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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084428
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】電気化学素子用セパレーター
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/437 20210101AFI20230612BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20230612BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230612BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20230612BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20230612BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20230612BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20230612BHJP
   H01G 9/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H01M50/437
H01M50/44
H01M50/403 Z
H01M50/489
H01M50/411
H01M50/457
H01G11/52
H01G9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198601
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杵村 峻志
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB02
5E078CA08
5E078CA12
5E078CA19
5E078CA20
5H021BB04
5H021BB08
5H021CC01
5H021CC02
5H021CC04
5H021EE01
5H021EE28
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH10
(57)【要約】
【課題】中空繊維ガラスを使用した中空ガラス繊維ペーパーを備えることで、温度が高くなった時の断熱性を確保し、例えば電池の温度が上昇した時に、セパレーターを介して隣接する領域に熱が伝わりにくい電気化学素子用セパレーターを提供する。
【解決手段】中空部Hを有する中空ガラス繊維Gと有機繊維Lを溶媒中で分散・抄紙することによって得られる中空ガラス繊維ペーパー1を備えた電気化学素子用セパレーター10であって、前記中空ガラス繊維Gと前記有機繊維Lとの全体量に対する前記有機繊維Lの質量割合が0質量%以上、80質量%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する中空ガラス繊維と有機繊維を溶媒中で分散・抄紙することによって得られる中空ガラス繊維ペーパーを備えた電気化学素子用セパレーターであって、
前記中空ガラス繊維と前記有機繊維との全体量に対する前記有機繊維の質量割合が0質量%以上、80質量%以下である、
ことを特徴とする電気化学素子用セパレーター。
【請求項2】
2枚以上の前記中空ガラス繊維ペーパーと、
任意の枚数の中空部を有しない中実のガラス繊維からなる中実ガラス繊維ペーパーと、を有し、
前記中空ガラス繊維ペーパーと前記中実ガラス繊維ペーパーを積層させて積層体を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項3】
前記中空ガラス繊維ペーパーが前記積層体の最外層に配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項4】
前記中空ガラス繊維ペーパーに使用される前記中空ガラス繊維の強熱減量は0.01~0.20質量%であり、
前記中空ガラス繊維ペーパーの厚みは0.01~1mmである、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電気化学素子用セパレーター。
【請求項5】
