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特開2023-84372静止誘導機器用コイル、静止誘導機器用コイルの製造方法及び製造装置
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  • 特開-静止誘導機器用コイル、静止誘導機器用コイルの製造方法及び製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084372
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】静止誘導機器用コイル、静止誘導機器用コイルの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20230612BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20230612BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20230612BHJP
   H01F 41/071 20160101ALI20230612BHJP
【FI】
H01F27/28 128
H01F41/04 F
H01F41/04 A
H01F5/00 F
H01F41/071
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198526
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】逵村 祐介
【テーマコード(参考)】
5E002
5E043
5E062
【Fターム(参考)】
5E002AA06
5E043AB01
5E043AB02
5E062EE10
(57)【要約】
【課題】全体としての小型化を図ることができながらも、コイルの巻回作業の作業性を良好とする。
【解決手段】実施形態に係る静止誘導機器用コイルは、導体を、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して巻回して構成されるものであって、前記導体が丸線状をなしている丸線部と、前記導体が丸線を潰した形態の偏平状をなしている偏平部とが混在しており、前記偏平部は、少なくとも鉄心の窓部内に収容される側面部に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して巻回して構成される静止誘導機器用コイルであって、
前記導体が丸線状をなしている丸線部と、前記導体が丸線を潰した形態の偏平状をなしている偏平部とが混在しており、
前記偏平部は、少なくとも鉄心の窓部内に収容される側面部に配置されている静止誘導機器用コイル。
【請求項2】
前記導体の丸線部は、少なくともある層から次の層に向かう段上り部を有する部分に配置されている請求項1記載の静止誘導機器用コイル。
【請求項3】
前記導体の偏平部は、前記丸線部を縦横二方向に潰した形態の平角線状に構成されている請求項1又は2記載の静止誘導機器用コイル。
【請求項4】
導体供給部から供給された導体を、巻枠を有するコイル巻回部において、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して巻回する巻回工程を実行する静止誘導機器用コイルの製造方法であって、
前記導体供給部から供給される丸線状の導体を、必要部分について潰した形態の偏平状導体とし、残りの部分は丸線状のままとして前記コイル巻回部に送り出す導体送出工程を含み、
前記導体送出工程においては、少なくとも鉄心の窓部内に収容される側面部を構成する導体を偏平状導体として送り出す静止誘導機器用コイルの製造方法。
【請求項5】
前記導体送出工程においては、少なくともある層から次の層に向かう段上り部を有する部分の導体を、丸線状のままとして送り出す請求項4記載の静止誘導機器用コイルの製造方法。
【請求項6】
前記導体送出工程においては、偏平状導体を送り出す際には、受け入れた丸線状の導体を縦横二方向に潰すようにして、平角線状に変形させて送り出す請求項4又は5記載の静止誘導機器用コイルの製造方法。
【請求項7】
導体を供給する導体供給部と、
前記導体供給部から供給された導体を、巻枠に対し、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して巻回するコイル巻回部とを備える静止誘導機器用コイルの製造装置であって、
前記導体供給部から供給される丸線状の導体を、潰した形態の偏平状導体とすることが可能な導体変形装置と、
前記導体変形装置を制御して、前記導体を必要部分について偏平状導体とし、残りの部分は丸線状のままとする制御装置とを備え、
前記制御装置は、少なくとも鉄心の窓部内に収容される側面部を構成する導体を偏平状導体とするように前記導体変形装置を制御する静止誘導機器用コイルの製造装置。
【請求項8】
前記制御装置は、少なくともある層から次の層に向かう段上り部を有する部分の導体を、丸線状のままとするように前記導体変形装置を制御する請求項7記載の静止誘導機器用コイルの製造装置。
