(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084222
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】輪止め装置の配置検知装置
(51)【国際特許分類】
B60T 3/00 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
B60T3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198266
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大葉 孝明
(72)【発明者】
【氏名】森山 亮
(72)【発明者】
【氏名】森 仁志
(57)【要約】
【課題】輪止め装置が車輪に対して正しく配置されているか否かを検出することのできる輪止め装置の配置検出装置を提供する。
【解決手段】車両に設けられて車輪の周りの画像を取得するカメラ100と、カメラ100によって取得された画像に基づいて輪止めが正しく配置されているか否かを判断する配置判断装置63とを備え、配置判断装置63は、カメラ100によって取得される画像領域内に輪止め装置の配置の許容範囲を示す許容領域を設定する領域設定部64と、カメラ100によって取得された画像において輪止め装置を示す画像を識別する画像識別部65と、画像識別部65により識別された輪止め装置を示す画像と許容領域との位置関係に基づいて輪止めが車輪に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断する輪止め配置判断部66とを備えて構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
停車中の車両の車輪に対向して路面上に配置されて前記車両の逸走を防止する輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されているか否かを検出する輪止め装置の配置検出装置であって、
前記車両に設けられて前記車輪の周りの画像を取得する撮像装置と、
前記撮像装置によって取得された画像に基づいて、前記車輪に対向して前記輪止め装置が正しく配置されているか否かを判断する配置判断装置とを備え、
前記配置判断装置は、
前記撮像装置によって取得される画像領域内に前記輪止め装置の配置の許容範囲を示す許容領域を設定する領域設定部と、
前記撮像装置によって取得された画像において前記輪止め装置を示す画像を識別する画像識別部と、
前記画像識別部により識別された前記輪止め装置を示す画像と前記許容領域との位置関係に基づいて前記輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断する輪止め配置判断部とを備えたことを特徴とする輪止め装置の配置検出装置。
【請求項2】
前記許容領域は、前記輪止め装置に設けられ前記輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されたときに前記車両の車体側面から外側へ延在する識別部が位置する許容範囲を示し、
前記画像識別部は、前記輪止め装置を示す画像として、前記撮像装置によって取得された画像における前記識別部の画像を識別することを特徴とする請求項1に記載の輪止め装置の配置検出装置。
【請求項3】
前記輪止め配置判断部は、前記画像識別部によって識別された前記輪止め装置を示す画像の一部もしくはすべてが前記許容領域の外に位置していた場合、又は、前記画像識別部が前記輪止め装置を示す画像を識別できなかった場合に、前記輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されていないと判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の輪止め装置の配置検出装置。
【請求項4】
前記輪止め配置判断部により前記輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されていないと判断されたときに警報作動を行う警報装置を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の輪止め装置の配置検出装置。
【請求項5】
前記車両の前後方向における傾斜角度を検出する傾斜角度検出装置を備え、
前記領域設定部は、前記車両の停車時における傾斜角度と前記車両に設けられたジャッキ装置によって前記車体が支持されたときの傾斜角度との差に基づいて、前記車体が支持された状態で前記撮像装置によって取得される画像領域内での許容範囲を示すように前記許容領域を補正することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の輪止め装置の配置検出装置。
【請求項6】
地上から前記車両の所定位置までの高さを検出する車高検出装置を備え、
前記領域設定部は、前記車両の停車時に前記車高検出装置により検知された高さと前記車両に設けられたジャッキ装置によって前記車体が支持されたときに前記車高検出装置により検知された高さとの差に基づいて、前記車体が支持された状態で前記撮像装置によって取得される画像領域内での許容範囲を示すように前記許容領域を補正することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の輪止め装置の配置検出装置。
【請求項7】
前記撮像装置は、前記車両に設けられ、画像処理によって平面視での前記車体及び前記車体の全周囲を示す全周囲画像を生成するために前記車両の全周囲画像を取得する全周囲
画像生成用カメラであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の輪止め装置の配置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高所作業車などの車両の逸走を防止する輪止め装置の配置を検出する輪止め装置の配置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車などの車両においては、車両を駐車して作業を行う場合に、駐車ブレーキ(サイドブレーキ)による車輪の制動に加えて、この車輪と駐車路面との間に楔形状の輪止め装置を配置することで車両の逸走防止を図っている。