(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084177
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】横軸風車用ブレード
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
F03D3/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198191
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】318001968
【氏名又は名称】株式会社OKYA
(72)【発明者】
【氏名】菅野優
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA18
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB02
3H178BB31
3H178CC02
3H178DD26X
(57)【要約】
【課題】横軸風車設備において、風車回転軸に対して直交する風向のみならず水平方向に斜めに吹き込む風向でも起動性がよく、エネルギー効率がよい横軸風車、および風車用ブレードを提供する。
【解決手段】風車ブレードには、ブレードの回転内側の面に、回転軸の方に自由開閉可能なフタを設け、フタの開き角度は所望の範囲で制約し、このようなフタを有するブレードには一対の風横抜け低減部を設けたブレードを回転軸方向に複数設置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車は回転軸は水平で、風車回転軸に対して放射状に設置されたアームと、アームの先に回転軸と平行なブレードが少なくともひとつ具備され、風車ブレードには、ブレードの回転内側の面に、回転軸の方に自由開閉可能なフタが設けられ、フタの開き角度は所望の範囲で制約されるものであって、
フタを有するブレードは一対の風横抜け低減部が設けられ、
風車が静止状態、あるいは低速回転の状態では、回転軸より上部にあるブレードのフタは自重で下方に開き、ブレードと開いたフタと風横抜け低減部とによりブレードの受風部に袋状の空間が形成されることでまとまった風を受け、回転トルクを生じ、回転軸より下部にあるブレードのフタは自重で閉じて向い風の抵抗を減じるため、起動性のよい抗力型風車として機能し、風車が高速回転の状態では、ブレードのフタは、風車の回転による遠心力と風車回転による進行風とによりブレード側に閉じた状態となり揚力型風車として機能することを特徴とするブレードを、
風車回転軸方向に2つ以上設置した横軸風車およびブレード。
【請求項2】
風車は回転軸は水平で、風車回転軸に対して放射状に設置されたアームと、アームの先に回転軸と平行なブレードが少なくともひとつ具備され、風車ブレードには、ブレードの回転内側の面に、回転軸の方に自由開閉可能なフタが設けられ、フタの開き角度は所望の範囲で制約されるものであって、
フタを有するブレードは一対の風横抜け低減部が設けられ、
風車が静止状態、あるいは低速回転の状態では、回転軸より上部にあるブレードのフタは自重で下方に開き、ブレードと開いたフタと風横抜け低減部とによりブレードの受風部に袋状の空間が形成されることでまとまった風を受け、回転トルクを生じ、回転軸より下部にあるブレードのフタは自重で閉じて向い風の抵抗を減じるため、起動性のよい抗力型風車として機能し、風車が高速回転の状態では、ブレードのフタは、風車の回転による遠心力と風車回転による進行風とによりブレード側に閉じた状態となり揚力型風車として機能することを特徴とするブレードにおいて、
ブレードの途中に少なくとも1つの風横抜け低減部を設けた横軸風車およびブレード。
【請求項3】
自由開閉なフタとブレードと一対の風横抜け低減部を設けたブレードにおいて、ブレードの回転軸方向長さと風横抜け低減部の翼弦長方向との長さの比率を一定の割合とした、請求項1に記載の横軸風車およびブレード。
【請求項4】
フタとブレードと一対の風横抜け低減部を設けたブレードにおいて、ブレードの風車回転軸方向の長さに対して、一定の割合でブレードの途中に風横抜け防止板を設けた請求項2に記載の横軸風車およびブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横軸風車設備のブレード機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に発電用の風車設備は水平軸型と称されるプロペラ型の風車が使用されている。エネルギー効率が高いことが特徴である。よい効率で、かつ安全に風車を運用するためには風車の向きは風向に正対する向きで稼働させる必要がある。
