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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084193
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】乗りかご及びエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
B66B11/02 F
B66B11/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198218
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 延明
【テーマコード(参考)】
3F306
【Fターム(参考)】
3F306CB02
3F306CB06
3F306CB51
(57)【要約】
【課題】かご室内を効率的に冷暖房することができる乗りかご及びエレベーターを提供する。
【解決手段】乗りかごは、かご室と、空調装置と、かご室の天井を構成する天井パネル20と、を備えている。天井パネル20は、かご室の内部を臨む意匠パネル26と、吹き出し口31aが形成された天井フレーム31と、を備えている。そして、吹き出し口31aの上下方向の上部には、吹き出し口31aに送風される空気を複数方向に分岐させる分岐部材40を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のかご室と、
前記かご室の上部に設置された空調装置と、
前記かご室の天井を構成し、前記空調装置から送風される空気を前記かご室に送り出す吹き出し口が形成された天井パネルと、
前記吹き出し口よりも上下方向の上部に配置された、前記吹き出し口から吹き出される前記空気の風向きを前記かご室の壁面から離反する方向に向ける傾斜面部と、
前記吹き出し口に送風される空気を複数方向に分岐させる分岐部材と、を備えた
乗りかご。
【請求項2】
前記吹き出し口を複数に分割し、前記分岐部材を前記複数の吹き出し口の間に設け、前記送風される空気をそれぞれの吹き出し口に向けて分岐させる
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項3】
前記分岐部材は、前記吹き出し口よりも上下方向の上側に厚みを有する形状である
請求項1又は2に記載の乗りかご。
【請求項4】
前記分岐部材は、前記吹き出し口に向かって傾斜する傾斜部を有する形状である
請求項3に記載の乗りかご。
【請求項5】
前記分岐部材は、点頂部を有する三角形状である
請求項4に記載の乗りかご。
【請求項6】
前記分岐部材は、断熱性を有する部材で構成される
請求項5に記載の乗りかご。
【請求項7】
前記天井パネルは、前記かご室の内部を臨む意匠パネルと、前記意匠パネルを支持する天井フレームと、を備え、前記吹き出し口を前記天井フレームに形成した
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項8】
前記吹き出し口は、前記意匠パネルの外縁部よりも前記かご室の壁面側に形成される
請求項7に記載の乗りかご。
【請求項9】
前記天井フレームの上部には、前記空調装置と配管を介して接続され、前記かご室に空気を送風する送風ダクトが設けられ、
前記傾斜面部は、前記送風ダクトの内部に配置される
請求項7に記載の乗りかご。
【請求項10】
前記送風ダクトの内部には、
前記傾斜面部が形成された第1送風壁と、
前記第1送風壁と対向して配置されて、前記第1送風壁とともに送風路を形成する第2送風壁と、が設けられ、
前記第2送風壁には、前記送風路の開口径を狭くする導入面が形成される
請求項9に記載の乗りかご。
【請求項11】
前記第2送風壁は、前記送風ダクトの外壁筐体で形成された傾斜面部を備えている
請求項10に記載の乗りかご。
【請求項12】
昇降路内を昇降動作する乗りかごを備え、
前記乗りかごは、
中空のかご室と、
前記かご室の上部に設置された空調装置と、
前記かご室の天井を構成し、前記空調装置から送風される空気を前記かご室に送り出す吹き出し口が形成された天井パネルと、を備え、
前記吹き出し口よりも上下方向の上部に配置された、前記吹き出し口から吹き出される前記空気の風向きを前記かご室の壁面から離反する方向に向ける傾斜面部と、
前記吹き出し口に送風される空気を複数方向に分岐させる分岐部材と、を備えた
エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかご、及びこの乗りかごを備えたエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの乗りかごには、空調装置が設置されている。この空調装置の吹き出し口は、乗りかごを構成するかご室の天井部に設けられている。乗りかごの空調装置に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、「昇降路内を上下に移動するかご室と、該かご室に設置され冷暖房機能を持つエアコン本体及び該エアコン本体からの冷暖房空気を前記かご室内に送風する送風ダクトからなるエアコン装置とを備え、前記かご室は、前記かご室の乗客が出入りする出入口部に送風するエアカーテン送風装置と、前記かご室内の空気を取り込むエアカーテン吸気装置とを備え、前記エアカーテン送風装置と前記エアカーテン吸気装置は、ダクトにより連結されているエレベーターの乗りかご」に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-2418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空調装置を備えたエレベーターの乗りかごにおいては、空調装置から天井部に設けられた吹き出し口を介して送りこまれた冷暖房空気が、かご室内で十分に循環することができず、そのため、かご室内を効率的に冷暖房することができないという問題があった。
【0005】
本目的は、上記の問題点を考慮し、かご室内を効率的に冷暖房することができる乗りかご及びエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるなら、本発明の乗りかごは、中空のかご室と、かご室の上部に設置された空調装置と、かご室の天井を構成し、空調装置から送風される空気をかご室に送り出す吹き出し口が形成された天井パネルと、吹き出し口よりも上下方向の上部に配置された、吹き出し口から吹き出される空気の風向きをかご室の壁面から離反する方向に向ける傾斜面部と、を備えている。そして、吹き出し口に送風される空気を複数方向に分岐させる分岐部材を備えている。
【0007】
また、エレベーターは、昇降路内を昇降移動する乗りかごを備えている。乗りかごは、上述した乗りかごが適用される。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の乗りかご及びエレベーターによれば、かご室内を効率的に冷暖房することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態例にかかるエレベーターの乗りかごを示す概略構成図である。
図2】実施の形態例にかかるエレベーターの乗りかごのかご室内を示す断面図である。
図3】実施の形態例にかかる乗りかごの送風ダクトの内部を示す概略構成図である。
図4】実施の形態例にかかる乗りかごの吹き出し口周りを拡大して示す説明図である。
図5】かご室内において循環する空気の流れを説明するためのかご室の正面図である。
図6】他の実施の形態例の分岐部材を用いた際のかご室の正面図である。
図7】他の実施の形態例の分岐部材を用いた際のかご室の正面図である。
図8】かご室内において循環する空気の流れを説明するためのかご室の斜視構成図である。
図9図8の吹き出し口を上方から見た拡大図である。
図10】吹き出し口から吹き出される空気の流れを説明するため、吹き出し口の周りを拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態例にかかる乗りかご及びエレベーターについて、図1図10を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0011】
まず、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる乗りかごの構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本例のエレベーターの乗りかごの構成例を示す概略構成図である。図2は、乗りかごのかご室内を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、本例のエレベーターの乗りかご1は、かご室10と、かご室10を支持するフレーム枠11と、空調装置12と、ドアユニット24とを備えている。かご室10は、不図示の防振部材を介してフレーム枠11に支持される。