また、例えば特許文献1には、トラックのサイドバンパーに設けられた格納部に輪止め(車止め)を格納し、トラックを停止させてサイドブレーキを掛けているとき又はシートベルトを外しているときに上述した格納部に輪止めが格納されていた場合は、警報ブザー及び警報ランプを作動させることによって、トラックの車輪に輪止め装置を配置し忘れないように注意を喚起する輪止め未使用警報装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した輪止め未使用警報装置は、作業者に輪止め装置の配置を促すだけであり、仮に輪止め装置が配置されていたとしても、その輪止め装置が車輪に対して適切な位置に配置されているか否かまでは判断することができないため、作業の安全性を十分に確保できているとは言い難いという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、輪止め装置が車輪に対して正しく配置されているか否かを検出することのできる輪止め装置の配置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る輪止め装置の配置検出装置は、停車中の車両の車輪に対向して路面上に配置されて前記車両の逸走を防止する輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されているか否かを検出する輪止め装置の配置検出装置であって、前記車両に設けられて前記車輪の周りの画像を取得する撮像装置(例えば、実施形態におけるカメラ100)と、前記撮像装置によって取得された画像に基づいて、前記車輪に対向して前記輪止め装置(例えば、実施形態における輪止め70)が正しく配置されているか否かを判断する配置判断装置(例えば、実施形態における配置判断部63)とを備え、前記配置判断装置は、前記撮像装置によって取得される画像領域内に前記輪止め装置の配置の許容範囲を示す許容領域(例えば、実施形態における許容領域PR)を設定する領域設定部(例えば、実施形態における領域設定部64)と、前記撮像装置によって取得された画像において前記輪止め装置を示す画像を識別する画像識別部(例えば、実施形態における画像識別部65)と、前記画像識別部により識別された前記輪止め装置を示す画像と前記許容領域との位置関係に基づいて前記輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断する輪止め配置判断部(例えば、実施形態における輪止め配置判断部66)とを備えて構成されたことを特徴とする。
【0007】
上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、前記許容領域は、前記輪止め装置に設
けられ前記輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されたときに前記車両の車体側面から外側へ延在する識別部(例えば、実施形態におけるハンドル90)が位置する許容範囲を示し、前記画像識別部は、前記輪止め装置を示す画像として、前記撮像装置によって取得された画像における前記識別部の画像を識別するように構成されていることが好ましい。
【0008】
上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、前記輪止め配置判断部は、前記画像識別部によって識別された前記輪止め装置を示す画像の一部もしくはすべてが前記許容領域の外に位置していた場合、又は、前記画像識別部が前記輪止め装置の画像を識別できなかった場合に、前記輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されていないと判断するように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、前記輪止め配置判断部により前記輪止め装置が前記車輪に対向して路面上に正しく配置されていないと判断されたときに警報作動を行う警報装置(例えば、実施形態における作動制御部61、警報装置103)を備えて構成されることが好ましい。
【0010】
また、上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、前記車両の前後方向における傾斜角度を検知する傾斜角度検出装置(例えば、実施形態における車体傾斜検出器101)を備え、前記領域設定部は、前記車両の停車時における傾斜角度と前記車両に設けられたジャッキ装置によって前記車体が支持されたときの傾斜角度との差に基づいて、前記車体が支持された状態で前記撮像装置によって取得される画像領域内での許容範囲を示すように前記許容領域を補正するように構成されることが好ましい。
【0011】
また、上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、地上から前記車両の所定位置までの高さを検知する車高検出装置(例えば、実施形態における車高検出器102)を備え、前記領域設定部は、前記車両の停車時に前記車高検出装置により検知された高さと前記車両に設けられたジャッキ装置によって前記車体が支持されたときに前記車高検出装置により検知された高さとの差に基づいて、前記車体が支持された状態で前記撮像装置によって取得される画像領域内での許容範囲を示すように前記許容領域を補正するように構成されることが好ましい。
【0012】
また、上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、前記撮像装置は、前記車両に設けられ、画像処理によって平面視での前記車体及び前記車体の全周囲を示す全周囲画像を生成するために前記車両の全周囲画像を取得する全周囲画像生成用カメラ(例えば、実施形態における左サイドカメラ111L及び右サイドカメラ111R)であるように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る輪止め装置の配置検出装置によれば、撮像装置によって取得された画像に基づいて、車輪に対向して輪止め装置が正しく配置されているか否かを判断する配置判断装置が、撮像装置によって取得される画像領域内に輪止め装置の配置の許容範囲を示す許容領域を設定する領域設定部と、撮像装置によって取得された画像において輪止め装置を示す画像を識別する画像識別部と、画像識別部により識別された輪止め装置を示す画像と許容領域との位置関係に基づいて輪止め装置が車輪に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断する輪止め配置判断部とを備えているので、輪止め装置が車輪に対して正しく配置されているか否かを検出することができる。
【0014】
また、上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、輪止め配置判断部は、画像識別部によって識別された輪止め装置を示す画像の一部もしくはすべてが配置許容領域の外に
位置していた場合、又は、画像識別部が輪止め装置を示す画像を識別できなかった場合に、輪止め装置が車輪に対向して路面上に正しく配置されていないと判断するように構成されていることが好ましい。このように構成することで、許容領域を適切に設定することにより、輪止め装置が車両の逸走を防止し得る位置に配置されているか否かを検出することができる。
【0015】
また、上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、輪止め配置判断部により輪止め装置が車輪に対向して路面上に正しく配置されていないと判断されたときに警報作動を行う警報装置を備えて構成されていることが好ましい。このように構成することで、輪止め装置が車輪に対向して路面上に正しく配置されていないことが検出された場合は、作業者等に対して輪止め装置が正しく配置されていないことを警告することができる。
【0016】
