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特開2023-8402イオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008402
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】イオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20230101AFI20230112BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20230112BHJP
   C02F 1/62 20230101ALI20230112BHJP
   C02F 1/64 20230101ALI20230112BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20230112BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20230112BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20230112BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20230112BHJP
   C02F 1/06 20230101ALI20230112BHJP
   B01D 3/06 20060101ALI20230112BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20230112BHJP
【FI】
C02F1/28 B
C02F1/58 J
C02F1/58 L
C02F1/62 Z
C02F1/64 Z
B01D15/00 N
B01J20/02 A
B01J20/02 B
B01J20/20 A
B01J20/26 E
C02F1/06
B01D3/06 Z
B01D15/00 P
C02F1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111945
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【弁理士】
【氏名又は名称】市橋 俊規
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】角谷 玲菜
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大村 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 和矢
【テーマコード(参考)】
4D017
4D034
4D037
4D038
4D076
4D624
4G066
【Fターム(参考)】
4D017AA01
4D017BA11
4D017BA12
4D017BA13
4D017CA01
4D017CA03
4D017CA04
4D017CA17
4D017CB01
4D017EA03
4D017EB09
4D017EB10
4D034AA01
4D034BA03
4D034CA13
4D037AA06
4D037AB07
4D037AB08
4D037AB14
4D037BA23
4D037CA01
4D038AA03
4D038AB39
4D038AB58
4D038AB59
4D038AB63
4D038AB66
4D038AB67
4D038BB02
4D076AA22
4D076BA37
4D076BB19
4D076BC01
4D076FA15
4D076HA02
4D076JA03
4D624AA05
4D624BA01
4D624BA02
4D624BA14
4D624BA17
4D624BB01
4D624BC01
4D624CA01
4D624DB06
4G066AA02B
4G066AA04B
4G066AC11B
4G066CA31
4G066CA45
4G066CA46
4G066DA07
(57)【要約】
【課題】各蒸発室に常温~高温まで適用可能なイオン除去装置を配置することにより、各種不純物イオンを効率的に除去する。
【解決手段】イオン除去装置2は、チタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる第1の吸着材3が充填された吸着材充填部4と、前記吸着材充填部に不純物イオンを含む液が供給される液供給口5aと、前記吸着材充填部から処理後の液が排出される液排出口5bを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる第1の吸着材が充填された吸着材充填部と、前記吸着材充填部に不純物イオンを含む液が供給される液供給口と、前記吸着材充填部から処理後の液が排出される液排出口を有するイオン除去装置。
【請求項2】
