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特開2023-83974オーディオ装置、プログラム、およびオーディオ再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083974
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】オーディオ装置、プログラム、およびオーディオ再生方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
G10K15/04 302F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198012
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】309039716
【氏名又は名称】株式会社ディーアンドエムホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】国本 敏季
【テーマコード(参考)】
5D208
【Fターム(参考)】
5D208DA00
5D208DA02
(57)【要約】
【課題】ハイレゾリューションオーディオ等の高音質なオーディオデータをBGMに適した音質で再生することが可能なオーディオ再生技術を提供する。
【解決手段】主制御部18は、ワイヤレスオーディオプレーヤ1の動作モードを通常モードあるいはBGMモードに設定する。ワイヤレスオーディオプレーヤ1の動作モードがBGMモードに設定されている場合に、エフェクト処理部16は、楽曲情報取得部14から通知された再生対象のオーディオデータの楽曲情報に基づいて、モード切替部17経由でオーディオ再生部12から入力された再生対象のオーディオデータの再生信号であるオーディオ信号に対して、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のうちの少なくともいずれか一つを含むエフェクト処理を実施し、スピーカ部13から出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオデータを再生して出力するオーディオ装置であって、
動作モードを通常モードあるいはBGM(Background Music)モードに設定するモード設定手段と、
前記モード設定手段により前記BGMモードに設定されている場合に、再生対象のオーディオデータの楽曲情報あるいは解析結果に基づいて、当該再生対象のオーディオデータに対して、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のうちの少なくともいずれか一つを含むエフェクト処理を実施するエフェクト処理手段と、を有する
ことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオーディオ装置であって、
前記再生対象のオーディオデータを配信するメディアサーバからダウンロードされた当該再生対象のオーディオデータの楽曲情報を取得する楽曲情報取得手段をさらに有し、
前記エフェクト処理手段は、
前記楽曲情報取得手段により取得された楽曲情報に含まれている楽曲の発表年あるいはジャンルに基づいて、前記再生対象のオーディオデータに適用するエフェクト処理を選択する
ことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のオーディオ装置であって、
前記再生対象のオーディオデータの曲調を解析する曲調解析手段をさらに有し、
前記エフェクト処理手段は、
前記曲調解析手段により解析された曲調により特定される楽曲のジャンルに基づいて、前記再生対象のオーディオデータに適用するエフェクト処理を選択する
ことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のオーディオ装置であって、
前記再生対象のオーディオデータの音質を解析する音質解析手段をさらに有し、
前記エフェクト処理手段は、
前記再生対象のオーディオデータの楽曲情報あるいは解析結果に基づいて選択された前記再生対象のオーディオデータに適用するエフェクト処理の実施要否を、前記音質解析手段により解析された音質に基づいて変更する
ことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のずれか一項に記載のオーディオ装置であって、
前記モード設定手段は、
自オーディオ装置が備える操作ボタンあるいは自オーディオ装置を遠隔操作するためのコントローラを介して受け付けた指示に従い、動作モードを設定する
ことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項6】
オーディオデータを再生して出力するオーディオ装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
動作モードを通常モードあるいはBGM(Background Music)モードに設定するモード設定手段、および
