(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084315
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】情報収集システム、情報収集方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198423
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳橋 和将
(72)【発明者】
【氏名】望月 智之
(72)【発明者】
【氏名】木村 恵二
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大田 健二
(72)【発明者】
【氏名】戸次 圭介
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM03
5H161MM05
5H161MM12
5H161NN15
5H161QQ01
(57)【要約】
【課題】移動体の輸送障害が生じた場合の情報収集を適切に行う情報収集システム等を提供する。
【解決手段】情報収集システム100は、移動体の輸送障害が生じた場合に指令員が確認すべき確認項目が輸送障害の種類に対応してリスト化されてなる個別確認リストを表示手段に表示させる制御部20を備え、制御部20は、指令員と、当該指令員が通話した相手方と、の間の輸送障害に関する通話内容を音声認識した結果を個別確認リストに反映させて表示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の輸送障害が生じた場合に指令員が確認すべき確認項目が前記輸送障害の種類に対応してリスト化されてなる個別確認リストを表示手段に表示させる制御部を備え、
前記制御部は、指令員と、当該指令員が通話した相手方と、の間の前記輸送障害に関する通話内容を音声認識した結果を前記個別確認リストに反映させて表示する情報収集システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記移動体の輸送障害の種類に対応する前記個別確認リストであって、現状の運転整理フェーズに対応するものを前記表示手段に表示させること
を特徴とする請求項1に記載の情報収集システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記移動体の輸送障害の種類に対応する前記個別確認リストであって、指令員と通話している相手方の属性に対応するものを前記表示手段に表示させること
を特徴とする請求項1に記載の情報収集システム。
【請求項4】
前記制御部は、複数の音声認識モデルのうち、指令員と通話している相手方の属性に対応するものを用いて、前記通話内容の音声認識を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の情報収集システム。
【請求項5】
前記制御部は、指令員と相手方との間の通話で、前記個別確認リストに含まれる所定の前記確認項目について言及された場合、当該確認項目の内容を前記個別確認リストに追加すること
を特徴とする請求項1に記載の情報収集システム。
【請求項6】
前記表示手段に表示された前記確認項目の内容は、キーボード又はタッチパネルの操作で変更可能であること
を特徴とする請求項5に記載の情報収集システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記確認項目に対応付けて、所定の再生ボタンを表示させ、
前記再生ボタンが選択された場合、録音された前記確認項目の通話内容が音声として再生されること
を特徴とする請求項5に記載の情報収集システム。
【請求項8】
前記制御部は、所定の前記個別確認リストについて、指令員又は外部システムから新たな確認項目の追加要求があった場合、前記追加要求に係る新たな確認項目が追加された前記個別確認リストを前記表示手段に表示させること
を特徴とする請求項1に記載の情報収集システム。
【請求項9】
前記制御部は、所定の前記確認項目について、指令員が複数の相手方から得た回答の内容が異なっている場合、当該確認項目に関するデータの再収集を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の情報収集システム。
【請求項10】
前記制御部は、所定の前記確認項目について、指令員が通話の相手方から複数のタイミングで得た回答として、内容の異なるものが混在している場合、最も新しい回答を優先させること
を特徴とする請求項1に記載の情報収集システム。
【請求項11】
前記制御部は、所定の前記確認項目の内容が、前記移動体の内部を撮像するカメラ、又は、前記移動体の停車場所に設けられたカメラの撮像結果と矛盾している場合、前記カメラの撮像結果を優先させること
を特徴とする請求項1に記載の情報収集システム。
【請求項12】
前記制御部は、所定の前記確認項目の内容が、前記移動体の運行に関連する所定の状態量を検出するセンサの検出結果と矛盾している場合、前記センサの検出結果を優先させること
を特徴とする請求項1に記載の情報収集システム。
【請求項13】
移動体の輸送障害が生じた場合に指令員が確認すべき確認項目が前記輸送障害の種類に対応してリスト化されてなる個別確認リストを表示手段に表示させる表示制御処理を含み、
前記表示制御処理では、指令員と、当該指令員が通話した相手方と、の間の前記輸送障害に関する通話内容を音声認識した結果を前記個別確認リストに反映させて表示する情報収集方法。
【請求項14】
請求項13に記載の情報収集方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報収集システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
