(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083965
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】木製PC型枠
(51)【国際特許分類】
B28B 7/18 20060101AFI20230609BHJP
B28B 7/28 20060101ALI20230609BHJP
E04G 9/04 20060101ALI20230609BHJP
E04G 15/06 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B28B7/18
B28B7/28
E04G9/04
E04G15/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197999
(22)【出願日】2021-12-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】594065227
【氏名又は名称】大貫木材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】大貫 健治
【テーマコード(参考)】
2E150
4G053
【Fターム(参考)】
2E150AA40
2E150BA03
2E150BA12
2E150BA32
2E150BA43
2E150BA54
2E150HF00
2E150MA46X
4G053AA07
4G053BC08
4G053BD02
4G053EA02
4G053EA43
(57)【要約】
【課題】木製の型枠であって、プレキャスト工法で使用し、型抜きの位置精度を向上し得る木製PC型枠を提供する。
【解決手段】PC工法によりコンクリート部材を生成する木製の型枠であって、側枠と妻枠と底枠とから成り、コンクリート部材の型抜きを行う型抜き材を固定する型抜き材固定部を持ち、型抜き材固定部は、型抜き材を貫通するボルトと、ボルトを固定するナットと、ナットを底枠における底板の外面に固定するナット固定部とから成り、ナット固定部は、ナットがすべて埋まる深さの陥没部を持ち、孔の側面の少なくとも3面は、ナットの側面と接する構成を採用した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC工法によりコンクリート部材を生成する木製の型枠であって、
側枠と妻枠と底枠とから成り、
該コンクリート部材の型抜きを行う型抜き材を固定する型抜き材固定部を持ち、
該型抜き材固定部は、該型抜き材を貫通するボルトと、該ボルトを固定するナットと、該ナットを底枠における底板の外面に固定するナット固定部とから成り、
該ナット固定部は、該ナットがすべて埋まる深さの陥没部を持ち、該陥没部の側面の少なくとも3面は、該ナットの側面と接することを特徴とする木製PC型枠。
【請求項2】
前記底枠は、複数の櫛板を持ち、
該櫛板の少なくとも1つは、複数の部分櫛板から成り、
一方の部分櫛板の端部は、一部が突出した突出部を持ち、
他方の部分櫛板の端部は、一部が陥没した陥没部を持ち、
該突出部の基端はくびれており、
一方の部分櫛板の端部と他方の部分櫛板の端部は、隙間なく組み合わせることができることを特徴とする請求項1に記載の木製PC型枠。
【請求項3】
前記型枠は、複数の部分型枠から成り、
該部分型枠における前記底枠の端辺には、端辺に平行な支持棒を入れることができる孔があり、
一方の部分型枠の端辺と対応する他方の部分型枠の端辺を合わせ、各端辺付近の孔に支持棒を配置し、両支持棒の端部間をボルト、ナットで固定し、ボルトを締め付け、各端辺間を密着させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木製PC型枠。
【請求項4】
前記櫛板には、作業用孔が複数開けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の木製PC型枠。
【請求項5】
前記底枠には、前記型枠を吊り上げるための鋼材を通すための孔が複数開けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の木製PC型枠。
【請求項6】
コンクリート部材の側面に凹部を生成する木製の側方型抜き部材を持ち、
