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特開2023-83945複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造
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  • 特開-複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造 図1
  • 特開-複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造 図2
  • 特開-複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造 図3
  • 特開-複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083945
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20230609BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/30 E
E04B1/58 505P
E04B1/58 505Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197964
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】舩津 昌史
(72)【発明者】
【氏名】中江 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】浜口 慶生
(72)【発明者】
【氏名】上田 遼
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB12
2E125AB13
2E125AC07
2E125AC15
2E125AC29
2E125AG49
2E125AG50
2E125BA07
2E125BA34
(57)【要約】
【課題】上層の柱梁架構の各柱の柱芯に対して、下層の柱の柱芯を位置ずれさせる場合であっても、パンチング破壊の発生を抑制することが可能な複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造を提供する。
【解決手段】下層柱2上に、上層の柱梁架構1の複数の柱梁仕口部8を当該下層柱の柱芯2Cから位置ずれさせて埋設したキャピタル7を支持するようにした建物構造であって、柱梁架構のCFT柱8と第1の鉄骨梁4を接続する各柱梁仕口部には、CFT柱周りに迫り出して、CFT柱と第1の鉄骨梁を接合するための板状のダイヤフラム10が上下一対で設けられ、ダイヤフラムの断面積を規定する当該ダイヤフラムの板厚寸法及び幅寸法のうち、幅寸法が、各CFT柱それぞれの柱軸力Fによるキャピタルのパンチング破壊領域Pをダイヤフラムの板面に沿って拡張してダイヤフラムで柱軸力を支持させるように、第1の鉄骨梁の幅寸法よりも大きく形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層柱上に、上層の柱梁架構の互いに隣接する複数の柱梁仕口部を当該下層柱の柱芯から位置ずれさせて埋設したキャピタルを支持するようにした建物構造であって、
上記上層の柱梁架構の柱と梁を接続する上記各柱梁仕口部には、該柱周りに迫り出して、該柱と該梁を接合するための板状のダイヤフラムが上下一対で設けられ、
該ダイヤフラムにせん断耐力を付与する該ダイヤフラムの断面積を規定する当該ダイヤフラムの上下方向の板厚寸法及び梁幅方向の幅寸法のうち、該幅寸法が、上記各柱それぞれの柱軸力による上記キャピタルのパンチング破壊領域をこれらダイヤフラムの板面に沿って拡張してこれらダイヤフラムで柱軸力を支持させるように、該梁の幅寸法よりも大きく形成されることを特徴とする複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造。
【請求項2】
前記上下一対のダイヤフラムは、柱軸力を前記キャピタル及び前記梁に伝達する強度で形成されることを特徴とする請求項1に記載の複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造。
【請求項3】
前記柱梁仕口部周りの前記キャピタル及び前記梁は、所定の柱軸力を負担する強度で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造。
【請求項4】
前記下ダイヤフラムは、該下ダイヤフラムの下面から前記キャピタルの下面にわたり前記パンチング破壊領域を形成することを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造。
【請求項5】
