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特開2023-83972コンピュータプログラム、学習モデル、推定装置、及び推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083972
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、学習モデル、推定装置、及び推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20210101AFI20230609BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20230609BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G01N27/90
G06N3/02
G01N29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198009
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】相原 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】京極 智輝
【テーマコード(参考)】
2G047
2G053
【Fターム(参考)】
2G047AB03
2G047BA03
2G047BB01
2G047BC03
2G047CA01
2G047GF24
2G047GG27
2G047GG33
2G047GG37
2G053AA11
2G053AB21
2G053BA14
2G053BC14
2G053CA03
2G053CB21
2G053DA01
(57)【要約】
【課題】コンピュータプログラム、学習モデル、推定装置、及び推定方法の提供。
【解決手段】探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に探傷プローブより得られる波形データを取得し、探傷プローブより得られる波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した波形データを入力して、地中送電ケーブルのケーブル種別を推定し、推定結果を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記探傷プローブより得られる波形データを取得し、
探傷プローブより得られる波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定し、
推定結果を出力する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記探傷プローブは、渦電流探傷プローブ又は超音波探傷プローブを含む
請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記学習モデルは、渦電流探傷プローブより得られる第1波形データと、超音波探傷プローブより得られる第2波形データとを入力した場合にケーブル種別に関する情報を出力するよう学習されており、
前記地中送電ケーブルを走査した際に前記渦電流探傷プローブより得られる第1波形データと、前記超音波探傷プローブより得られる第2波形データとを前記学習モデルに入力して、前記地中送電ケーブルの種別を推定する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1又は請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記ケーブル種別に関する情報は、遮水層の有無を判別するための情報を含み、
前記学習モデルから出力される情報に基づき、前記地中送電ケーブルが遮水層を有するケーブルであるか否かを推定する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1から請求項3の何れか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記ケーブル種別に関する情報は、前記遮水層の材質に関する情報を含み、
前記学習モデルから出力される情報に基づき、前記遮水層の材質を推定する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記学習モデルは、前記遮水層が径方向に重なりを有する部分について計測された波形データ、及び前記遮水層が径方向に重なりを有していない部分について計測された波形データの双方を訓練データに用いて学習してあり、
取得した波形データが径方向に重なりを有している部分について計測された波形データであるか、又は径方向に重なりを有していない部分について計測された波形データであるかに関わらず、前記学習モデルから出力される情報に基づき、遮水層の有無又は遮水層の材質を推定する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項4又は請求項5に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記ケーブル種別に関する情報は、遮蔽層の構造を判別するための情報を含み、
前記学習モデルから出力される情報に基づき、前記地中送電ケーブルが備える遮蔽層の構造を推定する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1から請求項6の何れか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
渦電流探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記渦電流探傷プローブより得られる第1波形データを取得し、
渦電流探傷プローブより得られる第1波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された第1学習モデルに、取得した第1波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定し、
前記第1学習モデルによる推定結果の確信度が閾値未満である場合、超音波探傷プローブにより前記地中送電ケーブルを走査した際に前記超音波探傷プローブより得られる第2波形データを取得し、
超音波探傷プローブより得られる第2波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された第2学習モデルに、取得した第2波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定し、
前記第1学習モデル又は前記第2学習モデルを用いて推定した推定結果を出力する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
渦電流探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記渦電流探傷プローブより得られる第1波形データを取得し、
渦電流探傷プローブより得られる第1波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された第1学習モデルに、取得した第1波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定し、
超音波探傷プローブにより前記地中送電ケーブルを走査した際に前記超音波探傷プローブより得られる第2波形データを取得し、
