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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083903
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】ホルダ及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/12 20060101AFI20230609BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20230609BHJP
   B23B 3/30 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B23B29/12 Z
B23B27/14 C
B23B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197890
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
【テーマコード(参考)】
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C045BA06
3C046BB00
3C046MM01
3C046MM07
(57)【要約】
【課題】異なる工具によって共用可能なホルダ及び工作機械を提供すること。
【解決手段】ホルダは、工具を保持するホルダ本体と、ホルダ本体に設けられた複数の候補穴と、候補穴のうち、工具がホルダ本体に保持される際にホルダ本体に対する工具の位置を決めるピンを支持する位置決め穴に設定された候補穴を位置決め穴として機能させる位置決め穴化機構と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持するホルダ本体と、
前記ホルダ本体に設けられた複数の候補穴と、
前記候補穴のうち、前記工具が前記ホルダ本体に保持される際に前記ホルダ本体に対する前記工具の位置を決めるピンを支持する位置決め穴に設定された前記候補穴を前記位置決め穴として機能させる位置決め穴化機構と、
を備えるホルダ。
【請求項2】
前記位置決め穴化機構は、前記位置決め穴に組み付けられて前記ピンを支持するピン支持部材を有する、請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
前記位置決め穴化機構は、
前記候補穴のうち、前記ピンを支持しない非位置決め穴に設定された前記候補穴を前記非位置決め穴として機能させるように組み付けられる穴埋め部材を備える、請求項2に記載のホルダ。
【請求項4】
前記ピン支持部材は、前記位置決め穴に対して螺着により組み付けられる、請求項2又は3に記載のホルダ。
【請求項5】
前記穴埋め部材は、前記非位置決め穴に対して螺着により組み付けられる、請求項3に記載のホルダ。
【請求項6】
前記ピンは、前記工具に固定されており、
前記ピン支持部材は、前記ピンを挿通して支持する、請求項2-4の何れか一項に記載のホルダ。
【請求項7】
前記ピンは、前記ピン支持部材に支持され、且つ、前記工具に設けられた挿通穴を挿通するものであり、
前記ピン支持部材は、前記ピンを支持した状態で前記位置決め穴に組み付けられる、請求項2-4の何れか一項に記載のホルダ。
【請求項8】
工具を保持するホルダ本体と、
前記ホルダ本体に設けられた複数の候補穴と、
前記候補穴のうち、前記工具が前記ホルダ本体に保持される際に前記ホルダ本体に対する前記工具の位置を決めるピンを支持する位置決め穴とは異なり、前記ピンを支持しない非位置決め穴に設定された前記候補穴を前記非位置決め穴として機能させる非位置決め穴化機構と、
を備えるホルダ。
【請求項9】
前記非位置決め穴化機構は、前記非位置決め穴に組み付けられる穴埋め部材を備える、請求項8に記載のホルダ。
【請求項10】
前記非位置決め穴化機構は、前記位置決め穴に組み付けられて、前記ピンを支持するピン支持部材を有する、請求項8又は9に記載のホルダ。
【請求項11】
前記ピンは、前記工具に固定されており、
前記位置決め穴は、前記ピンを挿通して支持する、請求項8-10の何れか一項に記載のホルダ。
【請求項12】
前記穴埋め部材は、前記非位置決め穴に対して螺着により組み付けられる、請求項9に記載のホルダ。
【請求項13】
前記ピン支持部材は、前記位置決め穴に対して螺着により組み付けられる、請求項10に記載のホルダ。
【請求項14】
前記候補穴は、同心円の周上にて周方向に沿って配置されており、