また、上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、車両の前後方向における傾斜角度を検知する傾斜角度検出装置を備え、領域設定部は、車両の停車時における傾斜角度と車両に設けられたジャッキ装置によって車体が支持されたときの傾斜角度との差に基づいて、前記車体が支持された状態で前記撮像装置によって取得される画像領域内での許容範囲を示すように配置許容領域を補正するように構成されていることが好ましい。このように構成することで、傾斜地に停車させた車両がジャッキ装置により支持されている状態でジャッキ装置を縮小して車両を路面に降下させる際に、輪止め装置が路面に正しく配置されているか否かを検出することができる。
【0017】
また、上記構成の輪止め装置の配置検出装置において、車両の所定位置までの高さを検知する車高検出装置を備え、領域設定部は、車両の停車時に車高検出装置により検知された高さと車両に設けられたジャッキ装置によって車体が支持されたときに車高検出装置により検知された高さとの差に基づいて、車体が支持された状態で撮像装置によって取得される画像領域内での許容範囲を示すように許容領域を補正するように構成されていることが好ましい。このように構成することで、ジャッキ装置により車両が支持されている状態でジャッキ装置を縮小して車両を路面に降下させるときに、輪止め装置が路面に正しく配置されているか否かを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る輪止め装置の配置検出装置を備える高所作業車の側面図である。
【
図2】本実施形態に係る輪止め装置の配置検出装置を含む機能ブロック図である。
【
図3】本実施形態の輪止め装置の配置検出装置の検出対象となる輪止め装置をタイヤ車輪の前後に設置した状態の斜視図である。
【
図5】上記輪止め装置のハンドルが第1基準位置にある状態の斜視図である。
【
図6】上記輪止め装置のハンドルが第2基準位置にある状態の斜視図である。
【
図7】上記輪止め装置のハンドルが第1基準位置にある状態の平面図である。
【
図8】上記輪止め装置の輪止め部材の斜視図である。
【
図9】上記輪止め装置のロック機構(インデックスプランジャ)の断面図である。
【
図10】上記ハンドルの揺動を説明するための背面図である。
【
図11】上記輪止め装置の配置検出装置を構成するカメラの配置を示す模式図である。
【
図12】上記輪止め装置の配置検出装置において、領域設定部によって設定される許容領域について説明するための説明図である。
【
図13】上記輪止め装置の配置検出装置において、輪止めが車輪に対向して路面上に正しく配置されている状態について説明するための説明図である。
【
図14】上記輪止め装置の配置検出装置において、輪止めが車輪に対向して路面上に正しく配置されていない状態について説明するための説明図である。
【
図15】上記輪止め装置の配置検出装置において、車体の傾斜角度に応じた許容領域の補正について説明するための説明図である。
【
図16】上記輪止め装置の配置検出装置において、車体の高さに応じた許容領域の補正について説明するための説明図である。
【
図17】上記輪止め装置の配置検出装置において、検出対象を輪止めが有するハンドルとした場合における輪止め装置の配置の検出について説明するための説明図である。
【
図18】上記輪止め装置の配置検出装置において、カメラの配置に関する他の形態について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る輪止め装置の配置検出装置を備える高所作業車1を
図1に示しており、まず、この図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0020】
高所作業車1は、
図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、タイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)が配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0021】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置10が設けられている。ジャッキ装置10は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。車体2の後端部には、各ジャッキ10f,10rや後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0022】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が設けられている。
【0023】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0024】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(
図2を参照)が設けられており、この首振りモータ34を駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り動(水平旋回動
)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0025】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。
【0026】
車体2に設けられたジャッキ装置10(ジャッキ10f,10r)及び高所作業装置(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動機構は、
図2に示すように、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31及び首振りモータ34等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ60と、この油圧アクチュエータを作動させるために作動油を供給する油圧ユニット50と、ジャッキ装置10及び高所作業装置等を作動させる動力源となる架装部バッテリ59とを備えて構成される。
【0027】
上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60の作動制御部61は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット50(制御バルブ53)に出力する。
【0028】
油圧ユニット50は、作動油を吐出する油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51を駆動するポンプ駆動モータ52と、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ53とを有して構成される。ポンプ駆動モータ52は、架装部バッテリ59からインバータ54を介して供給される電力により回転駆動される。制御バルブ53は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV3、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV4、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV5を有している。この制御バルブ53は、コントローラ60の作動制御部61からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V5のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(ジャッキ装置10及び高所作業装置の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0029】
