(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084384
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】溶融ガラス移送装置、ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/44 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
C03B5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198541
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】天山 和幸
(57)【要約】
【課題】移送管の周辺設備に適切な工夫を講じることで、冷却能力を確保しながら、溶融ガラスの流量を効率良く増加させる。
【解決手段】溶融ガラス移送装置3につき、溶融ガラスGmが内部を流通する移送管Pと、移送管Pの外周側に配置されて移送管Pを保持する保持レンガ14と、移送管P及び保持レンガ14が内部に収容されて保持レンガ14との間に空間15が介在されるケーシング16と、を備え、ケーシング16を冷却する冷却装置18を設ける。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスが内部を流通する移送管と、前記移送管の外周側に配置されて前記移送管を保持する保持レンガと、前記移送管及び前記保持レンガが内部に収容されて前記保持レンガとの間に空間が介在されるケーシングと、を備えた溶融ガラス移送装置であって、
前記ケーシングを冷却する冷却装置を設けたことを特徴とする溶融ガラス移送装置。
【請求項2】
前記冷却装置は、前記ケーシングに冷却液を噴射するノズルを有する請求項1に記載の溶融ガラス移送装置。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記ケーシングに噴射された前記冷却液を回収する回収装置を有する請求項2に記載の溶融ガラス移送装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、前記ケーシングに設けられて冷却液が流通する冷却流路と、前記冷却流路に前記冷却液を給排する液給排装置とを有する請求項1~3の何れかに記載の溶融ガラス移送装置。
【請求項5】
前記空間にガスを給排するガス給排装置をさらに備える請求項1~4の何れかに記載の溶融ガラス移送装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の溶融ガラス移送装置によって移送された溶融ガラスからガラス物品を成形する成形装置を備えることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【請求項7】
請求項1~5の何れかに記載の溶融ガラス移送装置によって移送された溶融ガラスからガラス物品を成形する成形工程を備えることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送管及びこれを保持する保持レンガがケーシングの内部に収容される構成を備えた溶融ガラス移送装置、当該移送装置を用いてガラス物品を製造する装置、及び当該移送装置を用いてガラス物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板やガラス管などのガラス物品を製造する際には、溶融ガラス移送装置によって溶融炉から成形装置に溶融ガラスを移送することが行われる。この移送装置における溶融ガラスの移送経路には、移送管が配設される。
【0003】
主たる移送管としては、移送経路の上流側から順に、清澄槽、攪拌槽、冷却パイプなどをそれぞれ構成するものが挙げられる。また、溶融炉と清澄槽との間に介設される上流連結パイプ、清澄槽と攪拌槽との間に介設される中流連結パイプなどをそれぞれ構成する移送管も存在する。
【0004】
特許文献1(同文献の
図4参照)には、これら移送管の周辺設備の具体例が開示されている。この設備は、移送管の外周側を保持レンガ(電鋳レンガ)で取り囲み、この保持レンガの外周側に空間を介してケーシング(拘束手段)を配置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガラス物品製造の分野では、所望の温度や粘度とするために移送管を通じて移送される溶融ガラスを冷却する場合がある。一方で、生産性の向上等を図るために、移送管を通じて移送される溶融ガラスの流量を増加させることが望まれる。例えば、溶融ガラスを冷却するための移送管を長くすれば、必要な冷却能力を確保しながら溶融ガラスの流量を増加させることが可能となるが、移送装置が大型化したり、設備コストが増大したりする。必要な冷却能力を確保しながら溶融ガラスの流量を効率良く増加させる要請に応じるには、移送管の周辺設備に工夫を講じることが有効である。しかしながら、特許文献1に開示された移送管の周辺設備は、保持レンガをケーシングによって確実に拘束して、ガラス物品製造の安定化を図るものであって、溶融ガラスの流量増加に関する要請に応じ得るものではない。
