(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008436
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】合金粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/10 20060101AFI20230112BHJP
B22F 9/02 20060101ALN20230112BHJP
C22C 45/02 20060101ALN20230112BHJP
【FI】
B22F9/10
B22F9/02 B
C22C45/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111996
(22)【出願日】2021-07-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成事業「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」、研究課題「次世代自動車用高効率リアクトルの開発」成果に係る特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】今野 陽介
(72)【発明者】
【氏名】浦田 顕理
(72)【発明者】
【氏名】久野 雅人
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB05
4K017BB13
4K017BB14
4K017CA01
4K017CA07
4K017DA02
4K017DA05
4K017ED06
4K017FA01
4K017FA24
(57)【要約】
【課題】質的なバラつきを抑えることのできる新たな合金粉末の製造方法を提供すること。
【解決手段】基部11上にノズル13から冷却液を高圧で供給して矢印A方向に高速で流れる冷却液からなる高速流体で、所定厚みPTを有する液膜20を形成する。この際、液膜20には矢印Bに沿った方向(即ち、液膜20の厚み方向)に沿った所定加速度がかかるようにする。次いで、このようにして形成した液膜20に対して、所定厚みPT以下のサイズに分断させることなく、ある程度の塊のまま合金溶湯25を供給する。このようにある程度の塊のまま合金溶湯25を液膜20に供給すると、高速流体からなる液膜20により合金溶湯25が所定厚みPT以下のサイズに分断され合金粉末が形成され、それと同時に、合金粉末は液膜20内にて冷却され続ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液からなる高速流体で、0.1mm以上の所定厚みを有する液膜であって厚み方向に沿った2.0×104G以上の所定加速度がかかる液膜を形成し、
前記所定厚み以下のサイズに分断させることなく前記液膜に対して合金溶湯を供給し、
前記高速流体により前記合金溶湯を前記所定厚み以下のサイズに分断して合金粉末を形成すると共に、前記所定加速度を利用して前記合金粉末を前記液膜内において前記高速流体に接触させ続けて冷却する
合金粉末の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の合金粉末の製造方法であって、
前記液膜は、ノズルから冷却液をドラム内壁上に供給し続けることで形成し、
前記所定加速度は、ドラム内壁に向かう遠心加速度である
合金粉末の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の合金粉末の製造方法であって、
前記ノズルから供給される前記冷却液の初速は80m/s以上であり、
前記所定加速度は、1.0×107G以下である
合金粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の合金粉末の製造方法であって、
前記冷却液の初速は、100m/s以上である
合金粉末の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の合金粉末の製造方法であって、
前記所定加速度は、3.0×104G以上である
合金粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれかに記載の合金粉末の製造方法であって、
前記所定厚みは、0.8mm以上である
合金粉末の製造方法。
【請求項7】
請求項2から請求項6までのいずれかに記載の合金粉末の製造方法であって、
前記ドラムの内径は、10mm以上100mm以下である
合金粉末の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の合金粉末の製造方法であって、
前記ドラムの内径は、20mm以上60mm以下である
合金粉末の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の合金粉末の製造方法であって、
前記高速流体の供給速度は、前記合金溶湯の供給速度の15倍以上である
合金粉末の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載の合金粉末の製造方法であって、
100ppm以上の酸化雰囲気において、前記合金溶湯を前記液膜に対して供給する
合金粉末の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかに記載の合金粉末の製造方法であって、