超音波探傷プローブより得られる第2波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された第2学習モデルに、取得した第2波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定し、
前記第1学習モデルによる推定結果の確信度と、前記第2学習モデルに推定結果の確信度との高低に応じて、何れか一方の推定結果を出力する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記探傷プローブより得られる波形データと、前記地中送電ケーブルの種別を示す情報とを含むデータセットを訓練データに用いて、前記波形データと前記地中送電ケーブルの種別と関係を学習してあるニューラルネットワークを備え、
前記探傷プローブより得られる波形データが入力された場合、前記ニューラルネットワークによる演算を実行し、地中送電ケーブルの種別に関する情報を出力するようコンピュータを機能させる
学習モデル。
【請求項11】
前記ニューラルネットワークは、
渦電流探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記渦電流探傷プローブより得られる第1波形データの入力に応じて、前記第1波形データの特徴を示す第1特徴量を出力する第1ネットワーク層と、
超音波探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記超音波探傷プローブより得られる第2波形データの入力に応じて、前記第2波形データの特徴を示す第2特徴量を出力する第2ネットワーク層と、
前記第1ネットワーク層から出力される第1特徴量と、前記第2ネットワーク層から出力される第2特徴量とを連結する連結層を含み、該連結層からの出力を処理して前記地中送電ケーブルのケーブル種別に関する情報を出力する第3ネットワーク層と
を含む、請求項10に記載の学習モデル。
【請求項12】
探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記探傷プローブより得られる波形データを取得する取得部と、
探傷プローブより得られる波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、前記取得部が取得した波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定する推定部と、
推定結果を出力する出力部と
を備える推定装置。
【請求項13】
探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記探傷プローブより得られる波形データを取得し、
探傷プローブより得られる波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定し、
推定結果を出力する
処理をコンピュータにより実行する推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラム、学習モデル、推定装置、及び推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市の過密化や景観上の理由などから、送電ケーブルの地中埋設化が進められている。地中送電ケーブルには、遮水層を備えた遮水ケーブルと、遮水層を備えていない非遮水ケーブルとが含まれており、現状では両者が混在して使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-20210号公報
【特許文献2】特開2002-75072号公報
【特許文献3】特開2006-164725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地中送電ケーブルは、上述した遮水ケーブル及び非遮水ケーブルの他、遮水層の材質が異なるもの、金属テープによる遮蔽層を有するもの、導体ワイヤシールドによる遮蔽層を有するものなど、様々な種別のケーブルが存在する。しかしながら、地中送電ケーブルのケーブル種別を外部から見分けることは困難である。
【0005】
本発明は、地中送電ケーブルの種別を推定することができるコンピュータプログラム、学習モデル、推定装置、及び推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記探傷プローブより得られる波形データを取得し、探傷プローブより得られる波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定し、推定結果を出力する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0007】
本発明の一態様に係る学習モデルは、探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記探傷プローブより得られる波形データと、前記地中送電ケーブルの種別を示す情報とを含むデータセットを訓練データに用いて、前記波形データと前記地中送電ケーブルの種別と関係を学習してあるニューラルネットワークを備え、前記探傷プローブより得られる波形データが入力された場合、前記ニューラルネットワークによる演算を実行し、地中送電ケーブルの種別に関する情報を出力するようコンピュータを機能させる。
【0008】
本発明の一態様に係る推定装置は、探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記探傷プローブより得られる波形データを取得する取得部と、探傷プローブより得られる波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、前記取得部が取得した波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定する推定部と、推定結果を出力する出力部とを備える。
【0009】
本発明の一態様に係る推定方法は、探傷プローブにより地中送電ケーブルを走査した際に前記探傷プローブより得られる波形データを取得し、探傷プローブより得られる波形データを入力した場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した波形データを入力して、前記地中送電ケーブルのケーブル種別を推定し、推定結果を出力する処理をコンピュータにより実行する。
【発明の効果】
【0010】
本願によれば、地中送電ケーブルの種別を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る推定システムの構成例を示す説明図である。
図2】地中送電ケーブルの構造を説明する断面図である。
図3】推定装置の内部構成を説明するブロック図である。
図4】学習モデルの構成例を示す模式図である。
図5】データセットの一例を示す概念図である。
図6】学習モデルの生成手順を説明するフローチャートである。
図7】推定装置が実行する種別推定処理の実行手順を説明するフローチャートである。
図8】実施の形態2における学習モデルの概略構成を示す模式図である。
図9】実施の形態3における学習モデルの概略構成を示す模式図である。
図10】実施の形態4における学習モデルの概略構成を示す模式図である。
図11】実施の形態5に係る推定装置の内部構成を説明するブロック図である。
図12】第1学習モデルの構成例を示す模式図である。
図13】第2学習モデルの構成例を示す模式図である。
図14】実施の形態5に係る推定装置が実行する種別推定処理の実行手順を説明するフローチャートである。
