(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084352
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】流体輸送用ベンド管
(51)【国際特許分類】
F16L 43/00 20060101AFI20230612BHJP
B65G 53/04 20060101ALI20230612BHJP
F16L 9/00 20060101ALI20230612BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
F16L43/00
B65G53/04 Z
F16L9/00 Z
F16L55/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198480
(22)【出願日】2021-12-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】引田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真治
【テーマコード(参考)】
3F047
3H019
3H025
3H111
【Fターム(参考)】
3F047AA04
3F047BA06
3H019EA01
3H019EA03
3H019EA07
3H019EA11
3H025BA02
3H025BB02
3H111AA01
3H111BA02
3H111BA03
3H111CB13
3H111CB22
3H111DA10
3H111DB11
3H111DB27
(57)【要約】
【課題】特殊な材料等によることなく簡易な構造で局部摩耗を防ぐことができるとともに、輸送速度の低下を抑えることができる流体輸送用ベンド管を提供する。
【解決手段】流体の流れに乗せて粉体を輸送する流体輸送で用いる流体輸送用ベンド管1であって、円弧状に曲がった曲管部13を含むベンド管本体3と、ベンド管本体3の流体流れ下流側に配されるノズル部5とを備え、曲管部13における外周側内壁面25は、管軸方向に沿って円弧状で、且つ管軸方向と直交する平面上で直線状に延在するような形状に形成され、ノズル部5は、流体流れ方向に進むに従って開口断面積が小さくなるような先細流路を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れに乗せて粉体を輸送する流体輸送で用いる流体輸送用ベンド管であって、
円弧状に曲がった曲管部を含むベンド管本体と、
前記ベンド管本体の流体流れ下流側に配されるノズル部と、
を備え、
前記曲管部における外周側内壁面は、管軸方向に沿って円弧状で、且つ管軸方向と直交する平面上で直線状に延在するような形状に形成され、
前記ノズル部は、流体流れ方向に進むに従って開口断面積が小さくなるような先細流路を有する流体輸送用ベンド管。
【請求項2】
前記ベンド管本体における流体流れ下流側のベンド管本体下流側開口と、前記ノズル部における流体流れ上流側のノズル部上流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、前記ノズル部上流側開口が前記ベンド管本体下流側開口を包含するように、前記ノズル部上流側開口の形状及び大きさが設定される請求項1に記載の流体輸送用ベンド管。
【請求項3】
前記ノズル部は、前記ベンド管本体に対し、管軸回りに相対変位させた複数の取付位置で取付可能であり、
前記ベンド管本体における流体流れ下流側のベンド管本体下流側開口と、前記ノズル部における流体流れ上流側のノズル部上流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、前記取付位置の夫々において、前記ノズル部上流側開口が前記ベンド管本体下流側開口を包含するように、前記ノズル部上流側開口の形状及び大きさが設定される請求項1に記載の流体輸送用ベンド管。
【請求項4】
前記ベンド管本体下流側開口と、前記ノズル部における流体流れ下流側のノズル部下流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、前記ベンド管本体下流側開口縁の輪郭に前記ノズル部下流側開口縁の輪郭が内接するように、前記ノズル部下流側開口の形状及び大きさが設定される請求項2又は3に記載の流体輸送用ベンド管。