前記モード設定手段により前記BGMモードに設定されている場合に、再生対象のオーディオデータの楽曲情報あるいは解析結果に基づいて、当該再生対象のオーディオデータに対して、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のうちの少なくともいずれか一つを含むエフェクト処理を実施するエフェクト処理手段として、前記コンピュータを機能させる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
オーディオ装置によるオーディオデータ再生方法であって、
前記オーディオ装置は、
動作モードとして、通常モードおよびBGM(Background Music)モードを有し、
動作モードが前記BGMモードに設定されている場合に、
再生対象のオーディオデータの楽曲情報あるいは解析結果に基づいて、当該再生対象のオーディオデータに対して、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のうちの少なくともいずれか一つを含むエフェクト処理を実施し、
エフェクト処理された前記再生対象のオーディオデータを再生し出力する
ことを特徴とするオーディオ再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ再生技術に関し、特にBGM(Background Music)の再生に適したオーディオ再生技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の無線ネットワークを介してメディアサーバから楽曲のオーディオデータを取得して再生して出力するオーディオ装置が知られている(例えば特許文献1)。近年は、無線ネットワークの広帯域化に伴い、メディアサーバが配信するオーディオデータの高音質化が進んでおり、この種のオーディオ装置においても、例えばハイレゾリューションオーディオ(High-Resolution Audio)と呼ばれる高解像度のオーディオデータに対応したものが普及しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7987294号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業(仕事、勉強等)や就寝の際のBGMとして高音質なオーディオデータを再生すると、かえって作業や就寝の邪魔になる可能性がある。特に、デジタルリマスタされた昔の楽曲(いわゆる懐メロ)の高音質なオーディオデータを再生すると、聴き入ってしまい、作業に集中できなかったり、入眠を阻害したりすることがある。
【0005】
また、クラシック等の特定ジャンルの高音質なオーディオデータは、一般にダイナミックレンジが広く、作業や就寝の際のBGMとして適切な音量に調整することが困難である。すなわち、ダイナミックレンジが広い高音質なオーディオデータを再生する場合、大きな音圧の信号の音が作業や就寝の邪魔にならないように音量を小さくすると、小さな音圧の信号の音が聞こえなくなり、音が途切れてしまう。この音の途切れがユーザを不快にして作業や就寝を妨げる可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハイレゾリューションオーディオ等の高音質なオーディオデータをBGMに適した音質で再生することが可能なオーディオ再生技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、BGMモード時において、再生対象のオーディオデータの楽曲情報あるいは曲調の解析結果に基づいて、この再生対象のオーディオデータに対して、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ(クリックノイズ)追加、および再生ピッチ変化のうちの少なくともいずれか一つを含むエフェクト処理を実施する。そして、エフェクト処理されたオーディオデータを再生して出力する。
【0008】
例えば、本発明は、
オーディオデータを再生して出力するオーディオ装置であって、
動作モードを通常モードあるいはBGM(Background Music)モードに設定するモード設定手段と、
前記モード設定手段により前記BGMモードに設定されている場合に、再生対象のオーディオデータの楽曲情報あるいは曲調の解析結果に基づいて、当該再生対象のオーディオデータに対して、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のうちの少なくともいずれか一つを含むエフェクト処理を実施するエフェクト処理手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、BGMモード時に、再生対象のオーディオデータの楽曲情報あるいは曲調の解析結果に基づいて、この再生対象のオーディオデータに対して、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のうちの少なくともいずれか一つを含むエフェクト処理を実施する。
【0010】
これにより、例えば、デジタルリマスタされた昔の楽曲を、あたかもその当時のオーディオ装置(レコードプレーヤ、カセットテープレコーダ等)で再生したような音質で再生し出力することが可能となる。このため、デジタルリマスタされた高音質な昔の楽曲に聴き入ってしまい、作業や就寝が妨げられるといった事態が発生することを防止することができる。また、クラシック等のダイナミックレンジが広い高音質の楽曲を、ダイナミックレンジ圧縮により、BGMに適した音量まで小さくしても音の途切れなく再生し出力することが可能となる。これにより、音の途切れによりユーザを不快にして作業や就寝を妨げることがなくなる。
