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特開2023-84264射出成形機の制御装置、及び射出成形機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084264
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】射出成形機の制御装置、及び射出成形機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198326
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大吾
(72)【発明者】
【氏名】堤 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 峻
(72)【発明者】
【氏名】松井 佑樹
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AP02
4F206AP03
4F206AP05
4F206AP07
4F206AP09
4F206AR02
4F206AR03
4F206AR06
4F206AR08
4F206AR10
4F206JA07
4F206JD03
4F206JL02
4F206JM05
4F206JN21
4F206JP11
4F206JP14
4F206JT02
(57)【要約】
【課題】保圧工程における射出部材の前進制限の設定を支援する、技術を提供する。
【解決手段】射出成形機の制御装置は、成形材料を加熱するシリンダの内部に設けられる射出部材と、前記射出部材を前進させることで前記成形材料を金型装置の内部に充填させる射出駆動源と、を備える射出成形機の制御装置である。前記制御装置は、前記射出部材から前記成形材料に作用する充填圧力の実績値が設定値になるように前記射出駆動源を制御する保圧工程において、前記射出部材の前進を制限する制限部と、前記金型装置に設けたセンサの情報に基づいて、前記制限部が使用する設定の適否を判断する判断部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を加熱するシリンダの内部に設けられる射出部材と、前記射出部材を前進させることで前記成形材料を金型装置の内部に充填させる射出駆動源と、を備える射出成形機の制御装置であって、
前記射出部材から前記成形材料に作用する充填圧力の実績値が設定値になるように前記射出駆動源を制御する保圧工程において、前記射出部材の前進を制限する制限部と、
前記金型装置に設けたセンサの情報に基づいて、前記制限部が使用する設定の適否を判断する判断部と、
を有する、射出成形機の制御装置。
【請求項2】
前記制限部は、前記保圧工程における前記射出部材の前進速度及び前進加速度の少なくとも1つの上限値を設定し、前記判断部は前記上限値の適否を判断する、請求項1に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項3】
前記センサの前記情報は、前記金型装置の内部におけるガスの圧力、温度、速度および加速度の少なくとも1つの情報を含む、請求項1又は2に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項4】
前記センサの前記情報に基づいて、前記制限部が使用する前記設定を変更する設定変更部を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項5】
前記設定変更部は、n(nは1以上の自然数)回目の成形サイクルにおける前記センサの前記情報に基づいて、n+1回目以降の成形サイクルにおける前記制限部が使用する前記設定を変更する、請求項4に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項6】
前記設定変更部は、n(nは1以上の自然数)回目の成形サイクルにおける前記センサの前記情報に基づいて、n回目の成形サイクルにおける前記制限部が使用する前記設定を変更する、請求項4に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項7】
前記センサの前記情報を表示装置に表示する表示制御部を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項8】
成形材料を加熱するシリンダの内部に設けられる射出部材と、前記射出部材を前進させることで前記成形材料を金型装置の内部に充填させる射出駆動源と、を備える射出成形機の制御装置であって、
前記射出部材から前記成形材料に作用する充填圧力の実績値が設定値になるように前記射出駆動源を制御する保圧工程において、前記射出部材の前進加速度を制限する制限部を有する、射出成形機の制御装置。
【請求項9】
成形材料を加熱するシリンダの内部に設けられる射出部材と、前記射出部材を前進させることで前記成形材料を金型装置の内部に充填させる射出駆動源と、を備える射出成形機の制御方法であって、
前記射出部材から前記成形材料に作用する充填圧力の実績値が設定値になるように前記射出駆動源を制御する保圧工程において、前記射出部材の前進を制限する工程と、
前記金型装置に設けたセンサの情報に基づいて、前記射出部材の前進を制限するのに使用する設定の適否を判断する工程と、
を有する、射出成形機の制御方法。
【請求項10】
成形材料を加熱するシリンダの内部に設けられる射出部材と、前記射出部材を前進させることで前記成形材料を金型装置の内部に充填させる射出駆動源と、を備える射出成形機の制御方法であって、
