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特開2023-84024船舶航行支援装置、船舶航行支援方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084024
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】船舶航行支援装置、船舶航行支援方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/02 20060101AFI20230609BHJP
   B63B 79/40 20200101ALI20230609BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G08G3/02
B63B79/40
B63B49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198100
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500370230
【氏名又は名称】株式会社日本海洋科学
(71)【出願人】
【識別番号】000232818
【氏名又は名称】日本郵船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮
(72)【発明者】
【氏名】桑原 悟
(72)【発明者】
【氏名】中村 純
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181BB13
5H181CC14
5H181FF22
5H181FF24
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】衝突の危険性がある範囲において、注意が必要なレベルを識別することが可能な船舶航行支援装置を提供する。
【解決手段】自船を基準として自船と他船が安全に航過可能な安全航過範囲を設け、前記安全航過範囲に基づいて計算した自船と他船が衝突する危険性がある範囲を表す注意領域を表示装置に表示させ、前記安全航過範囲内に自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲を設け、前記注意レベルの異なる範囲に基づいて計算した危険領域を、前記注意領域と異なる色/模様の表示態様とする表示制御部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自船を基準として自船と他船が安全に航過可能な安全航過範囲を設け、前記安全航過範囲に基づいて計算した自船と他船が衝突する危険性がある範囲を表す注意領域を表示装置に表示させ、前記安全航過範囲内に自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲を設け、前記注意レベルの異なる範囲に基づいて計算した危険領域を、前記注意領域と異なる色/模様の表示態様とする表示制御部
を有する船舶航行支援装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、
前記自船を基準とした安全航過範囲を前記表示装置に表示させ、
前記安全航過範囲において前記自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲を前記安全航過範囲と異なる表示態様によって前記表示装置に表示させる
請求項1に記載の船舶航行支援装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、
前記安全航過範囲において前記自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲の表示態様と、前記注意レベルの異なる範囲に基づいて計算した危険領域の表示態様について、色または模様の少なくともいずれか一方が同じになるように表示する
請求項1または請求項2に記載の船舶航行支援装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、
前記安全航過範囲内の前記自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲において、自船からの距離方向に応じて色/模様により濃淡を付ける事で注意レベルを表す表示態様と、
前記注意レベルの異なる範囲に基づいて計算した危険領域の表示態様について、前記自船からの距離/方位に応じた色/模様による濃淡と同じ表示態様によって表示する
