。
【0028】
尚、前記操作部を備えてなる操作装置(図示せず)には、インナーワイヤ51を往動(前記操作部側から支持軸機構6側に移動)した状態でロックすることにより、インナーワイヤ51ひいては後述する支持軸61を往動(上動)した状態でロックするための図示しないロック機構(例えば、スラストロック機構)が設けられている。
【0029】
また、レリースワイヤ5は、後述するチューブ出口622bを通って、後述するケース部62の下端から当該ケース部62の外へと出て保持部43の下部開口を通過した状態となっている。
【0030】
加えて、レリースワイヤ5の外径はスリット431の幅よりも大きなものとされている。そのため、スリット431にレリースワイヤ5が入り込むことはない。
【0031】
さらに、本実施形態において、レリースワイヤ5は、例えば排水栓装置1やその周囲の構造、設置スペースなどの点から、ケース部62の外に位置しチューブ出口622bの近傍に位置する部位(つまりケース部62の外に出てすぐの部位)が湾曲した状態で設置されている。尚、レリースワイヤ5は、ケース部62の外に出てすぐの部位が湾曲していない状態(直線的に延びる状態)で設置されるものであってもよい。但し、最終的に前記部位が湾曲していない状態でレリースワイヤ5が設置される場合であっても、排水栓装置1の設置作業時などに、レリースワイヤ5の前記部位が一時的に湾曲されることは生じ得る。
【0032】
また、レリースワイヤ5の許容曲げ半径はR(mm)とされている。曲げ半径とは、湾曲中心から当該湾曲中心側に位置するアウターチューブ52の外周面までの距離であり、許容曲げ半径とは、損傷や機能阻害(例えば、インナーワイヤ51の移動抵抗の過度の増大など)を招くことなくレリースワイヤ5を使用可能な曲げ半径のうちの最小値をいう。
【0033】
支持軸機構6は、栓蓋7を上下動させるための機構である。支持軸機構6は、図2に示すように、棒状の支持軸61と、当該支持軸61の外周側に位置する円筒状のケース部62と、支持軸61の外周面及びケース部62の内周面間に設けられ、支持軸61の長手方向に沿って弾性変形可能な戻りばね63とを備えている。
【0034】
支持軸61は、栓蓋7を支持する部品であり、ケース部62の内周において上下動可能とされている。支持軸61の先端側部分(上側部分)はケース部62から突出しており、この先端側部分に対し栓蓋7が取付けられている。また、支持軸61は、その内部にアブソーバスプリング611及び中筒612を備えている。
【0035】
アブソーバスプリング611は、所定のばねにより構成されており、支持軸61の移動方向(上下方向)に沿って弾性変形可能とされている。排水口102が開状態であるとき(支持軸61が往動した状態であるとき)に、栓蓋7へと下向きの大きな力が加わった場合(例えば栓蓋7を踏み付けた場合など)には、アブソーバスプリング611が圧縮変形することによって、インナーワイヤ51等に過大な負荷が加わらないようになっている。尚、図1,2では、アブソーバスプリング611及び戻りばね63について、これらの断面のみをそれぞれ模式的に示している。
【0036】
中筒612は、先端部(上端部)が閉塞した筒状をなしており、自身の内周に配置された後述する細筒部622aの外周面に沿って往復移動(上下動)可能とされている。中筒612には、インナーワイヤ51の端部が挿通されている。
【0037】
本実施形態において、支持軸61は、前記操作部に対する操作により次のように動作する。すなわち、前記操作部を操作(例えば、押圧)することでインナーワイヤ51が往動したときには、当該インナーワイヤ51から中筒612(支持軸61)に駆動力が加わることで、支持軸61が前記戻りばね63からの力に抗して押し上げられる。そして、支持軸61が一定位置よりも上方の位置まで往動した状態で前記操作部への操作が解除されると、支持軸61が若干だけ下降しつつ、前記ロック機構によりインナーワイヤ51が往動した状態でロックされる。その結果、支持軸61が往動(上動)した状態でロックされる。
【0038】
一方、この状態で、前記操作部を再度操作すると、前記ロック機構によるインナーワイヤ51のロックが解除される。そして、前記操作部に対する操作が解除されると、戻りばね63や重力などによって、インナーワイヤ51とともに支持軸61が復動(下動)する。
