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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084168
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】電力変換装置のゲート駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/16 20060101AFI20230612BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H03K17/16 M
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198178
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 隼
(72)【発明者】
【氏名】林 孝則
(72)【発明者】
【氏名】滝口 昌司
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM03
5H740NN03
5H740NN08
5J055AX26
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX09
5J055DX61
5J055EY13
5J055EZ62
5J055FX05
5J055FX13
5J055FX34
5J055GX02
(57)【要約】
【課題】アクティブクランプ回路の温度変化に応じて、サージによる定格電圧超過の抑制とスイッチング損失低減を両立できる電力変換装置のゲート駆動装置を提供する。
【解決手段】半導体スイッチング素子10のサージ電圧を抑制するアクティブクランプ回路3を備えた電力変換装置のゲート駆動装置において、アクティブクランプ回路3の検出温度の変化を測定し、測定した温度変化量から、半導体スイッチング素子10のゲート駆動力の調整量を計算する制御器4と、制御器4で計算されたゲート駆動力の調整量に基づいて、ゲート駆動力を調整するためのパラメータを決定する閾値設定部5と、閾値設定部5で決定されたパラメータに応じて前記半導体スイッチング素子10のゲート駆動力を調整する駆動力調整部6と、を備えた。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子のサージ電圧を抑制するアクティブクランプ回路を備えた電力変換装置のゲート駆動装置において、
前記アクティブクランプ回路の検出温度の変化を測定し、測定した温度変化量から、半導体スイッチング素子のゲート駆動力の調整量を計算する制御器と、
前記制御器で計算されたゲート駆動力の調整量に基づいて、ゲート駆動力を調整するためのパラメータを決定する閾値設定部と、
前記閾値設定部で決定されたパラメータに応じて前記半導体スイッチング素子のゲート駆動力を調整する駆動力調整部と、を備えたことを特徴とする電力変換装置のゲート駆動装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記アクティブクランプ回路の検出温度の今回値から前回値を減算した減算出力が、正のときはアップカウントを行い負のときはダウンカウントを行うカウンタを備え、
前記閾値設定部は、指令値との比較によりゲートオン、オフ信号を生成するキャリア信号の山と谷を参照して前記半導体スイッチング素子のスイッチング期間を調べ、前記カウンタのカウント出力値に応じて、半導体スイッチング素子の非スイッチング期間で切り替えるゲートの抵抗値又はキャパシタ値を指定するパラメータを決定し、
前記駆動力調整部は、前記半導体スイッチング素子のゲートの抵抗値又はキャパシタ値を、前記閾値設定部により決定されたパラメータで指定されるゲートの抵抗値又はキャパシタ値に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置のゲート駆動装置。
【請求項3】
前記制御器は、前記アクティブクランプ回路の検出温度の今回値から前回値を減算した減算出力が、正のときはアップカウントを行い負のときはダウンカウントを行うカウンタを備え、
前記閾値設定部は、前記カウンタのカウント出力値に応じて、前記半導体スイッチング素子のゲートを駆動するゲートドライバの出力振幅を指定するパラメータを決定し、
前記駆動力調整部は、前記ゲートドライバと半導体スイッチング素子の間に接続された、ゲート電圧供給用の複数の電源を有した振幅調整器を備え、該振幅調整器によって、ゲートドライバの出力振幅を、前記閾値設定部により決定されたパラメータで指定される出力振幅に調整することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置のゲート駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブクランプ回路を備えた電力変換装置のゲート駆動装置に係り、半導体デバイスのサージ電圧とスイッチング損失の低減を両立する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置では、半導体スイッチング素子の過電圧破壊または熱破壊を防止するために、半導体スイッチング素子のスイッチングにより発生するサージ電圧および損失が許容値以下になるようゲート駆動回路を設計する必要がある。
【0003】
スイッチング速度に対してスイッチング損失とサージ電圧はトレードオフの関係である。さらに、半導体スイッチング素子が遮断する電流の大きさによって、サージ電圧の大きさが変化するため、想定する負荷上条件においてサージ電圧が半導体スイッチング素子の定格電圧以下になるようにゲート駆動回路のパラメータを調節している。
【0004】
尚、従来アクティブクランプ回路を接続してサージ電圧を抑制する手法は、例えば特許文献1に開示され、電力変換装置の駆動中にゲート駆動回路の駆動力を調整するアクティブゲート方式は例えば非特許文献1に開示されている。
【0005】
また、本発明に関連する、ゲートドライバの出力振幅を調整する回路構成は例えば非特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H.Obara,K.Wada,K.Miyazaki,M.Takamiya and T.Sakurai,“Active Gate Control in Half-Bridge Inverters Using Programmable Gate Driver ICs toImprove Both Surage Voltage and Converter Efficiency”,in IEEE Transactions on Industry Applications,vol.54,no.5,pp.4603-4611,Sept.-Oct.2018,doi:10.1109/TIA.2018.2835812.