前記中実ガラス繊維ペーパーと、前記中空ガラス繊維ペーパーとを積層することで得られる帯状に延びる積層体を巻回して前記積層体の延出方向の両端部が重なる厚み領域を有し、当該厚み領域の寸法範囲は前記積層体の延出方向の長さ寸法に対して1/10以上、1/6以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気化学素子用セパレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空ガラス繊維を用いた電気化学素子用セパレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の多様化に伴い高容量・高電圧・高出力であることに加え、安全性の高い複数の二次電池により構成される電池パックが求められている。これらの要求を実現させるために二次電池のセパレーターの開発が盛んに行われている。セパレーターとは電池内部で正極・負極を隔離する(内部短絡を防ぐことができる)多孔質構造を持つ材料のことを一般的に指す。また、セパレーターには、電気絶縁性・イオン伝導性・化学安定性・電気化学的安定性及び機械的強度も要求される。さらには電池使用時の安全性を担保するために、セパレーターには異常発熱時にイオンの流れを遮断する機能(シャットダウン機能)や、シャットダウン後の異常発熱による内部短絡を防ぐ高温下での形状保持性能も要求される。
【0003】
一般に二次電池のセパレーターは極板に挟まれかなり押圧が掛かっている状態で電槽に挿入されている。そのため、セパレーターには目付が均一でなければ内部抵抗にばらつきが生じ、目付の均一性も要求されるが、例えば不織布を用いることで繊維と空気が極めて均一に分散されている上に通気性・含浸性に富んだ組織体となる。また、不織布は、紙などとは異なり原料の繊維長が長いとともに伸縮性を有するため、セパレーター用途に広く用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数のリチウムイオン素電池を備えた電池パックにおいて、一つの素電池が熱暴走し、発火した際に、隣接するリチウムイオン素電池への延焼を防ぐことが可能な熱暴走抑制耐火シートとして、耐火性と柔軟性に優れた熱暴走抑制耐火シートが開示されている。
【0005】
特許文献1に開示される熱暴走抑制耐火シートは、基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維と耐熱繊維とフィブリル化耐熱性繊維を含有し、該無機粒子層が無機粒子と無機バインダーを含有する。このような熱暴走抑制耐火シートでは、例えば基材として構成されるガラス繊維を改良することでさらに耐熱性(断熱性)を確保し、熱暴走し、発火した際に隣接する素電池に延焼することを防止することが求められる。すなわち、二次電池等の電気化学素子用セパレーターとして電気化学素子に用いられた際に、安全性をさらに担保することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-86820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、斯かる現状の課題に鑑みてなされたものであり、中空繊維ガラスを使用した中空ガラス繊維ペーパーを備えることで、温度が高くなった時の断熱性を確保し、例えば電池の温度が上昇した時に、セパレーターを介して隣接する領域に熱が伝わりにくい電気化学素子用セパレーターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
本発明に係る電気化学素子用セパレーターは、中空部を有する中空ガラス繊維と有機繊維を溶媒中で分散・抄紙することによって得られる中空ガラス繊維ペーパーを備えた電気化学素子用セパレーターであって、前記中空ガラス繊維と前記有機繊維との全体量に対する前記有機繊維の質量割合が0質量%以上、80質量%以下である、ことを特徴する。
【0010】
このような構成によれば、電気化学素子用セパレーターは中空部を有する中空ガラス繊維を備えた中空ガラス繊維ペーパーを有することにより、断熱性を確保することができるため、例えば電池の温度が上昇した時に、セパレーターを介して隣接する領域に熱が伝わりにくく、電池の安全性を確保することができる。
【0011】
また、本発明に係る電気化学素子用セパレーターにおいて、2枚以上の前記中空ガラス繊維ペーパーと、任意の枚数の中空部を有しない中実のガラス繊維からなる中実ガラス繊維ペーパーと、を有し、前記中空ガラス繊維ペーパーと前記中実ガラス繊維ペーパーを積層させて積層体を形成することが好ましい。
【0012】
これにより、電気化学素子用セパレーターの剛性を確保することができる。
【0013】
また、本発明に係る電気化学素子用セパレーターにおいて、前記中空ガラス繊維ペーパーが前記積層体の最外層に配置されることが好ましい。
【0014】
これにより、最も熱の影響を受けやすい最外層に中空ガラス繊維ペーパーが配置されるため、断熱効果をより高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る電気化学素子用セパレーターにおいて、前記中空ガラス繊維ペーパーに使用される前記中空ガラス繊維の強熱減量は0.01~0.20質量%であり、前記中空ガラス繊維ペーパーの厚みは0.01~1mmであることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る電気化学素子用セパレーターにおいて、前記中実ガラス繊維ペーパーと、前記中空ガラス繊維ペーパーとを積層することで得られる帯状に延びる積層体を巻回して前記積層体の延出方向の両端部が重なる厚み領域を有し、当該厚み領域の寸法範囲は前記積層体の延出方向の長さ寸法に対して1/10以上、1/6以下であることが好ましい。
