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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083992
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】列車監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20230609BHJP
   B61L 23/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H04N7/18 J
H04N7/18 F
B61L23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198040
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】金枝 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】直井 寛典
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】佐々 敦
【テーマコード(参考)】
5C054
5H161
【Fターム(参考)】
5C054CE00
5C054CH08
5C054DA09
5C054FD00
5C054FE02
5C054FE22
5C054GB01
5C054GD00
5C054HA30
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM15
5H161NN10
5H161QQ01
(57)【要約】
【課題】カメラの故障による影響を低減することが可能な列車監視システムを提供する。
【解決手段】列車の各車両の車体側面に、互いに同じ方向に向けて取り付けられたカメラ11A及びカメラ21Aと、カメラ11Aの映像及びカメラ21Aの映像を表示するモニタ13とを備える。カメラ21Aに対して撮影方向の上流側に配置されたカメラ11Aは、基準形式のカメラ映像を出力する機能とは別に、より高画質な形式のカメラ映像からカメラ21Aの映像に対応する範囲を切り出した補完映像を生成して出力する機能を有する。モニタ13は、カメラ21Aが故障して映像を取得できない(つまり、表示できない)場合に、カメラ21Aの映像に代えて、カメラ11Aにより生成された補完映像を表示する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の車体側面に、列車進行方向又は逆方向に向けて取り付けられた第1のカメラと、
前記列車の車体側面に、前記第1のカメラと同じ方向に向けて前記第1のカメラよりも上流側に取り付けられた第2のカメラと、
前記第1のカメラの映像を取得できない場合に、前記第2のカメラの映像から前記第1のカメラの映像に対応する範囲を切り出して、前記第1のカメラの映像を補完する補完映像を生成する映像補完装置とを備えたことを特徴とする列車監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の列車監視システムにおいて、
前記第1のカメラの映像及び前記第2のカメラの映像を表示するモニタを備え、
前記モニタは、前記第1のカメラの映像を表示できない場合に、前記第1のカメラの映像に代えて、前記映像補完装置により生成された前記補完映像を表示することを特徴とする列車監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の列車監視システムにおいて、
前記モニタは、前記補完映像のために前記第2のカメラの映像から切り出す範囲の指定を受け付ける機能を有することを特徴とする列車監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の列車監視システムにおいて、
前記第1のカメラの映像及び前記第2のカメラの映像を録画する録画装置を備え、
前記録画装置は、前記第1のカメラの映像を録画できない場合に、前記第1のカメラの映像に代えて、前記映像補完装置により生成された前記補完映像を録画することを特徴とする列車監視システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の列車監視システムにおいて、