【請求項5】
前記ベンド管本体は、前記曲管部と前記ノズル部との間に介設される整流管部をさらに含み、
前記整流管部は、管軸方向に直管状に延び、且つ前記ノズル部よりも管軸方向の長さが大きく設定される請求項1~4の何れか一項に記載の流体輸送用ベンド管。
【請求項6】
前記曲管部における外周側管厚が内周側管厚よりも大きく設定される請求項1~5の何れか一項に記載の流体輸送用ベンド管。
【請求項7】
前記曲管部の曲率が流体流れ方向に進むに従って小さくなる請求項1~6の何れか一項に記載の流体輸送用ベンド管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れに乗せて粉体を輸送する流体輸送で用いる流体輸送用ベンド管に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気等の流体の流れに乗せて灰等の粉体を輸送する流体輸送において、直管とベンド管との組み合せ接続によって輸送管路が構成されるものがある。一般的に、直管、及びベンド管は、管軸方向と直交する横断面が円形のものが用いられる。
【0003】
上記のような輸送管路では、直管内を直進する粉体が、ベンド管を通過する際、ベンド管の外周側内壁面に衝突するため、この衝突部分が早期に摩耗する。ベンド管において、特に摩耗が激しいのは、ベンド管の流体流れ上流側に接続された直管の軸線の延長線と、ベンド管の外周側内壁面とが交差する部分であり、当該部分が早期摩耗によって破孔することがある。その理由は、直管内を直進する粉体が、慣性によりそのまま直進しようとしてベンド管の外周側内壁面に衝突するとともに、ベンド管の外周側内壁面が、管軸方向視で外周側に凸の円弧形状であることに起因して、粉体に作用する遠心力の一部が、粉体をベンド管の外周側内壁面の中央部分に寄せるような分力として作用し、当該中央部分に粉体が集中的に衝突して局部摩耗するためである。
【0004】
ベンド管の摩耗対策として、例えば、ベンド管内の粉体が衝突する部分に圧縮ガスを注入するガス注入手段を設けたものがある(特許文献1を参照)。特許文献1によれば、ガス注入手段を設けることにより、注入されたガス層に先ず粉体が衝突するようにして、ベンド管の内面に粉体が直接衝突することを防ぎ、これによって局部摩耗を防ぐようにされている。
【0005】
また、他のベンド管の摩耗対策として、ベンド管の内部にスリーブを設けたものもある(特許文献2を参照)。特許文献2によれば、スリーブは、ベンド管の内面に対応して滑らかに曲がった筒状部材と、筒状部材の内部空間を仕切る仕切板とで構成されている。仕切板は、ベンド管のカーブに対して筒状部材の内部空間を内周側と外周側とに2分割する位置に配設されている。このような構成のスリーブにより、流れる粉体を仕切板によって内周側と外周側とに2分して、衝突する粉体の量を半減することができ、これによって局部摩耗を防ぐようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-286870号公報
【特許文献2】特開2001-56088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流体輸送用ベンド管においては、粉体がベンド管の形状に沿って曲がろうとする際、遠心力の影響により、ベンド管の外周側内壁面に接触しつつ進む粉体が増加するため、抵抗が増して粉体の輸送速度が低下するが、このような輸送速度の低下を抑制することが望まれている。
【0008】
特許文献1のガス注入手段による摩耗対策では、ベンド管とは別にガス注入手段を設ける必要があり、イニシャルコスト及びランニングコストが嵩む。特許文献2のベンド管の内部に仕切板を備えたスリーブを設ける構造の摩耗対策では、ベンド管の内部構造が複雑になり、粉体の流体輸送に支障を来す虞がある。また、特許文献1及び特許文献2における摩耗対策は、何れも粉体の輸送速度の低下抑制まで考慮したものではない。
【0009】
