(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083932
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】作業装置、吊り下げ作業装置および壁面作業方法
(51)【国際特許分類】
B64C 39/02 20060101AFI20230609BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230609BHJP
【FI】
B64C39/02
B64C27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197946
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】517011065
【氏名又は名称】株式会社アイ・ロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100123526
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 壮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100125036
【弁理士】
【氏名又は名称】深川 英里
(72)【発明者】
【氏名】安藤 嘉康
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 泰
(57)【要約】
【課題】壁面に対して容易に対向させることができ、壁面に対する作業を適切に行うことができる作業装置、吊り下げ作業装置および壁面作業方法を提供すること。
【解決手段】吊り下げ体3から吊り下げられる支持本体部12と、前記支持本体部12に設けられ前記吊り下げ体3から前記支持本体部12が吊り下げられた状態で壁面B1に対して作業を行う作業部15と、前記支持本体部12に設けられ前記吊り下げ体3から前記支持本体部12が吊り下げられた状態で前記支持本体部12を推進させる推進部14と、前記支持本体部12の回転を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に応じて前記推進部14の駆動を制御して前記支持本体部12の姿勢を補正する制御部とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り下げ体から吊り下げられる支持本体部と、
前記支持本体部に設けられ前記吊り下げ体から前記支持本体部が吊り下げられた状態で壁面に対して作業を行う作業部と、
前記支持本体部に設けられ前記吊り下げ体から前記支持本体部が吊り下げられた状態で前記支持本体部を推進させる推進部と、
前記支持本体部の回転を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に応じて前記推進部の駆動を制御して前記支持本体部の姿勢を補正する制御部と
を備える作業装置。
【請求項2】
前記推進部は、前記支持本体部を推進させる回転体を備え、
前記制御部は、前記回転体を一方向のみに回転駆動して前記支持本体部の姿勢を補正する請求項1に記載の作業装置。
【請求項3】
前記回転体が前記支持本体部の幅方向の両端部に設けられており、
前記検出部は、前記支持本体部の回転の方向を検出し、
前記制御部は、前記検出部が検出する前記回転の方向に応じて前記両端部のいずれか一方の回転体を回転駆動して前記支持本体部の姿勢を補正する請求項2に記載の作業装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出部が検出する前記回転の量が大きいと前記推進部の駆動量を大きくし、前記回転の量が小さいと前記駆動量を小さくする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の作業装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検出部からの検出結果に応じて前記推進部を駆動しているとき、操作部から送信されたマニュアル操作指示を入力すると、前記マニュアル操作指示に基づいて前記推進部を駆動する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の作業装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の作業装置と、
前記吊り下げ体と
を備える吊り下げ作業装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の作業装置を前記壁面に対する対向位置に配する配置工程と、