該側方型抜き部材は、ボルトのネジ部が貫通状に挿嵌される貫通孔と、該貫通孔の長さより長尺のネジ部を有するボルトと、該貫通孔におけるボルト挿入口に固定されてボルトを挿嵌状態で保持するナットと、該貫通孔におけるボルト挿出口を閉塞すべく貼着されるテープ材と、から成ることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の木製PC型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC型枠に関し、詳しくは、木製によるPC型枠であって、コンクリート成形の精度向上を図る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート部材を工場生産し、その部材を建設現場に運び、つなぎ合わせる工法として、プレキャスト工法がある。
工場でコンクリート部材を生産するための型枠として、一般には、量産性の高い金属製型枠が使用される。木製の型枠では、強度的に難があり、数回の生産で使用できなくなってしまうためである。
一方、単品や数個しか成型しない奇形製品については、金属製の型枠ではかえって高価となってしまうため、木製の型枠を用いること好適である。
【0003】
個数が少ない製品は、木製型枠による現場打ちが一般的である。しかしながら、木製型枠を組む技術者が不足しており、現場での作業に支障をきたすこともある。対応策の1つとして、工場であれば、限られた技術者で高精度の型枠を製作でき、生産性を向上させることができる。
また、木製型枠は、温度や湿度等によるタワミの発生も問題となるが、工場で、一定の環境下で製作することで、木製型枠での生産精度を高めることができる。
【0004】
ところで、コンクリート部材に種々部品を取り付けるための型抜きを行う際、型抜き材を底枠における底板上に載置した状態で、板付ナットを用いてボルトで固定、位置決めを行うことが多い。
木製型枠では、薄い底板の裏面に、板付きナットをビス止めすることになるため、ナットの固定強度が出ず、ビスの外れや緩みによる浮きが生じ易く、精度的に難があった。
そこで、木製型枠でのプレキャスト工法において、型抜き材を保持する精度を高める技術が求められていた。
【0005】
このような問題に対して、従来からも様々な技術が提案されている。例えば、スリーブの固定が簡単で、かつ、型枠を損傷させないコンクリートプレキャスト用スリーブ固定具の技術が開示されている(特許文献1参照)。具体的には、スリーブ支持部材、固定部材とからなり、固定部材は、先端部が磁石からなり、支持部材の開口部は、固定部材の先端部が貫通して型枠に吸着できることが記載されている。
しかしながら、スリーブ位置の固定強度が出ず、本課題を解決しているとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、木製の型枠であって、プレキャスト工法で使用し、型抜きの位置精度を向上し得る木製PC型枠を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、PC工法によりコンクリート部材を生成する木製の型枠であって、側枠と妻枠と底枠とから成り、コンクリート部材の型抜きを行う型抜き材を固定する型抜き材固定部を持ち、型抜き材固定部は、型抜き材を貫通するボルトと、ボルトを固定するナットと、ナットを底枠における底板の外面に固定するナット固定部とから成り、ナット固定部は、ナットがすべて埋まる深さの陥没部を持ち、孔の側面の少なくとも3面は、ナットの側面と接する手段を採用する。
【0009】
また、本発明は、底枠が複数の櫛板を持ち、櫛板の少なくとも1つは、複数の部分櫛板から成り、一方の部分櫛板の端部は、一部が突出した突出部を持ち、他方の部分櫛板の端部は、一部が陥没した陥没部を持ち、突出部の基端はくびれており、一方の部分櫛板の端部と他方の部分櫛板の端部は、隙間なく組み合わせることができる手段を採用する。
【0010】
さらに、本発明は、型枠が複数の部分型枠から成り、部分型枠における底枠の端辺には、端辺に平行な支持棒を入れることができる孔があり、一方の部分型枠の端辺と対応する他方の部分型枠の端辺を合わせ、各端辺付近の孔に支持棒を配置し、両支持棒の端部間をボルト、ナットで固定し、ボルトを締め付け、各端辺間を密着させる手段を採用する。
【0011】
またさらに、本発明は、櫛板に作業用孔が複数開けられている手段を採用する。
【0012】
さらにまた、本発明は、底枠に型枠を吊り上げるための鋼材を通すための孔が複数開けられている手段を採用する。
