(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084432
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】船舶部品管理システム、船舶部品管理プログラム、及び、船舶部品管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20230612BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20230612BHJP
B63B 81/00 20200101ALI20230612BHJP
B63B 79/00 20200101ALI20230612BHJP
B63B 79/30 20200101ALI20230612BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230612BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
B63B49/00 Z
B63B81/00
B63B79/00
B63B79/30
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198610
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】522432262
【氏名又は名称】株式会社MarineSL
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(72)【発明者】
【氏名】志野 安樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の船舶それぞれの部品をAISの情報に基づいて管理する船舶部品管理システム、船舶部品管理プログラム及び船舶部品管理方法を提供する。
【解決手段】船舶部品管理システム100において、複数の船舶それぞれの航行状態、位置及び速力を含むAIS情報の履歴を示すAIS履歴データを取得するAIS履歴データ取得部2と、AIS履歴データを用いて、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出する稼働時間算出部4と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の船舶それぞれの航行状態、位置及び速力を含むAIS情報の履歴を示すAIS履歴データを取得するAIS履歴データ取得部と、
前記AIS履歴データを用いて、前記複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出する稼働時間算出部と、を備える、船舶部品管理システム。
【請求項2】
前記複数の船舶それぞれの航行状態を細分化して、前記複数の船舶それぞれの細分化ステータスを決定するステータス細分化部をさらに備え、
前記稼働時間算出部は、前記複数の船舶それぞれの前記細分化ステータスに基づいて、前記複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出する、請求項1に記載の船舶部品管理システム。
【請求項3】
前記ステータス細分化部は、速力、航行距離、及び/又は経過時間をパラメータとして、前記複数の船舶それぞれの航行状態を細分化する、請求項2に記載の船舶部品管理システム。
【請求項4】
前記稼働時間算出部により得られた稼働時間に基づいて、前記部品の交換時期を予測する交換時期予測部をさらに備える、請求項1乃至3の何れか一項に記載の船舶部品管理システム。
【請求項5】
前記船舶の部品の注文履歴を示す注文履歴データを取得する注文履歴データ取得部をさらに備える、請求項1乃至4の何れか一項に記載の船舶部品管理システム。
【請求項6】
前記稼働時間算出部により得られた稼働時間、又は前記交換時期予測部により得られた交換時期と、前記注文履歴データが示す注文履歴とからイミテーション部品の使用の有無又は可能性を判断するイミテーション判断部とをさらに備える、請求項5に記載の船舶部品管理システム。
【請求項7】
前記イミテーション判断部により得られた各部品のイミテーション部品の使用の有無又は可能性の判断結果を示す判断結果データに基づいて、前記複数の船舶それぞれのイミテーション部品の利用度合いを評価するイミテーション評価部をさらに備える、請求項6に記載の船舶部品管理システム。
【請求項8】
前記稼働時間算出部により得られた稼働時間、又は前記交換時期予測部により得られた交換時期と、前記注文履歴データが示す注文履歴とから将来の注文の時期及び量を予測する注文予測部とをさらに備える、請求項5乃至7の何れか一項に記載の船舶部品管理システム。
【請求項9】
複数の船舶それぞれの航行状態、位置及び速力を含むAIS情報の履歴を示すAIS履歴データを取得するAIS履歴データ取得部と、
