(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084052
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】地図データ作成システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/0969 20060101AFI20230609BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230609BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230609BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20230609BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20230609BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20230609BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G08G1/0969
G08G1/09 F
G08G1/00 D
G01C21/26 A
B60W40/02
G09B29/10 A
G09B29/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198153
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】田坂 駿
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB07
2C032HB11
2C032HB24
2C032HC08
2C032HD13
2C032HD26
2F129AA05
2F129BB02
2F129EE69
2F129FF20
2F129FF60
2F129HH02
2F129HH12
3D241BA15
3D241BA60
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC39Z
3D241DC41Z
3D241DC50Z
3D241DC59Z
3D241DD14Z
5H181AA01
5H181AA06
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF18
5H181FF22
5H181FF32
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】所望の地図データ作成を簡易に行える地図データ作成システムを提供すること。
【解決手段】地図データ作成システム100は、地図データの作成対象となる経路を走行する車両VEにおいて走行経路データを記録し、走行経路データに対応する経路の走行に際して、インフラ側通信部IMからランドマークデータを取得し、制御部50において、走行経路データとランドマークデータとに基づいて、自動走行用データを含む地図データを作成するものとなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路データを記録し、
前記走行経路データに対応する経路の走行に際して、インフラ側通信部からランドマークデータを取得し、
前記走行経路データと前記ランドマークデータとに基づいて、自動走行用データを含む地図データを作成する、地図データ作成システム。
【請求項2】
前記ランドマークデータは、I2V通信により、前記インフラ側通信部から前記走行経路データに対応する経路を走行する車両に対して送信される、請求項1に記載の地図データ作成システム。
【請求項3】
前記ランドマークデータとして、ランドマークの名称及び位置座標を含み、
前記ランドマークデータに示されるランドマークの名称を、前記走行経路データのうち該当する位置に自動入力する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の地図データ作成システム。
【請求項4】
前記ランドマークデータとして、交差点の位置又はバス停の名称の情報を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の地図データ作成システム。
【請求項5】
前記走行経路データに対応する経路を走行する車両に設けた車載側通信部により前記インフラ側通信部と通信して、前記ランドマークデータを自動取得する、請求項1~4のいずれか一項に記載の地図データ作成システム。
【請求項6】
事前に登録された前記インフラ側通信部の設置位置情報と、車載の自己位置推定部による位置推定とに基づき、前記車載側通信部による前記ランドマークデータの取得を行う、請求項5に記載の地図データ作成システム。
【請求項7】
前記走行経路データに対応する経路の走行に際して、前記車載側通信部と前記インフラ側通信部との間での通信エラー位置と、前記インフラ側通信部の不存在による前記ランドマークデータの取得不能位置とを記録する、請求項5及び6のいずれか一項に記載の地図データ作成システム。
【請求項8】