【0003】
風向は一定ではなく様々な要因により変化する。水平軸風車は能動的、あるいは受動的に風車の向きを風向に追従させている。能動的な追従方法の例としては、別に設置した風向計による風向に合わせるようナセルの向きをモーターの力で変更する。受動的な追従方法の例としては風車はタワーの風下で風を受ける構成とし、ナセルはフリーとすることで風向変化に合わせて風車が向きを変える。
【0004】
垂直軸風車は風向変化に風車を追従させる必要がない。回転軸が垂直であるため、風向が360°どこから吹いてきても同様に風を受けて風車を回すことが可能である。
【0005】
風車の性能を特徴づける重要な特性係数のひとつにソリディティ(Solidity)がある。ソリディティは「風車の掃過面積に対するロータ・ブレードの全投影面積の比」として定義される。ただし、ここでの投影面積は風向に垂直な面への投影を意味している。
【0006】
風車には揚力を利用して回転するブレードと抗力を利用して回転するブレードがある。揚力を利用する風車のブレードはソリディティは小さくエネルギー効率はよいが、起動トルクを得にくい。抗力を利用する風車のブレードはソリディティは大きく起動トルクは得やすいが回転が風速を超えることがなくエネルギー効率は低い。
【0007】
垂直軸風車では、揚力型と抗力型の2つのブレードを組み合わせて使用されることもある。
【0008】
水平軸風車は回転軸は水平で、その軸方向は風向と平行である。垂直軸風車は回転軸は垂直で、その軸方向は風向と交差している。他に回転軸が水平で、その回転軸が風向と交差する横軸風車の組合せがある。ただし、エネルギー効率や起動トルクについては垂直軸風車と同じ特徴を有しており、かつ風向に対して風車の回転軸を直交させる構造を有することが望ましく、参考特許1のように風車の向きを回転させる提案がなされている。
【0009】
また、横軸風車の向きを風向に合わせて容易に向きを変えられるように参考特許2のような提案がなされている。
【0010】
図11は、揚力型の断面形状をもつ横軸風車のブレード2の風を受ける面を鉛直上側から見た断面を模擬したもの、
図12は
図11のブレード2に風11がブレードに直交する向きで吹き込んでいる状態を示している。ブレード2に当たった風11はブレードを押す力を与えつつ、ブレードの上下左右から気流12の通りすり抜けていく。ブレードはわずかな起動トルクしか得られない。
【0011】
図13は、
図11のブレードに風が水平方向に45°斜めに吹き込んでいる状態を示している。ブレード2に当たった風11はブレードに沿って向きを変え気流13の通り、または上下左右からすり抜けていく。
【0012】
図14は抗力型ブレードを使用した横軸風車のブレードを鉛直上方から見た断面を示した図である。ブレード2に左右に風横抜け低減部9を設けたものである。
図15は、
図14のブレードに直交する向きから風11が吹き込む様子を示している。ブレード2と風横抜け低減部9とに囲まれた部分に風溜り31が生じ、抗力21が生じ、風車に大きな起動トルクが発生する。
【0013】
図16は、
図14のブレードに水平方向斜め45°から風11が吹き込んでいる様子を示している。ブレード2と風横抜け低減部9とで囲われた部分に風溜り32が生じ、抗力22が発生する。風車回転方向の分力23が風車の起動トルクとなる。ブレードに直交に風が吹き込む場合に比べて、風を受け止める部位が小さくなるため、発生する起動トルクも小さくなる。
【0014】
揚力型ブレードを使用する横軸風車は、ブレードに直交する向きの風を受けるとき、静止状態から回り出す際の起動トルクを得にくい。
【0015】
抗力型ブレードを使用した横軸風車は、起動トルクを得やすいが回転進行風がブレードの抵抗となるため、エネルギー効率は揚力型ブレードに対して低い。
【0016】
抗力型ブレードを使用する横軸風車は、風車設備に対して水平方向に角度がついた斜めからの風を受けるとき、起動トルクを得にくい。
【0017】
揚力型ブレードを使用する横軸風車は、風車設備に対して水平方向に角度がついた斜めからの風を受けるとき、顕著に起動トルクを得にくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2003-172245号公報
【特許文献2】韓国公開特許10-2010-0032268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