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の船舶航行支援装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、
前記自船と前記他船との距離が基準値以内となった場合に、前記危険性を異なる表示態様によって表示させる
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の船舶航行支援装置。
【請求項6】
コンピュータにより実行される船舶航行支援方法であって、
自船を基準として自船と他船が安全に航過可能な安全航過範囲を設け、前記安全航過範囲に基づいて計算した自船と他船が衝突する危険性がある範囲を表す注意領域を表示装置に表示させ、前記安全航過範囲内に自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲を設け、前記注意レベルの異なる範囲に基づいて計算した危険領域を、前記注意領域と異なる色/模様の表示態様とする
船舶航行支援方法。
【請求項7】
自船を基準として自船と他船が安全に航過可能な安全航過範囲を設け、前記安全航過範囲に基づいて計算した自船と他船が衝突する危険性がある範囲を表す注意領域を表示装置に表示させ、前記安全航過範囲内に自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲を設け、前記注意レベルの異なる範囲に基づいて計算した危険領域を、前記注意領域と異なる色/模様の表示態様とする
ことをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶航行支援装置、船舶航行支援方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
航海用レーダ装置では、他船の自船に対する相対的な位置が表示され、それをもとにTarget Tracking機能で他船の針路、速度が求められ表示される。このような航海用レーダ装置では、具体的にどのあたりの領域において自船が他船と衝突する危険性が生じるかについては表示されないため、操船者は、レーダ表示画面に表示された、自船と他船との位置関係や方向、速力等を基に、自分で衝突の危険について判断する必要がある。
近年では、自船と他船と衝突の危険性を把握可能に表示するシステムがある。例えば、自船と他船とについて、衝突計算を行い、衝突計算の結果に基づいて自船と他船と衝突の危険性がある範囲である衝突危険範囲(DAC:Dangerous Area of Collision)を表示するシステム(例えば、特許文献1参照)や、相手船による航行妨害ゾーン(OZT:Obstacle Zone by Target)を表示するシステムがある。
このようなシステムでは、航行者は、衝突危険範囲や航行妨害ゾーンが表示された場合に、注意すべき範囲を具体的に把握することができる。また、航行者は、表示された衝突危険範囲や航行妨害ゾーンを避けて操船すれば、相手の船舶とは衝突せずに航行することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-166865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、船舶は、一般に急に方向を変更することができないため、船首方向において接近する船舶に対して、より注意を払う必要がある。例えば、船首方向は、船尾方向や横方向についてよりもより注意が必要であるとされている。そのため、衝突の危険性がある範囲について、表示画面において、注意が必要なレベルを識別できた方が好ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、衝突の危険性がある範囲において、注意が必要なレベルを識別することが可能な船舶航行支援装置、船舶航行支援方法、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、自船を基準として自船と他船が安全に航過可能な安全航過範囲を設け、前記安全航過範囲に基づいて計算した自船と他船が衝突する危険性がある範囲を表す注意領域を表示画面に表示させ、前記安全航過範囲内に自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲を設け、前記注意レベルの異なる範囲に基づいて計算した危険領域を、前記注意領域と異なる色/模様の表示態様とする表示制御部と、を有する船舶航行支援装置である。
ここで、本出願における危険領域は、自船を基準とした方向または距離の少なくともいずれか一方に基づく注意レベルの異なる範囲に基づいて計算するだけでなく、船種や海上規則によっては、他の要素に基づいて計算することも可能である。