前記走行経路データに対応する経路の走行に際して、取得した前記ランドマークデータに対応するランドマークを車載の表示部により表示する、請求項1~7のいずれか一項に記載の地図データ作成システム。
【請求項9】
前記ランドマークデータとして、1つの前記インフラ側通信部に格納される複数のランドマークについての情報を取得する、請求項1~8のいずれか一項に記載の地図データ作成システム。
【請求項10】
前記走行経路データに対応する経路の走行後において、取得した前記ランドマークデータのうち、作成すべき地図データの範囲外に存在するランドマークの情報を除外する、請求項1~9のいずれか一項に記載の地図データ作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転車両の自律走行に適用する自動走行用データを含んだ地図データを作成する地図データ作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地図生成システムとして、計測装置を搭載した計測車両において、走行した道路周辺の3次元点群情報や、周辺を撮像した画像などを取得するもの(特許文献1)が知られている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、車両移動計測によってデータ取得を行っているため、例えば正確な交差点の位置やバス停の名称といった自動走行用のデータとして必要な情報の取得が不能な場合があり、例えばこれらのデータを逐一手入力で行わなくてはいけない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、所望の地図データ作成を簡易に行える地図データ作成システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための地図データ作成システムは、走行経路データを記録し、走行経路データに対応する経路の走行に際して、インフラ側通信部からランドマークデータを取得し、走行経路データとランドマークデータとに基づいて、自動走行用データを含む地図データを作成する。
【0007】
上記地図データ作成システムでは、経路を走行する際にインフラ側通信部から取得したランドマークについての情報を含むランドマークデータを利用することで、走行経路データから自動走行に適用可能な自動走行用データを含んだ地図データを作成するに際して、例えば手入力等による手間を省略又は低減できるので、所望の地図データ作成を簡易に行える。
【0008】
本発明の具体的な側面では、ランドマークデータは、I2V通信により、インフラ側通信部から走行経路データに対応する経路を走行する車両に対して送信される。この場合、車両を走行させながら、通信によりランドマークデータを取得していくことができる。
【0009】
本発明の別の側面では、ランドマークデータとして、ランドマークの名称及び位置座標を含み、ランドマークデータに示されるランドマークの名称を、走行経路データのうち該当する位置に自動入力する。この場合、簡易かつ迅速に所望の地図データ作成が行える。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、ランドマークデータとして、交差点の位置又はバス停の名称の情報を含む。この場合、自律走行を行う上で重要な情報を含んだ地図データの作成が可能になる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、走行経路データに対応する経路を走行する車両に設けた車載側通信部によりインフラ側通信部と通信して、ランドマークデータを自動取得する。この場合、車載側通信部とインフラ側通信部との間での通信により、地図データの作成に必要なランドマークデータの自動取得を的確に行える。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、事前に登録されたインフラ側通信部の設置位置情報と、車載の自己位置推定部による位置推定とに基づき、車載側通信部によるランドマークデータの取得を行う。この場合、車両側において、事前に登録された情報に基づき、インフラ側通信部の特定が可能になる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、走行経路データに対応する経路の走行に際して、車載側通信部とインフラ側通信部との間での通信エラー位置と、インフラ側通信部の不存在によるランドマークデータの取得不能位置とを記録する。この場合、ランドマークデータの取得ができなかった位置を把握できる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、走行経路データに対応する経路の走行に際して、取得したランドマークデータに対応するランドマークを車載の表示部により表示する。この場合、走行している車両の搭乗者が目視によりランドマークデータの取得について確認を行える。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、ランドマークデータとして、1つのインフラ側通信部に格納される複数のランドマークについての情報を取得する。この場合、より多くの情報を、1つのインフラ側通信部から取得できる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、走行経路データに対応する経路の走行後において、取得したランドマークデータのうち、作成すべき地図データの範囲外に存在するランドマークの情報を除外する。この場合、ノイズとなりうる情報が除去され、的確な状態の地図データが作成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る地図データ作成システムに関して説明するための概念図である。
