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特開2023-83973農作業の作業計画策定支援方法及びその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083973
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】農作業の作業計画策定支援方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20230609BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20230609BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q50/02
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198010
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】江盛 貴之
(72)【発明者】
【氏名】河野 元信
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】穀物を収穫する作業と、収穫後の穀物を乾燥・調製する作業とを密に連携し、一連の作業の効率化が実現できる。
【解決手段】作業計画策定支援装置100は、制御部101と記憶装置105とを含むものであり、記憶装置105には、圃場の上空で農作物を遠隔観測したリモートセンシングデータと、気象情報データとをそれぞれ記憶したデータベース105b,105cが備えられており、制御部101には、リモートセンシングデータの統計・解析を行う圃場計測データ解析部111と、気象情報データから天候・気温・湿度などの解析を行う気象情報データ解析部112と、収穫適期を演算する収穫適期予測演算部113と、収穫日当日の農作物の品質を予測する品質一次予測演算部114と、さらに、圃場の収穫作業に続いて行われる乾燥調製作業が、経済的・低労力で行われる作業計画を策定する作業計画最適化演算部115と、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における収穫作業と、穀物乾燥調製施設における乾燥・調製作業とを連携して農作業の作業計画の作成を行う農作業の作業計画策定支援装置であって、
前記作業計画策定支援装置は、制御部と記憶装置とを含むものであり、
前記記憶装置には、前記圃場の上空で農作物を遠隔観測したリモートセンシングデータと、過去、現在、未来の気象に関する気象情報データとをそれぞれ記憶し格納したデータベースが備えられており、
前記制御部には、前記リモートセンシングデータの統計処理・解析処理を行う圃場計測データ解析部と、前記気象情報データから天候・気温・湿度などの解析を行う気象情報データ解析部と、前記圃場計測データ及び前記気象情報データを加味し、農作物の水分過多や農作物の水分不均一が無いときを狙って収穫適期を演算する収穫適期予測演算部と、農作物の収穫日の前の1~2週間前において収穫日当日の農作物の品質を予測し演算する品質一次予測演算部と、さらに、
前記収穫適期予測演算部により演算された収穫適期、及び前記品質一次予測演算部により演算された農作物の品質に基づいて、前記圃場における収穫作業に引き続き行われる前記穀物乾燥調製施設における乾燥・調製作業が、最も経済的、かつ、低労力で作業ができるような作業計画を策定する作業計画最適化演算部と、
を備えたことを特徴とする農作業の作業計画策定支援装置。
【請求項2】
前記農作物が穀物である請求項1記載の農作業の作業計画策定支援装置。
【請求項3】
前記穀物乾燥調製施設には、複数台の穀物乾燥機を配設するとともに、前記複数台の穀物乾燥機は当該穀物乾燥機に張り込まれる穀物の初期の水分値の平均値に応じて互いに水分値の範囲が異なる範囲となるように設定され、
前記作業計画最適化演算部は、前記圃場で収穫した穀物の水分値の平均値に応じて、前記各穀物乾燥機に張り込んで乾燥を開始し、前記複数台の穀物乾燥機を全体で見たときに、乾燥作業にかかる所用時間が最も短くなるようにシミュレートした作業計画を策定してなる請求項2記載の農作業の作業計画策定支援装置。
【請求項4】
圃場における収穫作業と、穀物乾燥調製施設における乾燥・調製作業とを連携して農作業の作業計画の作成を行う農作業の作業計画策定支援方法であって、
前記作業計画策定支援方法は、
前記圃場の上空で農作物を遠隔観測するリモートセンシングデータを取得する工程と、
過去、現在、未来の気象に関する気象情報データを取得する工程と、
前記リモートセンシングデータの統計処理・解析処理を行う圃場計測データ解析工程と、
前記気象情報データから天候・気温・湿度などの解析を行う気象情報データ解析工程と、
前記圃場計測データ及び前記気象情報データを加味し、農作物の水分過多や農作物の水分不均一が無いときを狙って収穫適期を演算する収穫適期予測演算工程と、
農作物の収穫日の前の1~2週間前において収穫日当日の農作物の品質を予測し演算する品質一次予測演算工程と、を備え、さらに、