【0007】
また、本発明の一態様は、コンピュータにより実行される船舶航行支援方法であって、自船を基準として自船と他船が安全に航過可能な安全航過範囲を設け、前記安全航過範囲に基づいて計算した自船と他船が衝突する危険性がある範囲を表す注意領域を表示画面に表示させ、前記安全航過範囲内に自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲を設け、前記注意レベルの異なる範囲に基づいて計算した危険領域を、前記注意領域と異なる色/模様の表示態様とする船舶航行支援方法である。
【0008】
また、本発明の一態様は、自船を基準として自船と他船が安全に航過可能な安全航過範囲を設け、前記安全航過範囲に基づいて計算した自船と他船が衝突する危険性がある範囲を表す注意領域を表示画面に表示させ、前記安全航過範囲内に自船を基準とした距離/方位に基づいた注意レベルの異なる範囲を設け、前記注意レベルの異なる範囲に基づいて計算した危険領域を、前記注意領域と異なる色/模様の表示態様とすることをコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、衝突の危険性がある範囲において、注意が必要なレベルを識別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】航行支援装置が用いられたシステムの構成を示す概略ブロック図である。
図2】表示画面100の一例を示す図である。
図3】表示画面200の一例を示す図である。
図4】航行支援装置20の動作を説明するフローチャートである。
図5】表示画面300の一例を示す図である。
図6】衝突危険範囲RD0と安全航過範囲RS0とを表示する他の例を示す図である。
図7】衝突危険範囲RD0を表示する他の例を示す図である。
図8】安全航過範囲RS0を表示する他の例を示す図である。
図9】安全航過範囲RS0を表示する他の例を示す図である。
図10】安全航過範囲RS0を表示する他の例を示す図である。
図11】安全航過範囲RS0を表示する他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による航行支援装置について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による航行支援装置が用いられたシステムの構成を示す概略ブロック図である。
航行管理システム10と航行支援装置20とが通信可能に接続される。
航行管理システム10は、例えば、レーダ(TT;Target Tracking)、船舶自動識別装置(AIS;Automatic Identification System)、ジャイロ(GYRO)、船速距離計等のセンサーである。航行管理システム10は、各種センサーから得られた結果を航行支援装置20に供給する。また、航行支援装置20は電子海図情報表示装置(ECDIS:Electronic Chart Display and Information System)や、船舶用レーダ装置等に含んでも良い。
【0012】
航行支援装置20は、コンピュータであってもよいし、モジュールとしてレーダや、ECDISに内蔵されてもよいし、航行支援装置20の出力をレーダや、ECDISに表示させるようにしてもよい。
また、航行支援装置20の機能を実現するアプリケーションソフトウェアとしてスマートフォンやタブレット等の携帯可能な端末装置にインストールされ実行されることで、航行支援装置20の機能を実現してもよい。このような航行支援装置20は、船舶に搭載される。
【0013】
航行支援装置20は、入力部210、出力部220、表示制御部230を含む。
入力部210は、各種データを航行管理システム10から取得する。また、入力部210は、操船者や乗員からキーボードやタッチパネル等の操作子を介して入力される操作入力を受け付けることもできる。
出力部220は、表示装置にデータを出力する。例えば、出力部220は、航行支援装置20に表示装置が設けられている場合には、この表示装置に対してデータを出力することで表示させる。また、出力部220は、電子海図情報表示装置や船舶用レーダ装置に対してデータを出力することで、電子海図情報装置や船舶用レーダ装置に表示させてもよい。
【0014】
表示制御部230は、入力部210から得られるデータに基づいて、各種データ処理を行い、処理結果を出力部220を介して出力することによって、表示装置に各種データを表示させる。表示制御部230は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置または専用の電子回路によって構成することができる。
