(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084008
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20230609BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G06F1/16 312L
H05K5/03 C
G06F1/16 312E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198064
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中垣 佳士
(72)【発明者】
【氏名】秋山 紗良
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB04
4E360AB05
4E360AB08
4E360AB17
4E360AB18
4E360AB42
4E360AC01
4E360AC21
4E360BA01
4E360BA03
4E360BA04
4E360BA11
4E360BB02
4E360BB14
4E360BB27
4E360BC05
4E360BC06
4E360BD03
4E360BD06
4E360CA02
4E360EA18
4E360EA24
4E360EC04
4E360EC14
4E360ED02
4E360ED07
4E360ED13
4E360ED23
4E360EE03
4E360FA02
4E360FA12
4E360FA13
4E360FA20
4E360GA11
4E360GA12
4E360GA51
4E360GA52
4E360GB46
4E360GC02
4E360GC06
4E360GC08
4E360GC14
(57)【要約】
【課題】第1筐体から第2筐体に亘るフレキシブル基板を保護するとともに、外観品質を向上させる。
【解決手段】電子機器10は、載置面に載置する脚部を下面に有する第1筐体12と、第1筐体12に対してヒンジ16によって回動可能に連結された第2筐体14と、第1筐体12における第2筐体14に対する連結側側面12caの電線挿通孔42を通って、第1筐体12と第2筐体14とを電気的に接続するフレキシブル基板38と、連結側側面12caにおける第1筐体12における電線挿通孔42よりも下方で、少なくともフレキシブル基板38が設けられている幅W1の範囲にわたって、電線挿通孔42の開口よりも突出しているヒレ部材58とを有する。ヒレ部材58は脚部30の一部である。ヒレ部材58の先端部は、樹脂弾性体によって形成されており第2筐体14を第1筐体12に対して最大角度になるまで開いたときに外側カバー48に当接する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
載置面に載置する脚部を下面に有する第1筐体と、
前記第1筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された第2筐体と、
前記第1筐体における前記第2筐体に対する連結側側面の電線挿通孔を通って、前記第1筐体と前記第2筐体とを電気的に接続するフレキシブル基板と、
前記連結側側面における前記電線挿通孔よりも上方および下方の少なくとも一方で、少なくとも前記フレキシブル基板が設けられている範囲にわたって、前記電線挿通孔の開口よりも突出しているヒレ部材と、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記ヒレ部材は、前記脚部の一部であって前記電線挿通孔の下方に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
前記ヒレ部材の先端部は、樹脂弾性体によって形成されており前記第2筐体を前記第1筐体に対して最大角度になるまで開いたときに前記第2筐体の一部に当接する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記ヒレ部材は、先端に向かって薄くなり、かつ上面が下方に傾斜している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記第1筐体の前記下面は、少なくとも前記脚部に対する固定箇所が樹脂材であり、
前記脚部は、前記ヒレ部材の一部である芯材が前記固定箇所に対して熱溶着されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記脚部は、前記第1筐体における前記連結側側面の下部縁に沿った長尺形状である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記第1筐体は上面にキーボードを有し、
