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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084288
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】止水工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230612BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230612BHJP
   B29C 73/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
E04G23/02 B
C09K3/10 E
B29C73/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198374
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】517259520
【氏名又は名称】株式会社神名テックス
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】松本 活水
【テーマコード(参考)】
2E176
4F213
4H017
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB13
2E176BB14
2E176BB17
4F213AA21
4F213AA32
4F213WA94
4F213WB01
4F213WM01
4H017AA04
4H017AB01
4H017AC06
4H017AD02
4H017AE03
(57)【要約】
【課題】建築物の止水処理を効率化することができる止水工法を提供する。
【解決手段】本発明の止水工法は、建築物内の施工対象部に自動注入装置1から止水材m2を放出して止水処理を行う、建築物の止水工法であって、前記自動注入装置1から前記施工対象部に透明の止水材m2を注入する工程を有する。
【選択図】図4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物内の施工対象部に自動注入装置から止水材を放出して止水処理を行う、建築物の止水工法であって、
前記自動注入装置から前記施工対象部に透明の止水材を注入する工程を有する、建築物の止水工法。
【請求項2】
前記止水材を注入する工程の前に前記施工対象部にプライマー材を注入する工程をさらに有し、
前記止水材を注入する工程において、前記自動注入装置を用いて前記プライマー材の上層に前記止水材を注入する、
請求項1に記載の建築物の止水工法。
【請求項3】
前記自動注入装置は、前記プライマー材を放出する第1の動作モードと、前記止水材を放出する第2の動作モードとを切替え可能であり、
前記プライマー材を注入する工程において、前記自動注入装置が前記第1の動作モードで前記プライマー材を放出し、
前記止水材を注入する工程において、前記自動注入装置が前記第2の動作モードで前記止水材を放出する、
請求項2に記載の建築物の止水工法。
【請求項4】
前記プライマー材を注入する工程において、着色された前記プライマー材を注入する、請求項2又は3に記載の建築物の止水工法。
【請求項5】
前記プライマー材を注入する工程において前記施工対象部に注入されるプライマー材の量が、前記止水材を注入する工程において前記プライマー材の上層に注入される止水材の量よりも多い、請求項2から4のいずれか一項に記載の建築物の止水工法。
【請求項6】
前記止水材を注入する工程においては、フィラーを含んでいない前記止水材を注入する、請求項1から5のいずれか一項に記載の建築物の止水工法。
【請求項7】
前記止水材が、アクリル樹脂及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含むものである請求項1から6のいずれか一項に記載の建築物の止水工法。
【請求項8】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、ポリオキシエチレンラウリルエーテルである請求項7に記載の建築物の止水工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の止水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物のコンクリート躯体のクラック等に止水材を充填する止水工法が知られている。