(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084035
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】フルハーネス用ショックアブソーバ
(51)【国際特許分類】
A62B 35/04 20060101AFI20230609BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
A62B35/04
A62B35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198131
(22)【出願日】2021-12-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.株式会社TJMデザインが自社商品カタログ Tajima 2021 HOT NEWS 10-12において、2021年7月1日に出願に係る発明の内容を公開。 2.株式会社TJMデザインが2021年10月1日より出願に係る発明を販売することにより公開。
(71)【出願人】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】隈田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昭仁
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA04
2E184LA24
2E184LB02
(57)【要約】
【課題】緩衝体に接続されたランヤードが作業者の腰に装着された腰袋に引っ掛かり難いフルハーネス用ショックアブソーバを提供することである。
【解決手段】多重に折り畳んだ緩衝ベルト23を綴じ糸で縫い合わせて構成された緩衝体20と、緩衝ベルト23の一端側に設けられた、ランヤード接続用の第1接続部21と、緩衝ベルト23の他端側に設けられた、フルハーネス接続用の第2接続部22と、を有し、第1接続部21及び第2接続部22が、緩衝体20の長手方向の一端側に設けられ、作業者11に装着されたフルハーネス13に第2接続部22を接続した状態において、作業者11の背中の上部に第1接続部21が配置されるように構成されていることを特徴とするフルハーネス用ショックアブソーバ1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重に折り畳んだ緩衝ベルトを綴じ糸で縫い合わせて構成された緩衝体と、
前記緩衝ベルトの一端側に設けられた、ランヤード接続用の第1接続部と、
前記緩衝ベルトの他端側に設けられた、フルハーネス接続用の第2接続部と、を有し、
前記第1接続部及び前記第2接続部が、前記緩衝体の長手方向の一端側に設けられ、
作業者に装着された前記フルハーネスに前記第2接続部を接続した状態において、前記作業者の背中の上部に前記第1接続部が配置されるように構成されていることを特徴とするフルハーネス用ショックアブソーバ。
【請求項2】
前記緩衝体が、前記緩衝体を前記フルハーネスに仮固定する固定部を備えている、請求項1項に記載のフルハーネス用ショックアブソーバ。
【請求項3】
前記第1接続部が、それぞれ前記緩衝体の長手方向に垂直な方向に張り出す一対の張り出し部を備えた形状に形成されている、請求項1または2に記載のフルハーネス用ショックアブソーバ。
【請求項4】
金具からなった前記第1接続部は、一対の前記張り出し部を有し、幅方向外側に向けて凸となる円弧状に湾曲した形状となっている、請求項3に記載のフルハーネス用ショックアブソーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルハーネスに装着して使用されるフルハーネス用ショックアブソーバに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の建築現場などの高所で作業を行う際には、墜落を防止するための安全帯が使用されている。安全帯は、作業者の身体に装着されるフルハーネスと、フルハーネスに接続されるとともに親綱や足場の手摺等の支持物に連結するためのフックを備えたランヤードとを有するのが一般的である。
【0003】
