(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084195
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20230612BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20230612BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S7/497
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198221
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】長堀 洋平
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA20
2F112CA12
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA25
2F112DA28
2F112DA32
2F112DA40
2F112EA05
2F112GA01
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA08
5J084BA36
5J084BA50
5J084BB20
5J084BB28
5J084CA03
5J084EA18
5J084EA20
5J084EA32
(57)【要約】
【課題】ヒータ、ワイパ等の付加的部材を透過部に設けることを要することなく、透過部に付着した水滴を除去する。
【解決手段】加熱光HLは、第2光源140から出射された後、第3ミラー156によって第3ミラー156の後方斜め上に向けて反射されている。加熱光HLは、第3ミラー156によって反射された後、第1ミラー152を透過して、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過している。加熱光HLは、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過した後、可動反射体120に照射されている。加熱光HLは、可動反射体120に照射された後、可動反射体120によって可動反射体120の前方に向けて反射されている。加熱光HLは、可動反射体120の前方に向けて反射された後、透過部102に照射されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に設けられた透過部と、
前記筐体に収容され、前記透過部を透過する光を出射する第1光源と、
前記筐体に収容され、前記透過部を加熱する光を出射する第2光源と、
を備える光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置において、
前記第1光源から出射された前記光と、前記第2光源から出射された前記光と、を前記透過部に向けて反射する可動反射体をさらに備える光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学装置において、
前記第1光源から出射された前記光を反射し、前記第2光源から出射された前記光を通過又は透過させる光学素子と、前記第1光源から出射された前記光を通過又は透過させ、前記第2光源から出射された前記光を反射する光学素子と、の少なくとも一方をさらに備える光学装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記透過部の温度に応じて前記第2光源を制御する第1制御部をさらに備える光学装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記透過部の迷光の発生位置に応じて前記第2光源を制御する第2制御部をさらに備える光学装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記第2光源から出射された前記光についての前記透過部の透過率が、前記第1光源から出射された前記光についての前記透過部の透過率より低くなっている、光学装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光学装置において、
前記第1光源から出射されて前記筐体の外部に存在する物体によって反射又は散乱された光を受信する受光部をさらに備える光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の様々な光学装置が開発されている。このような光学装置では、LD(レーザダイオード)等の光源やAPD(アバランシェフォトダイオード)等の受光部といった光学素子が筐体に収容されている場合がある。この場合、光源から出射された送信光を筐体の外部に向けて照射し、筐体の外部からの受信光を筐体の内部の受光部に照射させる必要がある。したがって、筐体には、送信光及び受信光を透過させる透過部が設けられていることがある。
【0003】