前記射出部材から前記成形材料に作用する充填圧力の実績値が設定値になるように前記射出駆動源を制御する保圧工程において、前記射出部材の前進加速度を制限する工程を有する、射出成形機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の制御装置、及び射出成形機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の射出成形機は、金型と射出装置を備えている。金型は可動金型と固定金型を有しており、これら可動金型と固定金型によってキャビティが形成される。射出装置は、加熱シリンダと、加熱シリンダ内に配置されるスクリュとを備える。スクリュを前進させることで、加熱シリンダ内の溶融樹脂がキャビティに充填される。特許文献1の射出成形機の制御系は、スクリュ位置の指令値と検出値との差に基づいて、射出装置の駆動部を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-164545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形機は、成形材料を加熱するシリンダと、シリンダの内部に設けられる射出部材と、射出部材を前進させることで成形材料を金型装置の内部に充填させる射出駆動源と、射出駆動源を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、充填工程と保圧工程とをこの順番で実施する。充填工程は、射出部材の移動速度の実績値が設定値になるように射出駆動源を制御することで、成形材料を金型装置の内部に充填する工程である。保圧工程は、射出部材から成形材料に作用する充填圧力の実績値が設定値になるように射出駆動源を制御することで、金型装置内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充する工程である。
【0005】
制御装置は、保圧工程において、射出部材の前進速度を監視しており、その前進速度が上限値を超えないように射出駆動源を制御する。これにより、ガス焼けを抑制することができる。ガス焼けは、成形材料が金型装置内のキャビティ空間に流れ込むことで、キャビティ空間のガスが圧縮され発熱し、成形材料が炭化する現象である。従来、保圧工程における射出部材の前進制限の設定は、熟練者が自身の経験に基づき行っており、熟練者以外の作業者が射出部材の前進制限を設定することは困難であった。
【0006】
本発明の一態様は、保圧工程における射出部材の前進制限の設定を支援する、技術を提供する。
【0007】
本発明の別の一態様は、ガス焼けを抑制する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る射出成形機の制御装置は、成形材料を加熱するシリンダの内部に設けられる射出部材と、前記射出部材を前進させることで前記成形材料を金型装置の内部に充填させる射出駆動源と、を備える射出成形機の制御装置である。前記制御装置は、前記射出部材から前記成形材料に作用する充填圧力の実績値が設定値になるように前記射出駆動源を制御する保圧工程において、前記射出部材の前進を制限する制限部と、前記金型装置に設けたセンサの情報に基づいて、前記制限部が使用する設定の適否を判断する判断部と、を有する。
【0009】
本発明の別の一態様に係る射出成形機の制限装置は、成形材料を加熱するシリンダの内部に設けられる射出部材と、前記射出部材を前進させることで前記成形材料を金型装置の内部に充填させる射出駆動源と、を備える射出成形機の制御装置である。前記制御装置は、前記射出部材から前記成形材料に作用する充填圧力の実績値が設定値になるように前記射出駆動源を制御する保圧工程において、前記射出部材の前進加速度を制限する制限部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、金型装置に設けたセンサの情報に基づいて制限部が使用する設定の適否を判断することで、その設定を支援できる。
【0011】
本発明の別の一態様によれば、射出部材の前進加速度を制限することで、ガスの圧縮を抑制でき、ガス焼けを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3図3は、制御装置の構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。
図4図4は、成形サイクルの工程の一例を示す図である。
図5図5は、射出制御部と制限部の関係の一例を示す図である。
図6図6は、金型装置の内部に流れ込む成形材料の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0014】
(射出成形機)
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0015】
図1図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0016】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0017】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0018】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0019】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0020】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0021】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0022】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0023】
尚、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0024】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0025】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0026】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0027】
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0028】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0029】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0030】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0031】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0032】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0033】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0034】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0035】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0036】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0037】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0038】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0039】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0040】
