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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084322
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】油性固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20230612BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230612BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230612BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20230612BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/02
A61K8/98
A61K8/9789
A61K8/39
A61K8/86
A61Q19/00
A61Q1/14
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198434
(22)【出願日】2021-12-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.パネル展示 1-1.集会名:CITE JAPAN 2021 1-2.タイトル:オイル増粘ゲル化剤 1-3.発行日:令和3年5月19日~21日 2.口頭発表 2-1.集会名:CITE JAPAN 2021 2-2.発表タイトル:植物由来のポリグリセリンを主骨格とした、オイル用増粘ゲル化剤のご紹介 2-3.発表日:令和3年5月19日 3.要旨集への掲載 3-1.刊行物:日本油化学会第60回年会要旨 3-2.タイトル:ポリグリセリンを主骨格とした塗布時の感触に優れるオイル増粘ゲル化剤の開発 3-3.発表日:令和3年8月31日 4.口頭発表 4-1.集会名: 日本油化学会第60回年会 4-2.発表タイトル:ポリグリセリンを主骨格とした塗布時の感触に優れるオイル増粘ゲル化剤の開発 4-3.発表日:令和3年9月6日
(71)【出願人】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梶 あおい
(72)【発明者】
【氏名】山田 武
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC421
4C083AC422
4C083BB12
4C083BB13
4C083BB51
4C083CC02
4C083CC11
4C083CC23
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE06
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】高温安定性と使用性に優れ、表面が滑らかである油性固形化粧料を提供すること
【解決手段】(A)固形油及び/又は半固形油、(B)25℃で液状の油性成分、(C)ポリグリセリンの平均重合度が2~20であり、構成脂肪酸が炭素数8~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、(D)ポリグリセリンの平均重合度が2~20であり、構成脂肪酸がモノカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、ポリカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた油性固形化粧料が上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含有する油性固形化粧料。
(A)固形油及び/又は半固形油
(B)25℃で液状の油性成分
(C)ポリグリセリンの平均重合度が2~20であり、構成脂肪酸が炭素数8~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(D)ポリグリセリンの平均重合度が2~20であり、構成脂肪酸がモノカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、ポリカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固形化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油性固形化粧料は、肌や口唇に塗布して使用するスキンケア、クレンジング、メイクアップなど幅広い剤型に応用されている(特許文献1、2)。油性固形化粧料には、液状油に加えてワックスなどの固形油が配合されており、固形油が形成するカードハウス構造内に液状油が取り込まれることで液状油の流動性が抑制されたオイルゲル構造体を形成している。また、油性固形化粧料は、液状の剤型に比べハンドリング性が良く、使用時には応力を加えることで構造の一部が崩壊して液状油が塗り広がる特性を持つ。
【0003】
従来の油性固形化粧料は、冬場などの低温下においてはオイルゲル構造体が硬くなり容器から取り出しづらくなることや、塗り広げにくくなることがあった。これらの問題を解決するため、固化成分のワックスに石油系原料のポリエチレン、ポリプロピレン、合成ワックスやマイクロクリスタリンワックスを用いることで、融点と結晶性を調整する技術があった。しかしながら、近年サステナブル原料の要望から石油系ワックスを使用しない処方の要望が高まってきており、石油系ワックスを用いずに固形油を低減するのみでは、高温下において液状化する問題が生じていた。そして、高温の安定性を付与するために融点の高い固形油を配合すると、塗布時に塗り広げにくく、のびが悪くなるため、油性固形化粧料は使用性と保存安定性の両立が困難であった。
【0004】
また、油ゲル化剤を併用することで、高温においてもオイルゲル構造を安定化する方法もあるが、油ゲル化剤のデキストリン脂肪酸エステルやアミノ酸誘導体などは溶解温度が高く、100℃以上に加熱する必要があり、成型した化粧料の表面はザラつき外観が損なわれるなどの問題が生じやすく、十分な課題の解決であるとは言えないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-017401号公報