前記配置工程により前記対向位置に配される前記作業装置を利用して前記壁面に対して作業を行う作業工程と、
前記配置工程により前記対向位置に配される前記作業装置を前記対向位置から退出させる退出工程と
を含む壁面作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置、吊り下げ作業装置および壁面作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に停止した状態で壁面に対して作業を行う作業装置が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
このような作業装置として、吊り下げ体などに吊り下げられた状態で壁面に対して作業を行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような作業装置では、吊り下げ体に吊り下げられた状態で、作業装置がヨー軸周りに回転してしまい、壁面に対する向きが変わってしまうという問題がある。
【0005】
以上に鑑みて、本発明は、壁面に対して容易に対向させることができ、壁面に対する作業を適切に行うことができる作業装置、吊り下げ作業装置および壁面作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、吊り下げ体から吊り下げられる支持本体部と、前記支持本体部に設けられ前記吊り下げ体から前記支持本体部が吊り下げられた状態で壁面に対して作業を行う作業部と、前記支持本体部に設けられ前記吊り下げ体から前記支持本体部が吊り下げられた状態で前記支持本体部を推進させる推進部と、前記支持本体部の回転を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に応じて前記推進部の駆動を制御して前記支持本体部の姿勢を補正する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本願の一観点によれば、壁面に対して容易に対向させることができ、壁面に対する作業を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態としての吊り下げ作業装置および作業装置を示す説明図である。
【
図4】吊り下げ作業装置の変形例を示す説明図である。
【
図5】吊り下げ作業装置の他の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態における作業装置、吊り下げ作業装置および壁面作業方法について説明する。
図1は、本発明の実施形態としての吊り下げ作業装置1および作業装置10を示す説明図である。
なお、符号Hは、構造物であるビルBの高さ方向を示すものであり、符号DはビルBの奥行方向、符号WはビルBの幅方向を示すものである。
吊り下げ作業装置1は、ビルBの壁面B1に対して塗装を行う装置である。
この吊り下げ作業装置1は、無人航空機(吊り下げ体)3と作業装置10とを備えている。
【0010】
無人航空機3は、UAV(Unmanned aerial vehicle)であって、例えば、ドローンなどである。
この無人航空機3は、航空機本体部31と羽根部32とを備えている。
航空機本体部31には不図示の送受信部、電動モータおよび電池が設けられている。
羽根部32は、航空機本体部31に取り付けられており、不図示の電動モータに連結されている。
このような構成のもと、無人航空機3は、操作者による遠隔指示操作のもと、送受信部が指示信号を受信して電動モータの駆動を制御することにより、空中を無人で飛行するようになっている。
【0011】
作業装置10は、無人航空機3に取り付けられる連結部11と、この連結部11を介して無人航空機3から吊り下げられる支持本体部12と、この支持本体部12に設けられるタイヤ部13とを備えている。また、作業装置10は、支持本体部12に設けられる推進部14と、吐出部(作業部)15とを備えている。
連結部11は、長尺部材からなり、無人航空機3と支持本体部12とを着脱可能に連結するものである。すなわち、連結部11の一端が無人航空機3に着脱可能に連結され、他端が支持本体部12に着脱可能に連結されるようになっている。なお、連結部11は、例えば、ワイヤ、紐または鎖などからなっている。
【0012】
支持本体部12は、ボックス状に形成されている。支持本体部12は、作業時に無人航空機3から吊り下げられた状態で壁面B1に対向する対向位置に配されるようになっている。すなわち、作業時に、支持本体部12の正面が壁面B1に対向して配されるようになっている。