【0011】
このように本発明によれば、高音質なオーディオデータをBGMに適した音質で再生することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るワイヤレスオーディオシステムの概略構成図である。
図2図2は、ワイヤレスオーディオプレーヤ1の概略機能構成図である。
図3図3は、ワイヤレスオーディオプレーヤ1の動作モード設定処理を説明するためのフロー図である。
図4図4は、ワイヤレスオーディオプレーヤ1のオーディオ再生処理を説明するためのフロー図である。
図5図5は、図4に示すBGMモード再生処理(S22)を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るワイヤレスオーディオシステムの概略構成図である。
【0015】
図示するように、本実施の形態に係るワイヤレスオーディオシステムは、ワイヤレスオーディオプレーヤ1と、リモートコントローラ2と、メディアサーバ3と、を備えて構成されている。
【0016】
メディアサーバ3は、WAN(Wide Area Network)、LAN等のネットワーク4およびアクセスポイント5を介してワイヤレスオーディオプレーヤ1と接続されており、ハイレゾリューションオーディオ等の高音質なオーディオデータを含む楽曲のオーディオデータをワイヤレスオーディオプレーヤ1に配信する。
【0017】
リモートコントローラ2は、ユーザがワイヤレスオーディオプレーヤ1を遠隔操作するためのものであり、専用品の他、スマートホン、タブレットPC等の携帯端末上で所定のプログラム(アプリケーションソフトウエア)を実行することにより実現される。
【0018】
ワイヤレスオーディオプレーヤ1は、ハイレゾリューションオーディオ等の高音質な楽曲のオーディオデータに対応したオーディオ装置であり、メディアサーバ3から楽曲のオーディオデータをダウンロードして再生・出力する。また、ワイヤレスオーディオプレーヤ1は、動作モードとして通常モードおよびBGMモードを有しており、動作モードがBGMモードに設定されている場合、メディアサーバ3からダウンロードした楽曲のオーディオデータをBGMに適した音質に加工してから再生・出力する。
【0019】
図2は、ワイヤレスオーディオプレーヤ1の概略機能構成図である。
【0020】
図示するように、ワイヤレスオーディオプレーヤ1は、無線LANインターフェース部10と、指示受付部11と、オーディオ再生部12と、スピーカ部13と、楽曲情報取得部14と、音質解析部15と、エフェクト処理部16と、モード切替部17と、主制御部18と、を備えている。
【0021】
無線LANインターフェース部10は、無線LANにより、アクセスポイント5およびネットワーク4を介してメディアサーバ3と通信したり、あるいは、アクセスポイント5を介してリモートコントローラ2と通信したりするためのインターフェースである。
【0022】
指示受付部11は、無線LANインターフェース部10を介してリモートコントローラ2から、再生指示、動作モード設定指示等の各種指示を受け付ける。
【0023】
オーディオ再生部12は、入力された再生対象のオーディオデータを再生して、その再生信号であるオーディオ信号をモード切替部17に出力する。
【0024】
スピーカ部13は、モード切替部17あるいはエフェクト処理部16から出力されたオーディオ信号を音声出力する。
【0025】
楽曲情報取得部14は、再生対象のオーディオデータに付加された楽曲情報を取得して、この楽曲情報に含まれている楽曲の発表年をエフェクト処理部16に通知する。
【0026】
音質解析部15は、再生対象のオーディオデータの音質を解析して、その解析結果をエフェクト処理部16に通知する。具体的には、音質解析部15は、オーディオデータのダイナミックレンジ、周波数帯域、およびノイズ成分を解析し、その解析結果をエフェクト処理部16に通知する。
【0027】
エフェクト処理部16は、楽曲情報取得部14より通知された楽曲の発表年および音質解析部15により通知された音質の解析結果に基づいて、入力されたオーディオ信号(再生信号)にエフェクト処理を実施する。そして、エフェクト処理されたオーディオ信号をスピーカ部13へ出力する。
【0028】
具体的には、エフェクト処理部16は、楽曲情報取得部14より通知された楽曲の発表年が属する年代に基づいて、オーディオ信号に適用するエフェクト処理を、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のなかから少なくとも一つ選択する。楽曲の年代と適用するエフェクト処理との対応関係の一例を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
ここで、「ダイナミックレンジ圧縮」は、オーディオ信号のダイナミックレンジを圧縮する。「ダイナミックレンジ圧縮」により、オーディオ信号は音圧差の小さいより均一なサウンドに変換され、低音量で出力したときの音切れを防止できる。
【0031】