例えば特許文献1には、ポンプを有する注入装置から樹脂材料がクラックに向けて注入され、樹脂材料が硬化することで施工対象部を止水する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-105211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の止水工法では、注入装置を用いて止水材の注入が行われるため、止水材の過剰注入が起き、止水材が施工対象部から漏れてしまい外観が損なわれることがあった。これを防止するため、作業者は、注入装置からの止水材の注入量を注意深くモニタリングしながら作業を行う必要があった。すなわち、注入装置を用いて注入を行うと、注入装置によってクラック内部が隠れてしまい、クラック内部に止水剤がどれだけ充填されているかをリアルタイムで把握することが難しい。そのため、作業者は、注入速度や注入時間から充填具合を予測し、ある程度充填されたと判断したら注入装置による注入を中断し、クラック内部の様子を確認するといったことが必要であった。
【0005】
また、本発明者らは、注入装置を使って注入を行う場合、作業者が、止水剤が施工対象部から漏れて外観が損なわれることを恐れるあまり、注入量を控えめにする傾向があるという問題を見出した。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、建築物の止水処理を効率化することができる止水工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の止水工法は、建築物内の施工対象部に自動注入装置から止水材を放出して止水処理を行う、建築物の止水工法であって、前記自動注入装置から前記施工対象部に透明の止水材を注入する工程を有する。
【0008】
本発明の止水工法は、前記止水材を注入する工程の前に前記施工対象部にプライマー材を注入する工程をさらに有し、前記止水材を注入する工程において、前記自動注入装置を用いて前記プライマー材の上層に前記止水材を注入してもよい。
【0009】
前記自動注入装置は、前記プライマー材を放出する第1の動作モードと、前記止水材を放出する第2の動作モードとを切替え可能であり、前記プライマー材を注入する工程において、前記自動注入装置が前記第1の動作モードで前記プライマー材を放出し、前記止水材を注入する工程において、前記自動注入装置が前記第2の動作モードで前記止水材を放出してもよい。
【0010】
前記プライマー材を注入する工程において、着色された前記プライマー材を注入してもよい。
【0011】
前記プライマー材を注入する工程において前記施工対象部に注入されるプライマー材の量が、前記止水材を注入する工程において前記プライマー材の上層に注入される止水材の量よりも多くてもよい。
【0012】
前記止水材を注入する工程においては、フィラーを含んでいない前記止水材を注入してもよい。
【0013】
前記止水材としては、アクリル樹脂及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含むものであることが好ましい。
【0014】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、ポリオキシエチレンラウリルエーテルであるものがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、建築物の止水処理を効率化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】止水処理が施される施工対象部及び止水工法で使用される装置を示す模式図である。
図2】自動注入装置の構成を示す図である。
図3】止水工程のフローチャートである。
図4】施工対象部に注入されるプライマー材及び止水材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る止水工法について説明する。図1は、止水処理が施される施工対象部及び止水工法で使用される装置を示す模式図である。図2は、自動注入装置の構成を示す図である。
【0018】
本実施形態の止水工法では、図1に示すように、作業者Aが自動注入装置1を用い、建築物5のコンクリート躯体のクラック5aに止水材を注入する。自動注入装置1の構成やクラック5aの位置及び形状等は、図面に開示されるものに何ら限定されない。以下の説明では、プライマー材及び止水材を「液体材料」と表現することもある。
【0019】
自動注入装置1は、第1のタンク51、第2のタンク52、液路41、液路42、液路43、第1のポンプ31、第2のポンプ32、及び本体11を備えている。本体11は、切替装置33、制御部40、ノズル13、第1の操作部15、第2の操作部16、及び第3の操作部17を備えている。自動注入装置1は、商用電源から電力が供給される構成であってもよいし、不図示のバッテリを有し、そのバッテリから電力が供給される構成であってもよい。
