(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084266
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】オレフィン系樹脂容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230612BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230612BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B27/32 E
B65D1/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198331
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】登坂 康弘
(72)【発明者】
【氏名】森 研一
【テーマコード(参考)】
3E033
4F100
【Fターム(参考)】
3E033BA14
3E033BA15
3E033BB10
3E033CA03
3E033CA20
3E033FA03
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK05A
4F100AK05B
4F100AK05C
4F100BA02
4F100BA03
4F100EH20
4F100GB16
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JA06C
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JA13C
4F100JB01
4F100JC00B
4F100JK01
4F100JK02
4F100JK07
4F100JK08
4F100JL16B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】本発明は、環境に優しく、耐ESCR性に優れ、且つ、機械的強度が高く、自立性が優れ、耐薬品性及び低溶出性でクリーン性に優れたオレフィン系樹脂容器を提供する。
【解決手段】石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第1層と石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~200重量部からなるオレフィン系樹脂組成物よりなる第2層が積層されてなり、第1層が内側の層であり、第2層が外側の層であることを特徴とするオレフィン系樹脂容器。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第1層と石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~200重量部からなるオレフィン系樹脂組成物よりなる第2層が積層されてなり、第1層が内側の層であり、第2層が外側の層であることを特徴とするオレフィン系樹脂容器。
【請求項2】
第2層の厚さが、第1層の厚さと同一又はそれより厚いことを特徴とする請求項1記載のオレフィン系樹脂容器。
【請求項3】
ASTM D6866に準拠して測定された容器全体のバイオマス度が、1~60%であることを特徴とする請求項1又は2記載のオレフィン系樹脂容器。
【請求項4】
石油由来のオレフィン系樹脂及びバイオマス由来のポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のオレフィン系樹脂容器。
【請求項5】
第2層における石油由来のオレフィン系樹脂が、石油由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品、石油由来のオレフィン系樹脂とバイオマス由来のオレフィン系樹脂よりなる成型体の回収粉砕品である若しくは石油由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品、石油由来のオレフィン系樹脂とバイオマス由来のオレフィン系樹脂よりなる成型体の回収粉砕品又はバイオマス由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品を含んでいることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のオレフィン系樹脂容器。
【請求項6】
更に、請求項1~5のいずれか1項に記載のオレフィン系樹脂容器における第2層の外表面に石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第3層が積層されていることを特徴とするオレフィン系樹脂容器。
【請求項7】
第2層の厚さが第1層及び第3層の厚さと同一又はそれより厚いことを特徴とする請求項6記載のオレフィン系樹脂容器。
【請求項8】
ASTM D6866に準拠して測定された容器全体のバイオマス度が、1~60%であることを特徴とする請求項6又は7記載のオレフィン系樹脂容器。
【請求項9】