前記ピンが前記候補穴のうちの前記位置決め穴に支持されることにより、前記ホルダ本体に対して前記工具の軸線回りにおける位相が決定される、請求項1-12の何れか一項に記載のホルダ。
【請求項15】
請求項1-14の何れか一項に記載の前記ホルダを備え、
前記ホルダに保持された前記工具によってワークに機械加工を施す工作機械。
【請求項16】
互いに平行に配置されて、前記ワークが装着される二本の主軸と、
二本の前記主軸の各々に対して軸線が平行となるように配置されて、前記ホルダを介して前記工具を支持する工具台とを備える、請求項15に記載の工作機械。
【請求項17】
前記工具台は、タレットを有し、
前記主軸の回転軸線と、前記タレットの回転軸線とが互いに平行に配置される、請求項16に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ホルダ及び工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示された工具装着装置が知られている。この従来の工具装着装置は、工具ホルダの一端面に幅の狭い第一のキー溝と第一のキー溝よりも幅の広い第二のキー溝とが設けられ、スピンドル端面に第一のキー溝に進入する第一の固定キーと第二のキー溝に進入する第二の固定キーを配置するようになっている。これにより、キー溝と固定キーとを組み合わせて、工具ホルダ即ち工具の位相を決定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭48-88562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の工具装着装置では、工具ホルダに保持される工具の位相に合わせて、予め固定されたキー溝及び固定キーが設けられる。これにより、個々の工具の位相を精度良く決定して保持できるものの、工具ホルダを複数の工具によって共用することができず、工具に合わせて専用の工具ホルダを作製して用いる必要がある。このため、従来の工具装着装置では、作製すべき工具ホルダの数が増加し、その結果、作製やメンテナンスに要するコストが増大する虞があると共に、増加した個々の工具ホルダを管理する必要があり煩雑である。
【0005】
本明細書は、異なる工具によって共用可能なホルダ及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、工具を保持するホルダ本体と、ホルダ本体に設けられた複数の候補穴と、候補穴のうち、工具がホルダ本体に保持される際にホルダ本体に対する工具の位置を決めるピンを支持する位置決め穴に設定された候補穴を位置決め穴として機能させる位置決め穴化機構と、を備えるホルダを開示する。
【0007】
これによれば、ホルダ本体に設けられた複数の候補穴のうち、候補穴を位置決め穴として機能させる位置決め穴化機構を用いることにより、ホルダのホルダ本体は、異なる工具を保持することができる。即ち、位置決め穴化機構を候補穴から設定した位置決め穴に用いることにより、異なる工具においてホルダを共用することができる。従って、作製すべきホルダの数を低減することが可能となり、その結果、作製やメンテナンスに要するコストを低減することができ、更には、ホルダの標準化を実現して個々のホルダを容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械の全体を示す概略的な斜視図である。
図2】工作機械の構成を説明するための図である。
図3】ホルダの構成を説明するための一部断面図である。
図4】ピン支持部材の構成を説明するための一部断面図である。
図5】穴埋め部材の構成を説明するための図である。
図6】左右対称に形成された右側の工具の構成を説明するための図である。
図7】左右対称に形成された左側の工具の構成を説明するための図である。
図8】ホルダに対して、位置決め穴にピン支持部材が螺着され、非位置決め穴に穴埋め部材が螺着された状態を説明するための図である。
図9図8に示したホルダに図6に示した工具を取り付ける場合を説明するための一部断面図である。
図10】ホルダに対して、位置決め穴にピン支持部材が螺着され、非位置決め穴に穴埋め部材が螺着された状態を説明するための図である。
図11図10に示したホルダに図7に示した工具を取り付ける場合を説明するための一部断面図である。
図12】第一変形例に係るピン支持部材を説明するための図である。
図13図12のピン支持部材が螺着されたホルダに工具を取り付ける場合を説明するための一部断面図である。
図14】第二変形例に係るホルダを説明するための図である。
図15】第三変形例に係るホルダを説明するための図である。
