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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084291
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】ターンバー
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/32 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
B65H23/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198380
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000209599
【氏名又は名称】株式会社タンケンシールセーコウ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】藤平 清隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢姿郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 優児
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 恭平
【テーマコード(参考)】
3F104
【Fターム(参考)】
3F104AA03
3F104FA01
3F104FA14
3F104GA04
3F104GA06
3F104JA08
3F104JA10
3F104JB01
3F104JC00
3F104JC09
3F104JC16
(57)【要約】
【課題】外周面近傍に補助器機を配置する必要が無く、狭い空間にも配置可能で安価なターンバーを提供すること。
【解決手段】本発明によれば、ターンバー1であって、円筒状のロール本体2と、ロール本体に外装され通気性の多孔質材料で構成され内周面に周方向に延びる周方向溝6を有しているリング部材4a-pと、を備え、ロール本体は、一端から他端に向かって長手方向に延びそれぞれが気密に構成され外部の加圧気体供給機構から加圧気体の供給を受ける複数の加圧気体供給室22を内部に有し、複数の加圧気体供給室の一つと、前記リング部材の周方向溝とを流体連通する給気通路30a-pを備え、複数のリング部材の周方向溝の各々は、給気通路によって複数の加圧気体供給室のいずれかと流体連通しているターンバーが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されているウェブ状のワークを非接触でガイドするターンバーであって、
円筒状のロール本体と、
前記ロール本体に外装され通気性の多孔質材料で構成された複数のリング部材であって、内周面に周方向に延びる周方向溝を有しているリング部材と、を備え、
前記ロール本体は、該ロール本体の一端から他端に向かって長手方向に延びそれぞれが気密に構成され外部の加圧気体供給機構から加圧気体の供給を受ける複数の加圧気体供給室を内部に有し、
前記ターンバーは更に、
前記複数の加圧気体供給室の一つと、前記リング部材の周方向溝とを流体連通する給気通路を備え、
前記複数のリング部材の周方向溝の各々は、前記給気通路によって、前記複数の加圧気体供給室のいずれかと流体連通している、
ことを特徴とするターンバー。
【請求項2】
前記給気通路が、前記ロール本体を径方向に貫通する給気孔によって構成されている、
請求項1に記載のターンバー。
【請求項3】
前記周方向溝が、前記リング部材の内周面を周方向全周にわたって延びている、
請求項1または2に記載のターンバー。
【請求項4】
隣接する前記リング部材の周方向溝は、異なる加圧気体供給室と流体連通している、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のターンバー。
【請求項5】
前記加圧気体供給室は、前記ロール本体の円筒状内部空間を径方向に延びる隔壁で分割することによって形成され前記ロール本体の一端から他端まで延びている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のターンバー。
【請求項6】
隣接する前記リング部材の周方向溝に流体連通する給気通路は、互いに、前記ロール本体の長手方向および周方向にオフセットして配置されている、
請求項5に記載のターンバー。
【請求項7】
前記複数のリング部材の少なくとも一つが、他のリング部材と異なる長手方向の長さを有している、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のターンバー。
【請求項8】
前記複数の加圧気体供給室は、長手方向端部で、前記加圧気体供給機構に連結されている、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のターンバー。