【非特許文献2】N.Idir,R.Bausiere and J.J.Franchaud.“Active gate voltage Control of Turn-on di/dt and Turn-off dv/dt in insulated Gate transistors”,in IEEE Transactions on Power Electronics,vol.21.no.4,pp.849-855,July 2006
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-135884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のようにアクティブクランプ回路を接続することで、サージ電圧を抑制する手法は、定常的にサージ電圧が定格電圧を超える条件ではアクティブクランプ回路が破壊するという問題点がある。
【0009】
一方、非特許文献1に示すような電力変換装置の駆動中にゲート駆動回路の駆動力を調整するアクティブゲート方式では、負荷条件ごとにサージ電圧を耐圧以下にしつつ、スイッチング損失の低減を実現している。しかし、サージ電圧が耐圧以上にならないように事前にゲート駆動回路の駆動力の調整パターンを予め決める必要がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、アクティブクランプ回路の温度変化に応じて、サージによる定格電圧超過の抑制とスイッチング損失低減を両立できる電力変換装置のゲート駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1に記載の電力変換装置のゲート駆動装置は、
半導体スイッチング素子のサージ電圧を抑制するアクティブクランプ回路を備えた電力変換装置のゲート駆動装置において、
前記アクティブクランプ回路の検出温度の変化を測定し、測定した温度変化量から、半導体スイッチング素子のゲート駆動力の調整量を計算する制御器と、
前記制御器で計算されたゲート駆動力の調整量に基づいて、ゲート駆動力を調整するためのパラメータを決定する閾値設定部と、
前記閾値設定部で決定されたパラメータに応じて前記半導体スイッチング素子のゲート駆動力を調整する駆動力調整部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の電力変換装置のゲート駆動装置は、請求項1において、
前記制御器は、前記アクティブクランプ回路の検出温度の今回値から前回値を減算した減算出力が、正のときはアップカウントを行い負のときはダウンカウントを行うカウンタを備え、
前記閾値設定部は、指令値との比較によりゲートオン、オフ信号を生成するキャリア信号の山と谷を参照して前記半導体スイッチング素子のスイッチング期間を調べ、前記カウンタのカウント出力値に応じて、半導体スイッチング素子の非スイッチング期間で切り替えるゲートの抵抗値又はキャパシタ値を指定するパラメータを決定し、
前記駆動力調整部は、前記半導体スイッチング素子のゲートの抵抗値又はキャパシタ値を、前記閾値設定部により決定されたパラメータで指定されるゲートの抵抗値又はキャパシタ値に切り替えることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の電力変換装置のゲート駆動装置は、請求項1において、
前記制御器は、前記アクティブクランプ回路の検出温度の今回値から前回値を減算した減算出力が、正のときはアップカウントを行い負のときはダウンカウントを行うカウンタを備え、
前記閾値設定部は、前記カウンタのカウント出力値に応じて、前記半導体スイッチング素子のゲートを駆動するゲートドライバの出力振幅を指定するパラメータを決定し、
前記駆動力調整部は、前記ゲートドライバと半導体スイッチング素子の間に接続された、ゲート電圧供給用の複数の電源を有した振幅調整器を備え、該振幅調整器によって、ゲートドライバの出力振幅を、前記閾値設定部により決定されたパラメータで指定される出力振幅に調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電力変換装置の駆動条件に関係なくサージ電圧制御とスイッチング損失の低減を両立することができる。
【0015】