図15】実施の形態6に係る推定装置が実行する種別推定処理の実行手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る推定システムの構成例を説明する説明図である。実施の形態1に係る推定システムは、推定装置1、渦電流探傷装置2、及び超音波探傷装置3を備える。
【0013】
渦電流探傷装置2は、渦電流を利用して検査対象における欠陥を検知するための装置であり、励磁用コイル及び検出用コイルを内蔵した渦電流探傷プローブ20を備える。渦電流探傷装置2は、渦電流探傷プローブ20の励磁用コイルに交流電流を供給して交流磁場を発生させ、検査対象の表層部に渦電流を誘起させる。検査対象の表層部に欠陥が存在する場合に渦電流が乱れ、磁場が変化する。渦電流探傷装置2は、検査対象における磁場の変化を、検出用コイルに現れる誘起電圧の変化として検出し、検査対象における欠陥を検知する。
【0014】
超音波探傷装置3は、超音波を利用して検査対象における欠陥を検知するための装置であり、送信用圧電素子及び受信用圧電素子を内蔵した超音波探傷プローブ30を備える。超音波探傷装置3は、超音波探傷プローブ30の送信用圧電素子に電圧を印加してピエゾ効果と呼ばれる物理的な力を発生させ、その力を超音波として検査対象の内部に伝搬させる。超音波の伝搬経路に欠陥が存在する場合、超音波は、その欠陥によって反射する。超音波探傷装置3は、欠陥による反射波を受信用圧電素子で検出し、検査対象における欠陥を検知する。
【0015】
渦電流探傷装置2及び超音波探傷装置3は共に検査対象における欠陥を検知するために用いられる装置であるが、本実施の形態では、これらの装置から出力される波形データに基づき、地中送電ケーブル4のケーブル種別を推定する構成について説明する。ここで、地中送電ケーブル4は、遮水層を備える遮水ケーブル、及び遮水層を備えていない非遮水ケーブルを含む。更に、地中送電ケーブル4は、遮水層の材質が異なるもの、金属テープによる遮蔽層を有するもの、導体ワイヤシールドによる遮蔽層を有するものなど、様々な種別のケーブルを含み得る。
【0016】
推定装置1は、渦電流探傷装置2及び超音波探傷装置3より地中送電ケーブル4を走査した際に得られるデータに基づき、地中送電ケーブル4のケーブル種別を推定するための装置である。具体的には、推定装置1は、渦電流探傷プローブ20により地中送電ケーブル4を走査した際に得られる第1波形データと、超音波探傷プローブ30により地中送電ケーブル4を走査した際に得られる第2波形データとを取得し、取得した第1波形データ及び第2波形データを後述の学習モデルLM(図4を参照)に入力して、学習モデルLMによる演算を実行することにより、地中送電ケーブル4のケーブル種別を推定する。上述したように、地中送電ケーブル4は様々な種別のケーブルを含み得るが、実施の形態1では、種別推定の一例として、対象の地中送電ケーブル4が遮水ケーブルであるか、又は非遮水ケーブルであるかを推定する構成について説明する。
【0017】
ここで、第1波形データは、渦電流探傷プローブ20より出力される生の信号波形を示すデータであってもよく、渦電流探傷装置2の内部にて適宜の処理が施された後の信号波形を示すデータであってもよい。同様に、第2波形データは、超音波探傷プローブ30より出力される生の信号波形を示すデータであってもよく、超音波探傷装置3の内部にて適宜の処理が施された後の信号波形を示すデータであってもよい。これらの波形データは、信号の時間変化を数値として表した数値データであってもよく、信号の時間変化をグラフとして描画した波形(リサージュ波形若しくは時間スイープ波形)の画像データであってもよい。
【0018】
図1の例では、地中送電ケーブル4の特定の箇所を渦電流探傷プローブ20で走査し、別の箇所を超音波探傷プローブ30で走査している様子を示しているが、両探傷プローブ20,30により同時的に地中送電ケーブル4を走査する必要はない。例えば、渦電流探傷プローブ20(又は超音波探傷プローブ30)による走査を先に行い、次いで、超音波探傷プローブ30(又は渦電流探傷プローブ20)による走査を行う構成としてもよい。また、渦電流探傷プローブ20による走査箇所と、超音波探傷プローブ30による走査箇所とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
図2は地中送電ケーブル4の構造を説明する断面図である。図2Aは地中送電ケーブル4の一例として遮水層を備えていない非遮水ケーブルを示している。非遮水ケーブルは、例えば、導体41、絶縁体42、遮蔽層43、及びシース45を中心から外側に向かって同軸状に配置して形成される。導体41には、銅、銅合金、アルミ、アルミ合金等からなる複数の芯線を撚り合わせたものが用いられる。絶縁体42は、導体41を絶縁するための部材であり、架橋ポリエチレンなどのプラスチック、ゴム、絶縁油、絶縁紙などにより形成される。遮蔽層43は、導体41に流れる電流に起因して発生する電磁波を遮蔽するための部材であり、絶縁体42の外表面に銅製のテープを螺旋状に巻き付けて形成される。代替的に、遮蔽層43は、絶縁体42の外表面に軟銅線等の導電素線を巻回したワイヤシールド(WS)として形成されてもよい。シース45は、腐食防止及び湿気進入防止を目的として設けられ、クロロプレンなどの合成ゴム、塩化ビニル及びポリエチレンといったプラスチックなどにより形成される。
【0020】
図2Bは地中送電ケーブル4の他の例として遮水層44を備えた遮水ケーブルを示している。遮水ケーブルは、上述した導体41、絶縁体42、遮蔽層43、及びシース45の他、遮蔽層43の外側に配される遮水層44を備える。遮水層44は、シース45の耐水性を補完するための部材である。遮水層44には、例えば、合成樹脂製の基材の片面に金属(例えば、アルミや鉛)を被覆した金属ラミネートテープが用いられる。遮水層44は、遮蔽層43の周長よりも少し長い幅を有しており、遮蔽層43を覆う状態で遮蔽層43の周囲に巻回し、幅方向の両端縁同士を重ね合わせ、水密を保持した状態で接合される。接合された箇所は、遮水層44が径方向に重なりを有する部分である。以下では、遮水層44が径方向に重なりを有する部分を二枚部44aと表記する。一方、接合されていない箇所は、遮水層44が径方向に重なりを有していない部分である。以下では、遮水層44が径方向に重なりを有していない部分を一枚部44bと表記する。
【0021】
図3は推定装置1の内部構成を説明するブロック図である。推定装置1は、汎用又は専用のコンピュータであり、制御部11、記憶部12、入力部13、通信部14、操作部15、表示部16などを備える。
【0022】
制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。制御部11が備えるROMには、推定装置1が備えるハードウェア各部の動作を制御する制御プログラム等が記憶される。制御部11内のCPUは、ROMに記憶されている制御プログラムや記憶部12に記憶されている各種コンピュータプログラムを読み込んで実行し、ハードウェア各部の動作を制御することによって、装置全体を本願における推定装置として機能させる。制御部11が備えるRAMには、演算の実行中に利用されるデータが一時的に記憶される。
【0023】
実施の形態において、制御部11は、CPU、ROM、及びRAMを備える構成としたが、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、量子プロセッサ、揮発性又は不揮発性のメモリ等を備える1又は複数の演算回路であってもよい。また、制御部11は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えてもよい。
【0024】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの記憶装置を備える。記憶部12には、制御部11によって実行される各種のコンピュータプログラムや制御部11によって利用される各種のデータが記憶される。