前記第2のカメラは、前記第2のカメラの映像を出力する機能とは別に、前記映像補完装置により生成された前記補完映像を出力する機能を有することを特徴とする列車監視システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の列車監視システムにおいて、
前記モニタ又は前記録画装置には、前記第1のカメラの映像の取得元を示す取得元IPアドレスとして、前記第1のカメラのIPアドレスが登録されており、
前記モニタ又は前記録画装置は、前記取得元IPアドレスに対応する前記第1のカメラから映像を取得できない場合に、前記取得元IPアドレスを前記第2のカメラのIPアドレスに変更し、変更後の前記取得元IPアドレスに対応する前記第2のカメラから取得した映像に基づいて、前記第1のカメラの映像の表示又は録画を行うことを特徴とする列車監視システム。
【請求項7】
請求項1に記載の列車監視システムにおいて、
前記第1のカメラの映像及び前記第2のカメラの映像を録画する録画装置を備え、
前記録画装置は、前記第1のカメラの映像を録画できなかった状況で前記第1のカメラの映像を要求された場合に、前記第1のカメラの映像に代えて、前記映像補完装置により生成された前記補完映像を提供することを特徴とする列車監視システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車をカメラの映像により監視する列車監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホームで乗客が列車に乗降する際の安全確保は、列車運行にとって重要な課題である。このような安全対策の一環として、列車の各車両の外部側面に取り付けられたカメラでドア付近を撮影し、そのカメラ映像を運転台のモニタに表示させる列車監視システムが開発されており、ワンマン運転の支援に活用されている。また、有事の際は、監視映像録画装置(NDR)に録画された映像が、状況の把握・分析のために利用されている。
【0003】
本発明に係る技術分野の従来技術としては、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、モニタのディスプレイ領域を複数のエリアに分割し、各車両のカメラによって撮影された複数のカメラ映像を各エリアにそれぞれ割り当てて表示させる列車監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-113602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
列車監視システムにおいて、各車両のカメラは、例えば、その車両に搭載されたPoEスイッチングハブ(以下、「PoEスイッチ」と称する)のPoE給電機能により動作するように構成される。いずれかの車両でカメラやPoE給電機能などに故障が発生すると、その車両のカメラによる撮影を行えなくなり、カメラ映像の配信が途絶えてしまう。その結果、カメラ映像をモニタでリアルタイムに確認できなくなるため、列車の乗務員はドア付近の様子を目視で確認する必要が生じてしまい、安全確認に時間がとられて運行遅延が発生しかねない。また、カメラ映像を録画装置に録画できないため、状況の把握・分析が困難になりかねない。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、カメラの故障による影響を低減することが可能な列車監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る列車監視システムは、以下のように構成される。すなわち、本発明に係る列車監視システムは、列車の車体側面に、列車進行方向又は逆方向に向けて取り付けられた第1のカメラと、列車の車体側面に、第1のカメラと同じ方向に向けて第1のカメラよりも上流側に取り付けられた第2のカメラと、第1のカメラの映像を取得できない場合に、第2のカメラの映像から第1のカメラの映像に対応する範囲を切り出して、第1のカメラの映像を補完する補完映像を生成する映像補完装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明に係る列車監視システムにおいて、第1のカメラの映像及び第2のカメラの映像を表示するモニタを備え、モニタは、第1のカメラの映像を表示できない場合に、第1のカメラの映像に代えて、映像補完装置により生成された補完映像を表示するように構成され得る。