「高域・低域周波数カット」は、例えばAMラジオ放送が伝送できる周波数帯域以外の高域成分(7.5kHz超過)および低域成分(20Hz未満)をオーディオ信号からカットする。「高域・低域周波数カット」の適用により、例えばAMラジオ放送を聴いているような音質でオーディオ信号を出力することができる。
【0032】
「歪追加」は、クリッピングによりオーディオ信号に歪み(音割れ)を追加する。「歪追加」の適用により、あたかも経年劣化したスピーカから出力されたような音質でオーディオ信号を出力することができる。
【0033】
「プチプチノイズ追加」は、オーディオ信号にプチプチノイズ(クリックノイズ)を追加する。「プチプチノイズ追加」の適用により、あたかも傷のあるアナログレコードをレコードプレーヤで再生しているような音質でオーディオ信号を出力することができる。
【0034】
「再生ピッチ変化」は、オーディオ信号の再生ピッチ(音の高さ)を変化させる。「再生ピッチ変化」の適用により、あたかもワウフラッタの大きいレコードプレーヤあるいはカセットテープレコーダで再生しているような音質でオーディオ信号を出力することができる。
【0035】
表1に示すように、再生対象のオーディオデータの発表年代に基づいて、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のなかから適切なエフェクト処理を少なくとも一つ選択し、このオーディオデータの再生信号に対して、選択されたエフェクト処理を実施する。これにより、デジタルリマスタされた昔の楽曲(例えば1990年代以前の楽曲)については、あたかもその当時のオーディオ装置(レコードプレーヤ、カセットテープレコーダ等)で再生したような音質で出力することが可能となる。また、近年の楽曲(例えば2000年以降の楽曲)については、ダイナミックレンジ圧縮により、音圧差の小さいより均一なサウンドに変換して、BGMに適した音量まで小さくしても音の途切れなく出力することが可能となる。
【0036】
また、エフェクト処理部16は、再生対象のオーディオデータの発表年代に基づいて選択されたエフェクト処理の実施要否を、音質解析部15により通知された音質の解析結果に基づいて決定する。
【0037】
具体的には、再生対象のオーディオデータのダイナミックレンジが所定幅より狭い場合、つまり、BGMに適した音量まで小さくしても音の途切れなく出力できる場合には、エフェクト処理「ダイナミックレンジ圧縮」の適用を省略する。また、再生対象のオーディオデータに所定の高域成分および低域成分が含まれていない場合(例えばAMラジオ放送で伝送できない高域成分および低域成分が含まれていない場合)には、エフェクト処理「高域・低域周波数カット」の適用を省略する。また、再生対象のオーディオデータにノイズ成分が所定の頻度で含まれている場合には、エフェクト処理「歪追加」、「プチプチノイズ追加」の適用を省略する。これにより、再生対象のオーディオデータが元々BGMに適した音質である場合(例えばデジタルリマスタされていない昔の楽曲のオーディオデータである場合)に、この再生信号であるオーディオ信号がさらに劣化するのを防止することができる。
【0038】
モード切替部17は、オーディオ再生部12から入力されたオーディオ信号の出力先を、動作モードに応じて切り替える。具体的には、動作モードが通常モードに設定されている場合、オーディオ再生部12から入力されたオーディオ信号をスピーカ部13に出力する。また、動作モードがBGMモードに設定されている場合、オーディオ再生部12から入力されたオーディオ信号をエフェクト処理部16に出力する。
【0039】
そして、主制御部18は、自ワイヤレスオーディオプレーヤ1の各部10~17を統括的に制御して、指示受付部11で受け付けた各種指示に従った処理を行う。
【0040】
なお、図2に示すワイヤレスオーディオプレーヤ1の機能構成は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいはDSP(Digital Signal Processor)等の計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。または、CPUと、メモリと、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置と、無線LANアダプタ等の通信装置と、スピーカと、を備えたPC等の汎用コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することにより実現されるものでもよい。
【0041】
図3は、ワイヤレスオーディオプレーヤ1の動作モード設定処理を説明するためのフロー図である。
【0042】
指示受付部11は、無線LANインターフェース部10を介してリモートコントローラ2から、動作モードの指定を伴う動作モード設定指示を受信すると(S10でYES)、この動作モード設定指示を主制御部18に通知する。主制御部18は、指示受付部11から受け取った動作モード設定指示の指定内容を解析し(S11)、通常モードが指定されているならば(S11で「通常モード」)、自ワイヤレスオーディオプレーヤ1の動作モードを通常モードに設定して、モード切替部17の出力先をスピーカ部13に切り替える(S12)。一方、BGMモードが指定されているならば(S11で「BGMモード」)、自ワイヤレスオーディオプレーヤ1の動作モードをBGMモードに設定して、モード切替部17の出力先をエフェクト処理部16に切り替える(S13)。