表示制御部230は、第1表示制御部231、第2表示制御部232、第3表示制御部233、第4表示制御部234を含む。第1表示制御部231、第2表示制御部232、第3表示制御部233、第4表示制御部234は、個別の電子回路によって構成されてもよいし、1つの電子回路によって構成されてもよい。また、第1表示制御部231、第2表示制御部232、第3表示制御部233、第4表示制御部234の各機能を実現するためのプログラムを表示制御部230が実行することにより、これら機能を実現してもよい。
【0015】
第1表示制御部231は、航行管理システム10から得られるデータと、安全航過範囲とに基づいて、衝突計算を行い、自船と他船と衝突の危険性がある範囲である注意領域を表示画面に表示させる。第1表示制御部231は、注意領域を得ることができればよく、例えば、衝突計算については、航行管理システム10に行わせて、その計算結果を得るようにしてもよい。
ここでいう注意領域は、例えば、衝突危険範囲(DAC)であってもよいし、相手船による航行妨害ゾーン(OZT)であってもよい。すなわち、航行支援装置20は、衝突危険範囲を表示するシステムであっても、相手船による航行妨害ゾーンを表示するシステムであっても、どちらのシステムに対しても適用することができる。
【0016】
第2表示制御部232は、注意領域において自船を基準とした方向または距離の少なくともいずれか一方に応じた注意レベルに基づいて計算した危険領域を求め、この危険領域を、注意領域とは異なる表示態様によって表示画面に表示させる。ここで危険領域は、自船を基準とした方向または距離の少なくともいずれか一方に基づく注意レベルの異なる範囲に基づいて計算するだけでなく、船種や海上規則によっては、他の要素に基づいて計算することも可能である。
この実施形態では、注意領域の一例として、注意レベル表示領域である場合を説明する。
第2表示制御部232は、注意領域における注意レベルに応じた表示態様と、前記安全航過範囲における注意レベルに応じた表示態様とについて、色または模様の少なくともいずれか一方が同じになるように表示する。
【0017】
第2表示制御部232は、注意領域において自船を基準とした方向または距離の少なくともいずれか一方に応じた注意レベルと自船からの安全航過距離とに基づいて、危険性を異なる表示態様によって表示させる。
第2表示制御部232は、自船と他船との距離が基準値以内となった場合に、危険性を異なる表示態様によって表示させる。例えば、第2表示制御部232は、自船と他船との距離と基準値との大小関係を判定し、自船と他船との距離が基準値よりも大きい場合には、注意レベル表示領域を非表示にしておき、自船と他船との距離が基準値以内である場合には、注意レベル表示領域を表示する。
【0018】
第3表示制御部233は、安全航過範囲を表示画面に表示させる。第3表示制御部233は、例えば、操船者や乗員等のユーザから入力装置を介して入力される操作内容に基づいて安全航過範囲を定め、表示する。
第4表示制御部234は、安全航過範囲において自船を基準とした方向または距離の少なくともいずれか一方に応じた注意レベルを、異なる表示態様によって表示画面に表示させる。例えば、第4表示制御部234は、注意方向表示領域を表示させる。
【0019】
以下、第1表示制御部231が表示させる注意領域と、第2表示制御部232が表示させる注意レベル表示領域と、第3表示制御部233が表示させる安全航過範囲と、第4表示制御部234が表示させる注意方向表示領域とを含む航海支援情報については、船舶用レーダ装置のレーダ画面(表示画面)上に重ねて表示する場合について説明するが、レーダ画面とは別の画面に表示するようにしてもよい。また、航海支援情報は、1つの表示画面のうち、レーダ画面が表示される表示領域に隣接する表示領域に表示するようにしてもよい。また、航海支援情報は、レーダ画面に重ねて表示するが、入力部210から入力される指示に応じて、非表示状態または表示状態のいずれかの状態とするように切り替えられるようにしてもよい。
【0020】
図2は、表示制御部230から出力されるデータに基づいて表示装置に表示される表示画面100の一例を示す図である。この図では、衝突危険範囲を表示させる場合について示されている。
表示画面100には、自船S0と、他船S1と、安全航過範囲RS0と、衝突危険範囲RD0とが表示されている。
【0021】
安全航過範囲RS0は、自船を基準とした安全航過距離に基づく範囲である。安全航過距離は、例えば0.5マイル等のように、任意に設定することが可能である。
安全航過範囲RS0に他船が進入しないように操船することで、他船と衝突を回避することが可能である。