【0025】
記憶部12に記憶されるコンピュータプログラムには、第1波形データ及び第2波形データを取得し、取得した第1波形データ及び第2波形データに基づき地中送電ケーブルの種別を推定し、推定結果を出力する処理をコンピュータに実行させるための推定処理プログラムPG1が含まれる。推定処理プログラムPG1は、単一のコンピュータプログラムであってもよく、複数のコンピュータプログラムにより構成されるものであってもよい。また、推定処理プログラムPG1は、既存のライブラリを部分的に用いるものであってもよい。
【0026】
推定処理プログラムPG1を含むコンピュータプログラム(プログラム製品w)は、当該コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体RMにより提供される。記録媒体RMは、例えば、CD-ROM、USBメモリ、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型メモリである。制御部11は、図に示していない読取装置を用いて、記録媒体RMから各種コンピュータプログラムを読み取り、読み取った各種コンピュータプログラムを記憶部12に記憶させる。また、記憶部12に記憶されるコンピュータプログラムは、通信部14を介した通信により提供されてもよい。この場合、制御部11は、通信部14を通じてコンピュータプログラムを取得し、取得したコンピュータプログラムを記憶部12に記憶させる。
【0027】
また、記憶部12は、第1波形データ及び第2波形データが入力された場合、地中送電ケーブルの種別に関する情報を出力するよう学習された学習モデルLMを備える。記憶部12には、学習モデルLMを定義する情報として、学習モデルLMが備える層の構成情報、各層に含まれるノードの情報、ノード間の重み係数やバイアスなどの情報が記憶される。学習モデルLMの具体的な構成については後に詳述する。
【0028】
入力部13は、外部機器を接続する接続インタフェースを備える。本実施の形態において、入力部13に接続される外部機器は、渦電流探傷装置2及び超音波探傷装置3である。推定装置1は、入力部13に接続された渦電流探傷装置2から、地中送電ケーブル4を渦電流探傷プローブ20により走査して得られる第1波形データを取得すると共に、入力部13に接続された超音波探傷装置3から、地中送電ケーブル4を超音波探傷プローブ30により走査して得られる第2波形データを取得する。
【0029】
本実施の形態では、渦電流探傷装置2及び超音波探傷装置3を入力部13に接続し、渦電流探傷プローブ20より得られる第1波形データと、超音波探傷プローブ30より得られる第2波形データを取得する構成とした。代替的に、渦電流探傷装置2の表示画面に表示される波形の画像と、超音波探傷装置3の表示画面に表示される波形の画像をデジタルカメラ等の撮像装置によりキャプチャし、得られた波形の画像を通信経由又は記録媒体経由で推定装置1に取り込んでもよい。
【0030】
通信部14は、各種データを送受信する通信インタフェースを備える。通信部14が備える通信インタフェースは、例えば、WiFi(登録商標)やイーサネット(登録商標)で用いられるLAN(Local Area Network)の通信規格に準じた通信インタフェースである。通信部14は、送信すべきデータが制御部11から入力された場合、指定された宛先へ送信すべきデータを送信する。また、通信部14は、外部装置から自装置宛に送信されたデータを受信した場合、受信したデータを制御部11へ出力する。
【0031】
操作部15は、タッチパネル、キーボード、スイッチなどの操作デバイスを備え、ユーザによる各種の操作やデータの入力を受付ける。制御部11は、操作部15より与えられる各種の操作情報に基づき適宜の制御を行い、必要に応じて入力されたデータを記憶部12に記憶させる。
【0032】
表示部16は、液晶モニタや有機EL(Electro-Luminescence)などの表示デバイスを備え、制御部11からの指示に応じてユーザ等に報知すべき情報を表示する。
【0033】
本実施の形態では、推定装置1が学習モデルLMを備える構成としたが、学習モデルLMは、推定装置1からアクセス可能な外部装置に記憶されてもよい。この場合、推定装置1は、学習モデルLMによる演算を外部装置に実行させるべく、演算指示及び演算に必要なデータを外部装置へ送信し、学習モデルLMによる演算結果を外部装置から受信すればよい。
【0034】
推定装置1は、単一のコンピュータに限らず、複数のコンピュータや周辺機器からなるコンピュータシステムであってもよい。また、推定装置1は、ソフトウェアによって仮想的に構築される仮想マシンであってもよい。
【0035】
図4は学習モデルLMの構成例を示す模式図である。実施の形態1における学習モデルLMは、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)により構築される学習モデルであり、第1ネットワーク層NN1、第2ネットワーク層NN2、及び第3ネットワーク層NN3を備える。
【0036】
第1ネットワーク層NN1は、畳み込み層及びプーリング層を備える。図4において、「Conv」は畳み込み層、「MaxPooling」はマックスプーリング層を表す。第1ネットワーク層NN1は、渦電流探傷プローブ20より得られる第1波形データが入力された場合、当該第1波形データの特徴を示す第1特徴量を抽出し、抽出した第1特徴量を後段の第3ネットワーク層NN3へ出力するよう構成される。
【0037】
第2ネットワーク層NN2は、第1ネットワーク層NN1と同様に、畳み込み層及びプーリング層を備える。第2ネットワーク層NN2は、超音波探傷プローブ30より得られる第2波形データが入力された場合、当該第2波形データの特徴を示す第2特徴量を抽出し、抽出した第2特徴量を後段の第3ネットワーク層NN3へ出力するよう構成される。
【0038】
第3ネットワーク層NN3は、連結層、平滑化層、線形層、及びドロップアウト層を備える。図4において、「Concatenate」は連結層、「Flatten」は平滑化層、「Linear」は線形層、「Dropout」はドロップアウト層を表す。第3ネットワーク層NN3は、第1ネットワーク層NN1から出力される第1特徴量と、第2ネットワーク層NN2から出力される第2特徴量とを連結層にて連結し、連結層の出力を後段の各層にて順次処理して地中送電ケーブル4のケーブル種別に関する情報を出力するように構成される。本実施の形態では、最終の線形層(Linear4)をソフトマックス関数により構築し、ケーブル種別に関する情報として、対象の地中送電ケーブル4が遮水ケーブルと推定される確率P1、及び非遮水ケーブルと推定される確率P2を出力すればよい。
【0039】
本実施の形態では、CNNにより構築される学習モデルLMについて説明したが、学習モデルLMは、CNNに限らず、R-CNN(Region-based CNN)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)などにより構築されるモデルであってもよい。
【0040】
また、図4の構成例では、第1ネットワーク層NN1及び第2ネットワーク層NN2がそれぞれ畳み込み層及びプーリング層を3つずつ備える構成としたが、畳み込み層及びプーリング層の数は3つずつに限定されない。第1ネットワーク層NN1及び第2ネットワーク層NN2は、入力される波形データのサイズ等に応じて適宜設計される。更に、図4の構成例では、第3ネットワーク層NN3が1つの連結層、1つの平滑化層、4つの線形層、及び2つのドロップアウト層を備える構成としたが、各層の数や配置は図4に示すものに限定されない。第3ネットワーク層NN3における各層の数や配置は、入力される特徴量や出力すべき情報等に応じて適宜設計される。
