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特開2023-84200雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法
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  • 特開-雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084200
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
E03F1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198231
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】591084654
【氏名又は名称】エバタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】豊田 達也
(72)【発明者】
【氏名】張替 英樹
(72)【発明者】
【氏名】北原 智子
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA11
(57)【要約】
【課題】雨水等貯留浸透設備の製造工程の効率化を図り、雨水等貯留浸透設備の製造コストを低減する。
【解決手段】表面及び裏面において条状の凹部1d及び凸部1eを交互に繰り返し、凹部及び凸部が外郭形状に対して少なくとも異なる二方向に斜行する波形形状部分を含む樹脂製板状部材1を同一方向に積層し、積層した複数の板状部材の積層方向に貫通する複数の通水孔2を穿設し、複数の板状部材の隣接する板状部材を、相対向面において各々の板状部材の凹部及び凸部が交差するように順次積層し、交差した複数の凸部の接触部1fにおいて溶着する。溶着した複数の板状部材からなる組立体5の積層方向に対して垂直方向の面に連通孔6を穿設する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面において条状の凹部及び凸部を交互に繰り返し、該凹部及び凸部が外郭形状に対して少なくとも異なる二方向に斜行する波形形状部分を含む樹脂製板状部材を同一方向に積層し、該積層した複数の板状部材の積層方向に貫通する複数の通水孔を穿設し、
前記複数の板状部材の隣接する板状部材を、相対向面において各々の板状部材の前記凹部及び凸部が交差するように順次積層し、交差した複数の凸部の接触部において溶着することを特徴とする雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法。
【請求項2】
前記複数の通水孔の穿設を、上下方向に移動して前記複数の通水孔の各々を貫通する複数の回転ドリルを用いて同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法。
【請求項3】
前記隣接する板状部材の交差した複数の凸部の接触部における溶着を、上下方向に移動して前記接触部に当接する複数の溶接チップを用いて同時に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法。
【請求項4】
前記溶着した複数の板状部材からなる組立体の前記積層方向に対して垂直方向の面に連通孔を穿設することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法。
【請求項5】
前記連通孔を、円筒状部の一端に複数の刃と、前記円筒状部の内側に直径方向に配置された板状の刃を有する円筒状回転カッターによって穿設することを特徴とする請求項4に記載の雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等を貯留する雨水等貯留設備や、雨水等を一時的に貯留して貯留した雨水等を地中に緩やかに浸透させて排出する雨水等浸透設備に使用される組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水等貯留設備は、集水した雨水等を貯留するために地中に埋設される。一方、雨水等浸透設備は、集水した雨水等を一時的に貯留した後、地中に緩やかに浸透させて河川等への急激な流入を調整したり、地下水脈への浸透水量を確保して地盤沈下を抑止するために地中に埋設される。
【0003】
上記雨水等貯留設備及び雨水等浸透設備(以下「雨水等貯留浸透設備」という。)には、種々のタイプのものが存在する。本出願人は、限られた貯留空間を効率的に広く利用可能で、優れた機械的強度を有し、幅、深さ及び長さを自在に変更することができ、平面積及び容積の違いに容易に追従し得るブロック状積層体、及びこれを用いた雨水等貯留浸透設備を提案した(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-313926号公報
【特許文献2】特開2004-238839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に記載のブロック状積層体(以下「組立体」という。)は、表面及び裏面において条状の凹部及び凸部を交互に繰り返す板状部材を、隣接する板状部材の相対向面において、各々の凹部及び凸部が交差するように順次に積層し、交差した複数の凸部の接触部を互いに結合して製造される。
【0006】
雨水等貯留浸透設備には、雨水等の流入、流出のために通水孔を設けたり、雨水等の流入管や流出管を接続するための連通孔を穿設する必要がある。しかし、上記組立体を用いて雨水等貯留浸透設備を製造すると、通水孔や連通孔の穿設作業が容易ではなく、雨水等貯留浸透設備の製造コストが高くなる要因の一つとなっていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、製造工程の効率化を図り、雨水等貯留浸透設備の製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法であって、表面及び裏面において条状の凹部及び凸部を交互に繰り返し、該凹部及び凸部が外郭形状に対して少なくとも異なる二方向に斜行する波形形状部分を含む樹脂製板状部材を同一方向に積層し、該積層した複数の板状部材の積層方向に貫通する複数の通水孔を穿設し、前記複数の板状部材の隣接する板状部材を、相対向面において各々の板状部材の前記凹部及び凸部が交差するように順次積層し、交差した複数の凸部の接触部において溶着することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、樹脂製板状部材を同一方向に積層して板状部材が密着した状態で複数の通水孔を穿設した後、隣接する板状部材を、相対向面において各々の板状部材の前記凹部及び凸部が交差するように順次積層して溶着するため、通水孔を穿つ際に複数の板状部材が相対移動し難く、短時間で精度よく通水孔を穿設することができる。
