(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084327
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198441
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 彩香
(72)【発明者】
【氏名】河原 伸哉
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB11
3E172AB12
3E172AB20
3E172BA04
3E172BD05
3E172DA01
3E172DA90
3E172EB03
3E172HA04
(57)【要約】
【課題】液化天然ガス貯蔵タンク内のボイルオフガスを効率的に再液化する方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】液化天然ガスを貯蔵する液化天然ガス貯蔵タンクと、低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス貯蔵タンクと、前記低温液化ガスの冷熱を利用してボイルオフガスを冷却し、前記ボイルオフガスの再液化を行う熱交換器と、を備える、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法であって、前記液化天然ガス貯蔵タンクの圧力を調整する液化天然ガス貯蔵タンク圧力調整工程と、前記低温液化ガス貯蔵タンクの圧力を調整する低温液化ガス貯蔵タンク圧力調整工程と、前記低温液化ガスの流量を調整する流量調整工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスを貯蔵する液化天然ガス貯蔵タンクと、
低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス貯蔵タンクと、
ボイルオフガスを冷却する熱交換器と、を用いて前記ボイルオフガスの再液化を行う、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法であって、
前記低温液化ガスの冷熱を利用して前記ボイルオフガスを冷却し、再液化する再液化工程と、
前記液化天然ガス貯蔵タンクの圧力を調整する液化天然ガス貯蔵タンク圧力調整工程と、
前記低温液化ガス貯蔵タンクの圧力を調整する低温液化ガス貯蔵タンク圧力調整工程と、
前記低温液化ガスの流量を調整する流量調整工程と、を備える、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【請求項2】
前記熱交換器から排出された前記低温液化ガスを加温する加温工程を備える、請求項1に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【請求項3】
前記熱交換器から排出された前記低温液化ガスを加圧する加圧工程を備える、請求項1または請求項2に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【請求項4】
前記液化天然ガス貯蔵タンク内の前記液化天然ガスを循環させる循環ポンプを備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【請求項5】
前記低温液化ガスは、液体窒素である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【請求項6】
液化天然ガスを貯蔵する液化天然ガス貯蔵タンクと、
低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス貯蔵タンクと、
ボイルオフガスを冷却する熱交換器と、を用いて前記ボイルオフガスの再液化を行う、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置であって、
前記熱交換器は、前記液化天然ガス貯蔵タンクの液面よりも上部にあり、
前記液化天然ガス貯蔵タンクの圧力を調整する液化天然ガス貯蔵タンク圧力調整装置と、
前記低温液化ガス貯蔵タンクの圧力を調整する低温液化ガス貯蔵タンク圧力調整装置と、
前記低温液化ガスの流量を調整する流量調整装置と、を備える、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【請求項7】
前記熱交換器は、前記液化天然ガス貯蔵タンク内にある、請求項6に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【請求項8】