図16】第四変形例に係るホルダを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ホルダ及び工作機械について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、正面二軸型の旋盤である工作機械において、ホルダを介して工具が保持される場合を例示して説明する。
【0010】
1.工作機械10
正面二軸型の旋盤である工作機械10は、図1及び図2に示すように、ベッド20と、左右一対の主軸台30と、左右一対の工具台40と、左右一対のスライド部50とを備えている。工作機械10は、互いに左右対称な二つの旋盤が連結されて形成されている。
【0011】
ベッド20は、ベッド本体21と、左右一対の主軸台取付部22と、左右一対のスライド取付部23と、前後一対の連結部材24とを備えている。ベッド本体21は、左右一対のベッド分割体21R,21Lを備えている。即ち、ベッド本体21は、左右に分割されており、前後一対の連結部材24(図1及び図2において前側のみを図示)によって互いに連結されている。
【0012】
左右一対の主軸台取付部22は、各々、ベッド分割体21R,21Lの上面に配置されている。即ち、右側の主軸台取付部22と、左側の主軸台取付部22とは、左右対称となるように配置されている。
【0013】
左右一対のスライド取付部23は、左右一対の主軸台取付部22の左右方向にて外側に配置されている。又、後述するように、スライド部50の上側に工具台40が取り付けられるため、左右一対のスライド取付部23は、左右一対の主軸台取付部22の下側に配置されている。右側のスライド取付部23は、主軸台30と工具台40とが並ぶ方向に対して、右側の主軸台30側に傾斜している。左側のスライド取付部23は、右側のスライド取付部23と同様の構成を有している。そして、右側のスライド取付部23と、左側のスライド取付部23とは、左右対称となるように配置されている。
【0014】
左右一対の主軸台30は、各々の回転軸線A1が互いに平行となるように主軸台取付部22の上側に配置されている。右側の主軸台30は、主軸31と、主軸31を回転駆動する主軸モータ32とを備えている。主軸31の先端部には、図示を省略するチャックにより、機械加工の施されるワークWが装着されるようになっている。左側の主軸台30は、右側の主軸台30と同様の構成を有している。そして、右側の主軸台30と、左側の主軸台30とは、左右対称となるように配置されている。
【0015】
左右一対の工具台40は、各々の回転軸線A2が主軸31の回転軸線A1と平行になるように、後述する左右一対のスライド部50の上側に配置されている。これにより、工具台40は、前後左右方向に移動可能になっている。右側の工具台40は、工具台本体41と、タレット42とを備えている。左側の工具台40は、右側の工具台40と同様の構成を有している。そして、右側の工具台40と、左側の工具台40とは、左右対称となるように配置されている。
【0016】
工具台本体41は、スライド部50の後述する第二スライド53の上面に配置されている。タレット42は、各々の主軸31の回転軸線A1に対して、回転軸線A2が平行となるように、工具台本体41の前面に配置されている。タレット42は、工具台本体41により、所定の角度ずつ回転可能である。タレット42は、後述するホルダ70を介して複数の工具80が取り付けられるようになっている。
【0017】
左右一対のスライド部50は、各々、スライド取付部23の上側に配置されている。右側のスライド部50は、第一ガイド51と、共用スライド52と、第二スライド53とを備えている。左側のスライド部50は、右側のスライド部50と同様の構成を有している。そして、右側のスライド部50と、左側のスライド部50とは、左右対称となるように配置されている。
【0018】
第一ガイド51は、スライド取付部23に配置されている。第一ガイド51は、前後方向に延在している。共用スライド52は、第一スライド521と、第二ガイド522とを備えている。第一スライド521は、第一ガイド51に沿って前後方向にスライド可能である。第二ガイド522は、第一スライド521の上側に配置されている。第二ガイド522は、左右方向に延在している。第二スライド53は、第二ガイド522に沿って左右方向にスライド可能である。
【0019】
2.ホルダ70
ホルダ70は、工作機械10の左右対称に配置されたタレット42に取り付けられ、左右対称の主軸台30に装着されたワークWに機械加工(切削加工)を施す工具80を保持するものである。ここで、工具80は、左右対称のタレット42への取り付けに対応して、後述するように左右対称に(鏡像関係となるように)形成される(図6及び図7を参照)。
【0020】