【特許文献2】特開2017-095375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高温安定性と使用性に優れ、表面が滑らかである油性固形化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、(A)固形油及び/又は半固形油、(B)25℃で液状の油性成分、(C)ポリグリセリンの平均重合度が2~20であり、構成脂肪酸が炭素数8~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、(D)ポリグリセリンの平均重合度が2~20であり、構成脂肪酸がモノカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、ポリカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた油性固形化粧料が、上記課題を解決するものであることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油性固形化粧料は、高温安定性に優れ、塗布時にのびが良く、成型時の外観に優れる。そして、本発明の油性固形化粧料は石油系ワックスを用いなくとも塗り広げやすいものであり、サステナブル原料のみからなる処方の要望を満たすものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の範囲は、この実施形態に限定するものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で変更等が加えられた形態も本発明に属する。なお、範囲を表す表記の「~」は、上限と下限を含むものである。含有量を示す単位は、特に明記しない限りすべて重量%である。
【0010】
成分(A)の固形油や半固形油としては、特に限定はされないが、石油系のワックスであれば、ポリエチレンワックス(融点:90~120℃)、パラフィンワックス(融点:50~70℃)、マイクロクリスタリンワックス(融点:54~102℃)、フィッシャートロプシュワックス(融点:108~120℃)、セレシン(融点:61~95℃)、オケゾライト(融点:61~90℃)等の炭化水素系ワックスが挙げられる。天然ワックスであれば、ロウ類としては、カルナウバロウ(融点:80~86℃)、ミツロウ(融点:64℃)、キャンデリラロウ(融点:68~72℃)、コメヌカロウ(融点:70~83℃)、ホホバロウ(融点:55℃)。そのほかに、天然由来原料を構成成分とする水添ホホバ油(融点:68℃)、硬化ヒマシ油(融点:84℃)、水添パーム油(融点:65℃)、硬化ヤシ油(融点:70℃)、トリステアリン、トリベヘニン、シア脂(融点:36~45℃)、マカデミアナッツ油ポリグリセリル-6エステルズベヘネート、(イソステアリン酸/ベヘン酸)(グリセリル/ポリグリセリル-6)エステルズ(融点:28~40℃)などが挙げられる。これらは、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。保形性及び保存安定性の観点から、成分(A)全体の融点が40~110℃であることが好ましく、60~110℃であることがより好ましい。また、本発明では石油系ワックスを含まないことがより好ましい。
【0011】
成分(A)は、油性固形化粧料に対し、1~30%配合されることが好ましく、3~20%であることがより好ましい。
【0012】
成分(B)に使用される液状の油性成分としては、25℃で液状である油剤であれば、特に制限されない。例えば、イソステアリン酸イソセチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、オクタン酸セチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2-ヘキシルデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸2-オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、オレイン酸ドデシル、オレイン酸オレイル、乳酸ラウリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ラウリン酸へキシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、コハク酸ジオクチル、トリエチルヘキサノイン、ジピバリン酸トリプロピレングリコールトリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリル、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリリノール酸グリセリル、トリパルミトレイン酸グリセリル、フッ素変性エステル油等のエステル油、またこれらはアマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボガド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、牛脚脂、肝油等の動植物由来のエステル油であっても良い;α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン、アミノ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油等のシリコーン油;オレイン酸、トール油脂肪酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ホホバアルコール等の高級アルコールなどが挙げられ、植物油を用いることが好ましい。
【0013】
(B)液状の油性成分は、油性固形化粧料に対し、1~50%配合されることが好ましく、10~40%であることがより好ましい。
【0014】
成分(C)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度が2~20であり、構成脂肪酸が炭素数8~22の不飽和脂肪酸及び/又は分岐脂肪酸である。
【0015】
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、平均重合度が2~20、好ましくは2~15のポリグリセリンである。ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、下記式(1)及び下記式(2)から算出される。
分子量=74n+18 ・・・(1)
水酸基価=56110(n+2)/分子量・・・(2)
【0016】
上記式(2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2003年度版」に準じて算出される。
【0017】
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、炭素数8~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸からなる群より選ばれた1種又は2種以上であり、炭素数18のイソステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0018】