列車の故障等に起因する輸送障害が生じた場合の情報収集に関して、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「前記表示制御部は、前記重要情報抽出部が前記発信情報から抽出した発信側の重要情報と、前記重要情報抽出部が前記復唱情報から抽出した受信側の重要情報とを共に出力する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、列車の運転士と、指令室にいる指令員と、が列車無線で通話を行った際、一方の発話に含まれる所定の重要情報と、他方が確認のために復唱した発話に含まれる重要情報と、が照合される。つまり、特許文献1に記載の技術では、運転士と指令員の間で復唱が行われることが前提になっている。したがって、列車(移動体)の輸送障害に関する情報収集において、復唱が特に行われない場合については、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、移動体の輸送障害が生じた場合の情報収集を適切に行う情報収集システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る情報収集システムは、移動体の輸送障害が生じた場合に指令員が確認すべき確認項目が前記輸送障害の種類に対応してリスト化されてなる個別確認リストを表示手段に表示させる制御部を備え、前記制御部は、指令員と、当該指令員が通話した相手方と、の間の前記輸送障害に関する通話内容を音声認識した結果を前記個別確認リストに反映させて表示することとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動体の輸送障害が生じた場合の情報収集を適切に行う情報収集システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る情報収集システムを含む説明図である。
【
図2】実施形態に係る情報収集システムにおいて、個別確認リストへの通話内容の反映を示す説明図である。
【
図3】実施形態に係る情報収集システムの機能ブロック図である。
【
図4】実施形態に係る情報収集システムの制御部が実行する処理のフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る情報収集システムにおいて、輸送障害への対応の概要を示す説明図である。
【
図6】実施形態に係る情報収集システムにおいて、輸送障害の種類、運転整理フェーズ、及び個別確認リストの関係を示す説明図である。
【
図7A】実施形態に係る情報収集システムにおいて、
図4のステップS105の情報収集処理に関するフローチャートである。
【
図7B】実施形態に係る情報収集システムにおいて、
図4のステップS105の情報収集処理に関するフローチャートである。
【
図8A】実施形態に係る情報収集システムにおける個別確認リストの画面表示例である。
【
図8B】実施形態に係る情報収集システムにおいて、個別確認リストに含まれる所定の確認項目が特定された状態を示す画面表示例である。
【
図8C】実施形態に係る情報収集システムにおいて、個別確認リストの確認項目に関する回答がテキストデータとして表示された状態を示す画面表示例である。
【
図9】実施形態に係る情報収集システムにおいて、個別確認リストの所定の確認項目について複数の異なる結果が得られた状態を示す画面表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪実施形態≫
図1は、実施形態に係る情報収集システム100を含む説明図である。
情報収集システム100は、列車(移動体)の輸送障害が生じた場合、指令員が輸送障害の現場の状況を把握したり、列車の運転整理を行ったりするための情報収集に用いられるシステムである。
【0010】
なお、「輸送障害」とは、列車(移動体)の運休や遅延等を引き起こすトラブルである。このような「輸送障害」の種類として、列車の故障や設備故障の他、列車と人との接触や、線路への人の立入り、運行管理システム(図示せず)の障害、天災等が挙げられる。
また、「運転整理」とは、輸送障害の発生等によって鉄道等の運行の遅延や故障が発生した場合に、利用者への影響を軽減するために、列車運行ダイヤの復旧に必要な運行計画の変更を行うことである。
【0011】
図1に示すように、輸送障害の現場にいる運転士や車掌は、指令室にいる複数の指令員との間で、列車無線(無線送受信機)を用いて通話できるようになっている。例えば、列車の走行中に所定の輸送障害が生じた場合、運転士は、輸送障害が生じたことを列車無線で指令員に連絡する。指令員は、輸送障害の種類の他、各列車の運行状況・混雑状況・天候等に基づいて、運転整理を行うための所定の指令を出し、運行ダイヤの正常化を図る。
【0012】
図1の例では、それぞれの指令員に対して、端末40(コンピュータ)が1台ずつ設けられている。端末40は、本体(図示せず)やディスプレイ41の他、キーボード42やマウス(図示せず)を備えている。また、指令員は、マイク43を用いて、運転士等との間で通話できるようになっている。指令室の各端末40は、通信線51を介して互いに接続されるとともに、別の通信線52を介して情報収集システム100に接続されている。
【0013】
指令室には、例えば、数十人から数百人規模の指令員がおり、各列車の運行を管理している。列車の輸送障害が生じた場合には、複数の指令員のそれぞれが並行して情報収集を行う。指令員は、情報収集を行う際、現場の運転士や車掌との間で通話する他、現場責任者(復旧工事等の責任者)と通話したり、駅員と通話したりする。その他にも、指令員が、他の指令員と通話したり、また、救急隊員や消防士、警察官と通話したりすることもある。また、指令員は対応内容により役割が分けられており、代表的なものとしては輸送指令、運用指令等がある。輸送障害時には、主に輸送指令が中心となって情報収集や運転整理の検討を対応し、運用指令は運転整理の検討結果である新たな運行ダイヤ案を実行するための車両編成や乗務員の割り当てを検討する。したがって、同じ指令同士で通話したり、輸送指令と運用指令等の異なる指令間で通話したりすることもある。
【0014】
指令員が運転士と通話する際には、情報伝達の誤りを防ぐために、いわゆる鉄道用語を用いたり、確認のために復唱を行ったりする。例えば、指令員から運転士に対して、「こちらは輸送指令、456列車担当運転士、感度良好でしたら応答どうぞ。」と伝えた後、運転士から指令員には、「輸送指令、輸送指令、こちらは456列車担当運転士、感度良好ですどうぞ。」といった通話が行われる。なお、「感度良好」とは、お互いの声がはっきりと聞こえているかを確認する(通話テストを行う)際に用いられる用語である。
【0015】
仮に、このような通話の内容を既存の音声認識システムで分析した場合、通話の中で鉄道用語や独特の話し方が用いられるため、誤認識が生じる可能性が高い。また、一般的にも、発言には多くの言い回しがあり、同音異義語等の様々なパターンがあるため、全く誤り無しに音声を認識することは困難である。したがって、情報伝達の正確さを特に重視する鉄道業務では、輸送障害に関する情報収集に既存の音声認識システムをそのまま用いることは困難である。一方、輸送障害の情報収集は急を要することが多く、また、情報が錯綜することも多い。