支持本体部12の幅方向Wの両端部には、タイヤ部13が設けられている。
タイヤ部13は、4つ設けられており、支持本体部12の幅方向Wの一端部に2つ、他端部に2つ設けられている。すなわち、タイヤ部13は、支持本体部12の幅方向Wの一端部において、高さ方向Hの両端部にそれぞれ設けられ、支持本体部12の幅方向Wの他端部において、高さ方向Hの両端部にそれぞれ設けられている。これらタイヤ部13は、壁面B1に接触して支持本体部12を上下に走行させるだけでなく、壁面B1に接触したときの緩衝部として機能するものである。
【0013】
推進部14は、無人航空機3から支持本体部12が吊り下げられた状態で、支持本体部12を推進させるものである。すなわち、推進部14は、無人航空機3から吊り下げられた支持本体部12を空中においてその奥行方向に移動させるものである。
この推進部14は、プロペラ部41A,41B(回転体)と駆動部42とを備えている。
プロペラ部41A,41Bは、支持本体部12に2つ設けられている。すなわち、支持本体部12の幅方向Wの一端部において高さ方向Hの中央部にプロペラ部41Aが1つ設けられ、支持本体部12の幅方向Wの他端部において高さ方向Hの中央部にプロペラ部41Bが1つ設けられている。
駆動部42は、モータであって、プロペラ部41A,41Bを回転駆動するようになっている。この駆動部42は、入力する電圧値に応じて、プロペラ部41A,41Bの回転駆動量を変更するようになっている。すなわち、駆動部42は、入力する電圧値が大きいと、プロペラ部41A,41Bの回転駆動量を大きくしてプロペラ部41A,41Bを高速回転させ、入力する電圧値が小さいと、プロペラ部41A,41Bの回転駆動量を小さくしてプロペラ部41A,41Bを低速回転させるようになっている。
【0014】
また、支持本体部12の下方部には、吐出部15が設けられている。
吐出部15は、支持本体部12の下方面から下方に突出した位置に設けられている。さらに、吐出部15は、支持本体部12の幅方向Wの中央部に設けられている。
この吐出部15は、筒状に延びる吐出口51と、この吐出口51に連結された吐出本体部52と、ホース53とを備えている。
吐出口51は、塗装剤を吐出するものであり、支持本体部12の下方において支持本体部12の奥行方向に向けられている。
また、吐出本体部52は、ホース53に連結されており、このホース53から送られてくる塗装剤を取り込んで吐出口51を介して壁面B1に塗装剤を吐出するようになっている。
このような構成のもと、無人航空機3が空中を飛行すると、この無人航空機3から支持本体部12が吊り下げられるとともに、支持本体部12を介して吐出部15も吊り下げられた状態になり、この状態で吐出部15が壁面B1に対して空中で塗装作業を行うようになっている。
【0015】
図2は、作業装置10の機能を示すブロック図である。
作業装置10は、操作部16と、制御部21と、検出部22と、通信部23とを備えている。
操作部16は、例えば、外部機器との情報の送受信を行う各種通信デバイスなどを備えるリモコン装置であって、推進部14および吐出部15を遠隔操作するものである。すなわち、操作部16は、マニュアル操作指示および吐出指示などを送信する。
検出部22は、無人航空機3から吊り下げされた支持本体部12のヨー軸周りの回転を検出する。すなわち、検出部22は、支持本体部12のヨー軸周りの回転の方向と回転の量を検出する。この検出部22は、例えば3軸ジャイロを備えており、支持本体部12のヨー軸周りの角速度によって回転の方向と回転の量を検出する。すなわち、検出部22は、回転量の大小を角速度によって検出し、支持本体部12が上方から見て右回転する場合にプラスとし、左回転する場合にマイナスとして、回転量と回転方向を出力する。
【0016】
通信部23は、例えば、外部機器との情報の送受信を行う各種通信デバイスなどからなり、操作部16が送信するマニュアル操作指示および吐出駆動指示等を受信し制御部21に入力する。
制御部21は、例えば、プロセッサ、CPU等の演算手段によって実現され、各種のメモリ、ハードディスク等の記憶手段と協働して機能し、各種のプログラムを実行する。この制御部21は、制御本体部21Aと、駆動制御部21Bと、作業制御部21Cとを備えている。
【0017】
制御本体部21Aは、各種のプログラムを実行して、各種構成部及び各機能部間の制御及び装置全体の制御を実行する。