前記ヒレ部材は前記キーボードの回りを囲う上カバー材の一部が突出したものである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器において、
前記ヒンジは左右に一対設けられており、
前記上カバー材は、
前記ヒンジにおける前記第1筐体側の固定部を覆うように突出している一対の第1ヒンジカバーと、
一対の前記第1ヒンジカバーの間で、該第1ヒンジカバーより相対的に窪んでいるヒンジ間凹部と、
を有し、
前記ヒレ部材は前記ヒンジ間凹部の範囲内に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項8に記載の電子機器において、
前記第2筐体は、
前記ヒンジ間凹部に配置されて前記ヒンジにおける前記第2筐体側の固定部を覆う第2ヒンジカバーと、
前記第2筐体を前記第1筐体に対して重なるように閉じたときに、前記ヒレ部材と対向する箇所に、側面視で前記第2ヒンジカバーよりも窪んだ逃げ部と、
を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置面に載置される第1筐体、および該第1筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された第2筐体を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、特許文献1で示されるように、載置面に載置される第1筐体と、ディスプレイを備えていて第1筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された第2筐体とを有している。特許文献1に記載の電子機器では、第1筐体と第2筐体とを接続する配線部材が細いワイヤ状であって、ヒンジの回転軸に沿って配策されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1筐体と第2筐体との間の信号線の数が多く、または信号の種類により並列的な伝送が好ましい場合にはフレキシブル基板を用いて接続することが考えられる。ところが、フレキシブル基板はある程度の幅があり特許文献1のようにヒンジの回転軸に沿って配策することは難しいため、第1筐体と第2筐体との間を横断するように配置されることになるが、この横断部が外部に対して露呈されるため損傷する懸念があるとともにユーザから視認されて外観品質上で好ましくない。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、第1筐体から第2筐体に亘るフレキシブル基板を保護するとともに、外観品質を向上させることのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の実施態様に係る電子機器は、電子機器であって、載置面に載置する脚部を下面に有する第1筐体と、前記第1筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された第2筐体と、前記第1筐体における前記第2筐体に対する連結側側面の電線挿通孔を通って、前記第1筐体と前記第2筐体とを電気的に接続するフレキシブル基板と、前記連結側側面における前記電線挿通孔よりも上方および下方の少なくとも一方で、少なくとも前記フレキシブル基板が設けられている範囲にわたって、前記電線挿通孔の開口よりも突出しているヒレ部材と、を有する。これにより、第1筐体から第2筐体に亘るフレキシブル基板を保護するとともに、外観品質を向上させることができる。
【0007】
前記ヒレ部材は、前記脚部の一部であって前記電線挿通孔の下方に設けられていてもよい。これにより、ヒレ部材を脚部の一部とすることにより部品点数を抑制することができる。ヒレ部材を電線挿通孔の下方に設けると、第1筐体と第2筐体とが0度姿勢のときにフレキシブル基板を覆いやすくなる。
【0008】
前記ヒレ部材の先端部は、樹脂弾性体によって形成されており前記第2筐体を前記第1筐体に対して最大角度になるまで開いたときに前記第2筐体の一部に当接してもよい。このようにして、ヒレ部材によって第2筐体を支持することができるとともに、第2筐体を傷つけることがない。
【0009】
前記ヒレ部材は、先端に向かって薄くなり、かつ上面が下方に傾斜していてもよい。これにより、第2筐体を一層適切に支持することができる。
【0010】
前記第1筐体の前記下面は、少なくとも前記脚部に対する固定箇所が樹脂材であり、前記脚部は、前記ヒレ部材の一部である芯材が前記固定箇所に対して熱溶着されていてもよい。これにより、ヒレ部材は脚部を介して第1筐体に確実に固定される。