【0016】
そこで、本実施形態では、情報収集システム100が、指令員と相手方との間の通話を音声認識し、その状況(コンテクスト)に基づいて、所定の個別確認リストを指令員のディスプレイ41(表示手段)に表示させるようにしている。なお、個別確認リストとは、指令員が確認すべき複数の確認項目を列挙したリストである。そして、指令員と相手方との間の通話で、所定の確認項目の内容について言及された場合、情報収集システム100が、確認項目の内容を個別確認リストに逐次反映させるようにしている。
【0017】
また、指令員が相手方と通話する際、相手方の属性(例えば、運転士、現場責任者、駅員、他の指令員、救急隊員)によって、その話し方や対話内容が異なることが多い。例えば、指令員と運転士との間の通話では鉄道用語が用いられるが、指令員と救急隊員との間の通話では鉄道用語が用いられることはほとんどない。そこで、本実施形態では、指令員と通話する相手方の属性に基づいて、情報収集システム100が、音声認識モデルを選択するようにしている。これによって、情報収集システム100が音声認識を行う際の誤認識を大幅に低減できる。
【0018】
図1に示すように、情報収集システム100は、通信線52を介して、各端末40に接続されている。そして、指令員と相手方との間で通話が行われた場合、その音声データが通信線52を介して、情報収集システム100に出力されるようになっている。情報収集システム100は、通話の音声データに基づいて、音声認識を所定に行い、その分析結果が反映された所定の個別確認リストを端末40のディスプレイ41に表示させる。
【0019】
図2は、個別確認リスト13への通話内容の反映を示す説明図である。
所定の輸送障害が発生した後、
図2に示す所定の個別確認リスト13が指令員G2等のディスプレイ41(
図1参照)に表示されたとする。
図2の例では、輸送障害に関する個別確認リスト13の項目として、発生日時・発生場所・路線・原因等が挙げられている。そして、指令員G2と現場の運転士との間の通話や、他の指令員G3,G4との間の通話を情報収集システム100(
図1参照)が音声認識し、その分析結果を個別確認リスト13の各項目に反映させるようになっている。
図2の例では、発生日時・発生場所・路線・原因等が既に確認された状態であるため、各項目に対応付けて、「OK」の文字が表示されている。
【0020】
なお、指令員同士は口頭で対話することも可能であるが、本実施形態では、固定電話や無線電話等の電話機(図示せず)を用いて、互いに通話を行うものとする。口頭で対話する場合に音声認識を適用するには、指令員が個別にピンマイク等(図示せず)を装着すれば対応可能である。また、
図2に示す指令員G1~G4が情報を共有するために、指令員G1~G4のディスプレイ41(
図1参照)に共通の個別確認リスト13が表示されるようにしてもよい。また、複数の指令員が並行して情報収集を行う際、各指令員のディスプレイ41(
図1参照)に、それぞれ、異なる種類の個別確認リスト13が表示されるようにしてもよい。
【0021】
図3は、情報収集システム100の機能ブロック図である。
図3に示すように、情報収集システム100は、記憶部10と、制御部20と、通信インタフェース30と、を備えている。記憶部10は、図示はしないが、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)やレジスタ等の揮発性メモリと、を含んで構成されている。記憶部10には、所定のプログラムが予め格納されている他、輸送障害に関するデータが適宜に格納される。
【0022】
図3に示すように、記憶部10には、音声認識モデル11と、音声データ12と、個別確認リスト13と、情報収集ルール14と、対話履歴15と、センサ・カメラデータ16と、が格納されている。
音声認識モデル11は、指令員と相手方との間の通話の音声データ12を用いて、音声認識を行う際に用いられる所定のプログラムである。このような音声認識モデル11として、例えば、指令員と運転士との間の通話用の他、指令員同士の通話用や、指令員と救急隊員との間の通話用といった複数種類のものが予め記憶されている。
また、音声認識モデル11は、例えば、音響モデル、言語モデル、発音辞書等の一般的に音声認識技術として用いられる仕組みで構成してもよい。ここではこれらをまとめて音声認識モデル11として記載し、詳細については説明を省略する。
【0023】
図3に示す音声データ12は、指令員と相手方との間の通話で得られた音声のデータであり、また、音声認識モデル11による音声認識の対象となるデータである。
個別確認リスト13(
図2も参照)は、前記したように、指令員が通話で相手方に確認すべき複数の確認項目が列挙されたリストである。なお、輸送障害に関するさまざまな状況(コンテクスト)に対応付けて、複数の個別確認リスト13が予め記憶されている。
【0024】
情報収集ルール14は、情報収集システム100が情報を収集する際に適用されるルールであり、予め記憶されている。なお、情報ルールの詳細については後記する。
対話履歴15は、指令員と相手方との間の通話(対話)の履歴データである。このような対話履歴15は、例えば、通話が行われた日付・時刻の他、通話者の識別情報や、個別確認リスト13の所定の確認項目に対応付けて、記憶部10に格納される。
【0025】
センサ・カメラデータ16は、センサ61(
図2参照)の検出結果や、カメラ62(
図2参照)の撮像結果を示すデータである。なお、センサ61(
図2参照)として、図示はしないが、雨量計・風速計・地震計・GPS受信機等の計測機器が用いられる。カメラ62(
図2参照)の撮像結果は、例えば、車両モニタカメラで得られる車両内映像や車両内混雑率といった車両情報の他、駅構内監視カメラで得られる駅構内映像や駅構内混雑率といった駅情報である。その他、アメダス(地域気象観測システム)等の気象情報や緊急地震速報の他、駅の人流情報等が、センサ・カメラデータ16に含まれていてもよい。
【0026】
図3に示す制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部10の不揮発性メモリに格納されているプログラムを読み出して揮発性メモリに展開することで、所定の処理を実行する。このような処理における機能的な構成として、制御部20は、
図3に示すデータ取得部21と、障害種別判定部22と、フェーズ判定部23と、音声認識部24と、対話者判定部25と、情報確認部26と、を備えている。
【0027】
データ取得部21は、通信インタフェース30を介して、通話の音声データ等を取得する。