【0009】
また、本発明に係る列車監視システムにおいて、モニタは、補完映像のために第2のカメラの映像から切り出す範囲の指定を受け付ける機能を有するように構成され得る。
【0010】
また、本発明に係る列車監視システムにおいて、第1のカメラの映像及び第2のカメラの映像を録画する録画装置を備え、録画装置は、第1のカメラの映像を録画できない場合に、第1のカメラの映像に代えて、映像補完装置により生成された補完映像を録画するように構成され得る。
【0011】
また、本発明に係る列車監視システムにおいて、第2のカメラは、第2のカメラの映像を出力する機能とは別に、映像補完装置により生成された補完映像を出力する機能を有するように構成され得る。
【0012】
また、本発明に係る列車監視システムにおいて、モニタ又は録画装置には、第1のカメラの映像の取得元を示す取得元IPアドレスとして、第1のカメラのIPアドレスが登録されており、モニタ又は録画装置は、取得元IPアドレスに対応する第1のカメラから映像を取得できない場合に、取得元IPアドレスを第2のカメラのIPアドレスに変更し、変更後の取得元IPアドレスに対応する第2のカメラから取得した映像に基づいて、第1のカメラの映像の表示又は録画を行うように構成され得る。
【0013】
また、本発明に係る列車監視システムにおいて、第1のカメラの映像及び第2のカメラの映像を録画する録画装置を備え、録画装置は、第1のカメラの映像を録画できなかった状況で第1のカメラの映像を要求された場合に、第1のカメラの映像に代えて、映像補完装置により生成された補完映像を提供するように構成され得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カメラの故障による影響を低減することが可能な列車監視システムを提供することができる。その結果、列車監視システムの信頼性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る列車監視システムの構成例を示す図である。
図2】正常時のカメラ映像について説明する図である。
図3】第1実施例に係る故障時のカメラ映像の補完について説明する図である。
図4】第1実施例に係る処理シーケンスの例を示す図である。
図5】第2実施例に係る処理シーケンスの例を示す図である。
図6】第3実施例に係る処理シーケンスの例を示す図である。
図7】第4実施例に係る処理シーケンスの例を示す図である。
図8】第5実施例に係る故障時のカメラ映像の補完について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る列車監視システムの構成例を示してある。図1は、車両10(1号車)、車両20(2号車)、車両30(3号車)の3台を連結した3両編成の列車を示している。ここでは、車両10を先頭にして列車が進行する場合(すなわち、図面左方向に列車が進行する場合)を例にして説明する。
【0017】
車両10の外部側面には、乗客が列車に乗降する様子を撮像するために、その車両のドアに向けてカメラ11A~11Dを取り付けてある。同様に、車両20にはカメラ21A~21Dを取り付けてあり、車両30には31A~31Dを取り付けてある。これらカメラは、例えば、IPカメラである。ここで、符号「A」は、列車進行方向を基準にして、車両の左側前方に後方に向けて設置されたカメラを示し、符号「B」は、車両の左側後方に前方に向けて設置されたカメラを示し、符号「C」は、車両の右側後方に前方に向けて設置されたカメラを示し、符号「D」は、車両の右側前方に後方に向けて設置されたカメラを示す。
【0018】
先頭の車両10には、監視用のモニタ13が設けられている。同様に、最後尾の車両30にも、監視用のモニタ33が設けられている。モニタ13,33は、それぞれ複数台で構成されてもよい。モニタ13は、図面左方向に列車が進行する場合に使用され、モニタ33は、これとは逆方向に列車が進行する場合に使用される。以下では、図面左方向に列車が進行する場合を例にして、モニタ13に着目して説明する。
【0019】