【0011】
前記脚部は、前記第1筐体における前記連結側側面の下部縁に沿った長尺形状であってもよい。これにより、ヒレ部材も長尺形状にすることができ、フレキシブル基板を一層覆うとともに、第2筐体を支持しやすくなる。
【0012】
前記第1筐体は上面にキーボードを有し、前記ヒレ部材は前記キーボードの回りを囲う上カバー材の一部が突出したものであってもよい。ヒレ部材を電線挿通孔の上方に設けると、第1筐体と第2筐体とが最大角度姿勢のときにフレキシブル基板を覆いやすくなる。ヒレ部材を上カバー材の一部とすることにより、部品点数を抑制することができる。
【0013】
前記ヒンジは左右に一対設けられており、前記上カバー材は、前記ヒンジにおける前記第1筐体側の固定部を覆うように突出している一対の第1ヒンジカバーと、一対の前記第1ヒンジカバーの間で、該第1ヒンジカバーより相対的に窪んでいるヒンジ間凹部と、を有し、前記ヒレ部材は前記ヒンジ間凹部の範囲内に設けられていてもよい。
【0014】
前記第2筐体は、前記ヒンジ間凹部に配置されて前記ヒンジにおける前記第2筐体側の固定部を覆う第2ヒンジカバーと、前記第2筐体を前記第1筐体に対して重なるように閉じたときに、前記ヒレ部材と対向する箇所に、側面視で前記第2ヒンジカバーよりも窪んだ逃げ部と、を有してもよい。これにより、第1筐体と第2筐体とが0度姿勢のときにヒレ部材と第2筐体との干渉を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記態様によれば、連結側側面における電線挿通孔よりも上方および下方の少なくとも一方で、電線挿通孔の開口よりも突出しているヒレ部材を設けているため、第1筐体から第2筐体に亘るフレキシブル基板を保護するとともに、外観品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電子機器を上から見下ろした平面図である。
【
図2】
図2は、電子機器を下から見上げた底面図である。
【
図4】
図4は、下カバー材を取り外した状態での電子機器の底面図である。
【
図5】
図5は、
図1におけるV~V線視による断面側面図である。
【
図6B】
図6Bは、0度姿勢の場合における
図1のVIB~VIB線視に相当する箇所の断面側面図である。
【
図7】
図7は、
図1におけるVII~VII線視による断面側面図である。
【
図8】
図8は、溶着部およびその近傍の拡大断面側面図である。
【
図9】
図9は、溶着部およびその近傍の製造前段階の状態を示す図である。
【
図10】
図10は、0度姿勢における電子機器の後端下面部の一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした平面図である。
図2は、本実施形態に係る電子機器10を下から見上げた底面図である。
図3は、本実施形態に係る電子機器10の側面図である。
【0019】
図1、
図2、
図3に示すように、電子機器10は、第1筐体12と第2筐体14とを一対のヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、筐体12,14間が0度姿勢(
図6A参照)と135度姿勢との間で回動可能である。つまり、第2筐体14を第1筐体12に対して重なるように閉じたときに0度姿勢となり、最大角度まで開いたときに135度姿勢となる。
図1~
図3は135度姿勢の状態を示している。筐体12,14間の回動範囲は135度に限らない。
【0020】
以下、電子機器10の第1筐体12について、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右と呼ぶ。また、後述する脚部28,30によって第1筐体12が載置面に載置されている状態を基準として、載置面側を下、その反対側を上とする。ただし、これらは説明の便宜上のものであり電子機器10の使用はこの向きに限られない。第2筐体14については、ディスプレイ18の表示面側を正面、ディスプレイ18の裏側を背面と呼ぶ。
【0021】
先ず、電子機器10の全体構成を説明する。
【0022】
第1筐体12は、扁平な箱体である。第1筐体12は、上面12aを形成する上カバー材20と、下面12bを形成する下カバー材22と、を有する。第1筐体12の前後左右の側面12cは、上カバー材20または下カバー材22の四周縁部から起立した壁部によって形成されている。上面12aには、キーボード24及びタッチパッド25が設けられている。キーボード24の中央には、傾動方向にカーソルを移動させることのできるポインティングスティック24aが設けられている。上カバー材20はキーボード24及びタッチパッド25の回りを囲っている。第1筐体12の内部には、マザーボード26やバッテリ装置27(