前記AIS履歴データを用いて、前記複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出する稼働時間算出部との機能をコンピュータに備えさせることを特徴とする、船舶部品管理プログラム。
【請求項10】
複数の船舶それぞれの航行状態、位置及び速力を含むAIS情報の履歴を示すAIS履歴データを取得し、
前記AIS履歴データを用いて、前記複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出する、船舶部品管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の船舶それぞれの部品を管理する船舶部品管理システム、船舶部品管理プログラム、及び、船舶部品管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、船舶機器のメンテナンス時期を算出する船舶機器メンテナンス判定装置が考えられている。
【0003】
この船舶機器メンテナンス判定装置は、船舶の速度(船速)と、船舶を移動させる動力源となる船舶機器から出力される馬力とに基づいて、船舶機器の状態と、船舶としての航行性能が低下しているかを判定し、それによって、メンテナンス時期を判定するものである。なお、この船舶機器メンテナンス判定装置では、船速に影響を与える影響因子として風の影響及び波の影響を考慮して、船舶機器の馬力を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の船舶機器メンテンナンス判定装置では、船速及び馬力という2つのパラメータによって船舶機器のメンテナンス時期を判定するだけである。
【0006】
一方で、近年では、特定の船舶に対し、AIS(自動船舶識別装置)を搭載することが義務づけられており、当該AISを活用した航行支援システムが構築されている。このAISは、船舶の識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態及びその他の安全に関する情報(以下、AIS情報)を自動的にVHS帯電波で送受信し、船舶局相互間及び船舶局と陸上局の航行援助施設等との間で情報の交換を行うシステムである。
【0007】
このような状況下において、本発明者は、AIS情報を活用して船舶の部品を管理するという従来には無い着想に基づいて、船舶の部品を管理するシステムの開発を進めている。
【0008】
そして、本発明は、上記のAIS情報を活用して船舶の部品を管理するという着想に基づいてなされたものであり、複数の船舶それぞれの部品をAISの情報に基づいて管理する船舶部品管理システムを提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る船舶部品管理システムは、複数の船舶それぞれの航行状態、位置及び速力を含むAIS情報の履歴を示すAIS履歴データを取得するAIS履歴データ取得部と、前記AIS履歴データを用いて、前記複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出する稼働時間算出部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような船舶部品管理システムであれば、AIS履歴データを用いて、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出するので、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間に基づいて、複数の船舶それぞれの部品を管理することができる。
【0011】
AIS情報に含まれる航行状態では船舶のステータスが大雑把であり、精度良く部品の稼働時間を算出することが難しい場合がある。
このため、本発明の船舶部品管理システムは、前記複数の船舶それぞれの航行状態を細分化して、前記複数の船舶それぞれの細分化ステータスを決定するステータス細分化部をさらに備え、前記稼働時間算出部は、前記複数の船舶それぞれの前記細分化ステータスに基づいて、前記複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出することが望ましい。
【0012】
航行状態からステータスを細分化するための具体的な実施の態様としては、前記ステータス細分化部は、速力、航行距離、及び/又は経過時間をパラメータとして、前記複数の船舶それぞれの航行状態を細分化することが望ましい。
【0013】
本発明の船舶部品管理システムは、前記稼働時間算出部により得られた稼働時間に基づいて、前記部品の交換時期を予測する交換時期予測部をさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、部品の交換時期を予測することによって、船主は、船舶のメンテナンス(例えば部品の交換)を適切なタイミングで行うことができるし、部品メーカは、船主に対して適切なタイミングで新しい部品への交換の提案又は新しい部品の供給をすることができる。