【0007】
以上の観点から、本発明の課題は、移送管の周辺設備に適切な工夫を講じることで、冷却能力を確保しながら、溶融ガラスの流量を効率良く増加させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、溶融ガラスが内部を流通する移送管と、前記移送管の外周側に配置されて前記移送管を保持する保持レンガと、前記移送管及び前記保持レンガが内部に収容されて前記保持レンガとの間に空間が介在されるケーシングと、を備えた溶融ガラス移送装置であって、前記ケーシングを冷却する冷却装置を設けたことに特徴づけられる。
【0009】
このような構成によれば、冷却装置によってケーシングが冷却されることで、保持レンガ及び移送管が冷却され、これにより移送管内の溶融ガラスも冷却される。そのため、溶融ガラスに対する冷却効率が向上して、溶融ガラスを適切な粘度(例えばガラス物品の成形に適した粘度)にするための時間が短縮される。その結果、移送管を通じて移送される溶融ガラスの流量を効率良く増加させることができ、ガラス物品の生産性の向上等が図られる。しかも、ケーシングと保持レンガとの間に介在する空間は、移送管内の溶融ガラスに対する外気温の変化の影響を緩和するための空間として有効利用される。さらに、この空間は、保持レンガ及び移送管をムラなく均一に冷却するための空間としても有効利用される。
【0010】
この構成において、前記冷却装置は、前記ケーシングに冷却液を噴射するノズルを有するものであってもよい。
【0011】
このようにすれば、移送管の周辺設備として既にケーシングを備えている設備に適用可能であるため、設備費の削減が図られる。また、気化熱による冷却効果をも得られ、溶融ガラスに対する冷却効率が十分に高められる。
【0012】
この構成において、前記冷却装置は、前記ケーシングに噴射された前記冷却液を回収する回収装置を有するものであってもよい。
【0013】
このようにすれば、冷却液を循環させて使用できるため、冷却液の使用量を低減して無駄をなくすことができる。
【0014】
以上の構成において、前記冷却装置は、前記ケーシングに設けられて冷却液が流通する冷却流路と、前記冷却流路に前記冷却液を給排する液給排装置とを有するものであってもよい。
【0015】
このようにすれば、ケーシング自体が、冷却液が給排される冷却流路を有するため、溶融ガラスに対する冷却効率をより一層高めて、移送管を通じて移送される溶融ガラスの流量をさらに効率良く増加させることができる。
【0016】
以上の構成において、前記空間にガスを給排するガス給排装置をさらに備えてもよい。
【0017】
このようにすれば、ガス給排装置が空間に給排するガスによっても、保持レンガ及び移送管が冷却されて移送管内の溶融ガラスが冷却される。したがって、ケーシングの冷却との相乗効果によって溶融ガラスに対する冷却効率が大幅に向上する。
【0018】
上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、ガラス物品を製造する製造装置が、既述の溶融ガラス移送装置によって移送された溶融ガラスからガラス物品を成形する成形装置を備えることに特徴づけられる。
【0019】
このような構成によれば、溶融ガラス移送装置によって移送されることで流量が増加した溶融ガラスが製造装置の成形装置に供給され、成形装置によってガラス物品が成形される。これにより、ガラス物品の生産性の向上が図られる。
【0020】
上記課題を解決するために創案された本発明の第三の側面は、ガラス物品を製造する製造方法が、既述の溶融ガラス移送装置によって移送された溶融ガラスからガラス物品を成形する成形工程を備えることに特徴づけられる。
【0021】