障害種別判定部22は、列車の輸送障害が生じた場合に発せられるアラート等に基づいて、輸送障害の種別(種類)を判定する。
フェーズ判定部23は、輸送障害の発生後に運転整理を行う際、現状の運転整理フェーズ(段階)を判定する。なお、複数の運転整理フェーズが予め設定されている。
【0028】
音声認識部24は、記憶部10に格納されている音声認識モデル11に基づいて、通話の音声を認識する。対話者判定部25は、所定の通話(対話)が行われているときの通話者(対話者)の属性を判定する。
【0029】
情報確認部26は、記憶部10に格納されている情報ルールに基づいて、個別確認リスト13の内容に矛盾等がないかを確認し、必要に応じて情報の整理や再収集を行う。
通信インタフェース30は、指令員の端末40(
図1参照)と制御部20との間で、情報の入出力を行うものである。また、指令員と相手方との間の通話の音声データも、通信インタフェース30を介して、制御部20に入力される。
【0030】
図4は、情報収集システムの制御部が実行する処理のフローチャートである(適宜、
図3も参照)。
なお、
図4の「START」時に列車で所定の輸送障害が発生し、指令員と相手方(例えば、運転士、駅員、他の指令員、救急隊員)との間で通話が開始されたとする。
ステップS101において制御部20は、障害種別判定部22によって、輸送障害の種別(種類)を判定する。例えば、列車の輸送障害が生じた場合、この輸送障害の種類に対応する所定のアラートが鉄道システム(図示せず)から発せられ、このアラートが指令室の各端末40(
図1参照)に送信されるようになっている。このアラートに基づいて、制御部20は、列車の輸送障害の種類を判定する。前記したように、輸送障害の種類として、列車故障や設備故障の他、列車と人との接触や、線路への人の立入り、運行管理システムの障害、天災等が挙げられる。
なお、
図4のフローチャートは、指令員の判断やこのアラートにより輸送障害を検知し、開始(
図4の「START」)してもよい。
【0031】
また、ステップS101の処理として、指令員と運転士等との間の通話内容を制御部20が分析し、その分析結果に基づいて、輸送障害の種別を判定するようにしてもよい。その他にも、例えば、指令員が、輸送障害の種別を示すデータを端末40(
図1参照)に入力するようにしてもよい。
【0032】
次に、ステップS102において制御部20は、フェーズ判定部23によって、列車の運転整理フェーズを判定する。前記したように、運転整理フェーズとは、運転整理の段階を示すものであり、予め設定されている。例えば、所定の3段階の運転整理フェーズが設けられていてもよい。運転整理フェーズ1は、例えば、輸送障害が発生してから、部分運転(一部区間での列車の運行)が開始されるまでの段階である。制御部20は、列車の輸送障害が生じた場合、まず、運転整理の段階を運転整理フェーズ1とする。
【0033】
なお、列車の運転士等と指令員との通話内容に「列車の抑止」や「先行列車の延発」といったキーワードが含まれている場合、制御部20が、現状での運転整理の段階を運転整理フェーズ1とするようにしてもよい。ここで、「列車の抑止」とは、運行ダイヤにかかわらず、列車の運転を見合わせて、列車を停止させておくことである。また、「先行列車の延発」とは、先行列車の発車時刻を延期することである。
【0034】
図5は、輸送障害への対応の概要を示す説明図である。
図5の例では、A駅で車両故障が生じたことを示す所定のアラートが、鉄道の設備から指令室に8時10分に送信されている。その後、運転士と指令員(輸送指令)との間で所定の報告・指示・連絡がなされ、また、運用指令から車両基地に所定の質問がなされている。例えば、8時20分には、指令員(輸送指令)から運転士に対して、列車の抑止手配が完了したことが連絡されている。したがって、車両故障が生じた8時10分から、抑止手配が完了した8時20分までの間は、運転整理の段階として、運転整理フェーズ1が設定される。
【0035】
運転整理フェーズ2は、例えば、部分運転が開始されてから全面運転が再開されるまでの段階である。制御部20は、列車の運転士等と指令員との通話内容に「折返し駅の変更」や「運休」、「着発線変更」といったキーワードが含まれている場合、現状での運転整理の段階を運転整理フェーズ2とする。
【0036】
運転整理フェーズ3は、例えば、全面運転が再開されてから、平常どおりの運行ダイヤに戻るまでの段階である。制御部20は、列車の運転士等と指令員との通話内容に「折返し駅の変更」や「運休」といったキーワードが含まれ、さらに、それらが運行ダイヤの平服(正常どおりへの回復)に向けたものである場合、現状での運転整理の段階を運転整理フェーズ3とする。その他にも、例えば、運転整理フェーズを示すデータを、指令員が端末40に入力するようにしてもよい。また、その他にも、例えば、前段のフェーズが完了していれば運転整理フェーズ2や3とすればよい。また、「部分運休の開始」や「全面運転の再開」等の状況は、外部システムである運行管理システム等(図示せず)と連携して状況を把握するようにしてもよい。
【0037】
次に、
図4のステップS103において制御部20は、対応方針を選択する。なお、輸送障害の種別、及び、運転整理フェーズに対応付けて、所定の対応方針が予め設定されている。ここで、対応方針の選択とは、列車の輸送障害に関する情報収集を行う際、各指令員に提示すべき個別確認リストを制御部20が選択することである。
【0038】
図6は、輸送障害の種類、運転整理フェーズ、及び個別確認リストの関係を示す説明図である。
図6に示すように、輸送障害の種類、運転整理フェーズ、及び個別確認リストに関する階層構造のデータが、予め記憶されている。
図6の例では、輸送障害の種類として、車両故障や設備故障、天災といったものが含まれている。車両故障が生じた場合の運転整理の段階として、運転整理フェーズ1、運転整理フェーズ2、及び運転整理フェーズ3が対応付けられている。また、運転整理フェーズ1には、複数の個別確認リストA,B,・・・,Xが対応付けられている。なお、他の運転整理フェーズ2,3にも、それぞれ、異なる種類の複数の個別確認リストが対応付けられている。
【0039】
例えば、列車で車両故障が生じ、運転整理の段階が運転整理フェーズ1である場合、制御部20は、所定の個別確認リストAを所定の指令員の端末40(
図1参照)に表示させ、また、別の個別確認リストBを別の指令員の端末40(
図1参照)に表示させる。すなわち、内容の異なる個別確認リストA,B,・・・,Xが、複数の指令員の端末40に個別的に表示される。これらの個別確認リストA,B,・・・,Xを特定する処理が、