ホルダ70は、図3に示すように、工具80を保持するホルダ本体701を有する。ホルダ本体701は、例えば、円柱状に形成されている。又、ホルダ70は、ホルダ本体701の工具80と対向する端面に複数の候補穴702が設けられている。本実施形態においては、ホルダ本体701に2つの候補穴702が設けられる。更に、ホルダ70は、ホルダ本体701の側面側にタレット42に固定するための組み付け穴703が形成されている。
【0021】
ここで、候補穴702は、異なる工具80(後述する左右対称の工具80R,80L)について、ホルダ70(ホルダ本体701)に対する工具80の軸線A3回りの位相(回転位置)、或いは、主軸31(又は、主軸31に装着されるワークW)に対する位相(回転位置)を位置決めするために予め形成された穴である。尚、候補穴702は、作業者が異なる工具80(左右対称の工具80R,80L)をホルダ70に対して組み付ける際、正しい位置関係によって工具80をホルダ70に組み付けられるように促すためにも利用される。
【0022】
2-1.位置決め穴化機構及び非位置決め穴化機構
本実施形態において、ホルダ70のホルダ本体701に形成された2つの候補穴702には、それぞれ、位置決め穴化機構としてのピン支持部材71と、非位置決め穴化機構としての穴埋め部材72が組み付けられる。ピン支持部材71は、後述するように、工具80がホルダ本体701に保持される際にホルダ本体701に対する工具80の位置を決めるピン83を支持する候補穴702を、位置決め穴704(図8を参照)として機能させるものである。穴埋め部材72は、位置決め穴704とは異なり、ピン83を支持しない候補穴702を、非位置決め穴705(図8を参照)として機能させるものである。
【0023】
ピン支持部材71は、図4に示すように、ピン83を挿通して支持する挿通孔711を有する。又、ピン支持部材71は、ホルダ本体701の候補穴702即ち位置決め穴704に螺着されるねじ部712を有する。そして、ピン支持部材71は、ホルダ本体701に設けられた候補穴702のうちの位置決め穴704に螺着された状態で、工具80に固定されたピン83を挿通孔711に挿通して支持する。
【0024】
穴埋め部材72は、図5に示すように、ピン83の挿通を阻害する穴埋め部721を有する。又、穴埋め部材72は、ホルダ本体701の候補穴702即ち非位置決め穴705に螺着されるねじ部722を有する。そして、穴埋め部材72は、ホルダ本体701に設けられた候補穴702のうちの非位置決め穴705に螺着された状態で、非位置決め穴705(候補穴702)を塞ぐ。これにより、例えば、工具80のホルダ70(ホルダ本体701)への取り付け姿勢(向き)に誤りがあり、非位置決め穴705に向けてピン83が挿通しようとする状況において、穴埋め部材72はピン83の非位置決め穴705への挿通を阻害する。
【0025】
3.工具80
工具80は、図6及び図7に示すように、左右対称のタレット42の各々に対応し、左右対称となるように(即ち、互いに鏡像関係となるように)形成される。ここで、図6に示す工具80は、例えば、図2において右側のタレット42にホルダ70を介して取り付けられる右側の工具80Rである。又、図7に示す工具80は、例えば、図2において左側のタレット42にホルダ70を介して取り付けられる左側の工具80Lである。尚、以下の説明において、右側及び左側を区別しない場合には、単に、工具80と称呼する。
【0026】
工具80Rは、工具本体81に対して、図6において右側(ホルダ70を介して工作機械10に取り付けられた図2においては左側)に刃先82が形成され、図6において上側にピン83が紙面垂直方向に立設されている。又、工具80Rは、工具本体81に対して、ホルダ70に固定するためのボルト(図示省略)を挿通する組み付け用孔84が複数(図6においては、4つ)設けられている。
【0027】
工具80Lは、工具80Rと左右対称となるように(鏡像関係となるように)形成されており、工具本体81に対して、図7において左側(ホルダ70を介して工作機械10に取り付けられた図2においては右側)に刃先82が形成され、図7において下側にピン83が紙面垂直方向に立設されている。又、工具80Lは、工具本体81に対して、ホルダ70に固定するためのボルト(図示省略)を挿通する組み付け用孔84が複数(図7においては、4つ)設けられている。
【0028】
4.ホルダ70に対する工具80R,80Lの固定について
次に、左右対称に形成された工具80R,80Lに対して共用することができるホルダ70への固定について説明する。先ず、図2に示した右側のタレット42にホルダ70を介して工具80Rが固定される場合から説明する。
【0029】