前記圃場における収穫作業に連携して行われる前記穀物乾燥調製施設における乾燥・調製作業が、前記収穫適期予測演算工程により演算された収穫適期、及び前記品質一次予測演算工程により演算された農作物の品質に基づき、最も経済的、かつ、低労力で作業ができるような作業計画に策定される作業計画最適化演算工程と、を備えたことを特徴とする農作業の作業計画策定支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業の作業計画策定支援方法及びその装置に関し、特に、農作業のうち、少なくとも圃場に作付けされた穀物を収穫する作業と、収穫後の穀物を乾燥調製施設において乾燥・調製する作業との2つの作業計画の策定を支援する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業においては、最適な時期に最適な作業を行うことで、作物の品質の向上、収量増加などの効果を得ることができる。従来は、農作業者は、JA(農業協同組合)などから発行される地域ごとの稲作カレンダー(例えば、非特許文献1)を参考にして作業時期や作業内容などを計画していた。そして、管理する圃場ごとに日照や水管理が異なるので、作業時期や作業内容の詳細については、管理する圃場ごとに過去の経験や勘によって判断することが多かった。
【0003】
一方、近年では、農作業者の過去の経験や勘(暗黙知:経験的に使っている知識だが簡単に言葉で説明できない知識を含む)に頼らず、精密農業を実現するために圃場単位で農作業を支援し、農作業の判断基準となる情報を提供する装置が多数開発されてきている。
【0004】
特許文献1には、圃場を撮影した衛星画像データの波長成分に基づき対象圃場における作物の生育状態を認識する第1ステップと、作物品種の生育状態に応じた作業条件及び作業内容を格納したデータベースから、前記第1のステップで認識した作物の生育状態に対応する作業条件が格納されているかを検索し、格納されていた場合には、当該作業条件に関連付けて格納されている作業内容を読み出し、その作業内容を対象圃場毎に出力する第2のステップとを実行し、対象圃場における農作業を支援することを特徴とする圃場管理支援方法が開示されている。
これにより、圃場を上空から撮影して地理的位置を手掛かりに生育情報を加工する地理情報装置(GIS:Geographic Information System)を採用しているが故に、圃場の作物の生育指数を判定するためのセンサ類(圃場の作物画像を取り込む作物センサや、圃場の気象を検出する気象センサや、圃場の土壌の状態を検出する土壌センサなど)が不要となり、センサ類を圃場毎に設置しなくても、農作業の判断基準となる情報を算出し、視覚的に表示し、圃場内部における生育度の分布の違いなどの農作業の意思決定の材料を提供することができる、といった作用・効果の記載がある。
【0005】
特許文献2には、適切なタイミングに農作業を実行できない場合における、農作業計画の生成を支援し、農作業の作業適正度の推移を推定することを目的とする装置及び方法が開示されている。同文献には、プロセッサと記憶装置とを含み、前記記憶装置は、画像特徴量と圃場の状態との対応を示す特徴量情報と、前記圃場の画像特徴量と、農作業の作業内容及び圃場の状態の組み合わせと、作業適正度の推移を示す作業適正度曲線と、の対応を示す作業適正度情報と、を保持し、前記プロセッサは、前記圃場について、作業適正度推定処理を実行し、前記作業適正度推定処理において、農作業の作業内容の入力を受け付け、前記特徴量情報が示す画像特徴量と、前記圃場の画像特徴量と、を比較して、前記圃場の状態を推定し、前記作業適正度情報を参照し、前記入力を受け付けた作業内容及び前記推定した状態の組み合わせに対応する作業適正度曲線を決定し、前記決定した作業適正度曲線が示す推移を、表示装置に出力する、との構成が開示されている。
この構成により、空中画像を用いて、各日の各圃場の作業適正度を算出するものであり、例えば、大規模営農集団等のように、人による監視、又は各圃場内へのセンサの設置が物理的及びコスト的に困難な場合に特に有効である。また、気象情報を考慮することにより、より正確に作業適正度を算出することができる、との記載がある。
具体的には、例えば、地域別作業経路決定部を備えた場合、各圃場がどの地域に属するか、いつどの地域の農作業を実行するか、及び各地域における圃場の巡回順序を示す情報を、作業計画として出力することができる。また、各圃場について、作業計画における管理圃場の作業日における作業適正度が併せて出力することができる。このような構成により、作業適性度と移動コストとリソース情報(人的資源、物的資源)とに基づいて、作業計画を決定することにより、リソース(人的資源、物的資源)による制約を満たし、かつコストと作業適正とを最適化する作業計画を決定することができる、との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-310463号公報
【特許文献2】特開2018-5467号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JA三次協同組合,2022年JA三次水稲栽培こよみ,[online],[令和3年12月6日検索],インターネット<URL:http://www.ja-miyoshi.or.jp/topics/data/211130_01.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2の農作業支援装置や農作業計画支援装置にあっては、耕耘(こううん)から収穫までの圃場での農作業を主体として支援するものであり、圃場を離れた収穫後の穀物の乾燥・調製作業の作業計画を策定することは想定されていなかった。
【0009】
収穫後の穀物の乾燥・調製作業は、乾燥調製施設において実施されるが、圃場での収穫作業と相互に密接に関連する。すなわち、農作業者の人員やコンバイン等の台数など限られたリソース情報(人的資源、物的資源)を最大限に活かして圃場での収穫作業を効率化できたとしても、乾燥調製施設における作業が効率化できていない場合、収穫作業の側で作業量を調整するしかない。すなわち、収穫作業に専従していた作業員を、乾燥調製施設へ異動させて作業員の補完を考える必要がある。