本実施形態の高所作業車1は、高所作業車1の周囲の状況を示す全周囲画像(いわゆるサラウンドビュー)を表示可能な周囲確認装置を備えており、この周囲確認装置によって表示された全周囲画像を目視することで、高所作業車1の運転手は、高所作業車1の周囲の状況を把握することができるようになっている。
【0030】
図1及び
図2において、フロントカメラ110、左サイドカメラ111L、右サイドカメラ111R(
図2を参照)及びリアカメラ112は、高所作業車1の周囲の映像を取得するために車体2の前後左右に配設されているカメラであり、いずれも魚眼レンズや超広角レンズ等の画角の広いレンズを備えている。フロントカメラ110は、レンズを車体2の前進方向へ向けた状態で、車体2の前部に設けられたフロントバンパー28の中央下側に設置されている。左サイドカメラ111Lは、車体2の左側に設けられている工具箱26の上部において、レンズを車体2の左方へ向けた状態で設置されている。右サイドカメラ111Rは、車体2の右側において、車体2の左側に設けられている工具箱26とほぼ同じ地上高となる位置に設けられたカメラ設置部(図示略)において、レンズを右方へ向
けた状態で設置されている。リアカメラ112は、車体2の後部に設けられた下部操作装置27の右側にレンズを車体2の後進方向へ向けた状態で設置されている。
【0031】
なお、フロントカメラ110、左サイドカメラ111L、右サイドカメラ111R及びリアカメラ112の各レンズの上下方向における向き(仰角又は俯角)は、適宜調整可能である。例えば、全周囲画像に地面及び車体2の側部の映像を含める場合は、各レンズを斜め下方に向けて取り付けてもよい。
【0032】
上述した4台のカメラによって高所作業車1の前方、後方、左方、右方の4方向において広範囲に亘る映像が取得され、取得された映像に対応する画像信号が、コントローラ60に出力される。これによりコントローラ60が備える画像処理部62において、各カメラから送信されてきた画像信号に対して画像合成や歪み補正などの所定の画像処理が行われ、平面視での車体2の画像を中心として、その周囲の状況を示す全周囲画像が生成される。画像処理部62によって生成された全周囲画像は、運転キャブ7の内部に設置された表示装置(例えば液晶ディスプレイ等)113へ出力される。
【0033】
上述した4台のカメラの他にも、左右の前輪5f及び左右の後輪5rの各々に対応して左前輪カメラ100LF、左後輪カメラ100LR、右前輪カメラ100RF、右後輪カメラ100RRが設けられている。ここで、左前輪カメラ100LF、左後輪カメラ100LR、右前輪カメラ100RF及び右後輪カメラ100RRをまとめて呼称する場合はカメラ100と称する。また、コントローラ60は、これらのカメラによって取得された画像に基づいて、後述する輪止め装置70(以下、「輪止め70」と称する。)がタイヤ車輪5に対向して正しく配置されているか否かを検出する配置判断部63を備えている。本実施形態においては、カメラ100と配置判断部63とによって輪止め装置の配置検出機能を実現しているが、この輪止め装置の配置検出機能については後に詳しく説明する。
【0034】
本実施形態の高所作業車1には、上述した配置判断部63において輪止め70がタイヤ車輪5に対向して正しく配置されていないと判断された場合に警報作動を行う警報装置103が設けられている。ここで、本明細書における「警報作動」とは、警報ランプや警報ブザー等を用いて警報を行う作動や、作業装置(例えばジャッキ装置10、ブーム30、作業台40等)の作動を規制する作動を含めた作動を意味する。
【0035】
このような構成の高所作業車1では、目的の作業現場に駐車して所要の作業を行う場合、その作業の開始前(各ジャッキ10f,10rの作動操作を行う前)に、駐車ブレーキ(パーキングブレーキ)を作動させて左右の後輪5rを制動させてから、その駐車路面とタイヤ車輪5の踏み面(トレッド面)との間に楔形状の輪止め70(
図3等を参照)を設置して、車両の逸走防止を図るようになっている。また、本実施形態では、タイヤ車輪5に対して輪止め70が正しく配置されているか否かを検出する輪止め装置の配置検出装置が備えられている。
【0036】
次に、本実施形態における輪止め装置の配置検出装置の検出対象となる輪止め70の構造について
図3~
図10を参照して説明する。以下では、説明の便宜上、輪止め70の長さ方向(差し込み方向)を「前後方向」、輪止め70の幅方向を「左右方向」、輪止め70の高さ方向を「上下方向」と定めるが、輪止め70の配置方向を特定するものではない。
【0037】
輪止め70は、タイヤ車輪5の踏み面5tと駐車路面G(
図4を参照)との間に差し込まれる輪止め部材71と、この輪止め部材71に設けられた可動式のハンドル90とを主体に構成されている。
【0038】
輪止め部材71は、例えば合成樹脂材料(プラスチック材料)を用いて楔形状に形成されている。この輪止め部材71は、駐車路面に接地される底部をなす接地部72と、タイヤ車輪5に当接する車輪当接部73と、最上部を形成する頂部74と、接地部72と頂部74とを繋ぐ背面部75と、一対の側面部76とを有している。以下では、
図4に示すように、輪止め70(輪止め部材71)の前後方向の向きとして、タイヤ車輪5の踏み面5tと駐車路面Gとの間に差し込まれる側(図中の左側)を「先端側」と呼称し、その反対側(図中の右側)を「基端側」と呼称する。
【0039】
接地部72には、前後方向に沿って山部と谷部が連続的に形成されることで地面に対する滑り止めをなす滑り止め部72aが形成されている。車輪当接部73は、先端側から基端側に向けて高くなるとともに斜め上方に向けて凹となる湾曲面として形成されており、タイヤ車輪5の踏み面5tに当接可能に構成されている。なお、この車輪当接部73は、一部もしくは全てが傾斜面により形成されていてもよい。背面部75の下寄りの位置には、輪止め70を持ち運ぶ際などに作業者が把持する断面T字形の持ち手77が突出形成されている。また、この背面部75の上寄りの位置には、ハンドル90を支持するための立板状のブラケット部80が突出形成されている。
【0040】
ブラケット部80には、
図8に示すように、中空円筒状に形成されたボス部81と、このボス部81の左右斜め下方に形成された一対のストッパ部(第1ストッパ部82、第2ストッパ部83)と、ボス部81の左右側方に形成された一対の位置決め孔(第1位置決め孔84、第2位置決め孔85)とが設けられている。
【0041】
ボス部81は、前後方向に延びる円筒状に形成され、その中心には挿通孔81aが貫通形成されている。この挿通孔81aには、ハンドル90の揺動軸となるボルト86のボルト軸部86aが挿通される。このボルト軸部86aの先端側には、このボルト軸部86aを挿通孔81aから抜け止めするためのナット(緩み止めナット)87が螺着されている。ストッパ部82,83は、前後方向に延びる角柱状に形成されており、その上面側にはハンドル90を当接させるための座面が形成されている。位置決め孔84,85は、ブラケット部80の表裏に貫通された貫通孔であり、後述のロックピン93bが係合可能(挿入可能)に構成されている。