【0043】
図4は、ワイヤレスオーディオプレーヤ1のオーディオ再生処理を説明するためのフロー図である。
【0044】
このフローは、指示受付部11が、無線LANインターフェース部10を介してリモートコントローラ2から、再生対象の指定を伴う再生指示を受信することにより開始される。
【0045】
まず、指示受付部11は、リモートコントローラ2から受信した再生指示を主制御部18に渡す。これを受けて、主制御部18は、無線LANインターフェース部10を介してメディアサーバ3にアクセスして、この再生指示で指定されている再生対象のオーディオデータをその楽曲情報とともにメディアサーバ3からダウンロードする(S20)。自ワイヤレスオーディオプレーヤ1の動作モードが通常モードに設定されているならば(S21で「通常モード」)、メディアサーバ3からダウンロードされた再生対象のオーディオデータが通常モードで再生される(S21)。すなわち、メディアサーバ3からダウンロードされた再生対象のオーディオデータは、オーディオ再生部12で再生され、その再生信号であるオーディオ信号がモード切替部17経由でスピーカ部13から出力される。一方、自ワイヤレスオーディオプレーヤ1の動作モードがBGMモードに設定されているならば(S21で「BGMモード」)、メディアサーバ3からダウンロードされた再生対象のオーディオデータがBGMモードで再生される(S22)。
【0046】
図5は、図4に示すBGMモード再生処理(S22)を説明するためのフロー図である。
【0047】
まず、楽曲情報取得部14は、メディアサーバ3からダウンロードされた再生対象のオーディオデータに付加されている楽曲情報を、オーディオ再生部12を介して取得して、その楽曲情報に含まれている楽曲の発表年をエフェクト処理部16に通知する(S220)。これを受けて、エフェクト処理部16は、楽曲情報取得部14より通知された楽曲の発表年が属する年代に基づいて、上述の要領により、オーディオ信号に適用するエフェクト処理を、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のなかから少なくとも一つ選択する(S221)。
【0048】
つぎに、音質解析部15は、再生対象のオーディオデータの音質を解析して、その解析結果をエフェクト処理部16に通知する(S222)。これを受けて、エフェクト処理部16は、音質解析部15より通知された音質の解析結果に基づいて、上述の要領により、S221で選択したエフェクト処理の実施要否を判断する(S223)。これにより、再生対象のオーディオデータの再生信号であるオーディオ信号に適用する実施対象エフェクト処理の要否が決定される。
【0049】
それから、オーディオ再生部12は、BGMの音量として予め設定された所定の音量となるように再生音量を調節して(S224)、再生対象のオーディオデータの再生を開始する(S225)。再生対象のオーディオデータの再生信号であるオーディオ信号は、モード切替部17経由でエフェクト処理部16に入力され、実施対象エフェクト処理が実施要の場合には実施対象エフェクト処理が適用された後、スピーカ部13から出力される。
【0050】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0051】
本実施の形態では、BGMモード時に、再生対象のオーディオデータの楽曲情報に基づいて、この再生対象のオーディオデータに対して、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のうちの少なくともいずれか一つを含むエフェクト処理を実施する。これにより、例えば、デジタルリマスタされた昔の楽曲については、あたかもその当時のオーディオ装置(レコードプレーヤ、カセットテープレコーダ等)で再生したような音質で再生し出力することが可能となる。このため、デジタルリマスタされた高音質な昔の楽曲に聴き入ってしまい、作業に集中できない、入眠が阻害されるといった事態が発生することを防止することができる。このように、本実施の形態によれば、高音質なオーディオデータをBGMに適した音質で再生することが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、再生対象のオーディオデータの楽曲情報に基づいて選択されたエフェクト処理の実施要否を、このオーディオデータの音質の解析結果に基づいて決定している。これにより、再生対象のオーディオデータがもともとBGMに適した音質である場合(例えばデジタルリマスタされていない昔の楽曲のオーディオデータである場合)に、この再生信号であるオーディオ信号がさらに劣化するのを防止することができる。
【0053】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0054】