特許文献1には、光学装置の一例について記載されている。この光学装置は、送信光及び受信光が透過する前面レンズを備えている。また、この光学装置では、前面レンズに付着した水滴の凍結を防ぐため、前面レンズに発熱線が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1に記載されているように、透過部に付着した雨滴、結露等の水滴を除去するため、透過部に発熱線等のヒータを設けることがある。しかしながら、この場合、ヒータによって透過部のサイズが比較的大きくなることがある。また、ヒータへ電流を流す配線の配策等の要因によって光学装置の組み立てが比較的複雑になり得る。さらに、ヒータへ電流を流す配線の信頼性を考慮することが必要なことがある。或いは、透過部に付着した水滴をワイパによって除去することがある。しかしながら、この場合、ワイパが光学装置の測定の妨げになることがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、ヒータ、ワイパ等の付加的部材を透過部に設けることを要することなく、透過部に付着した水滴を除去することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
筐体と、
前記筐体に設けられた透過部と、
前記筐体に収容され、前記透過部を透過する光を出射する第1光源と、
前記筐体に収容され、前記透過部を加熱する光を出射する第2光源と、
を備える光学装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】実施例1に係る制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態、実施例及び変形例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る光学装置10を示す図である。
【0011】
図1において、第1方向Xを示す黒点付き白丸は、紙面の奥から手前に向かう方向が第1方向Xの正方向であり、紙面の手前から奥に向かう方向が第1方向Xの負方向であることを示している。
図1において、第2方向Y又は第3方向Zを示す矢印は、当該矢印の基端から先端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の正方向であり、当該矢印の先端から基端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の負方向であることを示している。
【0012】
第3方向Zは、光学装置10の前後方向に平行な方向となっている。具体的には、第3方向Zの正方向は、光学装置10の後方から前方に向かう方向となっており、第3方向Zの負方向は、光学装置10の前方から後方に向かう方向となっている。第1方向Xは、第3方向Zに直交している。また、第1方向Xは、光学装置10の左右方向に平行な方向となっている。具体的には、第1方向Xの正方向は、光学装置10の後方から見て光学装置10の右方から左方に向かう方向となっており、第1方向Xの負方向は、光学装置10の後方から見て光学装置10の左方から右方に向かう方向となっている。第2方向Yは、第1方向X及び第3方向Zの双方に直交している。また、第2方向Yは、光学装置10の高さ方向に平行な方向となっている。具体的には、第2方向Yの正方向は、光学装置10の下方から上方に向かう方向となっており、第2方向Yの負方向は、光学装置10の上方から下方に向かう方向となっている。
【0013】
実施形態において、第2方向Yは、鉛直方向に平行な方向となっている。具体的には、第2方向Yの正方向は、鉛直方向の下方から上方に向かう方向となっており、第2方向Yの負方向は、鉛直方向の上方から下方に向かう方向となっている。第1方向X及び第3方向Zは、鉛直方向に垂直な水平方向に平行な方向となっている。ただし、第1方向X、第2方向Y、第3方向Z、鉛直方向及び水平方向の関係は、上述した例に限定されない。例えば、第1方向X又は第3方向Zが鉛直方向に平行となっていてもよい。
【0014】
光学装置10は、筐体100、第1光源110、可動反射体120、受光部130、第2光源140、第1ミラー152、第2ミラー154及び第3ミラー156を備えている。
【0015】
筐体100は、光学装置10の光学系を構成する光学素子を収容している。具体的には、筐体100は、第1光源110、可動反射体120、受光部130、第2光源140、第1ミラー152、第2ミラー154及び第3ミラー156を収容している。したがって、これらの光学素子が筐体100の外部に設けられている場合と比較して、これらの光学素子に雨滴、埃等の異物が付着することを抑制することができる。
【0016】
筐体100の前面には、透過部102が設けられている。
図1に示す例において、透過部102は、透過部102の上端が透過部102の下端よりも筐体100の前方に位置する状態で第2方向Yに対して傾いている。したがって、透過部102が第2方向Yに対して平行である場合と比較して透過部102の前面に水滴、埃等の異物が付着しにくくすることができる。また、透過部102が第2方向Yに対して平行である場合と比較して透過部102の前方斜め上から太陽光等のノイズ光が透過部102を透過しにくくすることができる。ただし、透過部102の配置は
図1に示す例に限定されない。例えば、透過部102は、第2方向Yに対して略平行となっていてもよい。
【0017】