なお、ベンド管の摩耗対策として、耐摩耗性に優れた材料(例えば、クロム鋳鉄)でベンド管を構成したり、ベンド管の外周側を覆うようにチャンネル材を補強材として設けたり、チャンネル材とベント管との間に耐火物を介設したり、ベンド管の内面にセラミックを貼り付けたりして、耐久性を向上させることも考えられる。しかしながら、ベンド管の構成材として耐摩耗性に優れたクロム鋳鉄を採用した場合、破孔時に溶接による補修が難しく、ベンド管の機能を早急に回復させることができない。また、チャンネル材や耐火物等の補強材を用いる手段では、破孔に至る時期をある程度遅らせることができるものの、ベンド管の局部摩耗自体を抑制することができない。さらに、ベンド管の内面にセラミックを貼り付けるものでは、セラミックが特殊な材料であり、製作コストが嵩む。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、特殊な材料等によることなく簡易な構造で局部摩耗を防ぐことができるとともに、輸送速度の低下を抑えることができる流体輸送用ベンド管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る流体輸送用ベンド管の特徴構成は、
流体の流れに乗せて粉体を輸送する流体輸送で用いる流体輸送用ベンド管であって、
円弧状に曲がった曲管部を含むベンド管本体と、
前記ベンド管本体の流体流れ下流側に配されるノズル部と、
を備え、
前記曲管部における外周側内壁面は、管軸方向に沿って円弧状で、且つ管軸方向と直交する平面上で直線状に延在するような形状に形成され、
前記ノズル部は、流体流れ方向に進むに従って開口断面積が小さくなるような先細流路を有することにある。
【0012】
本構成の流体輸送用ベンド管によれば、ベンド管本体の曲管部における外周側内壁面は、管軸方向に沿って円弧状で、且つ管軸方向と直交する平面上で直線状に延在するような形状に形成される。この場合、ベンド管本体において、流体の流れに乗って進む粉体が、曲管部において慣性によりそのまま進もうとして曲管部の外周側内壁面に衝突しつつ曲管部の形状に沿って曲がろうとする際、曲管部の外周側内壁面が、管軸方向と直交する平面上で直線状に延在するような形状、つまり管軸方向視で直線状であることから、従来のように、粉体に作用する遠心力の一部が、粉体を曲管部の外周側内壁面の中央部分に寄せるような分力として作用するようなことがなく、粉体が曲管部の外周側内壁面の全体に分散して衝突することになる。このため、特殊な材料等によることなく簡易な構造で局部摩耗を防ぐことができる。また、ノズル部は、流体流れ方向に進むに従って開口断面積が小さくなるような先細流路を有するので、曲管部で減速した流体及び粉体がノズル部を通過する際に、流体の流れを先細流路で絞ることによって流速を増加させる絞り効果により、ノズル部において流体流れを加速させることができ、輸送速度の低下を抑えることができる。
【0013】
本発明に係る流体輸送用ベンド管において、
前記ベンド管本体における流体流れ下流側のベンド管本体下流側開口と、前記ノズル部における流体流れ上流側のノズル部上流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、前記ノズル部上流側開口が前記ベンド管本体下流側開口を包含するように、前記ノズル部上流側開口の形状及び大きさが設定されることが好ましい。
【0014】
本構成の流体輸送用ベンド管によれば、ベンド管本体下流側開口とノズル部上流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、ノズル部上流側開口がベンド管本体下流側開口を包含するように、ノズル部上流側開口の形状及び大きさが設定される。これにより、ベンド管本体からノズル部へと粉体が流れ込む際に、粉体がノズル部上流側開口縁に衝突することなくノズル部内に粉体が導入されるので、ベンド管本体からノズル部へと粉体がスムーズに流れ込むようにすることができる。
【0015】
本発明に係る流体輸送用ベンド管において、
前記ノズル部は、前記ベンド管本体に対し、管軸回りに相対変位させた複数の取付位置で取付可能であり、
前記ベンド管本体における流体流れ下流側のベンド管本体下流側開口と、前記ノズル部における流体流れ上流側のノズル部上流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、前記取付位置の夫々において、前記ノズル部上流側開口が前記ベンド管本体下流側開口を包含するように、前記ノズル部上流側開口の形状及び大きさが設定されることが好ましい。
【0016】
