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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084365
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】測定方法、及び測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
G01N27/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198509
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】平岡 類
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA19
2G060AD06
2G060AF03
2G060AF11
2G060AG08
2G060AG10
2G060FA14
2G060FB01
2G060HC10
(57)【要約】
【課題】誘電体粒子に作用する誘電泳動の挙動が切り替わる周波数である交差周波数を測定しやすくすること。
【解決手段】測定方法は、測定対象の誘電体粒子を含む試料10に対して、電極(電極セット1111)に交流電圧を印加することで誘電体粒子に誘電泳動を作用させ、交流電圧の周波数を変化させながら、試料10及び電極を撮像素子140により撮像し、撮像素子140で撮像された画像に基づいて、電極に交流電圧を印加することで形成される第1電場領域で誘電体粒子が占める面積、及び電極に交流電圧を印加することで形成される第1電場領域よりも電場の弱い第2電場領域で誘電体粒子が占める面積のうちの少なくとも一方の面積を、交流電圧の複数の周波数の各々において算出し、算出された複数の周波数の各々における上記少なくとも一方の面積に基づいて、誘電体粒子における交差周波数を測定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の誘電体粒子を含む試料に対して、電極に交流電圧を印加することで前記誘電体粒子に誘電泳動を作用させ、
前記交流電圧の周波数を変化させながら、前記試料及び前記電極を撮像素子により撮像し、
前記撮像素子で撮像された画像に基づいて、前記電極に前記交流電圧を印加することで形成される第1電場領域で前記誘電体粒子が占める面積、及び前記電極に前記交流電圧を印加することで形成される前記第1電場領域よりも電場の弱い第2電場領域で前記誘電体粒子が占める面積のうちの少なくとも一方の面積を、前記交流電圧の複数の周波数の各々において算出し、
算出された前記複数の周波数の各々における前記少なくとも一方の面積に基づいて、前記誘電体粒子における正の誘電泳動と負の誘電泳動とが切り替わる前記交流電圧の周波数である交差周波数を測定する、
測定方法。
【請求項2】
前記交流電圧の周波数を段階的に変化させる、
請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記交流電圧の周波数を、前記誘電体粒子に正の誘電泳動が作用する周波数から、前記誘電体粒子に負の誘電泳動が作用する周波数へと変化させる、
請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
少なくとも前記第1電場領域で前記誘電体粒子が占める面積を、前記複数の周波数の各々において算出し、
前記交差周波数を測定する際に、前記第1電場領域で前記誘電体粒子が占める面積が極大値となる前記交流電圧の周波数を求め、求めた前記交流電圧の周波数の次の段階の前記交流電圧の周波数を前記交差周波数とする、
請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
少なくとも前記第2電場領域で前記誘電体粒子が占める面積を、前記複数の周波数の各々において算出し、
前記交差周波数を測定する際に、前記第2電場領域で前記誘電体粒子が占める面積が閾値を超える前記交流電圧の周波数を前記交差周波数とする、
請求項3に記載の測定方法。
【請求項6】
前記電極は、前記第1電場領域及び前記第2電場領域の両方を形成可能な電極である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項7】
測定対象の誘電体粒子を含む試料に対して、電極に交流電圧を印加することで前記誘電体粒子に誘電泳動を作用させる印加部を制御することにより、前記交流電圧の周波数を変化させる制御部と、
前記試料及び前記電極を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子で撮像された画像に基づいて、前記電極に前記交流電圧を印加することで形成される第1電場領域で前記誘電体粒子が占める面積、及び前記電極に前記交流電圧を印加することで形成される前記第1電場領域よりも電場の弱い第2電場領域で前記誘電体粒子が占める面積のうちの少なくとも一方の面積を、前記交流電圧の複数の周波数の各々において算出する算出部と、
算出された前記複数の周波数の各々における前記少なくとも一方の面積に基づいて、前記誘電体粒子における正の誘電泳動と負の誘電泳動とが切り替わる前記交流電圧の周波数である交差周波数を測定する測定部と、を備える、
測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘電体粒子に作用する誘電泳動の挙動が切り替わる周波数である交差周波数を測定するための測定方法、及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、誘電体粒子に対する誘電泳動力が斥力から引力に又は引力から斥力に切り替わるクロスオーバー周波数(交差周波数)を解析する解析装置が開示されている。この解析装置は、流路と、一対の電極と、電源部と、撮影部と、解析部と、を備える。流路には、誘電泳動液中に誘電体粒子を含む試料液が流れる。電極は、流路に配置される。電源部は、第1電極に周波数変調された交流電圧を印加する。撮影部は、流路における電極間を流れる誘電体粒子の移動軌跡を撮影する。