【0010】
そこで、カントリーエレベータやライスセンタといった乾燥調製施設側であっても、従来から、効率化を図るための作業計画の策定は行われている。カントリーエレベータやライスセンタなどの施設では、複数台の穀物乾燥機を配設し、当日の荷受量が多い場合には、各乾燥機を複数回稼働させ、翌日荷受できる荷受量に影響を及ぼさないよう、各乾燥機をできるだけ効率よく使用する計画が立てられる。しかし、この計画は、荷受当日の作業直前に立てることが多く、当日の作業者の人員が足りないなどの理由で、計画と実績とに乖離(かいり)が生じた場合は、翌日の荷受を中止せざるを得ないといった問題があった。
【0011】
つまり、従来の装置にあっては、収穫作業の計画は策定されているが、その後の乾燥・調製作業の計画の策定されていなかったので、これら作業間の連携のミスマッチが生じ、作業の効率化が達成できていないという課題があった。
【0012】
本発明は上記問題点にかんがみ、穀物を収穫する作業と、収穫後の穀物を乾燥調製施設において乾燥・調製する作業とを密に連携し、一連の作業の効率化が実現できる農作業の作業計画策定支援方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明の請求項1では、
圃場における収穫作業と、穀物乾燥調製施設における乾燥・調製作業とを連携して農作業の作業計画の作成を行う農作業の作業計画策定支援装置であって、
前記作業計画策定支援装置は、制御部と記憶装置とを含むものであり、
前記記憶装置には、前記圃場の上空で農作物を遠隔観測したリモートセンシングデータと、過去、現在、未来の気象に関する気象情報データとをそれぞれ記憶し格納したデータベースが備えられており、
前記制御部には、前記リモートセンシングデータの統計処理・解析処理を行う圃場計測データ解析部と、前記気象情報データから天候・気温・湿度などの解析を行う気象情報データ解析部と、前記圃場計測データ及び前記気象情報データを加味し、農作物の水分過多や農作物の水分不均一が無いときを狙って収穫適期を演算する収穫適期予測演算部と、農作物の収穫日の前の1~2週間前において収穫日当日の農作物の品質を予測し演算する品質一次予測演算部と、さらに、
前記収穫適期予測演算部により演算された収穫適期、及び前記品質一次予測演算部により演算された農作物の品質に基づいて、前記圃場における収穫作業に連携して行われる前記穀物乾燥調製施設における乾燥・調製作業が、最も経済的、かつ、低労力で作業ができるような作業計画を策定する作業計画最適化演算部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2では、前記農作物が穀物である請求項1記載の農作業の作業計画策定支援装置である。
【0015】
そして、本発明の請求項3では、前記穀物乾燥調製施設には、複数台の穀物乾燥機を配設するとともに、前記複数台の穀物乾燥機は当該穀物乾燥機に張り込まれる穀物の初期の水分値の平均値に応じて互いに水分値の範囲が異なる範囲となるように設定され、
前記作業計画最適化演算部は、前記圃場で収穫した穀物の水分値の平均値に応じて、前記各穀物乾燥機に張り込んで乾燥を開始し、前記複数台の穀物乾燥機を全体で見たときに、乾燥作業にかかる所用時間が最も短くなるようシミュレートした作業計画を策定してなる請求項2記載の農作業の作業計画策定支援装置としてある。
【0016】
さらに、本発明の請求項4では、圃場における収穫作業と、穀物乾燥調製施設における乾燥・調製作業とを連携して農作業の作業計画の作成を行う農作業の作業計画策定支援方法であって、
前記作業計画策定支援方法は、
前記圃場の上空で農作物を遠隔観測するリモートセンシングデータを取得する工程と、
過去、現在、未来の気象に関する気象情報データを取得する工程と、
前記リモートセンシングデータの統計処理・解析処理を行う圃場計測データ解析工程と、
前記気象情報データから天候・気温・湿度などの解析を行う気象情報データ解析工程と、
前記圃場計測データ及び前記気象情報データを加味し、農作物の水分過多や農作物の水分不均一が無いときを狙って収穫適期を演算する収穫適期予測演算工程と、
農作物の収穫日の前の1~2週間前において収穫日当日の農作物の品質を予測し演算する品質一次予測演算工程と、を備え、さらに、
前記圃場における収穫作業に連携して行われる前記穀物乾燥調製施設における乾燥・調製作業が、前記収穫適期予測演算工程により演算された収穫適期、及び前記品質一次予測演算工程により演算された農作物の品質に基づき、最も経済的、かつ、低労力で作業ができるような作業計画に策定される作業計画最適化演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圃場における収穫作業と、収穫後に穀物乾燥調製施設で行われる乾燥・調製作業とを密に連携させながら、後者の乾燥・調製作業を最も経済的、かつ、低労力化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】農作業の作業計画策定支援装置のハードウェア構成を示す図である。
図2】農作業の作業計画策定支援装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】本装置で収集されるデータをまとめた図である。
図4】農作業計画策定部によって収穫適期を予測する際の判定処理を示すフローチャートである。示す図。