【
図2】地図データ作成システムの一構成例について説明するためのブロック図である。
【
図3】作成された地図データを可視化した一例を示す画像図である。
【
図4】地図データ作成システムにより作成された地図データの応用例について説明するためのブロック図である。
【
図5】地図データ作成や作成した地図データの利用例を示す概念図である。
【
図6】一変形例の地図データ作成システムについて説明するためのブロック図である。
【
図7】(A)~(D)は、地図データの作成手順について示す概念図である。
【
図8】(A)及び(B)は、地図データ作成システムの動作と応用例の動作とについて一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】一変形例の地図データ作成システムにおける手動入力の受付の動作に関するフローチャートである。
【
図10】地図データ作成システムの概要を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1等を参照して、一実施形態に係る地図データ作成システムについて、一例を説明する。
図1として例示する概念図にあるように、本実施形態に係る地図データ作成システム100は、MMS(Mobile Mapping System:モービルマッピングシステム)により、各種センシングが可能な車両VEにおいて走行しながら周辺の測量を行って走行経路データを取得することで、地図の作成を行うシステムである。特に、本実施形態の地図データ作成システム100では、車載のシステムによる走行経路データの取得に加えて、自動運転に際して必要となるランドマークデータをインフラ側から取得するものとなっている。ここで、ランドマークデータには、ランドマークの名称及び位置座標が含まれている。より具体的には、ランドマークとしては、例えば交差点(交差点に設置されている信号機)やバス停(停留所)あるいは駐車場が想定され、交差点の位置やバス停の名称の情報がランドマークデータに相当する。自動運転に際して用いる情報としては、正確性が必要であり、特に、ランドマークの位置情報については、基準位置を示すピンポイントなものであることが望ましい。
【0019】
自動運転を可能とするための地図データを作成するには、例えばMMSを利用して走行経路について車載の装置により測量を行った結果としての走行経路データ、すなわち道路の形状や道路周辺の建造物の形状といった地物についての情報(データ)の取得だけでは足りず、走行経路データに対応した走行経路上に存在する交差点等のランドマークの位置や名称の情報、すなわちランドマークデータが必要となる。つまり、上記のような地図データとしては、走行経路データについて、その走行範囲に存在するランドマークデータを紐付けしたものが必要である。従来では、これらの情報の紐づけについては、例えばMMSによるデータ取得したものに対して、別途作成しておいたランドマークデータを手入力等によりMMSによるデータに組み入れる作業を行う必要があり、所望とするデータの作成には非常に手間が必要であった。
【0020】
一方、路側においては、I2V(Infrastructure to Vehicle)通信モジュールであるインフラ側通信部IM、すなわち、インフラ側から車両側へ情報を提供する設備の設置が進んでいる。具体的には、例えば図示のように、交差点の信号機SGであれば、インフラ側通信部IMは、該当する交差点及びその周辺における状況を監視するための設備となっており、インフラ側から車両側に対して、信号機SGの切替えタイミングや、交差点及びその周辺のうち死角となりやすい箇所についての監視結果等の情報を提供し、車両側に対して運転支援を行うことが可能なものとなっている。このため、インフラ側通信部IMは、設置されている交差点(信号機SG)及びその周辺に存在する他の交差点等のランドマークについて、位置や名称の情報を保有している。なお、インフラ側通信部IMは、交差点に設置されるものの他にも、例えば図示のように、バス停(停留所)STにおいてバスの発着を管理する設備によって構成されるといった場合もある。この場合も、インフラ側通信部IMは、I2V通信が可能となっており、管理するバス停ST及びその周辺に存在する他のランドマークについて、位置や名称の情報を保有している。特に、インフラ側通信部IMが有するこれらの情報は、予め正確に測定された結果が固定的に格納されたものであり、例えば都度現場において車両VEに搭載した測定器具を使った測定結果のように誤差の要素を含み得る情報に比べて極めて正確なものである。
【0021】
そこで、地図データ作成システム100では、MMSにより、走行した経路についての測量結果である走行経路データを取得しつつ、当該走行経路データに対応する走行範囲に存在するランドマークについてのランドマークデータを、I2V通信により、インフラ側通信部IMから取得し、これらのデータを自動入力で紐づけすることで、例えば手入力等によるランドマークデータの入力処理の手間を省略又は低減し、所望の地図データ作成を簡易に行えるようにしている。