例えば、アクティブクランプ回路が動作しておらずアクティブクランプ回路の温度が上昇していない場合、ゲート駆動力を増加させることでスイッチング損失が低減される。また、アクティブクランプの動作によりアクティブクランプ回路の温度が上昇した場合、ゲート駆動力を低下させることでサージ電圧が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】アクティブクランプを用いたゲートドライブ回路の構成図。
図2】アクティブゲート方式の説明図。
図3】本実施形態例のゲートドライブ回路の概略図。
図4】本発明の実施例1のゲートドライブ回路図。
図5】本発明の実施例1における閾値設定部および制御器の構成図。
図6】本発明の実施例2のゲートドライブ回路図。
図7】本発明の実施例2における振幅調整部および制御器の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。図1は、アクティブクランプを用いたゲートドライブシステムの構成を示し、1は、コントローラ内で電圧指令とキャリア信号の比較により決定されるゲートオン、ゲートオフ信号(ON,OFF信号)によって電力変換装置の半導体スイッチング素子10のゲートを駆動するゲートドライバである。
【0018】
尚、キャリア信号とは、電力変換装置内の半導体スイッチング素子のオン、オフ指令信号を決めるために用いる、山と谷がある三角波状の制御信号である。電力変換装置が正弦波状の電圧または電流を出力するインバータの場合、キャリアと正弦波状の制御信号との比較に基づいて、各半導体スイッチング素子のオン、オフ指令信号(ON,OFF信号)が決定されてゲート駆動回路(ゲートドライバ1)に入力される。
【0019】
ゲートドライバ1の出力側はゲート抵抗2(又は図示省略のキャパシタ)を介して半導体スイッチング素子10のゲートに接続されている。図示の半導体スイッチング素子10は、例えばブリッジ接続される複数の素子のうち1個を表しており、例えばIGBTで構成されている。
【0020】
ゲートドライバ1は半導体スイッチング素子10のゲート容量を充放電することでスイッチングを行っている。
【0021】
ゲート駆動回路の駆動力は、ゲート抵抗2(又は図示省略のキャパシタ)の値やゲート電圧を変更することで調整される。
【0022】
3は、半導体スイッチング素子10のコレクタ-ゲート間に接続されたアクティブクランプ回路でありダイオードを備えている。半導体スイッチング素子10のサージ電圧がアクティブクランプ回路3のダイオードの降伏電圧を超えると、該ダイオードがオンし、半導体スイッチング素子10の電圧をダイオードの電圧と略同じ値にクランプし、素子10の過電圧破壊を抑制する。
【0023】
尚、アクティブクランプ回路3のダイオードは、アバランシェダイオードやツェナーダイオードを用いる。
【0024】
図1のアクティブクランプ方式を用いたゲートドライブ回路では、アクティブクランプ回路3のツェナーダイオードの降伏電圧以上になると、半導体スイッチング素子10のゲートに電流を流す。降伏電圧を半導体スイッチング素子10の耐圧以下に設計することでサージ電圧によるスイッチング素子の破壊を防ぐ。
【0025】
しかし、定常的なサージ電圧が発生した場合、アクティブクランプ回路3が損失により熱破壊してしまう。そのため、過電流時や故障時の数回のみ発生するサージ電圧のみにしか保護できない。したがって、サージ電圧のワースト条件に合わせて駆動力を下げなければならず(ゲート抵抗の増加)、スイッチング損失が増加する課題がある。
【0026】
図2はアクティブゲートを用いたゲートドライブシステムの構成を示し、ゲートドライバ1と半導体スイッチング素子10の間には、半導体スイッチング素子10のゲート駆動力を調整してスイッチング速度を調整する駆動力調整部6が接続されている。
【0027】
この駆動力調整部6は、ゲートドライバ1の出力の振幅、抵抗値などを変更することでゲート駆動力を調整する。
【0028】
図2のアクティブゲート方式は、電力変換装置の駆動条件に合わせてゲート駆動回路の駆動力が調整可能な方式であり、これによりサージ電圧の大きさに合わせて駆動力を調整するため、スイッチング損失を低減することができる。
【0029】
しかし、スイッチング損失が最小となる駆動力は主回路構成や半導体スイッチング素子により変化するため、最適なスイッチングパターンは事前に取得する必要がある。また、事前に取得した最適なスイッチングパターンであっても劣化や温度によってサージ電圧が変化し、半導体スイッチング素子を破壊する可能性がある。