ここでは、安全航過範囲RS0は、自船S0を中心とした円形となるような形状で表示されている。安全航過範囲RS0の形状は、必ずしも円形である必要はなく、楕円形状等となる場合もある。
【0022】
安全航過範囲RS0には、注意方向表示領域RS1が表示される。ここでは、注意方向表示領域RS1は、安全航過範囲RS0が示す領域の内周側に表示されている。
船舶は一般的に、急に方向を変更することができないため、船尾方向や横方向よりも、船首方向において接近する船舶に対して、より注意を払う必要がある。すなわち、安全航過距離に該当する範囲であっても、注意を払うレベルが異なるといえる。ここでは、注意を払うレベルを2段階で考えた場合を例示する。安全航過範囲RS0のうち、左舷方向、右舷方向、船尾方向における安全航過距離よりも船首方向における安全航過距離の領域の方についてより注意を払う場合を例とし、注意方向表示領域RS1が船首方向に設定された場合を一例として説明する。ここでは、注意方向表示領域RS1は、安全航過範囲RS0とは異なる表示態様によって表示される。これにより、安全航過範囲において注意レベルを識別することが可能となる。
【0023】
注意方向表示領域RS1の範囲は、自船S0の船首方向を基準とした角度によって定められる。
この注意方向表示領域RS1は、タッチパネルや操作子等の各種入力装置から入力することで、安全航過範囲のうちユーザが注意したい領域(範囲)を任意に設定することが可能である。この例では、自船S0の船首方向を基準としてプラス60度(右舷側に60度)、マイナス60度(左舷側に60度)となるように設定されており、その形状は、略扇形である。また、注意方向表示領域は、自船S0から安全航過距離までの間に設定されればよく、例えば、安全航過距離よりも短い距離内に設定されてもよい。また、注意方向表示領域は、略扇形である場合について説明したが、多角形、円形等の任意の形状であってもよい。
【0024】
この図において、注意方向表示領域RS1は、船首方向に設定された場合について図示されている。注意方向表示領域RS1は、船首方向ではなく、左舷方向、右舷方向、船尾方向のいずれかの方向を基準として設定することもでき、また、複数の方向(例えば、船首方向と船尾方向)のそれぞれに個別に設定することもできる。1つの安全航過範囲RS0において注意方向表示領域を複数設定する場合、注意方向表示領域に該当しない安全航過範囲RS0とは別の表示態様にするとともに、複数の注意方向表示領域どうしにおいて異なる表示態様にしてもよい。
【0025】
衝突危険範囲RD0は、自船と他船と衝突の危険性がある範囲である。ここでは、自船S0の進行方向に対して右舷側前方に他船S1が存在している。他船S1は、自船S0から見た場合、自船S0の右舷側前方から、自船S0の左舷側前方に向かって航行している。衝突危険範囲RD0は、自船S0の船首方向と他船S1の船首方向とが交差する位置を含むようにして表示されている。
衝突危険範囲RD0は、自船S0の速力と相手船(ここでは他船S1)の速力、自船S0と他船S1の相対的な位置関係、他船S1の進行方向、安全航過距離に基づいて算出される。衝突危険範囲RD0の計算は、航行管理システム10が行い、その計算結果を入力部210が航行管理システム10から取得してもよいし、衝突危険範囲RD0を計算するために必要なデータを入力部210が航行管理システム10から取得し、表示制御部230が算出してもよい。ここでは、衝突危険範囲RD0の形状は、略楕円形として算出されている。
自船S0が、衝突危険範囲RD0に入った場合に、他船S1が安全航過距離の範囲(安全航過範囲RS0)に入ること示す。
【0026】
衝突危険範囲RD0が表示されることで、操船者は、この衝突危険範囲RD0を避けるように操船すれば、他船とは衝突せずに航行することが可能である。
【0027】
衝突危険範囲RD0には、注意レベル表示領域RD1が表示される。ここでは、注意レベル表示領域RD1は、衝突危険範囲RD0が示す領域の内周側に表示されている。
注意レベル表示領域RD1の表示態様としては、少なくとも、衝突危険範囲RD0とは異なる表示態様となっていればよい。
また、注意レベル表示領域RD1は、注意方向表示領域RS1と関連性のある表示態様にて表示するようにしてもよい。関連性のある表示態様としては、例えば、色、模様(例えばハッチング)のうち少なくともいずれか一方について、同一または関連性があることが識別可能な態様で表示されればよい。例えば、注意レベル表示領域RD1と、注意方向表示領域RS1とについて、同じ色であって、かつ、同じハッチングパターンとした場合には、関連性があることを容易に把握できる。
【0028】