図5】各圃場に植生している穀物の水分分布についてイメージングしたイメージ図である。
図6】収穫される穀物について水分値のバラツキを予測するヒストグラムである。
図7】稲作カレンダーの一例を示す図である。
図8】落水後から稲刈りまでの間の天候の変化での籾の水分分布の違いを示す図である。
図9】降水による水分値の変数を決定するための関数表を示す図である。
図10】水分の平均値が同程度の穀物をグルーピングし、各穀物乾燥機に張り込む一例を示す模式図である。
図11】水分の平均値を考慮せずランダムに穀物を張り込んで乾燥した場合と、水分の平均値が同程度の穀物をロットごとにグルーピングして張り込んで乾燥した場合との、乾燥時間をシミュレーションした比較表である。
図12】水分の平均値を考慮せずランダムに穀物を張り込んで乾燥した場合(図12(a))と、水分の平均値が同程度の穀物をロットごとにグルーピングして張り込んで乾燥した場合(その1として図12(b)及びその2として図12(c))とを比較したガントチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る農作業の作業計画策定支援方法及びその装置について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る農作業の作業計画策定支援装置100の全体構成を示す図である。作業計画策定支援装置100は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。作業計画策定支援装置100は、CPU(プロセッサ)101によって実行される様々な制御プログラムを記憶するROMやRAMなどのメモリ102、キーボードやマウス、操作ボタンなどを備えた入力装置103、液晶パネルなどを備えた出力装置104、大容量のハードディスクやソリッドステートドライブ(SSD)等からなる記憶装置105、各種通信インターフェースを備えた通信装置106などを備えている。なお、記憶装置105は装置100の外部であって、遠隔地に設けられるクラウドサーバであってもよい。
【0021】
図2は農作業の作業計画策定支援装置100の機能構成を示すブロック図である。作業計画策定支援装置100は、CPU101がメモリ102などに記憶されたプログラムやソフトウェアを読み込み、解釈し、実行することにより、各部の機能が作動する。
【0022】
図2には、圃場データを収集する装置を具体的に例示している(図2の紙面上で上側)。作業計画策定支援装置100に取り込まれるデータとしては、地上で実測する圃場計測データ(圃場データ)と、圃場の上空で遠隔観測して得られるリモートセンシングデータ(圃場データ)と、気象情報データと、が想定される。
【0023】
地上で実測する圃場計測データは、圃場で生育中の穀物(例えば、稲)の標本を収集して非破壊計測又は破壊計測する手段と、圃場で該標本を収集せずに穀物の葉茎(ようけい)などを非破壊計測する手段と、に大別される。
標本を収集して測定する手段の一例として、穀物乾燥調製施設での出荷品の状態に見立てた乾燥・調製(いわゆる、テスト乾燥、テスト籾摺)を行った後、計測することが挙げられる。例えば、穀粒の品位の測定については、穀粒判別器(図2の符号200)で行うとよい。穀粒判別器200では、整粒、未熟粒、着色粒の歩合や成熟度合の指標となる穀粒の三軸寸法(長さ・幅・厚み)等の測定及び評価が可能である。例えば、穀粒の水分の測定については、水分計(図2の符号300)で行うとよい。水分計300は、電気抵抗式のものを使用すると、穀粒の1粒ごとに水分値を測定することができ、穀粒の水分のバラツキの評価をすることが可能である。例えば、穀粒のタンパク質等の成分含有量の測定については、分光分析計(図2の符号400)で行うとよい。分光分析計400は、透過式又は反射式の近赤外線を利用した分光分析計であり、タンパク質含有量の測定が可能である。
【0024】
標本を収集せずに測定する手段の一例として、植物の葉に含まれる葉緑素の濃度を数値化する葉緑素計が挙げられる。この葉緑素計は、例えば、ピーク波長650nm付近の赤色領域の発光ダイオード(LED)とピーク波長940nm付近の赤外領域LEDの2つの光源が内蔵されている発光部と受光部を備えてあり、測定する試料(植物の葉)を発光部と受光部で挟むと、2つのLEDが交互に点灯してその光が試料を透過して受光素子に導かれて光電変換濃度を数値化する、といった原理となっている。従来、よく知られている葉緑素計(図2の符号500)は、測定する試料(植物の葉)を発光部と受光部で挟む挟持部が設けられており、SPAD(Soil and Plant Analyzer Development)値が測定できる構成となっている。このほか、標本を収集せずに測定する手段として、リモートセンシングデータではあるが、植生の分布状況や活性度を示す指標であるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指数)を測定してもよい。このSPAD値及びNDVIは、いずれも、穀物の収穫量と高い相関があることが知られている。したがって、SPAD値及び/又はNDVIを測定することにより、穀物の収穫量予測を行うことが可能となる。
【0025】
また、穀物(特に、コメ)の品位は、高温障害による白未熟粒(乳白粒、基白粒、背白粒等)の発生で著しく低下するので、白未熟粒が発生するか否かを予測することが重要になる。この点についても、SPAD値及び/又はNDVIを測定することにより、予測を行うことが可能となる。そして、前述の葉緑素計を利用すれば、植物の葉に含まれる窒素量を測定することも可能である。植物の葉に含まれる窒素量は、穀物のタンパク質含有量及び穀物の収穫量に大いに関係があることから、収穫予測に適用することができる。