【0017】
このように、積層体を巻回することで、さらに積層数を増やすことができるため、電気化学素子用セパレーターの機械的強度、断熱性及び絶縁性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
本発明によれば、中空ガラス繊維ペーパーを有することで、温度が高くなった時の断熱性を確保し、例えば電池の温度が上昇した時に、セパレーターを介して隣接する領域に熱が伝わりにくい電気化学素子用セパレーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電気化学素子用セパレーターの一例である二次電池のセパレーターを示す断面模式図。
図2】(a)及び(b)は中空部を有する中空ガラス繊維を示す模式図、(c)は中空部を有しない中実ガラス繊維を示す模式図。
図3】中空ガラス繊維ペーパーを使用した積層体を示す模式図であり、(a)は中空ガラス繊維ペーパーと中実ガラス繊維ペーパーを交互に積層した積層体を示す図、(b)は複数積層された中実ガラス繊維ペーパーの最外層に中空ガラス繊維ペーパーが配置された積層体を示す図。
図4】(a)は積層された中実ガラス繊維ペーパーの最外層に中空ガラス繊維ペーパーが積層された積層体を丸めてシート状積層体を形成する方法を説明するための説明図、(b)は積層された中実ガラス繊維ペーパーの最上層に中空ガラス繊維ペーパーが積層された積層体を丸めてシート状積層体を形成する方法を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0022】
[電気化学素子用セパレーター]
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用セパレーター10(以下、単に「セパレーター10」ともいう)は、中空部Hを有するガラス繊維G(以下では、便宜的に中空ガラス繊維Gともいう)と有機繊維Lとを溶媒中で分散・抄紙することによって得られる中空ガラス繊維ペーパー1を備えた電気化学素子用セパレーターであって、中空ガラス繊維Gと有機繊維Lとの全体量に対する有機繊維Lの質量割合が0質量%以上、80質量%以下であることを特徴とする。
具体的には、電気化学素子用セパレーター10は、例えば電気化学素子の一例である二次電池が有する正極板Pと負極板Nの間に介装される(図1参照)。
【0023】
ここで、本発明における電気化学素子とは、広義としては、内部に電気化学エネルギーを蓄える素子であって、正極及び負極とセパレーターとを備えた電気化学素子であり、例えば、一次電池、リチウムイオン電池等の二次電池、コンデンサー及び電気二重層キャパシタ等のキャパシタが挙げられる。
また、本発明における「ガラス繊維ペーパー」とは、所定のガラス繊維(中空ガラス繊維Gや中実ガラス繊維S)を用いて抄紙法により作製される所定のガラス繊維を含むシート状体に形成されたものを指し、その形態としては、例えば不織布や不織布以外の成形体も含むものである。
【0024】
[中空部を有する中空ガラス繊維の製造方法]
本実施形態における中空部Hを有する中空ガラス繊維G(図2(a)(b)参照)は、ブッシング内の溶融ガラスをブッシングの底部に形成されたノズルから引き出して中空部Hを有する中空ガラス繊維Gを製造することができる。中空部Hは、ブッシング内の溶融ガラス中の成分を電気分解することで発生させた泡を溶融ガラスとともにノズル内に流入させることにより形成することができる。
【0025】
次に、中空ガラス繊維Gについて具体的に説明する。
図2(a)及び図2(b)に示すように、前述した中空ガラス繊維Gの製造方法により製造される本実施形態の中空ガラス繊維Gは、中空部Hを有している。中空ガラス繊維Gの中空部Hは、図2(a)に示すように、中空ガラス繊維Gの長さ方向に沿って連続した中空部Hであってもよいし、図2(b)に示すように、中空ガラス繊維Gの長さ方向において離間した複数の中空部Hであってもよい。このような中空ガラス繊維Gの中空部Hの態様は、例えば、上記電気分解における直流電圧を制御することで、溶融ガラス中の泡の生成量を調整することにより、変更することができる。中空ガラス繊維Gの径方向における中空部Hの寸法は、例えば、中空ガラス繊維Gの直径の0.1%以上、70%以下の範囲である。なお、中空ガラス繊維Gの直径(繊維径)は、例えば、3μm以上、30μm以下の範囲であることが好ましい。また、図2(c)には、後述する中空部Hを有しない中実ガラス繊維Sを示す。
【0026】
中空ガラス繊維Gは、例えば、所定の長さに切断したカット繊維として用いることができる。