従来、このような安全帯として、作業者が建築現場の足場等の高所から落下した際、作業者の身体に加わる衝撃を緩和するために、ランヤードとフルハーネスとの間にショックアブソーバを有する構成のものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、多重に折り畳んだ緩衝ベルトを綴じ糸で縫い合わせて構成された緩衝体と、緩衝ベルトの一端に設けられたランヤード接続用の結合ループと、緩衝ベルトの他端に設けられたフルハーネス接続用の結合ループとを有し、それぞれの結合ループが緩衝体の上端側に設けられ、緩衝体を作業者の背中の真ん中よりも下方側に位置するポケットに収納して使用されるショックアブソーバが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のショックアブソーバは、緩衝体が作業者の背中の真ん中よりも下方側に位置するポケットに収納される構成となっているので、緩衝体に接続されたランヤードが作業者の腰に装着された腰袋に引っ掛かり易く、この点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、緩衝体に接続されたランヤードが作業者の腰に装着された腰袋に引っ掛かり難いフルハーネス用ショックアブソーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフルハーネス用ショックアブソーバは、多重に折り畳んだ緩衝ベルトを綴じ糸で縫い合わせて構成された緩衝体と、前記緩衝ベルトの一端側に設けられた、ランヤード接続用の第1接続部と、前記緩衝ベルトの他端側に設けられた、フルハーネス接続用の第2接続部と、を有し、前記第1接続部及び前記第2接続部が、前記緩衝体の長手方向の一端側に設けられ、作業者に装着された前記フルハーネスに前記第2接続部を接続した状態において、前記作業者の背中の上部に前記第1接続部が配置されるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のフルハーネス用ショックアブソーバにあっては、前記緩衝体が、前記緩衝体を前記フルハーネスに仮固定する固定部を備えているのが好ましい。
【0010】
本発明のフルハーネス用ショックアブソーバにあっては、前記第1接続部が、それぞれ前記緩衝体の長手方向に垂直な方向に張り出す一対の張り出し部を備えた形状に形成されているのが好ましい。
【0011】
本発明のフルハーネス用ショックアブソーバにあっては、金具からなった前記第1接続部は、一対の前記張り出し部を有し、幅方向外側に向けて凸となる円弧状に湾曲した形状となっているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、緩衝体に接続されたランヤードが作業者の腰に装着された腰袋に引っ掛かり難いフルハーネス用ショックアブソーバを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフルハーネス用ショックアブソーバを備えた安全帯の、作業者に装着した状態における背面図である。
【
図2】
図1に示す安全帯の、作業者に装着した状態における側面図である。
【
図3】
図1に示すフルハーネス用ショックアブソーバの背面図である。
【
図4】
図1に示すフルハーネス用ショックアブソーバの側面図である。
【
図5】
図1に示すフルハーネス用ショックアブソーバの緩衝体の断面図である。
【
図7】巻取り器の接続金具の単体での斜視図である。
【
図8】変形例に係る第1接続部の単体での正面図である。
【
図9】変形例に係る第1接続部の単体での正面図である。
【
図10】変形例に係る第1接続部の単体での正面図である。
【
図11】変形例に係る第1接続部の単体での正面図である。
【
図12】(a)~(c)は、それぞれ変形例に係る第1接続部の単体での正面図である。
【
図13】変形例に係る第1接続部の単体での正面図である。
【
図14】(a)、(b)は、それぞれ変形例に係る第1接続部の単体での正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るフルハーネス用ショックアブソーバについて例示説明する。
【0015】