【0022】
上記のようなデータ作成を可能とするため、地図データ作成システム100は、各種データを取得するための車側の設備として、MMSを構成すべく車両VEに設けた車載センサー10と、インフラ側との通信用の通信部30と、地図データ作成のための各種演算処理を行うための制御部50とを備える。一方、路側(インフラ側)の設備としては、インフラ側通信部IMが存在する。なお、インフラ側通信部IMは、地図データ作成システム100外の設備と考えることもできるが、インフラ側通信部IMまで含めて地図データ作成システム100が構成されていると捉えることもできる。
【0023】
車両VEのうち、通信部30は、車載センサー10で構成されたMMSによる走行経路データに対応する経路を走行する車両VEに設けた車載側通信部であり、通信部30によりインフラ側通信部IMと通信する。これにより、地図データ作成システム100において、車両VEは、ランドマークデータを自動取得する。つまり、通信部30がインフラ側通信部IMと通信することで、インフラ側通信部IMからランドマークデータを入手することが可能となっている。なお、通信部30とインフラ側通信部IMとの間での通信態様については、例えば必要となる通信内容等に応じて、種々のものが想定され、長距離での通信が可能な態様や公衆回線を利用すること等も考えられるが、例えば近距離無線通信を利用することも考えられる。
【0024】
また、既述のように、1つのインフラ側通信部IMには、複数のランドマークについてのデータを有している。したがって、上記のようなインフラ側通信部IMとの通信において、通信部30すなわち車両VEは、ランドマークデータとして、1つのインフラ側通信部IMに格納される複数のランドマークについての情報を取得する態様となる。
【0025】
車両VEは、車載センサー10として、例えば前後一対のレーザー計測機11f,11b、GNSS装置12、IMU(inertial measurement unit:慣性装置)13、カメラ14等を備え、これらによって走行する車両VEの周囲環境に関する各種情報が取得されることで、点群マップのデータ(点群データ)が生成され、さらには、走行経路データが生成される。なお、図の一例では、車載センサー10は、車両VEの上部において取付器具ATで固定した載置台BA上に構成要素であるこれらの各種機器を設けたものを示している。また、車載センサー10として、車両VEの車輪(図示の例では後軸車輪)側には、エンコーダENが設けられている。
【0026】
車両VEの走行に際して、車載センサー10の各部においてセンシングがなされることで、周囲の道路環境に関する種々の情報収集を行いつつ、車両VEの自己位置推定による位置情報も取得する。これにより、車両VEの走行とともに走行経路データを生成していくことが可能となる。より具体的には、車載センサー10を構成する各部は、車両VEの車内に設けた制御部50と有線又は無線で接続されており、センシングした各種情報が、制御部50に対して出力され、制御部50において演算処理がなされることで、高精度な3次元空間情報としての走行経路データが生成される。
【0027】
一方、車両VEの走行前、あるいは、走行中において、通信部30が通信可能な範囲にあるインフラ側通信部IMと通信することで、制御部50は、インフラ側通信部IMが保有するランドマークデータ、すなわちインフラ側通信部IM及びその周辺についての位置や名称の情報を取得できる。以上のように、ランドマークデータは、I2V通信により、インフラ側通信部IMから、走行経路データに対応する経路を走行する車両VEに対して送信される。
【0028】
なお、上記車側とインフラ側との間での通信態様について、車両VE側においてインフラ側通信部IMを常時検索し、車両VE側においてインフラ側通信部IMが検知された場合に、検知したインフラ側通信部IMとの通信を開始するものが考えられる。
【0029】
このほかの態様として、例えば車両VE(制御部50)側において、事前にインフラ側通信部IMの設置位置情報を登録しておき、事前に登録されたインフラ側通信部IMの設置位置情報に基づき、車側とインフラ側との間での通信がなされるものとしてもよい。つまり、車両VE側においてインフラ側通信部IMがどこにあるか予め分かっており、その地点に到達する前の通信可能範囲に到達した時点で情報収集がなされるようにしてもよい。この場合、例えば車両VEでは、事前に登録されたインフラ側通信部IMの設置位置情報と、車載のGNSS装置12等が自己位置推定部として機能することによる位置推定とに基づき、通信部(車載側通信部)30によるランドマークデータの取得が行われるようにすることができる。
【0030】
制御部50は、上記のような各種演算処理や、データ管理を行うべく、例えばCPUやストレージデバイス、あるいは各種回路等で構成されるものであり、例えばPC等を制御部50として機能させるべく採用することができる。PCで制御部50を構成する場合、ユーザー(利用者)としての車両VEの搭乗者による各種操作を受け付ける入力装置(キーボードやマウス、タッチパネル等)50kや、処理結果を出力表示する出力装置(ディスプレイ等)50dを有するものとすることができる。また、この場合、例えば車両VEが走行経路データに対応する経路を走行するに際して、取得したランドマークデータに対応するランドマークを車載の表示部としての出力装置50dにより表示することができる。また、走行中に必要に応じて、ユーザーによる操作を入力装置50kにおいて受け付けることも可能である。