前記熱交換器から排出された前記低温液化ガスを加温する加温器を備える、請求項6または請求項7に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【請求項9】
前記熱交換器から排出された前記低温液化ガスを加圧する加圧器を備える、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【請求項10】
前記液化天然ガス貯蔵タンク内の前記液化天然ガスを循環させる循環ポンプを備える、請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【請求項11】
前記低温液化ガスは、液体窒素である、請求項6から請求項10のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液化天然ガス(LNG)は、化石燃料の代替エネルギーおよびクリーン燃料として注目されている。また、工場等においても燃料としてLNGが使用されており、大規模施設だけでなく小規模施設においてもサテライト施設の導入が進んでいる。
【0003】
LNGは、施設に設置された貯蔵タンクに貯蔵されている。貯蔵タンク内では外部からの入熱によって常時一部のLNGが気化してボイルオフガス(BOG)が発生し、貯蔵タンク内の圧力が上昇する要因となる。そこで、BOGの発生による貯蔵タンクの異常昇圧を防止するため、様々なBOGの処理方法が検討されている。
【0004】
特許文献1および2においては、BOGを燃料として利用する方法が開示されている。また、特許文献3~5においては、BOGを再液化して貯蔵タンク内に戻す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-144877号公報
【特許文献2】特開2019-65883号公報
【特許文献3】特開2012-122554号公報
【特許文献4】特開2002-206697号公報
【特許文献5】特開2002-295799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2においては、入熱により発生したBOGはボイラーやコージェネレーションシステムで消費するが、燃料として利用できなかった余剰分のBOGは大気に放出されるか燃焼等により処理される。BOGの成分の大部分はメタンであり、地球温暖化の観点から上記のような処理は避ける必要がある。また、LNGの大部分もメタンであり、BOGを上記のように処理すると、貯蔵タンク内のメタンの比率が低下し、LNGの組成が変動する。LNGの組成が変動すると、熱量や密度等の物性が変わり、施設に不具合が生じるおそれがある。
【0007】
特許文献3および4においては、LNGの冷熱を利用してBOGを再液化している。しかし、常時稼働していない施設では常時発生するBOGを再液化するために必要な冷熱源を確保できず、BOGを再液化できない。また、小規模施設では、大規模施設に比べて貯蔵タンクの容量に対する表面積が大きい。入熱量は表面積に比例するため、小規模施設では、LNGの容積当たりの入熱量が大きくなる。さらに、小規模施設では貯蔵タンク内のLNG量が少なく、利用できる冷熱が限られている。その結果、再液化できるBOGの量よりも発生するBOGの量が多くなる可能性が高い。このように、特許文献3および4に開示の方法は、使用できる施設に制限がある。
【0008】
特許文献5においては、BOGと液体窒素とを熱交換してBOGを再液化している。しかし、貯槽に貯蔵されるLNG中には窒素が含まれていることが一般に知られている。BOGと一緒に窒素も再液化すると、LNGの液密度が低下する。液密度の異なる液体層が形成されるとロールオーバーの原因となるため、窒素が液化しないように対策が必要である。
【0009】
本開示の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、液化天然ガス貯蔵タンク内のボイルオフガスを効率的に再液化する方法およびその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕 液化天然ガスを貯蔵する液化天然ガス貯蔵タンクと、
低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス貯蔵タンクと、
ボイルオフガスを冷却する熱交換器と、を用いて前記ボイルオフガスの再液化を行う、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法であって、
前記低温液化ガスの冷熱を利用して前記ボイルオフガスを冷却し、再液化する再液化工程と、
前記液化天然ガス貯蔵タンクの圧力を調整する液化天然ガス貯蔵タンク圧力調整工程と、
前記低温液化ガス貯蔵タンクの圧力を調整する低温液化ガス貯蔵タンク圧力調整工程と、
