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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084063
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】炭化装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 47/34 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
C10B47/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022848
(22)【出願日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2021197729
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500427017
【氏名又は名称】伊藤レーシングサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 猛志郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炭化炉を備える炭化装置において、プラスチックやゴム等の樹脂を良好に炭化させることができるようにする。
【解決手段】炭化装置は、炭化炉と、少なくとも1つのボール43と、ボール駆動部46と、を備える。炭化炉は、対象物を炭化させるように構成される。ボール43は、炭化炉内に配置され、耐熱性を有するよう構成される。ボール駆動部46は、炭化炉内に配置され、ボールを持ち上げて炭化炉内に落下させるように構成される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を炭化させるように構成された炭化炉と、
前記炭化炉内に配置され、耐熱性を有するよう構成された少なくとも1つのボールと、
前記炭化炉内に配置され、前記ボールを持ち上げて前記炭化炉内に落下させるように構成されたボール駆動部と、
を備える炭化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化装置であって、
前記炭化炉は、水平方向に向く駆動軸を有し、内管及び外管を有するロータリキルンとして構成され、
前記内管及び前記外管の間の空間を第1空間、前記内管の内側の空間を第2空間として、前記第1空間は、前記炭化炉として機能するように構成され、
前記ボール駆動部は、前記第1空間において、前記対象物を前記ボールとともに前記ロータリキルンにおける上流側から下流側に送るとともに、前記第2空間において前記ボールを前記下流側から前記上流側に戻す
ように構成される炭化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の炭化装置であって、
前記対象物が投入されるように構成された投入部と、
前記投入部に投入された対象物が溶融され、該溶融された対象物の量を調整しつつ前記炭化炉に供給するように構成された調整部と、
をさらに備え、
前記調整部は、前記炭化炉内にて溶融している前記対象物による液面の高さが一定になるように、当該対象物を前記炭化炉に供給する
ように構成された炭化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の炭化装置であって、
前記炭化炉にて発生した可燃性ガスを燃焼させるように構成された燃焼部と、
前記燃焼部にて発生した排気を導入し、該排気に対してアルカリ溶液を噴射するように構成された噴射部と、
をさらに備える炭化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化炉を備える炭化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、ロータリキルンを用いて対象物を連続的に炭化させるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-059679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、プラスチックやゴム等の樹脂を対象物として炭化させる場合に、熱によって溶融した対象物が固化し、対象物が移動しにくくなるため、対象物を連続的に処理できないことがある。或いは、対象物を炭化させるために多大な時間を要することがある。
【0005】
本開示の1つの局面は、炭化炉を備える炭化装置において、プラスチックやゴム等の樹脂を良好に炭化させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、炭化装置であって、炭化炉と、少なくとも1つのボールと、ボール駆動部と、を備える。炭化炉は、対象物を炭化させるように構成される。ボールは、炭化炉内に配置され、耐熱性を有するよう構成される。ボール駆動部は、炭化炉内に配置され、ボールを持ち上げて炭化炉内に落下させるように構成される。
【0007】