本構成の流体輸送用ベンド管によれば、ノズル部は、ベンド管本体に対し、管軸回りに相対変位させた複数の取付位置で取付可能である。これにより、ベンド管本体からノズル部へと流れ込む粉体がノズル部の内壁面に衝突することによる摩耗が、特定の部分である程度進行する前に、ノズル部の取付位置を管軸回りに変えることにより、まだ摩耗していない新たな部位で粉体の衝突を受けることができるので、各取付位置において破孔等に至るような損傷を回避することができ、その結果、ノズル部の長寿命化を図ることができる。また、ベンド管本体下流側開口とノズル部上流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、複数の取付位置の夫々において、ノズル部上流側開口がベンド管本体下流側開口を包含するように、ノズル部上流側開口の形状及び大きさが設定される。これにより、複数の取付位置の夫々において、ベンド管本体からノズル部へと粉体が流れ込む際に、粉体がノズル部上流側開口縁に衝突することなくノズル部内に導入されるので、各取付位置においてベンド管本体からノズル部へと粉体がスムーズに流れ込むようにすることができる。
【0017】
本発明に係る流体輸送用ベンド管において、
前記ベンド管本体下流側開口と、前記ノズル部における流体流れ下流側のノズル部下流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、前記ベンド管本体下流側開口縁の輪郭に前記ノズル部下流側開口縁の輪郭が内接するように、前記ノズル部下流側開口の形状及び大きさが設定されることが好ましい。
【0018】
ノズル部において流体を加速させるには、ノズル部上流側開口に対してノズル部下流側開口を小さく設定する必要がある。しかし、ノズル部下流側開口を小さく設定し過ぎた場合、ノズル部下流側開口を通過しようとする粉体のうち、ノズル部下流側開口付近の壁面に衝突する粉体が増えるため、粉体がノズル部下流側開口をスムーズに通過することができない虞がある。これを回避するために、ノズル部下流側開口を大きく設定すれば、粉体がノズル部下流側開口をスムーズに通過することができるものの、ノズル部において流体を加速させる作用が不足する虞がある。そこで、本構成の流体輸送用ベンド管においては、ベンド管本体下流側開口とノズル部下流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、ベンド管本体下流側開口縁の輪郭にノズル部下流側開口縁の輪郭が内接するように、ノズル部下流側開口の形状及び大きさが設定される。これにより、ベンド管本体下流側開口からノズル部上流側開口を経てノズル部下流側開口に向かって直進する殆どの粉体がノズル部下流側開口付近の壁面に衝突することなくノズル部下流側開口を通過することになる。従って、ノズル部において流体を加速させる作用を確保しつつ、粉体がノズル部下流側開口をスムーズに通過するようにすることができる。
【0019】
本発明に係る流体輸送用ベンド管において、
前記ベンド管本体は、前記曲管部と前記ノズル部との間に介設される整流管部をさらに含み、
前記整流管部は、管軸方向に直管状に延び、且つ前記ノズル部よりも管軸方向の長さが大きく設定されることが好ましい。
【0020】
本構成の流体輸送用ベンド管によれば、管軸方向に直管状に延び、且つノズル部よりも管軸方向の長さが大きく設定される整流管部が、曲管部とノズル部との間に介設されるので、曲管部からノズル部に向かって流れる流体を整流管部において整流することができ、ノズル部において流体を偏りなく均一に加速させることに寄与する。その結果、流体輸送速度の低減をより抑制することができる。
【0021】
本発明に係る流体輸送用ベンド管において、
前記曲管部における外周側管厚が内周側管厚よりも大きく設定されることが好ましい。
【0022】
本構成の流体輸送用ベンド管によれば、曲管部における外周側管厚が内周側管厚よりも大きく設定されるので、曲管部の外周側と内周側とでの摩耗による使用の許容限界に至る時間差を小さくすることができ、全体として管寿命を延ばすことができる。
【0023】
本発明に係る流体輸送用ベンド管において、
前記曲管部の曲率が流体流れ方向に進むに従って小さくなることが好ましい。
【0024】
本構成の流体輸送用ベンド管によれば、曲管部の曲率が流体流れ方向に進むに従って小さくなるので、言い換えれば、曲管部の曲率半径が流体流れ方向に進むに従って大きくなるので、曲管部の外周側内壁面に対する粉体の衝突角度が、流体流れ方向に進むに従って小さくなる。これにより、曲管部の外周側内壁面全体の摩耗量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る流体輸送用ベンド管を示す図である。
