(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084429
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリアミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230612BHJP
B29C 48/10 20190101ALI20230612BHJP
B29C 55/28 20060101ALI20230612BHJP
C08G 69/00 20060101ALI20230612BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20230612BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20230612BHJP
B29C 48/89 20190101ALI20230612BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B29C48/10
B29C55/28
C08G69/00
C08L77/00
B32B27/34
B29C48/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198602
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】313016820
【氏名又は名称】興人フィルム&ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 誠
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F207
4F210
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
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4J002CL05W
4J002CL05X
4J002CL05Y
4J002GG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】原料から最終製品に至るまでに要する化石燃料の使用量を低減すると共に、プラスチック廃棄物を削減することで、化石燃料の枯渇問題やプラスチック廃棄物の削減に寄与し得る二軸延伸ポリアミドフィルムの提供。
【解決手段】ポリアミド樹脂層を少なくとも1層含む、二軸延伸ポリアミドフィルムであって、前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂(A)と、ポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂(B)と、非リサイクルポリアミド樹脂(C)とを、(A):(B):(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~99質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧1質量%を満たす割合で含有する樹脂である、二軸延伸ポリアミドフィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂層を少なくとも1層含む、二軸延伸ポリアミドフィルムであって、
前記ポリアミド樹脂は、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂(A)と、
ポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂(B)と、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂ではなく、かつポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用せずに得られたポリアミド樹脂(C)とを、
(A):(B):(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~99質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧1質量%を満たす割合で含有する樹脂である、
二軸延伸ポリアミドフィルム。
【請求項2】
前記二軸延伸ポリアミドフィルムは該二軸延伸ポリアミドフィルムの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.25以下のフィルムである、請求項1に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
【請求項3】
前記二軸延伸ポリアミドフィルムは該二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に、下記(a)より選ばれる少なくとも1種を積層したフィルムである、請求項1又は請求項2に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
(a)二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン-ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン-酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ポリアミドフィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン。
【請求項4】
前記二軸延伸ポリアミドフィルムは印刷用フィルムである、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
【請求項5】
前記二軸延伸ポリアミドフィルムは食品包装用の基材フィルム、又は、絞り成形用の基材フィルムである、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
【請求項6】
ポリアミド樹脂層を少なくとも1層含む、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法であって、
ポリアミド樹脂を溶融押出し、冷却して未延伸フィルムを得る工程、及び
該未延伸フィルムを二軸延伸する工程
を含み、
前記ポリアミド樹脂は、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂(A)と、
ポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂(B)と、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂ではなく、かつポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用せずに得られたポリアミド樹脂(C)とを、