【0010】
上記製造方法において、前記複数の通水孔の穿設を、上下方向に移動して前記複数の通水孔の各々を貫通する複数の回転ドリルを用いて同時に行うことで、作業時間を短縮することができる。
【0011】
また、前記隣接する板状部材の交差した複数の凸部の接触部における溶着を、上下方向に移動して前記接触部に当接する複数の溶接チップを用いて同時に行うことで、作業時間を短縮することができる。
【0012】
前記溶着した複数の板状部材からなる組立体の前記積層方向 に対して垂直方向の面に連通孔を穿設することで、一回の穿設作業で連通孔を形成することができる。
【0013】
前記連通孔の穿設を、円筒状部の一端に複数の刃と、前記円筒状部の内側に直径方向に配置された板状の刃を有する円筒状回転カッターで行うことで、必要箇所のみ切断することができ、作業効率が向上する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、製造工程が効率化され、雨水等貯留浸透設備の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法に用いる樹脂製板状部材を示す三面図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
図2図1に示す樹脂製板状部材の斜視図である。
図3】本発明に係る雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法における通水孔穿設工程を説明するための概略図である。
図4】本発明に係る雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法における通水孔穿設工程を説明するための概略図である。
図5】本発明に係る雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法における溶着工程を説明するための概略図である。
図6】本発明に係る雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法における溶着工程を説明するための概略図である。
図7】本発明に係る雨水等貯留浸透設備用組立体の製造方法における連通孔穿設工程を説明するための概略図である。
図8】本発明に係る製造方法よって製造された雨水等貯留浸透設備用組立体を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1及び図2は、本発明に係る雨水等貯留浸透設備用組立体(以下「組立体」という。)の製造方法に用いる樹脂製板状部材(以下「板状部材」という。)を示す。この板状部材1は、熱可塑性の樹脂からなる波板状の板状部材であって、正面視で台形状の空間を形成するように、複数の波板部1a、1bが矩形状の頂上部1cを挟んで平面視で各々斜め方向(波板部1aは左上方向、波板部1bは左下方向)に延設される。すなわち、この板状部材1は、表面及び裏面において条状の凹部1d及び凸部1eを交互に繰り返し、これら凹部1d及び凸部1eは外郭形状に対して異なる二方向に斜行する。
【0018】
次に、通水孔穿設工程について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0019】
図3に示すように、上記板状部材1を同一方向、すなわち板状部材1の表面及び裏面を維持した状態で複数枚(図示例では4枚(1A~1D))積層する。板状部材1を同一方向に積層すると、隣接する2枚の板状部材1(例えば1C、1D)の上側の板状部材1Cの条状の凹部1dに下側の板状部材1Dの条状の凸部1eが進入し、複数の板状部材1(1C、1D)が互いに密着した状態で積層される。
【0020】
次に、図4に示すように、積層した板状部材1(1A~1D)をテーブル等の上に保持した状態で、上方から複数の電動回転ドリル3等の穿設装置を用いて複数の通水孔2を一気に穿設する。同図では、18個の通水孔2を穿設する。複数の板状部材1(1A~1D)が互いに密着した状態で積層されているため、通水孔2を穿つ際に複数の板状部材1が相対移動し難く、ドリルの移動距離も短くて済み、位置的にも精度よく通水孔2を穿設することができる。また、複数の回転ドリル3等を用いて複数の通水孔2を一気に穿設するため、作業時間も短くて済む。
【0021】
次に、溶着工程について、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0022】
両図に示すように、通水孔を穿設した後の一対の板状部材1A、1Bを互いに反対方向、すなわち上方の板状部材1Aは表面及び裏面を維持した状態で、下方の板状部材1Bは天地を逆にした状態で両者を当接させてテーブル等の上に固定する。これによって、ハニカム状の空間が多数形成されると共に、一対の板状部材1A、1Bの各々の凸部1e(図1参照)が複数箇所で接触する。この状態で、図5(a)に示すように、上方から溶着装置の溶着部(溶接チップ4)を凸部接触部1fに当接させ、複数の凸部接触部1fを一気に溶着する。同図では、一度に276箇所の凸部接触部1fを溶着する。これによって、短時間で一対の板状部材1を結合することができる。
【0023】
次に、結合された板状部材1A、1Bの上方にさらに1枚の板状部材1を互いに反対方向に載置し、上記と同様にして凸部接触部1fを溶着する。この作業を繰り返し、最終的に例えば24枚の板状部材1を結合して組立体5(図7参照)を製造する。
【0024】
次に、連通孔穿設工程について、図7を参照しながら説明する。
【0025】
前記溶着した複数の板状部材1からなる組立体5をテーブル等の上に固定し、その側面に、図7(c)に示すように、円筒状部7aの一端に複数の刃(円形の二重刃7b、7c)と、円筒状部7aの内側に直径方向に配置された板状の刃7dを有する円筒状のカッター7を回転させながら進入させて連通孔6(図8参照)を穿設して組立体が完成する。円筒状のカッター7を用いることで必要箇所のみ切断することができる。また、穿設する連通孔の径に応じた寸法のカッター7を用いることで、複数種類の連通孔6に対応することができる。
【0026】
尚、上記実施の形態においては、表面及び裏面において条状の凹部1d及び凸部1eを交互に繰り返し、これら凹部1d及び凸部1eは外郭形状に対して異なる二方向に斜行する板状部材1を用いたが、凹部1d及び凸部1eが外郭形状に対して異なる三方向以上に斜行する板状部材を用いることもできる。
【0027】
また、上記実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0028】
1(1A~1D) 板状部材
1a、1b 波板部
1c 頂上部
1d 凹部
1e 凸部
1f 凸部接触部
2 通水孔
3 電動回転ドリル
4 溶接チップ
5 組立体
6 連通孔
7 カッター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8