【0031】
以下、
図2として示すブロック図等を参照して、地図データ作成システム100の一構成例について説明する。
【0032】
図示の一例では、地図データ作成システム100のうち、制御部50は、CPU等で構成される主要部としての地図データ作成部51と、ストレージデバイス等で構成される地図・経路データベース52とを有する。
【0033】
地図データ作成部51は、車両移動計測ツール51aと、ランドマークデータ解析ツール51bとを有する、あるいは、これらのものとして機能する。
【0034】
地図データ作成部51は、車載センサー10から出力される周囲の道路環境に関する種々の情報を受けるとともに、通信部30を介して路側装置(I2V)であるインフラ側通信部IMからランドマークデータを受け、これらに基づいて地図データを作成する。
【0035】
地図データ作成部51のうち、車両移動計測ツール51aは、車載センサー10からの情報に基づいて車両VEの移動について計測を行い、計測結果として走行経路データを生成する。
【0036】
地図データ作成部51のうち、ランドマークデータ解析ツール51bは、インフラ側通信部IMからのランドマークデータを解析して、車両移動計測ツール51aにより生成された走行経路データと紐づけ可能にする。
【0037】
地図データ作成部51は、以上のような車両移動計測ツール51a及びランドマークデータ解析ツール51bでの処理に基づき、自動運転に適用可能な地図データを作成する。
【0038】
地図・経路データベース52は、地図データ作成部51において作成された地図データや、走行経路データ等について格納する。
【0039】
以上のようにして作成された地図データは、自動運転車両に搭載されることで、自動運転車両による自律運転に際して、利用可能なものとなる。典型的一例としては、自動運転車両が路線バスである場合が想定される。この場合、まず、車載センサー10を備えた車両VEを該当するバスの路線の出発地点から終点に沿って走行させることで、地図データを作成し、作成された地図データを自動運転車両としての路線バスにおいて利用可能なものとする。
【0040】
図3は、車両VEの走行により作成された地図データを可視化したものの一例を示す画像図である。具体的に説明すると、まず、図データを可視化した画像データGIにおいて、走行経路TRが破線で示されており、ここでの一例では、車両VEを、バス路線に沿って配置された各バス停(停留所)STについて、バス停ST1→バス停ST2→バス停ST3の順に走行させる。また、図中には、インフラ側通信部(路側装置:I2V)IMや、インフラ側通信部IMとの通信の結果として取得されたランドマークデータに対応する信号機SGやバス停(停留所)STを画像化したものが示されている。また、走行経路TRに沿った走行に際して、車載センサー10で取得した各種情報に基づいて、走行経路TR及びその周辺を含む領域RDに存在する構造物等の地物についての各種データが点群マップのデータ(点群データ)等として取得される。すなわち、これらのデータが走行経路データを構成するものとなる。
【0041】
以上のような地図データが、例えば自動運転車両としての路線バスに搭載されることで、路線バスの自動運転(自律走行)が可能となるが、地図データの利用は、このような車側の情報としての利用に限らず、例えば自動運転車両(路線バス)の運転(運行)を管理する管制側において利用することも考えられる。路線バスの運行を管理する管制側においては、作成された地図データから、例えば監視用の画像データを作成することが考えられる。
【0042】
具体的には
図4として一例を示すブロック図にあるように、コンピューター等で構成される自動運転車両(路線バス)の運行管理部500のうち、まず、計測データデフォルメ化ツール510において、地図データ作成システム100から地図データを計測データとして受け、地図データに基づいて運行管理の対象となる区間についてデフォルメ化した地図画像のデータを作成する。次に、運行管理部500のうち、運行管理モニター520が、計測データデフォルメ化ツール510で作成された地図画像のデータを、映し出す。なお、以上の処理において、地図データ作成システム100からの地図データには、既述のように、各位置に対応したバス停の名称の情報が含まれた状態となっているため、計測データデフォルメ化ツール510での処理において、バス停の名称が付与された状態で地図画像のデータを作成することが簡易かつ迅速に行われる。
【0043】
以上について、まとめると、地図データ作成システム100では、
図5として概念図に示すように、走行経路データ(さらには点群データ)とランドマークデータとについての取得を走行に際して同時並行的に行うことが可能となっており、さらに、これらの紐づけが自動入力に行われることで、簡易かつ迅速に地図データが作成される。なお、図示では、地図データを可視化したものを示している。
【0044】