前記低温液化ガスの流量を調整する流量調整工程と、を備える、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【0011】
〔2〕 前記熱交換器から排出された前記低温液化ガスを加温する加温工程を備える、〔1〕に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【0012】
〔3〕 前記熱交換器から排出された前記低温液化ガスを加圧する加圧工程を備える、〔1〕または〔2〕に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【0013】
〔4〕 前記液化天然ガス貯蔵タンク内の前記液化天然ガスを循環させる循環ポンプを備える、〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【0014】
〔5〕 前記低温液化ガスは、液体窒素である、〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化方法。
【0015】
〔6〕 液化天然ガスを貯蔵する液化天然ガス貯蔵タンクと、
低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス貯蔵タンクと、
ボイルオフガスを冷却する熱交換器と、を用いて前記ボイルオフガスの再液化を行う、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置であって、
前記熱交換器は、前記液化天然ガス貯蔵タンクの液面よりも上部にあり、
前記液化天然ガス貯蔵タンクの圧力を調整する液化天然ガス貯蔵タンク圧力調整装置と、
前記低温液化ガス貯蔵タンクの圧力を調整する低温液化ガス貯蔵タンク圧力調整装置と、
前記低温液化ガスの流量を調整する流量調整装置と、を備える、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【0016】
〔7〕 前記熱交換器は、前記液化天然ガス貯蔵タンク内にある、〔6〕に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【0017】
〔8〕 前記熱交換器から排出された前記低温液化ガスを加温する加温器を備える、〔6〕または〔7〕に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【0018】
〔9〕 前記熱交換器から排出された前記低温液化ガスを加圧する加圧器を備える、〔6〕から〔8〕のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【0019】
〔10〕 前記液化天然ガス貯蔵タンク内の前記液化天然ガスを循環させる循環ポンプを備える、〔6〕から〔9〕のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【0020】
〔11〕 前記低温液化ガスは、液体窒素である、〔6〕から〔10〕のいずれか1項に記載の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、液化天然ガス貯蔵タンク内のボイルオフガスを効率的に再液化する方法およびその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態における液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置の別の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置の別の構成の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置の別の構成の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置の別の構成の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本実施形態における液化天然ガス貯蔵タンクの構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0024】