本発明の一実施形態に係るフルハーネス用ショックアブソーバ1(以下、「ショックアブソーバ1」という場合がある。)は、安全帯10の一部を構成するものである。
【0016】
図1、
図2に示すように、安全帯10は、少なくとも作業者11の胴体12に装着され、墜落時に作業者11を保持するフルハーネス(胴ベルト)13と、垂直昇降する際に、高所に設置する安全ブロックにフルハーネス13の接続部16または第1接続部21に連結する、または、高所に設置された親綱や足場の手摺等の支持物に連結するためのフック14を備えたランヤード(命綱)15とを備えている。本実施の形態では、安全帯10は、2本のランヤード15を備えたダブルランヤードタイプとなっている。ショックアブソーバ1は、フルハーネス13と、それぞれのランヤード15との間に接続され、作業者11が建築現場の足場等の高所から落下した際、作業者11の身体に加わる衝撃を緩和する。
【0017】
フルハーネス13は、作業者11の腰、胸、腿、背中及び肩等に亘って巻き付けられるものとすることができる。フルハーネス13の作業者11の背中に上下方向に延びる部分には、両肩の間のやや下側に位置して、ショックアブソーバ1を接続するための接続部16が設けられている。接続部16は、例えばリング状の金具等で構成される。リング状とは、例えば円環状、D字状、四角形の環状、三角形の環状とすることができる。
【0018】
2本のランヤード15は、それぞれ巻取り器17を有し、その一部が巻取り器17から引き出された状態となっている。ランヤード15の残りの部分は巻取り器17に巻き取られた状態となっており、ランヤード15を引くことで、ランヤード15の残りの部分を巻取り器17から引き出すことができる。ランヤード15の残りの部分を巻取り器17から引き出すことで、作業者11はフック14を手で容易に把持することができる。一方、引き出されたランヤード15は、手を放すことで、巻取り器17に自動的に巻き取られる。または、ランヤード15は、作業者の動きに追従し巻取り器17から自由に繰り出され、巻取の際に任意位置で少し引くだけで、巻取り器17に収納できる。フック14はランヤード15の先端に取り付けられている。フック14は、例えば大口径フック、フックで構成することができ、親綱や足場の手摺等の支持物に対して容易に着脱可能となっている。
【0019】
フルハーネス13は、作業者11の腰部に巻き付けられるベルト部分に、工具ホルダ―、腰袋、ツールフック等の携帯物品18を取り付けることができる。工具ホルダ―、腰袋、ツールフック等携帯物品18は、種々の工具を収納することができる。
【0020】
図3、
図4に示すように、ショックアブソーバ1は、緩衝体20と、第1接続部21と、第2接続部22とを備えている。
【0021】
緩衝体20は、多重に折り畳んだ緩衝ベルト23を綴じ糸で縫い合わせて構成されている。緩衝体20は、全体として細長い棒状となっており、破断可能なカバー24に収納されている。カバー24としては、150kg以上の荷重に耐えられる強度を有する樹脂製ないし布製のものを用いるのが好ましい。緩衝ベルト23の一端側の折り返し部分と他端側の折り返し部分との間には、十字形状に接合された2本のベルトからなるバイパスベルト25が綴じ糸で縫い合わせて接合されている。バイパスベルト25は、緩衝ベルト23とともに多重に折り畳まれ緩衝ベルト23とともに綴じ糸で縫い合わされて緩衝体20の一部を構成している。そして、緩衝体20は、作業者11の荷重が加わり、緩衝ベルト23ないしバイパスベルト25の互いに重なりあう部分における綴じ糸が切断されることで、分離可能に構成されている。
【0022】
第1接続部21は、ランヤード接続用であり、緩衝ベルト23の一端側に設けられている。本実施形態では、第1接続部21は、緩衝ベルト23の一端側の折返し部分に引っ掛けられた状態で取り付けられたピン部材26により支持され、当該ピン部材26を介して緩衝ベルト23の一端側に回動自在に連結されている。
【0023】
第2接続部22は、フルハーネス接続用であり、緩衝ベルト23の他端側28に設けられている。緩衝ベルト23の他端側28の折返し部分はカバー24より突出している。本実施形態では、第2接続部22は、緩衝ベルト23の他端側28の折返し部分に引っ掛けられた状態で取り付けられたピン部材27により支持され、緩衝ベルト23の他端側に回動自在に連結されている。