図1に示す例において、光学装置10は、第1光源110から送信光TLが出射されて受光部130によって受信光RLが受信される光学系を備えている。この光学系の詳細を説明する。
【0018】
第1光源110は、例えばレーザダイオード(LD)である。第1光源110は、送信光TLを出射している。送信光TLは、光学装置10の測距等、光学装置10の測定に用いられる光である。送信光TLはパルス波となっている。例えば、送信光TLは、所定の繰り返し周期で出射されている。
【0019】
図1において第1光源110から第1ミラー152及び第2ミラー154を経由して可動反射体120に向けて延びる軸によって模式的に示されるように、送信光TLは、第1光源110から出射されて、第1ミラー152によって反射されて、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過して、可動反射体120に照射されている。
【0020】
具体的には、第1ミラー152は、第1光源110の前方に位置している。第2ミラー154は、第1ミラー152の後方斜め上に位置している。可動反射体120は、第2ミラー154の後方斜め上に位置している。送信光TLは、第1光源110から第1光源110の前方に向けて出射されている。送信光TLは、第1光源110から出射された後、第1ミラー152によって第1ミラー152の後方斜め上に向けて反射されている。送信光TLは、第1ミラー152によって反射された後、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過している。送信光TLは、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過した後、可動反射体120に照射されている。
【0021】
送信光TLは、可動反射体120に照射された後、可動反射体120によって可動反射体120の前方に向けて反射されている。可動反射体120の前方には、透過部102が位置している。送信光TLは、可動反射体120によって反射された後、透過部102を透過している。
【0022】
実施形態において、可動反射体120は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。具体的には、可動反射体120は、互いに直交する所定の第1回転軸及び所定の第2回転軸の周りに揺動可能になっている。可動反射体120が第1回転軸の周りに揺動することで、所定の視野Fにおける水平方向の走査が行われている。また、可動反射体120が第2回転軸の周りに揺動することで、視野Fにおける鉛直方向の走査が行われている。
図1に示す例において、視野Fの第2方向Yの幅は、可動反射体120の前方に向かうにつれて広くなっている。
【0023】
なお、可動反射体120は、MEMSミラー以外の反射体であってもよい。例えば、可動反射体120は、ポリゴンミラー、ガルバノミラー等であってもよい。この例においても、送信光TLを用いた走査が可能である。
【0024】
送信光TLは、可動反射体120によって筐体100の外部に向けて照射された後、筐体100の外部に存在する物体によって反射又は散乱されている。送信光TLの反射光又は散乱光は、受信光RLとして可動反射体120に照射されている。
【0025】
図1において可動反射体120から第2ミラー154を経由して受光部130に向けて延びる軸によって模式的に示されるように、受信光RLは、可動反射体120によって反射されて、第2ミラー154によって反射されて、受光部130に照射されている。
【0026】
具体的には、受光部130は、第2ミラー154の後方に位置している。受光部130は、例えば、APD(アバランシェフォトダイオード)である。受信光RLは、可動反射体120によって反射された後、第2ミラー154によって反射されている。受信光RLは、第2ミラー154によって反射された後、受光部130に照射されている。これによって、受光部130は、受信光RLを受信している。受光部130は、受信光RLを電流等の電気的信号に変換して、当該電気的信号を出力している。
【0027】
次に、第2光源140の詳細について説明する。
【0028】
第2光源140は、例えばLDである。第2光源140は、加熱光HLを出射している。加熱光HLは、透過部102の加熱に用いられる光である。加熱光HLの波長は、送信光TLの波長と異なっている。加熱光HLは、例えば、連続波(CW)である。或いは、加熱光HLは、パルス波であってもよい。
【0029】
図1において第2光源140から第3ミラー156、第1ミラー152及び第2ミラー154を経由して可動反射体120に向けて延びる軸によって模式的に示されるように、加熱光HLは、第2光源140から出射されて、第3ミラー156によって反射されて、第1ミラー152を透過して、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過して、可動反射体120に照射されている。
【0030】