【
図3】
図3は、ノズル部の管軸方向要部断面図である。
【
図4】
図4は、ベンド管本体及びノズル部の開口の相対関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、木質バイオマス発電施設において、未燃物を含む飛灰を空気輸送により搬送して燃焼炉の燃焼室に吹き込む灰再吹込設備の輸送管路を構成する流体輸送用ベンド管を例に挙げて説明する。ここで、燃焼炉としては、例えば、階段式ストーカ、トラベリングストーカ等のストーカ式燃焼炉や、流動床式燃焼炉などが挙げられる。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「上流」とは「空気流れにおける上流」のことであり、「下流」とは「空気流れにおける下流」のことである。
【0027】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る流体輸送用ベンド管1を示す図である。
図1(a)は側面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA-A矢視端面図であり、
図1(c)は
図1(a)のB-B矢示図である。
図1(a)に示すように、流体輸送用ベンド管1は、ベンド管本体3と、ベンド管本体3の下流側に配されるノズル部5とを備えている。
【0028】
<ベント管本体>
ベンド管本体3は、管軸Oに沿った方向(以下、単に「管軸方向」という。)に比較的小さい長さで延在する直管部11と、円弧状に曲がった曲管部13と、管軸方向に比較的大きい長さで延在する整流管部15とを有し、これら直管部11、曲管部13、及び整流管部15が上流側から下流側に向ってこの記載順に一体的に連設されている。
【0029】
図1(b)に示すように、ベンド管本体3は、曲管部13を基準とした場合の内周側に配されるU字溝状部材21と、外周側に配される背板部材23とにより構成されている。U字溝状部材21は、管軸方向と直交する横断面がU字溝状であり、曲管部13を基準とした場合の内周側が凹円弧状で、内周側から外周側に向けて両側壁部が直線状に延在し、外周側が開口されている。背板部材23は、横断面が横倒しI字状であり、U字溝状部材の開口側を塞ぐようにU字溝状部材に溶接等により一体的に接合されている。ベンド管本体3の横断面の開口は、直管部11、曲管部13、及び整流管部15の何れにおいても、同じ形状及び大きさである。なお、背板部材23の材質は、例えば、炭素鋼、合金鋼等であることが好ましい。ベンド管本体3に想定外の破孔が生じたとしても、溶接等により速やかに補修することができる。
【0030】
<曲管部>
図1(a)に示すように、曲管部13は、所定の曲げ角度θ(本例ではθ=45°)で円弧状に湾曲した形状に形成されている。
図1(a)及び(b)に示すように、曲管部13は、U字溝状部材21と背板部材23との組み合わせ接合により、その外周側内壁面25が、管軸方向に沿って円弧状(
図1(a)参照)で、且つ管軸方向と直交する平面上で直線状(
図1(b)参照)に延在するような形状に形成されている。ここで、
図1(b)に示すように、背板部材23の厚みは、U字溝状部材21の厚みよりも大きく設定されている。これにより、曲管部13における外周側管厚が内周側管厚よりも大きく設定されることになる。こうして、曲管部13の外周側と内周側とでの摩耗による使用の許容限界に至る時間差を小さくすることができ、全体として管寿命を延ばすことができる。
【0031】
<整流管部>
図1(a)に示すように、整流管部15は、管軸方向に直管状に延び、且つノズル部5よりも管軸方向の長さが大きく設定されている。整流管部15は、曲管部13からノズル部5に向かって流れる空気及び飛灰を整流することができ、ノズル部5において空気及び飛灰を偏りなく均一に加速させることに寄与する。
【0032】
ベンド管本体3は、直管部11の上流側端部、及び整流管部15の下流側端部の夫々に、管軸方向に直交して張り出すように一体的に設けられる円板状のフランジ30をさらに備えている。
図1(c)に示すように、フランジ30には、複数(本例では8個)のボルト挿通孔33が、管軸Oの回りに等角度毎(本例では45°毎)に配されるように穿設されている。