横軸風車設備において、風車回転軸に対して直交する風向で、風車の起動時に高い回転トルクを発生させ、かつエネルギー効率が高い風車ブレードを提供する。
【0020】
横軸風車設備において、風車回転軸に対して水平方向に斜めに吹き込む風向でも、起動時には風車に高い回転トルクを発生させ、かつエネルギー効率が高い風車ブレードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
風車ブレードは、揚力型断面をしたブレードの回転内側、つまり回転軸側の面に、ブレード前縁部寄りを起点に回転軸の方に自由開閉可能なフタを設ける。フタの開き角度は所望の範囲で制約する。
【0022】
このようなフタを有するブレードには左右に一対の風横抜け低減部を設ける。
【0023】
このようなフタと風横抜け低減部を有するブレードを風車回転軸方向に複数配置する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、横軸風車のブレードは開閉可能なフタ部とその左右に一対の風横抜け低減部を備え、風車が静止時、または低回転時には回転軸より上方にあるブレードのフタは自重で垂れ下がり、ブレードとブレードの開いたフタと風横抜け低減部で風を受ける袋状の空間が形成されるため、ブレードの開口部に直交する向きから風が吹き込む場合、ブレードは風を受け止め大きな回転トルクを生じることができる。このとき、回転軸より下方にあるブレードのフタは自重で閉じて向い風の抵抗を減じているため起動性がよい横軸風車設備を提供できる。
【0025】
本発明によれば、横軸風車のブレードは開閉可能なフタ部とその左右に一対の風横抜け低減部を備え、風車が静止時、または低回転時には回転軸より上方にあるブレードのフタは自重で垂れ下がり、ブレードとブレードの開いたフタと風横抜け低減部で風を受ける袋状の空間が複数形成されるため、水平方向に角度がある風向の場合でもブレードは風を受け止め回転トルクを生じることができる。このとき、回転軸より下方にあるブレードのフタは自重で閉じて向い風の抵抗を減じているため起動性がよい横軸風車設備を提供できる。
【0026】
本発明によれば、横軸風車のブレードは開閉可能なフタ部とその左右に一対の風横抜け低減部を備え、風車が高速回転時には全てのフタは遠心力と進行風とで閉じて回転の抵抗を減じて、風横抜け低減部も風車回転の抵抗にならないため、揚力型のブレードとして機能し、風車設備に直交する風向でも、水平方向に斜めに吹き込む風向の場合でもエネルギー効率がよい横軸風車設備を提供できる。
【0027】
本発明によれば、本発明によれば、横軸風車のブレードは開閉可能なフタ部とその左右に一対の風横抜け低減部を備え、風車が静止時、または低回転時には回転軸より上方にあるブレードのフタは自重で垂れ下がり、ブレードとブレードの開いたフタと風横抜け低減部で風を受ける袋状の空間が複数形成されるため、隣接する風車ブレードの取付け位置は回転軸まわりに取付け角度を変えることで、風車ブレードの待機位置によらず起動トルクが安定しやすくなる起動性がよい横軸風車設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、ブレードの内側に自重で開閉可能なフタを有する横軸風車が、静止状態、または低速回転時に、回転軸より上方のブレードのフタが自重で垂れ下がって開き、回転軸より下方のブレードのフタが自重で閉じている状態の断面図を示す。
【
図2】
図2は、ブレードの内側に自重で開閉可能なフタを有する横軸風車が、高速回転時に、回転軸に対するブレードの位置に関係なく、全てのフタが遠心力と回転の進行風で閉じている状態の断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態であって、自由開閉なフタと一対の風横抜け低減部が設けられたブレードが、回転軸方向に2つ連なって取付けられた横軸風車の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態であって、自由開閉なフタと一対の風横抜け低減部が設けられたブレードからなり、回転軸方向に隣り合う取付け位置でブレードの取付け角度を変えた横軸風車の斜視図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施形態であって、一対の風横抜け低減部を有する自由開閉なフタ付きブレードの中間に風横抜け低減部を追加した横軸風車設備の斜視図を示す。
【
図6】
図6は、
図3の横軸風車を回転軸方向から見た側面図である。