駆動制御部21Bは、検出部22の検出結果に応じて駆動部42の回転駆動を制御する。すなわち、駆動制御部21Bは、回転駆動量を大きくする回転駆動指示により、駆動部42を介してプロペラ部41A,41Bの回転駆動量を大きくし、回転駆動量を小さくする回転駆動指示により駆動部42を介してプロペラ部41A,41Bの回転駆動量を小さくする。また、駆動制御部21Bは、検出部22の出力値がプラスのときは、右回転と判定し、幅方向Wの一端部のプロペラ部41Aのみを選択して当該プロペラ部41Aを一方向にのみ回転させる。一方、駆動制御部21Bは、検出部22の出力値がマイナスのときは、左回転と判定し、幅方向Wの他端部のプロペラ部41Bのみを選択して当該プロペラ部41Bを一方向にのみ回転させる。
また、駆動制御部21Bは、操作部16が送信する回転駆動指示を入力すると、検出部22の検出結果に優先して当該回転駆動指示に基づいて駆動部42を回転駆動する。
作業制御部21Cは、操作部16が送信する吐出駆動指示を入力すると、吐出部15を駆動して、吐出口51から塗装剤を吐出する。
【0018】
次いで、吊り下げ作業装置1および作業装置10の動作、並びに壁面作業方法について説明する。
図3は、制御部21の処理を示すフローチャートである。
まず、無人航空機3と支持本体部12とを連結部11を介して連結する。そして、操作者が遠隔指示操作を行うと、無人航空機3が空中を飛行していく。このとき、支持本体部12および吐出部15は無人航空機3から吊り下げられた状態で空中を飛行していく。
そして、吊り下げ作業装置1をビルBに近づけた状態で、操作者が操作部16を操作して制御開始を指示する。すると、操作部16は、制御開始指示を送信する。
通信部23は、当該制御開始指示を受信する。制御本体部21Aは、通信部23からの出力を読み出し(ステップS1)、通信部23から制御開始指示が出力されたか否かを判定する(ステップS2)。
【0019】
制御本体部21Aは、制御開始指示が出力されていないと判定すると(ステップS2:No)、ステップS1に戻って処理を繰り返す。一方、制御本体部21Aは、制御開始指示が出力されたと判定すると(ステップS2:Yes)、姿勢補正制御を開始する。すなわち、制御本体部21Aは姿勢補正モードに入る。
そして、制御本体部21Aは、通信部23からマニュアル操作指示が出力されたか否かを判定する(ステップS3)。制御本体部21Aは、マニュアル操作指示が出力されたと判定すると(ステップS3:Yes)、駆動制御部21Bに当該マニュアル操作指示を出力する。駆動制御部21Bは、当該マニュアル操作指示に基づいて駆動部42を回転駆動する(ステップS4)。すなわち、駆動制御部21Bは、マニュアル操作指示が左回転させる指示であると判定すると、幅方向Wの一端部のプロペラ部41Aのみを一方向のみに回転させるように回転駆動する。そのため、支持本体部12が左回転していく。一方、駆動制御部21Bは、マニュアル操作指示が右回転させる指示であると判定すると、幅方向Wの他端部のプロペラ部41Bのみを一方向のみに回転させるように回転駆動する。そのため、支持本体部12が右回転していく。これにより、支持本体部12の姿勢(ヨー軸周りの角度)が、操作者の操作に基づいてマニュアル的に補正される。
【0020】
さらに、検出部22は、支持本体部12の回転を検出する(ステップS5)。すなわち、検出部22は、支持本体部12の角速度を検出し、右回転の場合にプラスの値を出力し、左回転の場合マイナスの値を出力する。
制御本体部21Aは、検出部22が出力した値を入力すると、駆動制御部21Bに出力する。駆動制御部21Bは、当該値を入力すると、支持本体部12の回転方向が右回転か左回転かを判定する(ステップS6)。すなわち、駆動制御部21Bは、検出部22からの出力がプラス値の場合に右回転と判定し、マイナス値の場合に左回転と判定する。そして、駆動制御部21Bは、右回転と判定すると、検出部22から出力された角速度の絶対値に基づいて電圧値を演算する(ステップS7)。すなわち、駆動制御部21Bは、角速度の絶対値に応じた電圧値を演算する。具体的には、駆動制御部21Bは、角速度の絶対値が大きいとそれに応じた大きな電圧値を演算し、角速度の絶対値が小さいとそれに応じた小さな電圧値を演算する。そして、駆動制御部21Bは、プロペラ部41Aのみを一方向のみに回転させるように回転駆動する(ステップS8)。すなわち、駆動制御部21Bは、演算した電圧値を駆動部42に出力しプロペラ部41Aのみを一方向のみに回転させる。これにより、支持本体部12が左回転し支持本体部12の姿勢が自動的に補正されていく。
【0021】
また、駆動制御部21Bは、ステップS6において左回転であると判定すると、ステップS7と同様に、角速度の絶対値に基づいて電圧値を演算する(ステップS9)。そして、駆動制御部21Bは、ステップS8と同様に、プロペラ部41Bのみを一方向のみに回転させるように回転駆動する(ステップS10)。これにより、支持本体部12が右回転し支持本体部12の姿勢が自動的に補正されていく。