解析部は、移動軌跡を撮影した画像に基づいて、誘電体粒子のクロスオーバー周波数を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-134020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、交差周波数を測定可能な誘電体粒子が粒子の形状によって限定されてしまう、という課題がある。特に、特許文献1に記載の技術では、可視光波長よりも粒子のサイズ(直径)が小さい誘電体粒子についての交差周波数を測定することが極めて難しい、という課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、誘電体粒子に作用する誘電泳動の挙動が切り替わる周波数である交差周波数を測定しやすい測定方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る測定方法は、測定対象の誘電体粒子を含む試料に対して、電極に交流電圧を印加することで前記誘電体粒子に誘電泳動を作用させる。前記測定方法では、前記交流電圧の周波数を変化させながら、前記試料及び前記電極を撮像素子により撮像する。前記測定方法では、前記撮像素子で撮像された画像に基づいて、前記電極に前記交流電圧を印加することで形成される第1電場領域で前記誘電体粒子が占める面積、及び前記電極に前記交流電圧を印加することで形成される前記第1電場領域よりも電場の弱い第2電場領域で前記誘電体粒子が占める面積のうちの少なくとも一方の面積を、前記交流電圧の複数の周波数の各々において算出する。前記測定方法では、算出された前記複数の周波数の各々における前記少なくとも一方の面積に基づいて、前記誘電体粒子における正の誘電泳動と負の誘電泳動とが切り替わる前記交流電圧の周波数である交差周波数を測定する。
【0007】
本開示の一態様に係る測定システムは、制御部と、撮像素子と、算出部と、測定部と、を備える。前記制御部は、測定対象の誘電体粒子を含む試料に対して、電極に交流電圧を印加することで前記誘電体粒子に誘電泳動を作用させる印加部を制御することにより、前記交流電圧の周波数を変化させる。前記撮像素子は、前記試料及び前記電極を撮像する。前記算出部は、前記撮像素子で撮像された画像に基づいて、前記電極に前記交流電圧を印加することで形成される第1電場領域で前記誘電体粒子が占める面積、及び前記電極に前記交流電圧を印加することで形成される前記第1電場領域よりも電場の弱い第2電場領域で前記誘電体粒子が占める面積のうちの少なくとも一方の面積を、前記交流電圧の複数の周波数の各々において算出する。前記測定部は、算出された前記複数の周波数の各々における前記少なくとも一方の面積に基づいて、前記誘電体粒子における正の誘電泳動と負の誘電泳動とが切り替わる前記交流電圧の周波数である交差周波数を測定する。
【0008】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る測定方法等によれば、誘電体粒子に作用する誘電泳動の挙動が切り替わる周波数である交差周波数を測定しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る測定システムの概略構成を示すブロック図及び断面図である。
図2図2は、実施の形態に係る電極セットの構成を示す平面図である。
図3図3は、実施の形態に係る第1基板上の電界強度の分布を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る測定方法を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態に係る交流電圧の周波数とクラウジウス・モソッティ係数の実部との相関を示すグラフである。
図6図6は、実施の形態に係る第1電場領域及び第2電場領域の各々の粒子面積の算出結果を示す図である。
図7図7は、第1変形例に係る電極セットの構成を示す平面図である。
図8図8は、第2変形例に係る電極セットの構成を示す平面図である。
図9図9は、第3変形例に係る電極セットの構成を示す平面図である。
図10図10は、第3変形例に係る第1基板上の電界強度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
【0013】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0014】
また、以下において、平行及び垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、矩形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。
【0015】
(実施の形態)
実施の形態に係る測定方法及び測定システムは、測定対象の誘電体粒子についての交差周波数を測定するための方法及びシステムである。まず、交差周波数について説明する。実施の形態では、液体中で誘電体粒子が誘電泳動(Dielectrophoresis:DEP)によって移動する。誘電泳動とは、不均一な電場にさらされた誘電体粒子に力が働く現象である。この力は、粒子の帯電を要求しない。誘電体粒子は、印加された電場によって分極することができる粒子である。誘電体粒子は、例えばタンパク質等の分子、磁気粒子、又はポリスチレン粒子等である。
【0016】
ここで、電極に交流電圧を印加することで誘電体粒子を不均一な電場にさらすと、誘電体粒子には、印加する交流電圧の周波数に応じて、正の誘電泳動(pDEP)及び負の誘電泳動(nDEP)のいずれか一方の誘電泳動が作用する。具体的には、誘電体粒子に不均一な交流電界を作用させると、誘電体粒子に誘電泳動力が生じ、粒子表面の分極状態によって、誘電体粒子が電界強度の比較的高い領域(強電場領域)及び電界強度の比較的低い領域(弱電場領域)のいずれか一方に移動するかが決まる。
【0017】
誘電泳動力は、以下の数式で表される。以下の数式において、「FDEP」は誘電泳動力を、「r」は粒子の半径を、「Erms」は実効電界強度を、「Re[FCM]はクラウジウス・モソッティ係数の実部(Real-part of Clausius-Mossotti factor)」を表している。
【0018】
【数1】
【0019】