例えば、上記の実施の形態において、ワイヤレスオーディオプレーヤ1は、再生対象のオーディオデータの楽曲情報に含まれている楽曲の発表年に基づいて、このオーディオデータの再生信号であるオーディオ信号に適用するエフェクト処理を選択している。しかし、本発明はこれに限定されない。再生対象のオーディオデータの楽曲情報に含まれている楽曲のジャンルに基づいて、このオーディオデータの再生信号であるオーディオ信号に適用するエフェクト処理を選択してもよい。例えば、ジャンル「クラシック」の場合には、一般にクラシックはダイナミックレンジが広いので、エフェクト処理「ダイナミック圧縮」、「再生ピッチ変化」を適用して、小さな音量でも音の途切れなく再生できるようにするとともに、あたかもワウフラッタの大きいレコードプレーヤあるいはカセットテープレコーダで再生しているような音質でオーディオ信号を出力することにより、BGMに適した音質で再生することができる。また、ジャンル「ロック」の場合には、一般にロックは周波数帯域が広いので、エフェクト処理「高域・低域周波数カット」、「歪追加」を適用して、例えばAMラジオ放送をあたかも経年劣化したスピーカで聴いているような音質でオーディオ信号を出力することにより、BGMに適した音質で再生することができる。
【0055】
また、上記の実施の形態において、ワイヤレスオーディオプレーヤ1は、再生対象のオーディオデータの楽曲情報に基づいて、このオーディオデータの再生信号であるオーディオ信号に適用するエフェクト処理を選択している。しかし、本発明はこれに限定されない。ワイヤレスオーディオプレーヤ1に、再生対象のオーディオデータの曲調を解析する曲調解析部を設け、エフェクト処理部16が、曲調解析部により解析された曲調により特定される楽曲のジャンルに基づいて、オーディオ信号に適用するエフェクト処理を選択するようにしてもよい。このようにすることにより、メディアサーバ3から再生対象のオーディオデータの楽曲情報を入手できない場合でも、このオーディオデータの再生信号であるオーディオ信号に対して、適切なエフェクト処理を実施することができる。
【0056】
また、上記の実施の形態において、ワイヤレスオーディオプレーヤ1は、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のなかから、再生対象のオーディオデータに適用するエフェクト処理を選択している。しかし、本発明はこれに限定されない。高音質のオーディオデータをBGMに適した音質のオーディオ信号に変換することができるエフェクト処理であれば、どのようなものであってもよい。例えば、ダイナミックレンジ圧縮、高域・低域周波数カット、歪追加、プチプチノイズ追加、および再生ピッチ変化のうちの複数を組み合わせて、あたかもMM(Moving Magnet)カートリッジを用いたレコードプレーヤで再生したような音質を実現できるエフェクト処理と、あたかもMM(Moving Coil)カートリッジを用いたレコードプレーヤで再生したような音質を実現できるエフェクト処理と、を準備し、再生対象のオーディオデータの楽曲情報あるいは曲調の解析結果に基づいて、これらのエフェクト処理のなかからこのオーディオデータに適用するエフェクト処理を選択してもよい。
【0057】
また、上記の実施の形態では、再生対象のオーディオデータの楽曲情報に基づいて選択されたエフェクト処理の実施の有無を、このオーディオデータの音質の解析結果に基づいて決定している。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、メディアサーバ3が配信するオーディオデータがハイレゾリューションオーディオ等の高音質なオーディオデータに限定されている場合は、オーディオデータの音質の解析結果に基づくエフェクト処理の実施の有無の決定処理を省略してもよい。
【0058】
また、上記の実施の形態において、ワイヤレスオーディオプレーヤ1は、リモートコントローラ2から動作モード設定指示を受け付けているが、本発明はこれに限定されない。ワイヤレスオーディオプレーヤ1に動作モードの切替ボタンを設け、切替ボタンを介してユーザから動作モード設定指示を受け付けるようにしてもよい。あるいは、ワイヤレスオーディオプレーヤ1にタイマを搭載して、現在時刻が予め設定されたBGMモード移行時刻となったときに動作モードをBGMモードに設定し、予め設定された通常モード移行時刻となったときに動作モードを通常モードに設定してもよい。または、リモートコントローラ2にスケジューラを搭載して、ユーザのスケジュールを監視し、現在時刻が作業あるいは就寝のスケジュールに移行したタイミングで、BGMモードの指定を伴う動作モード設定指示をワイヤレスオーディオプレーヤ1に送信し、現在時刻が作業あるいは就寝のスケジュールから離脱したタイミングで、通常モードの指定を伴う動作モード設定指示をワイヤレスオーディオプレーヤ1に送信してもよい。
【0059】
上記の実施形態では、本発明をワイヤレスオーディオプレーヤに適用した場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、ハイレゾリューションオーディオ等の高音質なオーディオデータを再生可能なオーディオ装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:ワイヤレスオーディオプレーヤ、 2:リモートコントローラ、 3:メディアサーバ、 4:ネットワーク、 5:アクセスポイント、 10:無線LANインターフェース部、 11:指示受付部、 12:オーディオ再生部、 13:スピーカ部、 14:楽曲情報取得部、 15:音質解析部、 16:エフェクト処理部、 17:モード切替部、 18:主制御部
図1
図2
図3
図4
図5