前記第1の吸着材は常温から約280℃の温度範囲で適用可能であるとともに、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又は遷移金属イオンを吸着除去する請求項1記載のイオン除去装置。
【請求項3】
前記遷移金属イオンは、コバルトイオン、鉄イオン又はニッケルイオンである請求項2記載のイオン除去装置。
【請求項4】
前記吸着材充填部と液供給口及び前記吸着材充填部と液排出口の間にデミスターを配置した請求項1乃至3のいずれかに記載のイオン除去装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のイオン除去装置を用いて、液中の不純物イオンを吸着除去するイオン除去方法。
【請求項6】
複数の蒸発室が隣接して配置された多段のフラッシュ蒸発装置において、
前記蒸発室は下部に設けられた海水貯留部と、前記蒸発室で発生した蒸気中の不純物イオンを吸着除去する吸着材が充填された吸着材充填部を有するイオン除去装置と、前記イオン除去装置を通過した蒸気を凝縮させる冷却配管と、凝縮した淡水を貯留する淡水貯留部と、前記淡水貯留部の淡水を回収する淡水回収配管と、を有するフラッシュ蒸発装置。
【請求項7】
前記吸着材充填部と液供給口及び前記吸着材充填部と液排出口の間にデミスターを配置した請求項6記載のフラッシュ蒸発装置。
【請求項8】
チタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる第1の吸着材、あるいはイオン交換樹脂、活性炭又は無機系吸着材からなる第2の吸着材を前記吸着材充填部に充填した請求項6又は7に記載のフラッシュ蒸発装置。
【請求項9】
チタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる第1の吸着材と、イオン交換樹脂、活性炭又は無機系吸着材からなる第2の吸着材を混合して前記吸着材充填部に充填した請求項6又は7に記載のフラッシュ蒸発装置。
【請求項10】
チタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる第1の吸着材を充填した吸着材充填部を有するイオン除去装置と、イオン交換樹脂、活性炭又は無機系吸着材からなる第2の吸着材を充填した吸着材充填部を有するイオン除去装置を上下に隣接して配置した請求項6又は7に記載のフラッシュ蒸発装置。
【請求項11】
チタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる第1の吸着材を充填した吸着材充填部を有するイオン除去装置を1段目の蒸発室に配置し、イオン交換樹脂、活性炭又は無機系吸着材からなる第2の吸着材を充填した吸着材充填部を有するイオン除去装置を2段目以降の蒸発室に配置した請求項6又は7に記載のフラッシュ蒸発装置。
【請求項12】
前記淡水貯留部の上方、及び/又は前記淡水回収配管に、チタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる第1の吸着材を充填した吸着材充填部を有するイオン除去装置をさらに設けるか、又はイオン交換樹脂、活性炭又は無機系吸着材からなる第2の吸着材を充填した吸着材充填部を有するイオン除去装置をさらに設けた請求項6乃至11のいずれかに記載のフラッシュ蒸発装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体中に含まれる不純物イオンを除去するためのイオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、海水の淡水化手段として多段のフラッシュ蒸発装置が用いられている。このフラッシュ蒸発装置は、加熱昇温した海水を順次減圧度が大きくなる多段の蒸発室に送り込み、各段で蒸発と冷却を繰り返し、デミスターで蒸気と液体を分離することにより淡水を生成する。この生成された淡水は蒸留水であるため、安全性も高く、生活用水として広く利用されている。
【0003】
しかしながら、生成された淡水中にはナトリウムイオンや塩化物イオン等の海水由来の不純物イオンや、装置や配管を構成する金属部材等から溶出した鉄、銅、ニッケル等の金属イオンからなる不純物イオンが混入する場合があるため、フラッシュ蒸発装置の出口に膜、イオン交換樹脂、無機吸着材、活性炭、等からなる吸着材を配置し、これらの不純物イオンを除去する手段が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-61690号公報
【特許文献1】特開2006-70889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、不純物イオンを除去するために、出口に不純物イオン除去装置を設けたフラッシュ蒸発装置が提案されているが、装置が大型化し、かつ、吸着材の再生や交換のためのメンテナンス作業負担が大きくなるという課題がある。
【0006】