【0024】
このように、ショックアブソーバ1は、ランヤード接続用の第1接続部21及びフルハーネス接続用の第2接続部22が、それぞれ緩衝体20の長手方向の一端側すなわち両者が同一側に設けられた構成となっている。
【0025】
ショックアブソーバ1は、作業者11に装着されたフルハーネス13の接続部16に第2接続部22を接続することで、第1接続部21及び第2接続部22が緩衝体20の上方を向く側の長手方向端部に位置する姿勢でフルハーネス13に吊り下げ保持された状態で装着される。ショックアブソーバ1がフルハーネス13に装着された状態において、第1接続部21は、作業者11の背中の上部すなわち背中の上下方向の真ん中よりも上側に配置される。
【0026】
このような構成を有する本実施形態のショックアブソーバ1によれば、フルハーネス接続用の第2接続部22によりショックアブソーバ1をフルハーネス13に装着しつつ、ランヤード接続用の第1接続部21を作業者11の背中の上部に配置することができるので、第1接続部21により緩衝体20に接続されたランヤード15を、作業者11の腰に装着された携帯物品18や携帯物品18に入れられた工具等に引っ掛かり難くすることができる。これにより、携帯物品18から工具等を出し入れする作業を容易に行い得るようにすることができるとともに、ランヤード15の取り回しを容易に行い得るようにすることができる。
【0027】
ここで、本実施形態のショックアブソーバ1は、ランヤード接続用の第1接続部21及びフルハーネス接続用の第2接続部22が、それぞれ緩衝体20の長手方向の一端側に設けられた構成となっているので、緩衝体20を、第1接続部21が設けられる緩衝ベルト23の一端側と第1接続部21が設けられる緩衝ベルト23の他端側との両方が一方側の端部に配置される構成とする必要がある。そのため、緩衝体20の落下の衝撃に対する強度の確保とコンパクト性とを確保することが課題となる。
【0028】
このような課題に対し、本実施形態のショックアブソーバ1では、
図5に示すように、緩衝体20を、緩衝ベルト23の一端側の折り返し部分と他端側の折り返し部分との間にバイパスベルト25の一部を2つ折りで巻き込むとともに、緩衝ベルト23の中間部分の間に、バイパスベルト25の他の部分を2つ折りとした後、さらに3つ折りに畳み、緩衝ベルト23の他端側から延びる部分をバイパスベルト25の当該畳んだ部分の周囲に沿って這わせた後、緩衝ベルト23の一端側から延びる部分と他端側から延びる部分とでバイパスベルト25の当該畳んだ部分をさらに外側から覆うように巻き込むことで、緩衝ベルト23及びバイパスベルト25を
図5に示すように多重に畳み、この状態で、緩衝ベルト23及びバイパスベルト25を、折り畳み方向に向けて通した綴じ糸で互いに縫い合わせた構成としている。
【0029】
上記の通りに緩衝ベルト23及びバイパスベルト25を多重に折り畳んで構成された緩衝体20は、
図5に示す断面視において、左右対称の棒状の形状となり、その外形はコンパクトである。
【0030】
また、本実施形態のショックアブソーバ1では、上記の通りに緩衝ベルト23及びバイパスベルト25を多重に折り畳んで緩衝体20をコンパクトにしつつ、綴じ糸の縫製パターン、綴じ糸の太さ、綴じ糸の本数、綴じ糸の撚り数を改良することにより、緩衝体20の落下の衝撃に対する強度を確保するようにしている。
【0031】
例えば、本実施形態のショックアブソーバ1では、緩衝体20を、緩衝ベルト23及びバイパスベルト25として、番手(太さ)が940dtexのナイロン製の縦糸素材を、120本、撚り係数4(回/inch)で撚った縦糸によって33mmの幅に形成されたものを用い、上記の通りに多重に折り畳んだ緩衝ベルト23及びバイパスベルト25を、番手(太さ)が1110dtexの40本のポリエステル製の綴じ糸により所定の高い密度の縫製パターンで縫い合わせた構成のものとしている。
【0032】
これにより、緩衝体20を、その外形をコンパクトにしつつ、綴じ糸が1回切断される毎に吸収できる衝撃量を所望量にまで増加させて、その強度を落下衝撃値が基準値以下となる適度な強度に設定することができ、ショックアブソーバ1の安全性を確保することができる。例えば、上記構成の緩衝体20の落下衝撃値は、最大値が4.06kN、平均値が3.69kNであり、それぞれ基準値である8kN、4kN以下となっている。また、緩衝体20の伸び量は720mmであり、JIS規格の基準値である1200mm以下である。