図4のステップS103の対応方針の選択である。要するに、制御部20は、輸送障害への対応方針として、輸送障害の種類(例えば、車両故障)、及び運転整理フェーズ(例えば、運転整理フェーズ1)に対応する複数の個別確認リストA,B,・・・,Xを選択する。なお、複数の個別確認リストA,B,・・・,Xを、それぞれ、どの端末40(
図1参照)に表示させるかは予め設定されている。具体的には、指令室において輸送指令や運用指令等の各指令員によって活用する端末40(
図1参照)を予め設定してもよい。
【0040】
図4のステップS104において制御部20は、各指令員に情報収集を促すための通知を行う。すなわち、制御部20は、輸送障害の種別(S101)、及び運転整理フェーズ(S102)に対応する所定の個別確認リストを指令員の端末40(
図1参照)に表示させ、個別確認リストの各項目について情報収集を行うべき旨を指令員に通知する。
【0041】
ステップS105において制御部20は、情報収集処理を行う。なお、情報収集処理の詳細については後記する。
ステップS106において制御部20は、情報確認部26によって、情報収集の結果に矛盾点があるか否かを判定する。例えば、センサ61(
図2参照)の検出結果やカメラ62(
図2参照)の撮像結果と、情報収集処理(S105)の結果と、が整合していない場合、制御部20は、情報収集処理の結果に矛盾点があると判定する。
【0042】
ステップS106において、情報収集処理の結果に矛盾点がある場合(S106:Yes)、制御部20の処理はステップS107に進む。
ステップS107において制御部20は、所定のルールに基づく対応を行う。すなわち、制御部20は、所定の情報収集ルール14(
図3参照)に基づいて、矛盾点の態様に応じた処理を行う。例えば、センサ61(
図2参照)の検出結果やカメラ62(
図2参照)の撮像結果と、運転士から伝達された内容と、が整合していない場合、制御部20は、情報収集ルール14に基づいて、センサ61の検出結果やカメラ62の撮像結果の方を優先させる。なお、ステップS106、S107の処理については、さまざまなケースがあるが、その詳細については後記する。
【0043】
次に、ステップS108において制御部20は、追加の情報収集の要求があったか否かを判定する。例えば、所定の外部システム(図示せず)や指令員から追加の情報収集の要求があったか否かを制御部20は判定する。なお、指令員からの追加の情報収集の要求は、キーボード42(
図1参照)で入力されてもよいし、また、指令員の発話を制御部20が音声認識してもよい。ステップS108において追加の情報収集の要求があった場合(S108:Yes)、制御部20の処理はステップS109に進む。また、ステップS105において、例えば、通話が切断される等で情報収集処理の結果に不足情報がある場合にも、追加の情報収集の要求がなされ(S108:Yes)、制御部20の処理はステップS109に進む。
【0044】
ステップS109において制御部20は、個別確認リストを更新する。つまり、制御部20は、追加の情報収集の要求(S108)に基づいて、個別確認リストに所定の項目を追加することで、個別確認リストを更新する。このように、制御部20は、所定の個別確認リストについて、指令員又は外部システム(図示せず)から新たな確認項目の追加要求があった場合、追加要求に係る新たな確認項目が追加された個別確認リストをディスプレイ41(表示手段:
図1参照)に表示させる。
【0045】
前記した外部システム(図示せず)は、例えば、制御部20による情報収集処理の結果を分析するシステムであり、情報収集システム100(
図1参照)との間で通信線(図示せず)を介して接続されている。このような外部システムとして、例えば、AI(Artificial Intelligence)が用いられてもよい。
【0046】
ステップS109の処理を行った後、制御部20の処理はステップS104に戻る。つまり、制御部20は、新たな確認項目が追加された個別確認リストを指令員の端末40に表示させ、再び情報収集を促す通知を行う(S104)。
【0047】
また、ステップS108において、追加の情報収集の要求がない場合(S108:No)、制御部20の処理はステップS110に進む。
ステップS110において制御部20は、情報収集の結果を出力する。例えば、制御部20は、複数の個別確認リストが所定に反映されたデータを各指令員の端末40に表示させる。これによって、各指令員は、列車の輸送障害に関する情報収集の結果を迅速かつ正確に把握できる。他にも、例えば、制御部20は、情報収集処理の結果をデータファイルとして出力し、通信線52(
図1参照)を介して、外部システム(図示せず)に引き渡してもよい。また、制御部20は、情報収集処理の結果として、
図5に示すような内容を概要としてディスプレイ41等(
図1参照)に出力してもよい。
【0048】
ステップS111において制御部20は、列車の運転整理が完了したか否かを判定する。つまり、制御部20は、平常どおりの運行ダイヤに戻ったか否かを判定する。または、指令員が運転整理の完了を判断し、キーボード42等(
図1参照)を利用して入力してもよい。ステップS111において、列車の運転整理がまだ完了していない場合(S111:No)、制御部20の処理はステップS101に戻る。一方、ステップS111において、列車の運転整理が完了した場合(S111)、制御部20は、
図4に示す一連の処理を終了する(END)。
【0049】
図7A、
図7Bは、
図4のステップS105の情報収集処理に関するフローチャートである(適宜、
図3も参照)。
なお、内容の異なる個別確認リストが各指令員の端末40に1つずつ表示され、それぞれの個別確認リストを用いて、情報収集処理が並行して進められるものとする。
ステップS1051において制御部20は、対話者判定部25によって、対話者の属性を判定する。例えば、制御部20は、列車無線の無線IDや電話番号に基づいて、通話における対話者(発信者・受信者)の属性(運転士や指令員といった属性)を特定する。その他にも、例えば、「こちら456列車担当運転士」や「こちら輸送指令」といった名乗りの音声データについて、制御部20が音声認識を行うことで、対話者の属性を特定するようにしてもよい。
【0050】
ステップS1052において制御部20は、個別確認リストを選択する。すなわち、制御部20は、輸送障害の種類(
図4のS101)や、運転整理フェーズ(
図4のS102)の他、対話者の属性(S1051)といったコンテクストに基づいて、指令員の端末40に表示すべき個別確認リストを選択する。別の観点から説明すると、制御部20は、