これにより、安全航過範囲RS0のうちどの領域が、衝突危険範囲RD0のうちどの領域に対応しているかについて簡単に把握することができる。例えば、注意方向表示領域RS1と注意レベル表示領域RD1とが対応していることを簡単に把握することができる。これにより操船者は、衝突危険範囲RD0を注意するだけでなく、衝突危険範囲RD0のうち、船首方向において注意すべき領域がどの領域であるかを簡単に把握することができる。
【0029】
ここでは、注意レベル表示領域RD1は、衝突危険範囲RD0の一部の領域であって、衝突危険範囲RD0の中心位置を基準として、略扇形状として求められ、衝突危険範囲RD0のうち自船S0に近い領域に配置され、表示されている。
注意レベル表示領域RD1は、注意方向表示領域RS1によって示される領域に基づいて、衝突危険範囲RD0に対応する領域を投影することで求めることができる。求められた注意レベル表示領域RD1は、衝突危険範囲RD0に重ね合わせるようにして合成され、合成された結果が表示される。ここでいう投影の演算は、例えば、通常の衝突計算では、自船と他船の各種情報(位置、速力、方向等)と安全航過範囲RS0とに基づいて衝突計算を行うが、注意レベル表示領域RD1を求める場合には、自船と他船の各種情報(位置、速力、方向等)と注意方向表示領域RS1とに基づいて衝突計算を行う。
これにより、自船S0と他船S1との関係において注意が必要な領域について、衝突危険範囲RD0に基づいて把握することができ、その上で、船首方向において注意すべき領域(注意方向表示領域RS1が投影された領域)が衝突危険範囲RD0のうちどこに対応しているかを注意レベル表示領域RD1に基づいて把握することができる。
従来の衝突危険領域を表示するシステムにおいては、衝突危険領域について一様に塗り潰すようにした表示態様であったが、本実施形態によれば、衝突危険範囲RD0のうち、注意レベルが異なる領域を識別可能な表示対象で表示することができる。
【0030】
図3は、表示制御部230から出力されるデータに基づいて表示装置に表示される表示画面200の一例を示す図である。この図では、相手船による航行妨害ゾーンを表示させる場合について示されている。
表示画面200には、自船S0と、他船S1と、安全航過範囲RS0と、相手船による航行妨害ゾーンRO0とが表示されている。
安全航過範囲RS0や、安全航過範囲RS0に表示される注意方向表示領域RS1については、図2と共通する部分があるので、差分を説明する。
相手船による航行妨害ゾーンRO0は、自船と他船と衝突の危険性がある範囲である。相手船による航行妨害ゾーンRO0が示す範囲に自船の進路が入る場合には、将来において安全航過範囲RS0に相手船が入ることを示す。
相手船による航行妨害ゾーンRO0は、航行管理システム10から得られるデータに基づいて、自船S0の船首方向において他船の進路上に表示される。相手船による航行妨害ゾーンRO0は、線分状の形状によって表示される。
ここで、符号201は、安全航過範囲RS0に他船S1が入る自船の針路の範囲を表す。符号202は、注意方向表示領域RS1に他船S1が入る自船の針路の範囲を表す。
【0031】
注意レベル表示領域RO1は、注意方向表示領域RS1によって示される領域に基づいて、相手船による航行妨害ゾーンRO0に対する領域を投影することで求めることができる。求められた注意レベル表示領域RO1は、相手船による航行妨害ゾーンRO0に重ね合わせるようにして合成され、合成された結果が表示される。ここでいう投影は、例えば、通常の衝突計算では、自船と他船の各種情報(位置、速力、方向等)と安全航過範囲RS0とに基づいて衝突計算を行うが、注意レベル表示領域RO1を求める場合には、自船と他船の各種情報(位置、速力、方向等)と注意方向表示領域RS1とに基づいて衝突計算を行う。
【0032】
これにより、自船S0と他船S1との関係において注意が必要な領域について、相手船による航行妨害ゾーンRO0に基づいて把握することができ、その上で、船首方向において注意すべき領域がどこに対応しているかを注意レベル表示領域RO1に基づいて把握することができる。
このように、相手船による航行妨害ゾーンを表示するシステムにおいては、一般に、注意領域について表示態様が一様であったが、本実施形態によれば、相手船による航行妨害ゾーンRO0のうち、注意レベルが異なる領域を識別可能な表示態様で表示することができる。
【0033】
この図においては、相手船による航行妨害ゾーンRO0と、注意レベル表示領域RO1とのそれぞれの線分状の太さが同じである場合について図示されているが、異なる太さとなるように表示するようにしてもよい。この場合、注意レベル表示領域RO1が航行妨害ゾーンRO0よりも太く表示されてもよい。これにより、航行妨害ゾーンRO0において注意レベル表示領域RO1を識別しやすくなり、より注意が必要であることをより把握しやすくなる。