【0041】
以下、学習モデルLMの生成方法について説明する。
学習モデルLMを生成する準備段階では、ケーブル種別が既知の地中送電ケーブル4について、渦電流探傷装置2及び超音波探傷装置3による計測を実施し、ケーブル種別を示す種別情報(正解ラベル)、渦電流探傷プローブ20より得られる第1波形データ、及び超音波探傷プローブ30より得られる第2波形データを関連付けたデータセットを作成する。
【0042】
図5はデータセットの一例を示す概念図である。学習用の訓練データとして用いられるデータセットは、渦電流の波形データ(第1波形データ)、超音波の波形データ(第2波形データ)、及びケーブル種別を示す種別情報を含む。第1波形データは、渦電流探傷装置2によって計測される渦電流の時系列変化を示す数値データ又は画像データであり、装置内ではファイルとして保存される。そのため、データセットの渦電流波形の欄には、そのファイルを指定するファイル名が登録される。第2波形データは、超音波探傷装置3によって計測される超音波の時系列変化を示す数値データ又は画像データであり、装置内ではファイルとして保存される。そのため、データセットの超音波波形の欄には、そのファイルを指定するファイル名が登録される。なお、図5のデータセットの例では、簡略化のために、1つの地中送電ケーブル4につき一組のファイル名のみを記載しているが、実際には、それぞれの地中送電ケーブル4につき第1波形データ及び第2波形データを多数取得し、これらの波形データを記録した複数のファイルをケーブル種別の種別情報に関連付けて記憶すればよい。
【0043】
ケーブル種別の種別情報は、遮水層44に関する情報を含む。遮水層44に関する情報は、地中送電ケーブル4が遮水層44を有する否かを示す情報を含む。地中送電ケーブル4が遮水層44を有している場合、遮水層44の材質を示す情報が含まれてもよい。遮水層44の材質は、アルミであることが多いが、鉛が用いられることもある。
【0044】
ケーブル種別の種別情報は、電圧、断面積、製造年、遮蔽層43、メーカ名、絶縁厚、シース厚、及び備考の情報を更に含んでもよい。ここで、遮蔽層43の情報は、地中送電ケーブル4が備える遮蔽層43の構造に関する情報を含む。具体的には、遮蔽層43が銅テープ製であるか、または、ワイヤシールド(WS:Wire Shield)製であるかの情報を含む。備考は、例えば、防災テープの有無を示す情報を含む。
【0045】
学習用のデータセットは、例えば推定装置1の記憶部12に記憶される。推定装置1は、記憶部12に記憶されたデータセットを訓練データに用いて、学習モデルLMを生成する。
【0046】
図6は学習モデルLMの生成手順を説明するフローチャートである。推定装置1の制御部11は、事前に用意されたデータセットから、第1波形データ、第2波形データ、及びケーブル種別を示す種別情報を含む一組の訓練データを選択する(ステップS101)。制御部11は、選択した訓練データに含まれる第1波形データ及び第2波形データを学習モデルLMに入力し、学習モデルLMによる演算を実行する(ステップS102)。なお、学習が開始される前の段階において、学習モデルLMのモデルパラメータには、初期値が設定されているものとする。
【0047】
制御部11は、学習モデルLMによる演算結果を評価し(ステップS103)、学習が完了したか否かを判断する(ステップS104)。制御部11は、学習モデルLMよる演算結果と、訓練データに含まれる正解ラベル(遮水層44の有無)とに基づいて設定した誤差関数(目的関数、損失関数、コスト関数ともいう)を用いて、演算結果を評価することができる。制御部11は、例えば、最急降下法などの勾配降下法により誤差関数を最適化(最小化又は最大化)する課程で、誤差関数が閾値以下(又は閾値以上)となった場合、学習が完了したと判断する。
【0048】
学習が完了していないと判断した場合(S104:NO)、制御部11は、学習モデルLMのパラメータ(ノード間の重み及びバイアス等)を更新し(ステップS105)、処理をステップS101へ戻す。制御部11は、第3ネットワーク層NN3から、第1ネットワーク層NN1及び第2ネットワーク層NN2に向かって、ノード間の重み及びバイアスを順次更新する誤差逆伝搬法を用いて、学習モデルLMにおけるパラメータを更新することができる。
【0049】
学習が完了したと判断した場合(S104:YES)、学習済みの学習モデルLMが得られるので、制御部11は、学習済みの学習モデルLMを記憶部12に記憶させる(ステップS106)。
【0050】
本実施の形態では、学習用のデータセットが推定装置1の記憶部12に記憶されるものとしたが、推定装置1の外部の記憶装置に記憶されてもよい。この場合、推定装置1は、外部の記憶装置にアクセスし、外部の記憶装置から取得した訓練データを用いて学習モデルLMの学習を行えばよい。また、本実施の形態では、推定装置1が学習モデルLMを生成する構成したが、外部サーバなどの情報処理装置にて学習モデルLMを生成する構成としてもよい。この場合、推定装置1は、通信又は記録媒体を介して、外部で生成された学習済みの学習モデルLMを取得し、取得した学習モデルLMを記憶部12に記憶すればよい。
【0051】
次に、学習完了後に推定装置1が実行する種別推定処理について説明する。
図7は推定装置1が実行する種別推定処理の実行手順を説明するフローチャートである。作業者は、ケーブル種別が不明の地中送電ケーブル4について、渦電流探傷装置2及び超音波探傷装置3による計測を実行する。推定装置1は、例えば入力部13を通じて、渦電流探傷装置2より第1波形データを取得し(ステップS121)、超音波探傷装置3より第2波形データを取得する(ステップS122)。ステップS121及びS122の処理手順は前後してもよい。
【0052】
推定装置1の制御部11は、取得した第1波形データ及び第2波形データを学習モデルLMに入力し、学習モデルLMによる演算を実行する(ステップS123)。すなわち、制御部11は、第1波形データを第1ネットワーク層NN1に入力し、第1ネットワーク層NN1による演算を行うことによって第1波形データの特徴量(第1特徴量)を抽出する。また、制御部11は、第2波形データを第2ネットワーク層NN2に入力し、第2ネットワーク層NN2による演算を行うことによって第2波形データの特徴量(第2特徴量)を抽出する。制御部11は、第1ネットワーク層NN1より得られる第1特徴量と第2ネットワーク層NN2より得られる第2特徴量とを第3ネットワーク層NN3に受け渡し、連結層にて連結した後、後段の各層にて演算を実行することにより、最終的な出力を得る。具体的には、制御部11は、最終的な出力として、対象の地中送電ケーブル4が遮水ケーブルと推定される確率P1、及び対象の地中送電ケーブル4が非遮水ケーブルと推定される確率P2を得る。
【0053】
制御部11は、学習モデルLMによる演算結果に基づき、地中送電ケーブル4のケーブル種別を推定する(ステップS124)。すなわち、制御部11は、学習モデルLMの第3ネットワーク層NN3より出力される確率P1,P2の大小を比較し、確率P1が確率P2より高い場合には遮水ケーブルと推定し、確率P1が確率P2より低い場合には非遮水ケーブルと推定する。
【0054】
制御部11は、ケーブル種別の推定結果を出力する(ステップS125)。制御部11は、ケーブル種別を示す情報(文字情報若しくは画像情報)を表示部16に表示させる。代替的に、制御部11は、ケーブル種別を示す情報を通信部14に出力し、通信部14より外部の端末装置へ送信してもよい。
【0055】