【0020】
第1のタンク51は、プライマー材を収容する容器である。プライマー材は、止水材の注入の前に施工対象部であるクラック5aに注入される樹脂組成物である。プライマー材は、粘性が比較的低くクラック等の細部まで浸透可能なものであることが好ましい。プライマー材は、有色で透光性を有しない材料であってもよい。プライマー材は着色された材料であってもよい。プライマー材は、施工対象部と止水材との結合力を高める機能を有する。プライマー材は、また、施工箇所の表面に密着し対象物の強度を改善する機能を有していてもよい。
【0021】
第2のタンク52は、止水材を収容する容器である。止水材は、着色されていない透明の材料である。止水材は、少なくとも硬化後において透明となる材料である。止水材は、例えばコンクリートの膨張及び収縮に追従できるように、硬化した状態で十分な柔軟性を備えていることが好ましい。止水材はフィラーを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。止水材がフィラーを含んでいない場合、ポンプに対する負荷が低減するのでポンプの長期にわたって使用することが可能となる。
【0022】
止水材の硬化時間は、例えば10分以下、好ましくは3分以下ものであってもよい。止水材は、防錆剤又は界面活性剤などが添加されていてもよい。止水材は、例えば、有機系のものとしてアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、又はシリコン系などのうち一種又は二種以上を用いることができる。止水材は粘性が比較的低い材料であることが好ましい。止水材の粘性が比較的低い場合、作業者は、施行対象部内に止水材を良好に充填することができる。また、止水材の充填状況を確認することで、作業者は、漏水の原因となっている通水路を特定することができる。
【0023】
止水材としては、アクリル樹脂とポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含むものが好ましく、アクリル樹脂とポリオキシエチレンラウリルエーテルを含むものがさらに好ましい。アクリル樹脂は、硬化後に透明なものを使用することができる。また、止水材は、アンモニアなどのpH調整剤、トルエンなどの有機溶剤、有機窒素硫黄化合物などの防腐剤、消泡剤、増粘剤、凍結防止剤を含むことができる。
【0024】
具体的な組成例としては、アクリル樹脂30~50重量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが0.01~5重量%、pH調整剤が0.01~5重量%、有機溶剤が0.01~5重量%、防腐剤が0.01~5重量%という組成が挙げられる。このような組成とした場合、止水材が硬化後も透明でありながら、止水性、粘性、注入装置からの吐出性などの取り扱い性にも優れる止水材とすることが可能となり、本発明のような注入装置を使用する止水方法に好適な止水材とすることができる。アクリル樹脂は、エマルジョンの状態で使用することが好ましい。
【0025】
第1のポンプ31は、例えば電気によって駆動する電動式ポンプである。第1のポンプ31の駆動源はモータであってもよい。第1のポンプ31の動作は制御部40によって制御される。第1のポンプ31は、第1のタンク51内のプライマー材を吸い上げ、液路41を通じてプライマー材を切替装置33へと送り出す。第1のポンプ31は、機械的エネルギによって圧力を増大させプライマー材を圧送するものであればどのような方式であってもよい。
【0026】
第1のポンプ31はいわゆる手動式のものであってもよい。この場合、作業者が例えば第1のポンプ31のレバー(不図示)等を動かしてポンプを動作させる。
【0027】
第2のポンプ32は、例えば電気によって駆動する電動式ポンプである。第2のポンプ32の動作は制御部40によって制御される。第2のポンプ32は、第2のタンク52内の止水材を吸い上げ、液路42を通じて止水材を切替装置33へと送り出す。第2のポンプ32は、機械的エネルギによって圧力を増大させ止水材を圧送するものであればどのような方式であってもよい。
【0028】
第1のポンプ31及び第2のポンプ32は任意の位置に配置可能である。例えば、第1のポンプ31及び第2のポンプ32は、それぞれ、第1のタンク51及び第2のタンク52の近傍に配置される。別の構成としては、第1のポンプ31及び第2のポンプ32は、自動注入装置1の本体11の内部に設けられてもよいし、本体11の外部に本体11と一体的に取り付けられてもよい。
【0029】