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0041】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0042】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0043】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0044】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0045】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0046】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。尚、複数の型厚調整機構が組み合わせて用いられてもよい。
【0047】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0048】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0049】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0050】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動部として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0051】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0052】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0053】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0054】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0055】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0056】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0057】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0058】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0059】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。
【0060】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、第1温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第1加熱器313を制御する。
【0061】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、第2加熱器323と第2温度検出器324とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第2加熱器323を制御する。
【0062】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0063】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0064】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0065】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0066】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0067】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0068】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0069】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0070】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0071】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0072】
尚、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0073】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0074】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0075】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0076】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0077】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0078】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0079】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0080】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0081】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0082】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0083】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0084】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0085】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0086】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0087】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0088】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0089】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0090】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0091】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0092】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0093】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0094】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0095】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0096】
尚、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0097】
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0098】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0099】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0100】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0101】
尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0102】
(制御装置の詳細)
次に、図3を参照して、制御装置700の構成要素の一例について説明する。なお、図3に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0103】
図3に示すように、制御装置700は、例えば、型締制御部711と、エジェクタ制御部712と、射出制御部713と、計量制御部714と、を有する。型締制御部711は、型締装置100を制御し、図4に示す型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、及び型開工程を実施する。エジェクタ制御部712は、エジェクタ装置200を制御し、突き出し工程を実施する。射出制御部713は、射出装置300の射出駆動源を制御し、射出工程を実施する。射出駆動源は、例えば射出モータ350であるが、油圧シリンダなどであってもよい。射出工程は、充填工程と保圧工程を含む。射出工程は、型締工程中に行われる。計量制御部714は、射出装置300の計量駆動源を制御し、計量工程を実施する。計量駆動源は、例えば計量モータ340であるが、油圧ポンプなどであってもよい。計量工程は、冷却工程中に行われる。
【0104】
充填工程は、シリンダ310の内部に設けられる射出部材の移動速度の実績値が設定値になるように射出駆動源を制御する工程である。充填工程は、射出部材を前方に移動させることで、射出部材の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800の内部に充填させる工程である。射出部材は、例えばスクリュ330(図1及び図2参照)であるが、プランジャであってもよい。
【0105】
射出部材の移動速度は、速度検出器を用いて検出する。速度検出器は、例えば射出モータエンコーダ351である。充填工程では、射出部材が前進することで、射出部材から成形材料に作用する圧力(以下、「充填圧力」とも呼ぶ。)が上昇する。充填工程は、保圧工程の直前に、射出部材を一時停止させる工程、又は射出部材を後退させる工程を含んでもよい。
【0106】
保圧工程は、充填圧力の実績値が設定値になるように射出駆動源を制御する工程である。保圧工程は、射出部材を前方に押すことで、金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充する工程である。充填圧力は、荷重検出器360などの圧力検出器を用いて検出する。圧力検出器として、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。
【0107】
保圧工程は、射出制御部713によって制御する。射出制御部713は、図5に示すように、例えば、速度指令作成部713aと、電流指令作成部713bと、を有する。速度指令作成部713aは、充填圧力の設定値と実績値の偏差に基づき速度指令を作成する。電流指令作成部713bは、射出部材の前進速度の指令値と実績値の偏差に基づき電流指令を作成する。射出モータ350などの射出駆動源は、電流指令に従って駆動される。
【0108】
次に、図6を参照して、金型装置800の内部に流れ込む成形材料Mの一例について説明する。成形材料Mは、例えば樹脂である。成形材料Mは、金型装置800の内部のキャビティ空間801に流れ込む。キャビティ空間801は、固定金型810と可動金型820の分割面830に形成される。分割面830は、一般的にパーティングラインと呼ばれる。
【0109】