【
図7】
図7は、
図4の横軸風車を回転軸方向から見た側面図である。
【
図8】
図8は、横軸風車が静止状態、または低速回転状態において、回転軸の上部にあるブレードの自由開閉なフタが自重で下方に開いている状態の斜視図を示す。
【
図9】
図9は、
図8で示すブレードが回転軸方向に2つ連結された状態の横軸風車を示す。
【
図10】
図10は、横軸風車が、ブレードの自由開閉なフタが閉じている状態の斜視図を示す。
【
図11】
図11は、揚力型ブレードを鉛直上方から見た断面図を示す。
【
図12】
図12は、
図11に示したブレードに直交する向きで風が吹き込む状態と、ブレードにあたった後の気流を模擬した断面図を示す。
【
図13】
図13は、
図11のブレードに、水平方向に斜め45°に風が吹き込む状態と、ブレードにあたった後の気流を模擬した断面図を示す。
【
図14】
図14は、
図11のブレードに風横抜け低減部を設置したブレードを模擬した、鉛直上方から見た断面図を示す。
図8の風横抜け低減部と開閉可能なフタを設置したブレードの断面図でもある。
【
図15】
図15は、
図14に示したブレードに直交する向きで風が吹き込む状態と、ブレードと風横抜け低減部とで囲われた袋状の構造に風溜りが発生している状態を模擬した断面図を示す。
図8のブレードと風横抜け低減部と開いたフタで囲われた袋状の構造に風溜りが発生している状態の断面図でもある。
【
図16】
図16は、
図14のブレードに、水平方向斜め45°に風が吹き込む状態と、風溜りができている状態を模擬した断面図を示す。
【
図17】
図17は、
図14のブレードの長さを半分にし、2つ連結させた状態を模擬した断面図を示す。
【
図18】
図18は、
図17のブレードに、水平方向に斜め45°に風が吹き込む状態を模擬した断面図を示す。
【
図19】
図19は、
図17のブレードに、水平方向に斜め60°に風が吹き込む状態を模擬した断面図を示す。
【
図20】
図20は、本発明の風車設備を回転軸方向に複数基連結させて設置した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1、2は本発明のブレードとフタの開閉状態について示す。本発明の風車設備に適用されるブレード2は、翼型断面形状をしている。開いたフタ4aは起線7でブレードと連結されているか、またはブレードの一部が起線7から離れたものであり、自由開閉ができる。起線7のブレード上の位置は自由であり、ブレードの前縁部に近くてもよく、後縁部に近くてもよい。起線7のブレード上の位置は、回転軸の反対側である回転外側にあることも含まれる。フタの自由端の位置も自由であり、ブレード後縁部でもよく、後縁部と起線の間の任意の位置でよい。起線とフタの自由端までの長さが長いほど受風部として用される面積が大きくなる。
【0030】
図1は本発明の実施形態の、風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい状態の断面図を示している。回転軸より上にあるブレードのフタは自重で下に垂れ下がって開く。最大開き角度はストッパーの位置で制限する。フタが開いていない状態と比較して、フタが開く分受風面積が増えるためソリディティが大きくなり、風車回転の起動トルクが増大する。
【0031】
回転軸より下に位置するブレードのフタは自重によりブレード側に閉じる。フタが開いている状態より受風面積が小さくなるため、ブレードが風上側に戻る際の風の抵抗を小さくすることができる。
【0032】
図2は風速が大きく、風車の回転速度が十分に大きい状態の側面図を示す。風車の遠心力と回転の進行風によりブレードのフタはブレードに押し付けられ、位置にかかわらず常に閉じた状態となる。すなわちソリディティが小さくなる。抗力型風車にみられるような受風部の進行風の抵抗による回転速度の制約を排除することができる。
【0033】
フタのブレード長さ方向に対する長さは、全長に渡って一枚でもよく、複数枚に分割しても、断続的に配置してもよい。
【0034】
フタが閉じた状態では、フタ、および起線部は空気抵抗を生じさせないように凹凸が極力ないこととする。
【0035】
フタが閉じた状態では、フタの表面はブレード全体の翼型プロファイルの一部となる形状となることが望ましい。
【0036】
【0037】
本発明の実施形態の風車設備に適用されるブレード2は、風車の回転軸1の周囲にアーム3を介してひとつ、または複数のブレードが等間隔に敷設される。回転軸は水平に、かつ風11の風向と交差する位置関係にある。
【0038】