【0013】
図1及び図2に示すように、かご室10は、天井パネル20と、正面パネル21と、3つの側面パネル22と、床面パネル23とを有している。床面パネル23は、矩形状に形成されており、かご室10の床面となる。床面パネル23の周囲には、正面パネル21と、3つの側面パネル22が床面パネル23に対して垂直に立設されている。
【0014】
正面パネル21には、出入り口が設けられている。正面パネル21の出入り口には、ドアユニット24を構成するかごドアが開閉可能に設置されている。また、正面パネル21の上下方向の下部には、ドアシル25が設置されている。ドアユニット24のかごドアは、ドアシル25に移動可能に支持される。
【0015】
正面パネル21と、3つの側面パネル22で形成された上部の開口を塞ぐようにして、天井パネル20が設置される。そして、天井パネル20は、床面パネル23と上下方向で対向する。
【0016】
天井パネル20の上下方向の上部には、空調装置12が設置されている。空調装置12は、かご室10内で空気を循環させる循環式の空調装置である。空調装置12は、冷気または暖気をかご室10内に送風する送風ダクト13と、かご室10内に空気を吸引する吸引ダクト14とを有している。送風ダクト13は、空調装置12に配管15を介して接続されており、同様に、吸引ダクト14は、空調装置12に配管16を介して接続されている。
【0017】
送風ダクト13は、天井パネル20における正面パネル21側の端部に設置されている。吸引ダクト14は、天井パネル20における正面パネル21と対向する側面パネル22(以下、背面パネルという)側の端部に設置されている。なお、ここでは、送風ダクト13を正面パネル21側に設置し、吸引ダクト14を背面パネル側に設置した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、送風ダクト13を背面パネル側に設置し、吸引ダクト14を正面パネル21側に設置してもよい。または、送風ダクト13と吸引ダクト14を天井パネル20における正面パネル21及び背面パネルとは異なる側面パネル22側の端部に設置してもよい。
【0018】
また、図2に示すように、天井パネル20は、意匠パネル26と、天井フレーム31と、を有している。意匠パネル26は、かご室10の内部空間を臨むようにして配置されている。意匠パネル26には、照明器具が設置される。意匠パネル26は、床面パネル23よりも小さく形成されている。そのため、意匠パネル26の外縁部と、正面パネル21及び3つの側面パネル22との間には、隙間が形成される。この意匠パネル26は、天井フレーム31によりかご室10の上下方向の上部に支持される。
【0019】
天井フレーム31には、送風ダクト13が設置される。また、天井フレーム31には、送風ダクト13の下部に設けたダクト口13aに連通する吹き出し口31aが形成されている。また、吹き出し口31aは、意匠パネル26の外縁部よりも正面パネル21側、すなわちかご室10を形成する壁面側に形成される。また、吹き出し口31aの上下方向の上方には、分岐部材40が配置されている。吹き出し口31aを通じてかご室10内に送風された空気は、図中の矢印に示すように進み、かご室10内を循環する。
【0020】
本例では、吹き出し口31aを意匠パネル26よりも上下方向の上方に配置される天井フレーム31に設けることで、かご室10内から吹き出し口31aが視認されにくくなる。これにより、吹き出し口31aが露出することで、乗りかご1の美観が低下することを抑制できる。
【0021】
図3は、送風ダクト13の構成を示す概略構成図である。
図3に示すように、送風ダクト13は、天井フレーム31の面上に配置されている。送風ダクト13は、二点鎖線で示す長方形状の外壁筐体としてのカバー18を有し、カバー18の内部には、送風路を形成する第1送風壁32が斜めに配置されている。カバー18の上面18aには、配管15を接続するための配管口13bが形成されている。カバー18の下面18bには、吹き出し口31aと連通するダクト口13aが形成されている。ダクト口13aは、カバー18の正面18cの下端に沿って形成されている。
【0022】