【請求項9】
前記加圧気体供給機構は、前記複数の加圧気体供給室のそれぞれに独立して異なる圧力の加圧気体を供給可能である、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のターンバー。
【請求項10】
前記加圧気体供給機構は、前記複数の加圧気体供給室の1または2以上への加圧気体の供給を選択的に停止可能である、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のターンバー。
【請求項11】
前記通気性の多孔質材料が、多孔質カーボン、セラミックス、または多孔質金属のいずれである、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のターンバー。
【請求項12】
前記複数のリング部材の少なくとも1つが、他のリング部材とは透過性が異なる、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のターンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンバーに関し、詳細には、搬送される長尺状フィルム等の薄膜材料(ウェブ)の搬送方向を非接触で変更することができるターンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
上流側のロールから連続的に送出されたウェブを、所定経路に沿って搬送しながら処理する処理工程が知られている。このような処理工程では、ウェブは、巻送りロール、ガイドロール、巻取りロール等の多くのロールによって規定される経路に沿って搬送されながら、印刷、ラミネート、乾燥、裁断等の処理等を受ける。搬送経路が折れ曲る箇所では、ウエブを外周面の一部に沿って周方向に所定長だけ接触させ、搬送方向を変更する、所謂ターンバーと呼ばれるロールが使用される。
【0003】
このようなターンバーでは、バー外周面との接触によりウエブの表面に傷が付く等の問題があった。このような問題に対処するため、ターンバー本体を表面に多数の気体噴出孔が形成された中空体で形成し、中空体の表面の気体噴出孔から加圧気体を噴出させ、ウエブを中空体の外周面から浮上させて非接触で支持し、搬送方向を変更するターンバーが提案されている。
【0004】
しかしながら、このような外周面から加圧空気が噴出するターンバーで、ウエブを、特に幅広のウエブを浮上させると、ウエブの浮上高さ(外周面からの距離)が、ターンバーの長手方向において不均一なるという問題があった。
【0005】
また、ターンバーの長さより幅が狭いウエブを浮上させる場合にも、ターンバーの外周面全体から加圧空気が噴出されるため、ターンバーの両端領域では、ウエブ浮上に寄与しない加圧空気が無駄に噴出する状態となり、不要なランニングコストが発生していた。
【0006】
このような問題に対処すべく、ターンバーの内部を長手方向に複数の独立した小部屋に分割し、それぞれの小部屋に個別に加圧空気を供給できる構成とし、ターンバーの長手方向位置毎に、加圧空気の噴出状態を異ならせることができるターンバーが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-47671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献のターンバーは、異なる長手方向位置で加圧空気の噴出状態を異ならせることができるが、各小部屋41a、41b、41cに個別に加圧空気を送るためのエアダクト42a、42b、42cがターンバーの外部を通って、各小部屋41a、41b、41c近傍まで延び、ターンバーの径方向外方位置から各小部屋41a、41b、41cに接続される構造である。
【0009】
したがって、ターンバーの外周面付近にエアダクト等の補助器機が配置される複雑な構造となり、さらに、ターンバーの外周面付近にエアダクト等の補助器機を配置する付加的なスペースが必要となるため、ターンバーを狭い空間に配置することが困難となるという問題がある。
【0010】
さらに、ターンバーが高温環境下で使用される場合、特許文献の構成では、エアダクトおよびエアダクトとターンバーの接続部が高温環境に直接的に曝されるため、これらを耐熱性の部材で構成する必要が生じ、ターンバーのコストが上昇するという問題もある。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、外周面近傍に補助器機を配置する必要が無く、狭い空間にも配置可能で安価なターンバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明によれば、
搬送されているウェブ状のワークを非接触でガイドするターンバーであって、
円筒状のロール本体と、
前記ロール本体に外装され通気性の多孔質材料で構成された複数のリング部材であって、内周面に周方向に延びる周方向溝を有しているリング部材と、を備え、