【0014】
部品の注文履歴を用いることにより、注文間隔が想定よりも長い場合には、イミテーション部品の使用が疑われる。しかし、その注文間隔は、船舶の運行状況に応じて変化するため、注文履歴から求まる注文間隔だけで判断すると、イミテーション部品の使用の可能性の判断が不正確となる。
そのため、本発明の船舶部品管理システムは、前記船舶の部品の注文履歴を示す注文履歴データを取得する注文履歴データ取得部と、前記稼働時間算出部により得られた稼働時間、又は前記交換時期予測部により得られた交換時期と、前記注文履歴データが示す注文履歴とからイミテーション部品の使用の有無又は可能性を判断するイミテーション判断部とをさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、稼働時間算出部により得られた稼働時間、又は交換時期予測部により得られた交換時期と、注文履歴データが示す注文履歴とからイミテーション部品の使用の有無又は可能性を判断するので、イミテーション部品の使用可能性の判断の精度を向上させることができる。
【0015】
各部品に対してイミテーション部品の使用可能性を判断するだけでなく、船舶全体としてのイミテーションの利用度合いを評価するためには、本発明の船舶部品管理システムは、前記イミテーション判断部により得られた各部品のイミテーション部品の使用の有無又は可能性の判断結果を示す判断結果データに基づいて、前記複数の船舶それぞれのイミテーション部品の利用度合いを評価するイミテーション評価部をさらに備えることが望ましい。
【0016】
本発明の船舶部品管理システムは、前記船舶の部品の注文履歴を示す注文履歴データを取得する注文履歴データ取得部と、前記稼働時間算出部により得られた稼働時間、又は前記交換時期予測部により得られた交換時期と、前記注文履歴データが示す注文履歴とから将来の注文の時期及び量を予測する注文予測部とをさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、稼働時間算出部により得られた稼働時間、又は交換時期予測部により得られた交換時期と、注文履歴データが示す注文履歴とから将来の注文の時期及び量を予測するので、部品メーカの部品の在庫量を調整することができる。
【0017】
また、本発明に係る船舶部品管理プログラムは、複数の船舶それぞれの航行状態、位置及び速力を含むAIS情報の履歴を示すAIS履歴データを取得するAIS履歴データ取得部と、前記AIS履歴データを用いて、前記複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出する稼働時間算出部との機能をコンピュータに備えさせることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明に係る船舶部品管理方法は、複数の船舶それぞれの航行状態、位置及び速力を含むAIS情報の履歴を示すAIS履歴データを取得し、前記AIS履歴データを用いて、前記複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上に述べた本発明によれば、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を客観的なデータに基づいて算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る各船舶、AIS関連施設及び船舶部品管理システムの関係を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る船舶部品管理システムの機能構成図である。
【
図3】同実施形態のステータスの細分化を示すフローチャートの一例である。
【
図4】同実施形態の稼働補機数対応表の一例である。
【
図5】同実施形態の補機稼働時間の算出方法を示す模式図である。
【
図6】同実施形態の各船舶毎の「イミテーション」評価表の一例である。
【
図7】同実施形態の各部品に対する評価基準及び各船舶に対する評価基準の一例である。
【
図8】同実施形態の次回の交換時期の算出結果を示す一例である。
【
図9】同実施形態の次回の発注予測日の算出結果を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態に係る船舶部品管理システムについて、図面を参照して説明する。
【0022】
<装置構成>
本実施形態の船舶部品管理システム100は、AIS(自動船舶識別装置)により得られた複数の船舶それぞれのAIS情報の履歴を示すAIS履歴データを用いて、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出し、それら部品の管理を行うものである。
【0023】