図4のステップS103で選択された対応方針における個別確認リストA,B,・・・,X(
図6参照)のうち、対話者の属性に対応するものを選択する。
【0051】
ステップS1053において制御部20は、音声認識モデルを選択する。前記したように、対話者の属性に対応付けて、複数の音声認識モデルが予め記憶部10(
図3参照)に格納されている。指令員と運転士との間では、確認のための復唱の他、鉄道用語を用いた定型的な情報伝達が行われることが多い。このような復唱や定型的な情報伝達に対応した所定の音声認識モデルを制御部20が選択することで、音声認識の精度を高めることができる。
【0052】
また、例えば、輸送障害の現場責任者(復旧工事等の責任者)や警察・消防・救急隊員と、指令員と、の通話では、鉄道用語は特に用いられず、通常の対話が行われることがほとんどである。したがって、このような通常の対話の音声認識を行うための別の音声認識モデルが用意されている。そして、制御部20は、複数の音声認識モデルのうち、指令員と通話している相手方の属性に対応するものを用いて、通話内容の音声認識を行う。
ステップS1054において制御部20は、個別確認リストを指令員の端末40に表示させる。
【0053】
図8Aは、個別確認リスト13Aの画面表示例である。
図8Aの例では、所定の個別確認リスト13Aにおいて、「B駅の混雑の原因」や「B駅ホームの混雑度」、「B駅への停車確認」といった確認項目が挙げられている。指令員は、B駅の駅員に対して、通話の音声が明瞭に聞こえているか確認した後、それぞれの確認項目について駅員に確認する。
【0054】
図7AのステップS1055において制御部20は、音声認識部24によって、音声認識を行う。すなわち、制御部20は、ステップS1053で選択した所定の音声認識モデルを用いて、指令員と相手方との間の通話から所定のキーワードを抽出する。具体的には、輸送障害が生じた時刻・場所の他、輸送障害の態様・原因等に関するデータを抽出できるように、所定のキーワードが予め設定されている。
【0055】
ステップS1056において制御部20は、音声認識部24によって、対話の種類を特定する。このような対話の種類として、質問・指示・報告が挙げられる。例えば、輸送障害の現場から指令員に電話があった場合には、運転士等からの報告が行われることが多い。また、指令員から現場に電話をかけた場合には、指令員から質問が行われることが多い。ステップS1055において制御部20は、例えば、発信側が輸送障害の現場であるのか、それとも指令員であるのかに基づいて、対話の種類を絞り込む。
【0056】
ステップS1057において制御部20は、音声認識部24によって、確認項目を特定する。すなわち、制御部20は、指令員と相手方との通話について音声認識を行い、個別確認リスト(S1052)の確認項目に対応する所定のキーワードとの間でマッチングを行う。例えば、個別確認リストの確認項目の一つに輸送障害の「原因」が含まれている場合において、通話の中で輸送障害の「原因」について言及されたとき、制御部20は、輸送障害の「原因」の確認項目を特定する。
【0057】
図8Bは、個別確認リスト13Aに含まれる所定の確認項目が特定された状態を示す画面表示例である。
図8Bの例では、所定の個別確認リスト13Aに、「B駅の混雑の原因」という確認項目が含まれている。また、指令員からB駅の駅員に対して、「B駅の混雑の原因は何ですか?」という質問がなされている。制御部20は、指令員の質問に含まれる「原因」というキーワードに基づいて、「B駅の混雑の原因」という確認項目を特定する。
図8Bの例では、「B駅の混雑の原因」という確認項目の右隣りの欄(「時刻」)に、この確認項目について言及された時刻が表示されている。
【0058】
図7AのステップS1058において制御部20は、音声認識部24によって、回答者の応答内容を音声認識する。
次に、ステップS1059において制御部20は、音声認識部24によって、所定の確認項目に関する情報を抽出し、登録するとともに、指令員のディスプレイ41(
図1参照)に表示させる(表示制御処理)。
【0059】
図8Cは、個別確認リスト13Aの確認項目に関する回答がテキストデータとして表示された状態を示す画面表示例である。
図8Cの例では、B駅の駅員から指令員に対して、「C区間の上り列車が停止中だからです」という回答がなされている。制御部20は、音声認識を所定に行い、駅員からの回答内容をテキストデータに変換し、「B駅の混雑の原因」という確認項目に対応付けて、回答の欄に表示させる。すなわち、制御部20は、指令員と相手方との間の通話で、個別確認リスト13Aに含まれる所定の確認項目について言及された場合、この確認項目の内容を個別確認リスト13Aに追加する。このように、通話で得られた情報(回答)が個別確認リスト13Aに逐次に反映されるため、指令員が通話内容をリアルタイムで把握しやすくなる。また、指令員は、複数の確認項目のうち、相手方に既に確認したものと、まだ確認できていないものと、を把握しながら情報収集を進めることができる。
【0060】
なお、個別確認リストの回答の欄に表示された内容が、実際の通話内容とは異なっている場合、指令員がキーボード42(
図1参照)等を操作することで、回答の欄の内容を修正できるようにしてもよい。すなわち、ディスプレイ41(表示手段:
図1参照)に表示された確認項目の内容が、キーボード42又はタッチパネル(図示せず)の操作で変更可能であるようにしてもよい。これによって、仮に音声認識に誤りが生じた場合でも、指令員の判断で誤りを修正できる。
【0061】
再び、
図7Aに戻って説明を続ける。
ステップS1060において制御部20は、情報収集が完了したか否かを判定する。例えば、ステップS1052で選択した個別確認リストに含まれる複数の確認項目のうち、指令員が相手方に確認できていないものが存在する場合、制御部20は、まだ情報収集が完了していないと判定し(S1060:No)、ステップS1061の処理に進む。
ステップS1061において制御部20は、不足情報の収集を促す画面表示を行う。例えば、個別確認リストに含まれる複数の確認項目のうち、まだ確認できていないものが目立つように、制御部20が所定に色分けして表示させるようにしてもよい。また、不足情報の収集を促す所定のメッセージを制御部20が表示させるようにしてもよい。ステップS1061の処理を行った後、制御部20の処理はステップS1055(音声認識)に戻る。
【0062】
また、ステップS1060において、情報収集が完了した場合(S1060:Yes)、制御部20の処理は、