前記上ダイヤフラムは、該上ダイヤフラムの下面から前記下ダイヤフラムの下面にわたり前記パンチング破壊領域を形成することを特徴とする請求項1~4いずれかの項に記載の複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上層の柱梁架構の各柱の柱芯に対して、下層の柱の柱芯を位置ずれさせる場合であっても、パンチング破壊の発生を抑制することが可能な複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上層の柱梁架構の上下方向柱軸力を、当該柱軸力の作用点よりも少ない数の下層の柱で支持するようにした建物構造として、特許文献1~3が知られている。
【0003】
特許文献1の「複数棟連結建物」は、隣接する複数の棟が互いに連結された建物において、各々の棟における複数本の柱を、下端部において互いに一体化するとともに、一体化した柱の下端部に免震装置を介装してなり、かつ免震装置による柱下端部の支承位置を、各々の棟の重心位置よりも建物の外周側に配設している。
【0004】
特許文献2の「免震構造物及び免震構造物の施工方法」は、免震構造物は、地震時における変動軸力が大きい上側第二構面の図における左右方向の両端部の上側柱の下には免震装置を設けずに、上側柱の柱軸力を主に上側柱に集約し、免震装置が受ける構造となっている。この結果、免震装置に作用する長期荷重が地震時における変動軸力よりも大きくなるようにしている。
【0005】
特許文献3の「免震建物」は、免震建物は、免震装置を介して下部構造体と、上部構造体を有する免震建物であって、上部構造体を形成する少なくとも1つの出隅部は、壁または外装材で構成され、出隅部に近接する上部柱は下方側が外方へと拡がるように設けられた出隅部傾斜柱で支持され、下部構造体に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-295494号公報
【特許文献2】特開2017-160608号公報
【特許文献3】特開2019-082092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の建物構造では、上層の柱梁架構の複数の柱よりも下層の柱の数を少なくするため、上層の柱の柱芯に対し、下層の柱の柱芯を位置ずれさせる場合がある。
【0008】
上層の柱と下層の柱でそれらの柱芯の位置をずらすと、上層の各柱の上下方向柱軸力によって、下層の柱の周りにパンチング破壊が発生し易くなるという課題があり、パンチング破壊を抑制するための対策が望まれていた。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、上層の柱梁架構の各柱の柱芯に対して、下層の柱の柱芯を位置ずれさせる場合であっても、パンチング破壊の発生を抑制することが可能な複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造は、下層柱上に、上層の柱梁架構の互いに隣接する複数の柱梁仕口部を当該下層柱の柱芯から位置ずれさせて埋設したキャピタルを支持するようにした建物構造であって、上記上層の柱梁架構の柱と梁を接続する上記各柱梁仕口部には、該柱周りに迫り出して、該柱と該梁を接合するための板状のダイヤフラムが上下一対で設けられ、該ダイヤフラムにせん断耐力を付与する該ダイヤフラムの断面積を規定する当該ダイヤフラムの上下方向の板厚寸法及び梁幅方向の幅寸法のうち、該幅寸法が、上記各柱それぞれの柱軸力による上記キャピタルのパンチング破壊領域をこれらダイヤフラムの板面に沿って拡張してこれらダイヤフラムで柱軸力を支持させるように、該梁の幅寸法よりも大きく形成されることを特徴とする。
【0011】
前記上下一対のダイヤフラムは、柱軸力を前記キャピタル及び前記梁に伝達する強度で形成されることを特徴とする。
【0012】
前記柱梁仕口部周りの前記キャピタル及び前記梁は、所定の柱軸力を負担する強度で形成されることを特徴とする。
【0013】
前記下ダイヤフラムは、該下ダイヤフラムの下面から前記キャピタルの下面にわたり前記パンチング破壊領域を形成することを特徴とする。
【0014】
前記上ダイヤフラムは、該上ダイヤフラムの下面から前記下ダイヤフラムの下面にわたり前記パンチング破壊領域を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造にあっては、上層の柱梁架構の各柱の柱芯に対して、下層の柱の柱芯を位置ずれさせる場合であっても、パンチング破壊の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかる複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造の好適な一実施形態を示す要部拡大側面図である。
図2図1中、A-A線矢視図である。
図3図1に示した複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造に用いられるダイヤフラムを説明するための柱梁仕口部の平面図である。
図4図3に示したダイヤフラムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る建物構造の要部拡大側面図、図2は、図1中、A-A線矢視図である。
【0018】
本実施形態に係る複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造は、上層の柱梁架構1(以下、単に柱梁架構という場合がある。)を、下層の鉄筋コンクリート柱2(以下、単に下層柱という場合がある。)で支持して構成される。