本実施形態の地図データ作成システム100は、以上のように、地図・経路データベース52に走行経路データを記録するものとなっており、さらに、記録をするために車両VEが走行経路データに対応する経路を走行するに際して、インフラ側通信部IMからランドマーク(交差点や停留所等)についての位置や名称の情報で構成されるランドマークデータを併せて取得するものとなっている。その上で、地図データ作成部51において、走行経路データとランドマークデータとに基づいて、自動走行用データを含む地図データが作成されている。以上により、地図データ作成システム100は、自動走行に適用可能な自動走行用データを含んだ地図データの作成を簡易に行えるものとなっている。
【0045】
また、作成された地図データについては、自動運転車両における自律走行のためのデータとしての利用のほか、種々の利用が可能であり、例えば自動運転車両を管理する管制において、地図データをデフォルメ化して、地図データに基づいて運行状況を示す監視用の画像データの作成が可能となる。
【0046】
以下、
図6として示すブロック図を参照して、一変形例の地図データ作成システムについて説明する。
図6は、
図4に対応する図であり、
図4の場合と比較して、ユーザー(利用者)の手動による入力(手入力)を受け付ける手動入力ボタン53を有している点において、
図4に示す一例と異なっている。
【0047】
例えば、車両VEが走行を予定している経路によっては、I2V通信が可能なインフラ側通信部IMが部分的に存在しておらず、ランドマークデータについての情報取得ができない箇所が存在するような場合も想定される。あるいは、何らかの原因で通信異常が発生する可能性もある。このような場合に、
図6に一例を示すような態様とする、すなわちユーザーの手動による入力を受け付け可能とすることで、対応可能としてもよい。なお、手動入力ボタン53については、例えば
図1のようにPCで制御部50を構成する場合における入力装置50kの一部を、手動入力ボタン53として機能させる態様とすることが考えられる。
【0048】
手動入力ボタン53の利用態様としては、例えば、名称等を記載すべきランドマーク(交差点や停留所)を、車両VEが到達した時点において、車両VEに登場するユーザー(搭乗者)が手動入力ボタン53を押すことで、制御部50により、押した時点での車両VEの位置(自己推定位置)をもって当該ランドマークの位置として記録がなされ、その後、当該時点(時刻)及び位置のランドマーク情報を手入力で書き込む態様とすることが考えられる。
【0049】
なお、この場合、手動入力ボタン53を押すタイミングや車両VEの通過位置によっては、インフラ側通信部IMからデータを取得する場合と比べて、位置情報についての正確さを若干欠く可能性があり、必要に応じて事後的に位置情報を修正するものとしてもよい。
【0050】
また、本変形例の場合も、先の一例と同様に、運行管理部500において、地図データに基づく運行管理のためにデフォルメ化した地図画像のデータ作成が可能である。
【0051】
以下、
図7(A)~
図7(D)として示す概念図を参照して、地図データの作成手順について一例を説明する。
図7(A)~
図7(D)は、地図データの作成のために取得される各種データを図面上に可視化したものを概念的に示したものであり、例えば車載の表示部である出力装置50d(
図1参照)において表示可能なものである。
【0052】
ここでは、
図3を参照して示した地図データを作成する手順について、一例を説明する。つまり、車両VEは、バス停(停留所)STについて、既定のバス路線(バスが走行可能な既定の経路)に沿って、バス停ST1→バス停ST2→バス停ST3の順に走行するものとする。この場合、車両VEが走行していくにしたがって、走行経路TRに沿って走行経路データが作成されていく。つまり、領域RDが拡大していくことになる。
【0053】
またここで、車両VEについては、有人による運転であるものとし、また、車両VEに搭載された制御部50には、手動入力ボタン53(入力装置50k)や、表示部(出力装置50d)が設けられているものとする。すなわち、ユーザーは、情報の取得状況を確認することや、必要に応じて操作をすること等が可能となっているものとする。このため、車両VEの搭乗者としては、運転手の他に、制御部50の操作等をするオペレーターがユーザーとして含まれるようにする、といった態様をとることが考えられる。
【0054】
図7(A)に示すように、ここでの一例では、まず、走行開始前の出発地点(バス停ST1の位置)において、車両VEとインフラ側通信部IMとの間での通信が可能となっており、予定している走行経路TR(
図7(D)参照)の周辺のランドマークデータのうち、各インフラ側通信部IMが有するものについて、事前に取得される。
【0055】
車両VEが走行を開始すると、
図7(B)に示すように、走行経路TRが進むにつれて走行経路データの領域RDも広がっていく。走行に際して、例えば取得すべきランドマーク(例えば交差点)のデータが取得できない場合には、手動入力ボタン53を押すことで、車両VEにおいて自己の現在位置座標が取得され、その場であるいは事後的に該当するランドマークのデータ入力が可能となる。
【0056】
車両VEが走行を続け、
図7(C)に示すように、目的地点(バス停ST3の位置)に到達すると、この時点で走行経路TRに対応する領域RDについての走行経路データが取得される。一方、ランドマークデータについては、