【0042】
ハンドル90は、ブラケット部80にボルト軸部86aを介して枢結されるL字状のハンドルアーム91と、このハンドルアーム91に固定されたグリップ98とを備えて構成される。
【0043】
ハンドルアーム91は、合成樹脂材料を用いて一体的に形成されている。このハンドルアーム91は、左右方向に延びるアーム基体部92と、このアーム基体部92の端部からほぼ垂直に屈曲して前後方向に延びるガイド部95とを有し、全体としてL字状に形成されている。アーム基体部92には、前後方向に貫通する連結孔92a(
図9を参照)が形成されており、この連結孔92aにボルト軸部86aが挿通されている。このアーム基体部92の連結孔92aに挿通されたボルト軸部86aを揺動軸として、ハンドル90全体がブラケット部80に揺動自在に枢結される。また、アーム基体部92の略中央には、前後方向に貫通するネジ孔92b(
図9を参照)が形成されており、このネジ孔92bにハンドル90の位置を固定するためのインデックスプランジャ93が螺着されている。
【0044】
インデックスプランジャ93は、公知の機械要素であり、アーム基体部92に螺着されるボディ93aと、このボディ93aに摺動自在に設けられて各位置決め孔84,85に係合可能なロックピン93bと、このロックピン93bの基端部に設けられてロックピン93bを操作するためのノブ93cとを備えて構成されている。ロックピン93bは、ボディ93a内に内蔵された不図示のバネによって、このボディ93aから突出する方向(
位置決め孔84,85に係合する方向)に常時付勢されている。このロックピン93bは、ノブ93cをバネの付勢力に抗して引き操作することで当該ロックピン93bの先端部をボディ93a内に引き込む退避位置と、ノブ93cを離して戻し操作することで当該ロックピン93bの先端部をバネの付勢力によってボディ93a内から突出させるロック位置との間で進退自在に構成されている。それにより、ロックピン93bは、ブラケット80に設けられたストッパ部82,83および位置決め孔84,85と協働して、ハンドル90を位置決めするとともに、ハンドル90の揺動可能な範囲を規制する。
【0045】
ガイド部95は、輪止め部材71の差し込み方向と平行な方向(前後方向)に延びる平板状に形成されている。このガイド部95の内側面95aは、タイヤ車輪5の外側面(左右の側面のうち外側にくる方の側面)5aに当接可能に形成されており、タイヤ車輪5に輪止め70を設置するときの幅方向の位置決め部として機能する(詳細後述)。また、このガイド部95の先端側には、後述のカメラ100(
図2、
図11を参照)により検出される被検出体96が取り付けられている。被検出体96は、例えば、光の反射部材を付してもよいし、二次元バーコードなどのマーカを付してもよい。
【0046】
グリップ98は、ハンドル90の揺動時や、輪止め70の運搬時、設置時および撤去時などに作業者が把持する部分である。グリップ98の一端部はアーム基体部92に固定され、グリップ98の他端部はガイド部95に固定されている。このグリップ98とハンドルアーム91との間には、グリップ98を把持するときに手指を挿通可能な空隙99(
図7を参照)が形成されている。
【0047】
かかる構成のハンドル90は、ブラケット部80に設けられたボルト軸部86aを揺動軸として、アーム基体部92が第1ストッパ部82の上面に当接してガイド部95が輪止め部材71の幅方向の一方側の側方に配置される第1基準位置(
図5を参照)と、アーム基体部92が第2ストッパ部83の上面に当接してガイド部95が輪止め部材71の幅方向の他方側の側方に配置される第2基準位置(
図6を参照)との間で揺動自在に構成されている。ハンドル90が第1基準位置に揺動すると、インデックスプランジャ93のロックピン93bと第1位置決め孔84とが位置整合し、ノブ93cを操作してロックピン93bを第1位置決め孔84に係合させることで、ハンドル90が第1基準位置に固定される。ハンドル90が第2基準位置に揺動すると、インデックスプランジャ93のロックピン93bと第2位置決め孔85とが位置整合し、ノブ93cを操作してロックピン93bを第2位置決め孔85に係合させることで、ハンドル90が第2基準位置に固定される。このようにハンドル90を第1基準位置または第2基準位置に揺動させてインデックスプランジャ93により固定することで、ハンドル90を第1基準位置と第2基準位置とに選択的に配置することができる。
【0048】
ここで、本実施形態では、ハンドル90が第1基準位置または第2基準位置にある場合、ガイド部95の内側面95aが輪止め部材71の側面部76と平行な状態(左右方向に相対向する状態)に保持され、輪止め部材71の幅方向の中心位置からガイド部95の内側面95aまでの平面視の距離は、タイヤ車輪5の幅(タイヤ幅)の1/2とほぼ等しくなるように構成されている(
図7を参照)。それにより、ハンドル90を第1基準位置または第2基準位置に揺動させた状態で、ガイド部95の内側面95aをタイヤ車輪5の外側面5aに当接させると(ガイド部95の内側面95aの位置とタイヤ車輪5の外側面5aの位置とが合致すると)、輪止め部材71の幅方向の中心がタイヤ車輪5の幅方向の中心と合致する適正な位置関係となる(輪止め部材71がタイヤ車輪5の幅方向の中心に位置決めされることになる)。なお、このときハンドル90は車体2の側面よりも外側に延在することになる。
【0049】
次に、本実施形態の輪止め70を配置する手順について説明する。まず、輪止め70の
ハンドル90を揺動させて、このハンドル90を対象のタイヤ車輪5の配列位置(外側面5aの方位)に応じた揺動位置(第1基準位置または第2基準位置)に固定する。具体的には、ハンドル90のガイド部95がタイヤ車輪5の外側面5a(左側のタイヤ車輪5であれば左側面、右側のタイヤ車輪5であれば右側面)側にくるように、ハンドル90を第1基準位置または第2基準位置に選択的に揺動させる。こうしてハンドル90を第1基準位置または第2基準位置に揺動させた後、インデックスプランジャ93のノブ93cを操作して、ロックピン93bを対応する方の位置決め孔84,85に係合させることで、ハンドル90がその揺動位置に固定される。このように対象のタイヤ車輪5の外側面5aの方位に合わせてハンドル90の揺動位置(第1基準位置、第2基準位置)を選択的に切り替えることで、輪止め70の設置作業を車体2の下方に潜り込むことなくタイヤ車輪5の外側(車体2の左右側方の位置)から容易な姿勢で行うことができるようになる。
【0050】
続いて、輪止め70を対象のタイヤ車輪5の近傍(駐車路面)に配置して、輪止め部材71の先端部をタイヤ車輪5の踏み面5tに向けて指向させる。次いで、輪止め70のグリップ98を把持して、ガイド部95の内側面95aをタイヤ車輪5の外側面5aに当接させる。そして、そのままガイド部95をタイヤ車輪5の外側面5aに当接(摺接)させながら、輪止め部材71をタイヤ車輪5の踏み面5tと駐車路面との間に差し込む。それにより、輪止め70全体がタイヤ車輪5の外側面5a(ガイド部95とタイヤ車輪5との当接面)に沿って案内されて、輪止め部材71の幅方向の中心位置とタイヤ車輪5の幅方向の中心位置とが一致した状態で、輪止め部材71が左右に傾くことなくタイヤ車輪5の外側面5aに沿って平行に移動し、車輪当接部73がタイヤ車輪5の踏み面5tに当接することになる。このようにハンドル90のガイド部95がタイヤ車輪5の外側面5aに当接した状態で、輪止め部材71の車輪当接部73がタイヤ車輪5の踏み面5tに当接することで、輪止め70がタイヤ車輪5に対する適正位置(タイヤ車輪5の幅方向の中心)に設置される。なお、このときハンドル90は車体2の側面よりも外側に延在することになる。