ここでいう水平とは、厳密な意味での水平だけではなく、例えば山の斜面に回転軸が傾斜して設置する場合などを含む、概念としての水平を指している。
【0039】
ブレードの前縁部は、ブレードが回転の上部にあるとき風下を向くようにする。ブレードの回転軸寄りの面には、回転軸と平行な向きの軸を起線7とし、回転軸寄りに自由開閉するフタ4が取り付けられている。フタは閉じた状態ではブレードと一体化し、開いた状態では最大開き角度はストッパー5までとなる。風車が回転すると回転軸に接続された発電機8で電気を発生する。
【0040】
ひとつひとつのブレードには、回転軸方向に一対の風横抜け低減部9が具備される。
【0041】
図8は、自重で開閉可能なフタ4と、風横抜け低減部9とを具備したブレード2を示す。風横抜け低減部はブレードの両端に接合され、少なくともブレードのフタの開閉可動範囲と同等の形状4Sを覆うことができる。風横抜け防止板とフタとの間には、フタの自由開閉に支障がない程度の隙間はあってよい。
【0042】
ブレード4の開く限度はストッパー5で制約される。ストッパーは風横抜け低減部9に設置されてもよく、アーム3に設置されてもよい。
【0043】
ブレード2とフタ4との開く限度の制約は、前記ストッパーの形式でなく、例えばブレードとフタをワイヤで連結する形式でもよい。
【0044】
風車が静止状態、または低速回転状態において、回転軸より上部にあるブレード2は自由開閉可能なフタ4が下方に開く。ブレードとフタと両端の風横抜け低減部9とで囲われた部分が袋状の空間30を構成する。
【0045】
ブレード2、フタ4a、風横抜け低減部9で構成される袋状の空間30は、風が風車回転軸に直交する場合のみならず、風が風車回転軸に斜めに吹き込む場合も風を受け止める機能をし、風車に回転トルクを生じさせる。すなわち、斜めに吹く風に対しては、ブレードもフタも風横抜け低減部も、斜め風受部とみなすことができる。
【0046】
図10は、ブレード2のフタが閉じた状態4bと風横抜け低減部9を示す。風車が静止状態、または低速回転状態での回転軸より低い位置のブレードは、フタが自重で下方に落ち閉じるため、本図の状態となる。また、風車が高速回転状態で、フタが遠心力と回転進行風でブレードに押し付けられている状態も、本図の状態となる。フタが閉じた状態のブレードは、進行風の抵抗が小さい。風横抜け低減部は単体では、回転進行風の抵抗にはならない。また風車に直交する向きで風が吹き込むときも風の抵抗にならない。風車に水平方向に斜めに風が吹き込む場合も風横抜け低減部に沿ってすり抜けるため、大きな抵抗にならない。
【0047】
図11は、開閉可能なフタ4と、風横抜け低減部9がない、一般的な揚力型ブレードを模擬したもの、
図12は
図11のブレードに風11がブレードに直交する向きで吹き込んでいる状態を示している。ブレードに当たった風はブレードを押す力を与えつつ、ブレードの上下左右から気流12の通りすり抜けていく。
【0048】
図13は、
図11のブレード2に風11が水平方向に45°斜めに吹き込んでいる状態を示している。ブレードに当たった風は向きを変え、気流13の通り、または上下左右からすり抜けていく。
【0049】
図14は、ブレード2に自由開閉可能なフタ4と、風横抜け低減部9が取付けられたブレードの断面を模擬したもの、
図15は、
図11のブレードに直交する向きで風11が吹き込んでいる状態を模擬したものである。
【0050】
図15では、ブレード2とフタと両端の風横抜け低減部9で袋状の空間が構成されているため、ブレードに吹き込んだ風は風溜り31を生じ、ブレードを押す力21を発生させる。風がブレードの横からすり抜けにくいため、ブレードは風から大きな力を受けることができる。
【0051】
図16は、
図14のブレードに、水平方向に45°斜めに風が吹き込んでいる状態を示している。ブレードとフタと風横抜け低減部が、斜め風受け部となることで、風溜り32が生じ、ブレードが風で押される力22が発生する。力22は風車の回転方向の分力23と、風車回転軸方向の分力24とに分けることができ、分力23が風車を回転させる。
【0052】
図16での風溜り32は、
図15の風溜り31に対して容積が小さくなり、またブレードにはたらく抗力のうちの、ブレード回転方向への分力のみ回転に寄与するため、風車を回転させる力は小さくなる。
【0053】
図17は、
図14のブレードを半分の長さにして2つ連結したものである。ブレードの総長としては同等となる。
図18は
図17のブレードに、水平方向に斜めに風が吹き込んでいる状態を示している。風溜り32と風溜り33が生じている。このことにより、風車の回転方向に働く力は2倍になる。