【0033】
<ノズル部>
図2は、
図1(a)のC部拡大断面図である。ノズル部5は、上流側から下流側に向って順に配される大径円管部51、截頭円錐台円管部53、及び小径円管部55が一体的に連設されてなるノズル部本体50を備えている。ノズル部本体50において、大径円管部51は、横断面の開口が円形であり、内径及び外径、並びに開口面積が管軸方向に一定であるような、管軸方向に短い比較的大径の円管状に形成されている。小径円管部55は、横断面の開口が円形であり、内径及び外径、並びに開口面積が管軸方向に一定であるような、大径円管部51よりも内径及び外径が共に小さい管軸方向に短い円管状に形成されている。截頭円錐台円管部53は、横断面の開口が円形であり、空気流れ方向に進むに従って内径及び外径が共に小さくなるような、外観視截頭円錐台状に形成されている。ノズル部5においては、空気流れ方向に進むに従って開口断面積が小さくなるような先細流路60が截頭円錐台円管部53によって形成されている。
【0034】
ノズル部5において、ノズル部本体50における上流側及び下流側の夫々の端部には、管軸方向に直交して張り出すように円板状のフランジ61,63が一体的に設けられている。
【0035】
図3は、ノズル部5の管軸方向要部断面図である。
図3(a)は、
図2のE-E矢視要部断面図である。
図3(b)は、
図2のF-F矢視要部断面図である。なお、
図3(a)及び(b)において、ボルト及びナットは図示省略している。
図3(a)に示すように、ノズル部本体50の上流側に設けられたフランジ61には、ベンド管本体3の下流側端部に配設されたフランジ30に穿設された複数のボルト挿通孔33(
図1(c)参照)と対応するように、複数(本例では8個)のボルト挿通孔65が、管軸Oの回りに等角度毎(本例では45°毎)に配されるように穿設されている。こうして、ノズル部5は、ベンド管本体3に対し、管軸Oの回りに45°の倍数の角度で相対変位させることにより、最大8つの取付位置で取付可能とされている。また、
図3(b)に示すように、ノズル部本体50の下流側に設けられたフランジ63にも、複数(本例では8個)のボルト挿通孔67が、管軸Oの回りに等角度毎(本例では45°毎)に配されるように穿設されている。
【0036】
図4は、ベンド管本体3及びノズル部5の開口の相対関係を示す図である。
図4(a)は、ベンド管本体3の下流側開口縁の輪郭71と、ノズル部5の上流側開口縁の輪郭73とを管軸方向と直交する同一平面に投影した状態を示す図である。
図4(b)は、ベンド管本体3の下流側開口縁の輪郭71とノズル部5の下流側開口縁の輪郭75とを管軸方向と直交する同一平面に投影した状態を示す図である。
【0037】
図4(a)に示すように、ノズル部5の上流側開口縁、つまり大径円管部51の上流側開口51a(
図3(a)参照)の縁の輪郭73は、ベンド管本体3の下流側開口縁、つまり整流管部15の下流側開口15a(
図3(a)参照)の縁の輪郭71を、ベンド管本体3に対しノズル部5が管軸Oの回りに回転するように相対変位した場合でも、常に包含することができる大きさの円形に形成されている。これにより、ベンド管本体3に対するノズル部5の上記8つの取付位置の夫々において、大径円管部51の開口(ノズル部5の上流側開口)が、整流管部15の下流側開口(ベンド管本体3の下流側開口)を包含することができる。
【0038】
図4(b)に示すように、ノズル部5の下流側開口縁、つまり小径円管部55の開口55a(
図3(b)参照)の縁の輪郭75は、整流管部15の下流側開口縁(ベンド管本体3の下流側開口縁)の輪郭71と内接する内接円と略同じ直径の円形に形成されている。
【0039】
以上に述べたように構成される流体輸送用ベンド管1において、
図1(a)に示すように、当該流体輸送用ベンド管1の上流側には、フランジ30にボルト等の締結具によって締結された上流側直管81が接続されるとともに、当該流体輸送用ベンド管1の下流側には、フランジ30にボルト等の締結具によって締結された下流側直管83が接続されている。上流側直管81、流体輸送用ベンド管1、及び下流側直管83により、灰再吹込設備の輸送管路100の一部が構成されている。輸送管路100には、輸送用流体としての空気が所定の流速(例えば、20~25m/s)で流れており、この空気の流れに乗せて被搬送物粉体としての飛灰を搬送し、図示されない燃焼炉の燃焼室に吹き込むようにされている。