そのため、フラッシュ蒸発装置の各蒸発室に吸着材を配置し、不純物イオンを除去する方法も考えられるが、1段目の蒸発室は一般に120℃以上の高温となるため、約60℃以下で使用される従来のイオン交換樹脂等の吸着材を用いることは困難であった。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者等は、鋭意研究の結果、一部の吸着材が高温でも不純物イオンを除去できることを新たに知見し本発明に至ったもので、具体的には、各蒸発室に吸着材を配置することを可能とすることで、各種不純物イオンを効率的に除去できる、コンパクトで除去効率が高いイオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本実施形態に係るイオン除去装置は、チタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる第1の吸着材が充填された吸着材充填部と、前記吸着材充填部に不純物イオンを含む液が供給される液供給口と、前記吸着材充填部から処理後の液が排出される液排出口を有する。
【0009】
また、本実施形態に係るイオン除去方法は、本実施形態のイオン除去装置を用いて、液中の不純物イオンを吸着除去する。
【0010】
また、本実施形態に係るフラッシュ蒸発装置は、複数の蒸発室が隣接して配置された多段のフラッシュ蒸発装置において、前記蒸発室は下部に設けられた海水貯留部と、前記蒸発室で発生した蒸気中の不純物イオンを吸着除去する吸着材が充填された吸着材充填部を有するイオン除去装置と、前記イオン除去装置を通過した蒸気を凝縮させる冷却配管と、凝縮した淡水を貯留する淡水貯留部と、前記淡水貯留部の淡水を回収する淡水回収配管と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態によれば、各蒸発室に吸着材を配置することで、各種不純物イオンを効率的に除去できる、コンパクトで除去効率が高いイオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るイオン除去装置(デミスター無し)の模式図。
図2】第1の実施形態に係るイオン除去装置(デミスター有り)の模式図。
図3】第1の実施形態に係るフラッシュ蒸発装置の構成図。
図4】第1の実施形態に係るイオン除去装置の性能試験結果を示す図。
図5】第2の実施形態に係るフラッシュ蒸発装置の構成図。
図6】第3の実施形態に係るフラッシュ蒸発装置の構成図。
図7】第4の実施形態に係るフラッシュ蒸発装置の構成図。
図8】第5の実施形態に係るフラッシュ蒸発装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るイオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係るイオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置について、図1図4を参照して説明する。
【0015】
(イオン除去装置の構成)
図1は吸着材3が充填されたイオン除去装置1(デミスター無し)の模式図で、不純物イオンを含む液が供給される液供給口5aと、例えば粒状の吸着材3が充填される吸着材充填部4と、不純物イオン除去後の液が排出される液排出口5bと、から構成される。
液供給口5aと液排出口5bは例えば、メッシュ状や網目状の金属又はセラミック製のプレートから構成される。
【0016】
図2は、デミスター(気液分離部)6を備えたイオン除去装置2(デミスター有り)の模式図で、液供給口5aと吸着材充填部4との間、及び液排出口5bと吸着材充填部4の間に、液と蒸気を分離するメッシュ状のデミスター(気液分離部)6が配置されている。
これらのイオン除去装置1及び2は、多段のフラッシュ蒸発装置10のみならず、一般の不純物イオン除去装置としても利用可能である。
【0017】
(吸着材)
吸着材3としては、新たに開発した常温~約280℃で適用可能なチタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる吸着材3a(第1の吸着材)、及び/又は常温~約60℃で適用可能な公知のイオン交換樹脂、活性炭、無機系吸着材等からなる吸着材3b(第2の吸着材)が用いられる。
【0018】
特に、120℃以上の高温の海水が供給されるフラッシュ蒸発装置10の蒸発室では、高温でも適用可能な吸着材3a(図6参照)を用いることが望ましい。
【0019】
吸着材3aは、特にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、コバルトイオン、鉄イオン、ニッケルイオン等からなる遷移金属イオン、等の金属イオンからなる不純物イオンを効率的に吸着除去することができる。
【0020】
また、吸着材3bは、常温~約60℃で適用可能な公知のイオン交換樹脂、活性炭、無機系吸着材等が用いられ、海水に含まれるナトリウムイオンや塩化物イオン等の不純物イオンを吸着除去する。
【0021】
これらの吸着材3a、3bは、後述するように多段のフラッシュ蒸発装置10の各蒸発室7~9で用いられる。
なお、これらの吸着材3a、3bとして、0.1~数ミリ程度の粒状のものが用いられる。