このような構成によれば、炭化炉内で熱せられたボールは、実質的に炭化炉の表面積を広げる作用があり、表面に対象物が付着すると対象物の炭化を促進する。そして、炭化炉内においてボール駆動部が、耐熱性を有するボールを持ち上げ、落下させるので、ボールの表面に付着した対象物を良好に引き離すことができる。
【0008】
ここで、対象物がプラスチックやゴム等の樹脂材料である場合、対象物が溶融し、炭化炉内で固化することがある。しかし、本構成では、ボールに溶融した対象物が付着し、この状態で、ボール駆動部が、対象物が付着したボールを持ち上げ、炭化炉内に落下させるので、衝撃によりボールから対象物を引き離すことができる。
【0009】
その後、炭化が進んだ対象物は、ボールから引き離された状態で取り出すことができる。よって、炭化炉を備える炭化装置において、プラスチックやゴム等の樹脂を良好に炭化させることができる。
【0010】
本開示の一態様では、炭化炉は、水平方向(略水平方向を含む)に向く駆動軸を有し、内管及び外管を有するロータリキルンとして構成されてもよい。内管及び外管の間の空間を第1空間、内管の内側の空間を第2空間として、第1空間は、炭化炉として機能するように構成されてもよい。ボール駆動部は、第1空間において、対象物をボールとともにロータリキルンにおける上流側から下流側に送るとともに、第2空間においてボールを下流側から上流側に戻してもよい。
このような構成によれば、ロータリキルン内の第1空間で上流側から下流側に向けてボールを用いて対象物を搬送し、第2空間を用いてボールを上流側に戻すことができる。
【0011】
本開示の一態様は、投入部と、調整部と、をさらに備えてもよい。投入部には、対象物が投入されるように構成される。調整部では、投入部に投入された対象物が溶融される。
【0012】
調整部は、溶融された対象物の量を調整しつつ炭化炉に供給し、この際、炭化炉内にて溶融している対象物による液面の高さが一定(略一定を含む)になるように、対象物を炭化炉に供給するように構成される。
このような構成によれば、炭化炉内の対象物の量が概ね一定になるように調整しながら供給することができる。
【0013】
本開示の一態様は、燃焼部と、噴射部と、をさらに備えてもよい。燃焼部は、炭化炉にて発生した可燃性ガスを燃焼させるように構成される。噴射部は、燃焼部にて発生した排気を導入し、排気に対してアルカリ溶液を噴射(噴霧)するように構成される。
【0014】
このような構成によれば、噴射部が、燃焼部にて発生した排気に対してアルカリ溶液を噴射するので、排気を急速に冷却することができる。また、酸性になりがちな排気をアルカリ溶液で中和するので、噴射部よりも排気流路の下流側に位置する部材の腐食等を抑制し、保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】炭化炉の正面斜視図である。
図2】炭化炉の内部構成を示す正面斜視図である。
図3】炭化炉の一部構成を省略した正面図である。
図4】炭化炉の一部構成を省略した右側面図である。
図5】炭化炉の一部構成を省略した左側面図である。
図6】ロータリキルンの斜視図である。
図7】ロータリキルンの正面図である。
図8】ロータリキルンの一部構成を省略した斜視図である。
図9】ロータリキルンの右端面図である。
図10】ロータリキルンの内管の斜視図である。
図11図10における拡大図である。
図12】ロータリキルンの内管の内部を示す透視図(入口側)である。
図13】ロータリキルンの内管の内部を示す透視図(出口側)である。
図14】送りアームの説明図である。
図15】溶融材料量調整器においてバルブが閉じた状態を示す正面端面図である。
図16】溶融材料量調整器においてバルブが開いた状態を示す正面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.概要]
図1から図16に示す本開示の一態様の炭化装置1は、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度に設定される炭化炉にて、対象物を炭化させる機能を有する装置である。なお、各図においては一部構成の記載を省略している場合がある点に留意されたい。
【0017】
炭化させる対象物としては、例えば、木材、ウッドチップ、廃プラスチック等を採用できる。特に本開示の構成では、対象物として、廃プラスチック、ゴム製品等の樹脂材料を良好に炭化させることができる。
【0018】
図1から図5に示すように、炭化装置1では、投入部10(投入口11)から対象物が投入されると、対象物は、材料供給装置20、溶融材料量調整器30(本開示の調整部)、ロータリキルン40(本開示の炭化炉)を経て、炭化物に遷移する。その後、この炭化物は、図2に示すように、排出口51、炭化送り装置52、排出部53を経て、炭化物出口54から排出される。
【0019】
なお、炭化送り装置52では、炭化物を搬送するプロペラ等の機構が内部に配置されており、プロペラ等の機構が排出モータ52Aによって駆動されることで、炭化物が排出口51から炭化物出口54まで送られる。
【0020】