工具80Rは、ホルダ70を介して工作機械10に取り付けられた場合に主軸31に対向する左側に刃先82が位置する、即ち、ホルダ70に対して位置決めされるように、工具本体81において上下方向にて上側にピン83が固定されている(図6を参照)。このため、右側のタレット42において、ホルダ70を介して工具80Rを適切に固定する場合、工具80Rの上側にてホルダ70に向けて突出するピン83を挿通させることによって位置決めする必要がある。
【0030】
このため、右側のタレット42に工具80Rを取り付ける場合、ホルダ70においては、図8に示すように、上下方向に沿ってホルダ本体701に2つ設けられた候補穴702のうち、上側の候補穴702が位置決め穴704に設定され、下側の候補穴702が非位置決め穴705に設定される。これにより、上側の位置決め穴704にピン支持部材71が螺着され、下側の非位置決め穴705に穴埋め部材72が螺着される。
【0031】
そして、図9に示すように、工具80Rをホルダ70に固定する場合、工具80Rの工具本体81に固定されたピン83がピン支持部材71の挿通孔711を挿通して支持されることにより、工具80Rの位置(位相又は回転位置)が適切に決定される。これにより、工具80Rは、ホルダ70を介して右側のタレット42に適切に固定される。ここで、工具80Rをホルダ70に固定する場合、下側の非位置決め穴705には穴埋め部材72が螺着されるため、仮に、工具80Rが180度回転された状態、即ち、ピン83が下側に位置する状態であっても、ピン83の挿通が穴埋め部材72によって阻害される。従って、位置(位相又は回転位置)を誤った状態で、工具80Rがホルダ70を介して右側のタレット42に取り付けられることが防止される。
【0032】
次に、図2において、左側のタレット42にホルダ70を介して工具80Lが固定される場合を説明する。
【0033】
工具80Lは、ホルダ70を介して工作機械10に取り付けられた場合に主軸31に対向する右側に刃先82が位置する、即ち、ホルダ70に対して位置決めされるように、工具本体81において上下方向にて下側にピン83が固定されている(図7を参照)。このため、左側のタレット42において、ホルダ70を介して工具80Lを適切に固定する場合、工具80Lの下側にてホルダ70に向けて突出するピン83を挿通させることによって位置決めする必要がある。
【0034】
このため、左側のタレット42に工具80Lを取り付ける場合、ホルダ70においては、図10に示すように、上下方向に沿ってホルダ本体701に2つ設けられた候補穴702のうち、上側の候補穴702が非位置決め穴705に設定され、下側の候補穴702が位置決め穴704に設定される。これにより、上側の非位置決め穴705に穴埋め部材72が螺着され、下側の位置決め穴704にピン支持部材71が螺着される。
【0035】
そして、図11に示すように、工具80Lをホルダ70に固定する場合、工具80Lの工具本体81に固定されたピン83がピン支持部材71の挿通孔711を挿通して支持されることにより、工具80Lの位置(位相又は回転位置)が適切に決定される。これにより、工具80Lは、ホルダ70を介して左側のタレット42に適切に固定される。ここで、工具80Lをホルダ70に固定する場合、上側の非位置決め穴705には穴埋め部材72が螺着されるため、仮に、工具80Lが180度回転された状態、即ち、ピン83が上側に位置する状態であっても、ピン83の挿通が穴埋め部材72によって阻害される。従って、位置(位相又は回転位置)が誤った状態で、工具80Lがホルダ70を介して左側のタレット42に取り付けられることが防止される。
【0036】
ここで、本実施形態においては、ホルダ70のホルダ本体701に2つの候補穴702が設けられ、工具80R,80Lに応じて、位置決め穴704及び非位置決め穴705が変更される。そして、位置決め穴704に位置決め穴化機構としてピン支持部材71が螺着され、非位置決め穴705に非位置決め穴化機構として穴埋め部材72が螺着される。このため、本実施形態においては、ピン支持部材71を位置決め穴704に螺着することによって非位置決め穴705が決定されるため、ピン支持部材71は非位置決め穴化機構としても機能する。又、本実施形態においては、穴埋め部材72を非位置決め穴705に螺着することによって位置決め穴704が決定されるため、穴埋め部材72は位置決め穴化機構としても機能する。
【0037】
以上の説明からも理解できるように、ホルダ70は、工具80(工具80R,80L)を保持するホルダ本体701と、ホルダ本体701に設けられた複数の候補穴702と、候補穴702のうち、工具80がホルダ本体701に保持される際にホルダ本体701に対する工具80の位置を決めるピン83を支持する位置決め穴704に設定された候補穴702を位置決め穴704として機能させる位置決め穴化機構としてのピン支持部材71と、を備える。