図4参照)の他、SSD(Solid State Drive)、メモリ、アンテナ装置等の各種電子部品が収容されている。
【0023】
第1筐体12は、左右両端部でヒンジ16における第1筐体12との固定部を覆うように突出している一対の第1ヒンジカバー12dと、一対の第1ヒンジカバー12dの間で該第1ヒンジカバー12dより相対的に窪んでいるヒンジ間凹部12eとを有する。第2筐体14は、ヒンジ間凹部12eに配置されてヒンジ16における第2筐体14との固定部を覆う一対の第2ヒンジカバー14dを有する。第2ヒンジカバー14dは、第1ヒンジカバー12dに対して隣接して設けられている。
【0024】
下カバー材22には、前方の左右に脚部28が設けられ、後方には左右方向に沿って長尺な脚部30が設けられている。脚部28,30は図示しない載置面に載置されて第1筐体12を支持する。脚部30についてはさらに後述する。
【0025】
第2筐体14は、第1筐体12よりも薄い扁平な箱体である。ディスプレイ18は、第2筐体14の正面14aに設けられている。第2筐体14は、背面14bを形成する背面カバー材32を有する。第2筐体14では、例えばガラスとタッチフィルムが一体となったものを用い、ベゼルに相当する部分を省略してもよい。第2筐体14の前後左右の側面14cは、背面カバー材32の四周縁部から起立した壁部によって形成されている。側面14cは、背面カバー材32とは独立した部材で構成してもよい。
【0026】
ディスプレイ18は、正面14aに臨んで映像を表示するディスプレイ部18aと、タッチ操作のためのタッチパネル部18bと、を有する。ディスプレイ部18aは、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。タッチパネル部18bは、省略されてもよい。第2筐体14の正面上部には複数の電気デバイス31が設けられている。電気デバイス31は、例えばカメラ、マイク、赤外線ポートなどである。
【0027】
一対のヒンジ16は左右両端に分かれて配置されており、第1筐体12の連結側側面12caと第2筐体14の連結用突出部46(
図5参照)との間を連結している。連結用突出部46については後述する。
【0028】
次に、筐体12,14間の電気的な接続構造について説明する。
図4は、下カバー材22を取り外した状態での電子機器10の底面図である。
【0029】
図4に示すように、電子機器10は、ディスプレイ18の制御用のプリント基板(PCB:printed circuit board)として、ディスプレイ基板34及びタッチパネル基板36を第1筐体12内に収容している。ディスプレイ基板34及びタッチパネル基板36を第2筐体14ではなく第1筐体12内に収容することにより、第2筐体14にスペース的な余裕ができてディスプレイベゼルを細くすることができる。
【0030】
ディスプレイ基板34は、ディスプレイ部18aでの映像表示を制御するためのサブボードである。ディスプレイ基板34及びタッチパネル基板36はマザーボード26と接続されている。ディスプレイ基板34は、筐体12,14間に亘るフレキシブル基板38を介してディスプレイ部18aと電気的に接続されている。基板34とフレキシブル基板38とは、カメラ類(RGBカメラ,IRカメラ、IRセンサー)、マイク、各種センサー類などのために用いるものであってもよい。
【0031】
タッチパネル基板36は、タッチパネル部18bの制御用のサブボードである。タッチパネル基板36は、タッチパネル部18bで検出されたタッチ操作に基づくアナログ信号を所定のデジタル信号に変換してマザーボード26に送信する。タッチパネル基板36は、筐体12,14間に亘るフレキシブル基板40を介してタッチパネル部18bと電気的に接続されている。フレキシブル基板38,40は電気デバイス31と接続されていてもよい。第1筐体12と第2筐体14との電気的な接続はフレキシブル基板38,40だけに限らず、ヒンジ16内を通るケーブルなどを併用してもよい。
【0032】
基板34,36は、第1筐体12の後部で上カバー材20の内面に対して所定のブラケット等を介して固定され、下カバー材22の内面に近い位置で水平に設置されている(
図5参照)。フレキシブル基板38,40は、例えば可撓性を持った絶縁性フィルムを用い、薄く且つ柔軟に形成したフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible printed circuit)である。フレキシブル基板38の幅W1およびフレキシブル基板40の幅W2(いずれも
図1、