ロータリキルン40では、対象物から可燃性ガスが発生する。可燃性ガスは、蒸発ガス燃焼部70(本開示の燃焼部)にて燃焼され、この燃焼熱がロータリキルン40の加温に利用される。蒸発ガス燃焼部70による燃焼後のガスである排気は、中和急冷タンク61、ラジエタ62、冷却ファン63、冷却熱交換器64A,64B、を備える冷却部60にて冷却され、その後、無害な気体の状態で大気に放出される。
【0021】
なお、冷却部60にて生じる結露水は、結露水冷却タンク81、及び結露水回収タンク82にて、冷却及び無害化される。結露水回収タンク82は、牡蠣殻等の中和剤、及び水が内部に収容された水槽であり、酸性の結露水が中和及び浄化され、無害化される。
【0022】
[1-2.ロータリキルン40]
ロータリキルン40は、炭化炉として構成される。ロータリキルン40を、以下、炭化炉とも呼ぶ。図6に示すように、内管41及び外管42(本管)を有する。外管42は炭化装置1本体に対して固定配置される。つまり、外管42は内管41とは異なり回転しない。図9に示すように、内管41及び外管42の間の空間を第1空間42A、内管41の内側の空間を第2空間41Aとして、第1空間42Aが、炭化炉として機能する。ロータリキルン40は、複数のボール43、複数の送りアーム44を備える。ロータリキルン40は、図6等に示すキルンモータ45によって回転駆動される。キルンモータ45及び送りアーム44は、ボール駆動部46(図7参照)を構成する。ボール駆動部46は、ボール43を持ち上げて炭化炉内に落下させる機能を備える。
【0023】
第1空間42Aには、図8等に示すように複数のボール43が配置される。複数のボール43は、例えば、鉄、SUS、セラミック等の耐熱性を有する素材で構成される。複数のボール43としては、例えば、直径約35mmの鉄球が約150個程度備えられる。ロータリキルン40は、略水平方向に延びるように配置され、炭化炉として機能する内部の長さは約3mである。複数のボール43は、例えば、後述する送りアーム44の数の同数と、アームの数の半分の数とを加算した数だけ備えられる。アームの数の半分の数のボール43は、例えば、内管41内に位置するように構成される。
【0024】
ロータリキルン40は、図8に示すように、内管41に多数(複数)の送りアーム44を備える。内管41は、キルンモータ45によって回転駆動される駆動軸47(回転軸)として機能し、多数の送りアーム44は、内管41と一体になって内管41回りを回転する。
【0025】
複数の送りアーム44は、図7図9に示すように、第1空間42Aにおいて多数配置される。複数の送りアーム44は、駆動軸47を中心とした回転に伴って、複数のボール43を真下から45deg以上90deg以下程度の範囲内となる高さまで持ち上げ、自然に落下させる機能を備える。送りアーム44は、図14に示すように、炭化炉において内管41側から外管42側に、外管42付近まで延びる支柱部48と、支柱部48の外管42側の端部(図14では下端)から炭化炉の下流方向(図14では左側)に突出する顎部49と、を備える。
【0026】
顎部49は、ボール43の形状に沿った曲面部49Aであってボール43の下部が嵌った状態で支持する曲面部49Aを有する。送りアーム44は、駆動軸47を中心として回転させられると、この曲面部49Aにボール43を引っ掛けた状態でボール43を持ち上げる。曲面部49Aは、曲面部49Aから落下するボール43が支柱部48に接触し、ボール43が炭化炉の下流側(図14では左奥側)に落下するように構成される。
【0027】
この作用を実現するために、支柱部48と顎部49との接続部分では、曲面部49Aの上流側(図14では右側)の端部が、支柱部48における下流側(図14では左側)の端部よりも、上流側に位置するように構成される。なお、炭化炉の下流側を「送り方向」(図6等参照)と図示する。
【0028】
ロータリキルン40は、図6に示すように、内管41の最も下流側に、ボール回収アーム50を備える。ボール回収アーム50は、排出口51を越えて下流側に移動したボール43を内管41の内部に回収するための部材である。なお、排出口51は、炭化された対象物である炭化物を炭化炉から排出するための部位であり、炭化物のみが排出され、ボール43が排出されないように、ボール43よりも細かい網目状の部材を備える。
【0029】
内管41の下流側の端部には、図10から図12に示すように、ボール回収口55が備えられる。ボール回収口55は、ボール回収アーム50の内管41側の端部付近に設けられたボール43よりもやや大きな穴であって、内管41の内外を連通する穴である。
【0030】
ボール43は、図11に示すように、炭化炉の上流側の端部にて、ボール回収アーム50に載せられ、図12に示すように、ボール回収口55から内管41の内部に取り込まれる。
内管41の内部には、図12に示すように、送り螺旋部56を備える。送り螺旋部56は、内管41の内壁に沿って配置されるコイル状に形成された部材である。この構成では、キルンモータ45が駆動軸47を右方向に回転させると、内管41内のボール43が送り螺旋部56に押されて上流側(図12示す「回収方向」側)に移動するように構成される。
【0031】