図7(C)において矢印に示す(3か所)ように、作成すべき地図データの範囲外に存在するランドマークに関するものも含まれている可能性がある。これは、各インフラ側通信部IMが有するランドマークデータには、走行経路TRから外れた位置にあるランドマークについてのデータも存在しうるためである。
【0057】
かかるランドマークデータが存在する場合、制御部50において、例えば領域RD外のものについて、事後的に除去することで、
図7(D)あるいは
図3に示すような地図データが作成される。
【0058】
以下、
図8(A)に示すフローチャートを参照して、上述した地図データ作成システム100の動作の詳細について一例を説明する。なお、ここでは、
図7を参照して説明した一例に対応する動作として説明する。
【0059】
地図データ作成システム100のうち、制御部50は、通信部30を介してのインフラ側通信部IMとの通信が可能となっているか否かを確認し(ステップS101)、通信可能である場合(ステップS101:Yes)、制御部50は、インフラ側通信部IMからランドマークデータを取得し(ステップS102)、
図7(A)に例示したように、取得結果を可視化したものとしての画像表示を、表示部としての出力装置50dにおいて行う(ステップS103)。
【0060】
インフラ側通信部IMとの通信に基づくランドマークデータの取得後(ステップS102,S103)、あるいは、ステップS101において通信不能であった場合(ステップS101:No)、車両VEの走行開始(バス停ST1からの出発)に応じて(ステップS104)、制御部50は、車両移動計測を開始する(ステップS105)。
【0061】
車両移動計測として、車載センサー10において各種情報が取得され、制御部50は、車載センサー10で取得した各種情報に基づいて、点群マップのデータや、さらには、走行経路データを生成する(ステップS106a)。
【0062】
一方、制御部50は、
図7(B)等を参照して説明したように、手動入力ボタン53(入力装置50k)において、ユーザーによる入力を受け付け、受け付けた場合に登録を行うランドマーク登録(半自動での登録)の処理がなされる(ステップS106b)。なお、ステップS106bの処理については、
図9を参照して後述する。
【0063】
以上のようにして、地図データを生成するための各種データが、取得あるいは生成されていく。
【0064】
制御部50は、上記車両移動計測の処理すなわち各種データの取得や生成の処理を、車両VEの走行終了(バス停ST3への到着)まで継続する(ステップS107)。
【0065】
車両VEによる走行経路データに対応する経路の走行終了後において、制御部50は、
図7(C)及び
図7(D)を参照して説明したように、取得あるいは生成された各種データのうち、ランドマークデータに含まれている地図データの対象外の位置についてのデータすなわち作成すべき地図データの範囲外に存在するランドマークの情報を除外する(ステップS108)。
【0066】
ステップS108によるデータの除外後、制御部50は、入力装置50kにおいて、ユーザーによる確認及び修正の操作を受け付ける(ステップS109)。すなわち、ユーザーは、出力装置50dに表示される各種情報から、生成された地図データにおいて修正すべき点があるか否かを確認し、必要に応じて修正がなされる。例えば、ステップS106bにおいては、既述のように、インフラ側通信部IMからデータを取得する場合と比べて、位置情報についての正確さを若干欠く可能性がある。この場合、位置情報を修正してもよい。
【0067】
ステップS109における確認及び修正が完了したことを受け付けると、制御部50は、地図データの内容を確定させ、確定した地図データを地図・経路データベース52に格納し(ステップS110)、一連の処理を終了する。
【0068】
以下、
図8(B)に示すフローチャートを参照して、上述した地図データ作成システム100により作成された地図データの応用に関する動作の詳細について一例を説明する。なお、ここでは、
図4や
図5を参照して説明した一例に対応する動作として説明する。
【0069】
まず、運行管理部500において、計測データデフォルメ化ツール510は、地図データ作成システム100で作成された地図データを取得すると、当該地図データに含まれている交差点位置・停留所位置の情報を整列させ(ステップS201)、これらの各種ランドマークをエッジで結合する(ステップS202)。以上により、
図5に例示したようなデフォルメ化された地図画像のデータ(管理用経路画像)がバス停の名称が付与された状態で、運行管理モニター520上に掲載することが可能になる。なお、運行管理部500は、上記処理の後、ユーザーによる確認及び修正の操作を受け付け(ステップS203)、当該確認及び修正が完了すると、一連の処理を終了する。
【0070】
以下、
図9を参照して、
図8(A)のステップS106bに示すランドマーク登録(手動を含む半自動での登録)の処理について補足する。
【0071】
まず、制御部50は、ユーザーによる手動入力ボタン53の押下があったか否かを確認し(ステップS301)、手動入力ボタン53の押下があった場合(ステップS301:Yes)、車両VEの現在位置座標を取得する(ステップS302)。車両VEの現在位置座標の算出については、種々の手法が考えられるが、例えばGNSS装置12を利用して車両VEの自己位置推定を行うことができる。