(A):(B):(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~99質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧1質量%を満たす割合で含有する樹脂である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリアミドフィルム及びその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂、及び/又は、ポリアミド樹脂製造工程、若しくはポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂を含有するポリアミド樹脂層を少なくとも1層含む二軸延伸ポリアミドフィルム、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から代表的なエンジニアリングプラスチックとして、ポリアミド樹脂は幅広い分野、用途で利用されている。
フィルム分野では、ポリミド樹脂から成形されたポリアミドフィルムは、強度、伸度等の力学的特性、寸法安定性、ガスバリア性、印刷特性等の優れた性質を有することから、食品等の包装用途に使用されている。また、該ポリアミドフィルムは絞り成形性に優れることから、冷間成形用電池ケース包材の基材としても使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在使用されているプラスチックのほとんどは、将来的な枯渇が危惧される化石燃料を原料としているので、将来的な化石燃料の枯渇に加えて廃プラスチックの発生抑制に対応するために、プラスチックの原材料として、化石燃料の代わりに、植物由来の原料を使用することが注目されている。
しかし、植物由来の原料を使用することにより、確かに将来的な化石燃料の枯渇やプラスチック廃棄物の発生抑制に対応し得るが、現存するプラスチック廃棄物の削減に対応することまでは難しかった。
【0005】
また、近年、資源の再利用や地球環境保護への関心の高まりから様々な分野でのリサイクルが求められており、資源循環型の社会への転換を推進するために、プラスチック廃棄物をリサイクルするという取り組みに注目が集まっている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、原料から最終製品に至るまでに要する化石燃料の使用量を低減し、さらに、プラスチック廃棄物を削減することにより、化石燃料の枯渇問題の解決やプラスチック廃棄物の削減に寄与し得る二軸延伸ポリアミドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂、及び/又は、樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂が、従来の化石燃料を原料とするバージンポリアミド樹脂から成形されたフィルムの製造条件と同一の製造条件でフィルム成形することができ、かつ得られたフィルムは、該バージンポリアミド樹脂から成形されたフィルムと比べて遜色ない機械物性を有するという知見を得た。よって、本発明はかかる知見に基づき、完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は下記の二軸延伸ポリアミドフィルム及びその製造方法を提供する。[1]ポリアミド樹脂層を少なくとも1層含む、二軸延伸ポリミドフィルムであって、
前記ポリアミド樹脂は、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂(A)と、
ポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂(B)と、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂ではなく、かつポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用せずに得られたポリアミド樹脂(C)とを、
(A):(B):(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~99質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧1質量%を満たす割合で含有する樹脂である、
二軸延伸ポリアミドフィルム。
[2]前記二軸延伸ポリアミドフィルムは、該二軸延伸ポリアミドの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.25以下のフィルムである、[1]に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
[3]前記二軸延伸ポリアミドフィルムは該二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に、下記(a)より選ばれる少なくとも1種を積層したフィルムである、[1]又は[2]に記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
(a)二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン-ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン-酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ポリアミドフィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン。
[4]前記二軸延伸ポリアミドフィルムは印刷用フィルムである、[1]ないし[3]のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
[5]前記二軸延伸ポリアミドフィルムは食品包装用の基材フィルム、又は、絞り成形用の基材フィルムである、[1]ないし[3]のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミドフィルム。
【0009】
[6]ポリアミド樹脂層を少なくとも1層含む、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法であって、
ポリアミド樹脂を溶融押出し、冷却して未延伸フィルムを得る工程、及び
該未延伸フィルムを二軸延伸する工程
を含み、
前記ポリアミド樹脂は、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂(A)と、
ポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂(B)と、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂ではなく、かつポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用せずに得られたポリアミド樹脂(C)とを、
(A):(B):(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~99質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧1質量%を満たす割合で含有する樹脂である、製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂(A)、及び/又は、ポリアミド樹脂製造工程、若しくはポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂(B)を含むポリアミド樹脂を用いることにより、化石燃料の枯渇問題の解決やプラスチック廃棄物の削減に寄与し得る二軸延伸ポリアミドフィルムを提供することができる。
【0011】
また、本発明によれば、化石燃料を原料とするバージンポリアミド樹脂から得られるプラスチックフィルムと同程度の機械物性、とりわけ、引張破断強度や引張破断伸度を有する二軸延伸ポリアミドフィルムを提供することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、化石燃料を原料とするバージンポリアミド樹脂を使用した二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法に比べて、原料から最終製品に至るまでに要する化石燃料の使用量を低減でき、さらに、プラスチック廃棄物を削減できる二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、チューブラー同時二軸延伸装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[二軸延伸ポリアミドフィルム]
本発明は、ポリアミド樹脂層を少なくとも1層含む、二軸延伸ポリアミドフィルムであって、
前記ポリアミド樹脂は、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂(A)と、
ポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂(B)と、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂ではなく、かつポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用せずに得られたポリアミド樹脂(C)とを、
(A):(B):(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~99質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧1質量%を満たす割合で含有する樹脂である、
二軸延伸ポリアミドフィルム
である。
【0015】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムにおけるポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂(A)、又はポリアミド樹脂(B)、又はポリアミド樹脂(A)及びポリアミド樹脂(B)、又はポリアミド樹脂(A)及びポリアミド樹脂(C)、又はポリアミド樹脂(B)及びポリアミド樹脂(C)、又はポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とポリアミド樹脂(C)とを含むものである。
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
<ポリアミド樹脂(A)>
ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してな
るもの、いわゆるケミカルリサイクルポリアミド樹脂である。なお、本明細書において、ポリアミド樹脂(A)を「ケミカルリサイクルポリアミド樹脂」とも記載する。
ポリアミド樹脂(A)を使用することにより、ポリアミド樹脂を化石燃料からあらためて製造する場合に比べて、化石燃料の使用量を低減することができ、また、プラスチック廃棄物を削減することができる。
【0017】
ポリアミド樹脂は、アミド結合を有する高分子であり、脂肪族系ポリアミド樹脂、芳香族系ポリアミド樹脂、又はこれらの混合物であってもよい。
上記ポリアミド樹脂として、例えば、3員環以上のラクタム、重合可能なω-アミノ酸、二塩基酸とジアミンなどの重縮合によって得られるポリアミド樹脂が挙げられる。
具体的には、ε-カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、9-アミノノナン酸、α-ピロリドン、α-ピペリドンなどの重合体、ヘキサメチサンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどのジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンニ塩基酸、グルタール酸などのジカルボン酸との塩を重縮合せしめて得られる重合体又はこれらの共重合体、例えば、ポリアミド(ナイロン)4、6、7、811、12、4・6、6・6、6・10、6・11、6・12、6T、6/6・6.6/12、6/6T、6I/6Tが挙げられる。
ポリアミド樹脂は、1種単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0018】
本発明に用いるポリアミド樹脂(A)は、公知のケミカルリサイクル方法、例えば、特開2008-31127号公報に記載されたケミカルリサイクル方法により、使用済みポリアミド(ナイロン)製品(シート、フィルムや容器など)及びポリアミド(ナイロン)製品の生産・加工ロス品などを単量体に戻した後、再度、公知の方法により、重合することで得られる。
【0019】
ポリアミド樹脂(A)としては、解重合が容易であり、かつ生成物が1つで、未使用の単量体と同程度の純度に容易に精製できる観点から、ポリアミド(ナイロン)6が好ましい。
また、ポリアミド樹脂(A)は市販品を使用することができる。
【0020】
<ポリアミド樹脂(B)>
ポリアミド樹脂(B)は、ポリアミド樹脂の製造工程、又はポリアミド樹脂の製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたものである。なお、本明細書において、ポリアミド樹脂(B)を「熱分解油利用ポリアミド樹脂」とも記載する。
【0021】
ポリアミド樹脂(B)の製造工程、又はポリアミド樹脂(B)の製造工程を含む樹脂製造工程において、化石燃料の代りに、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油(例えば、廃プラスチックの油化により製造された熱分解油)を使用する。