成形材料Mがキャビティ空間801に流れ込む際にその流れが急激であると、キャビティ空間801のガスが分割面830などを介して金型装置800の外部に逃げにくい。その結果、ガス焼けと呼ばれる不良が発生してしまう。ガス焼けは、キャビティ空間801のガスが圧縮され発熱し、成形材料Mを炭化させる現象である。
【0110】
ガス焼けが生じる場合、キャビティ空間801のガスが金型装置800の外部に逃げにくく、ガスがキャビティ空間801に残りやすいので、ショートと呼ばれる不良も生じうる。ショートは、成形材料Mがキャビティ空間801の全体に充填される前に冷却され固化する現象である。
【0111】
成形材料Mの流れ方は、例えば射出部材の移動速度に応じて変わる。射出部材の前進速度が速いほど、成形材料Mの流れが速くなる。保圧工程において、充填圧力の実績値が設定値に比べて小さい場合、充填圧力の実績値が設定値になるように、射出部材が前進させられる。射出部材の前進が急激であると、成形材料Mの流れが急激になってしまう。
【0112】
射出部材の急激な前進は、充填工程から保圧工程への切換(いわゆるV/P切換)の時に生じやすい。V/P切換時に、キャビティ空間801には、通常、空隙が残っている。V/P切換時に、充填圧力の実績値が設定値に比べて小さく且つ実績値と設定値の差が大きいと、射出部材の急激な前進が生じうる。
【0113】
図3及び図5に示すように、制御装置700は、制限部715を有する。制限部715は、保圧工程における射出部材の前進を制限する。制限部715は、例えば速度指令作成部713aの作成する速度指令値に上限を設定することで、保圧工程における射出部材の前進を制限する。保圧工程において充填圧力の実績値が設定値に比べて小さく且つ実績値と設定値の差が大きくても、射出部材の前進速度が上限値を超えることはない。その結果、ガス焼けを抑制できる。ガス焼けのみならず、ショートの発生をも抑制できる。
【0114】
従来、制限部715が射出部材の前進速度に上限値を設定することで、ガス焼けを抑制していたが、ガス焼けの抑制が不十分なことがあった。例えば、前進速度が上限値以下であっても、前進加速度が大きければ、成形材料の流動先端の加速度が大きく、ガスが圧縮されやすいからである。
【0115】
そこで、本実施形態の制限部715は、保圧工程における射出部材の前進加速度に上限値を設定する。射出部材の前進速度の上限値と、前進加速度の上限値とは、別々に設定される。保圧工程において充填圧力の実績値が設定値に比べて小さく且つ実績値と設定値の差が大きくても、射出部材の前進加速度が上限値を超えることはない。その結果、ガス焼けを抑制できる。ガス焼けのみならず、ショートの発生をも抑制できる。
【0116】
なお、本実施形態の制限部715は、保圧工程における射出部材の前進速度と前進加速度の両方に上限値を設定するが、前進速度と前進加速度の一方に上限値を設定することでガス焼けを抑制できる場合もある。従って、制限部715は、保圧工程における射出部材の前進速度と前進加速度の少なくとも1つの上限値を設定すればよい。
【0117】
従来、保圧工程における射出部材の前進制限の設定(より詳細には前進速度の上限値の設定)は、熟練者が自身の経験に基づき行っており、熟練者以外の作業者が射出部材の前進制限を設定することは困難であった。
【0118】
図3に示すように、制御装置700は、判断部716を有する。判断部716は、金型装置800に設けたセンサ841の情報に基づいて、制限部715が使用する設定の適否を判断する。金型装置800に設けたセンサ841の情報を用いることで、金型装置800の内部における成形材料Mの流れの状況を推定でき、制限部715が使用する設定の適否を判断できる。これにより、保圧工程における射出部材の前進制限の設定を支援できる。
【0119】
センサ841の情報は、例えば金型装置800の内部におけるガスの圧力、温度、速度および加速度のうちの少なくとも1つの情報を含む。成形材料Mの流れが急激であるほど、ガスの圧力、温度、速度および加速度が大きくなる。従って、これらの物理量から、成形材料Mの流れの状況を推定できる。センサ841は、例えば圧力センサ、温度センサ、速度センサおよび加速度センサのうちの少なくとも1つを含む。
【0120】
センサ841としての圧力センサは、ガスの圧力を検出する。圧力センサは、例えば成形材料の流動経路の末端に配置される。圧力センサの検出値が上限値を超える場合、金型装置800の内部におけるガスの圧縮率が高く、ガス焼けが生じてしまうので、判断部716は制限部715が使用する設定が不適であると判断する。一方、圧力センサの検出値が上限値以下である場合、金型装置800の内部におけるガスの圧縮率が低く、ガス焼けが生じないので、判断部716は制限部715が使用する設定が適切であると判断する。
【0121】
センサ841としての温度センサは、ガスの温度を検出する。温度センサは、例えば成形材料の流動経路の末端に配置される。温度センサの検出値が上限値を超える場合、金型装置800の内部におけるガスの温度が高く、ガス焼けが生じてしまうので、判断部716は制限部715が使用する設定が不適であると判断する。一方、温度センサの検出値が上限値以下である場合、金型装置800の内部におけるガスの温度が低く、ガス焼けが生じないので、判断部716は制限部715が使用する設定が適切であると判断する。
【0122】
センサ841としての速度センサは、ガスの速度を検出する。速度センサは、例えばガスの通路付近に配置される。ガスの通路は、例えば固定金型810と可動金型820の分割面830、または可動金型820のピン穴821である。ピン穴821には、例えばエジェクタピン827が挿通されている。エジェクタピン827は、エジェクタプレート826(図1及び図2参照)と共に進退させられ、キャビティ空間801で成形された成形品を突き出す。
【0123】
速度センサの検出値が上限値を超える場合、成形材料の流動先端の速度が速く、ガスが圧縮されやすく、ガス焼けが生じてしまうので、判断部716は制限部715が使用する設定が不適であると判断する。一方、速度センサの検出値が上限値以下である場合、成形材料の流動先端の速度が遅く、ガスがほとんど圧縮されず、ガス焼けが生じないので、判断部716は制限部715が使用する設定が適切であると判断する。
【0124】
センサ841としての加速度センサは、ガスの加速度を検出する。加速度センサは、例えばガスの通路付近に配置される。加速度センサの検出値が上限値を超える場合、成形材料の流動先端の加速度が大きく、ガスが圧縮されやすく、ガス焼けが生じてしまうので、判断部716は制限部715が使用する設定が不適であると判断する。一方、加速度センサの検出値が上限値以下である場合、成形材料の流動先端の加速度が小さく、ガスがほとんど圧縮されず、ガス焼けが生じないので、判断部716は制限部715が使用する設定が適切であると判断する。なお、加速度は、速度センサで検出することも可能である。