クラウジウス・モソッティ係数の実部は、溶媒中の粒子の分極状態を表すパラメータであり、電極に印加する交流電圧の周波数を変化させることで、当該パラメータの正負を変化させることができる。そして、誘電体粒子に作用する誘電泳動が正の誘電泳動及び負の誘電泳動の一方から他方へと切り替わる周波数、つまり誘電体粒子に作用する誘電泳動の挙動が切り替わる交流電圧の周波数を交差周波数という。この分極状態の違いから生じる交差周波数の差は、例えば細胞の分離等のアプリケーションに応用されており、液体中の粒子の物性として非常に重要である。
【0020】
以下に、誘電体粒子についての交差周波数の測定を実現する測定システム及び測定方法の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
[測定システムの構成]
まず、測定システムの構成について図1を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係る測定システムの概略構成を示すブロック図及び断面図である。図1は、後述する誘電泳動作用器110を紙面と平行な方向に沿って切断した断面図と共に、測定システム100の各構成要素を示すブロック図を示している。なお、各構成要素の配置位置、配置方向、及び姿勢等は、図1に示す配置位置、配置方向、及び姿勢等に限定されない。
【0022】
図1に示すように、測定システム100は、誘電泳動作用器110と、印加部120と、光源130と、撮像素子140と、制御部150と、算出部160と、測定部170と、を備える。なお、誘電泳動作用器110及び印加部120は、いずれも測定システム100の構成要素に含まれていなくてもよい。
【0023】
誘電泳動作用器110は、測定対象の誘電体粒子を含む(言い換えれば、測定対象の誘電体粒子が懸濁された)試料10を収容する容器であり、空間1121を内部に有する。試料10は、当該空間1121に収容される。誘電泳動作用器110は、空間1121内で、誘電体粒子を液体中(つまり試料10の外液中)で誘電泳動により移動させる。
【0024】
ここで、誘電泳動作用器110の内部構成について説明する。図1に示すように、誘電泳動作用器110は、第1基板111と、スペーサ112と、第2基板113と、を備える。
【0025】
第1基板111は、例えばガラス又は樹脂製のシートである。第1基板111は、空間1121の底を規定する上面を有し、当該上面には、印加部120から交流電圧が印加される電極セット1111が設けられている。電極セット1111は、第1基板111上に不均一な電場(電場勾配ともいう)を生成することができる。なお、電極セット1111の詳細については、図2及び図3を用いて後述する。
【0026】
スペーサ112は、第1基板111上に配置される。スペーサ112には、空間1121の形状に対応する貫通孔が形成されている。言い換えると、空間1121は、第1基板111及び第2基板113に挟まれた貫通孔によって形成される。上記したように、空間1121には、誘電体粒子を含む試料10が導入される。スペーサ112は、貫通孔を囲む外壁であり、空間1121を規定する内側面を有する。スペーサ112は、例えば、第1基板111及び第2基板113との密着性が高い樹脂等の材料で構成される。
【0027】
第2基板113は、例えばガラス又は樹脂製の透明なシートであり、スペーサ112上に配置される。例えば、第2基板113としては、ポリカーボネート基板を用いることができる。第2基板113には、空間1121に繋がる供給孔1131及び排出孔1132が板面を貫通するように形成されている。試料10は、供給孔1131を介して空間1121に供給され、排出孔1132を介して空間1121から排出される。なお、第2基板113を備えずに誘電泳動作用器110を構成してもよい。つまり、第2基板113は、誘電泳動作用器110の必須の構成要素ではない。例えば、誘電泳動作用器110が容器として成立するための空間1121は、底面及び内側面をそれぞれ規定する第1基板111及びスペーサ112のみで形成され得る。
【0028】
印加部120は、交流電源であり、第1基板111の電極セット1111に交流電圧を印加する。言い換えれば、印加部120は、試料10に対して、電極(電極セット1111)に交流電圧を印加することで、誘電体粒子に誘電泳動を作用させる。印加部120は、交流電圧を供給できればどのような電源であってもよく、特定の電源に限定されない。また、交流電圧は外部電源から供給されてもよく、この場合、印加部120は、測定システム100に含まれなくてもよい。
【0029】
光源130は、空間1121内の試料10に透過光131を照射する。透過光131は、透明な第2基板113を介して試料10中に照射される。試料10からは、透過光131に応じた検出光132が生じ、当該検出光132が検出されることで、試料10に含まれる誘電体粒子の検出が行われる。光源130としては、公知の技術を特に限定することなく利用することができる。例えば水銀ランプ光源、LED(Light Emitting Diode)光源、半導体レーザ、又はガスレーザ等を光源130として用いることができる。なお、光源130は、測定システム100に含まれなくてもよい。この場合、光源130の代わりに、太陽及び蛍光灯等から照射される外光を利用して誘電体粒子の検出を行うことができる。
【0030】
撮像素子140は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ及びCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等であり、試料10から生じた検出光132を受光することで、画像を生成して出力する。撮像素子140は、例えば、カメラ等に内蔵されて第1基板111の板面に水平に配置され、カメラに含まれるレンズ等の光学素子を介して、電極セット1111に対応する箇所を撮像する。言い換えれば、撮像素子140は、試料10及び電極(電極セット1111)を撮像する。このように、撮像素子140は、誘電泳動作用器110において誘電体粒子を撮影して、後述するように第1電場領域及び第2電場領域の各々において誘電体粒子が占める面積を測定するために用いられる。
【0031】
なお、測定システム100は、撮像素子140の代わりに、フォトディテクタを備えてもよい。この場合、フォトディテクタは、第1基板111上の、誘電泳動によって移動した誘電体粒子が集まる領域から、検出光132を検出すればよい。
【0032】