具体的には、第3ミラー156は、第2光源140の前方に位置している。また、第3ミラー156は、第1ミラー152の前方斜め下に位置している。加熱光HLは、第2光源140から第2光源140の前方に向けて出射されている。加熱光HLは、第2光源140から出射された後、第3ミラー156によって第3ミラー156の後方斜め上に向けて反射されている。加熱光HLは、第3ミラー156によって反射された後、第1ミラー152を透過して、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過している。加熱光HLは、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過した後、可動反射体120に照射されている。
【0031】
第3ミラー156は、例えば、ダイクロイックミラー等の光学フィルタにしてもよい。例えば、第3ミラー156は、加熱光HLのうち透過部102の加熱に使用される波長域の光を反射させ、加熱光HLのうち透過部102の加熱に使用される波長域と異なる波長域の光を透過させてもよい。これによって、第2光源140の制御を要することなく、第2光源140から出射された加熱光HLのうち透過部102の加熱に用いられる波長域の光を透過部102に照射させることができる。また、加熱光HLのうち透過部102の加熱に使用される波長域と異なる波長域の光が第3ミラー156を透過する場合、加熱光HLのうち透過部102の加熱に使用される波長域と異なる波長域の光が第3ミラー156によって反射されて透過部102を透過して筐体100の外部に向けて出射された場合と比較して、アイセーフを向上させることができる。
【0032】
加熱光HLは、可動反射体120に照射された後、可動反射体120によって可動反射体120の前方に向けて反射されている。加熱光HLは、可動反射体120の前方に向けて反射された後、透過部102に照射されている。透過部102における加熱光HLの照射位置は、第2光源140からの加熱光HLの出射タイミングと、送信光TLが可動反射体120に照射されたタイミングにおける可動反射体120の向きと、によって調整可能になっている。
【0033】
加熱光HLは、透過部102を加熱している。したがって、透過部102に付着した水滴を、加熱光HLによる透過部102の加熱によって除去することができる。この場合、ヒータ、ワイパ等の付加的部材を透過部102に設けることを要することなく、透過部102に付着した水滴を除去することができる。ただし、実施形態においても、必要に応じて、ヒータ、ワイパ等の付加的部材を透過部102に設けてもよい。
【0034】
透過部102は、加熱光HLを熱に変換する光熱変換材料を有している。例えば、透過部102の前面及び後面の少なくとも一方が蒸着等の堆積により形成された光熱変換材料によって覆われている。或いは、光熱変換材料を含むシートが透過部102の前面及び後面の少なくとも一方に貼り付けられていてもよい。或いは、透過部102の全体が光熱変換材料によって形成されていてもよい。
【0035】
光熱変換材料は、加熱光HLに対する透過率又は吸収率と、送信光TLに対する透過率又は吸収率と、の観点から決定することができる。例えば、加熱光HLについての光熱変換材料の透過率は、送信光TLについての光熱変換材料の透過率より低くすることができる。言い換えると、加熱光HLについての光熱変換材料の吸収率は、送信光TLについての光熱変換材料の吸収率より高くすることができる。これによって、加熱光HLについての透過部102の透過率を、送信光TLについての透過部102の透過率より低くすることができる。言い換えると、加熱光HLについての透過部102の吸収率を、送信光TLについての透過部102の透過率より高くすることができる。
【0036】
光熱変換材料は、例えば、誘電体多層膜等の光学薄膜にしてもよい。この例においては、蒸着等の堆積によって透過部102の前面及び後面の少なくとも一方に光学薄膜を形成することができる。光学薄膜としては、AlF3、MgF2、YF3、SiO2、LaF3、GdF3、Al2O3、Y2O3、HfO2、Ta2O5、TiO2、ZnS、Si、Ge等が例示される。
【0037】
光熱変換材料は、例えば、樹脂フィルムにしてもよい。例えば、透過部102がガラスである場合、ガラスの前面及び後面の少なくとも一方に樹脂フィルムを貼り付けてもよい。或いは、透過部102が樹脂フィルムであってもよい。樹脂フィルムとしては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等が例示される。
【0038】
実施形態において、可動反射体120は、送信光TLを用いた走査を行う素子と、加熱光HLを透過部102の異なる位置に向けて照射させる素子と、の双方として機能している。したがって、送信光TLを用いた走査を行う素子と、加熱光HLを透過部102の異なる位置に向けて照射させる素子と、を別々に設ける場合と比較して、光学装置10の光学系の部品点数を減少させることができる。
【0039】