【0040】
上流側直管81において、空気の流れに乗って直進する飛灰が、ベンド管本体3における直管部11を経て曲管部13を通過する際、曲管部13において慣性によりそのまま直進しようとして外周側内壁面25に衝突しつつ曲管部13の形状に沿って曲がろうとする際、外周側内壁面25が、管軸方向と直交する平面上で直線状に延在するような形状、つまり管軸方向視で直線状であることから、管軸方向視で外周側内壁面が外周側に凸の円弧形状である従来のベンド管のように、粉体に作用する遠心力の一部が、粉体を外周側内壁面25の中央部分に寄せるような分力として作用するようなことがなく、粉体が外周側内壁面25の全体に分散して衝突することになる。また、外周側内壁面25に対する面積あたりの飛灰通過量が従来よりも大幅に少なくなる。このため、特殊な材料等によることなく簡易な構造で局部摩耗を防ぐことができる。また、
図2に示すように、ノズル部5には、截頭円錐台円管部53によって先細流路60が形成されているので、曲管部13で減速した空気及び飛灰がノズル部5を通過する際に、空気の流れを先細流路60で絞ることによって流速を増加させる絞り効果により、ノズル部5において空気流れを加速させることができ、輸送速度の低下を抑えることができる。
【0041】
図4(a)に示すように、大径円管部51の上流側開口縁の輪郭73が整流管部15の下流側開口縁の輪郭71を包含するように、大径円管部51の開口51a(
図3(a)参照)の形状及び大きさが設定されている。これにより、ベンド管本体3からノズル部5へと粉体が流れ込む際に、粉体がノズル部5の上流側開口縁に衝突することなくノズル部5内に粉体が導入されるので、ベンド管本体3からノズル部5へと粉体がスムーズに流れ込むようにすることができる。
【0042】
図2に示すように、ベンド管本体3とノズル部5とにおいて、フランジ61に設けられたボルト挿通孔65を通してフランジ30を貫通するボルト85の差込・抜出操作と、ボルト85に対するナット87の締付・締付解除操作と、ノズル部5の管軸回りに所定角度(例えば90°)で相対変位させる操作とにより、ベンド管本体3に対するノズル部5の取付位置を複数回(例えば、4回)変更することができる。これにより、ベンド管本体3からノズル部5へと流れ込む飛灰がノズル部5の内壁面に衝突することによる摩耗が、特定の部分である程度進行する前に、ノズル部5の取付位置を管軸回りに変えることにより、まだ摩耗していない新たな部位で粉体の衝突を受けることができるので、破孔等に至るような損傷を回避することができ、その結果、ノズル部5の長寿命化を図ることができる。また、ベンド管本体3に対しノズル部5が管軸回りに回転するように相対変位した場合でも、各取付位置において、
図4(a)に示すように、大径円管部51の上流側開口縁の輪郭73が整流管部15の下流側開口縁の輪郭71を包含するように、ノズル部5の上流側開口の形状及び大きさが設定されている。これにより、各取付位置において、ベンド管本体3からノズル部5へと飛灰が流れ込む際に、飛灰がノズル部5の上流側開口縁に衝突することなくノズル部5内に導入されるので、各取付位置においてベンド管本体3からノズル部5へと飛灰がスムーズに流れ込むようにすることができる。
【0043】
図4(b)に示すように、ノズル部5の下流側開口縁、つまり小径円管部55における開口55a(
図3(b)参照)の縁の輪郭75は、整流管部15の下流側開口縁(ベンド管本体3の下流側開口縁)の輪郭71と内接する内接円と略同じ直径の円形に形成されている。これにより、ベンド管本体3の下流側開口からノズル部5の上流側開口を経てノズル部5の下流側開口に向かって直進する殆どの飛灰がノズル部5の下流側開口付近の壁面に衝突することなくノズル部5の下流側開口を通過することになる。従って、ノズル部5において空気を加速させる作用を確保しつつ、飛灰がノズル部5の下流側開口をスムーズに通過するようにすることができる。
【0044】
流体輸送用ベンド管1においては、ベンド管本体3に対するノズル部5の取り付け、取り外しがボルト85等の着脱により容易に行えるようになっている。これにより、ノズル部5が劣化した際の取り替え作業を容易に行うことができる。
【0045】
以上、本発明の流体輸送用ベンド管について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【0046】