このような構成によれば、溶融ガラス移送装置によって移送されることで流量が増加した溶融ガラスが製造装置の成形工程に供給され、成形工程の実施によってガラス物品が成形される。これにより、ガラス物品の生産性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、移送管の周辺設備に適切な工夫が講じられたことで、冷却能力を確保しながら、溶融ガラスの流量を効率良く増加させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る溶融ガラス移送装置及びガラス物品の製造装置の全体構成の概略を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る溶融ガラス移送装置及びガラス物品の製造装置の構成要素である移送管の第一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る溶融ガラス移送装置及びガラス物品の製造装置の構成要素である移送管の第二例を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る溶融ガラス移送装置及びガラス物品の製造装置の構成要素である移送管の第三例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る溶融ガラス移送装置及びガラス物品の製造装置の構成要素である移送管の周辺設備の第一例を示す縦断正面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る溶融ガラス移送装置及びガラス物品の製造装置の構成要素である移送管の周辺設備の第二例を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る溶融ガラス移送装置、ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法について添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明に係るガラス物品の製造装置を例示している。同図に示すように、この製造装置1は、大別すると、上流端に配備されてガラス原料を加熱して溶融ガラスGmを生成する溶融炉2と、溶融炉2から流出した溶融ガラスGmを下流側に向かって移送する溶融ガラス移送装置(以下、単に移送装置という)3と、移送装置3から供給される溶融ガラスGmを用いてガラスリボンGrを成形する成形装置4とを備える。
【0026】
移送装置3は、上流側から順に、清澄槽5と、攪拌槽6と、状態調整槽7と、を備える。清澄槽5の流入部5aは、上流連結パイプ8を介して溶融炉2の流出部2bに連通している。清澄槽5の流出部5bは、中流連結パイプ9を介して攪拌槽6の流入部6aに連通している。攪拌槽6の流出部6bは、冷却パイプ10を介して状態調整槽7の流入部7aに連通している。
【0027】
清澄槽5は、溶融炉2で生成された溶融ガラスGmに清澄処理を施すものである。攪拌槽6は、清澄処理を施された溶融ガラスGmを攪拌して均質化処理を施すものである。冷却パイプ10は、均質化処理が施された溶融ガラスGmを冷却してその粘度や流量などの調整を行うものである。状態調整槽7は、冷却された溶融ガラスGmの粘度や流量などのさらなる調整を行うものである。なお、攪拌槽6は、移送装置3の移送経路に複数個を配置してもよい。
【0028】
成形装置4は、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスGmを流下させて帯状に成形する成形体11と、成形体11に溶融ガラスGmを導く大径の導入パイプ12とを有する。導入パイプ12には、移送装置3の状態調整槽7が有する小径のパイプ13を通じて溶融ガラスGmが供給される。
【0029】
帯状に成形されたガラスリボンGrは、徐冷工程及び切断工程に供給され、ガラス物品として所望寸法のガラス板が切り出される。ここで得られるガラス板は、例えば、厚みが0.01~2mmであって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイのガラス基板やカバーガラスに利用される。なお、成形装置4は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよく、ダウンドロー法以外の方法、例えばフロート法を実行するものであってもよい。
【0030】
ガラス板のガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0031】
移送装置3の清澄槽5、攪拌槽6、状態調整槽7、上流連結パイプ8、中流連結パイプ9及び冷却パイプ10は、何れも、移送管Pで構成されている。なお、清澄槽5、攪拌槽6、状態調整槽7、上流連結パイプ8、中流連結パイプ9及び冷却パイプ10は、それぞれ、複数の移送管Pを連結しで構成されてもよい。清澄槽5及び中流連結パイプ9を構成する移送管Pは、
図2に示すように、管軸Zが横方向(好ましくは水平方向)に沿って延びている。上流連結パイプ8及び冷却パイプ10を構成する移送管Pは、
図3に示すように、管軸Zが下流側に向かって上昇傾斜(水平面に対して角度αだけ傾斜)しているが、下降傾斜してもよい。攪拌槽6及び状態調整槽7を構成する移送管Pは、