図1は、本実施形態における液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置の構成の一例を示す概略図である。本実施形態の液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置100は、液化天然ガスを貯蔵する液化天然ガス貯蔵タンク1と、低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス貯蔵タンク3と、ボイルオフガスを冷却する熱交換器2と、液化天然ガス貯蔵タンク1の圧力を調整する液化天然ガス貯蔵タンク圧力調整装置と、低温液化ガス貯蔵タンク3の圧力を調整する低温液化ガス貯蔵タンク圧力調整装置と、低温液化ガスの流量を調整する流量調整装置6と、を備える。また、熱交換器2は、液化天然ガス貯蔵タンク1の液面よりも上部にある。
【0025】
なお、本実施形態においては、液化天然ガスを「LNG」と、液化天然ガス貯蔵タンクを「LNG貯蔵タンク」と、低温液化ガスを「CLG」と、低温液化ガス貯蔵タンクを「CLG貯蔵タンク」と、ボイルオフガスを「BOG」と、液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置を「BOG再液化装置」と、それぞれ称する。
【0026】
LNG貯蔵タンク1は、LNGを貯蔵する。本実施の形態では、LNG貯蔵タンク1内のLNGが気化してBOGが発生する。LNG貯蔵タンク1は、LNGを外気温からできるだけ遮断できるように、断熱機能を有する。LNG貯蔵タンク1内には、LNG貯蔵タンク1内の下側である液相部分と、LNG貯蔵タンク1内の上側である気相部分と、が存在する。液相部分は、LNG貯蔵タンク1内に貯蔵されたLNGであり、気相部分は、LNGが気化したBOGを含む気体である。
【0027】
CLG貯蔵タンク3は、CLGを貯蔵する。CLGは、LNGよりも低温の液化ガスであれば特に制限はなく、例えば、液体窒素、液体酸素、液体空気等が挙げられる。CLGとしては、工場等における排冷熱の再利用の観点から、液体窒素が好ましい。
【0028】
熱交換器2は、CLGの冷熱を利用してBOGを冷却し、再液化する。上述のように、LNG貯蔵タンク1内で発生したBOGは、熱交換器2へと導入される。熱交換器2は、CLG貯蔵タンク3とCLG導入配管7により接続されており、CLG導入配管7よりCLGが熱交換器2に導入される。熱交換器2へと導入されたBOGは、CLGの冷熱により冷却され、再液化される。再液化されたLNGは、再びLNG貯蔵タンク1の液相部分に戻る。また、熱交換器2を通過後のCLGは、CLG排出配管8により熱交換器2から排出される。
【0029】
熱交換器2は、特に制限はなく、例えば、プレート式熱交換器、プレートフィン式熱交換器、コイル式熱交換器等が挙げられる。熱交換器2としては、熱交換器2の上部にBOGの導入口が設けられ、熱交換器2の下部に再液化されたLNGの排出口が設けられていることが好ましい。このような熱交換器2を用いることで、BOGの再液化をより効率的に行うことができる。
【0030】
熱交換器2は、LNG貯蔵タンク1の液面よりも上部に、すなわち、液相部分よりも上に設置する。このように設置することで、再液化されたLNGが自重によってLNG貯蔵タンク内に流入することができる。
【0031】
具体的には、熱交換器2は、
図1~3に示すように、LNG貯蔵タンク1内に、すなわち、LNG貯蔵タンク1の気相部分に設置する場合、
図4に示すように、LNG貯蔵タンク1よりも上部にBOG貯蔵タンク13を設けてその中に設置する場合等が挙げられる。また、
図5に示すように、LNG貯蔵タンク1の液面よりも上部にCLG貯蔵タンク3を設けて、熱交換器2がCLG貯蔵タンク3の液相部分の少なくとも一部にあるように設置する場合も挙げられる。本実施形態においては、熱交換器2は、LNG貯蔵タンク1内に設置することが好ましい。このようにすることで、熱交換器2をコンパクトに収納することができ、かつ、既設のLNG貯蔵タンク1内に設置することで、外気からの入熱を削減し、効率よく熱交換ができるためである。
【0032】
また、熱交換器2には、再液化されたLNGをLNG貯蔵タンク1の液相部分に戻す還流路9が設けられていることが好ましい。さらに、還流路9の排出口は、液相部分にあることが好ましい。このようにすることで、BOGの再液化をより効率的に行うことができる。
【0033】
LNG圧力調整装置は、LNG貯蔵タンク1の圧力を調整する。BOGの発生量や再液化量によって、LNG貯蔵タンク1の圧力が変動し、LNGの供給条件が不安定となるためである。具体的には、LNG貯蔵タンク1の圧力が上昇すると、LNGの温度が上昇するおそれがあるため、BOGの再液化によって圧力を低下させる。LNG貯蔵タンク1の圧力が低下すると、LNGの供給に必要な圧力が確保できないおそれがあるため、加圧器5によって圧力を上昇させる。
【0034】
LNG圧力調整装置は、加圧器5および圧力計を含んでいてもよい。なお、LNG貯蔵タンク1の減圧は、熱交換器2によって行われるため、後述するCLG圧力調整装置のように、減圧弁4を設ける必要はない。