一方、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油はプラスチック廃棄物を熱によってモノマー単位~低分子量化合物に分解、精製して得られる為、ケミカルリサイクル材料と考えることが出来る。ポリアミド樹脂の製造工程、又はポリアミド樹脂の製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油の使用量と化石燃料由来のポリアミド樹脂(B)の生産量(マスバランス)とを管理し、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油の使用量をポリアミド樹脂(B)の生産量に割り当てることによって、そのポリアミド樹脂(B)は間接的にケミカルリサイクル材料であると言える。ゆえに、そのポリアミド樹脂(B)の使用によって、化石燃料の消費削減に間接的に寄与することが出来ると同時に、プラスチック廃棄物の削減にも寄与することができる。
【0022】
プラスチック廃棄物としては、都市ゴミ、産業廃棄物、一般廃棄物などに含まれる廃プラスチックや容器包装材料、および電気製品、自動車などの解体の過程で発生する廃プラスチックなどが挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびポリアミドやその他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0023】
プラスチック廃棄物から得られた熱分解油は、プラスチック廃棄物を熱分解、接触分解などして得られたものであり、例えば、軽質油、中質油及び重質油など挙げられる
プラスチック廃棄物から得られた熱分解油は、ポリアミド樹脂の製造工程、又はポリアミド樹脂の製造工程を含む樹脂製造工程において、製造装置の燃料や潤滑油などとして使用される。
【0024】
本発明に用いるポリアミド樹脂(B)は、ポリアミド樹脂の製造工程、又はポリアミド樹脂の製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたものであれば特に限定されず、例えば、上記<ポリアミド樹脂(A)>で例示したポリアミド樹脂が挙げられ、その中でも、ポリアミド(ナイロン)6が好ましい。
また、ポリアミド樹脂(B)は市販品を使用することができる。
【0025】
<ポリアミド樹脂(C)>
ポリアミド樹脂(C)は、ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂ではなく、かつポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用せずに得られたものである。すなわち、ポリアミド樹脂(C)は、ポリアミド樹脂(A)及びポリアミド樹脂(B)以外のポリアミド樹脂である。なお、本明細書において、ポリアミド樹脂(C)を「非リサイクルポリアミド樹脂」とも記載する。
ポリアミド樹脂(C)を使用することにより、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの引張破断強度などをより高めることができる。さらに、ポリアミド樹脂(C)として、植物由来のものを使用することにより、化石燃料の消費削減及びプラスチック廃棄物の発生抑制に寄与することができる。
【0026】
本発明に用いるポリアミド樹脂(C)としては、ポリアミド樹脂であれば特に限定されず、例えば、上記<ポリアミド樹脂(A)>で例示したポリアミド樹脂が挙げられ、その中でも、ポリアミド(ナイロン)6が好ましく、植物由来のポリアミド(ナイロン)6がより好ましい。
【0027】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムにおいて、ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とポリアミド樹脂(C)とを、(A):(B):(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~99質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧1質量%で含有する。
好ましくは、ポリアミド樹脂(A):ポリアミド樹脂(B):ポリアミド樹脂(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~70質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧30質量%で含有する。
より好ましくは、ポリアミド樹脂(A):ポリアミド樹脂(B):ポリアミド樹脂(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~50質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧50質量%で含有する。
さらに好ましくは、ポリアミド樹脂(A):ポリアミド樹脂(B):ポリアミド樹脂(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~30質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧70質量%で含有する。
特に好ましくは、ポリアミド樹脂(A):ポリアミド樹脂(B):ポリアミド樹脂(C)=100~0質量%:100~0質量%:0質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧100質量%で含有する。
【0028】
本発明で使用するポリアミド樹脂(B)は、前述したように、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油の使用量と、ポリアミド樹脂(B)の生産量(マスバランス)とが厳密に管理され、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油のケミカルリサイクル分が割り当てられたポリアミド樹脂であり、化石燃料の消費量の観点からは、ケミカルリサイクル材料の使用量と同等の化石燃料の消費削減量と見なすことが出来る材料である。したがって、本明細書において、ポリアミド樹脂100質量%中のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との合計質量をケミカルリサイクル率とする。
【0029】
また、本発明に使用されるポリアミド樹脂は、得られるフィルムの物性に支障をきたさない範囲で、ポリカーボネートやポリエステルなどの他の樹脂を含むことができる。
さらに、本発明に使用される上記ポリアミド樹脂、及び場合により上記他の樹脂は、得られるフィルムの物性に支障をきたさない範囲で、必要に応じて滑剤、アンチブロッキング剤、無機増量剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、結晶化抑制剤、結晶化促進剤等の添加剤を含むことができる。