【0013】
そしてまた、本発明は、コンクリート部材の側面に凹部を生成する木製の側方型抜き部材を持ち、側方型抜き部材は、ボルトのネジ部が貫通状に挿嵌される貫通孔と、該貫通孔の長さより長尺のネジ部を有するボルトと、該貫通孔におけるボルト挿入口に固定されてボルトを挿嵌状態で保持するナットと、該貫通孔におけるボルト挿出口を閉塞すべく貼着されるテープ材と、から成る手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る木製PC型枠よれば、木製の型枠をPC工法において使用することで、木製型枠を組む技術者不足の解消並びにコスト削減に資すると共に、型抜きを行う際、型抜き材固定部を用いることによって、型抜き部の位置精度を向上させることが可能であって、生成されるコンクリート部材の品質向上に資する、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る木製PC型枠の実施形態を示す全体斜視図である。
【
図2】本発明に係る木製PC型枠の型抜き材の撤去工程を示す説明図である。
【
図3】本発明に係る木製PC型枠の型抜き材固定部を示す説明図である。
【
図4】本発明に係る木製PC型枠の型抜き材を固定する従来例を示す説明図である。
【
図5】本発明に係る木製PC型枠の嵌め部分を示す説明図である。
【
図6】本発明に係る木製PC型枠の型枠引寄せ部を示す説明図である。
【
図7】本発明に係る木製PC型枠の側方型抜き部材を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る木製PC型枠は、PC工法において使用される木製の型枠であって、生成されたコンクリート部材の品質向上を実現することを最大の特徴とする。
以下、本発明に係る木製PC型枠の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
尚、本発明に係る木製PC型枠の全体形状及び各部の形状は、以下に示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、即ち、同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0018】
図1から
図7に従って、本発明を説明する。
図1は、本発明に係る木製PC型枠の全体斜視図を示す。
図2は、型抜き材の撤去工程を示す。
図3は、型抜き材固定部を示す図であり、(a)及び(b)がナット固定部とナットの関係を示し、(c)が型抜き材固定部を使用した例を示す。
図4は、型抜き材を固定する従来の形を示す図である。
図5は、櫛板の嵌め部を示す図であり、(c)は嵌め部分の斜視図である。
図6は、型枠引寄せ部を示す図であり、(c)は型枠引寄せ部付近を表す斜視図である。
図7は、側方型抜き部材を示す図であり、側方型抜き部材を撤去する工程を示すものである。
【0019】
木製PC型枠1は、工場等でコンクリート成形物を作るための木製の型枠であり、側枠10と妻枠11と底枠20とから構成され、主に釘やビス等によって組み立てられる。
側枠10は、コンクリート71を流し込むための型部分における長手方向の側壁であり、内側が、側板10aによってコンクリート71を成形するための形状となっている。
側枠10の側板10aには、鉄筋70を架け渡すための多数の孔が開けられている。側板10aの内側の素材は、ウレタン塗装合板であり、コンクリート71の型のために一般的に使用されるものである。
尚、コンクリート71を流し込んだ際に、該コンクリート71の押圧により側枠10が外側方へ膨らむのを防止すべく、必要に応じて一乃至複数の頭つなぎ材13が両側の側枠10に架設される(
図1)。該頭つなぎ材13は、側枠10の上面にボルト・ナット等で固定される。
【0020】
妻枠11は、コンクリート71を流し込むための型部分における短手方向の側壁であり、内側が、妻板11aによってコンクリート71を成形するための形状となっている。
妻枠11の妻板11aには、側板10aと同様、鉄筋70を架け渡すための多数の孔が開けられており、また、妻板11aの内側の素材は、ウレタン塗装合板となっている。
【0021】