【0039】
このように本実施形態では、前記操作部を操作する度に、支持軸61が往動(上動)した状態でロックされること、及び、ロック解除に伴い支持軸61が復動(下動)することが交互に行われるようになっている。
【0040】
ケース部62は、ケース本体部621及び閉塞部622を備えている。尚、ケース部62自体は、その外周に配置された保持部43によって移動不能な状態で保持されている。
【0041】
ケース本体部621は、支持軸61よりも大径の円筒状をなしており、自身の内部にて支持軸61を往復移動(上下動)可能な状態で保持している。
【0042】
閉塞部622は、支持軸61の長手方向に延びる円筒状の細筒部622aを備えている。細筒部622aは、中筒612の内周に配置されており、中筒612の移動をガイドする。また、閉塞部622の下端側であって細筒部622aの基端部が連接される部分は、細筒部622aよりも大径とされており、ケース本体部621の下端部に取付けられている。これにより、閉塞部622によって、ケース本体部621の下端側開口が閉塞された状態となっている。
【0043】
また、閉塞部622は、アウターチューブ52の端部を保持した状態となっている。これにより、アウターチューブ52の端部がケース部62に取付けられた状態となっている。
【0044】
さらに、閉塞部622には、下方に向けて開口するチューブ出口622bが形成されている。チューブ出口622bは、レリースワイヤ5をケース部62外へと出すための開口である。閉塞部622におけるチューブ出口622bを形成する部位の内径は、ケース部62外からケース部62内に向けて徐々に減少し、最終的にレリースワイヤ5(アウターチューブ52)の外径とほぼ等しくなるように構成されている。そのため、閉塞部622におけるチューブ出口622bを形成する部位には、内径が徐々に減少する部位と内径がレリースワイヤ5(アウターチューブ52)の外径とほぼ等しくなる部位との境界部分Bが形成されている。
【0045】
そして、レリースワイヤ5のうちケース部62の外に位置しチューブ出口622bの近傍に位置する部位(つまりケース部62の外に出てすぐの部位)を湾曲させたときに、インナーワイヤ51及びアウターチューブ52が湾曲するところ、アウターチューブ52の外周面については、前記境界部分Bの側方に位置する部位がその湾曲の始点となるように構成されている。以下では、この湾曲の始点となる部位を湾曲開始部Sという。本実施形態において、湾曲開始部Sは、チューブ出口622b内に位置しており、ケース部62の下端よりも上方に位置している。
【0046】
戻りばね63は、圧縮状態で設けられており、支持軸61に対し復動方向の引込力を付与する。本実施形態では、戻りばね63で生じる弾性力によって、支持軸61に引込力が付与される。
【0047】
図1に戻り、栓蓋7は、排水口102を開閉するための栓である。栓蓋7は、所定の樹脂等からなる円板状の蓋部71と、蓋部71の背面に突出形成されたガイド部72と、当該ガイド部72よりも蓋部71の背面中心側に設けられた筒状の挿通部73と、蓋部71の背面の外周側に取付けられた環状のパッキン部74とを備えている。
【0048】
ガイド部72は、保持部43の外周に配置されており、支持軸61の往復移動(上下動)に伴い保持部43の外周面に沿って移動する。ガイド部72は、栓蓋7の往復移動時に、栓蓋7において傾きや水平方向に沿った位置ずれが発生することを防止するために設けられている。
【0049】
挿通部73は、支持軸61の先端側部分が挿通される部位であって、支持軸61に対する栓蓋7の被取付部として機能する。本実施形態では、挿通部73に対し支持軸61の先端側部分が嵌合されることで、当該先端側部分に対し栓蓋7が取付けられている。
【0050】
パッキン部74は、弾性変形可能な材料(例えば樹脂やゴム等)によって形成されており、環状をなしている。本実施形態では、排水口102が閉状態であるときに、前記操作部への操作に伴い支持軸61が往動(上動)すると、パッキン部74が排水口部材2から離間した状態となる。そして、前記ロック機構によって支持軸61及び栓蓋7が往動(上動)した状態で維持されることにより、排水口102が開状態で維持される。
【0051】