【0026】
次に、圃場の上空で遠隔観測して得られるリモートセンシングデータについて説明する。リモートセンシングデータは、圃場を一望できるよう高所に設置したカメラでの定点観測方式や、カメラを搭載した無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle、図2の符号600)での移動観測方式が採用できる。カメラを搭載した無人航空機(図2の符号600)は、カメラで撮影した画像をイメージングし、圃場の細分化された箇所ごとのデータが必要となる。このデータは、穀物の成分含量や収穫量に関連する定量的なデータを取得する必要があり、また、複数画素での複数波長の光学信号を同時取得する必要がある。したがって、カメラには、マルチスペクトルカメラを採用するのが好ましく、より好ましくは、ハイパースペクトルカメラを採用するのがよい。
【0027】
これらマルチスペクトルカメラ又はハイパースペクトルカメラは、紫外線域の短い波長域(例えば、380nmよりも小さい波長域)から赤外線域の長い波長域(例えば、780nmよりも大きい波長域)までを測定対象とする。本実施形態においては、これらカメラを任意に選択することができる。例えば、稲の登熟度合や稲の葉身の色の分布から穀物の収穫量の予測に利用するのであれば、可視光域(例えば、400~750nmの波長域)での波長を利用すると計測が可能である。また、収穫する穀物の水分の含有量又はタンパク質などの成分含量、及びそれらの分布状況の予測に利用するのであれば、近赤外線領域(例えば、750~2500nm)での波長、より好ましくは、中赤外線領域(例えば、2500nm~25μm)での波長を利用すると計測が可能である。前記マルチスペクトルカメラ又はハイパースペクトルカメラは、上記の波長領域での測定を網羅することのできる、一台又は複数台のカメラを適用することとするとよい。
【0028】
気象情報データは、過去、現在、未来の気象に関する様々な情報を含んで構成される。具体的には外気温データ、外気湿度データ、日照データ、降雨量データなどを含んで構成される。この気象情報データは、気象庁や日本気象協会などからインターネット等を介して取得する。なお、気象情報データの一部(例えば、外気温データ、外気湿度データなど)については、現地の圃場に設置された温度センサ、湿度センサなどから取得してもよい。
以上のように、収集されるデータとしての、地上で実測する圃場計測データ(圃場データ)、圃場の上空で遠隔観測して得られるリモートセンシングデータ(圃場データ)及び気象情報データをまとめてみると図3の表のようになる。
【0029】
作業計画策定支援装置100の記憶装置105(図2参照)には、取得した圃場計測データ(圃場データ)、リモートセンシングデータ(圃場データ)及び気象情報データが格納される。記憶装置105には、各種データを格納するためのデータベース(DB)が複数備えられている。すなわち、外部から取得した圃場計測データは、圃場地上計測(DB)105aに格納され、外部から取得したリモートセンシングデータは、圃場遠隔計測(DB)105bに格納され、外部から取得した気象情報データは、気象情報(DB)105cに格納される。このほか、各生産者の住所、圃場No、圃場の緯度、経度、標高、傾斜、地図データ、地理的情報などを含んだデータが格納された管理圃場情報(DB)105d、農作業者の人員やコンバイン等の台数などのリソース情報(人的資源、物的資源)が格納されるリソース情報(DB)105e、穀物の収穫日の前(1~2週間前)において収穫する穀物の品質を予測したデータ(品質一次予測データ)が格納される品質一次予測(DB)105f、前記品質一次予測データを実際に観測した気象データによって補正したデータ(品質二次予測データ)が格納される品質二次予測(DB)105g、穀物の水分過多や穀物の水分不均一が無いときを狙(ねら)って収穫計画を策定するための収穫適期データ(収穫適期予測データ)を算出するとともに、農作業における最も経済的、かつ、低労力での作業ができる作業計画データが格納される最適作業計画(DB)105hなどが備えられている。その他のデータベース(DB)については後述する。
【0030】
作業計画策定支援装置100のCPU101(図2参照)には、農作業計画策定部101aと、機械学習部101bとが備えられている。
農作業計画策定部101aには、取得した圃場計測データ(ここでは、主としてリモートセンシングデータ)の統計処理・解析処理を行う圃場計測データ解析部111と、取得した気象情報データから天候・気温・湿度などの解析を行う気象情報データ解析部112と、取得した圃場計測データや気象情報データを加味し、穀物の水分過多や穀物の水分不均一が無いときを狙(ねら)って収穫適期を演算する収穫適期予測演算部113と、穀物の収穫日の前(1~2週間前)において収穫する穀物の品質を予測し演算する品質一次予測演算部114と、収穫適期や穀物品質に基づいて農作業における最も経済的、かつ、低労力での作業ができる作業計画を策定し演算する作業計画最適化演算部115と、が備えられている。
機械学習部101bには、取得した圃場計測データ(ここでは、主として地上で実測した圃場計測データ)の統計処理・解析処理を行う実測データ解析部116と、品質一次予測データを実際に観測した気象データによって補正したデータに変換する際のパラメータ補正係数を再設定するパラメータ係数再設定部117と、が備えられている。
【0031】