石油由来のオレフィン系樹脂及びバイオマス由来のポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項6、7又は8記載のオレフィン系樹脂容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しいバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂よりなる環境に優しく、耐ESCR性に優れ、且つ、機械的強度が高く、自立性が優れ、耐薬品性及び低溶出性でクリーン性に優れたオレフィン系樹脂容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料から製造されるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂は、所謂汎用性樹脂であり、フィルム、シート、プレート、容器、成形品等の成形体の材料として広く使用されている。
【0003】
しかし、近年、循環型社会の構築を求める声の高まりと共に、化石燃料から製造される石油由来のオレフィン系樹脂の代わりにカーボンニュートラルな再生可能な合成樹脂である、バイオマス由来のオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸などの生分解性樹脂等を使用することが研究されている。
【0004】
例えば、「内層と外層との相互間に中間層を備えた積層型の合成樹脂製容器であって、前記内外層は、オレフィン系樹脂であり、前記中間層はバイオマスプラスチックを主成分とする構成体からなり、前記内外層の樹脂の使用量が全樹脂量の20~75質量%、前記中間層の樹脂の使用量が全樹脂量の25~80質量%であり、該中間層は、ポリ乳酸、でんぷん樹脂、PHA樹脂、バイオマスを主成分とする脂肪族ポリエステル及びバイオマスを由来とする非生分解性プラスチックのうちの少なくとも1種からなるとともに、中間層を形成する全樹脂量の15質量%以下の柔軟性樹脂である改質剤を含有する、ことを特徴とする合成樹脂製容器。」(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記バイオマス由来の樹脂(バイオマス由来オレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸などの生分解性樹脂等)は、石油由来の樹脂に比較し物性が低く、特に、溶融成形した成形体は機械的強度等の物性が著しく劣るという欠点があった。
【0006】
又、水、ジュース、しょうゆなどの飲料・飲食用液体や、灯油、酢酸、塩酸、硝酸などの化学薬品や特殊な工業中間体である薬品を充填するための容器は、一般に、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂をブロー成型することにより成形されているが、上記バイオマス由来の樹脂では溶融張力が低く、ブロー成型が実施できなかったり、できても機械的強度が低く容器として使用できないことがあった。特に、容器に液体の充填物を充填した後、保存や輸送の際に外部環境の変化や経時により、容器の形状が変化したり、容器のコーナー部にクラックが生じる(耐クラック性「耐ESCR性」が劣る)ことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂を含み、環境に優しく、耐ESCR性の優れたオレフィン系樹脂容器を提供することにある。又、異なる目的は、機械的強度が高く、自立性が優れ、耐薬品性及び低溶出性でクリーン性に優れたオレフィン系樹脂容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
[1]石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第1層と石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~200重量部からなるオレフィン系樹脂組成物よりなる第2層が積層されてなり、第1層が内側の層であり、第2層が外側の層であることを特徴とするオレフィン系樹脂容器、
[2]第2層の厚さが、第1層の厚さと同一又はそれより厚いことを特徴とする上記[1]記載のオレフィン系樹脂容器、
[3]ASTM D6866に準拠して測定された容器全体のバイオマス度が、1~60%であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載のオレフィン系樹脂容器、
[4]石油由来のオレフィン系樹脂及びバイオマス由来のポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレンであることを特徴とする上記[1]、[2]又は[3]記載のオレフィン系樹脂容器、
[5]第2層における石油由来のオレフィン系樹脂が、石油由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品、石油由来のオレフィン系樹脂とバイオマス由来のオレフィン系樹脂よりなる成型体の回収粉砕品である若しくは石油由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品、石油由来のオレフィン系樹脂とバイオマス由来のオレフィン系樹脂よりなる成型体の回収粉砕品又はバイオマス由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品を含んでいることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のオレフィン系樹脂容器、