【0051】
次に、本実施形態の高所作業車1に設けられた輪止め装置の配置検出装置について説明する。本実施形態の輪止め装置の配置検出装置は、
図2等に示すように、タイヤ車輪5の周りの画像を取得するカメラ100と、車体2の前後方向の傾斜角度を検出する車体傾斜検出器101と、駐車路面から車体の所定位置までの高さを検出する車高検出器102と、車体2に設けられたコントローラ60の配置判断部63とを備えて構成されている。
【0052】
カメラ100(左前輪カメラ100LF、左後輪カメラ100LR、右前輪カメラ100RF及び右後輪カメラ100RR)は、
図11に示すように、車体2の下部において左右の前輪5f及び左右の後輪5rの各々に対応して設けられており、上方から対応するタイヤ車輪5を俯瞰する向きに設置されている。そして各カメラは、各々対応するタイヤ車輪5及びタイヤ車輪5の前後を含む周囲の画像を取得し、その画像信号をコントローラ60へ出力する。ここで、左前輪5fに対応して設けられたカメラを左前輪カメラ100LF、左後輪5rに対応して設けられたカメラを左後輪カメラ100LRと称する。また、右前輪5fに対応して設けられたカメラを右前輪カメラ100RFと称し、右後輪5rに対応して設けられたカメラを右後輪カメラ100RRと称する。
【0053】
各カメラ100からコントローラ60に画像信号が出力されると、配置判断部63により、各カメラ100によって取得された画像に基づいて、輪止め70がタイヤ車輪5の各々に対向して正しく配置されているか否かが判断される。配置判断部63は、領域設定部64、画像識別部65及び輪止め配置判断部66とを有している。
【0054】
領域設定部64は、輪止め70が正しく設置されていると認められる配置の許容範囲(ここでは、輪止め部材71が駐車路面とタイヤ車輪5の踏み面との間に適切に配置されて
いると認められる許容範囲)を示す許容領域を、カメラ100によって取得される画像領域内に設定する。例えば
図12(A)に示すように、車体2の下部においてタイヤ車輪5の直上に設けられたカメラ100によって取得された画像が、
図12(B)に示す画像領域Pのようにタイヤ車輪5の画像(タイヤ画像)TYとその周囲を含んだ画像領域Pであった場合、当該画像領域P内において破線で示す許容領域PRを設定する。ここで、
図12(A)において、破線AOVはカメラ100の画角を示している。
【0055】
許容領域PRは、例えばタイヤ車輪5に対する輪止め部材71の配置を予め試行して決定された領域であって、画像領域P内において輪止め部材71の画像が許容領域PR内に収まっている場合に、輪止め70が駐車路面G(
図12(A)参照)とタイヤ車輪5の踏み面との間に正しく配置されていると見なされる。なお、領域設定部64は、左前輪カメラ100LF、右前輪カメラ100RF、左後輪カメラ100LR及び右後輪カメラ100RRの各カメラによって取得された各画像領域内における許容領域を設定する。
【0056】
画像識別部65は、カメラ100によって取得された画像において輪止め部材71を示す画像を識別する。例えば、タイヤ車輪5に対して輪止め部材71が
図13(A)に示すように配置された場合、
図13(B)に示す画像領域Pのうち、輪止め部材71を示す画像(輪止め画像)CBの画像を識別する。なお、
図13及び後に参照する
図14~
図16においては輪止め70のうち輪止め部材71のみを模式的に図示しており、ハンドル90の図示は省略している。また、輪止め画像CBを識別する方法については、周知技術を適用することができるため詳しい説明を省略する。なお、画像識別部65は、左前輪カメラ100LF、右前輪カメラ100RF、左後輪カメラ100LR及び右後輪カメラ100RRの各カメラによって取得された各画像領域内における輪止め画像を識別する。
【0057】
輪止め配置判断部66は、画像識別部65によって識別された輪止め画像CBと許容領域PRとの位置関係に基づいて輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面上に正しく配置されているか否かを判断する。具体的には、画像識別部65によって識別された輪止め部材71の画像の一部もしくはすべてが許容領域の外に位置していた場合、又は、画像識別部65が輪止め70の画像を識別できなかった場合に、輪止め70がタイヤ車輪5に対向して路面上に正しく配置されていないと判断する。
【0058】
例えば、
図13(B)に示す画像領域Pにおいて、輪止め画像CBの全体が許容領域PR内に収まっている状態であれば、輪止め配置判断部66は、輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面G(
図13(A)参照)上に正しく配置されていると判断する。これに対して、例えば
図14(A)におけるにカメラ100によって取得された画像領域P内において、
図14(B)に示すように輪止め画像CBの一部が許容領域PRからはみ出している場合、輪止め配置判断部66は、輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面G(
図14(A)参照)上に正しく配置されていないと判断する。また、輪止め配置判断部66は、画像識別部65が輪止め部材71の画像を識別できなかった場合、すなわち画像領域P内に輪止め画像CBが存在しない場合も、輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面上に正しく配置されていないと判断する。
【0059】
なお、輪止め配置判断部66は、左前輪カメラ100LF、右前輪カメラ100RF、左後輪カメラ100LR及び右後輪カメラ100RRの各カメラによって取得された各画像領域内における許容領域と輪止め画像との位置関係に基づいて、各タイヤ車輪5に対向して各々輪止め70が駐車路面上に正しく配置されているか否かを判断する。
【0060】
このように、配置判断部63は、輪止め部材71の画像に基づいて輪止め70がタイヤ車輪5に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断しているため、
図3~
図7に示されているハンドル90を備えていない一般的な輪止めの配置の検出に対しても適用
することができる。
【0061】
図2に戻り、車体傾斜検出器101は、車体2の傾斜角度(車体2の前後方向の傾斜角度)を検出して、その検出した傾斜角度に応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ60に出力する。この車体2の傾斜角度は、例えば、車体2が前上がり(頭上げ)になっている状態では正の角度(プラスの角度)となり、車体2が前下がり(頭下げ)になっている状態では負の角度(マイナスの角度)となる。
【0062】