前記液膜に対して10°以上90°以下の角度をなすように、前記合金溶湯を供給する
合金粉末の製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれかに記載の合金粉末の製造方法であって、
前記合金溶湯は、前記液膜上における直径15mm以下の所定領域のみに供給される
合金粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、合金粉末の製造方法としては、水アトマイズ法やガスアトマイズ法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水アトマイズ法やガスアトマイズ法によって得られる合金粉末は、質的にバラつきのあることが多い。
【0005】
そこで、本発明は、質的なバラつきを抑えることのできる新たな合金粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の合金粉末の製造方法として、
冷却液からなる高速流体で、0.1mm以上の所定厚みを有する液膜であって厚み方向に沿った2.0×104G以上の所定加速度がかかる液膜を形成し、
前記所定厚み以下のサイズに分断させることなく前記液膜に対して合金溶湯を供給し、
前記高速流体により前記合金溶湯を前記所定厚み以下のサイズに分断して合金粉末を形成すると共に、前記所定加速度を利用して前記合金粉末を前記液膜内において前記高速流体に接触させ続けて冷却する
合金粉末の製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、第2の合金粉末の製造方法として、第1の合金粉末の製造方法であって、
前記液膜は、ノズルから冷却液をドラム内壁上に供給し続けることで形成し、
前記所定加速度は、ドラム内壁に向かう遠心加速度である
合金粉末の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、第3の合金粉末の製造方法として、第2の合金粉末の製造方法であって、
前記ノズルから供給される前記冷却液の初速は80m/s以上であり、
前記所定加速度は、1.0×107G以下である
合金粉末の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、第4の合金粉末の製造方法として、第3の合金粉末の製造方法であって、
前記冷却液の初速は、100m/s以上である
合金粉末の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、第5の合金粉末の製造方法として、第3又は第4の合金粉末の製造方法であって、
前記所定加速度は、3.0×104G以上である
合金粉末の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、第6の合金粉末の製造方法として、第3から第5のいずれかの合金粉末の製造方法であって、
前記所定厚みは、0.8mm以上である
合金粉末の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、第7の合金粉末の製造方法として、第2から第6のいずれかの合金粉末の製造方法であって、
前記ドラムの内径は、10mm以上100mm以下である
合金粉末の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、第8の合金粉末の製造方法として、第7の合金粉末の製造方法であって、
前記ドラムの内径は、20mm以上60mm以下である
合金粉末の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、第9の合金粉末の製造方法として、第1から第8のいずれかの合金粉末の製造方法であって、
前記高速流体の供給速度は、前記合金溶湯の供給速度の15倍以上である
合金粉末の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、第10の合金粉末の製造方法として、第1から第9のいずれかの合金粉末の製造方法であって、
100ppm以上の酸化雰囲気において、前記合金溶湯を前記液膜に対して供給する
合金粉末の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、第11の合金粉末の製造方法として、第1から第10のいずれかの合金粉末の製造方法であって、
前記液膜に対して10°以上90°以下の角度をなすように、前記合金溶湯を供給する
合金粉末の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、第12の合金粉末の製造方法として、第1から第11のいずれかの合金粉末の製造方法であって、
前記合金溶湯は、前記液膜上における直径15mm以下の所定領域のみに供給される
合金粉末の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
従来の急冷タイプのアトマイズ法では、合金溶湯をガスや水などで分断して粉末化した後に冷却水などの冷却液にて急冷していたが、分断された粉末粒の大きさによる冷却速度の違いや粉末粒ごとの落下点や落下速度が異なることから、粉末粒間で冷却液に達するまでに空気中で冷やされる時間に差が生じ、質のバラつきが生じていた。