なお、カット繊維の端面(切断面)は、中空部Hの開口を有していてもよいし、カット繊維を加熱することで前記中空部Hの開口を封止してもよい。このように、封止をした場合は、中空部H内に空気が閉じ込められるため、断熱性能をより高めることができる。
【0027】
[中空部を有しない中実のガラス繊維]
本発明では、中空部Hを有しない中実の中実ガラス繊維Sも用いられる(図2(c)参照)。このような中実ガラス繊維Sとしては、例えば、ガラスチョップドストランド、グラスウール、グラスフレークなどが挙げられる。
なお、所定の強度を有するガラス繊維であればいずれの形態のガラス繊維であってもよい。
【0028】
本発明におけるガラス繊維(中空ガラス繊維G及び中実ガラス繊維S)の繊維径は、1~20μmであることが好ましく、2~16μmであることがより好ましく、3~10μmであることがさらに好ましい。繊維径が1μm未満の場合、細か過ぎて抄紙時におけるガラス繊維ペーパーからガラス繊維が脱落し、強度、厚みが不十分となる場合がある。繊維径が20μmを超えた場合、ガラス繊維が太くなり過ぎて、ガラス繊維ペーパーの隙間が大きくなり、断熱性に劣る場合がある。
【0029】
また、本発明におけるガラス繊維(中空ガラス繊維G及び中実ガラス繊維S)の繊維長は、1~30mmであることが好ましく、2~15mmであることがより好ましく、3~12mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満では、強度不足となる場合があり、繊維長が30mmを超えた場合、ガラス繊維ペーパー表面の地合が悪くなり、セパレーターとしての品質にバラツキが生じる場合がある。
【0030】
[有機繊維]
有機繊維Lの材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ビニロン樹脂、アラミド樹脂、及びこれらの組合せからなる群から選択されることが好ましい。
【0031】
[ガラス繊維ペーパーの製造方法(抄紙法)]
本発明のガラス繊維ペーパーの製造方法は、抄紙機を用いて実行される本実施形態の抄紙法が適用され、所定の繊維(中空ガラス繊維G、有機繊維L及び中実ガラス繊維S)を適宜組み合わせて用いて、所定の溶媒で抄紙するものである。
【0032】
例えば、前記所定の繊維(中空ガラス繊維G、有機繊維L及び中実ガラス繊維S)を3~50mmに切断したものを適宜組み合わせて、溶媒中に分散した後、抄紙機で抄紙し、抄紙したシート状物を乾燥させることにより所望の組成のガラス繊維ペーパーが製造される。
【0033】
上記の溶媒としては、水、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、フェニルエーテル誘導体、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられるが、揮発し難く、且つ引火しにくい水を使用することが好ましい。
【0034】
中空ガラス繊維Gと有機繊維Lとの全体量に対する有機繊維Lの質量割合は、0質量%以上、80質量%以下であることが好ましく、1質量%以上、70質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上、60質量%以下であることがさらに好ましい。有機繊維Lの質量割合が0質量%の場合、セパレーターとしての耐熱性が最も良好となり、有機繊維Lの割合が80質量%を超えた場合、セパレーターとしての耐熱性が悪化する場合がある。また、有機繊維Lを80質量%以下の範囲内で添加する場合、セパレーターに所望の柔軟性を付与することができるため、セパレーターの加工性を向上させることができる。
【0035】
[ガラス繊維ペーパーの積層体]
本発明の一実施形態に係る電気化学素子用セパレーター10は、2枚以上の中空ガラス繊維ペーパー1と、任意の枚数の中空部Hを有しない中実ガラス繊維Sからなる中実ガラス繊維ペーパー2と、を有し、中空ガラス繊維ペーパー1と中実ガラス繊維ペーパー2を適宜積層させた積層体として形成されることが好ましい。
これにより、電気化学素子用セパレーター10の剛性を確保することができる。
なお、本実施形態における中空ガラス繊維ペーパー1が含まれる積層体は、種々の電気化学素子に応じて所定の加工がなされることで電気化学素子用セパレーターとして使用され得るものである。
【0036】
具体的には、積層体の例としては、図3(a)に示すように、中空ガラス繊維ペーパー1と中実ガラス繊維ペーパー2を交互に積層した積層体M1が挙げられる。
【0037】
また、図3(b)に示すように、積層体M2として、少なくとも2つ以上の中空ガラス繊維ペーパー1が、中実ガラス繊維ペーパー2が複数枚積層された状態の最外層(図3(b)では、最上層及び最下層)に配置されることが好ましい。これにより、最も熱の影響を受けやすい積層体M2の最外層に中空ガラス繊維ペーパー1が配置されているため、断熱効果をより高めることができる。
なお、図3(a)(b)に示す積層体に限らず、任意の枚数の中空ガラス繊維ペーパー1と任意の枚数の中実ガラス繊維ペーパー2を積層体の任意の位置に積層された積層体を構成してもよい。