【0035】
CLG圧力調整装置は、CLG貯蔵タンク3の圧力を調整する。LNGおよびBOGの大部分はメタンであり、メタンが熱交換器2の表面で凍結し、固化すると、伝熱面積が小さくなり、再液化の効率が低下する場合や、BOGの流路が閉塞し、BOGを再液化できなくなる場合がある。また、メタンが固化することでLNGの組成が変動し、LNGの熱量や密度等の物性が変わるため、LNGの供給先であるLNG消費設備が稼働しなくなるおそれがある。このようなメタンの固化を防止するため、CLGの圧力を調整する必要がある。
【0036】
具体的には、CLG貯蔵タンク3から供給されるCLGの温度をメタンの融点および沸点である-182℃から-162℃の温度帯に制御できるように、CLG貯蔵タンク3の圧力を調整する。すなわち、CLG貯蔵タンク3の温度が-182℃未満となった場合は加圧し、-162℃を超えた場合は減圧する。なお、上記メタンの融点および沸点はLNG貯蔵タンク1の圧力によって変動する。
【0037】
また、BOGには微量の窒素が含まれており、BOGが再液化されるのと同時に窒素も液化される。窒素の液化により、LNG貯蔵タンク1内のLNGの液密度が低下する。これにより、液密度の異なるLNGが同一のLNG貯蔵タンク1に存在することになり、LNG貯蔵タンク1内で液密度の異なる複数の液体層が形成され、LNG貯蔵タンク1内でいわゆるロールオーバーと呼ばれるLNGの急激なガス化が起きる要因となる。ロールオーバーによりLNG貯蔵タンク1内の圧力が急激に上昇すると、LNG貯蔵タンク1にダメージを与える危険がある。このような窒素の液化によるロールオーバーを防止するため、CLG貯蔵タンク3から供給されるCLGの温度を、窒素の沸点である-196℃以上の温度帯になるように、CLG貯蔵タンク3の圧力を調整する。
【0038】
CLG圧力調整装置は、減圧弁4、加圧器5および圧力計を含んでいてもよい。
流量調整装置6は、CLGの流量を調整する。CLGの流量を調整することで、LNG貯蔵タンク1の圧力を一定に保持することができ、LNG貯蔵タンク1の異常昇圧を防止することができる。具体的には、LNG貯蔵タンク1の圧力が上昇した場合はCLGの流量を増量し、LNG貯蔵タンク1の圧力が低下した場合はCLGの流量を減量する。なお、BOG中のメタン成分の固化や、窒素成分の再液化を防止するため、CLGの圧力が下がりすぎないように流量を調整する必要がある。
【0039】
流量調整装置6は、CLG排出配管8に設置する。流量調整装置6は、CLG排出配管8のLNG貯蔵タンク1の外部に設置することが好ましい。流量調整装置6は、流量調整弁または圧力調整弁を含む。流量調整装置6が流量調整弁を含む場合、流量調整弁により直接的にCLGの流量を調整する。流量調整装置6が圧力調整弁を含む場合、LNG貯蔵タンク1の圧力を調整することで、間接的にCLGの流量を調整する。なお、流量調整装置6は、流量計を含んでいてもよい。
【0040】
また、LNG貯蔵タンク1には、LNGを受け入れるためのLNG受入配管(図示せず)が設けられている。LNG受入配管は、LNG貯蔵タンク1の液相部分および気相部分のそれぞれに接続されていることが好ましい。
【0041】
LNGはメタン、エタン、プロパン等が混入しており、輸入元が異なればその混入成分も異なり液密度も異なっている。液密度の異なるLNGをLNG貯蔵タンク1に混合貯蔵した場合、ロールオーバーが発生するおそれがある。ロールオーバーを防止するため、上記のようにLNG受入配管をLNG貯蔵タンク1の液相部分および気相部分のそれぞれに接続することが好ましい。
【0042】
具体的には、LNG貯蔵タンク1内の圧力を調整しながら、LNG貯蔵タンク1の気相部分および液相部分の両方からLNGを受け入れる。これにより、LNGの液密度に差がある場合も、受け入れるLNGとLNG貯蔵タンク1内の残存しているLNGとの混合が容易になる。
【0043】
本実施形態によれば、下記のような作用効果を奏する。
CLGの流量を調整し、BOGを再液化することで、LNG貯蔵タンク1内の圧力を一定に保持することから、LNGを常時使用しない場合であっても、LNG貯蔵タンク1の異常昇圧や異常昇温等を防止することができる。
【0044】
また、LNG貯蔵タンク1の圧力を調整することで、LNGの供給条件を安定化させることができる。
【0045】
また、CLG貯蔵タンク3の圧力を調整し、メタンの固化および窒素の液化を防止することで、LNG貯蔵タンク1のロールオーバーや、LNGの供給先であるLNG消費設備が稼働しなくなる等の不具合の懸念を緩和することができる。
【0046】
また、BOGを大気に放出しないため、地球温暖化ガスを削減することができ、持続可能な開発目標(SDGs)の一部活動に貢献することができる。