これに対して、本発明では、合金溶湯を事前に分断することなく液膜に供給し、高速流体により合金溶湯を分断して合金粉末を形成すると共に液膜にて冷却することとしている。即ち、本発明では、溶湯合金の分断と冷却を実質的に同時に行うこととし、粉末粒間で冷却の程度に差が生じることを抑制している。このため、本発明によれば、粉末粒の均質化を実現することができる。
【0019】
加えて、液膜にて分断された粉末粒が適切に冷却されないと、凝固が完了する前に液膜の底を構成する部材に衝突し、それによって粉末粒が異形状になる。これを避けるため、液膜の厚み方向における所定加速度を2.0×104G以上とし且つ液膜の所定厚みを0.1mm以上とすることで適切な冷却能力を確保し、それによって、液膜の底を構成する部材に達する前に粉末粒を凝固させることとした。これにより、形状面においてもある程度の均一な粉末粒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態による合金粉末の製造方法を説明するために用いられる図である。
【
図2】本発明の実施の形態による合金粉末製造装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態による合金粉末の製造方法は、概略、合金溶湯を高速流体の液膜により分断して合金粉末を形成すると共に液膜にて冷却する。
【0022】
図1に示されるように、本実施の形態による合金粉末製造装置10においては、基部11上にノズル13から冷却液を高圧で供給して矢印A方向に高速で流れる冷却液からなる高速流体で、所定厚みPTを有する液膜20を形成する。この際、液膜20には矢印Bに沿った方向(即ち、液膜20の厚み方向)に沿った所定加速度がかかるようにする。
【0023】
次いで、このようにして形成した液膜20に対して、合金供給部15から、所定厚みPT以下のサイズに分断させることなく、合金溶湯25を供給する。つまり、従来の急冷タイプのアトマイズ法のように、合金溶湯を分断して粉末にしてから液膜で急冷するのではなく、ある程度の塊のまま合金溶湯25を液膜20に供給する。このようにある程度の塊のまま合金溶湯25を液膜20に供給すると、高速流体からなる液膜20により合金溶湯25が所定厚みPT以下のサイズに分断され合金粉末が形成される。合金粉末と液膜20が接触すると、それにより合金粉末が冷却される一方で瞬間的には合金粉末の周囲の冷却液が蒸発する。ここで、本実施の形態の液膜20は所定加速度を有している。そのため、合金粉末の周囲の冷却液が蒸発しても合金粉末は高速流体の冷却液に押し付けられ接触し続けることとなる。このようにして、合金粉末は連続冷却される。
【0024】
従来の急冷タイプのアトマイズ法の場合、設備が大型化しやすく、高圧ガス設備やガス費用などが別途必要となるというコスト面の問題に加え、分断してから液膜に達する前に少なからず冷却されてしまうことから、液膜に達した後の冷却速度が低下してしまうという問題がある。これに対して、本実施の形態では、溶湯合金25の分断と冷却を液膜20内において実質的に同時に行うこととし、粉末粒間で冷却の程度に差が生じることを抑制していることから、粉末粒の均質化を実現することができる。
【0025】
更に、液膜20にて分断された粉末粒が適切に冷却されないと、凝固が完了する前に液膜20の底を構成する基部11に衝突し、それによって粉末粒が異形状になる。これを避けるため、本実施の形態においては、液膜20の厚み方向(矢印Bに沿った方向)における所定加速度を2.0×104G以上とし且つ液膜20の所定厚みPTを0.1mm以上としている。所定加速度が2.0×104G以上であると十分な冷却能力が得られる。また、液膜20の所定厚みPTを0.1mm以上とすることで、分断された溶滴が凝固する前にタンク内壁へ衝突し、異形状粉末が増加することを抑制することができる。このようにして、本実施の形態においては、液膜20の底を構成する基部11に達する前に球状又はほぼ球状の粉末粒を凝固させることとしている。これにより、形状面においてもある程度の均一な粉末粒を得ることができる。このような本実施の形態による合金粉末の製造方法は、特に軟磁性粉末を製造するのに適している。
【0026】
所定加速度を液膜20内に生じさせるために、例えば、
図2に示される合金粉末製造装置10aを用いることとしてもよい。
図2の合金粉末製造装置10aは、円筒形状のドラム11aを備えており、ドラム11aの内壁12aを基部として用いている。液膜20は、ノズル13からドラム11aの内壁12a上に冷却液を供給し続けることで形成される。このようにして液膜20を形成すると、液膜20には、ドラム11aの内壁12aに向かう遠心加速度が生じる。これを上述した所定加速度として利用する。このように、遠心加速度を所定加速度として利用することで、簡易な装置構成で効率的に合金粉末を連続冷却できる。
【0027】
好ましくは、ノズル13から供給される冷却液の初速は、80m/s以上であり、所定加速度は、1.0×107G以下である。冷却液の初速が80m/sに満たないと、合金溶湯を分断する能力が乏しい。その結果、液膜20において分断された溶滴が大きくなり、冷却途中に変形する頻度が増えるため、引き伸ばされた粗大粉末が増加する。即ち、異形状粉末になりやすい。これに対して、冷却液の初速が80m/s以上であると、十分な分断能力が得られるため、ほぼ球状又は球状の粉末を得ることができる。
【0028】