また、測定システム100は、光源130と誘電泳動作用器110との間、又は誘電泳動作用器110と撮像素子140との間に、光学レンズ又は光学フィルタを備えてもよい。
【0033】
制御部150は、印加部120を制御することにより、電極(電極セット1111)に印加する交流電圧の周波数を変化させる。制御部150による処理については後述する[測定システムを用いた測定方法]にて詳細に説明する。
【0034】
算出部160は、撮像素子140で撮像された画像に基づいて、第1電場領域A(図2参照)で誘電体粒子が占める面積、及び第2電場領域B(図2参照)で誘電体粒子が占める面積のうちの少なくとも一方の面積を、電極(電極セット1111)に印加する交流電圧の複数の周波数の各々において算出する。実施の形態では、算出部160は、第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積、及び第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積の両方を、複数の周波数の各々において算出する。
【0035】
ここで、第1電場領域Aは、電極に交流電圧を印加することで形成される領域であって、比較的電界強度の高い領域である。第2電場領域Bは、電極に交流電圧を印加することで形成される第1電場領域Aよりも電場の弱い、つまり比較的電界強度の低い領域である。各電場領域については後述する[第1基板上の電界強度の分布]にて詳細に説明する。
【0036】
すなわち、撮像素子140で定期的に静止画像を撮像する、又は動画像(アニメーション)を撮像することにより、誘電体粒子を示す画像群が得られる。算出部160は、これら画像群に対して適宜の画像処理を実行することで、各電場領域で誘電体粒子が占める面積を算出することが可能である。実施の形態では、撮像素子140による撮像、及び算出部160による算出は、制御部150が電極セット1111に印加する交流電圧の周波数を変化させながら実行される。したがって、算出部160は、変化した交流電圧の周波数ごと、つまり複数の周波数の各々において、各電場領域で誘電体粒子が占める面積を算出することになる。算出部160による各電場領域で誘電体粒子が占める面積を算出するプロセスについては、後述する[測定システムを用いた測定方法]にて詳細に説明する。
【0037】
測定部170は、算出された複数の周波数の各々における上記少なくとも一方の面積に基づいて、誘電体粒子における正の誘電泳動と負の誘電泳動とが切り替わる交流電圧の周波数である交差周波数を測定する。実施の形態では、測定部170は、算出された複数の周波数の各々における第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積(以下、「第1粒子面積」ともいう)及び第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積(以下、「第2粒子面積」ともいう)の両方に基づいて、交差周波数を測定する。測定部170による交差周波数を測定するプロセスについては、後述する[測定システムを用いた測定方法]にて詳細に説明する。
【0038】
制御部150は、例えばプロセッサ等の回路とメモリ等の記憶装置とを用いて、上記交流電圧の周波数を変化させるためのプログラムが実行されることで実現されるが、専用の回路によって実現されてもよい。また、算出部160は、例えばプロセッサ等の回路とメモリ等の記憶装置とを用いて、上記各電場領域で誘電体粒子が占める面積を算出するためのプログラムが実行されることで実現されるが、専用の回路によって実現されてもよい。また、測定部170は、例えばプロセッサ等の回路とメモリ等の記憶装置とを用いて、上記交差周波数を測定するためのプログラムが実行されることで実現されるが、専用の回路によって実現されてもよい。制御部150、算出部160、及び測定部170は、例えば同一のコンピュータに内蔵されてもよいし、互いに異なるコンピュータに内蔵されてもよい。
【0039】
[電極セットの形状及び配置]
次に、第1基板111上の電極セット1111の形状及び配置について、図2を参照しながら説明する。図2は、実施の形態に係る電極セット1111の構成を示す平面図である。図2では、撮像素子140側から平面視した場合の電極セット1111の構成が示されている。なお、図2では、簡略化のため、電極セット1111の一部分を示す概略構成図が示されている。
【0040】
図2に示すように、電極セット1111は、第1基板111上に配置された第1電極1112と第2電極1113とを有する。第1電極1112及び第2電極1113の各々は、印加部120と電気的に接続されている。
【0041】
第1電極1112は、第1方向(図2では紙面左右方向)に延びる第1基部1112aと、第1方向と交差する第2方向(図2では紙面上下方向)に第1基部1112aから突出する2つの第1凸部1112bと、を備える。2つの第1凸部1112bの間には、第1凹部1112cが形成されている。2つの第1凸部1112bは、第2電極1113(特に、後述する第2凸部1113b)に対向して配置されている。2つの第1凸部1112b及び第1凹部1112cの各々の第1方向の長さ及び第2方向の長さは、例えば、いずれも約5マイクロメートルである。なお、2つの第1凸部1112b及び第1凹部1112cのサイズは、これに限定されない。
【0042】
第2電極1113の形状及びサイズは、第1電極1112の形状及びサイズと実質的に同一である。つまり、第2電極1113も、第1方向(図2では紙面左右方向)に延びる第2基部1113aと、第1方向と交差する第2方向(図2では紙面上下方向)に第2基部1113aから突出する2つの第2凸部1113bと、を備える。2つの第2凸部1113bの間には、第2凹部1113cが形成されている。2つの第2凸部1113bは、第1電極1112(特に、第1凸部1112b)に対向して配置されている。
【0043】
このような第1電極1112及び第2電極1113に交流電圧121及び交流電圧122が印加されることで、第1基板111上に不均一な電場が生成される。第1電極1112に印加される交流電圧121と、第2電極1113に印加される交流電圧122とは、実質的に同一であってもよく、位相差が設けられてもよい。交流電圧121と交流電圧122との位相差としては、例えば180度を用いることができる。