【0030】
[二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法]
本発明は、ポリアミド樹脂層を少なくとも1層含む、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法であって、
ポリアミド樹脂を溶融押出し、冷却して未延伸フィルムを得る工程、及び
該未延伸フィルムを二軸延伸する工程
を含み、
前記ポリアミド樹脂は、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂(A)と、
ポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用して得られたポリアミド樹脂(B)と、
ポリアミド樹脂の解重合により得られた単量体を重合してなるポリアミド樹脂ではなく、かつポリアミド樹脂製造工程、又はポリアミド樹脂製造工程を含む樹脂製造工程において、プラスチック廃棄物から得られた熱分解油を使用せずに得られたポリアミド樹脂(C)とを、
(A):(B):(C)=100~0質量%:100~0質量%:0~99質量%の割合で、かつ(A)+(B)≧1質量%を満たす割合で含有する樹脂である、製造方法である。
【0031】
<未延伸フィルムを得る工程>
本工程は、ポリアミド樹脂を溶融押出し、冷却して未延伸フィルムを得る工程である。
本工程の一例として、ポリアミド樹脂を所定の温度(例えば、210~280℃)に設定した押出機によって溶融混練する。
そして、Tダイ製膜の場合は、シート状の溶融樹脂を水槽に浸漬することにより内外とも直接水冷する。一方、環状製膜の場合は、押出機に下向きに取り付けた環状ダイより下方に押し出して、溶融管状薄膜を成形する。次に環状ダイに連結されている冷却マンドレルに導かれ、冷却マンドレルの各ノズルから導入された冷却水が溶融管状薄膜の内側に直接接触して冷却する。同時に、冷却マンドレルと組み合わせて使用される外部冷却槽からも冷却水が流され、溶融管状薄膜の外側にも冷却水が直接接触して、溶融管状薄膜を冷却する。内部水、および外部水の温度は30℃以下が好ましく、急冷製膜の観点から20℃以下が特に好ましい。30℃より高くなると、未延伸フィルムの白化や冷却水の沸騰によ
る未延伸フィルムの外観不良等を招き、延伸も徐々に困難になる場合がある。
【0032】
二軸延伸ポリアミドフィルムを安定的に製造するには、延伸前未延伸フィルムの結晶化を極力抑制する必要があり、押出されたポリアミド溶融体を冷却して製膜する際、該ポリアミドの結晶化温度領域をある速度以上で冷却する、すなわち未延伸フィルムの冷却速度が重要な因子となる。その未延伸フィルムの冷却速度は200℃/秒以上、好ましくは250℃/秒以上、特に好ましくは350℃/秒以上である。冷却速度が200℃/秒未満では、得られた未延伸フィルムの結晶性が高くなり延伸性が低下する虞がある。
未延伸フィルムの製膜方式としては、上記未延伸フィルムの冷却速度を満たす方法であれば特に限定されるものでは無いが、急冷製膜の観点から、上述したような内外直接水冷式が特に好ましい。
【0033】
<二軸延伸する工程>
本工程は、未延伸フィルムを二軸延伸する工程である。
二軸延伸する方法は、特に限定されず、例えばチューブラー方式若しくはテンター方式で縦延伸と横延伸とを同時に行う同時二軸延伸法、または縦延伸と横延伸とを順次行う逐次二軸延伸法等から適宜選択される。得られる二軸延伸ポリアミドフィルムの縦横の強度バランスの観点から、チューブラー方式による同時二軸延伸法が特に好ましい。
【0034】
図1はチューブラー法同時二軸延伸装置の概略図である。ポリアミド樹脂を押出機で溶融混錬して、環状ダイからチューブ状に押し出し、一旦冷却した後、得られたチューブ状の未延伸フィルム1を、一対のニップロール2間に挿通した後、チューブ状の未延伸フィルムの内部に空気を吹き込んで膨張させて、ヒーター3で加熱するとともに、冷却リング4により空気を吹き付けて冷却して、ガイドロール5で折り畳んだ後、一対のニップロール6で引き取ることにより、チューブラー法による流れ方向(以下「MD」とも記載する。)延伸、及び垂直方向(以下「TD」とも記載する。)延伸を同時に行った二軸延伸フィルム7が得られる。
延伸倍率は、延伸安定性や得られる二軸延伸ポリアミドフィルムの強度物性、透明性、及び厚み均一性を考慮すると、MD及びTDそれぞれ2.7倍乃至4.0倍の範囲であることが好ましい。延伸倍率が2.7倍未満である場合、得られる二軸延伸ポリアミドフィルムの引張強度や衝撃強度が不十分となる虞がある。また4.0倍超の場合、延伸により過度な分子鎖のひずみが発生するため、延伸加工時に破断やパンクが頻繁に発生し、安定的に生産出来ない虞がある。
延伸温度は、40℃乃至80℃の範囲が好ましく、特に好ましくは45℃乃至65℃である。このように二軸延伸加工を施すことにより、特に強度物性が飛躍的に向上し、かつ異方性が少ない二軸延伸ポリアミドフィルムを得ることできる。
【0035】
<熱処理する工程>
本発明の製造方法は、二軸延伸する工程で得られた二軸延伸フィルムを熱処理する工程をさらに含むことができる。二軸延伸フィルムを熱処理することにより、熱寸法安定性により優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを得ることができる。
熱処理する方法としては、例えば、得られた二軸延伸ポリアミドフィルムを熱ロール方式若しくはテンター方式、又はそれらを組み合わせた熱処理設備に任意の時間投入し、例えば、180℃乃至240℃、特に好ましくは190℃乃至210℃で熱処理を行う方法などが挙げられる。熱処理温度が240℃よりも高い場合は、ボーイング現象が大きくなり過ぎて幅方向での異方性が増加する、又は結晶化度が高くなり過ぎるため強度物性が低下してしまう虞がある。一方、熱処理温度が180℃よりも低い場合は、フィルムの熱寸法安定性が大きく低下するため、ラミネートや印刷加工時にフィルムが縮み易くなって、実用上問題が生じる虞がある。
【0036】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは、特に制限されるものでは無いが、一般にコンバーティングフィルムとして、すなわち積層体の一積層要素として用いる場合は、通常5~50μmであり、好ましくは10~30μmである。
【0037】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、その4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)における引張破断強度のうち、最大値と最小値の比を1.25以下に調整することが好ましく、好ましくは1.23以下である。これによりさらに優れたラミネート加工適正を付与することが可能となる。