【請求項9】
前記導体変形装置は、受け入れた丸線状の導体を縦横二方向に潰すようにして、平角線状に変形させて送り出すことが可能に構成されている請求項7又は8記載の静止誘導機器用コイルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導機器用コイル、静止誘導機器用コイルの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高電圧受配電設備用の変圧器に使用されるコイルとしては、断面が平たい四角形状をなす平角線を、全体として角筒状をなすように多層に巻回したものが知られている(例えば特許文献1参照)。この場合、コイルを構成する導体として、平角線を採用したことにより、丸線を用いる場合等と比較して占積率を良好にすることができる。また、特許文献1では、階段状の巻下げ部と、階段状の巻上げ部とを交互に形成するようにした、いわゆる傾斜連続巻線とすることにより、端子間電圧を抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-7852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにコイルの導体として平角線を採用したものでは、密着して巻くことにより占積率を高めることができるが、コイルの巻回作業時に、平角線を一つの方向に曲げるのは容易であるが、それ以外の方向には曲げにくい事情がある。そのため、コーナー部や段上り部等で平角線を無理に曲げようとして、表面の絶縁被覆を傷付けてしまう虞がある。これに対し、コイルの導体に丸線を採用した場合、丸線は様々な方向に曲げることができるので、巻回の作業性は良いが、上記のように占積率に劣り、コイルの小型化には不向きである。
【0005】
そこで、全体としての小型化を図ることができながらも、コイルの巻回作業の作業性を良好とすることが可能な静止誘導機器用コイル、静止誘導機器用コイルの製造方法及び製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、静止誘導機器用コイルに一般に使用される導体である丸線を、加圧して潰すことによって偏平な潰し導体とすることに着目し、丸線を部分的に潰して潰し導体としたものをコイルの巻回に使用することにより、丸線の作業性と、平角線の高占積率とを両立することが可能であることを確認した。
実施形態に係る静止誘導機器用コイルは、導体を、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して巻回して構成されるものであって、前記導体が丸線状をなしている丸線部と、前記導体が丸線を潰した形態の偏平状をなしている偏平部とが混在しており、前記偏平部は、少なくとも鉄心の窓部内に収容される側面部に配置されている。
【0007】
実施形態に係る静止誘導機器用コイルの製造方法は、導体供給部から供給された導体を、巻枠を有するコイル巻回部において、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して巻回する巻回工程を実行する方法であって、前記導体供給部から供給される丸線状の導体を、必要部分について潰した形態の偏平状導体とし、残りの部分は丸線状のままとして前記コイル巻回部に送り出す導体送出工程を含み、前記導体送出工程においては、少なくとも鉄心の窓部内に収容される側面部を構成する導体を偏平状導体として送り出す。
【0008】
実施形態に係る静止誘導機器用コイルの製造装置は、導体を供給する導体供給部と、前記導体供給部から供給された導体を、巻枠に対し、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して巻回するコイル巻回部とを備えるものであって、前記導体供給部から供給される丸線状の導体を、潰した形態の偏平状導体とすることが可能な導体変形装置と、前記導体変形装置を制御して、前記導体を必要部分について偏平状導体とし、残りの部分は丸線状のままとする制御装置とを備え、前記制御装置は、少なくとも鉄心の窓部内に収容される側面部を構成する導体を偏平状導体とするように前記導体変形装置を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態を示すもので、三相変圧器の外観を概略的に示す正面図
図2】1個のコイルの外観を概略的に示す斜視図
図3】コイルの製造装置の全体的な構成を模式的に示す図
図4】導体の丸線部の断面形状を示す図
図5】導体の平角線部の断面形状を示す図
図6】巻枠に対し導体を巻回する作業の途中の様子を概略的に示す断面図
図7】側面部(図6のE部)における巻線の様子を示す断面図
図8】コーナー部(図6のF部)における巻線の様子を示す断面図
図9】段上り部を設ける様子を概略的に示す図