【0072】
ステップS302による車両VEの現在位置座標の取得がなされると、制御部50は、入力装置50kを介したユーザーによるランドマークの名称入力を受け付け(ステップS303)、受け付けた名称入力の内容をランドマークデータとして地図・経路データベース52の所定領域に格納(リストに追記)する(ステップS304)。以上により、手動入力によるランドマーク登録がなされる。
【0073】
ステップS301において、手動入力ボタン53の押下がない場合(ステップS301:No)には、特段の処理を行うことなく一連の処理が終わる。また、ステップS304におけるリストの追記後も、一連の処理が終わる。ただし、上記一連の動作は、車両VEの走行終了(バス停ST3への到着)まで繰り返される(
図7のステップS105~ステップS107)。つまり、一連の処理後、再びステップS301からの処理が繰り返されることになる。
【0074】
なお、上記
図7や
図8等を参照して説明した一例では、インフラ側通信部IMからのランドマークデータが走行開始前の出発地点で取得されるものとしているが、これに限らず、例えば走行中において、インフラ側通信部IMから走行先におけるランドマークデータを受けながら処理を行っていく、といった態様とすることも考えられる。例えば、作成すべき地図データの範囲が広いのに対して、車側と路側との間での通信可能範囲が限られている場合には、かかる態様となると考えられる。
【0075】
また、車両VEとインフラ側通信部IMとの間での通信に関する前提として、既述のように、車両VE側がインフラ側通信部IMの位置を事前には知らず常時車両側が検知を行う態様とすることも、位置を事前に知っていて適切なタイミングで通信を開始することもできる。事前に知っている場合には、例えば、車両VEが走行経路データに対応する経路の走行するに際して、通信部(車載側通信部)30とインフラ側通信部IMとの間での通信エラー位置と、インフラ側通信部IMの不存在によるランドマークデータの取得不能位置とを、制御部50において記録する態様とすることも考えられる。これにより、例えばランドマークデータの取得ができなかった位置を把握するようにし、修正対象箇所として記録しておくことができる。
【0076】
また、制御部におけるデータ処理に関しても、走行中はもっぱらデータ取得と取得の確認動作のみを行い、地図データの作成処理等については、走行終了後において事後的に行う態様とするといったことも考えられる。
【0077】
図10は、上述した地図データ作成システム100の構成や動作についての概要を示す概念図である。図示のように、また、既述のように、上述した地図データ作成システム100では、地図データの作成対象となる経路を走行する車両VEにおいて走行経路データを記録し、走行経路データに対応する経路の走行に際して(走行前あるいは走行中において)、インフラ側通信部IMからランドマークデータを取得し、制御部50において、走行経路データとランドマークデータとに基づいて、自動走行用データを含む地図データを作成するものとなっている。上記態様により、地図データ作成システム100では、経路を走行する際にインフラ側通信部IMから取得したランドマーク(交差点や停留所等)についての位置や名称の情報を含むランドマークデータを利用することで、走行経路データから自動走行に適用可能な自動走行用データを含んだ地図データを作成するに際して、例えば手入力等による手間を省略又は低減できる。すなわち、自動運転に必要となる所望の地図データ作成が簡易に行える。
【0078】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0079】
まず、上記では、自動運転車両の一例として、路線バスを例示したが、これに限らず、種々の自動運転車両について、作成した地図データを利用できる。
【0080】
また、上記では、ランドマークとして、交差点バス停(停留所)あるいは駐車場を例示したが、これらに限らず、他のランドマークについての情報が含まれるものとしてもよい。この場合、該当するランドマークの位置に車側への情報提供(I2V)用のインフラ側通信部IMが存在しなくても、例えば該当するランドマークの近隣に存在するインフラ側通信部IMが、該当するランドマークについてのランドマークデータを有することで、対応可能となる。
【0081】
また、作成した地図データの応用についても、上記のような交通管制のモニタでの利用のほかにも、例えばやバスの路線図の作成などに応用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10…車載センサー、11f,11b…レーザー計測機、12…GNSS装置、13…IMU(慣性装置)、14…カメラ、30…通信部(車載側通信部)、50…制御部、50d…出力装置(表示部)、50k…入力装置、51…地図データ作成部、51a…車両移動計測ツール、51b…ランドマークデータ解析ツール、52…地図・経路データベース、53…手動入力ボタン、100…地図データ作成システム、500…運行管理部、510…計測データデフォルメ化ツール、520…運行管理モニター、AT…取付器具、BA…載置台、EN…エンコーダ、GI…画像データ、IM…インフラ側通信部、RD…領域、SG…信号機、ST…バス停(停留所)、ST1-ST3…バス停、TR…走行経路、VE…車両