内管41の上流側(回収方向側)の端部には、図13に示すように、ボール出口57が備えられる。ボール出口57は、ボール43よりもやや大きな穴であって、内管41の内外を連通する穴である。送り螺旋部56によって内管41の上流側の端部まで搬送されたボール43は、ボール出口57から炭化炉内に戻される。
【0032】
ロータリキルン40では、概ね45分間程度でボール43が上流側の端部から下流側の端部まで移動するように設定される。換言すれば、炭化炉内で対象物が炭化するまでに要する時間である炭化時間は約45分間である。ボール43を備えない構成での炭化炉では、炭化時間が約8時間程度も要する場合があったため、本構成では、大幅な時間短縮を達成できた。
【0033】
ロータリキルン40での約3mの工程において、概ね上流側1mでは、対象物は溶融した状態であり、粘度が低く流動性が高い状態である。この間で、対象物はボール43の表面で加熱され、一部が蒸発し、可燃性ガスとなる。
【0034】
次の1mでは、対象物の加熱及び蒸発が進行し、対象物はかなり粘度が高い状態となり、やがて固体に近い状態になる。この際、対象物の内部には、対象物から生じたガス等の気泡が含まれうる。最後の1mでは、対象物はボール43表面で固化し、対象物に気泡を含む場合、対象物の内部に気泡が閉じ込められた状態で炭化する。炭化した対象物は、ボール43の落下によって粉砕され、ボール43から剥離される。粉砕された炭化物は、排出口51から排出される。排出された炭化物は、内部に気泡を含む場合、軽石のように、非常に密度が低く軽量であるという特徴がある。この場合の炭化物は、活性炭に近い性質を有すると考えられる。一方で、炭化物が分離した状態のボール43は、ボール回収アーム50によって回収される。
【0035】
[1-3.投入部10、及び溶融材料量調整器30]
投入部10(図1図2参照)は、投入口11を有する投入ガイド部12を備える。投入ガイド部12は投入口11を取り囲み、投入された対象物を材料供給装置20に導く経路を形成する部材である。投入口11に対象物が投入されると、その対象物が材料供給装置20によって溶融材料量調整器30に搬送される。材料供給装置20は、炭化炉と平行に配置された筒状の部材を備えて構成され、内部に配置されたプロペラ(図示省略)によって、対象物は投入部10から溶融材料量調整器30に搬送される。プロペラは、投入モータ21によって駆動される。材料供給装置20は、二重管構造であり、図3に示すように、内管13は、対象物が通過する内管13の内側が加温されすぎないように、内管13と外管14との間にて循環する冷却液によって水冷されるように構成される。
【0036】
溶融材料量調整器30では、投入された対象物が溶融される。なお、図15及び図16は、ロータリキルン40の長手方向に沿って溶融材料量調整器30を仮想的に切断した状態での溶融材料量調整器30の端面図である。
【0037】
溶融材料量調整器30は、溶融された対象物の量を調整しつつ炭化炉に供給し、この際、炭化炉内にて溶融している対象物による液面の高さが一定になるように、対象物を炭化炉に供給するように構成される。
【0038】
具体的には、溶融材料量調整器30は、天井31部分に配置された支点を中心に駆動するリンク機構32を備える。リンク機構32は吊り下げ式の天秤状に構成され、天秤の左右に、栓として機能するボール部33とフロート34とがそれぞれ吊り下げられている。
【0039】
溶融材料量調整器30の内部空間は、第1空間30Aと、第2空間30Bと、第3空間30Cとに区分される。第1空間30Aは、上部から対象物が落下投入される空間であって、図15図16での最も左側の空間である。第1空間30Aと第2空間30Bとは、下部で連通し、上部は第1隔壁35Aによって隔てられる。第1空間30Aに投入される対象物は、第1空間30A内で溶融する。
【0040】
第2空間30Bは、溶融した対象物が一時的に貯留される空間である。第2空間30Bの上部には、第3空間30Cとの間を上下に仕切る第2隔壁35Bが配置され、第2隔壁35Bには、ボール部33によって開閉される開閉部36が配置される。また、第2空間30Bと第3空間30Cとは、鉛直方向に延びる第3隔壁によって隔てられる。
【0041】
リンク機構32、ボール部33、及びフロート34は、第3空間30Cにて配置される。フロート34は、第3空間30C内の液面の高さに応じて上下に移動するように構成され、ボール部33は、フロート34の上下動に反するように上下に移動するように構成される。第3空間30Cと炭化炉の内部とは水平方向にて接続されており、第3空間30C内の液面の高さは、炭化炉の上流側端部における液面の高さと概ね等しくなるように構成される。
【0042】
図15では、フロート34が上昇することでボール部33が下降して、ボール部33が開閉部36に接触し、開閉部36を閉じている状態を示している。つまり、第3空間30C内の液面の高さが高い状態になると、対象物の供給が停止される。
【0043】
図16では、フロート34が下降することでボール部33が上昇して、ボール部33が開閉部36から離れ、開閉部36が開かれた状態を示している。つまり、第3空間30C内の液面の高さが低い状態になると、ボール部33と開閉部36との間の隙間から対象物が供給される。
【0044】