【0044】
なお、電極セット1111の位置は、第1基板111上に限定されない。電極セット1111は、空間1121中の試料10の近傍に配置されればよい。ここで、試料10の近傍とは、電極セット1111に印加された交流電圧によって試料10内に電場を生成することができる範囲を意味する。つまり、電極セット1111は、空間1121内で試料10に直接接していてもよく、空間1121の外側から、試料10を含む領域に電場を形成してもよい。
【0045】
[第1基板上の電界強度の分布]
ここで、第1基板111上に生成される不均一な電場の電界強度分布について、図2及び図3を参照しながら説明する。図3は、実施の形態に係る第1基板111上の電界強度の分布図である。図3では、電界強度の高低を濃淡により表しており、電界強度が高い程白く、電界強度が低い程黒く表されている。
【0046】
図2及び図3に示すように、不均一な電場により、第1基板111上に、電界強度が相対的に高い第1電場領域Aと、電界強度が相対的に低い第2電場領域Bと、が形成される。第1電場領域Aは、第2電場領域Bよりも高い電界強度を有する領域であり、対向する第1凸部1112b及び第2凸部1113bの間の領域である。つまり、実施の形態では、電極(電極セット1111)は、第1電場領域A及び第2電場領域Bの両方を形成可能な電極である。
【0047】
電界強度は、電場を生成する一対の電極の電極間距離に依存する。電界強度は、電極間距離が長いほど低くなり、電極間距離が短いほど高くなる。第1凸部1112bと第2凸部1113bの第1方向における端部同士が対向した位置は、電極セット1111の中で、第1電極1112及び第2電極1113の間の距離が最も短い位置となり、最も電界強度が高くなる。第1電場領域Aは、このような第1電極1112及び第2電極1113の間の距離が最も短い位置を含む所定の範囲の領域である。
【0048】
また、第2電場領域Bは、第1電場領域Aよりも低い電界強度を有する領域であり、対向する第1凸部1112b及び第2凹部1113cの間、又は、対向する第1凹部1112c及び第2凸部1113bの間の領域内に形成される。この領域は、第1電極1112及び第2電極1113の間の距離が最も長い位置であり、特に、第1凹部1112c又は第2凹部1113cに近いほど電界強度が低くなる。第2電場領域Bは、特に電界強度の低い第1凹部1112c及び第2凹部1113cの底を含む領域である。
【0049】
実施の形態では、枠A1は、電極に接するように、つまり第1凸部1112b及び第2凸部1113bの端縁と接するように設定される。枠B1は、第1凹部1112c及び第2凹部1113cの各辺よりも間隔を空けて設定される。この間隔は、例えば誘電体粒子の直径、又は隣り合う第1凸部1112bの間隔の10%の長さのうちの大きい方となるように設定される。このように枠B1を設定することで、正の誘電泳動が作用している誘電体粒子が第2電場領域Bで観測されにくくすることができる。
【0050】
[測定システムを用いた測定方法]
以下、実施の形態に係る測定方法(測定システム100の動作)の一例について、図4を参照して説明する。図4は、実施の形態に係る測定方法を示すフローチャートである。
【0051】
まず、測定方法では、電極(電極セット1111)に交流電圧121,122を印加する前に、交流電圧121,122の周波数の変化による誘電体粒子が占める面積の差分を取得するために、あらかじめ第1粒子面積及び第2粒子面積を算出する。すなわち、印加部120が電極に交流電圧121,122を印加していない状態で、撮像素子140が試料10及び電極を撮像する(S110)。そして、算出部160は、撮像素子140が撮像した画像に基づいて、各電場領域の粒子面積、つまり第1粒子面積及び第2粒子面積を算出する(S120)。
【0052】
算出部160は、例えば画像における輝度差に基づく二値化により、各電場領域に存在する粒子の領域を判定してもよい。また、例えば、算出部160は、例えば誘電体粒子の形状の特徴量を、あらかじめ局所特徴量として取得する、又は機械学習により取得しておき、取得した特徴量に基づくセグメンテーション技術により、各電場領域に存在する粒子の領域を判定してもよい。
【0053】
次に、測定方法では、制御部150は、印加部120を制御することにより、交流電圧121,122を電極(電極セット1111)に印加する(ステップS130)。実施の形態では、制御部150は、交流電圧121,122の周波数を段階的に変化させるように、印加部120を制御する。例えば、制御部150は、まず、交流電圧121,122の周波数が50kHzとなるように、印加部120を制御する。
【0054】
ここで、電極セット1111に印加する交流電圧121,122の周波数を適切に設定することにより、誘電体粒子に正の誘電泳動を作用させることができ、第1電場領域Aに誘電体粒子を集積させることが可能となる。このように誘電体粒子を所定の領域(ここでは、第1電場領域A)に集積させることで、互いに分離した状態では粒子ごとの観測が困難である極めて粒子サイズの小さい誘電体粒子についても、その面積を計測しやすくなる。なお、誘電体粒子を所定の領域に集積させる効率は低くなるが、誘電体粒子に負の誘電泳動を作用させることでも、所定の電場領域(この場合、第2電場領域B)に誘電体粒子を集積させることが可能となる。
【0055】
以下、交流電圧121,122の周波数と、誘電体粒子の挙動との相関について、図5を参照しながら説明する。図5は、実施の形態に係る交流電圧121,122の周波数とクラウジウス・モソッティ係数の実部との相関を示すグラフである。図5に示すグラフにおいて、縦軸はクラウジウス・モソッティ係数の実部を示し、横軸は電極セット1111に印加される交流電圧121,122の周波数を示す。また、図5は、一例として粒子のサイズ(直径)が1000nmのポリスチレン粒子からなる誘電体粒子の周波数特性を示している。
【0056】
クラウジウス・モソッティ係数の実部が正であれば、誘電体粒子には正の誘電泳動が作用し、電界強度のより高い領域に誘電体粒子が移動する。逆に、クラウジウス・モソッティ係数の実部が負であれば、誘電体粒子には負の誘電泳動が作用し、電界強度のより低い領域に誘電体粒子が移動する。
【0057】