図4は、農作業計画策定部101aによって収穫適期を予測する際の判定処理を示すフローチャートである。収穫適期の予測は、図7の稲作カレンダーに示すように、落水(田んぼの水を抜くこと。出穂(しゅっすい)してから約30日後、稲刈りの約10~15日前を目安に行う。)後、稲刈りまでの間(好ましくは稲刈り前の1週間、2週間前)の時期に行うのがよい。なお、従来のリモートセンシングでは出穂(しゅっすい)期前後で観測を行うのが一般的であった。
【0032】
図4のフローチャートを参照すると、まず、入力装置103(図2参照)等から、管理している圃場の圃場情報、作業日時、及び作業内容の入力を受け付ける(S101)。圃場情報としては、各生産者の名前、住所、圃場No、作付されている作物又は品種等の情報が含まれる。なお、ステップS101の入力に頼らず、あらかじめ管理圃場情報(DB)に格納されている情報を、IDナンバーなどから抽出することで入力を受け付け処理してもよい。
【0033】
次いで、衛星又は無人航空機(ドローン)によって対象エリアの上空から圃場を撮影する(S102)。対象エリアの上空から圃場を撮影した画像の情報は、圃場遠隔計測(DB)105bに格納される。圃場計測データ解析部111は、圃場遠隔計測(DB)105bに格納された画像データから、スペクトル特徴量を算出する(S103)。
【0034】
続いて、収穫適期予測演算部113は、算出されたスペクトルに関する特徴量を用いて、各圃場に植生している穀物(籾)の水分値を推定する。穀物(籾)の水分値を推定するためには、水の分子構造であるO-H結合の伸縮振動と変角振動による特異的な吸収を示す1940nmの波長域と、水の分子構造であるH-O―H結合の伸縮振動による特異的な吸収を示す1450nmの波長域との両波長域に特有の感度を含んだハイパースペクトルカメラを無人航空機(ドローン)に搭載するのがよい。
【0035】
そして、収穫適期予測演算部113では、ハイパースペクトルカメラで撮影した画像情報を基づき、スペクトルに関する特徴量を求め水分値を割り出す(S104)。例えば、図5は、各圃場に植生している穀物の水分分布についてイメージングしたイメージ図である。このイメージ図によれば、色の濃淡により水分の領域が区分される。例えば、図5によれば、穀物(籾)の水分値の領域が、20~24%、24~28%、28~32%、32~36%、36~40%、40%~の6区分に仕分けすることができている。
【0036】
次に、圃場の分画された地点ごとに割り出した水分値を基に、平均値と標準偏差を割り出し、収穫される穀物についての水分値とそのバラツキを予測するためのデータを取得する(S105)。例えば、図6のような、各圃場で収穫される穀物について水分値のバラツキを予測するヒストグラムが作成される。図6のような各圃場で収穫される穀物について水分値のバラツキを予測し、収穫された穀物が穀物乾燥調製施設において作業される際に、最も経済的、かつ、低労力での作業ができるような乾燥計画を策定するとよい。
【0037】
一方、前述のようにリモートセンシングする時期(図7参照)は、稲刈り前の1~2週間前であり、実際の稲刈りの時期と乖離(かいり)する。したがって、図6で算出した穀物の水分値のバラツキを気象情報データにより補正し(図4のステップS106)、実際の稲刈り時期に適合するような穀物の水分値のバラツキを算出するとよい(図4のステップS107、以下、「品質一次取得手法」という。)。気象情報データは、例えば、気象庁や日本気象協会などからインターネット等を介して取得し、未来の気象に関する情報(例えば、2週間気温予報、降水短時間予報、1カ月予報気温)を利用するとよい。
【0038】
さらには、品質一次取得手法により補正された穀物の水分値を、より確度を高めるために、現地の圃場に設置された温度センサ、湿度センサなどから取得される実際の気象データにより補正し、実際の稲刈り時期に適合するような穀物の水分値のバラツキを算出するとよい(図4のステップS107、以下、「品質二次取得手法」という。)。
【0039】
次に、前記品質一次取得手法について詳細に説明する。図8は、落水後から稲刈りまでの間の天候の変化での籾の水分分布の違いを示す図である。
【0040】
図8(a)の水分分布は、落水後に晴天が続き、気温も高かった条件であり、収穫後の穀物調製乾燥工程において、籾が乾きやすい。また、登熟によって籾の成分的の均質化も進みやすい。よって、水分平均値も低く、標準偏差(バラツキ)も小さくなる。
【0041】
図8(b)の水分分布は、落水後に降雨はなかったものの、曇天が続き、気温も低かった条件であり、収穫後の穀物調製乾燥工程において、籾が乾きやすいとは言えない。また、籾の成分的な均質化は進む。よって、水分平均値が高く、標準偏差(バラツキ)が大きくなる。
【0042】
図8(c)の水分分布は、落水後に降雨があり、その後、稲刈りまで晴天が続き、気温も高かった条件であり、籾の水分平均値が低く、標準偏差(バラツキ)も小さくなる。図8(a)と比較すれば、水分平均値が高く、標準偏差(バラツキ)も大きい。
【0043】
図8(d)の水分分布は、落水直後に降雨があり、その後、稲刈りまで曇天が続き、気温も低かった条件であり、籾の水分平均値が低く、標準偏差(バラツキ)も小さくなる。図8(c)と比較すれば、水分平均値が高く、標準偏差(バラツキ)も大きい。
【0044】
図8(e)の水分分布は、落水から当分の間、晴天が続き気温も高かったものの、稲刈り直前に雨が降った条件であり、雨が降るまでは籾が乾きやすい状況にあったと思われる。水分平均値が低く、標準偏差(バラツキ)も小さくなる。図8(a)、図8(c)と比較すれば、水分平均値が高く、標準偏差(バラツキ)も大きい。降雨により籾に水を含んだものが疎(まば)らに生じる。歪度(わいど)が大きくなる。