ここで、AIS(自動船舶識別装置)とは、各船舶に搭載されて、船舶の識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態及びその他の安全に関する情報を自動的にVHF帯電波で送受信し、船舶局相互間及び船舶局と陸上局の航行援助施設等との間で情報の交換を行うシステムである。
【0024】
具体的に船舶部品管理システム100は、
図1に示すように、CPU101、メモリ102、入出力インターフェース103、キーボード等の入力手段104、ディスプレイ等の表示手段105、及び、外部機器に対してインタネット等の通信回線NTを介して通信する通信手段106等を有する専用又は汎用のコンピュータである。
【0025】
そして、船舶部品管理システム100は、メモリに格納された船舶管理プログラムに基づいて、CPU及び周辺機器が協働することによって、
図2に示すように、AIS履歴データ取得部2、ステータス細分化部3、稼働時間算出部4、注文履歴データ取得部5、交換時期予測部6、イミテーション判断部7、イミテーション評価部8等としての機能を発揮する。その他、船舶部品管理システム100は、メモリ102から構成されるデータ格納部D1を有している。
【0026】
以下、各部2~8の機能について説明する。
【0027】
AIS履歴データ取得部2は、AIS関連施設から複数の船舶それぞれのAIS情報の履歴を示すAIS履歴データを取得するものである。ここで、AIS情報の履歴には、船舶の識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態及びその他の安全に関する情報が含まれている。また、AIS履歴データには、例えば直近3年~6年のAIS情報の履歴が含まれている。このAIS履歴データ取得部2により取得されたAIS履歴データは、各船舶毎にデータ格納部D1に格納される。
【0028】
ステータス細分化部3は、複数の船舶それぞれの航行状態を細分化して、複数の船舶それぞれの細分化ステータスを決定する。具体的にステータス細分化部3は、
図3に示すように、速度、航行距離及び/又は経過時間等をパラメータとして、複数の船舶それぞれの航行状態を細分化することができる。
【0029】
ここで、航行状態(運行状況)としては、例えば、「Under way using engine(動力航行中)」、「Under way sailing(帆走中)」、「Not under command(操船不能)」、「Restricted maneuverability(操船性能に制限あり)」、「Constrained by her draught(喫水制限あり)」、「Engaged in Fishing(漁業操業中)」、「Moored(繋留中)」、「At Anchor(錨泊中)」、「Aground(座礁)」等を挙げることができる。
【0030】
例えば、ステータス細分化部3は、船舶の航行状態A(
図3の「ステータスA」)を、「前回測定時からの経過時間は〇〇以上か」否か、「前回測定時からの航行距離は〇〇以上か」否かに基づいて、「ステータスA」を新たに「新ステータスα」、「新ステータスβ」、「新ステータスγ」、「新ステータスδ」に細分化する。なお、
図3には、経過時間及び航行距離に基づいて、細分化した例を示しているが、細分化するためのパラメータとして、「前回測定時からの速力の変化は〇〇以上か」否か等のように、速力を加えても良い。
【0031】
稼働時間算出部4は、AIS履歴データを用いて、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出するものである。具体的に稼働時間算出部5は、上記のステータス細分化部3により得られた複数の船舶それぞれの細分化ステータスに基づいて、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出する。
【0032】
より詳細には、稼働時間算出部4は、
図4に示すように、船舶の種類と細部化されたステータスとに応じて稼働している補機(発電機)の台数を割り当てた稼働補機数対応表を用いて、各船舶が「過去の一定期間(2つのAISデータの時間間隔)」でどの程度補機を稼働させているか(つまり稼働率)を算出する。これにより、稼働時間算出部4は、過去の補機稼働時間を算出することができ、また、単位実時間当たりの補機稼働時間を算出することができる。なお、稼働補機数対応表は、過去の実績データ(各ステータスにおける補機稼働実績)に基づいて予め設定されたものである。
【0033】
具体的には、
図5に示すように、時刻t1と時刻t2との間の補機稼働時間を算出する場合には、時間t1のAIS履歴データを用いて「細分化ステータス1」に細分化し、その細分化ステータス1と稼働補機数対応表とを用いて、補機稼働台数1(稼働率)を算出する。また、時間t2のAIS履歴データを用いて「細分化ステータス2」に細分化し、その細分化ステータス2と稼働補機数対応表とを用いて、補機稼働台数2(稼働率)を算出する。そして、時刻t1と時刻t2との間の補機稼働時間を算出する場合には、(時刻t1-時刻t2)×「補機稼働時間1」により、過去の一定期間(時刻t1、t2の時間間隔)」における補機稼働時間を算出する。これを複数のAIS履歴データに対して行い、累積の補機稼働時間を算出する。