図10】他の実施形態を示すもので、導体の断面形状を左右に並べて示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、静止誘導機器としての三相変圧器に適用した一実施形態について、図1から図9を参照しながら説明する。図1は、三相変圧器1の外観構成を示しており、この三相変圧器1は、上下の継鉄部間に3本の脚部を有する鉄心2と、この鉄心2の各脚部に設けられた3個の本実施形態に係るコイル3とを有している。尚、詳しい図示及び説明は省略するが、コイル3は、内周側の二次コイル及び外周側の一次コイルを備え、全体がエポキシ樹脂等で樹脂モールドされて構成される。
【0011】
ここで、本実施形態に係るコイル3の構成について述べる。このコイル3は、詳しくは後述する導体4を、軸方向に複数ターン例えば13ターン、且つ、内外周方向に複数層例えば十数層をなすように筒状に連続して巻回して構成され、図2に示すように、全体として例えば前後方向にやや長く角部に丸みを帯びた角筒状に構成されている。従って、コイル3は、前面部5、後面部6、左及び右の側面部7及び8、4つの円弧状のコーナー部9を有している。尚、図2では、コイル3の軸方向を上下方向として図示しており、以下、コイル3の向きを言う場合には、図2の上下方向をコイル3の上下方向として説明する。
【0012】
本実施形態では、コイル3を巻回するにあたっては、図7図8に示すように、階段状の巻下げ部と、階段状の巻上げ部とを交互に形成するようにした、周知のいわゆる傾斜連続巻線とされるようになっている。図7図8では、導体4の巻回時のターンの順序を、数字を付して示している。この傾斜連続巻線では、図7図8に一例を示すように、例えば、1層目において、導体4が上端から下に進むように第1ターンから第6ターンまで順に巻回され、第6ターンの次に2層目に段上りして、今度は上に進むように第7ターンから第10ターンまで巻回され、第10ターンの次に3層目に段上りして今度は下に進むように、第11ターンから第13ターンまで巻回される。
【0013】
第13ターンの次に2層目の第7ターンの下に段下りして、第14ターンが巻回され、第14ターンの次に1層目の第6ターンの下に段下りして、第15ターン及び第16ターンが巻回される。第16ターンの次に2層目に段上りして、第17ターンが巻回され、第17ターンの次に3層目に段上りして、第18ターンが巻回され、第18ターンの次に4層目に段上りして、第19ターン及び第20ターンが巻回されるといった順に、導体4の巻回がなされるのである。尚、図示は省略するが、コイル3の端部や導体4同士間等には、必要に応じて絶縁紙等の絶縁物が配置される。
【0014】
このとき、コイル3は、後述するように外形が角部に丸みを帯びた角筒状をなす巻枠を用いて巻回されるのであるが、例えば、巻枠の外面のうち、一つの特定のコーナー部9例えば図6で左手前側のコーナー部9に対応する部分では、導体4は、軸方向に直交する方向に直線的に延びて巻回される。これに対し、前記1つのコーナー部9に対応する部分では、図9に示すように、導体4が、全体で軸方向に1ピッチ分だけずれるように傾斜して巻回される。従って、このコーナー部9に渡り部10が設けられ、これと共に、段上り部11及び段下り部(図示せず)が設けられる。図9に示すように、渡り部10では、導体4はある層では矢印A方向に巻回され、段上り部11で段上りした後の次の層では、傾斜の向きが変わって矢印B方向に巻回される。
【0015】
さて、前記導体4について述べる。この導体4は、例えば銅等の金属材料からなり、その外面に絶縁被覆を施して構成される。このとき、コイル3を構成する導体4は、一本の連続した長尺な線状に構成されるのであるが、図4に示すように、その導体4として、丸線状のままの状態の丸線部としての丸線4Aと、図5に示すように、丸線の断面形状を縦横二方向から潰した形態の偏平矩形状をなす偏平部即ち偏平状導体としての平角線4Bとが混在している。以下、これら導体4の形状を区別する場合には、夫々、丸線4A、平角線4Bと称することとする。
【0016】
具体的には、偏平部としての平角線4Bは、コイル3のうち、少なくとも鉄心2の窓部内に収容される側面部7、8に配置されている。また本実施形態では、コイル3の前面部5及び後面部6についても平角線4Bから構成される。これに対し、本実施形態では、コイル3のうち、4つのコーナー部9については、丸線4Aから構成される。従って、上記した渡り部10、段上り部11及び段下り部については、丸線4Aから構成される。この場合、コイル3のうち平角線4Bから構成される部分については、隙間なくほぼ密に巻回することができて占積率を高めることができる。一方、丸線4Aから構成される部分については、複数方向の曲げ等の加工性が良好となり、巻回作業が容易となる。
【0017】
次に、上記コイル3を製造する場合の、本実施形態に係る製造方法及び製造装置について述べる。図3は、本実施形態に係るコイル3の製造装置21の全体構成を模式的に示している。この製造装置21は、図3で右側に位置して、導体4を供給する導体供給部22を備え、図で左側に位置して、コイル巻回部23を備え、それらをつなぐように、導体4を矢印C方向に送るための搬送路24が設けられている。前記導体供給部22には、前記導体4この場合丸線4Aが巻かれたドラムがセットされる。
【0018】