第1送風壁32は、平板状の鋼板の先端を折り曲げて断面がL字状になるように加工されており、長方形状の傾斜面32aと、傾斜面32aよりも面積の大きい矩形状の導入面32bと、が形成されている。第1送風壁32は、傾斜面32aの先端部分がダクト口13aに近接し、導入面32bが送風ダクト13内で斜めに配置されるように、カバー18の側面18dに固定される。
【0023】
カバー18の正面18cの下部には、内側に傾斜するように折り曲げられた下部傾斜面33aが設けられている。空調装置12から配管口13bを通じて送風ダクト13内に送られてきた空気は、斜めに配置された第1送風壁32の導入面32bに当たり、傾斜面部としての傾斜面32aと下部傾斜面33aとで構成された送風路にガイドされてダクト口13aに運ばれる。
【0024】
第1送風壁32の傾斜面32aの中央付近には、分岐部材40が取り付けられている。本例の分岐部材40は、断熱性を有する材質で構成されており、例えばゴム部材を三角形状に加工して作られる。傾斜面32aの中央付近に接着剤で分岐部材40を固定することにより、ダクト口13aの中央部が塞がれて、実質的にダクト口13aは2箇所に分割される。すなわち、分岐部材40に当たって異なる方向に分岐された空気は、分割されたダクト口13aの各々から吹き出し口31aを通ってかご室10内に吹き出される。
【0025】
図4は、吹き出し口31a周りを拡大して示す説明図である。
図4に示すように、送風ダクト13の内部には、送風路を形成する第1送風壁32が配置されている。また、送風ダクト13のカバー18の正面18cで構成された第2送風壁33が、第1送風壁32と対向するように配置されている。すなわち、第1送風壁32は、第2送風壁33よりもかご室10の内側に配置されており、第2送風壁33は、正面パネル21側に配置されている。そして、第1送風壁32と第2送風壁33により、送風ダクト13からかご室10内に送風される空気の送風路を形成する。
【0026】
なお、本例では、送風ダクト13のカバー18を用いて第2送風壁33を構成しているが、別途、カバー18の正面18cの内側に傾斜面を有するように加工された部材を固定して第2送風壁を構成してもよい。
【0027】
第2送風壁33であるカバー18の正面18cの下方端部側には、下部傾斜面部33aが形成されている。下部傾斜面部33aは、カバー18の正面18cが吹き出し口31aに近づくにつれて、かご室10の正面パネル21から連続して離れる方向に向けて傾斜している。すなわち、下部傾斜面部33aは、かご室10の内側に向けて傾斜している。
【0028】
上述したように、第1送風壁32は、傾斜面部32aと、導入面32bとを有しており、傾斜面部32aは、第2送風壁33の傾斜面部33aと同様に、かご室10の内側に向けて傾斜している。このように、第1送風壁32及び第2送風壁33に、かご室10の内側に傾斜する傾斜面32a、33aを設けたことで、吹き出し口31aから吹き出される空気の風向きをかご室10の内側、すなわち壁面から離反する方向に向けることができる。すなわち、吹き出し口31aから吹き出された空気が正面パネル21や、側面パネル22に当たることを防止でき、例えば冷房で冷たい空気を吹き出す場合において、正面パネル21や側面パネル22に結露が生じることを抑制することができる。また、空気が吹き出し口31aからかご室10の内側に向けて吹き出されることで、吸引ダクト14から空気を効率よく吸引することができ、空調装置12の循環効率を高めることができる。
【0029】
また、本例では、第1送風壁32の傾斜面部32aと第2送風壁33の傾斜面部33aとが対向して送風路を形成している部分に分岐部材40が配置することで、吹き出し口31aに運ばれてくる空気を確実に分岐することができる。そして、分岐させた状態の空気を、吹き出し口31aからかご室10の内側に向けて吹き出すことができる。
【0030】
また、風向きを変える傾斜面部32a、33aは、吹き出し口31aよりも上下方向の上方に配置されている。さらに、上述したように、吹き出し口31aは、意匠パネル26よりも上下方向の上方に配置されている。これにより、かご室10内から傾斜面部32a、33aが視認されにくくなり、傾斜面部32a、33aが露出して、乗りかご1の美観が低下することを抑制できる。
【0031】
また、吹き出し口31aと意匠パネル26との水平方向の間隔の長さH1は、第1送風壁32及び第2送風壁33の傾斜面部32a、33aの傾斜角度、すなわち吹き出し口31aから吹き出される空気の向き(以下、単に「風向き」という)L1に応じて設定される。具体的には、吹き出し口31aから吹き出された空気が、意匠パネル26における外縁部26aに当たらない間隔の長さH1に設定される。これにより、意匠パネル26に空気が当たることで、風向きL1が変化したり、冷暖房効率が低下したりすることを防止することができる。