[6]更に、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のオレフィン系樹脂容器における第2層の外表面に石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第3層が積層されていることを特徴とするオレフィン系樹脂容器、
[7]第2層の厚さが第1層及び第3層の厚さと同一又はそれより厚いことを特徴とする上記[6]記載のオレフィン系樹脂容器、
[8]ASTM D6866に準拠して測定された容器全体のバイオマス度が、1~60%であることを特徴とする上記[6]又は[7]記載のオレフィン系樹脂容器、及び、
[9]石油由来のオレフィン系樹脂及びバイオマス由来のポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレンであることを特徴とする上記[6]、[7]又は[8]記載のオレフィン系樹脂容器
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオレフィン系樹脂容器の構成は上述の通りであり、石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第1層と石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~100重量部からなるオレフィン系樹脂組成物よりなる第2層が積層されてなり、第1層が内側の層であり、第2層が外側の層であるオレフィン系樹脂容器、又は、上記オレフィン系樹脂容器の外表面に、更に、石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第3層が積層されているオレフィン系樹脂容器なので、薬品等の充填物が接する第1層(内層)は石油由来のオレフィン系樹脂よりなるのであるから、耐薬品性及び低溶出性でクリーン性に優れており、耐ESCR性が優れている。又、第2層はバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂を含んでいるので、環境に優しい。更に、第2層の外表面に石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第3層が積層されていると機械的強度が高く、自立性が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のオレフィン系樹脂容器は、石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第1層と石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~200重量部からなるオレフィン系樹脂組成物よりなる第2層が積層されてなり、第1層が内側の層であり、第2層が外側の層であることを特徴とする。
【0012】
上記石油由来のオレフィン系樹脂は、石油から精製された、エチレンモノマー、プロピレンモノマー等のオレフィン系モノマーを主原料として重合されたポリマーであり、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂等のポリエチレン単独重合体、エチレンを主体とし、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン等のα―オレフィンとの共重合体、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂等のポリプロピレン単独重合体、プロピレンを主体とし、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、1-ヘプテン等のα―オレフィンとの共重合体等があげられ、機械的強度が高く、自立性の優れた容器が得られる高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ホモポリプロピレン樹脂及びランダムポリプロピレン樹脂が好ましく、より好ましくは高密度ポリエチレン樹脂である。又、これらのオレフィン系樹脂は単独で使用されてもよいし、2種類以上のオレフィン系樹脂が併用されてもよい。
【0013】
上記バイオマス由来のオレフィン系樹脂は、再生可能な天然原料(例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、マニオク等)から製造されたエタノールやプロパノールを原料とし、化学的に反応精製したエチレンやプロパン等のオレフィンを重合したポリマーである。
【0014】