【0034】
注文履歴データ取得部5は、船舶の部品の注文履歴を示す注文履歴データを取得する。ここで、注文履歴データには、各船舶毎に注文された部品の種類、個数及び発注日等が含まれている。この注文履歴データは、例えば部品メーカの顧客管理装置から注文履歴データ取得部5に送信することができる。
【0035】
交換時期予測部6は、稼働時間算出部4により得られた稼働時間に基づいて、部品の交換時期を予測するものである。具体的に交換時期予測部6は、
図6に示すように、稼働時間算出部4により得られた稼働時間と、各部品に設定された耐用期間とから、交換時期を予測することができる。なお、
図6中の「交換間隔基準」は、実績交換基準を示している。ここで、交換時期予測部6は、注文履歴データに含まれる最終発注日からの経過時間も考慮して、交換時期を予測することができる。本実施形態の交換時期予測部6は、次回交換日として、「単純計算」、「信頼区間40%」の始点及び終点、「信頼区間80%」の始点及び終点を算出する。その他、交換時期予測部6は、AIS履歴データから求まる船舶の運行状況の傾向(つまり、補機稼働率等の傾向)基づいて、交換時期を予測することができる。
【0036】
イミテーション判断部7は、稼働時間算出部4により得られた稼働時間、又は交換時期予測部6により得られた交換時期と、注文履歴データが示す注文履歴とからイミテーション部品の使用の有無又は可能性を判断する。具体的にイミテーション判断部7は、各船舶毎に、補機に関するそれぞれの部品について、イミテーション部品の使用の有無又は可能性を判断する。
【0037】
具体的には、イミテーション判断部7は、
図7(a)に示すように、以下の各部品に対する評価基準(ここでは、6段階)に基づいて、イミテーション部品の使用の有無又は可能性を判断する。
【0038】
「評価a」:とても頻繁に交換していることを示すものであり、「実用上の交換基準」の「70%」以内の稼働時間で交換している場合。
「評価b」:実用上の交換基準無いで交換していることを示すものであり、「実用上の交換基準」以内で交換している場合。
「評価c」:実用上の交換基準無いよりも少し遅く交換していることを示すものであり、「実用上の交換基準」の「200%」以内の稼働時間で交換している場合。
「評価d」:イミテーション利用/無交換が常態化していると判断される一歩手前で交換していることを示すものであり、「実用上の交換基準」の「400%」以内の稼働時間で交換している場合。
「評価f」:イミテーション利用/無交換が常態化していることを示すものであり、上記の「評価a~d」以外であって、次の「評価0」以外の場合。
「評価0」:機関運転時間が少なく交換されていない、又は、無交換の常態化・イミテーション部品を常用している状態を示すものであり、2回以上の部品出荷実績がない場合。
【0039】
上記において、「実用上の交換基準」とは、例えば「当該部品を2回以上交換している船主」が交換した当該部品について、その交換間隔時間の下位40%に相当する値に設定することができる。なお、「実用上の交換基準」は、実情に即して適宜変更可能である。
【0040】
そして、イミテーション判断部7は、
図8に示すように、各部品毎(例えば「オイリングバルブ」、「プランジャ」、「ベンガイド」、「デリバリバルブ」等)に上記評価基準を当てはめて、各部品毎の「イミテーション」評価表を作成する。これにより、各部品毎のイミテーションの疑わしさを評価することができる。
【0041】
また、イミテーション評価部8は、イミテーション判断部7により得られた各部品のイミテーション部品の使用の有無又は可能性の判断結果を示す判断結果データに基づいて、複数の船舶それぞれのイミテーション部品の利用度合いを評価する。
【0042】
具体的には、イミテーション評価部8は、
図7(b)に示すように、以下の各船舶に対する評価基準(ここでは、7段階)に基づいて、各船舶のイミテーション部品の利用度合いに点数を付けて評価する。
【0043】
「評価A」:ほぼ全ての部品を実用交換時間以内に交換している超優良船を示すものであり、評価点の水準が2.5以上の場合。
「評価B」:多くの部品を実用交換時間以内で交換している優良船を示すものであり、評価点の水準が「2以上」の場合。
「評価C」:多くの部品で定期オーダーがあるが、一部にイミテーション部品の使用が疑われる船を示すものであり、評価点の水準が「1以上」の場合。
「評価D」:主要な部品は定期オーダーがあるが、明らかにイミテーション部品を常用している船を示すものであり、評価点の水準が「0以上」の場合。