【0033】
これに対し、緩衝体20を、綴じ糸の本数のみを33本に変更した構成とした場合には、緩衝体20の落下衝撃値は、最大値が3.36kN、平均値が2.98kNとなり、時間毎の落下衝撃値が綴じ糸の本数を40本としたものに対して低くなる分、全衝撃力を吸収するまでの時間が長くなり、伸び量が1050mmとなって落下距離が長くなり過ぎる。また、緩衝体20を、縦糸の撚り係数を3(回/inch)に変更し、綴じ糸の番手を1100dtexに変更し、綴じ糸の本数を33本に変更し、綴じ糸の縫製パターンをより密度の低い構成とした場合でも、緩衝体20の落下衝撃値は、最大値が3.03kN、平均値が2.76kNとなり、同様に、時間毎の落下衝撃値が低くなる分、全衝撃力を吸収するまでの時間が長くなり、伸び量が1240mmとJIS規格の基準範囲外となって落下距離が長くなり過ぎる。
【0034】
図3に示すように、本実施形態のショックアブソーバ1では、第1接続部21は、それぞれ緩衝体20の長手方向に垂直な方向に張り出す一対の張り出し部21aを備えた形状に形成されている。より具体的には、
図6に示すように、第1接続部21は、ピン部材26により固定支持される互いに平行な板状の一対の脚部21bを備えている。第1接続部21は、一対の脚部21bの外縁にラチェット歯を備え、ピン部材26を回動軸に沿わせて回動するときにラチェット歯がラチェット歯を係止する係止爪と接触し、回動軸の周りの任意の角度に設定可能な開閉角度調節機構を備えることによって、作業しやすい角度に調整、収納することができる構成とすることもできる。一対の張り出し部21aは、それぞれ一対の脚部21bの上端から脚部21bに対して幅方向外側に向けて張り出している。
図6に示す場合では、一対の張り出し部21aは、幅方向外側に向けて凸となる円弧状に湾曲した形状となっている。一対の張り出し部21aの上端側は、上側に向けて凸となるように僅かに湾曲した形状の接続辺部21cにより接続されている。このように、第1接続部21は、全体としてマッシュルーム型の形状となっている。
【0035】
接続辺部21cには、これの強度を高めるためのリブ21dが下向きに突出して設けられている。また、
図4に示すように、第1接続部21は、緩衝体20に対して斜め上方に傾斜して延びる形状となっている。
【0036】
一方、第1接続部21に接続されるランヤード15の巻取り器17は、
図7に示す接続金具17aを有している。接続金具17aは、巻取り器17のケース体17bの内部に一対の脚部17cが接続金具17aと同一または1.5倍以上幅広く埋設して支持された構成となっている。これにより、接続金具17aのケース体17bに対する固定強度が高められている。接続金具17aのケース体17bから突出した部分は、第1接続部21に連結可能な半径の円弧状となっており、その内周面には補強用のリブ17dが設けられている。そして、接続金具17aは、ケース体17bから突出した部分が第1接続部21に掛けられることで第1接続部21に接続されている。
【0037】
接続金具17aと第1接続部21に連結し、作業性を高めるために、第1接続部21は半径30mm~300mmの大きなリングから構成し、接続金具17aは半径20mm~30mmとするのが好ましい。2つの接続金具17aは第1接続部21上に自由反転移動でき、かつ静止時に任意な場所に止められるような連結構造になっている。さらに、安定して保持したい場合は第1接続部21の幅方向外側に向けて凸となる円弧状の張り出し部21aを設けることができる。張り出し部21aを設けることによって、右側のフックを左へ引っ張ると、張り出し部21aで保持していた巻取り器17は左側へ滑らかに反転し、接続辺部21cに静止に待機する。
【0038】