さらに、制御本体部21Aは、通信部23からの出力を読み出し、通信部23から制御終了指示が出力されたか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、操作者が操作部16を操作して制御終了を指示すると、操作部16は、制御終了指示を送信する。すると、通信部23は当該制御終了指示を受信する。制御本体部21Aは、当該制御終了指示を受信した通信部23からの出力を読み出す。
そして、制御本体部21Aが、通信部23から制御終了指示が出力されていないと判定すると(ステップS11:No)、ステップS3に戻って処理を繰り返す。一方、制御本体部21Aは、通信部23から制御終了指示が出力されたと判定すると(ステップS11:Yes)、処理を終了する。すなわち、制御本体部21Aは姿勢補正モードを終了する。
【0022】
このような姿勢補正制御のもと、作業装置10を奥行方向Dに移動させ壁面B1に近づけていく。移動中に作業装置10がヨー軸周りに回転しても、姿勢補正制御によって支持本体部12の姿勢が補正され、作業装置10が壁面B1に対して対向した対向位置に配される(配置工程)。作業装置10が対向位置に配されると、無人航空機3を空中に浮かせた状態で移動を停止させる。これにより、支持本体部12および吐出部15は、無人航空機3から吊り下げられたまま壁面B1に対して正対し空中で停止した状態になる。そのため、吐出口51が壁面B1に向けられる。
【0023】
この状態で、吊り下げ作業装置1が壁面B1に対して塗装作業を行う(作業工程)。すなわち、操作者が操作部16を介して塗装指示を入力すると、操作部16が吐出駆動指示を送信する。作業制御部21Cは、通信部23および制御本体部21Aを介して当該吐出駆動指示を入力すると、吐出部15に吐出駆動指示を出力する。すると、吐出本体部52が吐出口51を介して塗装剤を壁面B1に吐出する。これにより、壁面B1に塗装剤が付着する。さらに、操作者の遠隔指示操作のもと、無人航空機3がビルBの高さ方向Hおよび幅方向Wに飛行して、吐出部15が空中で塗装剤を吐出することにより、壁面B1の所定の領域に塗装剤が付着していく。そして、壁面B1の塗装が終了すると、操作者の操作部16の操作により、作業制御部21Cが吐出部15の吐出駆動を停止する。これにより、吐出部15からの塗装剤の吐出が終了する。
【0024】
塗装作業が終了すると、吊り下げ作業装置1を対向位置から退出させる(退出工程)。すなわち、操作者の遠隔指示操作のもと、吊り下げ作業装置1が対向位置から退出してビルBを離れ、所定の場所に着陸する。
これにより、壁面B1の塗装が行われる。
【0025】
以上より、本実施形態における作業装置10によれば、支持本体部12と吐出部15と推進部14と検出部22と制御部21とを備え、検出部22の検出結果に応じて支持本体部12の姿勢を補正することから、無人航空機3から吊り下げられた支持本体部12を所定の姿勢になるようにコントロールすることができる。そのため、壁面B1に対して容易に対向させることができ、壁面B1に対する作業を適切に行うことができる。
また、制御部21がプロペラ部41A,41Bを一方向のみに回転駆動することから、制御を簡易にすることができ、信頼性を向上させることができる。
また、制御部21が、支持本体部12の回転の方向に応じて、いずれか一方のプロペラ部41A,41Bのみを回転駆動することから、制御を簡易にすることができ、信頼性を向上させることができる。
【0026】
また、制御部21が、支持本体部12の回転の量が大きいと推進部14の駆動量を大きくし、当該回転の量が小さいと推進部14の駆動量を小さくすることから、支持本体部12の回転の量に応じて適切に姿勢を補正することができる。
また、制御部21が、姿勢補正制御中にマニュアル操作指示を入力すると、マニュアル操作指示を優先して当該マニュアル操作指示に基づいて推進部14を駆動することから、姿勢補正制御中の自由度を上げることができ状況に応じて柔軟に対応することができる。
また、本実施形態における吊り下げ作業装置1によれば、作業装置10と同様の効果を奏することができるだけでなく、無人航空機3から作業装置10を吊り下げた状態で、支持本体部12の姿勢をコントロールすることができ、壁面B1に対してさらに適切に作業を行うことができる。
また、本実施形態における壁面作業方法によれば、配置工程と作業工程と退出工程とを含むことから、無人航空機3から吊り下げられた支持本体部12を所定の姿勢になるようにコントロールすることができる。そのため、壁面B1に対して容易に対向させることができ、壁面B1に対する作業を適切に行うことができる。