(別実施形態1)
上記実施形態では、曲管部13の曲げ角度(θ)が45°である例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、30°、60°、90°等であってよく、30°~90°の範囲で曲げ角度を任意に設定することができる。
【0047】
(別実施形態2)
上記実施形態では、曲管部13の全体を曲げ角度が45°で湾曲させて一定の曲率に設定した例を示したが、これに限定されるものではなく、曲管部13の曲率が空気流れ方向に進むに従って小さくなる、言い換えれば曲管部13の曲率半径が空気流れ方向に進むに従って大きくなるようにしてもよい。こうすることにより、曲管部13の外周側内壁面25に対する粉体の衝突角度が、空気流れ方向に進むに従って小さくなるため、曲管部13の外周側内壁面25の全体の摩耗量を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の流体輸送用ベンド管は、流体の流れに乗せて粉体を輸送する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 流体輸送用ベンド管
3 ベンド管本体
5 ノズル部
13 曲管部
15 整流管部
25 外周側内壁面
60 先細流路
O 管軸
【手続補正書】
【提出日】2022-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れに乗せて粉体を輸送する流体輸送で用いる流体輸送用ベンド管であって、
円弧状に曲がった曲管部を含むベンド管本体と、
前記ベンド管本体の流体流れ下流側に配されるノズル部と、
を備え、
前記曲管部における外周側内壁面は、管軸方向に沿って円弧状で、且つ管軸方向と直交する平面上で直線状に延在するような形状に形成され、
前記ノズル部は、流体流れ方向に進むに従って開口断面積が小さくなるような先細流路を有し、
前記ベンド管本体における流体流れ下流側のベンド管本体下流側開口と、前記ノズル部における流体流れ上流側のノズル部上流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、前記ノズル部上流側開口が前記ベンド管本体下流側開口を包含するように、前記ノズル部上流側開口の形状及び大きさが設定される流体輸送用ベンド管。
【請求項2】
流体の流れに乗せて粉体を輸送する流体輸送で用いる流体輸送用ベンド管であって、
円弧状に曲がった曲管部を含むベンド管本体と、
前記ベンド管本体の流体流れ下流側に配されるノズル部と、
を備え、
前記曲管部における外周側内壁面は、管軸方向に沿って円弧状で、且つ管軸方向と直交する平面上で直線状に延在するような形状に形成され、
前記ノズル部は、流体流れ方向に進むに従って開口断面積が小さくなるような先細流路を有し、
前記ノズル部は、前記ベンド管本体に対し、管軸回りに相対変位させた複数の取付位置で取付可能であり、
前記ベンド管本体における流体流れ下流側のベンド管本体下流側開口と、前記ノズル部における流体流れ上流側のノズル部上流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、前記取付位置の夫々において、前記ノズル部上流側開口が前記ベンド管本体下流側開口を包含するように、前記ノズル部上流側開口の形状及び大きさが設定される流体輸送用ベンド管。
【請求項3】
前記ベンド管本体下流側開口と、前記ノズル部における流体流れ下流側のノズル部下流側開口とを、管軸方向と直交する同一平面に投影した場合に、前記ベンド管本体下流側開口縁の輪郭に前記ノズル部下流側開口縁の輪郭が内接するように、前記ノズル部下流側開口の形状及び大きさが設定される請求項1又は2に記載の流体輸送用ベンド管。
【請求項4】
前記ベンド管本体は、前記曲管部と前記ノズル部との間に介設される整流管部をさらに含み、
前記整流管部は、管軸方向に直管状に延び、且つ前記ノズル部よりも管軸方向の長さが大きく設定される請求項1~3の何れか一項に記載の流体輸送用ベンド管。
【請求項5】
前記曲管部における外周側管厚が内周側管厚よりも大きく設定される請求項1~4の何れか一項に記載の流体輸送用ベンド管。
【請求項6】
前記曲管部の曲率が流体流れ方向に進むに従って小さくなる請求項1~5の何れか一項に記載の流体輸送用ベンド管。