実施形態において、第1ミラー152は、送信光TLを反射して加熱光HLを透過させる光学素子として機能している。したがって、第1ミラー152から可動反射体120までの送信光TLの光軸と、第3ミラー156から可動反射体120までの加熱光HLの光軸と、を略同一軸に比較的揃えやすくなっている。第1ミラー152から可動反射体120までの送信光TLの光軸と、第3ミラー156から可動反射体120までの加熱光HLの光軸と、が略同一軸である場合、可動反射体120によって、送信光TL及び加熱光HLを略同一タイミングで略同一方向に向けて反射することができる。この場合、第1ミラー152から可動反射体120までの送信光TLの光軸と、第3ミラー156から可動反射体120までの加熱光HLの光軸と、が互いにずれている場合と比較して、透過部102における加熱光HLの照射位置の調整が容易となる。したがって、第1ミラー152から可動反射体120までの送信光TLの光軸と、第3ミラー156から可動反射体120までの加熱光HLの光軸と、が互いにずれている場合と比較して、透過部102における水滴の付着位置への加熱光HLの照射が容易となる。
【0040】
なお、光学装置10の光学系は、実施形態において説明した光学系に限定されない。
【0041】
例えば、第1ミラー152から可動反射体120までの送信光TLの光軸と、第3ミラー156から可動反射体120までの加熱光HLの光軸と、は互いにずれていてもよい。この場合においても、送信光TL及び加熱光HLは、可動反射体120によって反射することができる。このため、送信光TLを用いた走査を行う素子と、加熱光HLを透過部102の異なる位置に向けて照射させる素子と、を別々に設ける場合と比較して、光学装置10の光学系の部品点数を減少させることができる。
【0042】
また、送信光TLを用いた走査を行う素子と、加熱光HLを透過部102の異なる位置に向けて照射させる素子と、は別々に設けられていてもよい。例えば、送信光TLは、実施形態を用いて説明したように可動反射体120によって反射される。これに対して、第2光源140は、実施形態に係る可動反射体120と異なる他の可動反射体によって透過部102に向けて反射されてもよい。或いは、加熱光HLは、可動反射体の反射を経ることなく、第2光源140をモータ等の駆動部によって揺動させながら、透過部102に向けて照射されてもよい。この例においても、第2光源140は、筐体100に収容させることができる。この場合、第2光源140が筐体100の外部に設けられている場合と比較して、第2光源140に雨滴、埃等の異物が付着することを抑制することができる。
【0043】
また、第2ミラー154には貫通穴が設けられていなくてもよい。この場合、第2ミラー154は、例えば、ビームスプリッタであってもよい。この例において、第2ミラー154は、送信光TL及び加熱光HLを透過させている。また、第1ミラー152には、加熱光HLを通過させる貫通穴が設けられていてもよい。
【実施例0044】
(実施例1)
図2は、実施例1に係る光学装置10Aを示す図である。実施例1に係る光学装置10Aは、以下の点を除いて実施形態に係る光学装置10と同様である。
【0045】
実施例1に係る光学装置10Aは、温度センサ210A及び制御部300Aを備えている。温度センサ210A及び制御部300Aは、筐体100に収容されている。ただし、制御部300Aは、筐体100の外部に設けられていてもよい。なお、
図2に示す制御部300Aは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。また、
図2に示す制御部300Aは、模式的に示されたものであり、制御部300Aの実際の位置又は大きさを示唆するものではない。
【0046】
温度センサ210Aは、例えば、赤外線温度センサである。温度センサ210Aは、透過部102の後方斜め上に位置しており、透過部102の後面から離間している。温度センサ210Aは、透過部102の後面の温度を検出している。温度センサ210Aの測定範囲Rは、透過部102の後面のほぼ全体に亘っている。したがって、温度センサ210Aは、透過部102の後面のほぼ全体の温度分布を比較的容易に検出することができる。
【0047】
制御部300Aは、透過部102の温度に応じて、第2光源140を制御している。この制御において、制御部300Aは、温度センサ210Aの測定結果を参照して、透過部102の温度を示す情報を取得している。したがって、透過部102の温度に応じて、透過部102に加熱光HLを適当に照射させることができる。
【0048】
例えば、透過部102の後面に結露が生じて透過部102の後面のほぼ全体の温度が所定の温度以下である場合、制御部300Aは、透過部102の後面に結露が生じていると判断することができる。この場合、制御部300Aは、筐体100内の温度における飽和水蒸気量を考慮して、透過部102に加熱光HLを照射させて、透過部102の後面の結露を除去することができる。或いは、透過部102の前面の一部分に雨滴等の水滴が付着して透過部102の前面の温度が局所的に低くなっている場合、制御部300Aは、透過部102の前面の一部分に水滴が付着していると判断することができる。この場合、制御部300Aは、透過部102における水滴の付着位置に加熱光HLを照射させて、透過部102における水滴の付着位置の温度を水滴の沸点より高い温度に加熱することができる。
【0049】