本願発明者らは、事前に用意したデータセットを学習用及び検証用の2つのサブセットに分割し、学習用のサブセットを用いて学習モデルLMを生成した後、検証用のサブセットを用いてケーブル種別の検出率及び誤報率を評価した。ここで、検出率は、全データ数のうち正解数が占める割り合いを示す。誤報率は、遮水ケーブルを非遮水ケーブルと誤って推定し、非遮水ケーブルを遮水ケーブルと誤って推定した割り合いを示す。検証の結果、実施の形態1に係る学習モデルLMでは、検出率99.9%、誤報率0.1%の精度が得られた。
【0056】
以上のように、実施の形態1では、渦電流探傷プローブ20より得られる渦電流の波形データ(第1波形データ)と、超音波探傷プローブ30より得られる超音波の波形データ(第2波形データ)とを学習モデルLMに入力し、学習モデルLMによる演算結果に基づきケーブル種別を推定するので、導体のサイズ、製造年、遮水層44の材質、遮蔽層43の構造、絶縁厚、シース厚等が異なる様々な種別の地中送電ケーブル4が存在する中で、検査員の技量に依存することなく、遮水層44の有無を精度良く推定することができる。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態2では、学習モデルLMを用いて、遮水層44の材質を推定する構成について説明する。
なお、システムの全体構成、推定装置1の内部構成等については実施の形態1と同様であるため、その説明を省略することとする。
【0058】
図8は実施の形態2における学習モデルLMの概略構成を示す模式図である。実施の形態2における学習モデルLMの構成は、実施の形態1と同様であり、第1ネットワーク層NN1、第2ネットワーク層NN2、及び第3ネットワーク層NN3を備える。第3ネットワーク層NN3の最終の線形層(Linear4)は、3つのノードを備え、各ノードから、地中送電ケーブル4に設けられた遮水層44がアルミである確率P1、地中送電ケーブル4に設けられた遮水層44が鉛である確率P2、地中送電ケーブル4が遮水層44を備えていない確率P3を出力する。このような学習モデルLMは、データセットに含まれる情報のうち、遮水層44の有無の情報、及び遮水層44の材質の情報を正解ラベルに用いて学習を行うことにより生成される。学習手順は実施の形態1と同様である。
【0059】
推定装置1の制御部11は、学習済みの学習モデルLMに第1波形データ及び第2波形データを入力し、学習モデルLMによる演算を実行することによって、ケーブル種別を推定する。例えば、制御部11は、学習モデルLMによる演算の結果、確率P1が最も高いと判断した場合、対象の地中送電ケーブル4がアルミ製の遮水層44を備えた遮水ケーブルであると推定する。また、制御部11は、学習モデルLMによる演算の結果、確率P2が最も高いと判断した場合、対象の地中送電ケーブル4が鉛製の遮水層44を備えた遮水ケーブルであると推定する。制御部11は、学習モデルLMによる演算の結果、確率P3が最も高いと判断した場合、対象の地中送電ケーブル4が非遮水ケーブルであると推定する。
【0060】
以上のように、実施の形態2では、学習モデルLMを用いることにより、遮水層44の有無だけでなく、遮水層44の材質を推定することができる。
【0061】
(実施の形態3)
実施の形態3では、計測箇所に関わらずにケーブル種別を推定できる学習モデルLMについて説明する。
なお、システムの全体構成、推定装置1の内部構成等については実施の形態1と同様であるため、その説明を省略することとする。
【0062】
上述したように、地中送電ケーブル4に遮水層44が設けられている場合、その遮水層44は、径方向に重なりを有する部分(二枚部44a)と、径方向に重なりを有していない部分(一枚部44b)とを備えている。このため、渦電流探傷プローブ20及び超音波探傷プローブ30により、二枚部44aを計測したか、または、一枚部44bを計測したかによって、得られる波形データの特徴が異なる可能性がある。
【0063】
実施の形態3では、二枚部44aを計測することにより得られる波形データと、一枚部44bを計測することにより得られる波形データとの双方を訓練データに用いて学習することにより、計測箇所に関わらずにケーブル種別を推定することができる学習モデルLMを生成する。
【0064】
図9は実施の形態3における学習モデルLMの概略構成を示す模式図である。実施の形態3における学習モデルLMの構成は、実施の形態1と同様であり、第1ネットワーク層NN1、第2ネットワーク層NN2、及び第3ネットワーク層NN3を備える。第3ネットワーク層NN3の最終の線形層(Linear4)は、例えば、2つのノードを備え、各ノードから、地中送電ケーブル4が遮水ケーブルと推定される確率P1、及び非遮水ケーブルと推定される確率P2をそれぞれ出力する。
【0065】
実施の形態3に係る学習モデルLMは、二枚部44aを計測して得られる波形データとケーブル種別を示す種別情報とを含むデータセット、一枚部44bを計測して得られる波形データとケーブル種別を示す種別情報とを含むデータセット、及び非遮水ケーブルを計測して得られる波形データとケーブル種別を示す種別情報とを含むデータセットを訓練データに用いて学習することにより生成される。なお、第1波形データ及び第2波形データの双方が二枚部44a(又は一枚部44b)を計測したデータである必要はなく、第1波形データ及び第2波形データの一方が二枚部44aを計測したデータ、他方が一枚部44bを計測したデータであってもよい。
【0066】
学習済みの学習モデルLMが得られた後、推定装置1は、地中送電ケーブル4を走査した際に得られる波形データを学習済みの学習モデルLMに入力して、学習モデルLMによる演算を実行し、学習モデルLMから出力される情報に基づいて、地中送電ケーブル4のケーブル種別を推定する。学習モデルLMに入力する波形データ(第1波形データ及び第2波形データ)は、二枚部44aを計測したデータであってもよく、一枚部44bを計測したデータであってもよい。すなわち、作業者は、二枚部44a及び一枚部44bを区別して計測する必要はなく、地中送電ケーブル4の任意の箇所を計測し、得られた波形データを学習モデルLMに入力すればよい。
【0067】
なお、図3に示した学習モデルLMは、遮水層44の有無を推定するための学習モデルであるが、実施の形態2において説明したように、遮水層44の材質を推定する学習モデルであってもよい。
【0068】
以上のように、実施の形態3では、二枚部44aを計測することにより得られる波形データと、一枚部44bを計測することにより得られる波形データとの双方を訓練データに用いて学習された学習モデルLMを用いることにより、計測箇所に関わらずにケーブル種別を推定することができる。
【0069】
(実施の形態4)
実施の形態4では、学習モデルLMを用いて、遮蔽層43の構造を推定する構成について説明する。
なお、システムの全体構成、推定装置1の内部構成等については実施の形態1と同様であるため、その説明を省略することとする。
【0070】
図10は実施の形態4における学習モデルLMの概略構成を示す模式図である。実施の形態4における学習モデルLMの構成は、実施の形態1と同様であり、第1ネットワーク層NN1、第2ネットワーク層NN2、及び第3ネットワーク層NN3を備える。第3ネットワーク層NN3の最終の線形層(Linear4)は、2つのノードを備え、各ノードから、遮蔽層43が銅テープ製である確率P1、遮蔽層43がワイヤシールド製である確率P2を出力する。このような学習モデルLMは、データセットに含まれる情報のうち、遮蔽層43の構造の情報を正解ラベルに用いて学習を行うことにより生成される。学習手順は実施の形態1と同様である。
【0071】