前記ロール本体は、該ロール本体の一端から他端に向かって長手方向に延びそれぞれが気密に構成され外部の加圧気体供給機構から加圧気体の供給を受ける複数の加圧気体供給室を内部に有し、
前記ターンバーは更に、
前記複数の加圧気体供給室の一つと、前記リング部材の周方向溝とを流体連通する給気通路を備え、
前記複数のリング部材の周方向溝の各々は、前記給気通路によって、前記複数の加圧気体供給室のいずれかと流体連通している、
ことを特徴とするターンバーが提供される。
【0013】
このような構成によれば、ロール本体の一端から他端に向かって長手方向に延びる複数の加圧気体供給室に導入された加圧気体が、給気通路および周方向溝を介して多孔質材料で構成されたリング部材に供給され、リング部材の外表面から噴出する。したがって、加圧気体を吹き出させるために必要な機器をターンバー(リング部材)の外周面近傍に配置する必要が無く、狭い空間にも配置可能となる。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記給気通路が、前記ロール本体を径方向に貫通する給気孔によって構成されている。
【0015】
このような構成によれば、簡単な構成で、リング部材の周方向溝を加圧気体供給室に連通させることができる。
【0016】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記周方向溝が、前記リング部材の内周面を周方向全周にわたって延びている。
【0017】
このような構成によれば、周方向全周に亘る溝の形成は、部分的に延びる溝の形成より容易であるので、ターンバーの製造コストが低減される。
【0018】
本発明の他の好ましい態様によれば、
隣接する前記リング部材の周方向溝は、異なる加圧気体供給室と流体連通している。
【0019】
このような構成によれば、隣接するリング部材にそれぞれ連通する2つの加圧気体供給室に供給する気体の条件(圧力等)を異ならせることにより、隣接するリング部材に供給され、噴出させられる気体の条件(圧力等)を異ならせることができる。
【0020】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記加圧気体供給室は、前記ロール本体の円筒状内部空間を径方向に延びる隔壁で分割することによって形成され前記ロール本体の一端から他端まで延びている。
【0021】
このような構成によれば、簡単な構成で、ロール本体内に複数の加圧気体供給室を設けることができる。
【0022】
本発明の他の好ましい態様によれば、
隣接する前記リング部材の周方向溝に流体連通する給気通路は、互いに、前記ロール本体の長手方向および周方向にオフセットして配置されている。
【0023】
このような構成によれば、簡単な構成で、隣接するリング部材を、異なる加圧気体供給室に連通させることができる。
【0024】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記複数のリング部材の少なくとも一つが、他のリング部材と異なる長手方向の長さを有している。
【0025】
このような構成によれば、ターンバーの表面から噴出する気体の圧力等の分布を、リング部材の長手方向の長さによって変更することができる。
【0026】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記複数の加圧気体供給室は、長手方向端部で、前記加圧気体供給機構に連結されている。
【0027】
このような構成によれば、加圧気体供給機構への連結機構が、ウエブのガイドを行うロール本体の外周面から離れた部分に配置されるので、連結機構がウエブのガイドに影響を及ぼすことが抑制される。また、ウエブの搬送が高温下等の厳しい環境下で行われる場合にも、連結機構をこのような厳しい環境から離れた領域に配置することができる。
【0028】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記加圧気体供給機構は、前記複数の加圧気体供給室のそれぞれに独立して異なる圧力の加圧気体を供給可能である。
【0029】
このような構成によれば、加圧気体供給室毎に内部の圧力を異ならせることができるので、これらに連通するリング部材に供給されリング部材から噴出する気体の圧力も、連通する加圧気体供給室の内部圧力に応じて異ならせることができる。
【0030】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記加圧気体供給機構は、前記複数の加圧気体供給室の1または2以上への加圧気体の供給を選択的に停止可能である。
【0031】
このような構成によれば、例えば、ロール本体の長さより幅が狭いウエブの搬送時に、ロール本体の長手方向端部に位置するリング部材からの気体噴出を停止させ、装置のランニングコストを低減することができる。
【0032】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記通気性の多孔質材料が、多孔質カーボン、セラミックス、または多孔質金属のいずれである。