底枠20は、コンクリート71を流し込むための型部分における底床部分であり、且つ、側枠10及び妻枠11を載置する部分であって、内側が、底板20aによってコンクリート71を成形するための形状となっている。底板20aの内側(上面)の素材は、やはりウレタン塗装合板となっている。底板20aの下方は、細長く櫛状に立てられた複数の櫛板21によって支えらえている。側枠10及び妻枠11と底枠20は、ほぼ一体として使用される。
【0022】
櫛板21には、木製PC型枠1を吊り上げるための吊上げ用孔23が複数開けられている(
図1)。吊上げ用孔23に鋼材を通し、吊り上げることで、木製PC型枠1全体に歪みを生じることなく、移動することができる。
また、櫛板21には、作業用孔22が設けられている(
図1)。作業用孔22は、作業者が、底枠20に対する型抜き材40の固定等の作業を行うための孔である。作業者は、作業用孔22から腕を入れ、型抜き材40等の固定、調整を行う。型抜き材40等の位置は、コンクリート成形物によって異なるので、それぞれの型枠ごとに適切な位置に作業用孔22が開けられている。
【0023】
櫛板21は、比較的細長い形状である。複数の部材で1つの櫛板21を作成する際、部材の突起部24と陥没部25を組み合わせる接合によって、一体の長い部材として扱うことができる(
図1、
図5)。
言い換えれば、櫛板21の少なくとも1つは、複数の部分櫛板26から成り、一方の部分櫛板26の端部は、一部が突出した突起部24を持ち、他方の部分櫛板26の端部は、一部が陥没した陥没部25を持ち、突出部の基端はくびれており、一方の部分櫛板26の端部と他方の部分櫛板26の端部を隙間なく組み合わせることによって、部分櫛板26同士が離れることが無く、2つの部分櫛板26は一体の櫛板21のように扱うことができる(
図5(b))。
板の平面同士を単純に突き合わせるとズレが生じ易く精度が落ちるが、凹部と凸部の嵌合によるジョイントでズレが発生せず精度が向上すると共に、丈夫で耐久性・強度も向上させることができる。
【0024】
木製PC型枠1には、特定の型を抜く構造が設けられている。型抜き材40を用いるものや、側方型抜き部材60を用いるものがある。
また、木製PC型枠1を輸送等の問題で分割した場合に、分割した部分型枠12同士を締結する構造が設けられている。
【0025】
型抜き材40を用いた構造について、
図2、
図3に沿って説明する。
コンクリート成形物に、穴、凹部を成形する際、型抜き材40が用いられる。ボルト41と型抜き材固定部30によって型抜き材40は固定される。型抜き材固定部30は、仕込みナット部ともいう。
型抜き材固定部30は、ナット31とナット固定部32から成る。ナット固定部32は、
図3(a)に示すように、ナットがすべて埋まる深さの三角状の溝であるナット用陥没部33を持ち、ボルト41を貫通させる貫通孔34を持つ。ナット31は、ナット用陥没部33に埋め込まれるように配置される(
図3(b))。ナット用陥没部33は、3つの面を持ち、その3つの面が、ナット31の側面に対応するので、ナット31は、ナット固定部32内で完全に固定される。
型抜き材固定部30は、底枠20における底板20aの裏側に接着剤35や釘、ビス等により、装着される。
ボルト41は、型抜き材40、底板20aを通して、型抜き材固定部30のナット31にねじ込まれる。ナット31は、ナット固定部32で固定されるので、ゆるみなく、ボルト41を固定することができる。
【0026】
コンクリート成形後の型抜き工程について説明する。
まず、ボルト41を外す。ナット31は、ナット固定部32で固定されているので、ボルト41を回転させた際、ナット31が同様に回転してしまうことは無い(
図2(b))。
次に、型抜き材40を撤去する(
図2(c))。
最後に、木製PC型枠1からコンクリート成形物を分離し、型抜き完了となる(
図2(d))。
【0027】
型抜き材40を固定する際の従来例を、
図4に沿って説明する。
板付ナット64は、ビス止めで、底枠20における底板20aの裏側に装着する(
図4(a))。型枠用板は12mm程度のものが多く、ビスでは装着強度が充分では無い。そのため、ボルトの固定時、解除時にビスが外れてしまったり、完全に外れなくてもビスが緩んで板付ナット64が浮いてしまうことがあり、ナットの位置にズレが生じてしまい精度が出なかった。
また、板付ナット64は、板とナットが溶接のため、ビス止め時の衝撃などで板とナットが分解してしまうことがあり、精度が出なかった。
【0028】
型抜き材固定部30は、上記の例に限らず、コンクリート成形物に付属させる各種部品の取り付けや、部品取付用の凹部・穴を施工する際にも使用することができる。