図4に示すように、管軸Zが縦方向(好ましくは鉛直方向)に沿って延びている(同図には流入部6a、7aを描画)。
【0032】
移送装置3は、これら移送管Pの周辺設備3Aを含む。
図5及び
図6にそれぞれ例示する周辺設備3Aは、冷却パイプ10を構成する移送管Pの周辺設備である。
【0033】
図5は、第一例に係る移送管Pの周辺設備3Aを示している。同図に示すように、この周辺設備3Aは、移送管Pの外周側に配置された保持レンガ14と、保持レンガ14の外周側に空間15を介して配置されたケーシング16とを有する。したがって、移送管P及び保持レンガ14は、保持レンガ14との間に空間15を介在させた状態でケーシング16に収容されている。ケーシング16は、図示の断面で、矩形を呈している。以下の説明では、ケーシング16の幅方向を単に幅方向といい、ケーシング16の長手方向を単に長手方向という。保持レンガ14は、図示の断面で、その内面14aが円形を呈して移送管Pの外面Paに接触(部分接触または全面接触)し、その外面14bが矩形を呈している。また、保持レンガ14は、移送管Pの外周側を全周に亘って包囲している。さらに、保持レンガ14は、ケーシング16の底壁16aの内面16aaに複数個(図例では二個)の支持部材17を介して支持されている。二個の支持部材17は。保持レンガ14の下面14cにおける幅方向の両端部を下方から支持している。これら支持部材17は、長手方向についても間隔を空けて複数個が設置されている。したがって、保持レンガ14の下方では、空間15が連通しており、これにより保持レンガ14の外周側全周に空間15が存在している。なお、保持レンガ14は、ケーシング16の両側壁16bの内面16ba及び/又は上壁16cの内面16caに図外の支持部材を介して支持されていてもよい。本実施形態では、保持レンガ14は、移送管Pの上下方向中央部の高さ位置H1で分割されている。
【0034】
さらに、この周辺設備3Aは、ケーシング16を冷却する第一例に係る冷却装置18を備えている。この冷却装置18は、ケーシング16の上壁16cの外面16cbに冷却液Rを噴射する複数個(図例では二個)のノズル19を有する。ノズル19は、
図5に示すようにケーシング16の外部上方に幅方向に間隔を空けて配置され、図示を省略するが長手方向についても間隔を空けて複数個が設置されている。これらノズル19は、例えば図示のように、ケーシング16の外部上方に設置される。なお、これに代えて又はこれと共に、ケーシング16の両側壁16bの外面16bb(好ましくは当該外面16bbの上部)にそれぞれ冷却液Rを噴射するノズルを設置してもよい。この場合、それらノズルは、例えばケーシング16の外部両側方に設置される。冷却液としては、純水、工業用水、水道水、地下水などが使用される。
【0035】
第一例に係る冷却装置18は、ノズル19からケーシング16に噴射した冷却液Rを回収する回収装置20をさらに備えている。この回収装置20は、ケーシング16の両側壁16bの外面16bbを伝って流下する冷却液Rを受ける受け部材21を有する。受け部材21は、ケーシング16の外部下方に設置されている。受け部材21とケーシング16の底壁16aの外面16abとの間には、複数個(図例では二個)のスペーサ22が介設されている。これらスペーサ22は、長手方向についても間隔を空けて複数個が介設されている。ケーシング16の底壁16aの外面16abは、受け部材21に溜まる冷却液Rに浸かるようになっている。冷却液Rの流量の減少等により、底壁16aの外面16abと受け部材21に溜まる冷却液Rとの間に隙間を形成してもよい。
【0036】
第一例に係る冷却装置18は、冷却液Rを循環させる循環装置23をさらに備えている。この循環装置23は、受け部材21で受けられた冷却液Rを貯留して再度冷却する冷却貯留槽24と、冷却貯留槽24に貯留されている冷却液Rをノズル19に圧送するポンプ25とを有する。
【0037】
第一例に係る冷却装置18は、ケーシング16の外面に冷却液Rを噴射する複数個のノズル19に代えて、或いは、ケーシング16の外面に冷却液Rを噴射するノズル19に加えて、ケーシング16の側壁16bや底壁16aの内面に冷却液Rを噴射する複数個のノズルを有してもよい。この場合、ノズルは、ケーシング16の内部に配置され、長手方向についても間隔を空けて複数個が設置される。ケーシング16の側壁16bの内面16baを冷却するノズルは、ケーシング16の内部上方に設置されることが好ましい。側壁16bの内面16baを流下した冷却液Rは、底壁16aに設けられた後述の流出口からガスと共に排出されてもよい。
【0038】