【0030】
図3は本実施形態例のゲートドライブ回路の概略を示し、図1図2と同一部分は同一符号をもって示している。4は、アクティブクランプ回路3の検出温度Tcを入力とし、アクティブクランプ回路3の温度変化を測定することでアクティブクランプの駆動状態を検出し、半導体スイッチング素子10のゲート駆動力の調整量を計算する制御器である。
【0031】
5は、制御器4で計算されたゲート駆動力の調整量に基づいて、ゲート駆動力を調整するためのパラメータを決定する閾値設定部である。この閾値設定部5が決定するパラメータは、例えばゲート抵抗値又はキャパシタ値をどの値とするか、やゲートドライバ1の出力振幅の大きさを決定するパラメータである。
【0032】
6は、ゲートドライバ1と半導体スイッチング素子10の間に設けられ、前記閾値設定部5で決定されたパラメータに応じてゲート駆動力を調整する駆動力調整部である。
【0033】
図3の構成において、アクティブクランプの動作状態によって、ゲート駆動回路の駆動力を調整する。例えば、アクティブクランプ回路3が動作していない条件では、駆動力調整部6によりゲート駆動回路の駆動力を増加させることでスイッチング損失を低減する。
【0034】
一方、駆動力の増加を続けるとサージ電圧が増加するため、アクティブクランプの動作によりアクティブクランプ回路3の温度が上昇する。次に、アクティブクランプ回路3の温度上昇に従い、駆動力制御部6のゲート駆動量を低下させることでサージ電圧を低減させる。以上を繰り返すことで、駆動条件ごとにサージ電圧とスイッチング損失の低減を両立させる。
【実施例0035】
本実施例1ではアクティブクランプ回路の温度変化に応じてゲート抵抗値を切り替えてゲート駆動力を調整するように構成した。図4は実施例1のゲートドライブ回路の構成を表し、図3と同一部分は同一符号をもって示しており、図5図4の閾値設定部5と制御器4の構成を示している。
【0036】
本発明の駆動力調整部6は、実施例1においては図4に示す複数のスイッチS1~Sn(nは正数)およびゲート抵抗60,611~61nを備えている。
【0037】
ゲートドライバ1と半導体スイッチング素子10のゲートの間にはゲート抵抗60が接続されている。ゲート抵抗60には、スイッチSおよびゲート抵抗61の直列回路がn個並列に接続されている(図示、スイッチS1~Sn、ゲート抵抗611~61n)。
【0038】
前記スイッチS1~Snは、ゲート抵抗値が、閾値設定部5で決定されたゲート抵抗値になるようにオン、オフ制御されるスイッチである。このため、スイッチS1~Snがオフ制御された場合はゲート抵抗60のみによるゲート抵抗値となり、スイッチS1~Snのいずれかがオン制御された場合は、そのオン制御されたスイッチに接続されているゲート抵抗(611~61n)とゲート抵抗60の並列合成抵抗値となる。
【0039】
図5において41は、アクティブクランプ回路3の検出温度Tcの前回値を保存する遅延器である。42は、検出温度Tcの今回値から遅延器41に保存された前回値を減算する減算器である。43は、減算器42の減算出力ΔTc(温度偏差分)を入力とし、入力が負なら-1を、入力が0なら0を、入力が正なら+1を各々出力する符号関数器である。44は、符号関数器43の出力が+1のときはアップカウントを行い、-1のときはダウンカウントを行うカウンタである。
【0040】
前記遅延器41、減算器42、符号関数器43およびカウンタ44によって本発明の制御器(4)を構成している。
【0041】
51はゲート駆動力を調整するパラメータを決定するマルチプレクサ(閾値設定部(5))であり、図4の各スイッチS1~Snのオン、オフの組み合わせから、カウンタ44の出力値(アクティブクランプ回路3の温度変化量に相当する値)に対応するゲート抵抗値となるように、オンするスイッチS1~Snを決定する。
【0042】
尚、閾値設定部5(マルチプレクサ51)による各スイッチS1~Snの切り替えは、キャリア信号の山と谷を参照して半導体スイッチング素子10のスイッチング期間を調べ、半導体スイッチング素子10の非スイッチング期間で切り替えるものである。
【0043】
実施例1の構成(図4図5)では、制御器4内の減算器42によってアクティブクランプ回路3の温度変化を検出する。尚、アクティブクランプ回路3の温度上昇は外気温の変化よりも時定数が早いため、例えば高周波分のみ抽出する。