図2参照)は、例えば数センチメートル程度である。
【0033】
図5は、
図1におけるV~V線視による断面側面図である。
図6Aは、筐体12,14間が0度姿勢の場合における
図5と同じ箇所の断面側面図である。
図6Bは、筐体12,14間が0度姿勢の場合における
図1のVIB~VIB線視に相当する箇所の断面側面図である。
図7は、
図1におけるVII~VII線視による断面側面図である。
図5、
図7では筐体12,14間が135度姿勢となっている。なお、
図5、
図6Aはフレキシブル基板38およびその周辺部を示しているが、フレキシブル基板40およびその周辺部については同様の構成となっているため図示および説明を省略する。
【0034】
図5、
図6Aに示すように、フレキシブル基板38は端部の接続部38aを介して基板34の下面に設けられた被接続部34aに接続されている。接続部38aは支持板およびコネクタ端子からなる。フレキシブル基板38は、接続部38aからやや後方に延出した後、前方に戻るように折り返す屈曲部38bと、さらに後方に折り返す屈曲部38cとを経てS字形状を描きながら上方へと延在している。
【0035】
第1筐体12における第2筐体14に対する連結側側面12caには電線挿通孔42が形成されている。電線挿通孔42は、連結側側面12caの下部縁12cbから下カバー材22の一部が起立した壁部と上カバー材20の下面との間に形成されている。なお、連結側側面12caは、場所によっては上カバー材20の一部の壁20b(
図7参照)によって形成されている。
【0036】
フレキシブル基板38は屈曲部38cを経て後方へ延在し、下面を案内金具44によって支持されて上方寄りに維持されながら電線挿通孔42を通って第1筐体12の外に出る。
【0037】
第2筐体14の正面14aにおける第1筐体12との連結側縁(
図6Aの左縁)からは0度姿勢(
図6A参照)を基準として下方に向けて連結用突出部46が突出している。連結用突出部46は位置により構成がやや異なっている。
【0038】
連結用突出部46は、フレキシブル基板38が通る位置(
図5、
図6Aに示す位置)において、背面カバー材32の端面から垂直に突出する外側カバー48と、やや内側(ディスプレイ18に近い側)で外側カバー48と対向するように突出する内側カバー50とを有している。外側カバー48は先端48aが内側カバー50に近づくように円弧状となっている。内側カバー50は先端50aが外側カバーに48に近づくようにわずかに屈曲している。外側カバー48と内側カバー50との間には通路52が確保されている。通路52は先端48aと先端50aとの間で開口52aを形成している。開口52aは、0度姿勢のとき(
図6A参照)下向きとなり、135度姿勢のとき(
図5参照)斜め前方を指向する。
【0039】
外側カバー48は背面カバー材32の端部に設けられたフック32aおよび複数のねじ51(
図6B参照)によって固定されている。ねじ51は、
図6Bに示す箇所以外にも左右方向に沿って複数設けられている。内側カバー50はフック50bにより所定の係合部に固定されている。内側カバー50は、ディスプレイ18の表示面にほぼ沿った短い第1部分50cと、該第1部分50cから90度に屈曲しているやや長い第2部分50dとを有しており、断面が略L字形状となっている。ディスプレイ18を臨む側から見て第1部分50cと第2部分50dとは凹状に窪んだ逃げ部50eを形成している。
【0040】
連結用突出部46は、フレキシブル基板38が通る箇所以外(
図7参照)では、外側カバー48と内側カバー50との間を埋める中実材53が設けられている。連結用突出部46は、第2筐体14における左右両端近傍ではヒンジ16を覆う第2ヒンジカバー14dを形成している(
図1参照)。側面視(
図5、
図6A参照)で、外側カバー48は第2ヒンジカバー14dの外面に沿った形状となっており、内側カバー50の逃げ部50eは第2ヒンジカバー14dの外面よりも窪んでいる。
【0041】
フレキシブル基板38は、電線挿通孔42を出て開口52aから第2筐体14の内部に入っており、さらに通路52を通ってディスプレイ18に電気的に接続されている。開口52aの位置は、第2筐体14が第1筐体12に対して回動することにともなって変化するが、電線挿通孔42に対して比較的近い位置に維持され、フレキシブル基板38が大きく変位することはない。また筐体12,14同士の回動にともない、フレキシブル基板38は経路長が多少変化するが、上記の屈曲部38b,38cで形成されるS字形状部分が余長部となっているため長さ変化を吸収することがきる。外側カバー48および内側カバー50の先端48a,50aはフレキシブル基板38を適切に案内し、該フレキシブル基板38を過度に屈曲させることがない。