一方、排水口102が開状態であるときに、前記操作部への操作に伴い前記ロック機構によるロックが解除されると、戻りばね63から加わる引込力などにより支持軸61が復動(下動)する。そして、支持軸61の復動(下動)に伴い栓蓋7が復動(下動)し、パッキン部74の外周部分全域が排水口部材2と接触することで、排水口102が閉状態とされる。
【0052】
尚、排水口102を閉状態としたときには、排水口部材2に対するパッキン部74の接触に伴い、支持軸61は最大限復動したときの位置よりも手前の位置に配置される。これにより、戻りばね63から栓蓋7に対し引込力が伝わる状態が維持され、良好な止水性を得ることが可能となっている。
【0053】
次いで、アタッチメント部材4についてより詳しく説明する。アタッチメント部材4は、上述した保持部43等に加えて、図3に示すように、支持突起44を備えている。
【0054】
支持突起44は、保持部43の下方側内面から内側(保持部43の中心軸CL側)に向けて突出しており、保持部43に挿通された支持軸機構6をその下方から支持するためのものである。支持突起44は、上方を向く脱落防止面44aと、斜め下方を向く挿通補助面44bとを備えている。
【0055】
脱落防止面44aは、保持部43に挿通された支持軸機構6の下端面と接触する面である。脱落防止面44aは、保持部43の中心軸CLと直交する方向に延びる形状をなしているため、支持軸機構6に対し下向きの力が加わった場合であっても、保持部43の下部開口が拡大するような保持部43の弾性変形が生じないようになっている。そのため、保持部43の下部開口から支持軸機構6が抜けることを効果的に防止可能である。
【0056】
挿通補助面44bは、上方に向けて徐々に保持部43の中心軸CL側に接近する傾斜面状をなしており、保持部43内へと支持軸機構6を挿通する際に、その挿通を容易にするためのものである。より具体的には、保持部43内に支持軸機構6を挿通すべく、支持軸機構6の上側部分を挿通補助面44bに接触させつつ保持部43の内部へと当該支持軸機構6を押し込んだ際に、挿通補助面44bは、保持部43の下部開口を拡大させるための力をアタッチメント部材4に特段加えずとも、支持軸機構6に加わる押し込み力を利用して保持部43の下部開口を拡大させることを可能とし、その結果、保持部43内への支持軸機構6の挿通を容易にする。
【0057】
尚、保持部43の上側内面には、内向きに突出する上側突部(不図示)が形成されており、保持部43に挿通された支持軸機構6(特にケース部62)は、当該上側突部と支持突起44とによって挟まれた状態で保持されている。
【0058】
さらに、保持部43は、支持突起44が内周に形成された部位から下方に向けて突出し、保持部43の下部開口を形成する湾曲規制部432を備えている。湾曲規制部432は、レリースワイヤ5の過度の湾曲を規制するためのものであり、ケース部62の外径よりも大きな内径を有する円筒形状(この「円筒形状」とは、スリット431によって途切れているものの全体として円筒形状であることを意味する)をなしている。
【0059】
そして、レリースワイヤ5の過度の湾曲を規制するために、湾曲規制部432は次のように構成されている。すなわち、保持部43の中心軸CLを含む断面(図3の断面。但し、本実施形態ではスリット431を避けた位置を通る断面)において、湾曲開始部Sから、インナーワイヤ51より離間する方向であって中心軸CLと直交する方向にR(許容曲げ半径)だけ離れた点を中心とした、湾曲開始部Sを通る仮想円VCをとったとき、湾曲規制部432の少なくとも一部(外面を除く部位)が仮想円VCと重なる又は仮想円VCの外に位置するように構成されている。特に本実施形態では、前記断面において、湾曲規制部432の少なくとも下端又はその近傍部分が仮想円VCと重なる又は仮想円VCの外に位置するように構成されている。
【0060】
また、本実施形態では、湾曲規制部432の内周に支持軸機構6(ケース部62)を配置した状態で保持部43内に向けて支持軸機構6を押し込むことにより、保持部43内に支持軸機構6を設置することが可能とされている。
【0061】