高所作業車1の駐車時において、車体傾斜検出器101からコントローラ60へ検出信号が出力されると、コントローラ60の領域設定部64は、検出信号によって示される車体2の傾斜角度をコントローラ60内の記憶装置に記憶する。その後、ジャッキ装置10によって車体2が作業時の姿勢(例えば水平となる姿勢)となるように持ち上げ支持(ジャッキアップ)され、作業終了後に再び車体2を路面に降下(ジャッキダウン)させる際に、領域設定部64は、作業姿勢における車体2の傾斜角度と、記憶装置に記憶されている駐車時の車体2の傾斜角度とに基づいて、予め記憶している許容領域PRを、車体2が作業姿勢になっているときにカメラ100によって取得された画像領域内において輪止め70の配置の許容範囲を示す許容領域となるように補正する。
【0063】
例えば、
図15(A)の破線で示すように、駐車路面Gに駐車した状態における車体2の傾斜角度がθ
1であり、このときに左前輪カメラ100LFによって取得された画像領域P
1における許容領域PRが、例えば
図15(B-1)に示すような位置にあったとする。ここで、傾斜地で高所作業車1による作業を行う場合は、逸走を防止するために高所作業車1を前下がりとなる向きに駐車させ、前輪側からジャッキアップすることが推奨されるため、
図15(B-1)においては許容領域PRがタイヤ車輪5(より詳細には左前輪5f)の前側に設定されている。
【0064】
これに対して、
図15(A)の実線で示すように、ジャッキ装置10の作動によって車体2が作業姿勢になったときの車体2の傾斜角度がθ
2であった場合、領域設定部64は、傾斜角度θ
1とθ
2との差に基づいて、
図15(B-2)に示すように、車体2が作業姿勢になっているときに取得された画像領域P
2内において許容領域PR’となるように許容領域PRを補正する。この補正後の許容領域PR’は、車体2のジャッキアップに伴って左前輪カメラ100LFが駐車路面G(
図15(A)参照)から離れた分だけ許容領域PRよりも小さくなり、かつ、左前輪カメラ100LFの画角や駐車路面Gに対する左前輪カメラ100LFの向きの変化による影響により、許容領域の長手方向の長さが後方(
図15(B-2)中、右方向)へ圧縮されている。
【0065】
このように、高所作業車1が傾斜地に駐車した後、ジャッキ装置10により車体2が作業姿勢となるようにジャッキアップされた場合は、許容領域が駐車時における車体2の傾斜角度と作業姿勢における車体2の傾斜角度とに基づいて許容領域が補正される。これにより、車体2を作業姿勢の状態から再び路面にジャッキダウンさせる際に、輪止めが車輪に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断することができる。
【0066】
図2に戻り、車高検出器102は、地上から車両2の所定位置までの高さを検知して、その検出した車体2の高さに応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ60に出力する。ここで、本実施形態では「車両2の所定位置」を車体2の底面としている。
【0067】
高所作業車1の駐車時において、車高検出器102からコントローラ60へ検出信号が出力されると、コントローラ60の領域設定部64は、検出信号によって示される車体2の高さをコントローラ60内の記憶装置に記憶する。その後、ジャッキ装置10によって車体2が作業時の姿勢(例えば水平となる姿勢)となるようにジャッキアップされ、作業
終了後に再び車体2を路面にジャッキダウンさせる際に、領域設定部64は、作業姿勢における車体2の高さと、記憶装置に記憶されている駐車時における車体2の高さとに基づいて、予め記憶している許容領域PRを、車体2が作業姿勢になっているときにカメラ100によって取得された画像領域内において輪止め70の配置の許容範囲を示す許容領域となるように補正する。
【0068】
例えば、
図16(A)の破線で示すように、高所作業車1が駐車したときに車高検出器102によって検出された車体2の高さがH
1であり、このときに左前輪カメラ100LFによって取得された画像領域P
1における許容領域PRが、例えば
図16(B-1)に示すような位置にあったとする。ここで、
図16(B-1)においては許容領域PRがタイヤ車輪5(より詳細には前輪5f)の前側に設定されている。
【0069】
そして、
図16(A)の実線で示すように、ジャッキ装置10の作動によって車体2が作業姿勢になったときの車体2の高さがH
2であった場合、領域設定部64は、車体2の高さH
1とH
2との差に基づいて、
図16(B-2)に示すように、車体2が作業姿勢になっているときに取得された画像領域P
2内において許容領域PR’となるように許容領域PRを補正する。この補正後の許容領域PR’は、左前輪カメラ100LFが駐車路面G(
図16(A)参照)から離れた分だけ許容領域PRよりも小さくなり、かつ、左前輪カメラ100LFの画角の影響により許容領域の長手方向の長さが若干、後方(
図16(B-2)中、右方向)へ圧縮されている。
【0070】
このように、高所作業車1が傾斜地に駐車した後、ジャッキ装置10により車体2が作業姿勢となるようにジャッキアップされた場合は、許容領域が駐車時における車体2の高さと作業姿勢における車体2の高さとに基づいて許容領域が補正される。これにより、車体2を作業姿勢の状態から再び路面にジャッキダウンさせる際に、輪止めが車輪に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断することができる。
【0071】
なお、
図15及び
図16では、左前輪カメラ100LFによって取得された画像領域内における許容領域の補正について図示しているが、右前輪カメラ100RF、左後輪カメラ100LR及び右後輪カメラ100RRによって取得された各画像領域内における許容領域についても同様に補正を行うことができる。
【0072】
図2に戻り、警報装置103は、輪止め配置判断部66においていずれかの車輪5に対向して輪止め70が路面上に正しく配置されていないと判断された場合に、警報ランプや警報ブザー等を用いて警報を行う。ここで、警報装置103による警報作動にとどまらず、例えば全周囲画像を表示するための表示装置113に警告メッセージを表示してもよい。
【0073】
さらに、表示装置113に各車輪5ごとに輪止め70が正しく配置されているか否かを表示してもよい。この場合、例えば
図13(B)に示したように輪止め70がタイヤ車輪5に対して正しく配置されていると判断された場合は、輪止め70が適正配置になっていることを示す画像を表示装置113に表示し、
図14(B)に示したように輪止め70がタイヤ車輪5に対して正しく配置されていないと判断された場合は、輪止め70が不適正配置になっていることを示す画像を表示装置113に表示し、画像識別部65において輪止め部材71の画像が識別できなかった場合は、輪止め70が存在していないことを示す画像を表示装置113に表示してもよい。
【0074】
また、作動制御部61は、輪止め配置判断部66においてすべての車輪5に対向して輪止め70が路面上に正しく配置されていると判断された場合、ジャッキ装置10(より厳密にはジャッキシリンダ11)の伸縮作動を許可し、そうでなかった場合にはジャッキ装