【0033】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記複数のリング部材の少なくとも1つが、他のリング部材とは透過性が異なる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、低い製造コストでありながらウェブを安定して支持できるターンバーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本実施形態の好ましい実施態様のターンバーの斜視図である。
図2図1のターンバーの分解斜視図である。
図3図1のターンバーの軸線方向に沿った縦断面である。
図4】本実施形態の他の好ましい実施態様のターンバーに用いられるロール本体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の本発明の好ましい実施形態を図面に沿って詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施態様のターンバー1の斜視図であり、図2は、ターンバー1の分解斜視図である。また、図3は、ターンバー1の軸線方向に沿った縦断面図である。
【0037】
ターンバー1は、所定の搬送経路に沿って搬送される長尺状フィルム等のウェブを、非接触でガイドする略円筒状の部材である。
図1に示されているように、ターンバー1は、中空円筒状のロール本体2と、軸方向長さが短い略円筒形状のリング複数(本実施態様では16個)のリング部材4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、4n、4o、4p(4a-p)を備えている。16個のリング部材は、ロール本体2に連続的に外装されている。
【0038】
ロール本体2は、アルミニウム、ステンレス等の金属、合成樹脂等の通気性を有さない材料で構成され、リング部材4は、通気性を有する多孔質カーボン、セラミック、焼結金属等の材料で構成されている。
【0039】
本実施態様のターンバー1では、各リング部材4a-pは、同一素材で形成され、同一の寸法形状を有している。ロール本体2の外径は、各リング部材4a-pの内径とほぼ等しく、この結果、複数のリング部材4a-pはロール本体2の外周面に隙間の無い状態で取り付けられ(外装され)、接着剤等で、相互におよびロール本体2に対して固定されている。リング部材a-p間の接着剤によって、隣接するリング部材間では、気体の流通は行われない。
【0040】
また、各リング部材4a-pの内周面の軸線方向ほぼ中央位置には、内周面を周方向全周に亘って延びる周方向溝6が形成されている(図3)。
【0041】
本実施態様のターンバー1は、ロール本体2の外周面に連続的に嵌装された16本のリング部材4a-pの軸線方向両端に取付けられた端リング8を備えている、端リング8は、軸線方向内方側面が、ロール本体2の軸線方向の両端面と径方向に整列することになる(図3)。この端リング8も、ロール本体2と同様に、アルミニウム、ステンレス等の金属、合成樹脂等の通気性を有さない材料で構成されている。
【0042】
さらに、本実施態様のターンバー1は、両方の端リング8のそれぞれに嵌め込まれた蓋部材10、12を備えている。蓋部材10、12は、それぞれ、円板部14、16を備えている。また、円板部14、16の中央から軸線方向外方に向かって突出する円筒状のシャフト部18が設けられている。一方の蓋部材10の円板部14には、図1および2に示すように、厚さ方向に貫通して延びる6つのエア孔20A、20B、20C、20D、20E、20F(20A-F)が、周方向に60度の角度間隔をおいて穿設されている。
【0043】
一方、図2に示されているように、中空円筒のロール本体2は、内部に、ロール本体2の軸線方向一端から他端まで長手方向に延びる6つの加圧気体供給室22A、22B、22C、22D、22E、22F(22A-F)を有している。加圧気体供給室22A-Fは、ロール本体2の円筒(円柱)状内部空間を、ロール本体2の軸線方向一端から他端まで長手方向に延びる仕切り壁24で仕切ることによって形成されている。
【0044】
仕切り壁24は、ロール本体2の円筒状内部空間の中心軸に沿って延びる円筒部26と、この円筒部26の外周面から60度の角度間隔で径方向外方にロール本体2の内周面まで延びる6枚の隔壁28によって構成されている。隣接する隔壁28と、ロール本体2の内周面と、円筒部26の外周面とで囲まれ、周方向に60度の角度間隔で配置された6つの空間が、それぞれ、加圧気体供給室22A-Fとなる。
【0045】
各加圧空気供給室20A-Fは、ロール本体2の全長に亘ってのび、軸線方向両端が、蓋部材10、12によって閉鎖されている。
蓋部材10は、円板部14に60度間隔で設けられたエア孔20A-Fのそれぞれが、各加圧空気供給室22A-Fと連通するような配置で、端リング8を介してロール本体2に取り付けられている。
【0046】