【0019】
柱梁架構1は、柱がコンクリート充填鋼管柱3(以下、CFT柱という。)とされ、梁がH型鋼の鉄骨梁4,5とされた混合構造で構成される。CFT柱3は、図示例では平断面正方形状のものが示されているが、平断面円形状等であってもよい。
【0020】
柱梁架構1の柱は、CFT柱3以外の鉄骨コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造、もしくは鉄骨造であってもよく、柱梁架構1の梁は、鉄骨鉄筋コンクリート造であってもよい。下層柱2は、鉄骨鉄筋コンクリート造であってもよい。
【0021】
下層柱2の上には、当該下層柱2の柱芯位置2Cに一致させて、積層ゴムなどの免震部材6が載置され、この免震部材6の上には、下層柱2の上部を構成する鉄筋コンクリート造のキャピタル7が設けられ、キャピタル7は下層柱2によって支持される。
【0022】
柱梁架構1を支持しているキャピタル7の重心位置と下層柱2の柱芯位置2Cとは、おおよそ一致される。
【0023】
キャピタル7には、柱梁架構1の互いに隣接する複数の柱梁仕口部8が埋設される。柱梁仕口部8は、周知のように柱と梁とを接合する部分を言い、本実施形態では、柱梁架構1を構成するCFT柱3と鉄骨梁4(後述する第1の鉄骨梁)とを接合する部分を言う。
【0024】
柱梁架構1は、キャピタル7下方で下層柱2に支持されるため、当該柱梁架構1の最下部を構成する部分、具体的には、柱梁架構1の最下部に位置されて柱梁仕口部8を構成するCFT柱3の下端、並びに柱梁架構1の最下部に配設される鉄骨梁4,5の柱梁仕口部8周辺の一部が、キャピタル7に埋設される。
【0025】
本実施形態の建物構造は、柱梁架構1の上下方向柱軸力Fを、当該柱軸力Fの作用点よりも少ない数の下層柱2で支持する、すなわち柱梁架構1を、当該柱梁架構1の複数のCFT柱3よりも少ない数の下層柱2で支持する。
【0026】
本実施形態では、1本の下層柱2上のキャピタル7には、柱梁架構1の複数本のCFT柱3が設けられる。
【0027】
複数本のCFT柱3は、1本の下層柱2に対し、位置ずれさせてキャピタル7に埋設される。
【0028】
図示例は、キャピタル7に、2本のCFT柱3と、これら2本のCFT柱3が並ぶ方向に延設され、これら2本のCFT柱3を接続する第1の鉄骨梁4と、第1の鉄骨梁4とCFT柱3とを接合する、互いに隣接する2つの柱梁仕口部8と、2本のCFT柱3の中央位置で、第1の鉄骨梁4と直交させて接合される第2の鉄骨梁5とを埋設する場合が示されている。
【0029】
また、図示例では、キャピタル7に一部が埋設される第1及び第2の鉄骨梁4,5については、鉄筋コンクリート造のキャピタル7と連続する構造とするために、鉄筋9と共にコンクリート中に埋設されて、鉄骨鉄筋コンクリート造の梁を構成している。
【0030】
キャピタル7に設けるCFT柱3の数、従ってまた、柱梁仕口部8の数は、複数であれば図示例に限られることはなく、また、第1の鉄骨梁4の数や、第2の鉄骨梁5の設置の有無やその数も、図示例に限られることはない。
【0031】
柱梁架構1のCFT柱3と第1の鉄骨梁4を接続する柱梁仕口部8自体の構造は、従来周知であって、CFT柱3に、第1の鉄骨梁4の上下一対のフランジ4aを接合する板状のダイヤフラム10を上下一対設けて構成される。これらダイヤフラム10は、平面四角形状、好ましくは平面正方形状で形成される。
【0032】
本実施形態の建物構造に用いられるダイヤフラム10は、CFT柱3周りに迫り出して設けられるものが用いられる。具体的には、外ダイヤフラムもしくは貫通穴を有する通しダイヤフラムが用いられる。
【0033】
外ダイヤフラムの場合は、柱梁仕口部8を貫通するCFT柱3の外面の上下2箇所に溶接接合して設けられる。
【0034】
他方、通しダイヤフラムの場合は、柱梁仕口部8を貫通する上下一対の通しダイヤフラムに対し、CFT柱3の端面が上方及び下方から溶接接合して設けられ、上下の通しダイヤフラム間に、貫通穴を通じてコンクリート充填される、CFT柱3と同径の管材が設けられる。
【0035】
図1に示すように、柱梁架構1を、当該柱梁架構1の複数のCFT柱3よりも少ない数の下層柱2で支持するために、下層柱2の柱芯2Cに対し、キャピタル7に埋設したCFT柱3の柱芯8Cを位置ずれさせると、このような構造上、短期荷重及び長期荷重のいずれであっても、CFT柱3から作用する上下方向柱軸力Fによって、下層柱2の周りで、キャピタル7にパンチング破壊が発生しやすくなる。
【0036】
パンチング破壊は、柱梁架構1が有する柱梁仕口部8のダイヤフラム10を埋設したキャピタル7では、上下いずれのダイヤフラム10であっても、当該ダイヤフラム10から下向きに、裁頭円錐台形状の錐体面を界面(図中、Pで示す)として、コンクリートに割れを生じさせる。
【0037】
パンチング破壊を生じさせる柱梁架構1のCFT柱3の上下方向柱軸力Fは、柱梁仕口部8を構成する第1の鉄骨梁4とダイヤフラム10に作用するので、これら第1の鉄骨梁4とダイヤフラム10の上下方向せん断耐力、具体的には第1の鉄骨梁4のウエブ4bのせん断耐力及び上下の板状の各ダイヤフラム10の板厚方向のせん断耐力が関係する。