上記バイオマス由来のオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂等のポリエチレン単独重合体、エチレンを主体とし、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン等のα―オレフィンとの共重合体、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂等のポリプロピレン単独重合体、プロピレンを主体とし、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、1-ヘプテン等のα―オレフィンとの共重合体等があげられ、機械的強度が高く、自立性の優れた容器が得られる高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ホモポリプロピレン樹脂及びランダムポリプロピレン樹脂が好ましく、より好ましくは高密度ポリエチレン樹脂である。又、これらのオレフィン系樹脂は単独で使用されてもよいし、2種類以上のオレフィン系樹脂が併用されてもよい。
【0015】
本発明のオレフィン系樹脂容器における第1層は、石油由来のオレフィン系樹脂よりなり、容器の内側の層である。第1層にバイオマス由来のオレフィン系樹脂が含有されていると、容器に薬品等の充填物を収納した際に、充填物が第1層に接触するため、耐薬品性及び低溶出性が低下し、クリーン性が低下し、耐ESCR性が低下するので、バイオマス由来のオレフィン系樹脂は含有されていないのが好ましく、バイオマス由来のオレフィン系樹脂の含有量は5重量%以下が好ましい。
【0016】
本発明のオレフィン系樹脂容器における第2層は、容器の外側の層であり、石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~200重量部からなるオレフィン系樹脂組成物よりなる。
【0017】
第2層はオレフィン系樹脂容器の外側の層であり、オレフィン系樹脂容器に薬品等の充填物を収納しても充填物が第2層に接触しないので、バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂を含んでいても耐薬品性及び低溶出性が低下してクリーン性が低下したり、耐ESCR性が低下することがない。
【0018】
バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂の添加量が少なくなると、環境に対する優しさが低下し、逆に多くなると、溶融成形性、ブロー成形性等の成形性が低下し容器の製造が困難になるので、第2層のオレフィン系樹脂組成物は石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~200重量部からなるのであり、好ましくは、石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~150重量部である。
【0019】
上記第2層(外層)における石油由来のオレフィン系樹脂は、コスト削減、廃棄物削減(廃棄物の再利用)等のために、石油由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品又は石油由来のオレフィン系樹脂とバイオマス由来のオレフィン系樹脂よりなる成型体の回収粉砕品であってもよいし、石油由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品、石油由来のオレフィン系樹脂とバイオマス由来のオレフィン系樹脂よりなる成型体の回収粉砕品又はバイオマス由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品を含んでいてもよい。回収粉砕品は熱履歴のため機械的強度等の物性が低下している可能性があるので第2層(外層)における石油由来のオレフィン系樹脂100重量部に対し300重量部以下が好ましく、より好ましくは250重量部以下である。
【0020】
尚、第1層(内層)における石油由来のオレフィン系樹脂には、回収粉砕品には何を含有しているか不明である場合もあり、薬品等の充填物を収納した際に充填物に溶出する可能性があるので、回収粉砕品を添加しないのが好ましい。
【0021】
上記石油由来のオレフィン系樹脂及びオレフィン系樹脂組成物には、従来からポリオレフィン系樹脂の成形の際に一般に使用されている、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、クレー等の無機充填剤、熱安定剤、耐熱向上剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、衝撃改良剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料等の添加剤が、必要に応じて、添加されてもよい。
【0022】
又、第1層(内層)と第2層(外層)の厚さの比率は、特に限定されないが、第1層(内層)の比率が多くなると、バイオマス由来のオレフィン系樹脂の添加量が少なくなり、環境に対する優しさが低下し、逆に、第2層(外層)の比率が多くなると、バイオマス由来のオレフィン系樹脂の添加量が多くなり、溶融成形性、ブロー成形性等の成形性が低下し容器の製造が困難になるので、第2層(外層)の厚さが、第1層(内層)の厚さと同一又はそれより厚いことが好ましく、より好ましくは、第1層(内層)の厚さ1に対し第2層(外層)の厚さは1~3が好ましい。
【0023】