モニタ13は、駅のプラットホームにおいて、各車両のドアを開扉する側のカメラ映像を表示する。モニタ13は、例えば、ディスプレイ領域を複数のエリアに分割し、各車両のカメラによって撮影された複数のカメラ映像を各エリアにそれぞれ割り当てて表示する。なお、モニタ13は、各車両のカメラによって撮影された複数のカメラ映像を順番に切り替えて表示する等、別の手法により複数のカメラ映像の表示を行ってもよい。
【0020】
先頭の車両10には更に、本例の列車監視システムに関する各種の制御を行う制御装置14や、カメラ映像を録画する録画装置15が設置されている。録画装置15は、各車両のカメラから受信したカメラ映像を、各車両のカメラの識別情報や撮影時刻と関連付けて、常時記録(録画)する。制御装置14や録画装置15は、別の装置(例えば、最後尾の車両30)にも設置して、多重化してもよい。
【0021】
車両10,20,30には、PoEスイッチ(図面では「HUB」)12,22,32がそれぞれ配置されている。PoEスイッチ12には、車両10の各機器、すなわち、カメラ11A~11D、モニタ13、制御装置14、及び録画装置15が接続されている。また、PoEスイッチ22には、車両20の各機器、すなわち、カメラ21A~21Dが接続されている。また、PoEスイッチ32には、車両30の各機器、すなわち、カメラ31A~31D、及びモニタ33が接続されている。PoEスイッチ12,22,32は更に、ネットワークケーブルにより互いにカスケードに接続されており、これにより列車内ネットワークが構築されている。
【0022】
各車両のカメラは、それぞれ、予め定められた視野内を所定のフレームレートで撮像し、撮像した映像(ライブ映像)をH.264/MPEG4/JPEG等の形式に圧縮し、モニタ13や録画装置15などの機器へ送信する。なお、各車両のカメラは、これらの機器へ自動的にカメラ映像を送信してもよいし、これらの機器からの要求に応じてカメラ映像を送信してもよい。
【0023】
本例の映像監視システムが有する特徴の一つは、いずれかのカメラが故障した場合に、そのカメラの映像を別のカメラの映像によって補完することである。故障したカメラと同じ方向を向いた他のカメラのうち、故障したカメラよりも上流にあるカメラは、故障したカメラの視野範囲を含む映像を撮影しているので、そのカメラの映像から一部を切り出すことで、故障したカメラの補完映像を生成することができる。ここで、故障したカメラよりも「上流側」とは、故障したカメラの撮影方向に対する上流側、つまり、撮影方向とは逆側(手前側)を意味する。以下、本例の映像監視システムが有する特徴について、幾つかの実施例を挙げつつ説明する。
【0024】
<第1実施例>
ここでは、各車両の左側前方に後方に向けて設置されたカメラ11A,21A,31Aのうち、カメラ21Aが故障する場合を例にして説明するものとし、他の実施例も同様とする。第1実施例では、故障したカメラ21Aと同じ方向を撮影する上流側のカメラ11Aが、自身の映像から補完映像を生成し、カメラ21Aの映像としてモニタ13に表示させる。
【0025】
第1実施例に係るカメラ11A,21A,31Aは、基準形式(例えば、VGA)のカメラ映像を出力する機能(メインコーデック)の他に、より高画質な形式(例えば、FullHD、4K、8K)のカメラ映像から予め設定された範囲を切り出して基準形式と同様な形式の補完映像を出力する機能(サブコーデック)を有する。
【0026】
モニタ13は通常、カメラ映像をそのまま表示するのではなく、カメラ映像から一部を切り出して表示しており、ユーザから表示範囲(すなわち、切り出し範囲)の設定を受け付ける機能を有している。この機能を利用して、通常時の切り出し範囲の設定だけでなく、補完画像用の切り出し範囲の設定を事前に行っておく。モニタ13が受け付けた切り出し範囲の設定情報は、事前に各カメラに送信されており、各コーデックが映像出力する範囲を切り出す際に用いられる。
【0027】
カメラ11A,21A,31Aの全てが正常な場合には、例えば、図2に示すように、カメラ11A,21A,31Aの各々からVGAのカメラ映像が出力され、モニタ13に表示される。一方、カメラ21Aが故障した場合には、例えば、図3に示すように、カメラ21Aより上流側にあるカメラ11Aから、VGAのカメラ映像が出力されるだけでなく、HullHDのカメラ映像から切り出したVGAの補完映像(カメラ21Aの映像に対応する範囲を切り出した映像)が出力され、モニタ13に表示される。カメラ映像の置き換えは、障害監視機能を有する制御装置14により制御される。