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、30~100%であることが好ましく、40~100%であることがより好ましく、70~100%であることが最も好ましい。ここでエステル化率とは、水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加する脂肪酸のモル数(M)としたとき、下記式(3)で算出される値である。水酸基価とは、上記式(2)により算出される値である。
エステル化率(%)=(M/(n+2))×100・・・(3)
【0019】
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルとして具体的には、2-エチルヘキサン酸ジグリセリル、イソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、イソステアリン酸トリグリセリル、ジイソステアリン酸テトラグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ノナイソステアリン酸デカグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、オレイン酸ジグリセリル、オレイン酸トリグリセリル、オレイン酸テトラグリセリル、オレイン酸ヘキサグリセリル、オレイン酸デカグリセリル、デカ2-エチルヘキサン酸デカグリセリル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用する。商品名としては、IS-204P、IS-1009P、IS-1005P、KEH-1010、O-201P(いずれも阪本薬品工業株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、油性固形化粧料に対し、5~70%配合されることが好ましく、10~60%であることがより好ましい。油性固形化粧料に対して5~70%の範囲とすることで、高温安定性に優れ、滑らかな表面の油性固形化粧料を得ることができる。
【0021】
成分(D)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度が2~20であり、構成脂肪酸がモノカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、ポリカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0022】
(D)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、水酸基価から算出した平均重合度が2~20、好ましくは4~20のポリグリセリンである。
【0023】
(D)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するモノカルボン酸は、特に限定されないが、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リシノール酸、パルミトオレイン酸、イソオクチル酸(2-エチルヘキサン酸など)、イソノナン酸(3,5,5-トリメチルヘキサン酸など)、イソパルミチン酸、イソステアリン酸(2-ヘプチルウンデカン酸、エメリー社製の多メチル分枝タイプなど)、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられ、直鎖かつ飽和のモノカルボン酸であることが好ましい。
【0024】
(D)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリカルボン酸は、特に限定されないが、例えば、コハク酸、クエン酸、アジピン酸、セバシン酸、エイコサン二酸、ドデカン二酸、1,10-デカメチレン二酸、1,12-ドデカメチレン二酸、1,15-ペンタデカメチレン二酸、1,28-オクタコサメチレン二酸、1,7-エチルオクタデカン二酸等が挙げられ、飽和のジカルボン酸であることが好ましい。
【0025】
上記モノカルボン酸やポリカルボン酸は、誘導体であってもよい。誘導体としては、これらの酸無水物や酸ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0026】
(D)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、モノカルボン酸とポリカルボン酸の混合物とすることで、使用感に優れる機能を示すという点で好ましいものである。
【0027】
(D)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全構成脂肪酸中のエステル化率が30~70%であることが好ましく、40~60%であることがより好ましい。全構成脂肪酸中のエステル化率が30~70%であれば、油性固形化粧料に配合した際により優れた使用感を提供できる。
【0028】
(D)ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリカルボン酸として、エイコサン二酸等のジカルボン酸を使用する場合のジカルボン酸のエステル化率は、特に限定されるものではないが、エステル化率は2~8%であることが好ましく、3~7%であることがより好ましい。ジカルボン酸のエステル化率が2~8%の範囲であれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルの架橋反応が適切に制御でき、目的のポリグリセリン脂肪酸エステルを得ることができる。また、油剤に添加した際の分散性も良好となる。
【0029】
(D)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、油性固形化粧料に対し、1~30%配合されることが好ましく、2~20%であることがより好ましい。油性固形化粧料に対して1~30%の範囲とすることで高温安定性とのびの良さを両立することができる。
【0030】
本発明の油性固形化粧料は、全成分中の成分(A)と成分(D)の合計量が5~40%であることが好ましい。成分(A)と成分(D)の合成量が5~40%であれば、より高温安定性に優れる化粧料が得られる。
【0031】
本発明の油性固形化粧料は、効果を妨げない範囲で、通常化粧料に含有される成分として、油性成分、アルコール類、水溶性高分子、保湿剤、水等の水性成分、粉体、界面活性剤、美容成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、香料等を含有することができる。
【0032】