置10の伸縮作動を規制する。ここで、ジャッキ装置10の作動規制は、ジャッキ操作が行われても作動制御部61がその操作信号を受け付けないようにする、あるいは、作動制御部61がジャッキ操作に基づく操作信号を受け付けたとしてもジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1を電磁駆動しないようにする、など作動制御部61に対して動作制限が課されるようにすることにより行われる。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0076】
例えば、上述した配置判断部63では、輪止め部材71の画像に基づいて輪止め70がタイヤ車輪5に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断していたが、これに限らず、
図3~
図7に示したハンドル90(より詳細にはガイド部95及びグリップ98)の画像に基づいて輪止め70がタイヤ車輪5に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断してもよい。
【0077】
この場合、領域設定部64は、輪止め部材71が駐車路面とタイヤ車輪5の踏み面との間に適切に配置されていると認められるときのハンドル90の位置の許容範囲を、許容領域としてカメラ100によって取得される画像領域内に設定する。例えば
図17(A)に示すように、車体2の下部においてタイヤ車輪5の直上に設けられたカメラ100によって取得された画像領域Pにおいて破線で示す許容領域PRを設定する。
【0078】
また、画像識別部65は、カメラ100によって取得された画像においてハンドル90(より詳細にはガイド部95及びグリップ98)を示す画像を識別する。例えば、
図17(A)に示す画像領域Pにおいて、画像識別部65は輪止め70の画像のうち、ハッチングで示すガイド部95及びグリップ98の部分の画像HNを輪止め画像として識別する。
【0079】
さらに輪止め配置判断部66は、画像識別部65によって識別された輪止め画像HNと許容領域PRとの位置関係に基づいて輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面上に正しく配置されているか否かを判断する。ここで、例えば
図17(A)に示すように、画像領域Pにおいて、許容領域PR内に輪止め画像HNが収まっている状態であれば、輪止め配置判断部66は、輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面上に正しく配置されていると判断する。
【0080】
これに対して、例えば
図17(B)に示すように、画像領域P内において輪止め画像HNの一部が許容領域PRからはみ出している場合、輪止め配置判断部66は、輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面上に正しく配置されていないと判断する。また、輪止め配置判断部66は、識別画像識別部65がハンドル90(より詳細にはガイド部95及びグリップ98)を示す画像を識別できなかった場合、すなわち画像領域P内に輪止め画像HNが存在しない場合も、輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面上に正しく配置されていないと判断する。
【0081】
なお、
図17に示した例では、ハンドル90の画像に基づいて輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面上に正しく配置されているか否かを判断していたが、例えば
図7に示した被検出体96の上面にマーカ(例えば二次元バーコードなど)を付し、このマーカが検知できた場合に輪止め70がタイヤ車輪5に対向して駐車路面上に正しく配置されていると判断してもよい。
【0082】
また、輪止め70がタイヤ車輪5に対する適正位置(タイヤ車輪5の幅方向の中心)に設置されたときに、ハンドル90は車体2の側面よりも外側に延在する場合、カメラ100(左前輪カメラ100LF、右前輪カメラ100RF、左後輪カメラ100LR及び右
後輪カメラ100RR)は必ずしも車体2の下部においてタイヤ車輪5を上方から俯瞰するように設置する必要はなく、例えば
図18に示す左前輪カメラ100LF’、右前輪カメラ100RF’、左後輪カメラ100LR’及び右後輪カメラ100RR’のように、車体2の上方側面から各タイヤ車輪5の周囲を俯瞰するように設置してもよい。また、これに限らず、例えば
図18において全周囲画像を生成するために設けられた左サイドカメラ111L及び右サイドカメラ111Rによって取得された画像(車体2の左右側において少なくとも車体2の前端部及び後端部を含む画像)を流用してもよい。この場合、輪止めの配置を検出するための専用カメラを設置する必要が無いため、消費電力の増加を抑え、専用カメラを設置するためのスペースを確保する必要がなくなる。
【0083】
また、高所作業車1の積載量に応じて車体2の高さが変動する場合、領域設定部64において、車体2をジャッキアップする前に車高検出器102によって検出された車体2の高さに応じて許容領域を補正するようにしてもよい。このように構成することで、高所作業車1の積載量が変化した場合であっても、輪止めが車輪に対向して路面上に正しく配置されているか否かを判断することができる。
【0084】
また、前述したように、傾斜地で高所作業車1による作業を行う場合は、逸走を防止するために高所作業車1を前下がりとなる向きに駐車させ、前輪側からジャッキアップすることが推奨されるため、タイヤ車輪5の前側に許容領域PRを設定していたが、車体傾斜検出器101によって検出された角度の正負(プラス/マイナス)に応じて許容領域PRをタイヤ車輪5の前側に設定するか、後ろ側に設定するかを切り替えてもよい。例えば、車体傾斜検出器101が正の角度(プラスの角度)を検出した場合は車体2が前上がり(頭上げ)になっている状態なのでタイヤ車輪5の後ろ側に許容領域PRを設定し、負の角度(マイナスの角度)を検出した場合は車体2が前下がり(頭下げ)になっている状態なのでタイヤ車輪5の前側に許容領域PRを設定するとよい。このように、傾斜地における車体の向きに応じて許容領域PRの位置を切り替えることで、より逸走が生じにくい輪止めの配置を検出することができる。
【0085】
上記実施形態では、本発明に係る車両(作業車両)として、トラックマウント式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、クレーン車などの他の作業車両や、ダンプトラックなどの運搬車両等に適用してもよい。また、上記実施形態では、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の高所作業車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 高所作業車
2 車体
5 タイヤ車輪
5a 外側面
5t 踏み面
10 ジャッキ装置
27 下部操作装置
45 上部操作装置
60 コントローラ
61 作動制御部
62 画像処理部
63 配置判断部
64 領域設定部
65 画像識別部
66 輪止め配置判断部
70 輪止め
71 輪止め部材
90 ハンドル
95 ガイド部(案内部)
96 検出体
98 グリップ
100 カメラ
100LF 左前輪カメラ
100LR 左後輪カメラ
100RF 右前輪カメラ
100RR 右後輪カメラ
101 車体傾斜検出器
102 車高検出器
103 警報装置
G 駐車路面