これらの構成に加えて、第一例に係る移送管Pの周辺設備3Aは、ケーシング16と保持レンガ14との間に介在する空間15にガスを給排するガス給排装置26をさらに備えている。このガス給排装置26は、ガス(冷却用のガス)を、ケーシング16の底壁16aに設けられた流入口(図示略)を通じて矢印Aで示すように空間15に供給する。そして、このガスを、空間15内で流通させた後、ケーシング16の底壁16aに設けられた流出口(図示略)から矢印Bで示すように排出させる。この場合、ガスは、ガス源27からポンプ28によってケーシング16の流入口に圧送される。これにより、空間15へのガスの供給、空間15内でのガスの流通、及び空間15からのガスの排出が行われる。ガスとしては、例えば空気やクリーンドライエア、窒素、水蒸気などが使用される。なお、流入口及び流出口を形成する位置は、空間15内でガスを流通させることができるのであれば他の位置であってもよい。また、ポンプ28に代えて送風機を用いてもよい。
【0039】
以上の構成を備えた第一例に係る移送管Pの周辺設備3Aによれば、ノズル19から噴射された冷却液Rは、ケーシング16の上壁16c及び両側壁16bを冷却しつつ流下して受け部材21で受けられる。この受け部材21で受けられた冷却液Rによってもケーシング16の底壁16aが冷却される。受け部材21で受けられた冷却液Rは冷却貯留槽24に回収されて再度冷却される。そして、再度冷却された冷却液Rはポンプ25によってノズル19に圧送される。これにより、冷却液Rが循環する。このような動作がガラス物品の製造時に行われることで、以下に示すような作用効果が得られる。すなわち、ノズル19から噴射された冷却液Rによってケーシング16が冷却されることで、空間15、保持レンガ14及び移送管Pが冷却され、これにより移送管P内の溶融ガラスGmも冷却される。そのため、溶融ガラスGmに対する冷却効率が向上して、溶融ガラスGmを適切な粘度等にするための時間が短縮される。本実施形態では、移送管Pが冷却パイプ10を構成するため、溶融ガラスGmの粘度等を短時間でガラス物品の成形に適した粘度等に高めることができる。その結果、移送管Pの長尺化を抑制しながら、冷却能力を確保することができ、移送管Pを通じて移送される溶融ガラスGmの流量を効率良く増加させることが可能となるため、ガラス物品の生産性の向上が図られる。しかも、ケーシング16と保持レンガ14との間に空間15が介在することで、移送管P内の溶融ガラスGmに対する外気温の変化の影響を緩和できる。さらに、この空間15が介在することで、保持レンガ14及び移送管Pをムラなく均一に冷却できる。また、回収装置20及び循環装置23を備えているため、冷却液Rの使用量を低減して無駄をなくすことができる。しかも、この周辺設備3Aが、ガス給排装置26を備えていることで、ガラス物品の製造時に次に示すような作用効果も得られる。すなわち、ガス給排装置26が空間15に給排するガスによっても、保持レンガ14及び移送管Pを冷却して移送管P内の溶融ガラスGmを冷却できるため、ケーシング16の冷却との相乗効果によって冷却効率を大幅に高め、さらなる生産性の向上を図ることができる。
【0040】
図6は、第二例に係る移送管Pの周辺設備3Aを示している。同図に示すように、この周辺設備3Aは、上述の第一例に係るそれと同様に、移送管P及び保持レンガ14が、保持レンガ14との間に空間15を介在させた状態でケーシング16に収容され、保持レンガ14が支持部材17により下方から支持されている。保持レンガ14は、図示の断面で、内面14a及び外面14bの何れもが移送管Pと同芯の円形を呈している。保持レンガ14の外面14bは円形でなくてもよく、例えば五角形以上の角部を有する多角形であってもよい。支持部材17は、上部に移送管Pを受ける円形の凹部17aが形成された単一の部材として図示されているが、長手方向に間隔を空けて複数個が設置されている。移送管Pに対して保持レンガ14が組み込まれている状態、及び保持レンガ14に対して空間15が存在している状態などは、上述の第一例に係る周辺設備3Aについて説明した事項と同一である。したがって、双方の周辺設備3Aに共通する構成要素については、
図6に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
さらに、この周辺設備3Aは、ケーシング16を冷却する第二例に係る冷却装置30を備えている。この冷却装置30は、ケーシング16に設けられて冷却液Rが流通する冷却流路31を有する。冷却流路31は、図例では、ケーシング16の上壁16c、両側壁16b及び底壁16aに設けられている。底壁16aの幅方向一端部(右端部)には、仕切り部材32が設けられている。仕切り部材32は、長手方向に連続して延びる単一の部材である。一方、底壁16aの幅方向他端部(左端部)及び上壁16cの幅方向両端部には、補強部材33がそれぞれ設けられている。これら補強部材33は、長手方向に間隔を空けて複数個がそれぞれ存在している。したがって、冷却流路31は、仕切り部材32を境界として連通した状態にある。