【0042】
ところで、電線挿通孔42と連結用突出部46における開口52aとの間は適度に狭く設定されているが、構造上、隙間54が形成されることになる。フレキシブル基板38はこの隙間54の間では第1筐体12および第2筐体14のいずれにも覆われていない。そのため、本実施の形態にかかる電子機器10では、隙間54におけるフレキシブル基板38を覆うように第1筐体12における電線挿通孔42よりも下方部にヒレ部材58を設けるとともに、電線挿通孔42よりも上方部にヒレ部材60を設けている。
【0043】
ヒレ部材58,60は電線挿通孔42の開口よりも後方に突出している。ヒレ部材58およびヒレ部材60は、フレキシブル基板38の上下を覆うことになって好適であるが、設計条件によってはいずれか一方だけでも相応の効果がある。以下、ヒレ部材58およびヒレ部材60についてさらに詳細に説明する。
【0044】
まず、ヒレ部材58について説明する。
ヒレ部材58は脚部30の一部となっている。これにより、部品点数を抑制することができるとともに、後述するようにヒレ部材58は脚部30によって第1筐体12と強固に固定される。脚部30は樹脂の芯材62と、該芯材62の下面および側面を覆うように一体成型されている樹脂弾性体64とによって構成されている。樹脂弾性体64は例えばゴムであり適度な柔軟性を有している。芯材62は樹脂材であるが比較的硬質であり、少なくとも樹脂弾性体64より硬い。脚部30は、第1筐体12における連結側側面12caの下部縁12cbに沿った長尺形状であり、一対の第1ヒンジカバー12d(
図2参照)の間に形成されたヒンジ間凹部12eの全長に亘って設けられている。
【0045】
ヒレ部材58は、脚部30の全長に亘って設けられている。ヒレ部材58は、少なくともフレキシブル基板38,40の幅W1,W2の範囲に亘って設けられていればフレキシブル基板38,40を保護することができるが、ヒンジ間凹部12eの全長に亘って設けられていると一層確実に保護することができるとともに、好適な外観が得られる。脚部30は、複数の溶着部66(
図2参照)で下カバー材22に固定されている。溶着部66は脚部30の左右両端近傍を含み、複数が適度な間隔で設けられている。
【0046】
図8は、溶着部66およびその近傍の拡大断面側面図である。
図9は、溶着部66およびその近傍の製造前段階の状態を示す図である。
図8に示すように、溶着部66は、下カバー材22の孔22aに芯材62の一部である突起62aが挿入されて溶着されることにより下カバー材22と脚部30とを固定している。具体的には
図9に示すように、突起62aを孔22aに通しておいた状態で熱溶着を行う。そして
図8に示すように、突起62aの頂部は熱によって変形し円板62bとなる。円板62bは孔22aの周囲に形成されたザグリ部22bに広がり脚部30の抜け止めとなる。下カバー材22は樹脂材であって熱によって溶ける。これにより、突起62aと孔22aとが溶着され、さらに円板62bとザグリ部22bとが溶着し、下カバー材22と脚部30とが確実に固定される。
【0047】
下カバー材22は少なくとも溶着部66の周囲が樹脂材であれば熱溶着が可能である。下カバー材22が金属材である場合には、該下カバー材22と脚部30とをねじ止めなどで固定してもよい。下カバー材22が樹脂材と金属材とによって構成されている場合には、熱溶着とねじ止めとを併用してもよい。ただし、ねじ止めの場合には下カバー材22にある程度大きい締結座構造が必要になるとともに、コスト上昇や組み立て効率の低下が懸念されるため、熱溶着による固定が望ましい。
【0048】
なお、条件によっては芯材62と下カバー材22とを一体的に構成することも可能である。しかしながら、一体的構成では芯材62に相当する部分が他の部分と比較して厚肉の偏肉構成となり、成型時にヒケ等が発生して下カバー材22が部分的に不均一になる懸念がある。また、電子機器10では下カバー材22を上カバー材20に対してフック22c(
図7参照)で係合させて固定している。そのため型抜きの都合上で下カバー材22の後端部に芯材62に相当する形状部を設けることは困難である。芯材62を下カバー材22と別成型とし、電子機器10の組み立て段階で熱溶着することによりこれらの不都合が解消される。
【0049】
図5、
図6Aに戻り、ヒレ部材58は脚部30の上部が後方に突出して設けられている。ヒレ部材58のうち、上方で前方寄りの範囲が芯材62で形成されており適度な強度がある。ヒレ部材58における後方部分は樹脂弾性体64で形成されており適度な柔軟性がある。ヒレ部材58は、後方の樹脂弾性体64で形成されている部分が先端に向かって薄くなり、かつ上面58aが先端に向かって下方に傾斜している。