図5に示すように、クラウジウス・モソッティ係数の実部は、交流電圧121,122の周波数に依存する。図5に示す例では、交流電圧121,122の周波数が500kHz未満である場合、クラウジウス・モソッティ係数の実部が正となっている。一方、交流電圧121,122の周波数が500kHz以上である場合、クラウジウス・モソッティ係数の実部が負となっている。このため、図5に示す例では、交流電圧121,122の周波数が500kHz未満である場合、誘電体粒子に正の誘電泳動が作用することで、誘電体粒子が第1電場領域Aに集積される。一方、図5に示す例では、交流電圧121,122の周波数が500kHz以上である場合、誘電体粒子に負の誘電泳動が作用することで、誘電体粒子が第2電場領域Bに集積される。
【0058】
図4のフローチャートの説明に戻り、次に、印加部120が電極(電極セット1111)に交流電圧121,122を印加している状態で、撮像素子140が試料10及び電極を撮像する(S140)。次に、算出部160は、撮像素子140が撮像した画像に基づいて、各電場領域の粒子面積、つまり第1粒子面積及び第2粒子面積を算出する(S150)。
【0059】
そして、測定部170は、算出した各電場領域の粒子面積が所定の条件を満たすか否かを判定する(S160)。各電場領域の粒子面積が所定の条件を満たす場合(S160:Yes)、測定部170は、撮像素子140が試料10及び電極(電極セット1111)を撮像した時点で電極に印加されている交流電圧121,122の周波数に基づいて、交差周波数を決定する(S180)。一方、各電場領域の粒子面積が所定の条件を満たしていない場合(S160:No)、測定部170は交差周波数を決定しない。そして、この場合、制御部150は、電極に印加する交流電圧121,122の周波数を変化させる(S170)。その後、各電場領域の粒子面積が所定の条件を満たすまで、ステップS140~S170の処理を繰り返す。
【0060】
実施の形態では、制御部150は、電極(電極セット1111)に印加する交流電圧121,122の周波数を段階的に変化させる。ここで、「周波数を段階的に変化させる」とは、所定の時間幅を有する区間においては交流電圧121,122の周波数を一定に維持し、次の区間では交流電圧121,122の周波数を前の区間とは異なる周波数で一定に維持することをいう。実施の形態では、制御部150は、交流電圧121,122の周波数を50kHzずつ単調増加するように段階的に変化させている。
【0061】
また、実施の形態では、図5に示すように、交流電圧121,122の周波数が低い場合には誘電体粒子に正の誘電泳動が作用し、交流電圧121,122の周波数が高くなると誘電体粒子に負の誘電泳動が作用するようになる。つまり、実施の形態では、交流電圧121,122の周波数を、誘電体粒子に正の誘電泳動が作用する周波数(低周波数)から、誘電体粒子に負の誘電泳動が作用する周波数(高周波数)へと変化させている。
【0062】
以下、所定の条件について図6を参照して説明する。図6は、実施の形態に係る第1電場領域A及び第2電場領域Bの各々の粒子面積の算出結果を示す図である。図6に示すグラフおいて、縦軸は粒子面積をピクセルで示し、横軸は電極セット1111に印加される交流電圧121,122の周波数を示す。また、図6に示すデータS1は、第1粒子面積、つまり第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積を示し、データS2は、第2粒子面積、つまり第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積を示している。具体的には、データS1は、撮像素子140が撮像した画像における1以上の枠A1(図3参照)にて誘電体粒子が存在する画素の総数により表される。また、データS2は、撮像素子140が撮像した画像における1以上の枠B1(図3参照)にて誘電体粒子が存在する画素の総数により表される。
【0063】
図6に示す例では、第1粒子面積は、交流電圧121,122の周波数が300kHzに達するまでは、交流電圧121,122の周波数が高くなるにつれて増大している。一方、第2粒子面積は、交流電圧121,122の周波数が300kHzに達するまでは、交流電圧121,122の周波数が高くなっても殆ど変化していないか、又は僅かに減少している。これらの現象は、誘電体粒子に正の誘電泳動が作用し、誘電体粒子が第1電場領域Aに集積することで生じている。
【0064】
しかしながら、図6に示す例では、第1粒子面積は、交流電圧121,122の周波数が350kHzに達すると、増加から減少へと転じている。つまり、第1粒子面積は、交流電圧121,122の周波数が300kHzである場合に極大値となっている。一方、第2粒子面積は、交流電圧121,122の周波数が350kHzに達すると、増加に転じている。つまり、第2粒子面積は、交流電圧121,122の周波数が350kHzである場合に、閾値(例えば、5000ピクセル)を超えている。これらの現象は、誘電体粒子に作用する誘電泳動が正の誘電泳動から負の誘電泳動へと切り替わり、誘電体粒子が第1電場領域Aから第2電場領域Bへと移動することで生じている。
【0065】
実施の形態では、第1粒子面積が極大値となること、及び第2粒子面積が閾値を超えることの両方を、所定の条件としている。より具体的には、交流電圧121,122の周波数が同じである区間における第1粒子面積の平均値が極大値となること、及び交流電圧121,122の周波数が同じである区間における第2粒子面積の平均値が閾値を超えることの両方を、所定の条件としている。
【0066】
そして、測定部170は、第1粒子面積が極大値となるという所定の条件が満たされると、第1粒子面積が極大値となる交流電圧121,122の周波数の次の区間の周波数を交差周波数として決定する。実施の形態では、第1粒子面積が極大値となる交流電圧121,122の周波数が300kHzであるため、交差周波数は、その次の区間の周波数である350kHzとなる。つまり、測定方法では、少なくとも第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積を、複数の周波数の各々において算出する。そして、測定方法では、交差周波数を測定する際に、第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積が極大値となる交流電圧121,122の周波数を求め、求めた交流電圧121,122の周波数の次の段階の交流電圧121,122の周波数を交差周波数とする。