言い換えれば、型抜き材固定部30を、底枠20における底板20aの裏側に装着し、底板20aにナット31まで貫通した孔を穿孔し、底板20a上に設置された部品をボルト締めして固定し、そこへコンクリート71を流し込むことで、部品をコンクリート成形物に直接埋め込んだり、部品を取り除いた部分に凹部を形成したりすることができる。
【0029】
型枠引寄せ部50について、
図6に沿って、説明する。
木製PC型枠1の輸送等を行うために、木製PC型枠1を分断する場合がある。その際、分断された部分型枠12を互いに引寄せ一体化するための技術である。
分断された部分型枠12を直接、ボルト締めして引き寄せようとしても、型枠自体に相当な重量があるので、型枠が動かず、ボルト、ナットが木材にめり込んでしまう。
そこで、櫛板21に型枠引寄せ部50を設ける。詳細には、櫛板21に貫通孔52を開け、支持部51を通し、支持部51の両端付近で、両方の部分型枠12をボルト53とナット54で締め引寄せる。支持部51から部分型枠12に伝わる力は、各櫛板21で分散されるので、部分型枠12全体に均等に力を加えることができる。そのため、部分型枠12を確実に引き寄せ、強固な固定を行うことができる。
支持部51は、引寄せ鋼材ともいう。十分な剛性が必要であるので、鋼材が好適である。
また、互いの部分型枠12の接触部分に、多少のたわみがあったとしても、支持部51によって、強固に固定されるので、たわみ、ゆがみを軽減・補修することができる。
型枠として使用中も支持部51で締結した状態を維持する。
【0030】
側方型抜き部材60について、
図7に沿って、説明する。
側方型抜き部材60は、側枠10あるいは妻枠11に装備され(
図1)、コンクリート高さ方向の中間の側面に凹凸を成形するものである。
側方型抜き部材60は、主に、凹用枠部61とボルト63と板付ナット64から成る。
凹用枠部61は、コンクリートに成形する凹凸に対応する形状であり、コンクリート成形後、コンクリートから取り出し可能な形状である。凹用枠部61の表面の素材は、ウレタン塗装合板となっている。
凹用枠部61には、ボルト63のネジ部が貫通状に挿嵌される貫通孔62が、設けられている。ボルト63の長さは、貫通孔62の長さよりも長いネジ部を有する。貫通孔62におけるボルト挿入口には、仕込みナット部30または板付ナット64が配置され、ボルト63を挿嵌状態で保持する。仕込みナット部30または板付ナット64は、ビス65にて凹用枠部61に固定されている。
貫通孔62におけるボルト送出口には、テープ材66が貼着され、閉塞されている。貫通孔62へのコンクリート71の侵入を防ぐためである。
側方型抜き部材60は、側枠10内側あるいは妻枠11内側の所定位置に、釘やビス止めなどによって仮固定されている。
【0031】
コンクリート71を流入、充填した際、側方型抜き部材60、ボルト63の位置は
図7(a)のようになっている。ボルト63の先端は、貫通孔62のボルト挿出口付近にある。
木製PC型枠1からコンクリート製品を取り外す際には、側方型抜き部材60もコンクリート製品と一体となって一緒に取り外されてしまうが、ボルト63を回転させ、ボルト63の先端をコンクリート面にネジ込むことによって、ボルト63の先端が突出し、相対的に、凹用枠部61を外側にずらすことができる(
図7(b))。
さらに、凹用枠部61をずらすことで、側方型抜き部材60をコンクリート製品から分離する(
図7(c))。
このように、側方型抜き部材60を用いることで、コンクリートの側面に凹凸を容易に生成することができる。
【0032】
以上のように、本発明によれば、技術者に頼らず高精度の木製型枠を簡単に組立て可能であって、コンクリート部材の品質向上に資するものである。
【0033】
また、本発明によれば、型抜きを行う際、型抜き材固定部30を用いることによって、型抜き部の位置精度を向上させることができ、コンクリート部材の品質向上に資するものである。
【0034】
さらに、本発明によれば、底枠20側面(櫛板21)のジョイントを精度よくズレなく行うことができ、耐久性・強度を向上させるものである。
【0035】
またさらに、本発明によれば、分離された型枠を容易に引き寄せ一体化ができるので、輸送等の効率化に資するものである。
【0036】
さらにまた、本発明によれば、底枠20の櫛板21に作業用孔を設けることで、型抜き材40を設置するための型抜き材固定部30の装着等を容易に行え、作業効率の向上に資するものである。