【0045】
図8(f)の水分分布は、落水から当分の間、降雨がないまでも曇天が続き、気温が低く、稲刈り直前に雨が降った条件であり、雨が降るまでは籾が乾きやすい状況にあったと思われる。水分平均値が低く、標準偏差(バラツキ)も小さくなる。図8(d)と比較すれば、歪度が大きくなる。また、図8(e)と比較すれば、水分平均値が高く、標準偏差(バラツキ)が大きい。
【0046】
以上の天候の変化による水分変動を加味すれば、水分に関する品質一次取得手法の予測データとして、下記の式1から式3により、稲刈り時の水分平均値の予測値、標準偏差、歪度が算出される。
【数1】
【0047】
なお、降水による水分値の変数の決定においては、どのタイミングで、どのくらいの量の降水があるのかを考慮する必要があり、日照による水分値の変数の決定においても、どの期間に、どの程度に日が当たるかを考慮する必要がある。したがって、図9による方法で決定することとすればよい。
【0048】
次に、圃場ごとに穀物の収穫量を予測することとなる(図4のステップS108)。穀物の収穫量の予測は、上述同様、衛星又は無人航空機(ドローン)によって対象エリアの上空から圃場を撮影し、その画像データから、スペクトル特徴量を算出し、算出されたスペクトルに関する特徴量を用いて、各圃場に植生している穀物のNDVI(正規化植生指数)を推定することにより行われる。
【0049】
この穀物の収穫量の予測は、下記式4により、平年の穀物収穫量を基準に、平年の植生指数と、今回測定した今年の植生指数との比を掛け、補正することにより算出することができる。
【数2】
【0050】
ここで、穀物のNDVI(正規化植生指数)については、リモートセンシングを落水後、稲刈りまでの、稲刈り前の1週間、2週間前に行っているから、その後の気象状況によっては変動するおそれがある。したがって、前述同様、積算温度、降水量及び日照時間などで1、2週間後の稲刈り当日の値を推定する補正を行ってもよい。
【0051】
穀物の収穫量の予測が終了すると、次に、穀物乾燥調製施設に複数台設置された穀物乾燥機で乾燥が行われるが、この際、複数台設置された穀物乾燥機のうち、どの穀物乾燥機に張り込んで乾燥を行うかが決定される(図4のステップS109)。
【0052】
この決定においては、稲刈り(収穫)当日の稼働可能な穀物乾燥調製施設に設置されている複数台の穀物乾燥機のそれぞれに、水分の平均値が同程度の穀物をロットごとにグルーピングし、各穀物乾燥機の収容量に応じて張り込まれるようにするとよい。
【0053】
ここで、図11を参照して、水分の平均値を考慮せずランダムに穀物を張り込んで乾燥した場合と、水分の平均値が同程度の穀物をロットごとにグルーピングして張り込んで乾燥した場合との、乾燥時間をシミュレーションし、比較検討する。この際に、穀物乾燥機における乾燥所用時間を推定することとするとよい(図4のステップS110)。
【0054】
図11に示すように、複数の圃場で収穫される穀物について、水分の平均値を考慮せずランダムに穀物を張り込んで乾燥した場合と、水分の平均値が同程度の穀物をロットごとにグルーピングして張り込んで乾燥した場合とを比較すれば、後者のほうが、21.9時間も速く乾燥工程が終了することが分かった。つまり、1台の穀物乾燥機につき、1日に2回転の乾燥も実現可能なレベルである。5台分の穀物乾燥機で見ると、乾燥所用時間は約20%の少なくなり、穀物乾燥機の所用動力や穀物乾燥機のバーナに供する灯油燃料の削減効果も期待できる。
【0055】
次に、前記乾燥所用時間の推定(図4のステップS110)に基づいて、圃場での穀物の収穫と、穀物乾燥機で穀物を乾燥する処理のタイムチャートとから、収穫時期として適切か否かを判定する(図4のステップS111)。この判定は、例えば、図12のような水分の平均値を考慮せずランダムに穀物を張り込んで乾燥した場合と、水分の平均値が同程度の穀物をロットごとにグルーピングして張り込んで乾燥した場合(その1及びその2)とを比較したガントチャートから求めることができる。
【0056】
図12に示すガントチャートについて説明する。まず、図12(a)、図12(b)、図12(c)の表には、作業項目として収穫作業と乾燥作業とを合わせた合計10行の枠と、作業日程として7日間を示す合計7列の枠がある。図12(a)を参照すれば、まず、1行目の枠に、穀物乾燥機No.1で乾燥する予定の穀物を収穫する日時が黒で塗りつぶしてある。例示すれば、1日目の5時~8時の間、2日目の5時~8時の間、3日目の5時~8時の間、4日目の5時~8時の間、5日目の5時~8時の間、6日目の5時~8時の間、7日目の5時~8時の間となっている。
【0057】
次に、図12(a)の6行目には、穀物乾燥機No.1での実際に乾燥する日時が黒で塗りつぶしてある。例示すれば、1日目の9時~2日目の5時までの間(約20時間)、2日目の9時~3日目の5時までの間(約20時間)、3日目の9時~4日目の5時までの間(約20時間)、4日目の9時~5日目の5時までの間(約20時間)、5日目の9時~6日目の5時までの間(約20時間)、6日目の9時~7日目の5時までの間(約20時間)、7日目の9時~8日目の5時までの間(約20時間)で穀物乾燥機No.1での乾燥作業が行われる。以下、穀物乾燥機No.2からNo.5まで同様のサイクルによりガントチャートが作成されるようになる。
【0058】
ここで、図12(a)と図12(b)と図12(c)とを比較する。