【0022】
(フラッシュ蒸発装置の構成)
図3は、図2に示すイオン除去装置2(デミスター有り)を組み込んだ多段のフラッシュ蒸発装置10の構成図である。
【0023】
本実施形態に係るフラッシュ蒸発装置10は、隣接して設けられた例えば3段の蒸発室7、8、9を有し、各蒸発室7~9は蒸発室で発生した蒸気を気液分離するデミスター6及び不純物イオンを除去する吸着材3を備えたイオン除去装置2と、イオン除去装置2を通過した蒸気を海水等からなる冷却水により凝縮させ淡水を生成する冷却配管11と、生成した淡水を貯留する淡水貯留部12と、淡水を回収する淡水回収配管14と、各蒸発室7~9の海水貯留部13に加熱した海水を供給する海水供給配管15と、を有する。
なお、図3では蒸発室が3段の例を図示しているが、4段以上としてもよい。
【0024】
(作用)
上記のように構成された多段のフラッシュ蒸発装置10において、まず、海水供給配管15を通して加熱された海水を1段目の蒸発室7に供給して蒸発させる。発生した蒸気は蒸発室7の上方へ移動し、デミスター6を有するイオン除去装置2を通過する。その際、蒸気中に混在する不純物イオンは吸着材3により除去され、その後デミスター6により気液分離され、通過した蒸気は冷却配管11により冷却され淡水となり、淡水貯留部12に貯留される。
【0025】
次に、1段目の蒸発室7で蒸発しなかった海水は、減圧度がより高い2段目の蒸発室8に送り込まれて蒸発し、1段目の蒸発室7と同様に淡水が生成される。このプロセスは次段以降の蒸発室9でも繰り返され、最終的に各蒸発室7~9の淡水貯留部12に貯留された淡水は淡水回収配管14を通して外部へ回収される。
【0026】
吸着材3としては、新たに開発した常温~約280℃で適用可能なチタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる吸着材3a、及び/又は常温~約60℃で適用可能な公知のイオン交換樹脂、活性炭、無機系吸着材等からなる吸着材3bが用いられるが、特に、120℃以上の海水が供給される1段目の蒸発室7のイオン除去装置2に充填される吸着材3として、チタン及びニオブのいずれか又はそれらの混合物からなる吸着材3aを用いることが望ましい。
【0027】
また、温度が低下する2段目以降の蒸発室8、9では吸着材3bを用いるか又は吸着材3bを併用してもよく、さらに、1段目の蒸発室7も高温にならないことが起こりえるため、吸着材3a、3bを併用してもよい。
【0028】
これらの吸着材3a、3bにより、金属イオン及びナトリウムイオンや塩化物イオン等の各種不純物イオンを効率的に吸着除去することができる。
【0029】
(性能試験)
280℃の高温環境下で2価の金属陽イオン溶液を濃度10ppm、0.80ml/分の流速で通水させて、吸着材3a(チタン又はニオブあるいはそれらの混合物)の吸着性能試験を行った。
【0030】
図4は性能試験結果を示す図で、横軸がB.V.(ベッドボリューム;通水量/吸着材量)で、縦軸がイオン除去比(金属陽イオンの出口濃度/入口濃度)である。
【0031】
図4から、吸着材3aは分配係数が約6×10ml/g以上の値を示し、約10,100B.V.まで、イオン除去比がほぼゼロで推移すること、すなわち、イオンを約100%吸着除去できることがわかった。
【0032】
また、図4の性能試験では、280℃のイオン含有溶液を用いて試験を行ったが、常温~280℃の範囲でほぼ同様の除去性能を有することが確認された。
【0033】
一般に、フラッシュ蒸発装置の1段目の蒸発室7に供給される海水の温度は約120℃であり、今回開発した吸着材3aは常温~280℃以下の高温でも適用可能であるため、この吸着材3aを充填したイオン除去装置を1段目から最終段目の蒸発室に設置することが可能である。
【0034】
また、蒸発室7~9は下段にいくにつれて温度が下がる傾向にあるが、特に、下段の蒸発室には金属イオンを吸着除去する吸着材3aのほかに、イオン交換樹脂、活性炭、無機系吸着材等からなる吸着材3bも単独で又は吸着材3aと併用して用いることができる。
【0035】
さらに、フラッシュ蒸発装置10の出口に従来のイオン除去装置を併用して設けてもよく、また、各蒸発室7~9の全てにイオン除去装置2を設置せずに、一部省略してもよい。
【0036】
(効果)
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、より高温で使用できる吸着材3aが充填されたイオン除去装置2を少なくとも1以上の蒸発室7~9に設けたことで、特に、金属イオンを効率的に吸着除去することができるとともに、装置全体を小型化することが可能となる。
【0037】
また、各蒸発室7~9において、イオン交換樹脂、活性炭、無機系吸着材等からなる吸着材3bも併用又は単独で用いることで、ナトリウムイオンや塩化物イオン等の海水由来の不純物イオンも吸着除去することができる。
【0038】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るイオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置について、図5を参照して説明する。