又、ASTM D6866に準拠して測定された容器全体のバイオマス度は、低くなるとバイオマス由来のオレフィン系樹脂の添加量が少なくなり、環境に対する優しさが低下し、逆に、多くなると、バイオマス由来のオレフィン系樹脂の添加量が多くなり、溶融成形性、ブロー成形性等の成形性が低下し容器の製造が困難になるので、1~60%が好ましく、より好ましくは15~50%である。
【0024】
上記石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第1層と石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~200重量部からなるオレフィン系樹脂組成物よりなる第2層が積層されてなり、第1層が内側の層であり、第2層が外側の層であることを特徴とするオレフィン系樹脂容器には、更に、オレフィン系樹脂容器における第2層の外表面に石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第3層が積層されてよい。
【0025】
即ち、このオレフィン系樹脂容器は、上記石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第1層と石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~200重量部からなるオレフィン系樹脂組成物よりなる第2層と石油由来のオレフィン系樹脂よりなる第3層とが積層された、三層構造のオレフィン系樹脂容器である。
【0026】
上記三層構造のオレフィン系樹脂容器における第3層を構成する石油由来のオレフィン系樹脂は前述の通りであり、前述のように、従来からポリオレフィン系樹脂の成形の際に一般に使用されている添加剤が、必要に応じて、添加されてもよい。
【0027】
上記三層構造のオレフィン系樹脂容器は、第1層(内層)と第3層(外層)が石油由来のオレフィン系樹脂よりなる樹脂層であり、石油由来のオレフィン系樹脂100重量部とバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂35~200重量部からなるオレフィン系樹脂組成物よりなる第2層を中間層として挟んで積層されているので、溶融成形性、ブロー成形性等の成形性が優れており、製造し易く、機械的強度等の物性が優れており、自立性が優れている。又、オレフィン系樹脂容器に薬品等の充填物を収納したり、洗浄液で洗浄しても充填物や洗浄液が第2層(中間層)に接触しないので、第2層(中間層)がバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂を含んでいても耐薬品性及び低溶出性が低下してクリーン性が低下したり、耐ESCR性が低下することがない。
【0028】
又、第1層(内層)と第2層(中間層)と第3層(外層)の厚さの比率は、特に限定されないが、第1層(内層)及び第3層(外層)の比率が多くなると、バイオマス由来のオレフィン系樹脂の添加量が少なくなり、環境に対する優しさが低下し、逆に、第2層(中間層)の比率が多くなると、バイオマス由来のオレフィン系樹脂の添加量が多くなり、溶融成形性、ブロー成形性等の成形性が低下し容器の製造が困難になるので、第2層(中間層)の厚さが、第1層(内層)の厚さ及び第3層(外層)の厚さと同一又はそれより厚いことが好ましく、より好ましくは、第1層(内層)及び第3層(外層)の厚さ1に対し第2層(中間層)の厚さは1~10である。又、第3層(外層)の厚さは第1層(内層)の厚さと同一又はそれより厚いことが好ましく、より好ましくは、第1層(内層)の厚さ1に対し第3層(外層)の厚さは1~3である。従って、第1層(内層)と第2層(中間層)と第3層(外層)の厚さの比率は1:2:1~1:6:2が特に好ましい。
【0029】
又、ASTM D6866に準拠して測定されたオレフィン系樹脂容器(3層)全体のバイオマス度は、低くなるとバイオマス由来のオレフィン系樹脂の添加量が少なくなり、環境に対する優しさが低下し、逆に、多くなると、バイオマス由来のオレフィン系樹脂の添加量が多くなり、溶融成形性、ブロー成形性等の成形性が低下し容器の製造が困難になるので、1~60%が好ましく、より好ましくは15~50%である。
【0030】
上記第3層(外層)における石油由来のオレフィン系樹脂は、コスト削減、廃棄物削減(廃棄物の再利用)等のために、石油由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品又は石油由来のオレフィン系樹脂とバイオマス由来のオレフィン系樹脂よりなる成型体の回収粉砕品であってもよいし、石油由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品、石油由来のオレフィン系樹脂とバイオマス由来のオレフィン系樹脂よりなる成型体の回収粉砕品又はバイオマス由来のオレフィン系樹脂成型体の回収粉砕品を含んでいてもよい。回収粉砕品は熱履歴のため機械的強度等の物性が低下している可能性があるので第3層(外層)における石油由来のオレフィン系樹脂100重量部に対し300重量部以下が好ましく、より好ましくは250重量部以下である。
【0031】
本発明のオレフィン系樹脂容器の形状は、特に限定されず、液体状の充填物を収納し得る容器であればよく、例えば、円筒状、角柱状、立方体状、直方体状、球状等の形状があげられる。
【0032】