上記の通り、本実施形態のショックアブソーバ1では、第1接続部21を、それぞれ緩衝体20の長手方向に垂直な方向に張り出す一対の張り出し部21aを備えた形状としたので、第1接続部21として一対の張り出し部21aを備えていないものを採用した場合と比較して、第1接続部21に接続されるランヤード15の可動範囲を、斜め下方にも移動可能となるように広げて、安全帯10を装着した作業者11は左右方向の反転動作に対して一対のランヤード15が干渉せずに作業性を高めることができる。静止状態時に巻取り器17を張り出し部21aに安定して保持できるので、巻取り器17がフルハーネス用ショックアブソーバ1の上部に接触しないようにして、部品の損傷を防げることができる。
【0039】
特に、本実施形態のように、第1接続部21に、それぞれ巻取り器17を備えた2本のランヤード15を接続した構成の安全帯10では、第1接続部21として一対の張り出し部21aを備えていないものを採用した場合、巻取り器17が第1接続部21に沿って自由に移動し難く、2つの巻取り器17が互いに交差してしまうなどして、安全帯10を装着した作業者11の作業性が損なわれる虞がある。
【0040】
これに対し、本実施形態のショックアブソーバ1では、第1接続部21を、それぞれ緩衝体20の長手方向に垂直な方向に張り出す一対の張り出し部21aを備えた形状としたので、第1接続部21に接続された2つの巻取り器17が、前後左右に自由に移動及び回転反転動作することができるようにして、安全帯10を装着した作業者11の作業性を高めることができる。また、第1接続部21の金属環の幅は強度を確保するために、12mm~20mmとするのが好ましい。さらに、円弧状の半径は、100mm~150mmとするのが好ましい。上記形状とすることで、安全帯10を装着した作業者11の作業性を高めることができるので、部品点数の増加等を不要として、安全帯10を軽量化することができる。さらに、2つの巻取り器17の両方が一方の張り出し部21aの側に移動しても、第1接続部21に待機することができるため当該移動により作業者11の重心が片方に偏ることがなく安全に作業を行うことができる。
【0041】
本実施形態のショックアブソーバ1では、第1接続部21の円弧状の張り出し部21aの半径は、7mm~15mmとするのが好ましい。これにより、第1接続部21に接続された2つの巻取り器17を、張り出し部21aに対する引っ掛かりを生じさせることなく移動させることができる。また、円弧状の張り出し部21aの半径は、7.5mm~10mmとするのがより好ましい。さらに、張り出し部21aはフルハーネス用ショックアブソーバ1の本体から8mm~15mmを張り出しているのが好ましい。これにより、第1接続部21に接続された2つの巻取り器17を、張り出し部21aに対する引っ掛かりを生じさせることなく、より滑らかに移動させることができる。
【0042】
本実施形態のショックアブソーバ1では、第1接続部21と連結する接続金具17aの半径は、20mm~30mmとするのが好ましい。また、金属環の幅は強度を確保するために、14mm~25mmとするのが好ましい。これにより、第1接続部21と前後左右に自由に移動及び回転反転動作することができるようにして、安全帯10を装着した作業者11の作業性を高めることができる。
【0043】
図4に示すように、第1接続部21は、緩衝体20の長手方向に対して斜めに上方に傾斜して延びる形状となっている。ここで、第1接続部21の緩衝体20の長手方向に対する傾斜角度は、背中から離れる方向に30度~60度とするのが好ましい。これにより、第1接続部21に接続された2つの巻取り器17を、より自由に前後左右に移動及び回転動作させることができる。これに対し、第1接続部21の緩衝体20の長手方向に対する傾斜角度を60度より大きく(例えば90度)した場合、巻取り器17を自由に移動及び回転動作させることができるが、2つの巻取り器17が、張り出し部21aを待機位置として安定して保持されず、常に巻取り器17が動いてしまうとともに、第1接続部21の背中からの突出高さが大きくなって、作業の安全性と利便性が損なわれる虞がある。反対に、第1接続部21の緩衝体20の長手方向に対する傾斜角度を30度未満(例えば0度)とした場合、2つの巻取り器17を張り出し部21aからなる待機位置に安定して保持することができるが、巻取り器17の移動及び回転動作が困難になる。
【0044】
一対の張り出し部21aを備えた第1接続部21の形状は、
図6に示す形状に限らず、例えば、
図8に示すように、張り出し部21aの脚部21bと連なる下半部の半径が接続辺部21cと連なる上半部の半径よりも大きい形状、