【0067】
また、測定部170は、第2粒子面積が閾値を超えるという所定の条件が満たされると、第2粒子面積が閾値を超える交流電圧121,122の周波数を交差周波数として決定する。実施の形態では、第2粒子面積が閾値を超える交流電圧121,122の周波数が350kHzであるため、交差周波数は350kHzとなる。つまり、測定方法では、少なくとも第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積を、複数の周波数の各々において算出する。そして、測定方法では、交差周波数を測定する際に、第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積が閾値を超える交流電圧121,122の周波数を交差周波数とする。
【0068】
[効果等]
以上のように、実施の形態に係る測定方法は、測定対象の誘電体粒子を含む試料10に対して、電極(電極セット1111)に交流電圧121,122を印加することで誘電体粒子に誘電泳動を作用させ、交流電圧121,122の周波数を変化させながら、試料10及び電極を撮像素子140により撮像し、撮像素子140で撮像された画像に基づいて、電極に交流電圧121,122を印加することで形成される第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積、及び電極に交流電圧121,122を印加することで形成される第1電場領域Aよりも電場の弱い第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積のうちの少なくとも一方の面積を、交流電圧121,122の複数の周波数の各々において算出し、算出された複数の周波数の各々における上記少なくとも一方の面積に基づいて、誘電体粒子における正の誘電泳動と負の誘電泳動とが切り替わる交流電圧121,122の周波数である交差周波数を測定する。
【0069】
これによれば、誘電体粒子の移動軌跡を追跡する場合と比較して、誘電体粒子の形状によって限定されることなく測定可能であり、例えば可視光波長よりもサイズの小さい誘電体粒子についても交差周波数を測定することが可能である。つまり、これによれば、交差周波数を測定しやすい、という利点がある。
【0070】
また、実施の形態に係る測定方法では、交流電圧121,122の周波数を段階的に変化させる。
【0071】
これによれば、交流電圧121,122の周波数を連続的に変化させる場合と比較して、粒子面積の増減を算出しやすい、という利点がある。
【0072】
また、実施の形態に係る測定方法では、交流電圧121,122の周波数を、誘電体粒子に正の誘電泳動が作用する周波数から、誘電体粒子に負の誘電泳動が作用する周波数へと変化させる。
【0073】
これによれば、交流電圧121,122の周波数を、誘電体粒子に負の誘電泳動が作用する周波数から変化させる場合と比較して、誘電体粒子が負の誘電泳動によって電極表面から斥力を受けることがなく、誘電体粒子を観測しやすい、という利点がある。
【0074】
また、実施の形態に係る測定方法では、少なくとも第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積を、複数の周波数の各々において算出する。そして、測定方法では、交差周波数を測定する際に、第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積が極大値となる交流電圧121,122の周波数を求め、求めた交流電圧121,122の周波数の次の段階の交流電圧121,122の周波数を交差周波数とする。
【0075】
これによれば、第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積の極大値を測定しやすいことから、交差周波数を測定しやすい、という利点がある。
【0076】
また、実施の形態に係る測定方法では、少なくとも第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積を、複数の周波数の各々において算出する。そして、測定方法では、交差周波数を測定する際に、第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積が閾値を超える交流電圧121,122の周波数を交差周波数とする。
【0077】
これによれば、第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積が閾値を超えるタイミングを測定しやすいことから、交差周波数を測定しやすい、という利点がある。
【0078】
また、実施の形態に係る測定方法では、電極(電極セット1111)は、第1電場領域A及び第2電場領域Bの両方を形成可能な電極である。
【0079】
これによれば、第1電場領域A及び第2電場領域Bのいずれか一方のみを形成可能な電極を用いる場合と比較して、交差周波数を測定する精度を向上させやすい、という利点がある。
【0080】
また、実施の形態に係る測定システム100は、制御部150と、撮像素子140と、算出部160と、測定部170と、を備える。制御部150は、測定対象の誘電体粒子を含む試料10に対して、電極(電極セット1111)に交流電圧121,122を印加することで誘電体粒子に誘電泳動を作用させる印加部120を制御することにより、交流電圧121,122の周波数を変化させる。撮像素子140は、試料10及び電極を撮像する。算出部160は、撮像素子140で撮像された画像に基づいて、電極に交流電圧121,122を印加することで形成される第1電場領域Aで誘電体粒子が占める面積、及び電極に交流電圧121,122を印加することで形成される第1電場領域Aよりも電場の弱い第2電場領域Bで誘電体粒子が占める面積のうちの少なくとも一方の面積を、交流電圧121,122の複数の周波数の各々において算出する。測定部170は、算出された複数の周波数の各々における上記少なくとも一方の面積に基づいて、誘電体粒子における正の誘電泳動と負の誘電泳動とが切り替わる交流電圧121,122の周波数である交差周波数を測定する。