【0027】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
図4は、吊り下げ作業装置の変形例を示す説明図である。
吊り下げ作業装置1Aは、吊り下げ体としてのウィンチ部3Aと、作業装置10とを備えている。ウィンチ部3Aは、ビルBの屋上に設けられている。このウィンチ部3Aは、連結部11を巻回する巻回部31Aを備えている。そして、巻回部31Aを正回転または逆回転させることにより、連結部11を巻き出したり巻き取ったりして、作業装置10を高さ方向Hに移動させる。また、ウィンチ部3Aをヨー軸周りに回転させることにより作業装置10を幅方向Wに移動させる。そして、上記と同様にして、壁面B1に塗装作業を行う。なお、巻回部31Aの回転は、駆動部を介して自動で行ってもよいし、ハンドル等を介して手動で行ってもよい。
【0028】
また、ウィンチ部3Aの設置数は、複数であってもよい。例えば、
図5に示すように、ウィンチ部3Aが2つ設置されている。これら2つのウィンチ部3Aから連結部11が延ばされて支持本体部12に連結されている。そして、これらウィンチ部3Aの巻回部31Aをそれぞれ巻き出したり巻き取ったり制御することにより、作業装置10を高さ方向Hおよび幅方向Wに移動させてもよい。
【0029】
また、推進部14が回転体としてプロペラ部41A,41Bを備えるとしているか、これに限ることはなく、支持本体部12を推進させるものであればその構成は適宜変更可能である。
また、制御部21が、プロペラ部41A,41Bを一方向のみに回転駆動するとしているが、これに限ることはなく、回転方向を変えて両方向に回転駆動するようにしてもよい。なお、一方向とは、回転方向を変化させずに同一方向のみを意味するものであり、例えばプロペラ部41Aを右回転のみの一方向とし、プロペラ部41Bを左回転のみの一方向としてもよいし、プロペラ部41A,41Bを右回転のみの一方向としてもよい。
【0030】
また、制御部21が、支持本体部12の回転の方向に応じて、プロペラ部41A,41Bのいずれか一方のみを回転駆動するとしているか、これに限ることはなく、プロペラ部41A,41Bのいずれも回転駆動してもよい。
また、制御部21が、支持本体部12の回転の量が大きいと推進部14の駆動量を大きくし、当該回転の量が小さいと推進部14の駆動量を小さくするとしているが、これに限ることはなく、それら駆動量は適宜変更可能である。例えば、駆動量を常に一定としてもよいし、回転の量に所定のはばを持たせて段階的に駆動量を決定してもよい。
また、制御部21が、姿勢補正制御中にマニュアル操作指示を入力すると、マニュアル操作指示を優先して当該マニュアル操作指示に基づいて推進部14を駆動するとしているが、これに限ることはなく、検出部22からの検出結果による姿勢補正制御を優先するようにしてもよい。また、制御部21がマニュアル操作指示を受け付けないようにしてもよい。
【0031】
また、制御部21が、ステップS2において、制御開始指示が出力されたと判定した場合に、マニュアル操作指示が出力されたかを判定しているが、これに限ることはなく、マニュアル操作指示の出力の判定タイミングは適宜変更可能である。例えば、制御部21は、姿勢補正モード中に、通信部23の出力を常に読み出しマニュアル操作指示が出力されたか否かを常に監視して、マニュアル操作指示が出力されたと判定すると、常にマニュアル操作指示を優先して駆動部42を制御するようにしてもよい。もちろん、制御部21は、姿勢補正モード中でなくても、マニュアル操作指示により駆動部42を制御するようにしてもよい。
【0032】
また、吐出部15が吐出物として塗装剤を吐出し、壁面B1に対して塗装作業を行うとしているが、これに限ることはなく、作業部による作業の内容は適宜変更可能である。具体的には、作業部が行う作業とは、点検作業、補修作業、解体作業、新築作業または情報提示作業などを含むものである。これらのうち、点検作業、補修作業、解体作業または新築作業をさらに具体的に示すと、作業対象のヒビやサビなどの検査作業、作業対象の厚さなどの測定作業、洗浄作業、塗装作業、切断作業、掘削作業または破壊作業などを含む。補修作業としては、コンクリートの補修剤をヒビ割れに注入するコンクリート補修などを含む。洗浄作業であれば、吐出物としては洗浄剤とすることができる。また、検査作業や測定作業などであれば、測定対象を認識するためのカメラ部を設けることができる。また、切断作業、掘削作業または破壊作業などであれば、ドリル、チェーンソーまたはワイヤーソーなどを設けることができる。また、解体作業として、作業部がワイヤーソーなどの切断部を備え、この切断部が、土砂崩れを防止するために土砂を保持しているワイヤーを切断することにより、土砂の解体作業を行うことができる。また、情報提示作業とは、作業対象に対して、文字、図形、記号または絵柄などを描いたり映したりすることを含む。