前記搬送路24には、複数個の送り用ローラ25が設けられていると共に、図示しない搬送機構が設けられている。これにて、導体4は、導体供給部22から引出されて、例えば所定の速度で矢印C方向に搬送され、コイル巻回部23に供給される。前記コイル巻回部23には、導体4を巻くための巻枠26が設けられている。図6に示すように、この巻枠26は、外形が角部に丸みを帯びた角筒状をなし、筒の中心軸Oを水平方向にした状態で、その軸を中心に矢印D方向に回転可能に構成されている。巻枠26の外周面は、コイル3の内周部の形状に対応している。
【0019】
コイル巻回部23においては、搬送路24を通って供給される導体4が、巻枠26の外周の面に対し、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して順に巻回され、もって巻回工程が実行される。この巻回は、図6に示すように、例えばコイル3の前面部5、右手前のコーナー部9、右側面部8、右奥のコーナー部9、後面部6、左奥のコーナー部9、左側面部7、左手前のコーナー部9、前面部5の順に行われる。
【0020】
このとき、左手前のコーナー部9において、導体4の渡り部10、段上り部11及び段下り部が設けられる。また本実施形態では、上記のように、図7図8に示す傾斜連続巻きが行われる。これにより、全体として角部に丸みを帯びた角筒状のコイル3が得られるようになっている。コイル3は、巻回後、巻枠26から取外される。尚、コイル巻回部23におけるコイル3の巻回作業は、自動で行われても良いし、作業者の手作業と機械とが協働で行ういわゆる半自動方式であっても良い。
【0021】
そして、前記搬送路24の途中部位には、導体変形装置としてのフラットマシン29が設けられている。このフラットマシン29は、導体供給部22から供給される丸線4Aを、縦横二方向から加圧することにより、潰した形態の偏平状の平角線4Bとしてコイル巻回部23に向けて送り出すことが可能に構成されている(導体送出工程)。このとき、製造装置21には、コンピュータを含んで構成され予め設定された制御プログラムに従って全体を制御する制御装置30が設けられており、前記フラットマシン29は制御装置30により制御される。
【0022】
これにて、制御装置30は、コイル巻回部23において巻枠26に巻かれる導体4の形状が、コイル3のうち側面部7、8、前面部5、後面部6に配置される部分については、平角線4Bとされ、コイル3のうち4つのコーナー部9に配置される部分ついては、渡り部10、段上り部11、段下り部を含んで、丸線4Aのままとされるようにフラットマシン29を制御する。またこのとき、フラットマシン29の出口部には、送り出された導体4の形状を検知するセンサ31が設けられており、制御装置30は、センサ31の検出信号に基づいてフィードバック制御を行うように構成されている。
【0023】
次に、本実施形態に係るコイル3の製造方法について述べる。上記製造装置21においては、次の工程が実行される。即ち、導体供給部22から導体4が引出され、搬送路24を通してコイル巻回部23に供給され、巻枠26に対し、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して巻回する巻回工程が実行される。この巻回工程は、例えば導体4の先端部が、コイル巻回部23の巻枠26のうち、コイル3の前面部5に対応した部分に仮固定がなされた状態で開始される。導線4は、巻枠26の外面に対し、コイル3の前面部5、右手前のコーナー部9、右側面部8、右奥のコーナー部9、後面部6、左奥のコーナー部9、左側面部7、左手前のコーナー部9、前面部5の順に巻回が行われる。
【0024】
このとき、この巻回工程が実行されると同時に、搬送路24の途中のフラットマシン29において、導体供給部22から供給される丸線4Aを、必要部分について潰した形態の偏平状導体つまり平角線4Bとし、残りの部分は丸線4Aのままとしてコイル巻回部23に向けて送り出す導体送出工程が実行される。この導体送出工程においては、フラットマシン29が制御装置30により制御されることによって、導体4が、コイル3のうち、前面部5、後面部6、左右の側面部7、8に配置される部分については、平角線4Bとされる。また、コイル3のうち4つのコーナー部9に配置される部分ついては、渡り部10、段上り部11、段下り部を含んで、丸線4Aのままとされる。
【0025】
これにより、得られるコイル3は、丸線4Aと平角線4Bとが混在している状態となり、コイル3のうち、少なくとも鉄心2の窓部内に収容される側面部7、8並びに前面部5及び後面部6については、平角線4Bを隙間なくほぼ密に巻回することができ、小型化を図ることができる。これに対し、丸線4Aから構成されるコーナー部9については、導体4に対する複数方向の曲げ等の加工性が良好となり、渡り部10、段上り部11及び段下り部を容易に巻回することができる。この場合、段上り部11を設ける際に、導体4の表面の絶縁被覆を傷付けてしまうといったことを、未然に防止することができる。
【0026】