【0038】
[中空ガラス繊維の強熱減量]
本実施形態の中空ガラス繊維ペーパー1に使用される中空ガラス繊維Gは、強熱減量が0.01~0.20質量%であることが好ましい。
【0039】
強熱減量の測定は、JIS R 3420(2006)7.3.2に従い測定を行うことができる。強熱減量が0.01質量%未満である場合、ガラス繊維モノフィラメントどうしを1本のガラス繊維ストランドに集束することが困難となり、中空ガラス繊維Gの取り扱い性が悪化するおそれがあるため好ましくない。一方、強熱減量が0.20質量%よりも大きい場合、集束性が良好となるものの、ガラス繊維の滑性が強くなりすぎるため、取り扱い上好ましくない。より好ましい強熱減量は、0.04~0.15質量%、さらに好ましくは0.06~0.1質量%である。
【0040】
さらに、中空ガラス繊維ペーパー1の厚みは0.01~1mmであることが好ましい。
中空ガラス繊維ペーパー1の厚みが0.01mm未満である場合、断熱性を有するセパレーターとしての機能として十分効果を得ることができないため好ましくない。一方、中空ガラス繊維ペーパー1の厚みが1mmよりも大きい場合、放電容量の低下や電圧降下等が生じやすくなる。より好ましい中空ガラス繊維ペーパー1の厚さは、0.02~0.9mm、さらに好ましくは0.03~0.08mmである。
【0041】
[巻回積層体及びそれを用いたセパレーターの製造方法]
また、本実施形態の電気化学素子用セパレーター10を製造する際においては、所定の積層体を巻回させて巻回積層体を形成し、それをプレスすることでシート状積層体(電気化学素子用セパレーター10)を製造することができる。例えば、電気化学素子用セパレーター10は、中空ガラス繊維ペーパー1と中実ガラス繊維ペーパー2とを積層することで得られる帯状に延びる積層体M3、積層体M6のそれぞれを巻回して、当該積層体M3、積層体M6のそれぞれの延出方向の両端部が重なる厚み領域R(図4(a)(b)参照)を有するようにして、当該厚み領域Rの寸法範囲が積層体M3、積層体M6のそれぞれの延出方向の長さ寸法に対して1/10以上、1/6以下となるように形成されることが好ましい。
【0042】
例えば、図4(a)に示すように、先ず、中実ガラス繊維ペーパー2が複数枚積層された状態の最外層である最上層及び最下層の両方に中空ガラス繊維ペーパー1をそれぞれ積層した積層体M3を形成する(積層体形成工程)。次に、積層体M3の延出方向(長手方向)の両端部が、厚み領域Rの寸法範囲が積層体M3の延出方向の長さ寸法に対して1/10以上、1/6以下になるように円筒状に丸めることで巻回された巻回積層体M4を形成する(巻回積層体形成工程)。そして、この巻回積層体M4の上下方向から所定の荷重を印加することで多層構造のシート状積層体M5がセパレーター10として製造される(プレス工程)。
【0043】
また、図4(b)に示すように、先ず、中実ガラス繊維ペーパー2が複数枚積層された状態の最上層に中空ガラス繊維ペーパー1を積層した積層体M6を形成する(積層体形成工程)。次に、積層体M6の延出方向(長手方向)の両端部が、厚み領域Rの寸法範囲が積層体M6の延出方向の長さ寸法に対して1/10以上、1/6以下になるように円筒状に丸めることで巻回された巻回積層体M7を形成する(巻回積層体形成工程)。そして、この巻回積層体M7の上下方向から所定の荷重を印加することで多層構造のシート状積層体M8がセパレーター10として製造される(プレス工程)。
【0044】
なお、上記巻回積層体形成工程において、積層体M3又は積層体M6を円筒状に丸める際に巻回積層体の外側表面に中空ガラス繊維ペーパー1が配置されるようにすることで、製造されたシート状積層体M5又はシート状積層体M8の外側表面には中空ガラス繊維ペーパー1が配置されるので、断熱効果をより高めたセパレーター10を得ることができる。
【0045】
このように、中空ガラス繊維ペーパー1と中実ガラス繊維ペーパー2とで構成される積層体M3又は積層体M6を丸めた状態でプレスしてシート状積層体M5又はシート状積層体M8を製造することで、さらに積層数を増やすことができるため、電気化学素子用セパレーター10の機械的強度、断熱性及び絶縁性をさらに向上させることができる。
【0046】
以上のように、本実施形態の電気化学素子用セパレーター10によれば、中空ガラス繊維Gを用いた中空ガラス繊維ペーパー1を備えることで、温度が高くなった時の断熱性を確保し、例えば電池の温度が上昇した時に、セパレーターを介して隣接する領域に熱が伝わりにくい電気化学素子用セパレーター10を提供することができる。ひいては、二次電池等の電気化学素子の使用時の安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 中空ガラス繊維ペーパー
2 中実ガラス繊維ペーパー
10 電気化学素子用セパレーター
G 中空ガラス繊維
H 中空部
L 有機繊維
S 中実ガラス繊維
図1
図2
図3
図4