図7BのステップS1062の処理に進む。
ステップS1062において制御部20は、情報収集の完了画面を表示させる。例えば、制御部20は、情報収集が完了したことを示す所定のメッセージを表示させる。
【0063】
次に、ステップS1063において制御部20は、対話履歴15(
図3参照)に登録する。すなわち、制御部20は、指令員と相手方との間の通話内容を録音し、個別確認リストに含まれる複数の確認項目に対応付けて、対話履歴15(
図3参照)として記憶部10(
図3参照)に格納する。
図8Cの例では、制御部20は、「C区間の上り列車が停止中だからです」という回答の音声データを、「B駅の混雑の原因」という確認項目に対応付けて、対話履歴15(
図3参照)として記憶部10(
図3参照)に格納する。また、対象の確認項目に対応付けて、対話履歴15(
図3参照)として記憶部10(
図3参照)に格納する際には、文脈を分かりやすくするために前後の音声データも含めてもよい。
【0064】
また、制御部20が、個別確認リスト13Aに所定の再生ボタン131Aを表示させるようにしてもよい。この再生ボタン131Aは、指令員がB駅の駅員との対話内容を再確認する際に操作されるボタンである。鉄道業務では、情報伝達の正確性が特に重要であるため、指令員の実際の通話を録音したデータを、所定の確認項目に対応付けて、対話履歴15(
図3参照)として残すようにしている。
【0065】
このように、制御部20は、確認項目に対応付けて、所定の再生ボタン131Aを表示させる。そして、再生ボタン131Aが選択された場合、録音された確認項目の通話内容が音声として再生される。これによって、所定の確認項目の内容と、実際の通話内容の音声と、を指令員が再確認できる。また、指令員が過去の通話内容を再確認する際には、個別確認リストの所定の確認項目を探せばよいため、短時間で再確認を行うことができる。
【0066】
次に、情報収取処理(
図4のS105)が行われた後の処理について、詳細に説明する。前記したように、情報収集の結果に矛盾点がある場合(
図4のS106:Yes)、制御部20は、所定のルールに基づいて対応する(S107)。
例えば、所定の確認項目について、指令員が複数の相手方から異なる内容の回答を得ることがある。このような場合、制御部20は、所定のルールに基づく対応(S107)として、情報の再収集を行う。例えば、矛盾点がある確認項目について、その裏付け(根拠)が得られるような新たな確認項目を制御部20が追加するようにしてもよい。このように、制御部20は、個別確認リストに含まれる所定の確認項目について、指令員が複数の相手方から得た回答の内容が異なっている場合、この確認項目に関するデータの再収集を行う。これによって、データの再収集でさらに正確な情報を得ることができる。
【0067】
また、例えば、所定の確認項目について、指令員の通話の相手方から、複数のタイミングで異なる複数の回答が得られることもある。例えば、指令員と駅員との通話で、B駅が混雑しているという回答が9:00に得られた後、B駅は特に混雑していないという別の回答が9:15に得られたとする。このような場合、制御部20は、所定のルールに基づく対応(S107)として、直近に得られた回答(最も新しい回答)を採用する。直近に得られた回答の方が、輸送障害に関する現状を正確に反映している可能性が高いからである。このように、制御部20は、所定の確認項目について、指令員が通話の相手方から複数のタイミングで得た回答として、内容の異なるものが混在している場合、最も新しい回答を優先させる。つまり、制御部20は、所定の確認項目に対応付けて、最も新しい回答を個別確認リストに反映させる。これによって、輸送障害に関する情報の錯綜を抑制できる。
【0068】
また、例えば、所定の検査項目について、指令員と相手方との通話で得られた情報と、センサ・カメラデータ16(
図3参照)と、が異なることもある。前記したように、センサ・カメラデータ16とは、雨量計・風速計・地震計・GPS受信機といったセンサ61(
図2参照)の検出結果や、車両モニタカメラ・駅構内監視カメラといったカメラ62(
図2参照)の撮像結果を含む情報である。この場合の具体例について、
図9を用いて説明する。
【0069】
図9は、個別確認リスト13Bの所定の確認項目について複数の異なる結果が得られた状態を示す画面表示例である。
図9に示す個別確認リスト13Bでは、「B駅1番線ホームの混雑度」という確認項目について、B駅の駅員からは、「ホームに目立った混雑無し」という回答が得られている。しかしながら、B駅1番線ホームに設置されているカメラ62(
図2参照)の撮像データを画像解析した結果は、「混雑」となっている。つまり、駅員からの回答と、カメラ62の撮像結果と、が矛盾している。このような場合、制御部20は、所定のルールに基づく対応(S107)として、カメラ62の撮像結果を優先させる。人が目視で混雑具合を判断する場合には、結論に個人差が出やすいが、画像解析ではそのようなことが生じにくいからである。
【0070】
このように、制御部20は、個別確認リストに含まれる所定の確認項目の内容が、列車(移動体)の内部を撮像するカメラ62(
図2参照)、又は、駅(移動体の停車場所)に設けられたカメラ62(
図2参照)の撮像結果と矛盾している場合、カメラ62の撮像結果を優先させる。つまり、制御部20は、所定の確認項目に対応付けて、カメラ62の撮像結果を個別確認リストに反映させる。また、状況によっては、画像解析の結果をそのまま活用せずに、指令員が直接、映像データを確認して、最終的な混雑度を判断してもよい。
また、制御部20は、個別確認リストに含まれる所定の前記確認項目の内容が、列車(移動体)の運行に関連する所定の状態量を検出するセンサ61(
図2参照)の検出結果と矛盾している場合、センサ61の検出結果を優先させる。つまり、制御部20は、所定の確認項目に対応付けて、センサ61の検出結果を個別確認リストに反映させる。これによって、輸送障害に関する情報の錯綜を抑制できる。
【0071】
本実施形態によれば、制御部20は、指令員と相手方との間の通話内容から必要な情報を抽出・整理し、その結果を個別確認リストに逐次反映させる。したがって、指令員は、相手方に既に確認した内容の他、まだ確認できていないものを把握しながら運転整理を進めることができる。したがって、列車の輸送障害が生じた場合の情報収集を適切に行うことができるようになるため、社会貢献に寄与できる。
【0072】
また、本実施形態によれば、輸送障害の種類や運転整理フェーズ、通話の相手方の属性といったコンテクストに基づいて、制御部20が個別確認リストを選択する(