【0044】
次に温度変化の正負を符号関数器43でとることでアクティブクランプの動作状態がわかり、サージ電圧の大小が明らかになる。例えば温度変化が正になるとサージ電圧が大きいため、アクティブクランプが動作していると推定できる。
【0045】
カウンタ44ではアクティブクランプ回路3の温度変化を入力とし、カウント値を出力する。次に、マルチプレクサ51は、前記カウント出力値にしたがって、ゲート駆動力を調整するパラメータを決定する(前記カウント出力値に対応したゲート抵抗値に切り替えるためのスイッチS1~Snのオン信号を出力する)。
【0046】
なお、温度変化量がゼロもしくは負となる場合は駆動力を増加させることでスイッチング損失を低下させる。
【実施例0047】
本実施例2では、アクティブクランプ回路の温度変化に応じてゲートドライバの出力振幅を調整することで、ゲート駆動力を調整するように構成した。図6は実施例2のゲートドライブ回路の構成を表し、図3と同一部分は同一符号をもって示しており、図7図6の振幅調整器62、制御器4、閾値設定部5の構成を示している。
【0048】
図6においてゲートドライバ1の出力側は、ゲートドライバ1の出力振幅を、閾値設定部5により決定されたパラメータで指定される出力振幅に調整する振幅調整器62およびゲート抵抗2を介して半導体スイッチング素子10のゲートに接続されている。
【0049】
図6の振幅調整器62は、図7において次のように構成されている。すなわち各コレクタを、互いに電圧値の異なる複数のオンゲート電圧供給用電源Vg1~Vgnに各々接続したNPNトランジスタ621~62nと、コレクタが前記NPNトランジスタ621~62nの各エミッタに共通接続され、エミッタが1つのオフゲート電圧供給用電源-Vgに接続されたPNPトランジスタ63とを有し、NPNトランジスタ621~62nとPNPトランジスタ63の共通接続点をゲート抵抗2に接続している。
【0050】
図6の制御器4は、図7において、実施例1(図5)と同様の遅延器41、減算器42、符号関数器43およびカウンタ44により構成されている。
【0051】
図6の閾値設定部5は、図7のセレクタ52によって次のように構成されている。すなわち、セレクタ52はカウンタ44のカウント出力値に応じて、使用するオン時のゲート電圧を選択するセレクタであり、入力端子52aにはゲートドライバ1の出力電圧(ゲート電圧Vg)が供給され、出力端子52b1~52bnはNPNトランジスタ621~62nの各ベースに接続されている。
【0052】
また、ゲートドライバ1の出力電圧(ゲート電圧Vg)はPNPトランジスタ63のベースにも供給されるように構成している。
【0053】
上記構成において、カウンタ44のカウント出力値に応じて、セレクタ52により選択されたNPNトランジスタ(621~62n)がオンされることにより、カウンタ44のカウント出力値、すなわちアクティブクランプ回路3の温度変化に応じたゲートドライバ1の出力振幅が決定される。
【0054】
具体的には、ゲートドライバ1の出力振幅は、セレクタ52の切り替えによりオン制御されたNPNトランジスタ(621~62n)に接続されているオンゲート電圧供給用電源(Vg1~Vgn)の大きさに調整される。
【0055】
本実施例2では、ゲートドライバ1の出力振幅を調整することで、スイッチング速度とゲート駆動回路の駆動力を調整する。振幅増加時はゲート駆動力が上がり、振幅低下によりゲート駆動力が下がる。例えばアクティブクランプが動作し、温度変化(カウンタ44の出力値)が正になるとゲートドライバ出力の振幅を下げることでゲート駆動力を低下させる。
【0056】
尚、ゲートドライバ1の出力振幅を調整する具体的回路構成として、例えば非特許文献2に記載の構成を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…ゲートドライバ
2,60、611~61n…ゲート抵抗
3…アクティブクランプ回路
4…制御器
5…閾値設定部
6…駆動力調整部
10…半導体スイッチング素子
41…遅延器
42…減算器
43…符号関数器
44…カウンタ
51…マルチプレクサ
52…セレクタ
62…振幅調整器
621~62n…NPNトランジスタ
63…PNPトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7