また、この図においては、注意レベル表示領域RO1は、注意方向表示領域RS1が船首方向に設定される場合について説明したが、船尾方向に設定されてもよいし、右舷側、左舷側等のように別の領域に設定されてもよい。また、注意レベル表示領域RO1は、自船S0を基準として異なる方向に対してそれぞれ設定されてもよい。この場合、それぞれの注意レベル表示領域に対応する領域が相手船による航行妨害ゾーンRO0に投影されればよい。
【0034】
図4は、航行支援装置20の動作を説明するフローチャートである。
ここでは安全航過範囲、注意方向表示領域は、予め入力されることで設定されているものとして説明する。
航行支援装置20の表示制御部230は、入力部210を介して、航行管理システム10から、衝突計算を行うために必要な各種データを取得する(ステップS101)。取得するデータは、例えば、自船S0の速力、相手船(他船S1)の速力、自船S0の位置、他船S1の位置、他船S1の進行方向を含む。
第1表示制御部231は、安全航過範囲と、入力部210を介して得られたデータとに基づいて衝突計算を行い、注意領域を算出する(ステップS102)。第2表示制御部232は、注意方向表示領域と、入力部210を介して得られたデータとに基づいて衝突計算を行い、注意レベル表示領域を算出する(ステップS103)。表示制御部230は、算出された注意領域に対し、算出された注意レベル表示領域を重ね合わせることで合成し、出力部220から出力することにより、表示装置に表示させる(ステップS104)。
表示制御部230は、処理を終了する指示が入力されたか否かを判定し(ステップS105)、処理を終了する指示が入力された場合は処理を終了し(ステップS105-YES)、処理を終了する指示が入力されていなければ(ステップS105-NO)、処理をステップS101に移行する。ステップS101に移行し、自船と他船のうち少なくとも一方の船舶について、位置、速度、進行方向のうち少なくともいずれか1つについて、前回取得したデータとは異なる場合(変化があった場合)には、注意領域や、注意レベル表示領域の形状が変化する。
【0035】
図5は、表示制御部230から出力されるデータに基づいて表示装置に表示される表示画面300の一例を示す図である。この図では、衝突危険範囲を表示させる場合について示されている。
表示画面300には、自船S0と、他船S1と、安全航過範囲RS0と、衝突危険範囲RD0とが表示されている。
その上で、安全航過範囲RS0は、自船S0の船首方向に注意方向表示領域RS20、船尾方向に注意方向表示領域RS21が設定され、これらが表示されている。
衝突危険範囲RD0には、注意方向表示領域RS20に基づく範囲である注意レベル表示領域RD20が表示され、また、注意方向表示領域RS21に基づく範囲である注意レベル表示領域RD21が表示される。
ここでは、注意方向表示領域RS20と注意レベル表示領域RD20とが関連性のある表示態様で表示されており、これにより、注意方向表示領域RS20が、船首方向(注意レベル表示領域RD20)において注意すべき領域であることを把握することができる。
また、注意方向表示領域RS21と注意レベル表示領域RD21とが関連性のある表示態様で表示されており、これにより、注意方向表示領域RS21が、船尾方向(注意レベル表示領域RD21)において注意すべき領域であることを把握することができる。
ここでは、注意レベル表示領域RD20と注意レベル表示領域RD21は、異なる表示態様で表示される。例えば、注意レベル表示領域RD20を赤、注意レベル表示領域RD21を水色で表示し、これら以外の衝突危険範囲RD0(右舷側、左舷側に対応する範囲)については白色で表示するようにしてもよい。
これにより、衝突危険範囲RD0において、注意するレベルが異なることを容易に識別することができる。また、自船にとってどの方向を注意すべきであるかを容易に特定することができる。
【0036】
なお、図5では、衝突危険範囲を表示する場合について説明したが、相手船による航行妨害ゾーンを表示する場合においても、自船に対する方向のうち異なる方向について、注意レベル表示領域をそれぞれ設定し、相手船による航行妨害ゾーンに、各注意方向表示領域に応じた注意レベル表示領域をそれぞれ表示するようにしてもよい。
【0037】
図6は、衝突危険範囲RD0と安全航過範囲RS0とを表示する他の例を示す図である。