切替装置33は、本体11に設けられ、自動注入装置1における流路の接続状態を切り替える。切替装置33は、不図示の駆動源(例えばモータ)と切替機構とを有する。駆動源が制御部40からの制御信号に基づいて動作し駆動力を発生する。駆動源からの駆動力によって切替機構が動かされ、接続状態を切り替える。これにより、自動注入装置1においては、ノズル13の先端からプライマー材が放出される動作モードと、止水材が放出される動作モードとが切り替わるようになっている。
【0030】
なお、切替装置33は駆動源を有しないものであってもよい。例えば、作業者が、切替装置33に備えられた不図示の流路切替え用部材を動かすことで、流路が切り替えられてもよい。
【0031】
液路41、液路42及び液路43の一部又は全部は、例えばチューブなど可撓性のある管状部材であってもよいし、可撓性を有しない管状部材であってもよい。可撓性を有しない部材は、例えば、プラスチック製のパイプ又は金属製のパイプ等であってもよい。
【0032】
本体11は、例えば樹脂製のハウジングであり、作業者が手で持つことができる程度のサイズ及び形状であってもよい。本実施形態の自動注入装置1の構成要素のうちどの要素が本体11の内部に配置されるべきかは、特に限定されるものではない。本実施形態では、本体11に、制御部40、切替装置33、ノズル13、第1の操作部15、第2の操作部16及び第3の操作部17等が設けられていているが、こらのうち少なくとも1つが本体11とは別のハウジング内に設けられていてもよい。
【0033】
ノズル13は、液路43の末端部に接続された中空の部材であり、切替装置33から送り出された止水材又はプライマー材がノズル13の先端から放出される。ノズル13は、本体11から外側に突出している。自動注入装置1は、ノズル13が不図示の駆動源によって軸周りに回転するように設けられ、ノズル13の先端で対象物を掘削できるものであってもよい。この構成において、自動注入装置1は、掘削動作を行いながら、ノズル13から止水材又はプライマー材を放出できるように設けられていてもよい。
【0034】
第1の操作部15、第2の操作部16及び第3の操作部17は、作業者によって操作されるインターフェースである。第1の操作部15、第2の操作部16及び第3の操作部17は、例えば、ボタン、ダイヤル、レバー又はスライドスイッチ等である。
【0035】
第1の操作部15は、例えば自動注入装置1の注入動作の開始と停止とを切り替えるためのものである。第2の操作部16は、例えば液体材料の放出速度及び放出圧力の少なくとも一方の設定値を変更するためのものである。第3の操作部17は、例えば自動注入装置1がプライマー材を放出する第1の動作モードと、自動注入装置1が止水材を放出する第2の動作モードとを切り替えるためのものである。
【0036】
なお、第1の操作部15は、一例として、作業者Aによって操作される可動部材を有していてもよい。可動部材は、無段階的又は多段階に変位するように構成されており、制御部40は、この可動部材の位置に応じた出力でポンプを動作させる。例えば、作業者が可動部材を動かしていない状態では液体材料は放出されず、可動部材の変位量が大きくなるにつれて液体材料が高速で放出されるように、自動注入装置1が設けられていてもよい。
【0037】
制御部40は、例えばCPUなどのプロセッサ等を含む制御回路である。制御部40は、第1の操作部15、第2の操作部16及び第3の操作部17等に対する入力に応じて自動注入装置1の各部の動作を制御する。制御部40は、タイマー機能を有し、液体材料の放出時間をカウントする機能、及び、所定の設定時間だけ液体材料の放出を継続する機能を有していてもよい。
【0038】
自動注入装置1は液体材料の放出量を計測するためのセンサを有していてもよい。この場合、制御部40は、予め設定された所定の量だけ液体材料が放出されるように、第1のポンプ31又は第2のポンプ32を動作させてもよい。
【0039】
以上、本実施形態の止水工法で使用される自動注入装置1の一例について説明した。自動注入装置1は、少なくとも止水材を放出する機能を有していればよい。止水材のみを注入する場合には、上述したような2系統のポンプが設けられている必要はなく、自動注入装置1は第1のポンプ31のみを有する構成であってもよい。
【0040】
[施工工法の手順]
図3は、止水工程のフローチャートである。図4は、施工対象部に注入されるプライマー材及び止水材を示す断面図である。以下、図3及び図4を参照しながら本実施形態の止水工法について説明する。図4では、施工対象部であるクラック5aにプライマー材m1と止水材m2が充填された状態が示されている。
【0041】
まず、ステップS1において、作業者Aは、建築物5の施工対象部であるクラック5aの形状及びサイズを確認し、下処理を行う。下処理は、例えば、クラック5a又はその周辺部を削ったり、プライマー材及び止水材を注入するための注入孔を形成したりする作業であってもよい。
【0042】