或いは、透過部102の一部分に破損が生じている状態で透過部102に加熱光HLが照射されることで透過部102の一部分の温度が局所的に高くなってる場合、制御部300Aは、透過部102の一部分に破損が生じていると判断することができる。この場合、制御部300Aは、透過部102における局所的に温度が高い位置への加熱光HLへの照射を停止することができる。これによって、透過部102における局所的に温度が高い位置を経由して加熱光HLが筐体100の外部に照射されることを抑制することができる。したがって、透過部102における局所的に温度が高い位置を加熱光HLが透過する場合と比較して、アイセーフを向上させることができる。
【0050】
また、制御部300Aは、透過部102の迷光の発生位置に応じて、第2光源140を制御している。したがって、透過部102の迷光の発生位置に応じて、透過部102に加熱光HLを適当に照射させることができる。
【0051】
具体的には、制御部300Aは、第1光源110からの送信光TLの出射タイミングと、送信光TLが可動反射体120に照射されたタイミングにおける可動反射体120の向きと、受光部130による光の受信タイミングと、を参照して、透過部102の迷光の発生位置を示す情報を取得している。透過部102に付着した水滴に送信光TLが照射された場合、透過部102における水滴が付着していない位置に送信光TLが照射された場合と比較して、透過部102において迷光が発生しやすい。当該水滴に起因して発生した迷光は、可動反射体120によって反射されて、第2ミラー154によって反射されて、受光部130に向けて照射される。第1光源110から送信光TLが出射されてから受光部130によって迷光が受信されるまでの時間は、第1光源110から送信光TLが出射されてから光学装置10によって受信光RLが受信されるまでの時間より短くなっている。したがって、制御部300Aは、第1光源110から送信光TLが出射されてから受光部130によって光が受信されるまでの時間と、送信光TLが可動反射体120に照射されたタイミングにおける可動反射体120の向きと、から、透過部102の迷光の発生位置を判断することができる。
【0052】
制御部300Aは、第2光源140から加熱光HLが出射されるタイミングと、送信光TLが可動反射体120に照射されたタイミングにおける可動反射体120の向きと、を制御して、透過部102における上記水滴が付着されている位置又はその近傍に、加熱光HLを照射させる。この場合、透過部102における水滴が付着した位置を考慮することなく加熱光HLを照射する場合と比較して、水滴を効率的に除去することができる。
【0053】
なお、透過部102の温度に応じての第2光源140の制御に関する制御部300Aの機能と、透過部102の迷光の発生位置に応じての第2光源140の制御に関する制御部300Aの機能と、は、同一のハードウェアによって実現されてもよいし、又は異なるハードウェアによって実現されてもよい。
【0054】
図3は、実施例1に係る制御部300Aのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0055】
制御部300Aの主な構成は、集積回路を用いて実現される。この集積回路は、制御部300Aを備える制御装置となっている。この集積回路は、バス302A、プロセッサ304A、メモリ306A、ストレージデバイス308A、入出力インタフェース310A及びネットワークインタフェース312Aを有する。
【0056】
バス302Aは、プロセッサ304A、メモリ306A、ストレージデバイス308A、入出力インタフェース310A及びネットワークインタフェース312Aが、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ304A、メモリ306A、ストレージデバイス308A、入出力インタフェース310A及びネットワークインタフェース312Aを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0057】
プロセッサ304Aは、マイクロプロセッサ等を用いて実現される演算処理装置である。
【0058】
メモリ306Aは、RAM(Random Access Memory)等を用いて実現されるメモリである。
【0059】
ストレージデバイス308Aは、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等を用いて実現されるストレージデバイスである。
【0060】
入出力インタフェース310Aは、制御部300Aを周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。
図3において、入出力インタフェース310Aには、第1光源110、可動反射体120、受光部130、第2光源140及び温度センサ210Aが接続されている。
【0061】
ネットワークインタフェース312Aは、制御部300Aを通信網に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース312Aが通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0062】
ストレージデバイス308Aは、制御部300Aの各機能要素を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ304Aは、このプログラムモジュールをメモリ306Aに読み出して実行することで、制御部300Aの各機能を実現する。
【0063】