【0028】
図4には、第1実施例に係る処理シーケンスの例を示してある。図4では、説明の簡略化のためにカメラ31Aの動作を省略しており、図5図7も同様である。
カメラ11A,21Aは通常、各々の視野範囲を撮影した基準形式のカメラ映像をモニタ13へ送信し(ステップS11,12)、モニタ13は、受信したカメラ映像を表示する(ステップS13)。ここで、カメラ21Aが故障すると、制御装置14は、カメラ21Aの故障を検知する(ステップS14)。
【0029】
カメラ21Aの故障の検知は種々の方法で行うことが可能である。一例として、制御装置14は、カメラ21Aとの定期的に通信を行っており、通信が途絶えた場合に、カメラ21Aが故障したと判断する。別の例として、制御装置14は、カメラ21Aとの定期的に通信を行っており、故障が発生したことを示す故障信号を受信した場合に、カメラ21Aが故障したと判断する。
【0030】
制御装置14は、カメラ21Aの故障を検知すると、カメラ21Aの映像を補完映像に切り替えさせる映像切替指示をモニタ13へ送信する(ステップS15)。モニタ13は、制御装置14から映像切替指示を受信したことに応じて、カメラ21Aの映像の取得元をカメラ21Aより上流側にあるカメラ11Aに切り替えて、カメラ21Aの補完映像を要求する補完映像要求をカメラ11Aへ送信する(ステップS16)。本例では、モニタ13には、カメラ21Aの映像の取得元を示す取得元IPアドレスとして、カメラ21AのIPアドレスが登録されており、カメラ21Aが故障した場合には、取得元IPアドレスをカメラ11AのIPアドレスに変更し、補完映像要求をカメラ11Aへ送信するように構成されている。
【0031】
カメラ11Aは、モニタ13から補完映像要求を受信すると、その後は、基準形式より高画質な形式の映像からカメラ21Aの映像に対応する範囲を切り出してカメラ21Aの補完映像を生成し(ステップS17)、基準形式のカメラ映像とは別にモニタ13へ送信する(ステップS18)。モニタ13は、カメラ11Aから受信したカメラ21Aの補完映像を、カメラ21Aの映像に代えて表示する(ステップS19)。
【0032】
このように、第1実施例では、列車の各車両の車体側面に、互いに同じ方向に向けて取り付けられたカメラ11A及びカメラ21Aと、カメラ11Aの映像及びカメラ21Aの映像を表示するモニタ13とを備える。カメラ21Aに対して撮影方向の上流側に配置されたカメラ11Aは、基準形式のカメラ映像を出力する機能とは別に、より高画質な形式のカメラ映像からカメラ21Aの映像に対応する範囲を切り出した補完映像を生成して出力する機能(すなわち、本発明に係る映像補完装置の機能)を有する。モニタ13は、カメラ21Aが故障して映像を取得できない(つまり、表示できない)場合に、カメラ21Aの映像に代えて、カメラ11Aにより生成された補完映像を表示する。
【0033】
したがって、カメラ21Aが故障した場合には、その上流側にあるカメラ11Aにより生成された補完映像がモニタ13に表示されるため、列車の乗務員はカメラ21Aの撮影範囲の監視を継続することができる。また、故障したカメラ21Aとは逆方向のカメラ21Bの映像ではなく、故障したカメラ21Aと同じ方向のカメラ11Aの映像から補完映像が生成されるので、故障したカメラ21Aの映像に近い補完映像により監視を継続できるため、補完映像に対する乗務員の違和感を小さくすることができる。
【0034】
<第2実施例>
第2実施例では、カメラ11Aの映像及びカメラ21Aの映像を表示するモニタ13が、故障したカメラ21Aと同じ方向を撮影する上流側のカメラ11Aの映像から補完映像を生成し、カメラ21Aの映像として表示する。このような動作を実現するために、モニタ13には、通常時の切り出し範囲だけでなく、補完画像用の切り出し範囲が事前に設定されている。
【0035】
図5には、第2実施例に係る処理シーケンスの例を示してある。
カメラ11A,21Aは通常、各々の視野範囲を撮影したカメラ映像をモニタ13へ送信する(ステップS21,22)。モニタ13は、受信したカメラ映像から通常時の切り出し範囲の設定に従って切り出した映像を表示する(ステップS23)。ここで、カメラ21Aが故障すると、制御装置14は、カメラ21Aの故障を検知し(ステップS24)、カメラ21Aの映像を補完映像に切り替えさせる映像切替指示をモニタ13へ送信する(ステップS25)。