安全航過範囲RS0において、注意方向表示領域RS10が表示される。注意方向表示領域RS10は、安全航過範囲RS0の中心に近いほど濃い色で表示され、中心から離れるほど淡い色で表示される。これにより、注意方向表示領域RS10の色が濃いほど、より注意が必要であることが把握できる。ここでは、注意方向表示領域RS10の色が濃いほど、自船S0からの距離が近いことを表しており、色が淡いほど、自船S0からの距離が離れていることを表している。
また、衝突危険範囲RD0において、注意レベル表示領域RD30が表示される。注意レベル表示領域RD30は、衝突危険範囲RD0の中心に近いほど濃い色で表示され、中心から離れるほど淡い色で表示される。これにより、注意レベル表示領域RD30の色が濃いほど、より注意が必要であることが把握できる。ここでは、注意レベル表示領域RD30の色が濃いほど、安全航過距離が近いことを表しており、注意レベル表示領域RD30の色が淡いほど、安全航過距離が離れていることを表している。
安全航過距離に基づく領域(安全航過範囲)については、自船から見た方向によっては注意を払うレベルが異なるが、これとは別に、自船からの距離においても、注意を払うレベルが異なる。例えば、自船を基準として船首方向においても、距離が近いほどより注意を払う必要がある。そのため、安全航過範囲において自船を基準とした距離に応じて注意レベル表示領域における表示態様が異なるようにしてもよい。例えば、注意方向表示領域が船首方向に設定されている場合に、注意方向表示領域を注意領域に対して投影して一様に表示してもよいが、安全航過距離が自船からの近い位置が投影された領域については、より注意した方がよいことを把握可能な表示態様で表示する。ここでは、距離が近いほど色を濃くし、離れるほど薄くするように、グラデーションによって表示する。
注意レベル表示領域RD30と注意方向表示領域RS10の表示態様は同じ表示態様によって表示してもよい。この表示態様は、色または模様の少なくともいずれか一方により濃淡を付ける表示態様であればよい。
【0038】
なお、図6では、衝突危険範囲を表示する場合について説明したが、相手船による航行妨害ゾーンを表示する場合においても、注意レベル表示領域をグラデーションによって表示するようにしてもよい。
【0039】
図7は、衝突危険範囲RD0を表示する他の例を示す図である。
ここでは、衝突危険範囲RD0において、注意レベル表示領域RD40が表示される。注意レベル表示領域RD40は、その外周が破線で表されている。
なお、図7では、衝突危険範囲を表示する場合について説明したが、相手船による航行妨害ゾーンを表示する場合においても、注意レベル表示領域について、その外周を破線で表してもよい。
【0040】
図8は、安全航過範囲RS0を表示する他の例を示す図である。
ここでは、安全航過範囲RS0において、注意方向表示領域RS11が表示される。注意方向表示領域RS11は、図2に示す注意方向表示領域RS1の角度よりも広い角度で設定された場合が図示されている。
図9は、安全航過範囲RS0を表示する他の例を示す図である。
ここでは、安全航過範囲RS0において、注意方向表示領域RS12が表示される。注意方向表示領域RS12は、図2に示す注意方向表示領域RS1や、図8に示す注意方向表示領域RS11の角度よりも狭い角度で設定された場合が図示されている。
【0041】
図10は、安全航過範囲RS0を表示する他の例を示す図である。
ここでは、安全航過範囲RS0において、注意方向表示領域RS13が表示される。注意方向表示領域RS13は、船尾方向に設定された場合が図示されている。
図11は、安全航過範囲RS0を表示する他の例を示す図である。
ここでは、安全航過範囲RS0において、注意方向表示領域が複数表示される場合について図示されている。ここでは、安全航過範囲RS0において、船首方向において注意方向表示領域RS15、船尾方向において注意方向表示領域RS16、右舷のやや船首側において注意方向表示領域RS17、左舷のやや船尾側において注意方向表示領域RS18が表示される。注意方向表示領域RS15、注意方向表示領域RS16、注意方向表示領域RS17、注意方向表示領域RS18は、それぞれお互いに異なる表示態様で表示される。
【0042】
上述した実施形態における航行支援装置20をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0043】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10…航行管理システム、20…航行支援装置、210…入力部、220…出力部、230…表示制御部、231…第1表示制御部、232…第2表示制御部、233…第3表示制御部、234…第4表示制御部
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