以上詳述したように、本実施形態によれば、保持部43の中心軸CLを含む断面において、湾曲規制部432の少なくとも一部が仮想円VCと重なる又は仮想円VCの外に位置するように構成されている。従って、レリースワイヤ5のうちケース部62の外に位置しチューブ出口622bの近傍に位置する部位(つまりレリースワイヤ5のうちケース部62の外に出てすぐの部位)を湾曲させたときに、湾曲規制部432にレリースワイヤ5が接触することで、レリースワイヤ5が許容曲げ半径(R)未満の曲げ半径で湾曲することをより確実に防止できる。これにより、湾曲に伴うレリースワイヤ5の異常(例えば、レリースワイヤ5の損傷や、インナーワイヤ51における移動抵抗の増大など)をより確実に防止することができる。また、排水栓装置1の設置やメンテナンス時などにおいては、特段意識することなく、レリースワイヤ5の過度の湾曲をより確実に防止可能となるため、装置の設置等に係る作業性の向上を図ることもできる。
【0062】
さらに、比較的単純な構造の湾曲規制部432によってレリースワイヤ5の過度の湾曲を防ぐことができるため、装置の製造などに係るコストの増大抑制を図ることが可能となる。
【0063】
また、湾曲開始部Sは、ケース部62の下端よりも上方に位置する(本実施形態ではチューブ出口622b内に位置する)ように構成されている。これにより、前記断面において、湾曲規制部432の少なくとも一部が仮想円VCと重なる又は仮想円VCの外に位置する構成としながら、湾曲規制部432のサイズ(例えば湾曲規制部432の上下方向の長さ等)をより小さなものとすることができる。その結果、装置の取り扱いに係る利便性の向上や材料コストの低減などを図ることができる。
【0064】
加えて、本実施形態では、保持部43の下部開口を通して保持部43内に支持軸機構6を配置(挿通)する際において、湾曲規制部432を支持軸機構6のガイドとして利用することができる。従って、保持部43内への支持軸機構6の配置(挿通)を容易に行うことができ、装置の設置などに係る作業性をより高めることができる。
【0065】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0066】
(a)上記実施形態では記載していないが、レリースワイヤ5を湾曲させて、保持部43(湾曲規制部432)におけるスリット431を形成する部位へと当該レリースワイヤ5を接触させた状態において、保持部43の中心軸CL及びレリースワイヤ5の中心軸を含む断面を取ったとき、スリット431内に位置するアウターチューブ52の外周面が仮想円VCと接触しないように湾曲規制部432の長さやスリット431の幅などを設定することが好ましい。このように構成することで、スリット431側へとレリースワイヤ5を湾曲させた場合であっても、レリースワイヤ5が許容曲げ半径(R)未満の曲げ半径で湾曲することをより確実に防止できる。従って、湾曲に伴うレリースワイヤ5の異常をより一層確実に防止することが可能となる。
【0067】
(b)上記実施形態において、湾曲開始部Sは、ケース部62の下端よりも上方に位置するように構成されているが、例えば、閉塞部622におけるチューブ出口622bを形成する部位の全域がアウターチューブ52の外径と同一の内径を有するように構成することで、ケース部62の下端と同じ高さ位置に湾曲開始部Sが位置するようにしてもよい。
【0068】
(c)上記実施形態では、排水口部材2に対し栓蓋7(パッキン部74)が接触することにより排水口102が閉状態となるように構成されているが、排水口部材2以外の部位(例えば、底面部101)に栓蓋7(パッキン部74)が接触することにより排水口102が閉状態となるように構成してもよい。
【0069】
(d)上記実施形態では、槽体として浴槽100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は浴槽に限定されるものではない。従って、例えば、洗面ボウルやキッチンの流し台などの浴槽以外の槽体に対し本発明の技術思想を適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…排水栓装置、4…アタッチメント部材、5…レリースワイヤ、6…支持軸機構、7…栓蓋、43…保持部、44…支持突起、51…インナーワイヤ、52…アウターチューブ、61…支持軸、62…ケース部、432…湾曲規制部、622b…チューブ出口、S…湾曲開始部、VC…仮想円。
図1
図2
図3