この結果、各加圧空気供給室22A-Fは、相互に連通しない独立した状態であり、且つ(後述する給気孔を除き)エア孔20A-Fのみで外部と連通した密閉空間となる。本実施態様では、各加圧空気供給室22A-Fの軸線方向端部分に設けられたエア孔20A-Fが、外部に設けられたコンプレッサ等の加圧気体供給機構に連結され、加圧空気の供給を受ける。また、加圧気体供給機構に代えて、真空ポンプ等の吸引機構を連結してもよい。
このように加圧空気供給室22A-Fには、それぞれ、エア孔20A-Fを通して、内部に加圧空気(必要に応じて減圧状態)を個別に導入することができる。
【0047】
さらに、本実施形態のターンバー1のロール本体2には、16個の給気孔(給気通路)30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30h、30i、30j、30k、30l、30m、30n、30o、30p(30a-p)が列状に形成されている。各通気孔30a-pは、ロール本体2の外周壁を貫通して延びている。
【0048】
ロール本体2の外周面上の各給気孔30a-pの軸線方向位置は、ロール本体2に嵌装された各リング部材4a-pの内周面の周方向溝6と整列するように設定されている。また、ロール本体2の外周面上の各給気孔30a-pの周方向位置は、隣接する給気孔に対して時計回り方向に60度の角度間隔をおくように設定されている。この結果、本実施態様のターンバー1では、図2に示されているように、16個の給気孔30a-pが、ロール本体2の外周面上に螺旋状に配置される。したがって、隣接するリング部材4の周方向溝6に流体連通する給気孔30は、互いに、ロール本体2の長手方向にリング部材4の軸線方向長さおよび周方向に60度の間隔でオフセットして配置されていることになる。
【0049】
このような配置によって、一端に配置された給気孔30aが、一端に配置されたリング部材4aの周方向溝と加圧空気供給室22Aとを連通し、これに続く各給気孔30b-pは、順次、1つ奥側(p側)にずれたリング部材の周方向溝6と、時計回り方向に1つ進んだ加圧空気室22を連通することなる。この結果、各リング部材4a-pの周方向溝6は、いずれかの加圧空気供給室と連通することになる。
【0050】
このような構成では、ある加圧空気供給室に例えば、0.3乃至0.5MPa程度の加圧空気を供給すると、この加圧空気は当該加圧空気供給室と連通する給気孔を介して当該給気孔が連通するリング部材の周方向溝に流入する。周方向溝は、リング部材の周方向全長に亘って延びているので、周方向溝に流入した加圧空気は、周方向溝を通り、当該リング部材の内部全体に流れ込み、リング部材の外周面全体から噴出することになる。一のリング部材4の外周面は、ターンバー1の外周面の一部を構成するので、リング部材の外周面から噴出した加圧空気は、ターンバーの外周面の一部から噴出し、ターンバー1の外周面の外方に位置するウエブを浮上させることになる。
【0051】
本実施形態のターンバーで浮上対象となるウエブとしては、例えば、厚さ6μm乃至120μmの金属箔、合成樹脂フィルム等が挙げられる。また、本実施態様のターンバーでは、毎分100m程度の速度で搬送されるウエブを浮上させ支持できる。
【0052】
本実施態様のターンバーでは、加圧空気供給室が独立しており、各リング部材は一の加圧空気供給室に連通しているので、加圧空気供給室への加圧空気の供給状態を変えることにより、同一の加圧空気供給室と連通するリング部材毎に加圧空気の噴出状態を異ならせることができる。
【0053】
本実施形態のターンバー1では、特定の加圧空気供給室とリング部材との具体的な連通関係は、以下の通りとなっている。
加圧空気供給室22Aは、給気孔30a、30g、30mを介して、リング部材4a、4g、4mの周方向溝6と連通している。
また、加圧空気供給室22Bは、給気孔30b、30h、30nを介して、リング部材4b、4h、4nの周方向溝6と連通している。
さらに、加圧空気供給室22Cは、給気孔30c、30i、3oを介して、リング部材4c、4i、4oの周方向溝6と連通している。
【0054】
また、加圧空気供給室22Dは、給気孔30d、30j、30pを介して、リング部材4d、4j、4pの周方向溝6と連通している。
さらにまた、加圧空気供給室22Eは、給気孔30e、30kを介して、リング部材4e、4kの周方向溝6と連通している。
さらにまた、加圧空気供給室22Eは、給気孔30f、30lを介して、リング部材4f、4lの周方向溝6と連通している。
【0055】
このような構成では、例えば、加圧空気供給室22Aと22Bに供給する加圧空気の圧力を異ならせることにより、給気孔30a、30g、30mlを介してリング部材4a、4g、4mの周方向溝6に供給される加圧空気の圧力と、給気孔30b、30h、30nを介してリング部材4b、4h、4nの周方向溝6に供給される加圧空気の圧力を異ならせることができる。
【0056】
6つの加圧空気供給室22A-Fへの加圧空気の供給状態を適宜、変更することにより、上述した各加圧空気供給室22A-Fと各リング部材4a-pとの連通関係に基づいて、各リング部材4a-pからの加圧空気噴出状態を変更し、ターンバー1全体から吹き出す加圧空気の吹き出しパターンを変更することができる。