「評価E」:多くの部品でイミテーション部品の仕様が疑われるが、一部に部品で定期オーダーの実績がある船を示すものであり、評価点の水準が「-2~0」の場合。
「評価F」:主要な部品で一切の出荷実績が存在しない船を示すものであり、評価点の水準が「No order」の場合。
「評価n/a」:建造後間もないため、十分な出荷、AISデータの蓄積がない船を示すものであり、評価点の水準が「出荷日2017/1/1~、かつ、評価F」の場合。
【0044】
ここで、各船舶の評価点は、各船舶毎の部品評価の加重平均であり、例えば、各部品評価について「評価a:4点」、「評価b:3点」、「評価c:2点」、「評価d:1点」、「評価f:-1点」、「評価0:0点」と設定することが考えられる。
【0045】
そして、イミテーション評価部8は、
図8に示すように、各船舶毎に、各部品の評価を積み上げて「RAS評価点」を算出し、当該「RAS評価点」に基づいて総合評価(上記の「評価A~n/a」)を当てはめる。これら各船舶毎の総合評価も「イミテーション評価表」に一覧表示される。
【0046】
<本実施形態の効果>
このように構成した船舶部品管理システム100であれば、AIS履歴データを用いて、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出するので、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間に基づいて、複数の船舶それぞれの部品を管理することができる。
【0047】
特に本実施形態では、複数の船舶それぞれの航行状態を細分化し、その細分化ステータスに基づいて、複数の船舶それぞれの部品の稼働時間を算出するので、稼働時間を精度良く部品の稼働時間を算出することができる。
【0048】
また、本実施形態では、稼働時間算出部4により得られた稼働時間に基づいて、部品の交換時期を予測しているので、船主は、船舶のメンテナンスを適切なタイミングで行うことができるし、部品メーカは、船主に対して適切なタイミングで部品を供給することができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、稼働時間算出部4により得られた稼働時間、又は交換時期予測部6により得られた交換時期と、注文履歴データが示す注文履歴とからイミテーション部品の使用の有無又は可能性を判断するので、イミテーション部品の使用可能性の判断の精度を向上させることができる。
【0050】
加えて、イミテーション判断部により得られた各部品のイミテーション部品の使用の有無又は可能性の判断結果を示す判断結果データに基づいて、複数の船舶それぞれのイミテーション部品の利用度合いを評価しているので、各部品に対してイミテーション部品の使用可能性を判断するだけでなく、船舶全体としてのイミテーションの利用度合いを評価することができる。
【0051】
<その他の実施形態>
例えば、部品管理システムは、
図9に示すように、稼働時間算出部により得られた稼働時間、又は交換時期予測部により得られた交換時期と、注文履歴データが示す注文履歴とから将来の注文の時期及び量を予測する注文予測部をさらに備えていても良い。
【0052】
ここで、注文予測部は、稼働時間算出部により得られた稼働時間から、例えば1台分発注間の平均稼働時間及び1日平均稼働時間を算出し、注文履歴データから最終発注日を抽出して、部品の注文の時期及び量を予測する。例えば、注文予測部は、「1台分」発注予測日、「2台分」発注予測日及び「3台分」発注予測日を予測する。ここで、「1台分」は、補機1台に必要な部品数(単位個数)を示しており、例えば、「1台分」が6個の部品であれば、「2台分」は12個の部品、「3台分」は18個の部品となる。
【0053】
前記実施形態において、交換時期予測部を有さない構成としても良いし、イミテーション判断部又はイミテーション評価部を有さない構成としても良い。
【0054】
また、前記実施形態では、ステータス細分化部により航行状態を細分化しているが、航行状態を細分化することなく、AIS情報に含まれる航行状態を用いて、補機稼働台数を求め、部品の稼働時間を算出する構成としても良い。
【0055】
さらに、前記実施形態の船舶部品管理システムは、補機である発電機の部品を管理するものであったが、発電機以外の補機の部品を管理するものであっても良いし、船舶の主機関の部品を管理するものであっても良い。
【0056】
その上、前記実施形態の船舶部品管理システム100の機能の一部をクラウドサーバに設ける構成としても良い。
【0057】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0058】
100・・・船舶部品管理システム
2 ・・・AIS履歴データ取得部
3 ・・・ステータス細分化部
4 ・・・稼働時間算出部
5 ・・・注文履歴データ取得部
6 ・・・交換時期予測部
7 ・・・イミテーション判断部
8 ・・・イミテーション評価部
9 ・・・注文予測部