【0047】
また、BOGの再液化には、工場等の排冷熱であるCLGを再利用することができる。さらに、未利用の冷熱をエネルギーとして再利用するため、冷凍機等を利用する必要がなく、エネルギーを省力化することができる。このような観点からも、持続可能な開発目標(SDGs)の一部活動に貢献することができる。
【0048】
また、既設の設備にも、
図4に示すようにLNG貯蔵タンク1よりも上部にBOG貯蔵タンク13を設けてその中に熱交換器2を設置することが、
図5に示すように、LNG貯蔵タンク1よりも上部にCLG貯蔵タンク3を設けてその中の液相部分に設置することが、それぞれでき、例えば、自動車や船舶等にも適用することができる。
【0049】
図2は、本実施形態におけるBOG再液化装置100の別の構成の一例を示す概略図である。この例では、熱交換器2から排出されたCLGを加温する加温器10および熱交換器2から排出されたCLGを加圧する加圧器11をさらに備える。
【0050】
熱交換後のCLGは気体状態であり、CLGの温度は上昇しているものの、低温である。そのため、さらに加温器10で加温することで常温程度に調整し、工場内で製品として再利用することができる。また、必要に応じて熱交換後のCLGを加圧させて再利用することができる。
【0051】
なお、加温器10および加圧器11は必ずしも同時に備える必要はなく、どちらか一方のみを備えていてもよい。また、加温器10と流量調整装置6、および加圧器11と流量調整装置6は、必ずしも
図2に示すような位置関係になくてもよい。
【0052】
図3は、本実施形態におけるBOG再液化装置100の別の構成の一例を示す概略図である。この例では、CLG貯蔵タンク3から排出されたCLGを加圧する加圧器12を備える。また、上記と同様に、加温器10をさらに備えていてもよい。
【0053】
CLG貯蔵タンク3から排出されたCLGは、加圧器11の代わりに加圧器12で加圧されてBOGの再液化に利用後、製品として再利用することができる。
【0054】
なお、CLG貯蔵タンク3は低圧タンクであってもよい。また、図示していないが、CLG圧力調整装置を備えていてもよい。
【0055】
図4は、本実施形態におけるBOG再液化装置100の別の構成の一例を示す概略図である。上述の通り、この例では、LNG貯蔵タンク1よりも上部にBOG貯蔵タンク13を設けてその中に熱交換器2を設置する。
【0056】
なお、BOG貯蔵タンク13を設ける場合、LNG貯蔵タンク1の気相部分とBOG貯蔵タンク13とを接続し、LNG貯蔵タンク1の上部空間のBOGをBOG貯蔵タンク13へと導入するBOG導入配管14を設ける必要がある。
【0057】
図5は、本実施形態におけるBOG再液化装置100の別の構成の一例を示す概略図である。上述の通り、この例では、LNG貯蔵タンク1よりも上部にCLG貯蔵タンク3を設けて、熱交換器2がCLG貯蔵タンク3の液相部分の少なくとも一部にあるように設置する。熱交換の観点から、熱交換器2全体が、CLG貯蔵タンク3の液相部分にあるように設置することが好ましい。
【0058】
このような構成とする場合、CLG貯蔵タンク3内のCLGの量を調整するCLG流量調整弁16を設ける必要がある。なお、
図5においては、CLG流量調整弁16が流量調整装置6に該当する。
【0059】
また、LNG貯蔵タンク1の上部空間のBOGを熱交換器2へと導入するBOG導入配管14およびBOGの導入量を調整するBOG調整弁15も設ける必要がある。BOGは、LNG貯蔵タンク1内の圧力が上昇した場合のみ熱交換器2へと導入される。なお、図示していないが、BOG貯蔵タンクを設けてもよい。
【0060】
図6は、本実施形態におけるLNG貯蔵タンク1の構成の一例を示す概略図である。この例では、LNG貯蔵タンク1内の液相部分と気相部分とを接続する循環ポンプ18をさらに備える。
【0061】
液相部分から循環ポンプ18によりLNGを抜き出し、気相部分へと循環路17により循環させることで、液密度の異なるLNGが同一のLNG貯蔵タンク1に存在した場合に、LNG貯蔵タンク1内で液密度の異なる複数の液体層が形成されることを緩和することができる。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 液化天然ガス貯蔵タンク、2 熱交換器、3 低温液化ガス貯蔵タンク、4 減圧弁、5 加圧器、6 流量調整装置、7 低温液化ガス導入配管、8 低温液化ガス排出配管、9 還流路、10 加温器、11 加圧器、12 加圧器、13 ボイルオフガス貯蔵タンク、14 ボイルオフガス導入配管、15 ボイルオフガス供給弁、16 低温液化ガス流量調整弁、17 循環路、18 循環ポンプ、100 液化天然ガス貯蔵設備のボイルオフガス再液化装置。