このように本実施形態のコイル3によれば、次のような作用・効果を得ることができる。即ち、コイル3を構成する導体4は、一部が丸線部としての丸線4Aとされ、他の部分は丸線を潰した形態の偏平状をなしている偏平部としての平角線4Bとされ、それらが連続しながら混在している。平角線4Bからなる部分は、隙間なくほぼ密に巻くことができるので、コイル3のうち少なくとも鉄心2の窓部内に収容される左右の側面部7、8に配置することにより、高占積率とすることができ、コイル3の小型化ひいては変圧器1全体の小型化を図ることができる。
【0027】
一方、コイル3のうち、導体4に対する複数方向の曲げ等が必要となるコーナー部9や段上り部11、段下り部、渡り部10などは、そのまま丸線4Aを採用することにより、作業性の良さを利用することができる。このとき、段上り部11及び段下り部を設ける際の導体4の表面の絶縁被覆を傷付けてしまうといったことを、未然に防止することができる。この結果、本実施形態のコイル3によれば、全体としての小型化を図ることができながらも、コイル3の巻回作業の作業性を良好とすることが可能となるという優れた効果を得ることができる。
【0028】
特に本実施形態では、導体4の偏平部を、丸線4Aを縦横二方向に潰した形態の平角線4Bとして構成した。これにより、潰し方向が例えば縦だけの一方向潰しの場合と比較して、偏平部を、平角線により近い形状の平角線4Bにすることができ、より高い占積率を得ることができ、効果的となる。尚、本実施形態では、コイル3を傾斜連続巻きとしたことにより、端子間電圧を抑えることができるといった利点も得られる。
【0029】
そして、本実施形態に係るコイル3の製造方法及び製造装置21によれば、次の作用、効果を得ることができる。即ち、導体供給部22から供給された導体4を、巻枠26を有するコイル巻回部23において、軸方向に複数ターン、且つ、内外周方向に複数層をなすように筒状に連続して巻回する巻回工程を実行する。その際にフラットマシン29を通すことによって、丸線4Aを、必要部分について潰した形態の平角線4Bとし、残りの部分を丸線4Aのままとしてコイル巻回部23に送り出す導体送出工程が実行される。
【0030】
この導体送出工程においては、フラットマシン29により丸線4Aの導体を変形させるかどうかによって、丸線4A及び平角線4Bの双方を、連続した形態のまま自在に供給できるので、2種類の導体4の形状変更を簡易に安価で行うことができる。従って、コイル3の左右の側面部7、8を構成する部分等に、平角線4Bを自動で供給することができ、コイル3の鉄心2の窓部内に収容される部分をより高い占積率とすることができ、コイル3の小型化ひいては変圧器1全体の小型化を図ることができる。
【0031】
一方、コイル3のうち、導体4に対する複数方向の曲げ等が必要となるコーナー部9や段上り部11、段下り部、渡り部10などには、丸線4Aが供給されるようになるので、作業性を良好とすることができる。このとき、段上り部11及び段下り部を設ける際の導体4の表面の絶縁被覆を傷付けてしまうといったことを、未然に防止することができる。この結果、本実施形態のコイル3の製造方法及び製造装置21によれば、全体としての小型化を図ることができながらも、コイル3の巻回作業の作業性を良好とすることが可能となる等の優れた効果を得ることができる。
【0032】
図10は、他の実施形態を示している。この実施形態が上記一実施形態と異なる点は、コイル3を構成する導体41の形状にある。導体41は、一本の連続した長尺な線状に構成されるのであるが、その導体41として、丸線状のままの状態の丸線部としての丸線41Aと、丸線41Aを縦方向から潰した形態の偏平状をなす偏平状導体41Bとが混在している。偏平状導体41Bは、断面形状が楕円形つまり長円形状となる。この場合も、コイルの左右の側面部等の必要部分を、偏平状導体41Bとすることにより、丸線41Aの場合よりも隙間が小さくより密に巻くことができるので、占積率を高め。コイルの小型化を図ることができる。
【0033】
尚、上記した実施形態では、コイルを角部の丸みを帯びた角筒形状のものとしたが、円筒形状、八角形の筒形状のもの等であっても良い。この場合も、鉄心の窓部内に配置される部分等を部分的に偏平状導体とし、残りの部分を丸線にすることにより、占積率を高めて小型化を図りながら、巻線作業の作業性を良好とすることができる効果を得ることができる。また上記実施形態では、傾斜連続巻を採用するようにしたが、内層から一層ずつ順に巻回する巻き方であっても良い。傾斜連続巻きとする場合の巻き方としても、様々な変更が可能である。
【0034】
その他、コイルの製造装置の全体構成としても、様々な変更が可能であり、また、三相変圧器に限らず、他の静止誘導機器用コイルにも適用することができることは勿論である。以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
図面中、1は変圧器(静止誘導機器)、2は鉄心、3はコイル、4、41は導体、4A、41Aは丸線、4Bは平角線(偏平状導体)、41Bは偏平状導体、5は前面部、6は後面部、7は左側面部、8は右側面部、9はコーナー部、10は渡り部、11は段上り部、21は製造装置、22は導体供給部、23はコイル巻回部、26は巻枠、29はフラットマシン(導体変形装置)、30は制御装置を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10