このような構成によって、炭化炉内にて溶融している対象物による液面の高さが一定になるように、対象物を炭化炉に供給することができる。
[1-4.ガスの流れ]
図2に示すように、炭化炉内で発生する可燃性ガスは、炭化炉と蒸発ガス燃焼部70とを連通する流路を有する連通部71を通じて蒸発ガス燃焼部70に導入される。
【0045】
蒸発ガス燃焼部70は、炭化炉の下部において炭化炉と平行に配置され、外部供給される燃料ガス、及び炭化炉で発生する可燃性ガスを燃焼可能に構成される。蒸発ガス燃焼部70は、排気の出口が炭化炉の排出口51付近となるように設定される。つまり、炭化炉は、下流側が上流側より高温になるように構成される。
【0046】
炭化装置1において、蒸発ガス燃焼部70とロータリキルン40とが配置された空間を表す高温空間は、断熱材パネル77,78(図2図4参照)等によって密閉されている。この構成では、蒸発ガス燃焼部70から炭化炉の排出口51付近に排出された排気が大気に漏れることがないよう構成される。また、断熱材パネル77,78等の任意の断熱材によって、作業者等の者が炭化装置1に触れても火傷することなく安全であるように配慮されている。
【0047】
高温空間内の排気は、炭化炉を加温するために利用され、その後、図3に示す、排気口72、安全弁73、蒸発タンク74、中和急冷タンク61(本開示での噴射部)、図2に示す、冷却熱交換器64A,64B(水冷方式)、ブロア75を経て、大気に放出される。
【0048】
ここで、中和急冷タンク61は、排気を導入し、排気に対してアルカリ溶液を噴射(噴霧)するように構成される。中和急冷タンク61は、アルカリ溶液を噴射する少なくとも1つの噴射ノズル65を備える。噴射ノズル65には、適量の苛性ソーダを含むアルカリ溶液が供給される。
【0049】
[1-5.結露水の流れ]
排気に含まれる水蒸気は、冷却過程で結露水となる。中和急冷タンク61での廃液(使用済みのアルカリ溶液に結露水が混ざった液体)は、図1に示す結露水冷却タンク81にて冷却され、結露水回収タンク82に導入される。冷却熱交換器64A,64Bでの結露水は、結露水回収タンク82に導入される。
【0050】
結露水回収タンク82内で処理後の溶液は、アルカリ化浄化タンク(図示省略)にて適量の苛性ソーダが添加されることでアルカリ溶液となり、その後、高圧ポンプ66を経て、中和急冷タンク61の噴射ノズル65から噴射される。つまり、廃液の一部は再利用される。
【0051】
なお、結露水回収タンク82内で処理後の溶液のうちの一部は、蒸発タンク74に導入され、排気の熱を利用して気化され、大気に放出される。
[1-6.運転例]
炭化装置1の運転例を説明する。
【0052】
まず、炭化装置1におけるブロア75、冷却水等の水ポンプ67(図3参照)、冷却ファン63を作動させる。
続いて、蒸発ガス燃焼部70が備えるバーナ76(図4参照)を用いて、炭化炉周囲の温度を800℃以上にする。なお、バーナ76の燃焼には外部供給される燃料ガス等を用いる。
【0053】
続いて、作業者が投入口11に対象物を投入する。
続いて、材料供給装置20の内部温度が、所定の温度になるまで待機する。
続いて、材料供給装置20を作動させ、対象物を溶融材料量調整器30に投入する。溶融材料量調整器30にて対象物が溶融される。
【0054】
続いて、炭化炉に備えられた複数の温度計が所定温度以上になれば、炭化炉のキルンモータ45を作動し、炭化炉での炭化を開始する。
【0055】
[1-7.効果]
炭化装置1の構成によれば、炭化炉内で熱せられたボール43は、実質的に炭化炉の表面積を広げる作用があり、表面に対象物が付着すると対象物の炭化を促進する。この際、対象物によっては多孔質の炭化物を生成することができる。そして、炭化炉内においてボール駆動部46が、耐熱性を有するボール43を持ち上げ、落下させるので、ボール43の表面に付着した対象物を良好に引き離すことができる。
【0056】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0057】
(2a)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0058】
(2b)上述した炭化装置1の他、当該炭化装置1を構成要素とするシステム、炭化方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1…炭化装置、10…投入部、20…材料供給装置、30…溶融材料量調整器、30A…第1空間、30B…第2空間、30C…第3空間、32…リンク機構、33…ボール部、34…フロート、36…開閉部、40…ロータリキルン、41…内管、41A…第2空間、42…外管、42A…第1空間、43…ボール、44…送りアーム、45…キルンモータ、46…ボール駆動部、47…駆動軸、48…支柱部、49…顎部、49A…曲面部、50…ボール回収アーム、51…排出口、52…炭化送り装置、53…排出部、54…炭化物出口、55…排出モータ、55…ボール回収口、56…送り螺旋部、57…ボール出口、60…冷却部、70…蒸発ガス燃焼部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16