【0038】
これによれば、ホルダ本体701に設けられた複数の候補穴702のうち、候補穴702を位置決め穴704として機能させるピン支持部材71を用いることにより、ホルダ70のホルダ本体701は、異なる工具80(工具80R,80L)を保持することができる。即ち、位置決め穴化機構としてピン支持部材71を候補穴702から設定した位置決め穴704に用いることにより、異なる工具80(工具80R,80L)においてホルダ70を共用することができる。従って、作製すべきホルダ70の数を低減することが可能となり、その結果、作製やメンテナンスに要するコストを低減することができ、更には、ホルダ70の標準化を実現して個々のホルダ70を容易に管理することができる。
【0039】
5.変形例
5-1.第一変形例
上述した実施形態においては、工具80にピン83が固定されており、ホルダ70の位置決め穴704にピン83を挿通する挿通孔711を備えたピン支持部材71を螺着するようにした。これにより、工具80に固定されたピン83がピン支持部材71の挿通孔711を挿通して支持されることにより、工具80の位置(軸線A3回りの位相又は回転位置)を位置決めするようにした。
【0040】
ところで、位置決め穴704に螺着される位置決め穴化機構として、上述した挿通孔711を有するピン支持部材71に代えて、図12に示すように、立設されたピン731を有するピン支持部材73を用いることも可能である。ピン支持部材73は、工具80の位置(位相又は回転位置)を決定するピン731と、ホルダ本体701の候補穴702即ち位置決め穴704に螺着されるねじ部732を有する。
【0041】
そして、ピン支持部材73は、図13に示すように、ホルダ本体701に設けられた候補穴702のうちの位置決め穴704に螺着された状態で、工具80(工具80R)に設けられたピン挿通穴85にピン731を挿通する。これにより、上述した実施形態と同様に、工具80をホルダ70に取り付ける際の工具80の位置(位相又は回転位置)を位置決めすることができる。
【0042】
5-2.第二変形例
上述した実施形態及び上述した第一変形例においては、ホルダ70のホルダ本体701に対して、2つの候補穴702を設けるようにした。そして、ホルダ70に取り付けられる工具80(工具80R,80L)に応じて、各々の候補穴702を位置決め穴704又は非位置決め穴705に決定し、位置決め穴704にピン支持部材71を螺着すると共に非位置決め穴705に穴埋め部材72を螺着するようにした。
【0043】
ところで、ホルダ本体701に設けられる候補穴702の数については、2つに限られず、図14に示すように、3つ以上の候補穴702を設けることができ、各々の候補穴702を位置決め穴704又は非位置決め穴705として決定することができる。この場合、図14に示すように、候補穴702は、同心円の周上にて周方向に沿って配置される。そして、周方向に沿って配置された候補穴702のうちから選択的に位置決め穴704及び非位置決め穴705を決定することが可能である。これにより、上述した実施形態と同様の効果が得られることに加え、適宜選択した位置決め穴704にピン支持部材71を螺着することにより、ホルダ本体701に対する工具80(工具80R,80L)の軸線A3回りにおける位置(位相又は回転位置)を調整して位置決めすることができる。
【0044】
尚、第二変形例においては、図14に示すように、位置決め穴704以外の候補穴702である非位置決め穴705の全てに穴埋め部材72を螺着する。これにより、例えば、工具80(工具80R,80L)を誤って回転させた場合であっても、穴埋め部材72がピン83の挿通を阻止するため、ホルダ70に対する工具80(工具80R,80L)の誤取り付けを防止することができる。
【0045】
5-3.第三変形例
上述した第二変形例においては、工具80に固定されたピン83を挿通するために、位置決め穴704に挿通孔711を有するピン支持部材71を螺着するようにした。そして、工具80に固定されたピン83が誤って位置決め穴704以外の非位置決め穴705に挿通しないように、全ての非位置決め穴705に穴埋め部材72を螺着するようにした。
【0046】
ところで、上述した第一変形例の場合のように、工具80にピン挿通穴85が設けられ、ピン挿通穴85に挿通するピン731を有するピン支持部材73を用いる場合、図15に示すように、非位置決め穴705に穴埋め部材72を螺着することを省略することができる。即ち、第三変形例の場合、ホルダ70に対して、工具80に向けて突出するピン731を有する位置決め穴化機構であるピン支持部材73のみを螺着し、ピン731をピン挿通穴85に挿通することにより、工具80の位置(位相又は回転位置)を位置決めすることができる。