【0050】
図10は、0度姿勢における電子機器10の後端下面部の一部拡大斜視図である。
図6A、
図10に示すように、筐体12,14が0度姿勢であるときに、ヒレ部材58は隙間54の下部開口をほとんど塞いでおり、この時点で下方に寄っているフレキシブル基板38はほとんど視認されない。このように、ヒレ部材58はフレキシブル基板38の下方を覆って保護するとともに、ユーザから視認されないようにして外観品質を向上させることができる。
【0051】
図5に示すように、第2筐体14を第1筐体12に対して135度姿勢になるまで開いたときに、ヒレ部材58の先端は第2筐体14の一部である外側カバー48の側面に当接して支持する。ヒレ部材58の上面58aの傾斜角度はこの時点の外側カバー48の傾斜角度よりも浅く、樹脂弾性体64で形成されているヒレ部材58の先端部が外側カバー48に対してわずかに弾性変改しながら適度な圧力で当接し、第2筐体14を支持することができる。
【0052】
樹脂弾性体64は柔軟性を有しており、外側カバー48を傷つけまたは塗装を剥離させることがない。ヒレ部材58の根元側部分は先端に比べて厚くしかも芯材62があってやや硬質であるが、外側カバー48との間には適度な隙間が確保されており、該外側カバー48に無理な力をかけることがない。ヒレ部材58には外側カバー48が当接することによりある程度の力が加わるが、脚部30は複数の溶着部66によって下カバー材22に対して強固に固定されていることから、ヒレ部材58および脚部30が脱落などの損傷がない。なお、上記のヒンジ16内には角度制限用のストッパが設けられており、第1筐体12と第2筐体14とは該ストッパによって最大角度が制限されるが、ヒレ部材58とにより協働的に角度制限がなされ、ヒンジ16内の機構の負荷低減、破損防止を図ることができる。
【0053】
なお、ヒレ部材58は、先端に柔軟性があることから筐体12,14間の角度が最大になるよりもやや先行的に(例えば、134度程度で)外側カバー48に接触させるようにしてもよい。これによりヒレ部材58は弾性的に第2筐体14を支持することができるとおもに、寸法誤差によって接触しなくなるということが防止できる。
【0054】
次に、ヒレ部材60について説明する。
図5、
図6Aに示すように、ヒレ部材60は上カバー材20の一部が後方に突出したものである。したがって、ヒレ部材60は上カバー材20と同じ材質(例えば、樹脂材や金属材)となっている。ヒレ部材60は、先端に向かって薄くなり、かつ上面60aが先端に向かって下方に傾斜している。傾斜した上面60aにより好適で簡潔な印象の外観が得られる。
【0055】
ヒレ部材60は、上記のヒンジ間凹部12e(
図1参照)の範囲内で、フレキシブル基板38,40の幅W1,W2の範囲を含み、
図1に示す幅Wの範囲に亘って設けられている。この幅Wの範囲は、ヒンジ間凹部12eにおける第2ヒンジカバー14dを除いたほぼ全幅に亘っている。ヒレ部材60は、少なくともフレキシブル基板38,40の幅W1,W2の範囲に亘って設けられていればフレキシブル基板38,40を保護することができるが、可及的に広い幅に亘って設けることにより一層確実に保護することができるとともに、好適な外観が得られる。
【0056】
上カバー材20における後方端部が樹脂材と金属材とによって構成されている場合には、フレキシブル基板38,40の幅W1,W2の範囲を含むことを条件とし、樹脂材または金属材の一方だけを後方に突出させてヒレ部材60としてもよい。これによりヒレ部材60には樹脂材と金属材との境界が存在しなくなり構成が簡便化される。また、当然ながらヒレ部材60については材質間境界を目立たなくさせる処理が不要になる。
【0057】
図5に示すように、筐体12,14が135度姿勢であるときに、ヒレ部材60は隙間54の上部開口をほとんど塞いでおり、フレキシブル基板38を保護する。筐体12,14が135度姿勢であるとき電子機器10はユーザによって使用されていることが多い。このとき、フレキシブル基板38は上方に寄っているが、斜め上方からのユーザ視点からはほとんど視認されることがない。このように、ヒレ部材60はフレキシブル基板38の上方を覆って保護するとともに、ユーザから視認されないようにして外観品質を向上させることができる。
【0058】
図6Aに示すように、筐体12,14が0度姿勢であるときヒレ部材60の先端は、連結用突出部46における第2ヒンジカバー14dと側面視で重なる位置にある。しかし、ヒレ部材60は内側カバー50と対向しており、その先端は内側カバー50の逃げ部50eによる窪み形状内にあって干渉することがない。つまり、逃げ部50eが形成されていることから、ヒレ部材60は適度に長く突出させることができ、フレキシブル基板38の保護効果が高い。