【0054】
図19は、
図17のブレードに水平方向斜め60°で風が吹き込んでいる状態を示している。風溜り34、35が生じている。風溜り34では、抗力25が生じ、風車回転方向の分力26と風車回転軸方向の分力27が発生している。分力26は分力27に対して小さくなる。風車に対して水平方向の角度が45°より大きくなると、風車回転方向の力が小さくなる。風横抜け防止板が斜めの風に有効なのは片側45°が妥当と考える。
【0055】
本発明の実施形体の風車は、ひとつひとつのブレード2の長さに合わせて風横抜け低減部9の長さの最適値がある。また各風横抜け低減部およびブレードの長さが揃っている方が風車はバランスよく回転できる。ブレードと風横抜け低減部の長さの比率は一定の割合で構成されるべきである。
【0056】
図4は本発明の第2の実施形態であり、風横抜け低減部9を有する短い開閉型ブレード2を、風車回転軸方向に隣接する取付け位置は取付け角度を変えたものである。実質的なブレードの枚数は増やさず、風車の回転角度に対する回転トルクのばらつきを低減することが可能である。
【0057】
図5は第3の実施形態を示す。短く区切られた風横抜け低減部を有するブレードを連結させた構造は、
図5に示すようにひとつのブレードの中間に少なくとも1つの風横抜け低減部9を設けても同様である。中間の風横抜け低減部に合わせて、フタ4も分割し、開閉に干渉しないこととする。
【0058】
本発明の横軸風車およびブレードは陸上で設備の向きを変えず固定設置する用途を想定しているが、洋上の浮体上に設置する横軸風車での利用でもよい。
【0059】
図20に示す通り、本発明の横軸風車およびブレードは、陸上で向きを変えず長く連結させて固定設置すると、一連の風車で得られたエネルギーをまとめて1台の発電機8で取り出せるため、細長い地形の設置に適した風車設備を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る横軸風車並びに風車用ブレードによれば、風車が静止、または低回転状態において、ブレードが回転軸より上方にある追い風側は、ブレードとブレードに具備された開いたフタ、風横抜け低減部により袋状の空間が複数箇所で形成されることにより、風が斜めに吹き込んできても、風車は回転トルクを得ることが可能となり、また向い風側では、ブレードのフタは自重で閉じ、風横抜け低減部も単体では風の抵抗が小さいため、起動性に優れた横軸風車ならびに風車用ブレードを提供できる。
【0061】
また、本発明によれば、構造が簡単で安価な横軸風車並びに風車用ブレードを提供することが可能となる。
【0062】
また、本発明によれば、水田地帯のあぜ道など細長い地形を活用できる風車設備を提供できる。
【0063】
また、本発明によれば、風車の回転速度が上がると、ブレードの位置によらずブレードのフタは遠心力と回転の進行風で閉じるため、揚力型の風車ブレードとなりエネルギー効率が良い横軸風車ならびに風車用ブレードを提供することが可能となる。
【0064】
また、本発明によれば、ブレードの待機位置を分散できるため、起動性に優れ、かつエネルギー効率が良い横軸風車並びに風車用ブレードを提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 回転軸
2 ブレード
2’ 2と取付け角度を変えたブレード
3 アーム
3’ 3と取付け角度を変えたアーム
4 フタ
4a 開いたフタ
4b 閉じたフタ
4S フタの可動範囲
5 ストッパー
6 フタ起線
7 支柱
8 発電機
9 風横抜け低減部
9’ ブレードの中間に設けられた風横抜け低減部
11 風
12 ブレードに直交する角度でブレードに風が当たったあとの気流
13 ブレードに斜めの角度でブレードに風が当たったあとの気流
21 ブレードに直交する角度の風がブレードを押す力
22 ブレードに斜めの角度の風がブレードを押す力
23 ブレードに斜めの角度で風がブレードを押す力の風車回転方向の分力
24 ブレードに斜めの角度で風がブレードを押す力の風車回転軸方向の分力
25 ブレードに60°の角度の風がブレードを押す力
26 ブレードに60°の角度で風がブレードを押す力の風車回転方向の分力
27 ブレードに60°の角度で風がブレードを押す力の風車回転軸方向の分力
30 ブレードと開いたフタと一対の風横抜け低減部に囲まれた袋状の空間
31 ブレードに直交する角度の風による風溜り
32 ブレードに斜めの角度の風による風溜り
33 32の隣のブレードの斜め45°の角度の風による風溜り
34 ブレードに斜め60°の角度の風による風溜り