【0047】
又、位置決め穴化機構であるピン支持部材73を位置決め穴704に螺着することにより、位置決め穴704以外の候補穴702が非位置決め穴705として決定される。従って、第三変形例においては、ピン支持部材73を非位置決め穴化機構として用いることにより、位置決め穴704以外の候補穴702を非位置決め穴705として機能させることができる。
【0048】
この場合、工具80のホルダ70への取り付けに際して、ピン731がピン挿通穴85に挿通される限り、誤った位置(位相又は回転位置)に工具80が位置決めされる可能性は極めて小さい。従って、第三変形例においては、ピン731を有するピン支持部材73を用いることにより、上述した実施形態と同様の効果が得られると共に、穴埋め部材72を省略できる。これにより、例えば、穴埋め部材72を製造するコストを低減できると共に、穴埋め部材72を螺着するために要する作業時間を短縮することができる。尚、上述した実施形態と同様に、図15にて破線により示すように、任意又は全部の非位置決め穴705に穴埋め部材72を螺着しても良いことは言うまでもない。
【0049】
5-4.第四変形例
上述した実施形態及び上述した各変形例においては、位置決め穴化機構であるピン支持部材71又はピン支持部材73を用いて、異なる工具80(工具80R,80L)においてホルダ70が共有できるようにした。ところで、工具80にピン83が固定されている場合、図16に示すように、非位置決め穴化機構である穴埋め部材72を位置決め穴化機構として用いてホルダ70における位置決め穴704を決定することにより、異なる工具80(工具80R,80L)においてホルダ70を共有することが可能である。
【0050】
即ち、第四変形例においては、複数の候補穴702のうちから位置決め穴704を決定し、位置決め穴704に決定された候補穴702以外の候補穴702の全てに穴埋め部材72を螺着する。これにより、工具80に固定されたピン83は、穴埋め部材72によって塞がれていない候補穴702即ち位置決め穴704を挿通するのみになる。従って、第四変形例においては、位置決め穴化機構として穴埋め部材72を用いることにより、工具80の位置(位相又は回転位置)を位置決めすることができる。
【0051】
尚、ピン支持部材71を用いることなく工具80の位置(位相又は回転位置)を位置決めする場合、ピン83の外径の大きさが位置決め穴704(候補穴702)の内径よりも僅かに小さいことが好ましい。これにより、ピン83が位置決め穴704(候補穴702)を挿通した状態において、工具80の位置(位相又は回転位置)を精度良く位置決めすることが可能となる。尚、第四変形例においても、第二変形例と同様に、位置決め穴704にピン支持部材71を螺着しても良いことは言うまでもない。
【0052】
5-5.第五変形例
上述した実施形態及び上述した各変形例においては、工作機械10が二本の主軸31と、主軸31の各々の回転軸線A1に対して回転軸線A2が平行となるように配置されたタレット42(工具台40)とを備え、工作機械10にホルダ70を適用するようにした。しかし、工作機械の構成は、これに限らず、例えば、一本の主軸と、主軸の回転軸線に平行又は直角な回転軸線を有するタレット(工具台)を備えた工作機械にホルダ70を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…工作機械、20…ベッド、21…ベッド本体、21R,21L…ベッド分割体、22…主軸台取付部、23…スライド取付部、24…連結部材、30…主軸台、31…主軸、32…主軸モータ、40…工具台、41…工具台本体、42…タレット、50…スライド部、51…第一ガイド、52…共用スライド、521…第一スライド、522…第二ガイド、53…第二スライド、70…ホルダ、701…ホルダ本体、702…候補穴、703…組み付け穴、704…位置決め穴、705…非位置決め穴、71…ピン支持部材(位置決め穴化機構)、711…挿通孔、712…ねじ部、72…穴埋め部材(非位置決め穴化機構)、721…穴埋め部、722…ねじ部、73…ピン支持部材(位置決め穴化機構)、731…ピン、732…ねじ部、80(80R,80L)…工具、81…工具本体、82…刃先、83…ピン、84…組み付け用孔、W…ワーク、A1…(主軸の)回転軸線、A2…(タレットの)回転軸線、A3…(工具の)軸線
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