【0059】
電子機器10ではヒレ部材58,60によってフレキシブル基板38,40が保護されており、該フレキシブル基板38,40に対して高強度の保護層を設けなくてもよい。これにより、フレキシブル基板38,40の柔軟性が確保され、第1筐体12と第2筐体14との相対的な回動にともなって適正に屈曲および経路追従がなされる。
【0060】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 電子機器
12 第1筐体
12ca 連結側側面
12cb 下部縁
12d 第1ヒンジカバー
12e ヒンジ間凹部
14 第2筐体
14d 第2ヒンジカバー
16 ヒンジ
18 ディスプレイ
20 上カバー材
22 下カバー材
30 脚部
32 背面カバー材
38,40 フレキシブル基板
42 電線挿通孔
46 連結用突出部
48 外側カバー
50 内側カバー
50e 逃げ部
52 通路
58,60 ヒレ部材
62 芯材
64 樹脂弾性体
66 溶着部
【手続補正書】
【提出日】2023-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
載置面に載置する脚部を下面に有する第1筐体と、
前記第1筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された第2筐体と、
前記第1筐体における前記第2筐体に対する連結側側面の電線挿通孔を通って、前記第1筐体と前記第2筐体とを電気的に接続するフレキシブル基板と、
前記連結側側面における前記電線挿通孔よりも上方および下方の少なくとも一方で、少なくとも前記フレキシブル基板が設けられている範囲にわたって、前記電線挿通孔の開口よりも突出しているヒレ部材と、
を有し、
前記ヒレ部材は、前記脚部の一部であって前記電線挿通孔の下方に設けられており、
前記第1筐体の前記下面は、少なくとも前記脚部に対する固定箇所が樹脂材であり、
前記脚部は、前記ヒレ部材の一部である芯材が前記固定箇所に対して熱溶着されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記ヒレ部材の先端部は、樹脂弾性体によって形成されており前記第2筐体を前記第1筐体に対して最大角度になるまで開いたときに前記第2筐体の一部に当接する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
前記ヒレ部材は、先端に向かって薄くなり、かつ上面が下方に傾斜している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記脚部は、前記第1筐体における前記連結側側面の下部縁に沿った長尺形状である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記第1筐体は上面にキーボードを有し、
前記ヒレ部材は前記キーボードの回りを囲う上カバー材の一部が突出したものである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
電子機器であって、
載置面に載置する脚部を下面に有する第1筐体と、
前記第1筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された第2筐体と、
前記第1筐体における前記第2筐体に対する連結側側面の電線挿通孔を通って、前記第1筐体と前記第2筐体とを電気的に接続するフレキシブル基板と、
前記連結側側面における前記電線挿通孔よりも上方および下方の少なくとも一方で、少なくとも前記フレキシブル基板が設けられている範囲にわたって、前記電線挿通孔の開口よりも突出しているヒレ部材と、
を有し、
前記第1筐体は上面にキーボードを有し、
前記ヒレ部材は前記キーボードの回りを囲う上カバー材の一部が突出したものであり、
前記ヒンジは左右に一対設けられており、
前記上カバー材は、
前記ヒンジにおける前記第1筐体側の固定部を覆うように突出している一対の第1ヒンジカバーと、
一対の前記第1ヒンジカバーの間で、該第1ヒンジカバーより相対的に窪んでいるヒンジ間凹部と、
を有し、
前記ヒレ部材は前記ヒンジ間凹部の範囲内に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器において、
前記第2筐体は、
前記ヒンジ間凹部に配置されて前記ヒンジにおける前記第2筐体側の固定部を覆う第2ヒンジカバーと、
前記第2筐体を前記第1筐体に対して重なるように閉じたときに、前記ヒレ部材と対向する箇所に、側面視で前記第2ヒンジカバーよりも窪んだ逃げ部と、
を有することを特徴とする電子機器。