【0039】
本第2の実施形態では、図3に示すイオン除去装置2で不純物イオンを吸着除去しきれない場合や、蒸発室7~9内の配管等から金属イオンが発生する場合を想定して、各蒸発室7~9にイオン除去装置1(デミスター無し)を追加配置する構成としている。
【0040】
図5に示す例では、淡水貯留部12の上方と、淡水貯留部12からの淡水回収配管14にイオン除去装置1を設けている。
【0041】
これにより、イオン除去装置2の液排出口5bから排出された蒸気は淡水貯留部12の上方に設けられたイオン除去装置1でさらに不純物イオンを吸着除去し、また、淡水貯留部12の下流側の淡水回収配管14に設けられたイオン除去装置1では淡水回収配管14中の淡水に含まれる不純物イオンを吸着除去する。
【0042】
本第2の実施形態によれば、イオン除去装置1、2を蒸発室内に複数設けることにより、不純物イオンの吸着除去効率をさらに向上させることができる。
【0043】
なお、淡水貯留部12の上方に設けられたイオン除去装置としてイオン除去装置2(デミスター有り)を用いてもよい。
また、図5の例では、各蒸発室7~9に複数のイオン除去装置1、2を設けているが、これに限定されず、適宜省略可能である。
【0044】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係るイオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置について、図6を参照して説明する。
【0045】
本第3の実施形態では、吸着材3aが充填されたイオン除去装置2a又は吸着材3bが充填されたイオン除去装置2bを、各蒸発室7~9に配置する構成としている。
【0046】
前述したように、蒸発室7~9の温度は下段にいくにつれて温度が下がるため、図6に示す例では、1段目の蒸発室7に常温~280℃まで適用可能な吸着材3aが充填されたイオン除去装置2aを設置し、2段目以降の蒸発室8、9には常温~60℃まで適用可能な吸着材3bが充填されたイオン除去装置2bを設置している。
【0047】
このように、温度環境に応じて適切な吸着材3a、3bが充填されたイオン除去装置2a、2bを蒸発室7~9に設置することにより、様々な種類の不純物イオンを効率的に吸着除去することができる。
【0048】
なお、これらのイオン除去装置2a、2bは、第2の実施形態と同様に、淡水貯留部12の上方や、淡水貯留部12からの淡水回収配管14に増設して設けてもよい。
【0049】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係るイオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置について、図7を参照して説明する。
【0050】
第4の実施形態では、吸着材3aが充填されたイオン除去装置2aと吸着材3bが充填されたイオン除去装置2bを、各蒸発室7~9に配置する構成としている。
【0051】
図7に示す例では、各蒸発室7~9に常温~60℃まで適用可能な吸着材3bが充填されたイオン除去装置2bを設置し、その上方に常温~280℃まで適用可能な吸着材3aが充填されたイオン除去装置2aを設置している。
【0052】
すなわち、第1段目の蒸発室7には、通常120℃以上の海水が供給されるが、場合によっては常温付近の海水が供給されることが想定されるので、各蒸発室7~9に各種イオン不純物を吸着除去可能な2種類のイオン除去装置2a、2bを配置したものである。
【0053】
このように、イオン除去装置2a及び2bを蒸発室7~9に設置することにより、温度環境が変化しても様々な種類の不純物イオンを効率的に吸着除去することができる。
【0054】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係るイオン除去装置、イオン除去方法及びフラッシュ蒸発装置について、図8を参照して説明する。
【0055】
本第5の実施形態では、各蒸発室7~9において、常温~280℃まで適用可能な吸着材3aと常温~60℃まで適用可能な吸着材3bを一つのイオン除去装置2に混合して充填した構成としている。
【0056】
これにより、各蒸発室7~9において、温度環境が変化しても様々な種類の不純物イオンを効率的に吸着除去することができるとともに、イオン除去装置2を小型化することができる。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1…イオン除去装置(デミスター無し)、2、2a、2b…イオン除去装置(デミスター有り)、3、3a、3b…吸着材、4…吸着材充填部、5a…液供給口、5b…液排出口、6…デミスター、7~9…蒸発室、10…フラッシュ蒸発装置、11…冷却配管、12…淡水貯留部、13…海水貯留部、14…淡水回収配管、15…海水供給配管

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8