【0036】
モニタ13は、制御装置14から映像切替指示を受信したことに応じて、カメラ21Aの映像の取得元を、カメラ21Aより上流側にあるカメラ11Aに切り替える。本例では、モニタ13には、カメラ21Aの映像の取得元を示す取得元IPアドレスとして、カメラ21AのIPアドレスが登録されており、カメラ21Aが故障した場合には、取得元IPアドレスをカメラ11AのIPアドレスに変更し、カメラ21Aの映像としてカメラ11Aの映像を取得する。このとき、モニタ13は、カメラ11Aの映像から通常時の切り出し範囲の設定に従って切り出しを行うのではなく、補完画像用の切り出し範囲の設定に従って切り出しを行い、得られた補完映像をカメラ21Aの映像に代えて表示する(ステップS26,S27)。
【0037】
ここで、本例のようにモニタ13が補完映像を生成する場合には、補完映像の切り出し元となる映像(元映像)の画質は基準形式(例えば、VGA)より高画質であることが好ましい(例えば、FullHD、4K、8K)。ただし、平常時も高画質なカメラ映像を各カメラから送信するように構成すると、通信負担が大きくなる懸念があるため、カメラの故障時には、補完映像の元映像を送信する上流側のカメラのみに対し、高画質なカメラ映像を送信するように要求してもよい。
【0038】
このように、第2実施例では、列車の各車両の車体側面に、互いに同じ方向に向けて取り付けられたカメラ11A及びカメラ21Aと、カメラ11Aの映像及びカメラ21Aの映像を表示するモニタ13とを備える。モニタ13は、カメラ21Aに対して撮影方向の上流側に配置されたカメラ11Aからカメラ21Aの映像に対応する範囲を切り出した補完映像を生成する機能(すなわち、本発明に係る映像補完装置の機能)を有し、カメラ21Aの映像を取得できない(つまり、表示できない)場合に、当該生成した補完映像をカメラ21Aの映像に代えて表示する。
【0039】
したがって、カメラ21Aが故障した場合には、その上流側にあるカメラ11Aにより生成された補完映像がモニタ13に表示されるため、列車の乗務員はカメラ21Aの撮影範囲の監視を継続することができる。また、故障したカメラ21Aとは逆方向のカメラ21Bの映像ではなく、故障したカメラ21Aと同じ方向のカメラ11Aの映像から補完映像が生成されるので、故障したカメラ21Aの映像に近い補完映像により監視を継続できるため、補完映像に対する乗務員の違和感を小さくすることができる。
【0040】
<第3実施例>
第3実施例では、故障したカメラ21Aと同じ方向を撮影する上流側のカメラ11Aが、自身の映像から補完映像を生成し、カメラ21Aの映像として録画装置15に録画させる。すなわち、モニタ13ではなく録画装置15が補完映像を取り扱う点を除き、基本的な動作は第1実施例と同様である。
【0041】
図6には、第3実施例に係る処理シーケンスの例を示してある。
カメラ11A,21Aは通常、各々の視野範囲を撮影した基準形式のカメラ映像を録画装置15へ送信し(ステップS31,32)、録画装置15は、受信したカメラ映像を録画する(ステップS33)。ここで、カメラ21Aが故障すると、制御装置14は、カメラ21Aの故障を検知し(ステップS34)、カメラ21Aの映像を補完映像に切り替えさせる映像切替指示を録画装置15へ送信する(ステップS35)。
【0042】
録画装置15は、制御装置14から映像切替指示を受信したことに応じて、カメラ21Aの映像の取得元をカメラ21Aより上流側にあるカメラ11Aに切り替えて、カメラ21Aの補完映像を要求する補完映像要求をカメラ11Aへ送信する(ステップS16)。本例では、録画装置15には、カメラ21Aの映像の取得元を示す取得元IPアドレスとして、カメラ21AのIPアドレスが登録されており、カメラ21Aが故障した場合には、取得元IPアドレスをカメラ11AのIPアドレスに変更し、補完映像要求をカメラ11Aへ送信するように構成されている。
【0043】
カメラ11Aは、録画装置15から補完映像要求を受信すると、その後は、基準形式より高画質な形式の映像からカメラ21Aの映像に対応する範囲を切り出してカメラ21Aの補完映像を生成し(ステップS37)、基準形式のカメラ映像とは別に録画装置15へ送信する(ステップS38)。録画装置15は、カメラ11Aから受信したカメラ21Aの補完映像を、カメラ21Aの映像に代えて録画する(ステップS39)。