推定装置1の制御部11は、学習済みの学習モデルLMに第1波形データ及び第2波形データを入力し、学習モデルLMによる演算を実行することによって、ケーブル種別を推定する。例えば、制御部11は、学習モデルLMによる演算の結果、確率P1が確率P2より高いと判断した場合、対象の地中送電ケーブル4が銅テープ製の遮蔽層43を備えたケーブルであると推定する。また、制御部11は、学習モデルLMによる演算の結果、確率P2が確率P1より高いと判断した場合、対象の地中送電ケーブル4がワイヤシール製の遮蔽層43を備えたケーブルであると推定する。
【0072】
以上のように、実施の形態4では、学習モデルLMを用いることにより、遮蔽層43の構造を推定することができる。
【0073】
実施の形態1では、遮水層44の有無を推定する構成、実施の形態2では、遮水層44の材質を推定する構成、実施の形態4では、遮蔽層43の構造を推定する構成について説明したが、1つの学習モデルLMを用いて、遮水層44の有無、遮水層44の材質、遮蔽層43の構造の2つ以上を推定する構成としてもよい。
【0074】
(実施の形態5)
実施の形態5では、第1波形データに基づく推定結果と、第2波形データに基づく推定結果とに基づき、ケーブル種別を推定する構成について説明する。
【0075】
図11は実施の形態5に係る推定装置1の内部構成を説明するブロック図である。推定装置1は、汎用又は専用のコンピュータであり、制御部11、記憶部12、入力部13、通信部14、操作部15、表示部16などを備える。これらハードウェア各部の構成は実施の形態1と同様である。
【0076】
実施の形態5では、後述する第1学習モデルLM1及び第2学習モデルLM2が記憶部12にインストールされる。推定装置1の制御部11は、第1学習モデルLM1及び第2学習モデルLM2を用いて、ケーブル種別を推定する。
【0077】
図12は第1学習モデルLM1の構成例を示す模式図である。第1学習モデルLM1は、例えば、CNNにより構築される学習モデルであり、第1ネットワーク層NN11、及び第2ネットワーク層NN12を備える。
【0078】
第1ネットワーク層NN11は、畳み込み層及びプーリング層を備えており、渦電流探傷プローブ20より得られる第1波形データが入力された場合、当該第1波形データの特徴を示す第1特徴量を抽出し、抽出した第1特徴量を後段の第2ネットワーク層NN12へ出力する。
【0079】
第2ネットワーク層NN12は、平滑化層、線形層、及びドロップアウト層を備えており、第1特徴量の入力に応じて、各層で順次演算を実行し、地中送電ケーブル4のケーブル種別に関する情報を出力する。第2ネットワーク層NN12の最終の線形層(Linear4)は、ケーブル種別に関する情報として、例えば、対象の地中送電ケーブル4が遮水ケーブルと推定される確率P1、及び非遮水ケーブルと推定される確率P2を出力する。
【0080】
すなわち、実施の形態5に係る第1学習モデルLM1は、渦電流探傷プローブ20より得られる第1波形データが単独で入力された場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう構成される。第1学習モデルLM1の生成手順は、実施の形態1と同様であり、渦電流の波形データ(第1波形データ)、及びケーブル種別を示す種別情報を含むデータセットを訓練データに用いて学習することにより、第1学習モデルLM1が生成される。
【0081】
本願発明者らは、事前に用意したデータセットを学習用及び検証用の2つのサブセットに分割し、学習用のサブセットを用いて第1学習モデルLM1を生成した後、検証用のサブセットを用いてケーブル種別の検出率及び誤報率を評価した。検証の結果、第1学習モデルLM1では、検出率94.5%、誤報率4.4%の精度が得られた。
【0082】
図13は第2学習モデルLM2の構成例を示す模式図である。第2学習モデルLM2は、例えば、CNNにより構築される学習モデルであり、第2ネットワーク層NN21、及び第2ネットワーク層NN22を備える。
【0083】
第1ネットワーク層NN21は、畳み込み層及びプーリング層を備えており、超音波探傷プローブ30より得られる第2波形データが入力された場合、当該第2波形データの特徴を示す第2特徴量を抽出し、抽出した第2特徴量を後段の第2ネットワーク層NN22へ出力する。
【0084】
第2ネットワーク層NN22は、平滑化層、線形層、及びドロップアウト層を備えており、第2特徴量の入力に応じて、各層で順次演算を実行し、地中送電ケーブル4のケーブル種別に関する情報を出力する。第2ネットワーク層NN22の最終の線形層(Linear4)は、ケーブル種別に関する情報として、例えば、対象の地中送電ケーブル4が遮水ケーブルと推定される確率P1、及び非遮水ケーブルと推定される確率P2を出力する。
【0085】
すなわち、実施の形態5に係る第2学習モデルLM2は、超音波探傷プローブ30より得られる第2波形データが単独で入力された場合、ケーブル種別に関する情報を出力するよう構成される。第2学習モデルLM2の生成手順は、実施の形態1と同様であり、超音波の波形データ(第2波形データ)、及びケーブル種別を示す種別情報を含むデータセットを訓練データに用いて学習することにより、第2学習モデルLM2が生成される。
【0086】
本願発明者らは、事前に用意したデータセットを学習用及び検証用の2つのサブセットに分割し、学習用のサブセットを用いて第2学習モデルLM2を生成した後、検証用のサブセットを用いてケーブル種別の検出率及び誤報率を評価した。検証の結果、第2学習モデルLM2では、検出率99.5%、誤報率0.2%の精度が得られた。
【0087】
図14は実施の形態5に係る推定装置1が実行する種別推定処理の実行手順を説明するフローチャートである。作業者は、ケーブル種別が不明の地中送電ケーブル4について、渦電流探傷装置2による計測を実行する。推定装置1は、例えば入力部13を通じて、渦電流探傷装置2から第1波形データを取得する(ステップS501)。
【0088】
推定装置1の制御部11は、取得した第1波形データを第1学習モデルLM1に入力し、第1学習モデルLM1による演算を実行する(ステップS502)。演算結果として、対象の地中送電ケーブル4が遮水ケーブルと推定される確率P1、及び対象の地中送電ケーブル4が非遮水ケーブルと推定される確率P2が得られる。
【0089】
制御部11は、第1学習モデルLM1による演算結果に基づき、地中送電ケーブル4のケーブル種別を推定する(ステップS503)。すなわち、制御部11は、第1学習モデルLM1の第2ネットワーク層NN12より出力される確率P1,P2の大小を比較し、確率P1が確率P2より高い場合には遮水ケーブルと推定し、確率P1が確率P2より低い場合には非遮水ケーブルと推定する。
【0090】
制御部11は、推定結果の確信度が閾値以上(例えば95%以上)であるか否かを判断する(ステップS504)。ステップS503で遮水ケーブルと推定した場合、推定結果の確信度は確率P1により表され、非遮水ケーブルと推定した場合、推定結果の確信度は確率P2により表される。
【0091】
確信度が閾値以上であると判断した場合(S504:YES)、制御部11は、ケーブル種別の推定結果を出力する(ステップS505)。ここでは、第1学習モデルLM1を用いた推定結果を出力すればよい。制御部11は、ケーブル種別を示す情報(文字情報若しくは画像情報)を表示部16に表示させる。代替的に、制御部11は、ケーブル種別を示す情報を通信部14に出力し、通信部14より外部の端末装置へ送信してもよい。
【0092】