本発明のオレフィン系樹脂容器の製造方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されればよく、各層を構成するオレフィン系樹脂組成物を、例えば、押出法、Tダイ法、キャスティング法、カレンダー法、射出成形法、プレス法等の従来公知の成形方法で押出した後容器に組み立てる方法、容器の形状のキャビティを有する金型を用い射出成形する方法、各層を構成するオレフィン系樹脂組成物を、溶融押出してパリソンを得た後、金型内でブローするブロー成形法等が挙げられ、ブロー成形法が好ましい。
【実施例0033】
次に、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0034】
使用したオレフィン系樹脂は、以下の通りである。
(1)石油由来のポリオレフィン系樹脂;
・p-HDPE;高密度ポリエチレン樹脂(京葉ポリエチレン社製、商品名「ポリエチレ
ン」、MFR0.03g/10min、密度0.954g/cm3)
・回収粉砕品;上記p-HDPEからなるブロー成型された箱状容器を粉砕した回収品
【0035】
(2)バイオマス由来のポリエチレン系樹脂;
・「Bio-HDPE」;高密度ポリエチレン樹脂(Braskem社製、MFR0.34g
/10min、密度0.956g/cm3、バイオマス度96%)
【0036】
(実施例1)
p-HDPEをスクリュ径65mmの一軸押出機に供給し、210℃で溶融混錬した第1層と、p-HDPE100重量部及びBio-HDPE150重量部よりなるオレフィン系樹脂組成物をスクリュ径65mmの一軸押出機に供給し、210℃で溶融混錬した第2層をクロスダイに注入し、略立方体状のキャビティを有するブロー成形用金型内に溶融状態の2層パリソンを供給し、型締めした後、圧縮空気を注入して、ブロー成形し、略立体状の2層オレフィン系樹脂容器を得た。
【0037】
得られた2層オレフィン系樹脂容器の側壁を切断し、側壁の中心部の厚みを測定したところ約2mmであり、端部の厚みは約5mmであった。
【0038】
得られた2層オレフィン系樹脂容器の側壁を切断し、その断面を観察することにより、
第1層(内層)及び第2層(外層)の厚さを測定し、その比率を表1に示した。
【0039】
(比較例1、2)
表1に示した所定量のp-HDPE又はp-HDPE及びBio-HDPEよりなるオレフィン系樹脂組成物をスクリュ径65mmの一軸押出機に供給し、210℃で溶融混錬したクロスダイに注入し、略立方体状のキャビティを有するブロー成形用金型内に溶融状態の単層パリソンを供給し、型締めした後、圧縮空気を注入して、ブロー成形し、略立体状の単層オレフィン系樹脂容器を得た。
【0040】
得られた単層オレフィン系樹脂容器の側壁を切断し、側壁の中心部の厚みを測定したところ約2mmであり、端部の厚みは約5mmであった。
【0041】
(実施例2~5)
表2に示した所定量のp-HDPEよりなるオレフィン系樹脂組成物をスクリュ径65mmの一軸押出機に供給し、210℃で溶融混錬した後、クロスダイに注入した第1層と第3層とp-HDPE300重量部及びBio-HDPE50重量部よりなるオレフィン系樹脂組成物から製造された成形体の回収粉砕品からなるオレフィン系樹脂組成物をスクリュ径65mmの一軸押出機に供給し、210℃で溶融混錬した後クロスダイに注入した第2層(中間層)を3層共押出し、略立方体状のキャビティを有するブロー成形用金型内に溶融状態の3層パリソンを供給し、型締めした後、圧縮空気を注入して、ブロー成形し、略立体状の3層オレフィン系樹脂容器を得た。
【0042】
得られた3層オレフィン系樹脂容器の側壁を切断し、側壁の中心部の厚みを測定したところ約2mmであり、端部の厚みは約5mmであった。
【0043】
得られた3層オレフィン系樹脂容器の側壁を切断し、その断面を観察することにより、
第1層(内層)、第2層(中間層)及び第3層(外層)の厚さを測定し、その比率を表1及び表2に示した。
【0044】
又、各実施例及び比較例において得られたオレフィン系樹脂容器を用いてJIS K 7127:1999に準拠して引張試験を行い、引張強度(MD方向)、引張弾性率(MD方向)及び伸び率(MD方向)を測定し結果を表1及び表2に示した。
【0045】
各実施例及び比較例において得られたオレフィン系樹脂容器を用いて、JIS Z 1706:ポリエチレンかんのストレスクラッキ試験に準拠してESCR試験を行い、結果を表1及び表2に示した。
尚、目視により、クラック(割れ)の観察されないものは「〇」と表記し、クラック(割れ)の観察されたものは「割れ」と表記した。
【0046】
各実施例及び比較例において得られたオレフィン系樹脂容器を粉砕し、ASTM D 6866に準拠してオレフィン系樹脂容器のバイオマス度を測定し、結果を表1及び表2に示した。
【0047】
【0048】
本発明のオレフィン系樹脂容器は上記の通りであり、耐薬品性及び低溶出性でクリーン性に優れており、耐ESCR性が優れている。又、バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂を含んでいるので、環境に優しく、機械的強度が高く、自立性が優れているので水、ジュース、しょうゆなどの飲料・飲食用液体や、灯油、酢酸、塩酸、硝酸などの化学薬品や特殊な工業中間体である薬品を充填するための容器として好適に使用される。