【0032】
吹き出し口31aと意匠パネル26の間隔の長さH1を、傾斜面部32a、33aの傾斜角度、すなわち風向きL1に応じて設定する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、吹き出し口31aと意匠パネル26の間隔の長さH1に応じて、傾斜面部32a、33aの傾斜角度を設定してもよい。すなわち、吹き出し口31aと意匠パネル26の間隔の長さH1に応じて、吹き出し口31aから吹き出された空気が、意匠パネル26における外縁部26aに当たらない角度に傾斜面部32a、33aの傾斜角度を設定する。
【0033】
また、導入面32bは、傾斜面部32aにおける吹き出し口31a側の端部と反対側の端部に連続して形成されている。導入面32bは、傾斜面部32aに近づくにつれて正面パネル21に接近する方向、すなわち第2送風壁33に接近する方向に傾斜している。第1送風壁32と第2送風壁33で形成される送風路には、導入面32bによってその開口径が窄まる箇所(以下、くびれ部という)Q1が形成される。このように、送風路にくびれ部Q1を設けたことで、送風路を通過する空気の流速を高めることができ、空調装置12による冷暖房効果を高めることができる。
【0034】
図5は、かご室10内において循環する空気の流れを説明するためのかご室の正面図である。
図5の実線矢印は、吹き出し口31aから吹き出された空気がかご室10内を循環する様子を表している。本例では、分岐部材40に当たって分岐された空気が、2カ所に形成された吹き出し口31aL、31aRを通って、かご室10内の異なる方向に吹き出されている。すなわち、図中左側に形成された吹き出し口31aLから吹き出された空気は、左側の側面パネル22L側に流れ、図中右側に形成された吹き出し口31aRから吹き出された空気は、右側の側面パネル22R側に流れる。以下、このように、吹き出し口31aから別々の方向に流れ出す空気の流れを分流という。吹き出し口31aから吹き出された空気は、分流した状態でかご室10の下方に移動する。
【0035】
同時に、分流した空気流の間の空間には、図5中の点線矢印で示すように、かご室10内に存在していた空気が回転しながら循環する回転流(以下、回流という)が発生する。このような回流Sは、吹き出し口31aから吹き出された空気の勢いにつられて、かご室10内にある空気が追従するように動くことで発生する。さらに、回流の上方向から下方向の流れによって、吹き出し口31aから吹き出された空気の移動速度が速くなる。すなわち、かご室10内で発生する分流と回流により、かご室10内を循環する空気の流速を高めることができ、空調装置12による冷暖房効率を高めることができる。また、吸引ダクト14から空気を効率よく吸引することができ、空調装置12の循環効率を高めることができる。
【0036】
また、本例では通風路内に分岐部材40を配置しているので、空調装置12から送られている空気を分岐部材40に当てることができる。これにより、冷房時の冷やされた空気が直接天井パネル20に当たることを防止することができ、天井パネル20の意匠面に結露が発生することを防ぐことができる。
【0037】
また、分岐部材40の形状を三角形にすることにより、空調装置12から送風されてきた空気を、三角形の点頂部にあてた後に両辺の傾斜に沿わせることによって加速することができる。これにより、分流させた状態であっても、吹き出し口31aからかご室10内に吹き出される空気の速度を速くして、空調装置12による冷暖房効率を高めることができる。
【0038】
本例では、分岐部材40の形状を三角形に構成しているが、図6に示すように、分岐部材60の形状を台形状に構成してもよい。この場合にも、空調装置12から送風されてきた空気を台形が有する傾斜に沿わせることにより、かご室10内に吹き出される分流された状態の空気の流速を速くすることができる。
【0039】
また、図7に示すように、分岐部材40の形状を矩形状に構成してもよい。分岐部材40は吹き出し口31aの上下方向の上側に厚みを有しているので、冷房時の冷やされた空気が直接天井パネル20に当たることを防ぐことができる。従って、空調装置12から送風される空気を分流させる際に天井パネル20で結露が発生することを防止できる。