【0125】
センサ841の検出値と比較する上限値は、例えば金型装置800ごとに設定される。上限値は、設定変更可能である。例えば、作業者は、画面の入力欄に数値を入力することで、上限値を手動で設定する。あるいは、制御装置700が、成形品の画像を用いてガス焼けの有無を検出し、その検出結果に基づいて上限値を自動で設定する。
【0126】
センサ841は、予め設定された取得タイミングで、上記情報を取得する。その取得タイミングは、例えば充填工程の開始からの経過時間、または保圧工程の開始からの経過時間で設定される。保圧工程の開始からの経過時間は、V/P切換からの経過時間に等しい。いずれかの経過時間が設定時間に達した時に、センサ841が上記情報を取得する。
【0127】
取得タイミングは、成形材料の流動先端の位置で設定されてもよい。成形材料の流動先端が設定位置に達した時に、センサ841が上記情報を取得する。成形材料の流動先端が設定位置に達したか否かは、例えば存在検知センサ842(図6参照)で検知する。存在検知センサ842は、例えば反射光の強度で成形材料の存在を検知する。
【0128】
なお、取得タイミングは、成形材料の流動先端が設定位置に達した時からの経過時間で設定されてもよい。その経過時間が設定時間に達した時に、センサ841が上記情報を取得する。
【0129】
図3に示すように、制御装置700は、設定変更部717を有してもよい。設定変更部717は、センサ841の情報に基づいて制限部715が使用する設定を変更する。金型装置800に設けたセンサ841の情報を用いることで、金型装置800の内部における成形材料Mの流れの状況を推定でき、その状況に適した設定変更が可能である。従来、熟練者のみが設定可能であった、保圧工程における射出部材の前進制限を自動で設定できる。
【0130】
センサ841としての圧力センサは、ガスの圧力を検出する。圧力センサの検出値が上限値を超える場合、金型装置800の内部におけるガスの圧縮率が高く、ガス焼けが生じてしまうので、設定変更部717は保圧工程における射出部材の前進速度と前進加速度の少なくとも1つの上限値を低く設定変更する。設定変更量は、一定量でもよいし、圧力センサの検出値と上限値の差に応じた量でもよい。後者の場合、差が大きいほど、設定変更量が大きい。圧力センサの検出値が上限値以下になるまで、設定変更部717が設定変更を繰り返し実施してもよい。
【0131】
センサ841としての温度センサは、ガスの温度を検出する。温度センサの検出値が上限値を超える場合、金型装置800の内部におけるガスの温度が高く、ガス焼けが生じてしまうので、設定変更部717は保圧工程における射出部材の前進速度と前進加速度の少なくとも1つの上限値を低く設定変更する。設定変更量は、一定量でもよいし、温度センサの検出値と上限値の差に応じた量でもよい。後者の場合、差が大きいほど、設定変更量が大きい。温度センサの検出値が上限値以下になるまで、設定変更部717が設定変更を繰り返し実施してもよい。
【0132】
センサ841としての速度センサは、ガスの速度を検出する。速度センサの検出値が上限値を超える場合、成形材料の流動先端の速度が速く、ガスが圧縮されやすく、ガス焼けが生じてしまうので、設定変更部717は保圧工程における射出部材の前進速度と前進加速度の少なくとも1つの上限値を低く設定変更する。設定変更量は、一定量でもよいし、速度センサの検出値と上限値の差に応じた量でもよい。後者の場合、差が大きいほど、設定変更量が大きい。速度センサの検出値が上限値以下になるまで、設定変更部717が設定変更を繰り返し実施してもよい。
【0133】
センサ841としての加速度センサは、ガスの加速度を検出する。加速度センサの検出値が上限値を超える場合、成形材料の流動先端の加速度が大きく、ガスが圧縮されやすく、ガス焼けが生じてしまうので、設定変更部717は保圧工程における射出部材の前進速度と前進加速度の少なくとも1つの上限値を低く設定変更する。設定変更量は、一定量でもよいし、加速度センサの検出値と上限値の差に応じた量でもよい。後者の場合、差が大きいほど、設定変更量が大きい。加速度センサの検出値が上限値以下になるまで、設定変更部717が設定変更を繰り返し実施してもよい。
【0134】
設定変更部717は、例えばn(nは1以上の自然数)回目の成形サイクルにおけるセンサ841の情報に基づいて、n+1回目以降の成形サイクルにおける制限部715が使用する設定を変更する。n+1回以降の成形サイクルにおいて、ガス焼けの発生を抑制できる。設定変更部717は、センサ841の検出値が所望の範囲に収まるまで、設定変更を繰り返し実施してもよい。
【0135】
設定変更部717は、n(nは1以上の自然数)回目の成形サイクルにおけるセンサ841の情報に基づいて、n回目の成形サイクルにおける制限部715が使用する設定を変更してもよい。n回目の成形サイクルにおいて、ガス焼けの発生を抑制できる。つまり、リアルタイムでガス焼けの発生を抑制できる。設定変更部717は、センサ841の検出値が所望の範囲に収まるまで、設定変更を繰り返し実施してもよい。
【0136】
なお、本実施形態では設定変更部717によって制限部715が使用する設定を変更するが、作業者によって制限部715が使用する設定を変更してもよい。つまり、本実施形態では自動で設定変更するが、手動で設定変更してもよい。手動で設定変更する場合、例えば制御装置700の表示制御部720(図3参照)がセンサ841の情報を表示装置760に表示する。
【0137】
作業者は、例えば表示装置760に表示されたセンサ841の情報を見ながら、制限部715が使用する設定を変更する。その変更は、作業者が画面の入力欄に保圧工程における射出部材の前進速度と前進加速度のうちの少なくとも1つの上限値を入力することで行う。作業者は、センサ841の検出値が所望の範囲に収まるまで、設定変更を繰り返し行ってもよい。
【0138】
以上、本発明に係る射出成形機の制御装置および射出成形機の制御方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0139】
10 射出成形機
310 シリンダ
330 スクリュ(射出部材)
350 射出モータ(射出駆動源)
700 制御装置
715 制限部
716 判断部
800 金型装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6