次いで、ステップS2において、作業者はプライマー材を注入する。作業者は、自動注入装置1の第3の操作部17を操作し、プライマー材が注入される動作モードを選択する。作業者は、必要に応じて第2の操作部16を操作してプライマー材の放出速度等を調整する。そして、作業者は、第1の操作部15を操作し、プライマー材の注入を開始する。
【0043】
制御部40が第1のポンプ31に制御信号を送信し、第1のポンプ31が所定の動作条件で動作することで、プライマー材が第1のタンク51から吸い上げられ、切替装置33、液路43及びノズル13を通ってプライマー材がノズル13の先端から放出される。
【0044】
作業者が、ノズル13の先端をクラック5a(又はクラック5aの周辺に形成された注入孔)に向けて、プライマー材を放出することで、プライマー材がクラック5aの内部に注入される。プライマー材の注入後、所定の時間、プライマー材を乾燥させる。これにより、プライマー材m1の層がクラック5aの内面に形成される。
【0045】
次いで、ステップS3において、作業者は止水材を注入する。作業者は、自動注入装置1の第3の操作部17を操作し、止水材が注入される動作モードを選択する。作業者は、必要に応じて第2の操作部16を操作して止水材の放出速度等を調整する。そして、作業者は、第1の操作部15を操作し、止水材の注入を開始する。
【0046】
制御部40が第2のポンプ32に制御信号を送信し、第2のポンプ32が所定の動作条件で動作することで、止水材が第2のタンク52から吸い上げられ、切替装置33、液路43及びノズル13を通って止水材がノズル13の先端から放出される。
【0047】
作業者は、図4に示すように、止水材m2がクラック5aの内部に十分に行き渡るまで注入を継続する。作業者は、例えば止水材m2がクラック5aから溢れる、又は、止水材m2がクラック5aと連通している所定の隙間等(不図示)から溢れるのを目視で確認する。作業者は、これらの箇所から止水材m2が溢れたのを確認し、第1の操作部15を操作して止水材の注入を停止する。この工程により、プライマー材の上層に止水材が注入される。
【0048】
ステップS3において、プライマー材m1よりも多くの量の止水材m2が注入されてもよい。作業者が手動で自動注入装置1をコントロールし、このような注入が実現されてもよい。又は、自動注入装置1がプライマー材m1の注入量の設定値と止水材m2の注入量の設定値とを予め記憶することができ、自動注入装置1が設定値に基づき自動的に注入量を制御してもよい。
【0049】
その後、クラック5a内の止水材m2が硬化した後、作業者は所定の後処理(例えば仕上げ処理等)を行うことで一連の止水工法が完了する。
【0050】
以上説明した本実施形態の止水工法によれば、施工対象部であるクラック5aの内部に着色されていない透明の止水材m2が注入される。そのため、止水材m2がクラック5aから溢れたとしても、止水材m2は硬化した状態で透明であるため、止水材m2によって外観が損なわれることがない。硬化時に不透明となる材料の場合、クラック5aから溢れた止水材m2を拭き取ったり、削ったりする必要が生じる。そのため、作業者は止水材の注入を慎重に行う必要があった。止水材m2が溢れるのを回避するために、仮に十分な量の止水材が注入されない場合には、施工対象部が十分に止水されなかったり、施工後の品質が不十分になったりする恐れがある。
【0051】
これに対して本実施形態の止水工法では、止水材m2が透明であるため、止水材m2が施工対象部から溢れたとしても外観はほとんど損なわれない。自動注入装置1を用いた止水処理では、注入を停止するタイミングを作業者が判断する必要があり、従来の工法では作業者が注入状況を目視しながら慎重に作業する必要があった。本実施形態の止水工法では、作業者は注入を停止するタイミングを容易に判断することができ、かつ、止水材の注入量が不足するといった問題も生じにくい。
【0052】
本実施形態の止水工法では、プライマー材m1(図4参照)の注入後に止水材m2が注入される。したがって、プライマー材m1が施工対象部の素地と止水材m2との密着性を高め、止水材m2による止水効果を高めることができる。
【0053】
本実施形態の止水工法では、着色されたプライマー材m1が注入されてもよく、この場合、クラック5aの内部に十分な量のプライマー材m1が行き渡ったかを作業者が確認しやすい。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0055】
1 自動注入装置
5 建築物
5a クラック
11 本体
13 ノズル
15 第1の操作部
16 第2の操作部
17 第3の操作部
31 第1のポンプ
32 第2のポンプ
33 切替装置
40 制御部
41 液路
42 液路
43 液路
51 第1のタンク
52 第2のタンク
A 作業者
m1 プライマー材
m2 止水材

図1
図2
図3
図4