水性成分としては、水以外にも水に可溶な通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、エチルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、デキストリン、グルコース、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、オリゴ糖、セルロース等の糖類が挙げられる。水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のもの、他にタンパク質、ムコ多糖類、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0033】
粉体としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成金雲母、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス等の無機粉体類や、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸アルキル、オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリメチルセスキオキサン、架橋型シリコーン・網状シリコーンブロック共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体、ポリエチレン、ウレタン、ウール、シルク、結晶セルロース、N-アシルリジン等の有機粉体類や、有機タール系顔料、有機色素等のレーキ顔料等の色素粉体類や、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有無水ケイ酸、酸化亜鉛含有無水ケイ酸、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン被覆合成金雲母、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン等の複合粉体類や、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末などの積層フィルム末類等が挙げられる。また、これらの粉体をフッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、アミノ酸、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種または2種以上を用いて表面処理を施してあってもよい。
【0034】
界面活性剤としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、レシチン等を挙げることができ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0035】
酸化防止剤としては、例えば、α-トコフェロール、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等、美容成分としては例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、ペンタンジオール等、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン、トリアジン系、オキシベンゾン等を挙げることができ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0036】
本発明の油性固形化粧料は、ペースト状もしくは固形状である様々な用途に使用でき、例えば口紅、リップスティック、リップライナー、アイライナー、アイシャドウ、チーク、ファンデーション、コンシーラー、プレストパウダーなどのメイク製品、バーム、クレンジングバームなどのスキンケア製品、ヘアトリートメントなどのヘアケア製品等が挙げられる。
【0037】
本発明の油性固形化粧料の調製方法は、特に限定されない。
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例0038】
<(D)ポリグリセリン脂肪酸エステルの合成例1>
平均重合度10のポリグリセリン131.9gとベヘン酸355.0gとエイコサン二酸35.7gを反応容器に入れ、0.25gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において250℃、3時間反応を行い、全構成脂肪酸中のエステル化率が55%(モノカルボン酸のエステル化率50%、ポリカルボン酸のエステル化率5%)の反応生成物500gを得た。
【0039】
<(D)ポリグリセリン脂肪酸エステルの合成例2>
平均重合度20のポリグリセリン138.6gとベヘン酸346.6gとエイコサン二酸34.9gを反応容器に入れ、0.25gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において250℃、3時間反応を行い、全構成脂肪酸中のエステル化率が55%(モノカルボン酸のエステル化率50%、ポリカルボン酸のエステル化率5%)の反応生成物500gを得た。
【0040】
<実施例1~8、比較例1~4>
表1および表2に示す組成の油性固形化粧料を以下の製造方法により調製した。
【0041】
(製造方法)
原料を80℃に加熱し溶解混合した後、20mL容量のプラスチック製ジャー容器に10g入れ、室温まで冷却し油性固形化粧料を製造した。
【0042】
(高温安定性)
得られた油性固形化粧料を、50℃の恒温槽に1週間保存後、以下の基準に従って視覚判定を行った。
(基準)
○:固形状であり、表面に変化が見られない
△:固形状であるが、表面にわずかに油浮きが見られる
×:固形状であるが、表面の半分以上に液状油がにじみ出ている、または固形状になっていない
【0043】
(外観)
得られた油性固形化粧料を、5℃の恒温槽に1週間保存後に「成型時の外観」について以下の基準に従って視覚判定を行った。
(基準)
○:表面が平滑であり、ツヤがある
△:表面にわずかにザラつきが見られる
×:表面がザラついており、ツヤがない
【0044】
(のびの良さ)
得られた油性固形化粧料を、25℃の恒温槽に12週間保存後、20名のパネラーにより官能評価を行った。上記の組成物を前腕に1g塗布し、それを人差し指で塗り広げた際ののびの良さについて5点満点として平均点を算出し、以下の基準により評価した。
(基準)
◎:4.0点以上(非常に良好)
○:3.0点以上、4.0点未満(良好)
△:2.0点以上、3.0点未満(やや悪い)
×:2.0点以下(悪い)
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
※1:Sフェイス VL-211(阪本薬品工業製)
※2:Sフェイス IS-204P(阪本薬品工業製)
※3:Sフェイス IS-1009P(阪本薬品工業製)
【0047】
成分(A)~成分(D)を含有する本発明の油性固形化粧料である実施例1~8は、成分(C)と成分(D)を含まない比較例1、成分(D)を含まない比較例2、成分(D)以外の油増粘剤を用いた比較例3、成分(C)以外のエステルを用いた比較例4に比べ、高温安定性やのびの良さや外観の面で優れていた。