【0040】
また、分岐部材40を断熱性の高い部材(例えば、ゴムやスポンジ)で構成することで、冷房時に空調装置12から送風される冷たい空気で分岐部材40の温度が低下することを防ぐことができる。これにより、分岐部材40により天井パネル20や意匠パネル26が冷やされて結露が発生することを防止できる。
【0041】
図8は、かご室内で循環する空気の流れを説明するためのかご室の斜視構成図である。
図8に示すように、長方形状の吹き出し口31aが、天井パネル20の正面パネル21側の端部に沿って2カ所設けられている。2カ所の吹き出し口31aからかご室10内に吹き出された空気は、図中の実線矢印に示すように、分流した状態で正面パネル21、床面パネル23、側面(背面)パネル22に沿って流れ、天井パネル20の背面パネル22側に形成された吐き出し口31bから吸引ダクト14に吸引される。また、上述したように、吹き出し口31aから吹き出された空気の流れによって、かご室10内では回流が発生している。
【0042】
回流は、図中の点線矢印に示すように複数発生する。例えば、かご室10の上部を天井パネル20と平行の方向に動く回流S1、かご室10の下部付近において上下方向に小さく回転する方向に動く回流S2、かご室10の床面パネル23と天井パネル20の間で上下方向に大きく回転する方向に動く回流S3などが発生する。なお、本例で示した回流はあくまでも一部の例示であり、実際には、様々な方向に複雑に動く回流が多数発生する。このように、かご室10内で複数の回流を発生させることにより、かご室10内における空気の循環効率を高めて、かご室10内の冷暖房効果を高めることができる。さらには、複数の回流によって吹き出し口31aから吹き出された空気の流速を速くすることで、吸引ダクト14から空気を効率よく吸引して、空調装置12の循環効率を高めることができる。
【0043】
図9は、図8の吹き出し口を上方から見た拡大図である。
吹き出し口31aからかご室10内に吹き出される空気の勢いによって、かご室10内では、吹き出し口31aの長手方向端部付近に、図中の矢印で示すような回流Sが発生する。なお、回流は一つの吹き出し口に対して少なくとも2カ所で発生する。すなわち、本例では、吹き出し口31aを2カ所にすることで、吹き出し口が1カ所の場合よりもかご室10内で発生する回流の数を増やすことでき、かご室10内における空気の循環効率を高めることができる。
【0044】
図10は、吹き出し口31aから吹き出される空気の流れを説明するため吹き出し口31a周りを拡大した図である。
上述したように、本例では傾斜面32a、33aを設けることにより、図中の実線矢印で示すように、吹き出し口31aから吹き出される空気を正面パネル21の壁面から離反する方向に向けることができる。また、分岐部材40により、吹き出し口31aから吹き出される空気を分流させることで、図中の点線矢印に示すように、かご室10内で正面パネル21の壁方向に向かって流れる回流Sを発生させることができる。そして、この回流Sが、壁面と吹き出し口31aから吹き出された空気の間に流れ込むことで、冷房時に吹き出し口31aから吹き出された冷たい空気が壁面に近づくことを防ぎ、壁面に結露が発生することを防止できる。また、回流の空気はかご室10内に存在していた空気のため、回流による空気の温度は吹き出し口31aから吹き出される空気の温度よりも高い。このため、吹き出し口31aから吹き出される冷たい空気と壁面の間に、温度の高い回流Sを流すことで、壁面に結露が発生することを防止できる。
【0045】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、分岐部材40の形状は、送風ダクト13に送られてきた空気を複数方向に分岐できるものであればよい。
【符号の説明】
【0046】
1…乗りかご、10…かご室、 12…空調装置、 13…送風ダクト、 13a…ダクト口、 13b…配管口、 14…吸引ダクト、 15、16…配管、 18…カバー、 20…天井パネル、 21…正面パネル(壁面)、 22…側面パネル(壁面)、 23…床面パネル、 26…意匠パネル、 26a…外縁部、 31…天井フレーム、 31a…吹き出し口、 31b…吐き出し口、 32…第1送風壁、 32a、33a…傾斜面部、 33…第2送風壁、 33b…導入面、 40…分岐部材、 S…回流
図1
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図10