水分の平均値を考慮せずランダムに穀物を張り込んで乾燥した場合(図12(a))は、おおむね乾燥時間が約20時間と一定であり、穀物乾燥機の稼働計画が順序よく策定することができる。しかしながら、いったん降雨などによって穀物の収穫作業が一定時間を行うことができなくなった場合など、穀物の荷受けが集中して想定外のことが起こることがある。この場合、穀物乾燥機の稼働時間が全体的に後ろ倒しになり、深夜作業によって人件費の高騰につながる懸念がある。また、荷受けの待ち時間などによって品質劣化に陥る危険もある。さらには、収穫適期を逸して、さらなる穀物品質の劣化により、利益を逸失するおそれもある。
【0059】
水分の平均値が同程度の穀物をロットごとにグルーピングして張り込んで乾燥した場合(その1、その2、図12(b)、図12(c))は、穀物の乾燥作業にかかる所用時間に長短の違いが顕著になっている。しかし、穀物乾燥機No.1からNo.5を全体で見ると、乾燥作業にかかる所用時間が短いことから、余裕を持って穀物乾燥機の稼働計画を策定することが可能となる。ひいては、穀物品質劣化に陥る危険が少なく、利益を逸失するリスクも低く、さらには、計画外の人件費を抑制することも可能になる。
【0060】
特に、図12(c)のように、収穫(稲刈り)時の穀物水分が比較的低い状況であれば、穀物の乾燥作業にかかる所用時間が短いロットを乾燥計画に組み込むことができる。この場合、1台の穀物乾燥機により1日(24時間)に2回転の稼働が可能になる。つまり、稼動していない穀物乾燥機を不測の事態が起こったときの予備機に充てることができる。よって、利益を逸失するリスクはさらに低減する。
【0061】
図12(c)のようなシミュレーションを行うことにより、新規に穀物乾燥調製施設を設計する場合や、穀物乾燥機を更新する場合には、従来の施設よりも穀物乾燥機の設置台数を削減する計画を立案することができる。初期投資(イニシャル)コスト、減価償却費などのランニングコストを削減して利益改善につなげることができる。
【0062】
本実施形態では、図12のようなシミュレーションにより、穀物乾燥機の稼働計画に応じて収穫時期として適切か否かを、機械学習など利用して判断することができる。また、適切な収穫時期に収穫している当日の各圃場の収穫の順序も決定することができる。重要なことは、収穫日の前(好ましくは稲刈り前の1週間、2週間前)に各圃場で収穫される穀物の水分分布を予測することである。
【0063】
図4のステップS111の収穫時期として適切か否かを判定において、図12のシミュレーションの結果、穀物乾燥機No.1からNo.5を全体で見て乾燥作業にかかる所用時間が短いことが分かれば(図12(c))、「収穫時期として適切である」と判定して(Yesの矢印)、図4のステップS112に至る。図4のステップS112では、出力装置104(図2)であるディスプレイ等に作業者に作業の指示が出される。例えば、乾燥作業がスムーズに行われると想定される乾燥前の穀物水分のシミュレーションができていれば、「〇月×日から1週間の間に収穫するのが最も好ましい」といったように出力装置104表示する。
【0064】
一方、図12のシミュレーションの結果、穀物乾燥機No.1からNo.5を全体で見て乾燥作業にかかる所用時間が長いことが分かれば(図12(a))、「収穫時期として不適切である」と判定して(Noの矢印)、図4のステップS113に至る。図4のステップS113では、出力装置104(図2)であるディスプレイ等に作業者に作業の指示が出される。例えば、乾燥前の穀物水分のシミュレーションができていないとして、「候補日の〇月×日は収穫時期としては不適切であり、再度シミュレーションしてください」といったように出力装置104表示する。そして、図4のステップS113からリターンし、ステップS101に至り、再度判定処理が行われる。
【0065】
本実施形態では、上述したシミュレーション結果を検証するため、作業計画策定支援装置100の記憶装置105(図2参照)には、穀物乾燥調製施設側の各種データを取得して蓄積するためのデータベース(DB)も設けられている。すなわち、穀物乾燥調製施設における荷受作業の際の各種データ(穀物の水分データや重量データ(収穫量に相当)など)を格納する施設荷受情報(DB)105iと、穀物乾燥調製施設における乾燥作業の際の各種データ(乾燥作業中の穀物の水分データ、乾燥作業の経過時間データ、乾燥作業の残時間データ、重量データ(乾燥経過に伴う穀物重量の減少の把握)など)を格納する乾燥状態計測(DB)105jとが備えられている。このほか、記憶装置105には、機械学習部101bの実測データ解析部116で解析した各種データを格納する機械学習情報(DB)105kと、機械学習部101bのパラメータ係数再設定部117で算出した各種データを格納するパラメータ係数(DB)105lとが備えられている。これらのデータベースを備えることにより、過去に同様な事例があるか否かを検索するとともに判断して、収穫適期に該当するか否かを効率的に判断することができる。
【0066】
上記の説明では、衛星やドローンによって圃場の撮像画像データを取得する場合を例示したが、そのほかの撮像手段によって撮像画像データを取得するようにしてもよい。
【0067】
また、対象作物として、穀物(特にコメ)を中心に説明したが、そのほかの植物であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
100:作業計画策定支援装置、101:CPU、102:メモリ、103:入力装置、104:出力装置、105:記憶装置、106:通信装置、200:穀粒判別器、300:水分計、400:分光分析計、500:葉緑素計、600:無人航空機、105a~105l:データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12