【0037】
またさらに、本発明によれば、型枠を容易に吊り上げることが可能となり、型枠の移動、輸送の効率向上に資するものである。
【0038】
そしてまた、本発明によれば、側方型抜き部材60を用いることによって、コンクリートの側面の任意の位置に凹凸を生成することができ、コンクリート製品の価値向上に資するものである。
【0039】
以上、本発明に係る木製PC型枠1の基本的構成態様、及び、作用について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。特に、上記実施形態では、底枠20の上に側枠10及び妻枠11を載置する態様について説明したが、底枠20の側面に側枠10や妻枠11を組み付けることで、本発明に係る木製PC型枠1を構成させる態様も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る木製PC型枠は、技術者ナシに高精度の木製型枠を簡単に組立て可能であって、特に床版用のコンクリート部材の品質向上を図るものとして、産業上の利用可能性は大きいと解する。
【符号の説明】
【0041】
1 木製PC型枠
10 側枠
10a 側板
11 妻枠
11a 妻板
12 部分型枠
13 頭つなぎ材
20 底枠
20a 底板
21 櫛板
22 作業用孔
23 吊上げ用孔
24 突起部
25 陥没部
26 部分櫛板
30 型抜き材固定部(仕込みナット部)
31 ナット
32 ナット固定部
33 ナット用陥没部
34 貫通孔
35 接着剤
40 型抜き材
41 ボルト
50 型枠引寄せ部
51 支持部(引寄せ鋼材)
52 貫通孔
53 ボルト
54 ナット
60 側方型抜き部材
61 凹用枠部
62 貫通孔
63 ボルト
64 板付ナット
65 ビス
66 テープ材
70 鉄筋
71 コンクリート
【手続補正書】
【提出日】2022-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC工法によりコンクリート部材を生成する木製の型枠であって、
側枠と妻枠と底枠とから成り、
該コンクリート部材の型抜きを行う型抜き材を固定する型抜き材固定部を持ち、
該型抜き材固定部は、該型抜き材を貫通するボルトと、該ボルトを固定するナットと、該ナットを底枠における底板の外面に固定するナット固定部とから成り、
該ナット固定部は、該ナットがすべて埋まる深さの陥没部を持ち、該陥没部の側面の少なくとも3面は、該ナットの側面と接することを特徴とする木製PC型枠。
【請求項2】
前記底枠は、複数の櫛板を持ち、
該櫛板の少なくとも1つは、複数の部分櫛板から成り、
一方の部分櫛板の端部は、一部が突出した突出部を持ち、
他方の部分櫛板の端部は、一部が陥没した陥没部を持ち、
該突出部の基端はくびれており、
一方の部分櫛板の端部と他方の部分櫛板の端部は、隙間なく組み合わせることができることを特徴とする請求項1に記載の木製PC型枠。
【請求項3】
前記櫛板には、作業用孔が複数開けられていることを特徴とする請求項2に記載の木製PC型枠。
【請求項4】
前記型枠は、複数の部分型枠から成り、
該部分型枠における前記底枠の端辺には、端辺に平行な支持棒を入れることができる孔があり、
一方の部分型枠の端辺と対応する他方の部分型枠の端辺を合わせ、各端辺付近の孔に支持棒を配置し、両支持棒の端部間をボルト、ナットで固定し、ボルトを締め付け、各端辺間を密着させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の木製PC型枠。
【請求項5】
前記底枠には、前記型枠を吊り上げるための鋼材を通すための孔が複数開けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の木製PC型枠。
【請求項6】
コンクリート部材の側面に凹部を生成する木製の側方型抜き部材を持ち、
該側方型抜き部材は、ボルトのネジ部が貫通状に挿嵌される貫通孔と、該貫通孔の長さより長尺のネジ部を有するボルトと、該貫通孔におけるボルト挿入口に固定されてボルトを挿嵌状態で保持するナットと、該貫通孔におけるボルト挿出口を閉塞すべく貼着されるテープ材と、から成ることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の木製PC型枠。