特に、ノズル13から供給される冷却液の初速が100m/s以上であると、粉末の微細化が進み、非晶質性と磁気特性が向上する。従って、冷却液の初速は、100m/s以上であることが更に好ましい。但し、ノズル13から供給される冷却液の初速が800m/sを超えると、粉末自体は微細なものとなる一方、形状的には糸状のものが増加する。従って、冷却液の初速は、800m/s以下であることが更に好ましい。
【0029】
液膜20における所定加速度は、3.0×104G以上であることが更に好ましい。所定加速度を高くすると、冷却能力の向上を図ることができる。高い冷却能力を実現できると、組成的には非晶質形成能の低い合金なども非晶質化することができるという利点がある。
【0030】
好ましくは、所定厚みPTは、0.8mm以上である。液膜20の厚みが0.8mm以上であると、分断された溶滴の液膜20中での分散領域が広がるため、分断された溶滴同士が衝突して異形状となるのを防ぐことができる。更に好ましくは、所定厚みPTは、15mm以下である。所定厚みPTが厚すぎると、水膜表面と水膜内部との水流速度差が大きくなるため、分断された溶滴が冷却されている間に引き伸ばされやすくなり、粉末が異形状化する可能性があるためである。
【0031】
ここで、例えば、
図2の合金粉末製造装置10aのように、ドラム11aを用いる場合、ドラムの内径12aは、10mm以上100mm以下であることが望ましく、20mm以上60mm以下であることが更に望ましい。ドラム11aの内径を小さくすると、遠心加速度が大きくなることから製造される合金粉末の非晶質性が改善される。具体的には、ドラムの内径12aを100mm以下にすることでその効果が大きくなり、Fe量が80at%以上の組成でも非晶質性の良好な粉末を得ることができる。ドラムの内径12aを60mm以下にすると、製造される合金粉末の非晶質性が更に向上する。一方、ドラムの内径12aは小さくするほど、非晶質性の改善効果は大きくなるが、実用上10mm未満では合金溶湯の供給が難しい。従って、ドラムの内径12aは10mm以上が好ましく、液膜20に対して合金溶湯をより安定的に供給するためにはドラムの内径12aは20mm以上が好ましい。
【0032】
冷却液からなる高速流体の供給速度に対して合金溶湯の供給速度を遅くすると、水温の上昇が抑えられる。また、高速流体の乱れがなくなり安定的に合金粉末を製造・冷却できる。このような観点から、高速流体の供給速度は合金溶湯の供給速度の15倍以上であることが好ましく、より安定的に合金粉末を製造するためには40倍以上が好ましい。なお、合金溶湯の速度は自重による自由落下の吐出でも製造上問題ない。
【0033】
液膜20に対して合金溶湯を供給する際の雰囲気には特に限定はない。例えば、合金粉末の球状化に関しては大気中でも問題はない。また、不活性雰囲気であれば合金粉末の球状化に加えて合金粉末の酸化抑制も可能である。しかしながら、生産性や製造コストを考慮すると、液膜20に対する合金溶湯の供給は、100ppm以上の酸化雰囲気中で行うことが好ましい。
【0034】
液膜20に対する合金溶湯の供給の際には、角度をつけた方が安定的に行うことができる。また、分断角度を大きくすることで合金粉末の微細化が可能になる。このような観点から液膜20に対して10°以上90°以下の角度をなすように、合金溶湯を供給することが好ましい。
【0035】
合金溶湯を液膜20に対して供給する際には、液膜20上における直径15mm以下の所定領域のみに供給することが好ましい。このように、所定領域以下に合金溶湯を供給することで、合金粉末の品質の安定化が可能になり、液膜20を形成するために用いられるドラム11aなどの小型化が可能になる。所定領域は、直径10mm以下であることが更に好ましい。
【0036】
(実施例1~19及び比較例1~3)
上述した本発明の実施の形態による合金粉末の製造方法により、下記表1に示されるような複数の条件下で合金粉末の製造し、得られた合金粉末について評価した。
【0037】
【0038】
表1によれば、比較例1のようにドラムの内径が100mmを超えると、粉末粒子の形状は異形状となり、特性も悪かった。また、比較例2や比較例3のように、冷却液の初速が80m/sに満たないと、粉末粒子の形状は異形状となり、特性も悪かった。それに対して、実施例1~実施例19の合金粉末は、粉末粒子の形状が球状又はほぼ球状であり、非晶質性も良好であり、保磁力も小さく、良好な特性を有していた。特に、実施例8~10と比較例2から理解されるように、冷却液の初速が100m/s以上となると、粉末の微細化が更に進み、非晶質性と磁気特性が向上している。
【0039】
(実施例21~28及び比較例21)
冷却液からなる高速流体の供給速度と、その高速流体に対する合金溶湯の供給速度との関係について、下記表2に示される複数の条件にて検証し、得られた合金粉末について評価した。実施例21~28及び比較例21の合金組成は、Fe84.35P8.5B6.5Cu0.65とし、冷却液の初速は200m/sとした。
【0040】
【0041】
表2によれば、冷却液からなる高速流体の供給速度が合金溶湯の供給速度の15倍以上であると、得られた合金粉末の非晶質性が良好となった。更に、高速流体の供給速度が合金溶湯の供給速度の40倍以上であると、粒子形状が良好となった。
【符号の説明】
【0042】
10,10a 合金粉末製造装置
11 基部
11a ドラム
12a 内壁
13 ノズル
15 合金供給部
20 液膜
PT 所定厚み
25 合金溶湯