なお、上記した集積回路のハードウェア構成は
図3に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ306Aに格納されてもよい。この場合、集積回路は、ストレージデバイス308Aを備えていなくてもよい。
【0064】
(実施例2)
図4は、実施例2に係る光学装置10Bを示す図である。実施例2に係る光学装置10Bは、以下の点を除いて実施例1に係る光学装置10Aと同様である。
【0065】
実施例2に係る温度センサ210Bの少なくとも一部分は、第3ミラー156Bの前方斜め下に位置している。温度センサ210Bは、透過部102の後面から放射された赤外線を検出している。具体的には、この赤外線は、透過部102の後面から放射されて、可動反射体120によって反射されて、第2ミラー154、第1ミラー152及び第3ミラー156Bを透過して温度センサ210Bに照射されている。温度センサ210Bは、当該赤外線を検出することで、透過部102の温度分布を測定している。実施例2においては、透過部102の温度分布の分解能と、透過部102における迷光の発生位置の分布の分解能と、を同じにすることができる。また、実施例2においては、透過部102の温度分布の測定範囲を、透過部102における送信光TLが照射される範囲に限定することができる。
【0066】
実施例2に係る制御部300Bは、実施例1に係る制御部300Aと同様にして、温度センサ210Bの測定結果を参照して、透過部102の温度を示す情報を取得している。これによって、実施例2に係る制御部300Bは、実施例1に係る制御部300Aと同様にして、透過部102の温度に応じて、第2光源140を制御することができる。また、実施例2に係る制御部300Bは、実施例1に係る制御部300Aと同様にして、透過部102の迷光の発生位置に応じて、第2光源140を制御してもよい。
【0067】
(変形例1)
図5は、変形例1に係る光学装置10Cを示す図である。変形例1に光学装置10Cは、以下の点を除いて、実施形態に係る光学装置10と同様である。
【0068】
変形例1に係る光学装置10Cにおいては、第1光源110Cから出射された送信光TLが、第3ミラー156によって反射されて、第1ミラー152を透過して、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過して、可動反射体120に照射されている。また、変形例1に係る光学装置10Cにおいては、第2光源140Cから出射された加熱光HLが、第1ミラー152によって反射されて、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過して、可動反射体120に照射されている。加熱光HLは、可動反射体120に照射された後、可動反射体120によって透過部102に向けて反射されている。したがって、変形例1においても、実施形態と同様にして、加熱光HLによって透過部102を加熱することができる。
【0069】
変形例1において、第1ミラー152は、加熱光HLを反射して送信光TLを透過させる光学素子として機能している。したがって、第1ミラー152から可動反射体120までの加熱光HLの光軸と、第3ミラー156から可動反射体120までの送信光TLの光軸と、を略同一軸に比較的揃えやすくなっている。
【0070】
なお、第2ミラー154には、貫通穴が設けられていなくてもよい。この場合、第2ミラー154は、送信光TL及び加熱光HLを透過させてもよい。また、第1ミラー152には、送信光TLを通過させる貫通穴が設けられていてもよい。
【0071】
(変形例2)
図6は、変形例2に係る光学装置10Dを示す図である。変形例2に光学装置10Dは、以下の点を除いて、実施形態に係る光学装置10と同様である。
【0072】
変形例2に係る光学装置10Dは、実施形態に係る第3ミラー156を備えていない。変形例2に係る第2光源140Dは、第1ミラー152の前方斜め下に位置している。変形例2において、加熱光HLは、第2光源140Dから第2光源140Dの後方斜め上に向けて出射されている。これによって、加熱光HLは、第1ミラー152を透過して、第2ミラー154に設けられた貫通穴を通過して、可動反射体120に照射されている。加熱光HLは、可動反射体120に照射された後、可動反射体120によって透過部102に向けて反射されている。したがって、変形例2においても、実施形態と同様にして、加熱光HLによって透過部102を加熱することができる。
【0073】
変形例2においては、加熱光HLが実施形態に係る第3ミラー156の反射を経ることなく、可動反射体120に照射されている。したがって、加熱光HLが第3ミラー156の反射を経る場合と比較して、第3ミラー156の反射による加熱光HLの損失を低減することができる。
【0074】
なお、第2ミラー154には、貫通穴が設けられていなくてもよい。この場合、第2ミラー154は、送信光TL及び加熱光HLを透過させてもよい。また、第1ミラー152には、加熱光HLを通過させる貫通穴が設けられていてもよい。
【0075】
以上、図面を参照して本発明の実施形態、実施例及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。