図7AのS1053)。これによって、複数の確認項目を含む個別確認リストを各指令員(情報収集を行う指令員)に適切に提示できる。
【0073】
また、本実施形態によれば、指令員の通話の相手方の属性等に基づいて、制御部20が音声認識モデルを選択する(
図7AのS1053)。これによって、対話(通話)の形式や用語に対応して、制御部20が音声認識を適切に行うことが可能になる。したがって、音声認識を行う際の誤認識を抑制し、ひいては、情報抽出を正確に行うことができる。
【0074】
≪変形例≫
以上、本発明に係る情報収集システム100について実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、所定のセンサ61(
図2参照)の検出結果や、カメラ62(
図2参照)の撮像結果が情報収集に用いられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、以下に示す各情報が、情報収集システム100や、AIを用いた外部システム(図示せず)で用いられるようにしてもよい。なお、外部システム(図示せず)は、情報収集の結果を分析し、所定の個別確認リストについて、確認項目の追加要求等を情報収集システム100に出力するようになっている。
例えば、乗客数や貨物の重量に基づいて、列車の駆動力やブレーキ力を変化させる応荷重装置(図示せず)のデータの他、所定の列車情報管理装置(図示せず)のデータといった車両情報が、情報収集等(外部システムによる分析を含む)に用いられるようにしてもよい。
また、例えば、旅客動向の把握に用いられるOD情報(起点・終点情報)や、自動改札で取得されたICカードのデータの他、駅間立ち往生時の列車からの救出の有無といった乗客情報が、情報収集等に用いられてもよい。また、駅の特性を示すデータや、所定の駅制御装置(図示せず)のデータを含む駅情報が、情報収集等に用いられてもよい。
また、路線の特性を示すデータや、運転規制による増遅延のデータ、迂回輸送手配に関するデータといったダイヤ情報の他、所定の運行管理システム(図示せず)や、車両運用管理システム(図示せず)、状況監視システム(図示せず)のデータが、情報収集等に用いられてもよい。
また、乗務員運用情報や乗務員シフトのデータの他、GPS(Global Positioning System)に基づく乗務員の位置情報といった乗務員情報が、情報収集等に用いられてもよい。その他にも、列車の脱線が生じた場合の重機の手配や、列車の故障・異常に関するデータ、信号機・進路制御装置・踏切のデータといった設備情報が、情報収集等に用いられてもよい。
【0075】
また、実施形態では、輸送障害の種類と、運転整理フェーズと、対話者の属性と、に基づいて、制御部20が個別確認リストを選択する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、列車(移動体)の輸送障害が生じた場合に指令員が確認すべき確認項目が輸送障害の種類に対応してリスト化されてなる個別確認リストを制御部20がディスプレイ41(表示手段:
図1参照)に表示させるようにしてもよい。この場合において、制御部20は、指令員と、当該指令員が通話した相手方と、の間の輸送障害に関する通話内容を音声認識した結果を個別確認リストに反映させて表示する。これによって、輸送障害の種類に対応した所定の個別確認リストを指令員に提示できる。なお、輸送障害が生じた後の運転整理に関する通話内容も、「輸送障害に関する通話内容」に含まれるものとする。具体的には、例えば、運転整理フェーズ2又は3において、新たに検討された運行ダイヤに対して、車両編成と乗務員の割り当てが可能か、または割り当て不可の場合にはその理由は何か等、輸送指令と運用指令の間で会話される運用情報等も、「輸送障害に関する通話内容」に含まれる。
【0076】
また、制御部20が、列車(移動体)の輸送障害の種類に対応する個別確認リストであって、現状の運転整理フェーズに対応するものをディスプレイ41(表示手段:
図1参照)に表示させるようにしてもよい。これによって、輸送障害の種類の他、現状の運転整理フェーズに対応した所定の個別確認リストを指令員に提示できる。
【0077】
また、制御部20が、列車(移動体)の輸送障害の種類に対応する個別確認リストであって、指令員と通話している相手方の属性に対応するものをディスプレイ41(表示手段:
図1参照)に表示させるようにしてもよい。これによって、輸送障害の種類の他、通話の相手方の属性に対応した所定の個別確認リストを指令員に提示できる。
【0078】
また、実施形態では、指令室のディスプレイ41(表示手段)に個別確認リストが表示される場合について説明したが、これに限らない。例えば、個別確認リストが表示される「表示手段」として、携帯電話やスマートフォン、タブレットの他、眼鏡型のウェアラブル端末等が用いられてもよい。また、実施形態では、通話手段としてマイク43(
図1参照)を用いた場合について説明したが、これに限らない。例えば、携帯電話やスマートフォン、タブレット等が通話手段として用いられてもよい。
【0079】
また、複数の異なる個別確認リストが並行して作成される場合において、所定の個別確認リストの確認項目の内容に、他の個別確認リストの確認項目の内容が反映されるようにしてもよい。
また、実施形態では、列車(移動体)の輸送障害が生じた場合について説明したが、これに限らない。例えば、航空機や船舶の他、バスやタクシーといった「移動体」の輸送障害についても、実施形態を適用できる。
【0080】
また、情報収集システム100の処理(情報収集方法)が、コンピュータの所定のプログラムとして実行されてもよい。前記したプログラムは、通信線を介して提供することもできるし、CD-ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0081】
また、実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0082】
100 情報収集システム
10 記憶部
11 音声認識モデル
12 音声データ
13,13A,13B 個別確認リスト
131A 再生ボタン
14 情報収集ルール
15 対話履歴
16 センサ・カメラデータ
20 制御部
21 データ取得部
22 障害種別判定部
23 フェーズ判定部
24 音声認識部
25 対話者判定部
26 情報確認部
30 通信インタフェース
40 端末
41 ディスプレイ(表示手段)
42 キーボード
43 マイク
61 センサ
62 カメラ
G1,G2,G3,G4 指令員