【0042】
第二例に係る冷却装置30は、冷却流路31に冷却液Rを給排する液給排装置34をさらに備えている。この液給排装置34は、冷却流路31で冷却液Rを循環させる循環装置としての役割をも果たす。液給排装置34は、冷却流路31の流出口(図示略)から矢印Cで示すように流出した冷却液Rを貯留して再度冷却する冷却貯留槽35と、冷却貯留槽35に貯留されている冷却液Rを矢印Dで示すように冷却流路31の流入口(図示略)に圧送するポンプ36とを有する。流入口は、底壁16aの幅方向一端部(右端部)のうちの仕切り部材32の一方側(右側)に配置され、流出口は、底壁16aの幅方向一端部(右端部)のうちの仕切り部材32の他方側(左側)に配置されている。
【0043】
これらの構成に加えて、第二例に係る移送管Pの周辺設備3Aも、ケーシング16と保持レンガ14との間に介在する空間15にガスを給排するガス給排装置37をさらに備えている。このガス給排装置37は、第一例に係る周辺設備3Aが備えるガス給排装置26と構成が同一である。したがって、これら双方のガス給排装置26、37に共通する構成要素については、
図6に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
以上の構成を備えた第二例に係る移送管Pの周辺設備3Aによれば、冷却貯留槽35からポンプ36によって冷却流路31の流入口に圧送された冷却液Rは、ケーシング16の右側壁16b、上壁16c、左側壁16b及び底壁16aを流通する。これにより、冷却液Rは、ケーシング16全体を冷却し、その後に、冷却流路31の流出口から冷却貯留槽35に回収される。回収された冷却液Rは、冷却貯留槽35で再度冷却された後、再びポンプ36によって冷却流路31の流入口に圧送される。このような動作がガラス物品の製造時に行われることによる作用効果は、既述の第一例に係る周辺設備3Aについて説明した作用効果と実質的に同一である。なお、この第二例に係る周辺設備3Aは、ケーシング16自体が、冷却液Rが給排される冷却流路31を有するため、既述の第一例に係る周辺設備3Aよりもケーシング16に対する冷却効果が優れている。そのため、移送管P内の溶融ガラスGmに対する冷却効率をより一層高めることができる。また、この第二例に係る周辺設備3Aの保持レンガ24の厚みは、既述の第一例に係る周辺設備3Aの保持レンガ14の厚みよりも、全周に亘って均一化されているため、移送管P及び溶融ガラスGmをより一層均一に冷却できる。
【0045】
以上、本発明の実施形態に係る溶融ガラス移送装置、ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、溶融ガラスからガラス板を成形するようにしたが、これ以外に、ガラス管やガラス繊維などの他のガラス物品を成形するようにしてもよい。
【0047】
上記実施形態では、冷却パイプを構成する移送管の周辺設備に本発明を適用したが、他の移送管内で溶融ガラスの冷却効率を高める要請がある場合は、他の移送管の周辺設備ついて本発明を適用してもよい。例えば、清澄槽5の流出部5bと攪拌槽6の流入部6aとを接続する中流連結パイプ9の周辺設備ついて本発明を適用してもよい。
【0048】
上記実施形態では、第一例に係る移送管の周辺設備と、第二例に係る移送管の周辺設備とを、別々に備えるようにしたが、この双方の設備を併用してもよい。
【0049】
上記実施形態では、第二例に係る移送管の周辺設備において、ケーシングの上壁、底壁及び両側壁に冷却流路を設けたが、全ての壁に冷却流路を設けなくてもよく、例えば上壁及び/又は底壁に冷却流路を設けないなどのバリエーションが可能である。また、この冷却流路の仕切り部材の位置並びに流入口及び流出口の位置も、他の位置であってもよい。さらに、流入口及び流出口の数も変更してもよい。例えば、ケーシングの上壁、底壁及び両側壁ごとに一つ又は複数の流入口及び流出口を設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ガラス物品の製造装置
3 溶融ガラス移送装置
3A 移送管の周辺設備
4 成形装置
6a 流入部
14 保持レンガ
15 空間
16 ケーシング
16a 底壁
16b 右側壁
16b 左側壁
16c 上壁
18 冷却装置
19 ノズル
20 回収装置
23 循環装置
24 保持レンガ
26 ガス給排装置
30 冷却装置
31 冷却流路
34 液給排装置
35 冷却貯留槽
37 ガス給排装置
Gm 溶融ガラス
P 移送管
R 冷却液