【0033】
また、作業の対象をビルBの壁面B1としているが、これに限ることはなく、作業の対象は適宜変更可能である。具体的には、家屋、橋、ダム、アトラクションなどの人工構造物や、土砂、山、氷、植物などの自然物などであってもよい。
また、壁面B1が鉛直方向に延ばされているが、これに限ることはなく、作業の対象が傾斜していたり、水平方向に延ばされていてもよい。
また、無人航空機3をドローンであるとしているが、これに限ることはなく、適宜変更可能である。例えば、ドローンの他にも、RC(Radio Control)機や他の無人航空機であってもよい。
また、吊り下げ体として無人航空機3を例示しているが、これに限ることはなく、適宜変更可能である。例えば、吊り下げ体としては、有人航空機、ウィンチまたはバルーン等であってもよい。さらに、例えば人が作業装置10を持って吊り下げるようにすることも可能であり、この場合、吊り下げ体としては人の身体であってもよい。
また、本実施形態においては、空中での作業を例示しているが、これに限ることはなく、適宜変更可能である。例えば、作業装置10および吊り下げ作業装置1は、空中や水中などの流体中での作業を行うことができる。具体的には、空中の他にも、海や川の中などでも作業を行うことができる。
【0034】
また、支持本体部12がボックス状に形成されているとしたが、これに限ることはなく、その形状は適宜変更可能である。
また、吐出部15が、支持本体部12の下方から突出した位置に設けられるとしたが、これに限ることはなく、設置位置は適宜変更可能である。例えば、吐出部15が、支持本体部12の上方に設けられていてもよいし、高さ方向Hの途中位置に設けられていてもよい。
また、検出部22が3軸ジャイロを備えるとしているが、これに限ることはなく、支持本体部12の回転を検出するものであれば、適宜変更可能である。例えば、1軸ジャイロや2軸ジャイロであってもよいし、その他の機械式やパルス計測式などの回転検出センサなどであってもよい。
【0035】
既述の実施形態に関し、さらに以下の付記を示す。
(付記1)
吊り下げ体から吊り下げられる支持本体部と、
前記支持本体部に設けられ前記吊り下げ体から前記支持本体部が吊り下げられた状態で壁面に対して作業を行う作業部と、
前記支持本体部に設けられ前記吊り下げ体から前記支持本体部が吊り下げられた状態で前記支持本体部を推進させる推進部と、
前記支持本体部の回転を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に応じて前記推進部の駆動を制御して前記支持本体部の姿勢を補正する制御部と
を備える作業装置。
【0036】
(付記2)
前記推進部は、前記支持本体部を推進させる回転体を備え、
前記制御部は、前記回転体を一方向のみに回転駆動して前記支持本体部の姿勢を補正する付記1に記載の作業装置。
【0037】
(付記3)
前記回転体が前記支持本体部の幅方向の両端部に設けられており、
前記検出部は、前記支持本体部の回転の方向を検出し、
前記制御部は、前記検出部が検出する前記回転の方向に応じて前記両端部のいずれか一方の回転体を回転駆動して前記支持本体部の姿勢を補正する付記2に記載の作業装置。
【0038】
(付記4)
前記制御部は、前記検出部が検出する前記回転の量が大きいと前記推進部の駆動量を大きくし、前記回転の量が小さいと前記駆動量を小さくする付記1から付記3のいずれか一項に記載の作業装置。
【0039】
(付記5)
前記制御部は、前記検出部からの検出結果に応じて前記推進部を駆動しているとき、操作部から送信されたマニュアル操作指示を入力すると、前記マニュアル操作指示に基づいて前記推進部を駆動する付記1から付記4のいずれか一項に記載の作業装置。
【0040】
(付記6)
付記1から付記5のいずれか一項に記載の作業装置と、
前記吊り下げ体と
を備える吊り下げ作業装置。
【0041】
(付記7)
付記1から付記5のいずれか一項に記載の作業装置を前記壁面に対する対向位置に配する配置工程と、
前記配置工程により前記対向位置に配される前記作業装置を利用して前記壁面に対して作業を行う作業工程と、
前記配置工程により前記対向位置に配される前記作業装置を前記対向位置から退出させる退出工程と
を含む壁面作業方法。
【符号の説明】
【0042】
1 吊り下げ作業装置
3 無人航空機(吊り下げ体)
12 支持本体部
14 推進部
15 吐出部(作業部)
21 制御部
22 検出部
41A,41B プロペラ部(回転体)
B1 壁面