【0044】
このように、第3実施例では、列車の各車両の車体側面に、互いに同じ方向に向けて取り付けられたカメラ11A及びカメラ21Aと、カメラ11Aの映像及びカメラ21Aの映像を録画する録画装置15とを備える。カメラ21Aに対して撮影方向の上流側に配置されたカメラ11Aは、基準形式のカメラ映像を出力する機能とは別に、より高画質な形式のカメラ映像からカメラ21Aの映像に対応する範囲を切り出した補完映像を生成して出力する機能(すなわち、本発明に係る映像補完装置の機能)を有する。録画装置15は、カメラ21Aが故障して映像を取得できない(つまり、録画できない)場合に、カメラ21Aの映像に代えて、カメラ11Aにより生成された補完映像を録画する。
【0045】
したがって、カメラ21Aが故障した場合には、その上流側にあるカメラ11Aにより生成された補完映像が録画装置15に録画されるため、有事の際の状況を事後的に把握・分析する作業を支障なく行える。また、故障したカメラ21Aとは逆方向のカメラ21Bの映像ではなく、故障したカメラ21Aと同じ方向のカメラ11Aの映像から補完映像が生成されるので、故障したカメラ21Aの映像に近い補完映像により録画を継続できるため、カメラ21Aの映像を連続した映像データとして録画することができる。
【0046】
<第4実施例>
第4実施例では、カメラ11Aの映像及びカメラ21Aの映像を録画する録画装置15が、故障したカメラ21Aと同じ方向を撮影する上流側のカメラ11Aの映像から補完映像を生成し、カメラ21Aの映像として録画する。すなわち、モニタ13ではなく録画装置15が補完映像を取り扱う点を除き、基本的な動作は第2実施例と同様である。
【0047】
図6には、第4実施例に係る処理シーケンスの例を示してある。
カメラ11A,21Aは通常、各々の視野範囲を撮影したカメラ映像を録画装置15へ送信する(ステップS41,42)。録画装置15は、受信したカメラ映像から通常時の切り出し範囲の設定に従って切り出した映像(又は受信したカメラ映像そのもの)を録画する(ステップS43)。ここで、カメラ21Aが故障すると、制御装置14は、カメラ21Aの故障を検知し(ステップS44)、カメラ21Aの映像を補完映像に切り替えさせる映像切替指示を録画装置15へ送信する(ステップS45)。
【0048】
録画装置15は、制御装置14から映像切替指示を受信したことに応じて、カメラ21Aの映像の取得元を、カメラ21Aより上流側にあるカメラ11Aに切り替える。本例では、録画装置15には、カメラ21Aの映像の取得元を示す取得元IPアドレスとして、カメラ21AのIPアドレスが登録されており、カメラ21Aが故障した場合には、取得元IPアドレスをカメラ11AのIPアドレスに変更し、カメラ21Aの映像としてカメラ11Aの映像を取得する。このとき、録画装置15は、カメラ11Aの映像から補完画像用の切り出し範囲の設定に従って切り出しを行い、得られた補完映像をカメラ21Aの映像に代えて録画する(ステップS46,S47)。
【0049】
このように、第4実施例では、列車の各車両の車体側面に、互いに同じ方向に向けて取り付けられたカメラ11A及びカメラ21Aと、カメラ11Aの映像及びカメラ21Aの映像を録画する録画装置15とを備える。録画装置15は、カメラ21Aに対して撮影方向の上流側に配置されたカメラ11Aからカメラ21Aの映像に対応する範囲を切り出した補完映像を生成する機能(すなわち、本発明に係る映像補完装置の機能)を有し、カメラ21Aの映像を取得できない(つまり、録画できない)場合に、当該生成した補完映像をカメラ21Aの映像に代えて録画する。
【0050】
したがって、カメラ21Aが故障した場合には、その上流側にあるカメラ11Aにより生成された補完映像が録画装置15に録画されるため、有事の際の状況を事後的に把握・分析する作業を支障なく行える。また、故障したカメラ21Aとは逆方向のカメラ21Bの映像ではなく、故障したカメラ21Aと同じ方向のカメラ11Aの映像から補完映像が生成されるので、故障したカメラ21Aの映像に近い補完映像により録画を継続できるため、カメラ21Aの映像を連続した映像データとして録画することができる。
【0051】
<第5実施例>
第5実施例では、カメラ11Aの映像及びカメラ21Aの映像を録画する録画装置15が、故障したカメラ21Aの映像を要求された場合に、カメラ21Aと同じ方向を撮影する上流側のカメラ11Aの映像から補完映像を生成し、カメラ21Aの映像として提供する。