【0038】
第1の鉄骨梁4のせん断耐力は、材料である鋼材のせん断強度と、ウエブ4bの断面積とで定まる。上下の各ダイヤフラム10の板厚方向のせん断耐力は、CFT柱3から作用する上下方向柱軸力Fから第1の鉄骨梁4のせん断耐力を差し引いた値よりも大きくする必要がある。
【0039】
ダイヤフラム10の板厚方向のせん断耐力は、ダイヤフラム10の曲げ耐力のほか、ダイヤフラム10(上ダイヤフラム10Uと下ダイヤフラム10L)下方のコンクリートの支圧耐力と、後述するパンチング破壊領域Pのコンクリートのせん断耐力の3つのうち、最小の値とされる。
【0040】
ダイヤフラム10の曲げ耐力は、ダイヤフラム10の板厚方向の断面係数と、CFT柱3から外周へ突出する部分にかかる曲げモーメントから求められる。ダイヤフラム10下方のコンクリートの支圧耐力は、上下のダイヤフラム10とコンクリートが接する範囲の面積(上ダイヤフラム10Uでは、CFT柱3から外周へ突出する部分の面積、下ダイヤフラム10Lでは、下方に面する全面積)の合計とコンクリート強度とから求められる。
【0041】
これら耐力に比して、一般的に用いられるダイヤフラム10における、パンチング破壊領域Pのコンクリートのせん断耐力は小さく、通常、ダイヤフラム10の板厚方向のせん断耐力は、このパンチング破壊領域Pのコンクリートのせん断耐力で定められる場合が多い。
【0042】
通常、ダイヤフラム10の幅寸法は、通しダイヤフラムを例にとると、柱外周から25~30mm程度突出する大きさであるところ、本実施形態にあっては、図3及び図4に示すように、各柱梁仕口部8のすべてのダイヤフラム10について、ダイヤフラム10にせん断耐力を付与する当該ダイヤフラム10の断面積を規定する、ダイヤフラム10の上下方向の板厚寸法T及び梁幅方向(第1の鉄骨梁4のフランジ幅方向)の幅寸法Wのうち、幅寸法Wが、各CFT柱3それぞれの上下方向柱軸力Fによるキャピタル7のパンチング破壊領域(図中、界面Pで囲まれる裁頭円錐台形状の錐体面内方の領域)をこれらダイヤフラム10の板面に沿って拡張してこれらダイヤフラム10で柱軸力Fを支持させるように、第1の鉄骨梁4の幅寸法BW(フランジの幅寸法)よりも大きく形成される。
【0043】
パンチング破壊領域を拡張するとは、裁頭円錐台形状の径を大きく広げることを言う。なお、強度解析にあたり、錐体面の界面Pの広げ方は任意であるが、一般的には、ダイヤフラム10の外周から、水平面に対し、外向き且つ下向きに45°方向である、
パンチング破壊領域は、平面正方形状のダイヤフラム10の幅寸法が狭い場合よりも、幅寸法を広げることにより、広げることができる。
【0044】
そしてまた、柱梁仕口部8の上及び下の各ダイヤフラム10は、柱軸力Fをキャピタル7及び第1の鉄骨梁4に伝達する強度で形成される。
【0045】
また、柱梁仕口部8周りのキャピタル7及び第1の鉄骨梁4は、パンチング破壊に至らない所定の柱軸力Fを負担する強度で形成される。
【0046】
上下一対のダイヤフラム10のうち、下ダイヤフラム10Lは、当該下ダイヤフラム10Lの下面からキャピタル7の下面にわたりパンチング破壊領域を形成するものであって、下ダイヤフラム10Lの幅寸法Wは、このパンチング破壊領域に対するキャピタル7のせん断耐力に基づいて設定される。
【0047】
上下一対のダイヤフラム10のうち、上ダイヤフラム10Uは、下ダイヤフラム10Lよりも板厚寸法Tが小さく形成されたり、あるいは下ダイヤフラム10Lよりも幅寸法Wが小さく形成されてもよい。
【0048】
以上説明した本実施形態に係る複数の柱梁仕口部を埋設したキャピタルを有する建物構造にあっては、各柱梁仕口部8で、CFT柱3周りに迫り出して上下一対で設けられる板状のダイヤフラム10について、ダイヤフラム10にせん断耐力を付与する当該ダイヤフラム10の上下方向の板厚寸法T及び梁幅方向の幅寸法Wのうち、幅寸法Wが、各CFT柱3それぞれの柱軸力Fによるキャピタル7のパンチング破壊領域Pをこれらダイヤフラム10の板面に沿って拡張してこれらダイヤフラム10で柱軸力Fを支持させるように、第1の鉄骨梁4の幅寸法BWよりも大きく形成されるので、柱梁架構1の各CFT柱3の柱芯に対して、下層柱2の柱芯を位置ずれさせる場合であっても、柱軸力Fを、ダイヤフラム10のせん断耐力、そしてまた当該ダイヤフラム10と接続される第1の鉄骨梁4のせん断耐力で適切かつ十分に負担することができ、さらに、ダイヤフラム10からキャピタル7への柱軸力Fの伝達性能も向上できると共に、加えて、キャピタル7におけるパンチング破壊領域の拡張で抵抗作用を増強できることも相俟って、パンチング破壊の発生を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 柱梁架構
2 下層柱
2C 下層柱の柱芯
3 CFT柱
4 第1の鉄骨梁
7 キャピタル
8 柱梁仕口部
10 ダイヤフラム
10U 上ダイヤフラム
10L 下ダイヤフラム
BW 第1の鉄骨梁の幅寸法
F 上下方向柱軸力
P パンチング破壊領域の界面
T ダイヤフラムの上下方向の板厚寸法
W ダイヤフラムの梁幅方向の幅寸法
図1
図2
図3
図4