【0057】
また、特定の加圧空気供給室22Xへの加圧空気の供給を停止することにより、選択的に、当該加圧空気供給室22Xと連通するリング部材からの加圧空気の噴出を停止することもできる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0059】
例えば、ロール本体に形成された給気孔の周方向位置を変更することにより、同一形態の加圧空気供給室を用いながら、特定の加圧空気供給室が連通するリング部材を変更し、ターンバーからの加圧空気の吹き出しパターンを変更することができる。
【0060】
次に、給気孔の周方向位置の変更例を、図4に沿って説明する。図4は、本発明の他の実施態様のターンバー100で使用されるロール本体102の斜視図である。
ターンバー100は、ロール本体102に形成された16個の給気孔130a-pの周方向位置が、図1乃至図3に示された実施態様のターンバー1とは異なる点を除き、ターンバー1と同一の構成を有している。以下、相違点である給気孔の配置について説明する。
【0061】
図4に示されている実施態様のターンバーでは、ロール本体102に形成された給気孔130a-pのうちの一端側(図4の左側)に位置する4つ給気孔130a-dは、加圧空気供給室22Aの径方向外方で同一の周方向位置に配置されている。従って、これら4つ給気孔a-dは、同一の加圧空気供給室22Aに連通することになる。
【0062】
また、ロール本体102に形成された給気孔130a-pのうちの給気孔130a-dに隣接する2つの給気孔130e、130fは、給気孔130a-dから時計回り方向に60度の角度間隔をおいた周方向位置に配置されている。従って、これら2つ給気孔130e、130fは、同一の加圧空気供給室22Bに連通することになる。
【0063】
さらに、ロール本体102に形成された給気孔130a-pのうちの給気孔130e、130に他端側に隣接する2つの給気孔130g、130hは、給気孔130e、130fから時計回り方向に60度の角度間隔をおいた周方向位置に配置されている。従って、これら2つ給気孔130g、130hは、同一の加圧空気供給室22Cに連通することになる
【0064】
さらに、ロール本体102に形成された給気孔130a-pのうちの給気孔130g、130hに他端側に隣接する2つの給気孔130i、130jは、給気孔130g、130hから時計回り方向に60度の角度間隔をおいた周方向位置に配置されている。従って、これら2つ給気孔130i、130jは、同一の加圧空気供給室22Dに連通することになる。
【0065】
さらに、ロール本体102に形成された給気孔130a-pのうちの給気孔130i、130jに他端側に隣接する2つの給気孔130k、130lは、給気孔130i、130jから時計回り方向に60度の角度間隔をおいた周方向位置に配置されている。従って、これら2つ給気孔130k、130lは、同一の加圧空気供給室22Eに連通することになる。
【0066】
最後に、ロール本体102に形成された給気孔130a-pのうちの他端側(図4の右側)に位置する4つ給気孔130m-pは、隣接する2つの給気孔130k、130lから時計回り方向に60度の角度間隔をおいた周方向位置に配置されている。従って、これら4つ給気孔給気孔130m-pは、同一の加圧空気供給室22Fに連通することになる。
【0067】
このような構成においても、各加圧空気供給室130A-Fに供給される加圧空気の圧力等を適宜、調節することにより、各リング部材130a-pの外周面からの加圧空気の吹き出し即ちターンバー100の外周面からの加圧空気の吹き出しパターンを、各加圧空気供給室130A-Fと各リング部材130a-pとの連通関係の下で調整することができる。
【0068】
また、上記実施態様では、16個のリング部材4a-pを使用していたが、リング部材の数は、特に限定されるものではない。
また、上記実施態様では、複数のリング部材4a-pは、同一の素材で形成され、且つ同一の寸法形状を有していたが、いくつかのリング部材を異なる素材で形成してもよく、また、異なる寸法形状、例えば、軸線方向長さ互いに異なるリング部材を使用してもよい。
【0069】
また、加圧空気供給室の数も、2以上であればよく、特に、限定されるものはなく、その形状も特に限定されるものではない。
【0070】
さらに、上記実施態様では、リング部材の周方向溝は、リング部材の全周に亘って延びていたが、周方向溝は、少なくとも給気孔を径方向に整列する部分に存在していれば、周方向に部分的に延びる溝であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:ターンバー
2:ロール本体
4a-p:リング部材
6:周方向溝
8:端リング
10、12:蓋部材
14、16:円板部
18:シャフト部
20A-F:エア孔
22A-F:加圧気体供給室
24:仕切り壁
26:円筒部
28:隔壁
30a-p:給気孔
図1
図2
図3
図4