確信度が閾値未満であると判断した場合(S504:NO)、制御部11は、第2波形データを取得する(ステップS506)。確信度が閾値未満の場合、超音波探傷装置3より得られる第2波形データが必要となるため、制御部11は、作業者に対して、超音波探傷装置3による計測を促してもよい。具体的には、制御部11は、先の地中送電ケーブル4について超音波探傷装置3による計測を実施すべき旨の情報を表示部16に表示させる。代替的に、制御部11は、作業者が携帯する端末装置に前記情報を送信してもよい。
【0093】
推定装置1の制御部11は、取得した第2波形データを第2学習モデルLM2に入力し、第2学習モデルLM2による演算を実行する(ステップS507)。演算結果として、対象の地中送電ケーブル4が遮水ケーブルと推定される確率P1、及び対象の地中送電ケーブル4が非遮水ケーブルと推定される確率P2が得られる。
【0094】
制御部11は、第2学習モデルLM2による演算結果に基づき、地中送電ケーブル4のケーブル種別を推定する(ステップS508)。すなわち、制御部11は、第2学習モデルLM2の第2ネットワーク層NN22より出力される確率P1,P2の大小を比較し、確率P1が確率P2より高い場合には遮水ケーブルと推定し、確率P1が確率P2より低い場合には非遮水ケーブルと推定する。
【0095】
第2学習モデルLM2による推定結果が得られた場合、制御部11は、ケーブル種別の推定結果を出力する(ステップS505)。ここでは、第2学習モデルLM2を用いた推定結果を出力すればよい。制御部11は、ケーブル種別を示す情報(文字情報若しくは画像情報)を表示部16に表示させる。代替的に、制御部11は、ケーブル種別を示す情報を通信部14に出力し、通信部14より外部の端末装置へ送信してもよい。
【0096】
以上のように、実施の形態5では、第1学習モデルLM1を用いてケーブル種別の種別推定を行い、確信度が閾値以上である場合には、第1学習モデルLM1による推定結果を出力する。この場合、渦電流探傷装置2による計測のみで済むので、作業者の作業負担が軽減される。一方、確信度が閾値未満である場合には、第2波形データを取得し、第2学習モデルLM2による推定結果を出力する。この場合、渦電流探傷装置2による計測と、超音波探傷装置3による計測とが必要となるが、渦電流の波形データによる推定結果が良好でないと判断できる場合には、超音波の波形データで種別推定を行うので、推定精度を向上させることができる。
【0097】
図14に示すフローチャートでは、第2学習モデルLM2による推定結果が得られた場合、得られた推定結果をそのまま出力する手順としたが、ステップS508で推定結果が得られた場合、推定結果の確信度を閾値と比較し、確信度が閾値以上の場合にのみ推定結果を出力し、確信度が閾値未満の場合、再計測を促してもよい。
【0098】
また、図14のフローチャートでは、第1学習モデルLM1による種別推定を先に実行し、推定結果の確信度が閾値未満である場合に第2学習モデルLM2による種別推定を実行する手順としたが、第2学習モデルLM2による種別推定を先に実行し、推定結果の確信度が閾値未満である場合に第1学習モデルLM1による種別推定を実行する手順としてもよい。
【0099】
(実施の形態6)
実施の形態6では、実施の形態5の変形例について説明する。推定装置1は、実施の形態5と同様であり、第1学習モデルLM1による推定結果と、第2学習モデルLM2による推定結果とを用いて、ケーブル種別の推定を行う。
【0100】
図15は実施の形態6に係る推定装置1が実行する種別推定処理の実行手順を説明するフローチャートである。作業者は、ケーブル種別が不明の地中送電ケーブル4について、渦電流探傷装置2及び超音波探傷装置3による計測を実行する。推定装置1は、例えば、入力部13を通じて、渦電流探傷装置2から第1波形データを取得する(ステップS601)。
【0101】
推定装置1の制御部11は、取得した第1波形データを第1学習モデルLM1に入力し、第1学習モデルLM1による演算を実行する(ステップS602)。演算結果として、対象の地中送電ケーブル4が遮水ケーブルと推定される確率P1、及び対象の地中送電ケーブル4が非遮水ケーブルと推定される確率P2が得られる。
【0102】
制御部11は、第1学習モデルLM1による演算結果に基づき、地中送電ケーブル4のケーブル種別を推定する(ステップS603)。すなわち、制御部11は、第1学習モデルLM1の第2ネットワーク層NN12より出力される確率P1,P2の大小を比較し、確率P1が確率P2より高い場合には遮水ケーブルと推定し、確率P1が確率P2より低い場合には非遮水ケーブルと推定する。
【0103】
推定装置1は、例えば、入力部13を通じて、超音波探傷装置3から第2波形データを取得する(ステップS604)。
【0104】
推定装置1の制御部11は、取得した第2波形データを第2学習モデルLM2に入力し、第2学習モデルLM2による演算を実行する(ステップS605)。演算結果として、対象の地中送電ケーブル4が遮水ケーブルと推定される確率P1、及び対象の地中送電ケーブル4が非遮水ケーブルと推定される確率P2が得られる。
【0105】
制御部11は、第2学習モデルLM2による演算結果に基づき、地中送電ケーブル4のケーブル種別を推定する(ステップS606)。すなわち、制御部11は、第2学習モデルLM2の第2ネットワーク層NN22より出力される確率P1,P2の大小を比較し、確率P1が確率P2より高い場合には遮水ケーブルと推定し、確率P1が確率P2より低い場合には非遮水ケーブルと推定する。
【0106】
制御部11は、第1学習モデルLM1による推定結果の確信度と、第2学習モデルLM2による推定結果の確信度とを比較し、確信度の比較結果に応じて、何れか一方の推定結果を選択する(ステップS607)。第1学習モデルLM1による推定結果と、第2学習モデルLM2による推定結果とが異なる場合、すなわち、一方で遮水ケーブルと推定し、他方で非遮水ケーブルと推定した場合、制御部11は、確信度が高い方の推定結果を選択すればよい。
【0107】
制御部11は、選択した推定結果を出力する(ステップS608)。具体的には、制御部11は、ケーブル種別を示す情報(文字情報若しくは画像情報)を表示部16に表示させる。代替的に、制御部11は、ケーブル種別を示す情報を通信部14に出力し、通信部14より外部の端末装置へ送信してもよい。
【0108】
以上のように、実施の形態6では、第1学習モデルLM1による推定結果、及び第2学習モデルLM2による推定結果のうち、確信度が高い方の推定結果を出力するので、渦電流探傷装置2及び超音波探傷装置3の何れか一方に不具合がある場合、不具合のある方の装置から出力される波形データに引きずられて推定精度が劣化することが避けられる。
【0109】
図15のフローチャートでは、第1学習モデルLM1による種別推定を先に実行した後、第2学習モデルLM2による種別推定を実行する手順としたが、第2学習モデルLM2による種別推定を先に実行した後、第1学習モデルLM1による種別推定を実行する手順としてもよい。
【0110】
実施の形態5及び実施の形態6では、遮水層44の有無を推定する構成としたが、実施の形態2~実施の形態4で記載したように、遮水層44の材質、及び遮蔽層43の構造の少なくとも1つを推定する構成としてもよい。
【0111】
今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
1 推定装置
2 渦電流探傷装置
3 超音波探傷装置
4 地中送電ケーブル
11 制御部
12 記憶部
13 入力部
14 通信部
15 操作部
16 表示部
20 渦電流探傷プローブ
30 超音波探傷プローブ
41 導体
42 絶縁体
43 遮蔽層
44 遮水層
45 シース
PG1 推定処理プログラム
LM 学習モデル
LM1 第1学習モデル
LM2 第2学習モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15