【0081】
これによれば、実施の形態に係る測定方法と同様の効果を奏することができる。
【0082】
(変形例)
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る測定システム及び測定方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0083】
例えば、上記実施の形態において、第1基板111上の電極セット1111を図2に例示したが、電極セットの形状及び配置はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、第1基板111上に電極セット2111が設置されてもよい。図7は、第1変形例に係る電極セット2111の構成を示す平面図である。第1変形例に係る電極セット2111では、第1電極1112の第1凸部1112bと、第2電極1113の第2凸部1113bとが第2方向(図7では紙面左右方向)にずれている。ここでは、第1電極1112の第1凸部1112bは、第2電極1113の第2凹部1113cに対向している一方、第2電極1113の第2凸部1113bは、第1電極1112の第1凹部1112cに対向している。このような電極セット2111であっても、交流電圧121,122が印加されることで不均一な電場を生成することができる。
【0084】
また、例えば、上記実施の形態において、電極セットに含まれる電極の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。例えば、図8に示すように、第1基板111上に電極セット3111が設置されてもよい。図8は、第2変形例に係る電極セット3111の構成を示す平面図である。この電極セット3111は、3つ以上の電極を含み、隣り合う電極に印加される交流電圧121,122に位相差が設けられている。電極セット3111は、Castellated電極と呼ばれる場合がある。
【0085】
また、例えば、図9に示すように、第1基板111上に電極セット4111が設置されてもよい。図9は、第3変形例に係る電極セット4111の構成を示す平面図である。この電極セット4111は、Polynomial電極と呼ばれる場合があり、平面視で任意の同一形状(ここでは正方形状)の電極をN個(ここでは、N=4)環状に配置し、かつ、隣り合う電極に印加される交流電圧121,122に位相差が設けられるように構成されている。図9に示す例では、電極セット4111は、それぞれ平面視で正方形状の第1電極4111a、第2電極4111b、第3電極4111c、及び第4電極4111dを有している。この電極セット4111では、図9及び図10に示すように、隣り合う電極の間の領域に第1電場領域Aが形成され、4つの電極に囲まれた中央領域に第2電場領域Bが形成される。図10は、第3変形例に係る第1基板111上の電界強度の分布を示す図である。図10では、電界強度の高低を濃淡により表しており、電界強度が高い程白く、電界強度が低い程黒く表されている。第3変形例に係る電極セット4111を用いる場合、第1電場領域Aのうち実線で囲まれた枠A1を、第1電場領域Aでの観測範囲とし、第2電場領域Bのうち破線で囲まれた枠B1を、第2電場領域Bでの観測範囲とすればよい。
【0086】
上記実施の形態では、電極セット1111は、第1電場領域A及び第2電場領域Bの両方を形成可能な電極であるが、これに限られない。例えば、電極セットは、第1電場領域A及び第2電場領域Bのうちの一方のみを形成可能な電極であってもよい。一例として、電極セットが櫛形電極、又は2個のPolyminal電極で構成されている場合、この電極セットは第1電場領域Aのみを形成可能である。
【0087】
上記実施の形態では、制御部150は、交流電圧121,122の周波数を段階的に変化させているが、交流電圧121,122の周波数を連続的に変化させてもよい。
【0088】
上記実施の形態では、測定部170は、第1粒子面積の増減及び第2粒子面積の増減の両方に基づいて交差周波数を測定しているが、いずれか一方のみに基づいて交差周波数を測定してもよい。
【0089】
上記実施の形態では、測定部170は、交流電圧121,122の周波数を高周波数から低周波数へと変化させる場合でも、交差周波数を測定することは可能である。この場合、第2粒子面積は、交流電圧121,122の周波数が低くなるにつれて増大し、その後減少へと転じる。また、第1粒子面積は、交流電圧121,122の周波数が低くなっても殆ど変化しないか、又は減少し、その後、増加へと転じる。この場合、測定部170は、第2粒子面積が極大値となること、及び第1粒子面積が閾値を超えることの少なくとも一方を、所定の条件とすればよい。
【0090】
上記実施の形態では、測定部170は、第1粒子面積が極大値となる交流電圧121,122の周波数の次の区間の周波数を交差周波数としているが、これに限られない。例えば、誘電体粒子が不均一である場合等では、測定部170は、第1粒子面積及び第2粒子面積の大小関係が反転する区間の周波数を交差周波数としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示は、誘電体粒子に作用する誘電泳動の挙動が切り替わる周波数である交差周波数を測定するための測定方法等として利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 試料
100 測定システム
110 誘電泳動作用器
111 第1基板
112 スペーサ
113 第2基板
120 印加部
121、122 交流電圧
130 光源
131 透過光
132 検出光
140 撮像素子
150 制御部
160 算出部
170 測定部
1111、2111、3111、4111 電極セット
1112 第1電極
1112a 第1基部
1112b 第1凸部
1112c 第1凹部
1113 第2電極
1113a 第2基部
1113b 第2凸部
1113c 第2凹部
1121 空間
1131 供給孔
1132 排出孔
4111a 第1電極
4111b 第2電極
4111c 第3電極
4111d 第4電極
A 第1電場領域
A1 枠
B 第2電場領域
B1 枠
S1、S2 データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10