また本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、その4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)における引張破断強度が、それぞれ独立に、230MPa以上、240MPa以上、250MPa以上、260MPa以上、270MPa以上、280MPa以上、又は290MPa以上にすることができる。
また本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの一態様において、その4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)における引張破断強度は、いずれも230MPa以上にすることができる。また上記4方向の引張破断強度は、例えばいずれも240MPa以上、250MPa以上、又は260MPa以上にすることができる。これにより、耐ピンホール性や耐衝撃性、耐突刺性、およびラミネート加工適性等を格段に向上させることができる。なお引張破断強度が230MPaより小さい場合、十分な強度が得られず、破袋等の原因にもなる虞がある。
さらに本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの一態様において、その引張破断伸度は、例えば90%以上150%以下であり、95%以上130%以下であることが好ましい。引張破断伸度を上記範囲とすることにより、ラミネート工程中のフィルムの破断や伸び等の発生を抑制することができる。
【0038】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、単独で用いることも可能だが、一種または二種以上の他基材(積層要素)と共に積層体を構成する積層フィルムとして、例えば、他基材と貼り合わせるコンバーティングフィルムとして用いることが出来る。なお積層方法はラミネーティング(貼合)、コーティング(塗布)、共押出など特に限定されない。
上記他基材(積層要素)のうち、代表的なものとして、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸エチレン-ビニルアルコール系フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸芳香族ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリ塩化ビニリデンフィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、各種コートフィルム、各種蒸着フィルム、未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン-酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルム、未延伸ポリビニルアルコールフィルム、未延伸ポリアミドフィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、紙、不織布、発泡ポリスチレン等が挙げられる。他基材(積層要素)は1種のみ、又は2種以上を使用することができる。
【0039】
また、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは印刷用フィルムとして、すなわち、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷といった既知の印刷方法により印刷を施して用いることも出来る。
【0040】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、特に食品包装用の基材フィルムや絞り成形用の基材フィルムとして、例えば、リチウムイオン二次電池用や医薬品用PTP等の冷間(常温)成形用フィルム、および食品等の容器成形貼り合わせ用フィルムとして、好適に用いることが出来る。
【実施例0041】
以下に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0042】
<実施例1>
ポリアミド樹脂(A)(ポリアミド6)のペレット(融点=224℃)と、ポリアミド樹脂(C)のペレット(融点=224℃)とを、ポリアミド樹脂(A):ポリアミド樹脂(C)=1:99の質量比で混合した。
この混合した樹脂ペレットを押出機中、シリンダーおよびダイ温度210~260℃の条件で溶融混練して溶融管状薄膜を環状ダイより下方に押し出した。引き続き、冷却マンドレルの外径を通しガイドロールで折り畳んだ後、引取ニップロールにより1.2m/分の速度で製膜引取りを行った。未延伸フィルムの厚みは130μm、折径は143mmであり、ポリアミド樹脂中にはあらかじめ滑剤としてステアリン酸マグネシウムを1000ppm添加した。
図1に示す構造のチューブラー同時二軸延伸装置にて、上記の条件で製膜した未延伸フィルム1を20℃の雰囲気中でニップロール2まで搬送し、縦横同時二軸延伸を行った。延伸倍率はMDが3.0倍、TDが2.8倍であり、延伸温度は60℃であった。次に、この二軸延伸フィルム7を熱ロール式熱処理装置、次いでテンター式熱処理設備に投入し、210℃で熱処理を施すことにより本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。なお、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは15μmであった。
【0043】
(二軸延伸ポリアミドフィルムの引張破断強伸度の評価方法)
得られた二軸延伸ポリアミドフィルムの引張破断強伸度は、(株)オリエンテック製-テンシロン万能試験機(型式:RTC-1210-A)を使用し、試料幅15mm、チャック間100mm、引張速度200mm/分の条件で、0℃(MD)方向/45°方向/90°(TD)方向/135°方向の4方向それぞれについて測定を行った。得られた応力-ひずみ曲線に基づいて、各方向での引張破断強度及び引張破断伸度、ならびに4方向の引張破断強度のうち最大値と最小値の比を求めた。その結果を表1に示す。
【0044】
<実施例2~9、比較例1>
表1に示すポリアミド樹脂(A)と、ポリアミド樹脂(B)、ポリアミド樹脂(C)の混合比とした以外は、実施例1と同様に二軸延伸ポリアミドフィルムを製造し、その引張破断強伸度を測定した。得られた結果を併せて表1に示す。
【0045】
【0046】
表1に示すように、ケミカルリサイクルポリアミド樹脂[ポリアミド樹脂(A)]、もしくは熱分解油利用ポリアミド樹脂[ポリアミド樹脂(B)]を使用したフィルムにおいても、従来の化石燃料由来の原料のみを使用して製造されたポリアミド樹脂を用いたフィルム(比較例1)と同程度の機械物性(引張破断強度及び引張破断伸度)を有することが確認された。
本発明によって、従来よりも環境負荷が少なく、且つ、従来の化石燃料由来の原料を用いた二軸延伸ポリアミドフィルムと性能面において遜色のないフィルムを提供できる。