図9に示すように、張り出し部21aと脚部21bとの間に幅方向内側に絞られた窪み部21eを設けて張り出し部21aが脚部21bよりも内側にまで達する形状、
図10に示すように、略矩形の板材にC字形状の切り欠きを設けて当該切り欠きの外側部分で張り出し部21aを構成した形状、
図11に示すように、一対の張り出し部21aに滑り止め構造を設けるとともに、一対の張り出し部21aと接続辺部21cとが同一半径で連続して連なって全体として円形となる形状など、種々の形状とすることができる。
【0045】
また、一対の張り出し部21aを備えた第1接続部21の形状は、
図12に示すように、張り出し部21aを2個、3個など複数設けた形状とすることもできる。この場合、張り出し部21aの長さは同一でもよく、異なってもよい。このような構成により、複数の巻取り器17は絡まることなく、衝突によるケース体17bの損傷も防ぐことができる。
【0046】
さらに、一対の張り出し部21aを備えた第1接続部21の形状は、
図13に示すように、浅めの張り出し部21aよりしっかり巻取り器17の静止位置を保持でき、横方向のがたつきを防止できる張り出し部21aを深めの袋に構成した形状とすることもできる。
【0047】
さらに、一対の張り出し部21aを備えた第1接続部21の形状は、
図14に1例を示すように、前記形状を2個平行並びに脚部21bを個別に設置する、または一体にした形状とすることもできる。2個の第1接続部21を有する形状とすることによって、それぞれの巻取り器17が自由に移動できる範囲が広く、安全ブロックを連結するためのスペースも確保することができる。
【0048】
図3に示すように、緩衝体20は、緩衝体20をフルハーネス13に仮固定する固定部30を備えた構成とすることもできる。本実施形態では、固定部30は、長手方向中間部で緩衝体20のケース体17bに固定された帯状の面ファスナーであり、緩衝体20の上下2か所に設けられている。これらの固定部30を、フルハーネス13の背中側において上下方向に延びる部分に巻き付けて固定することで、第2接続部22においてフルハーネス13に吊り下げ保持されて装着されたショックアブソーバ1を、フルハーネス13に仮固定することができる。これにより、作業者11が作業を行う際に、ショックアブソーバ1が背中から跳ね上がることを防止することができる。
【0049】
なお、固定部30は、ケース体17bの背中側の面に固定されてフルハーネス13のみに巻き付けられる構成としてもよく、ケース体17bの表面側に固定されて緩衝体20とフルハーネス13とに一体に巻き付けられる構成としてもよい。
【0050】
固定部30として面ファスナーを用いることで、固定部30を低減することができる。なお、固定部30は、面ファスナーに限らず、例えばボタン、磁石、クリップ、フック等の他の部材を用いてフルハーネス13に仮固定する構成としてもよい。
【0051】
ショックアブソーバ1を構成する緩衝体20は、防火性を高めるための加工を施したもの、導電性繊維を混ぜるなど静電気対策となる加工を施したもの、塗料の塗布等の防汚性を高めるための加工を施したもの、防塵性(粉塵)を高めるための加工を施したもの、撥水性を高めるための加工を施したもの、防菌性、防臭性を高めるための加工を施したもの、とすることもできる。
【0052】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができる。
【0053】
例えば、緩衝体20を構成する緩衝ベルト23及びバイパスベルト25の畳み方は、
図5に示す畳み方に限らず、種々変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 フルハーネス用ショックアブソーバ
10 安全帯
11 作業者
12 胴体
13 フルハーネス
14 フック
15 ランヤード
16 接続部
17 巻取り器
17a 接続金具
17b ケース体
17c 脚部
18 携帯物品
20 緩衝体
21 第1接続部
21a 張り出し部
21b 脚部
21c 接続辺部
21d リブ
21e 窪み部
22 第2接続部
23 緩衝ベルト
24 カバー
25 バイパスベルト
26 ピン部材
27 ピン部材
28 緩衝ベルトの他端側
30 固定部