【0052】
図8を参照して、第5実施例に係る故障時のカメラ映像の補完について説明する。
カメラ11A,21Aは通常、各々の視野範囲を撮影したカメラ映像を録画装置15へ送信し、録画装置15は、受信したカメラ映像を録画する。ここで、カメラ21Aが故障すると、その後はカメラ21Aの映像が録画装置15に録画されない。
【0053】
録画装置15は、カメラ21Aの映像を録画できなかった期間がある場合において、カメラ21の映像の再生やダウンロードをモニタ13や他の装置から要求された場合には、その期間のカメラ21Aの映像として、カメラ21Aより上流側にあるカメラ11Aを用いる。このとき、録画装置15は、カメラ11Aの映像から補完画像用の切り出し範囲の設定に従って切り出しを行い、得られた補完映像をカメラ21Aの映像として要求元の装置へ提供する。
【0054】
このように、第5実施例では、列車の各車両の車体側面に、互いに同じ方向に向けて取り付けられたカメラ11A及びカメラ21Aと、カメラ11Aの映像及びカメラ21Aの映像を録画する録画装置15とを備える。録画装置15は、カメラ21Aに対して撮影方向の上流側に配置されたカメラ11Aからカメラ21Aの映像に対応する範囲を切り出した補完映像を生成する機能(すなわち、本発明に係る映像補完装置の機能)を有し、カメラ21Aの映像を録画できなかった状況でカメラ21Aの映像が要求された場合に、当該生成した補完映像をカメラ21Aの映像に代えて提供する。
【0055】
したがって、故障したカメラ21Aの映像を録画装置15に録画できなかった場合でも、その上流側にあるカメラ11Aにより生成された補完映像を要求元に提供できるため、有事の際の状況を事後的に把握・分析する作業を支障なく行える。また、故障したカメラ21Aとは逆方向のカメラ21Bの映像ではなく、故障したカメラ21Aと同じ方向のカメラ11Aの映像から補完映像が生成されるので、故障したカメラ21Aの映像に近い補完映像により録画を継続できるため、カメラ21Aの映像及び補完映像を連続的なデータとして録画することができる。
【0056】
ここで、上述した第1~第5実施例では、カメラ11Aとカメラ21Aの関係を例にして説明したが、カメラ21Aとカメラ31Aの関係においても同様である。なお、カメラ31Aが故障した場合には、カメラ21Aにより補完映像を生成するのではなく、より上流側のカメラ11Aにより補完映像を生成しても構わない。ただし、故障したカメラに近いカメラで補完映像を生成する方が、より高い画質の補完映像を得ることができるので好ましい。
【0057】
また、本例の列車監視システムでは、補完関係にあるカメラ(例えば、カメラ11Aとカメラ21A)をそれぞれ別の車両に配置してあるが、これらが同一の車両に配置されている場合にも、同様な手法にて補完映像を生成することが可能である。また、列車を編成する車両の数や、各車両に取り付けるカメラの位置や個数は任意であり、図1のような構成に限定されない。例えば、カメラやPoEスイッチなどを1両ずつ間引いた構成としてもよく、これにより、少ない予算で列車監視システムを構築することが可能である。
【0058】
また、本発明に係る映像補完装置は、他の装置に設けられてもよく、故障したカメラよりも上流側にあるカメラの映像に基づいて、故障したカメラの補完映像を生成できればよい。本発明に係る映像補完装置は、例えば、プロセッサやメモリなどのハードウェア資源を備えたコンピュータが、本発明に係る各機能を実現するためのプログラムをプロセッサにて実行することで実現される。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0060】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、列車をカメラの映像により監視する列車監視システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10,20,30:車両、 11A~11D,21A~21D,31A~31D:カメラ、 12,22,32:PoEスイッチングハブ(HUB)、 13,33:モニタ、 14:制御装置、 15:録画装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8