(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084435
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】点滴監視装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20220101AFI20230612BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20230612BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G01F1/00 J
G01F1/00 Q
A61M5/14 520
A61M5/168 532
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198615
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】松浦 浩二
(72)【発明者】
【氏名】田北 人士
【テーマコード(参考)】
2F030
4C066
【Fターム(参考)】
2F030CA02
2F030CB03
2F030CC01
2F030CE02
2F030CE04
2F030CE22
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066QQ01
4C066QQ45
4C066QQ52
4C066QQ75
4C066QQ78
(57)【要約】
【課題】滴間隔を正確に測定できる点滴監視装置を提供すること。
【解決手段】点滴監視装置1は、受光部6により受光された光の変化を信号の変化として検出する信号変化検出部82と、信号変化検出部82により検出された信号の変化を、液滴として認識する液滴認識部83と、信号変化検出部82により検出された信号の変化を液滴認識部83により液滴として認識しないマスク期間を設定する液滴処理部84と、液滴認識部83により液滴として認識された信号の変化の間隔を滴間隔として測定する滴間隔測定部85と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点滴筒内において輸液の液滴の滴下を監視する点滴監視装置であって、
前記液滴に対して光を照射する発光部と、
前記発光部から照射された光を受光する受光部と、
前記受光部により受光された光の変化を信号の変化として検出する信号変化検出部と、
前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化を、前記液滴として認識する液滴認識部と、
前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化を前記液滴認識部が前記液滴として認識しないマスク期間を設定する液滴処理部と、
前記液滴認識部により液滴として認識された信号の変化の間隔を滴間隔として測定する滴間隔測定部と、を備える点滴監視装置。
【請求項2】
前記液滴処理部は、直前に測定された前記滴間隔に基づいて前記液滴認識部により前記液滴を認識しないマスク期間を設定する、請求項1に記載の点滴監視装置。
【請求項3】
前記滴間隔測定部により測定された滴間隔に基づいて、前記輸液の流量を算出する流量算出部を更に備える請求項1又は2に記載の点滴監視装置。
【請求項4】
前記流量算出部は、一定期間内に前記液滴認識部により認識された前記液滴の前記滴間隔に基づいて、前記輸液の流量を算出する、請求項3に記載の点滴監視装置。
【請求項5】
前記液滴認識部により前記液滴を認識すると、前記液滴の認識を報知するために、発光装置を発光させる報知制御部を更に備える請求項1から4のいずれか一項に記載の点滴監視装置。
【請求項6】
前記液滴処理部は、前記滴間隔が処理可能期間未満の場合、前記マスク期間を設定しない、請求項1から5のいずれか一項に記載の点滴監視装置。
【請求項7】
点滴筒内において輸液の液滴の滴下を監視する点滴監視装置であって、
前記液滴に対して光を照射する発光部と、
前記発光部から照射された光を受光する受光部と、
前記受光部により受光された光の変化を信号の変化として検出する信号変化検出部と、
前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化を、前記液滴として認識する液滴認識部と、
前記液滴認識部により液滴として認識された信号の変化の間隔を滴間隔として測定する滴間隔測定部と、
前記滴間隔が所定期間以上の場合、当該滴間隔を前記輸液の流量算出の対象と判定し、前記滴間隔が前記所定期間未満の場合、当該滴間隔の測定に用いられた2つの信号の変化のうち、後に検出された信号の変化を前記滴間隔測定部による前記滴間隔の測定対象外と判定する液滴処理部と、を備える点滴監視装置。
【請求項8】
前記液滴処理部は、直前に測定された前記滴間隔に基づいて前記所定期間を設定する、請求項7に記載の点滴監視装置。
【請求項9】
前記液滴処理部によって流量算出の対象と判定された前記滴間隔に基づいて、前記輸液の流量を算出する流量算出部を更に備える請求項7又は8に記載の点滴監視装置。
【請求項10】
前記流量算出部は、一定期間内に前記液滴処理部によって流量算出の対象と判定された前記滴間隔に基づいて、前記輸液の流量を算出する、請求項9に記載の点滴監視装置。
【請求項11】
前記液滴認識部により前記液滴を認識すると、前記液滴の認識を報知するために、発光装置に表示させる報知制御部を更に備える請求項7から10のいずれか一項に記載の点滴監視装置。
【請求項12】
前記液滴処理部は、前記滴間隔が処理可能期間未満の場合、前記流量算出の対象を判定する処理を実行しない、請求項7から11のいずれか一項に記載の点滴監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸液治療時に使用される輸液セットの点滴筒の滴下口に形成された液滴を監視する点滴監視装置が知られている。点滴監視装置は、輸液の流量等を監視し、医師や看護師等の医療従事者は、監視結果に基づき適切な処置を行うことができる。
【0003】
このような点滴監視装置は、発光部及び受光部を備え、発光部から光を照射し、液滴によって減衰される光を受光部において検出することによって点滴筒内における液滴を検出し、滴下される液滴の間隔から輸液の流量を算出している。しかし、このような点滴監視装置では、液滴の跳ね返り等が生じた場合に液滴の誤検出が発生する場合がある。
【0004】
そこで、液滴の跳ね返り等による誤検出を防ぐために、発光素子と受光素子とを点滴筒の同一側面に配置し、発光素子からの出力された光が点滴筒内で落下する液滴に当たり、散乱した光を受光素子で検出する点滴モニタ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、点滴筒内で落下した液滴が液面に衝突した場合に、液面からの跳ね返りの液滴が発光部及び受光部の位置まで到達することがある。点滴監視装置は、上から落下してくる液滴と下から跳ね返ってくる液滴の両方で受光部の出力は低下して、液滴と認識してしまう可能性がある。この場合、点滴監視装置は液滴を誤検出してしまい、輸液の流量を算出するための滴間隔を正確に測定できない。
【0007】
したがって、本発明は、滴間隔を正確に測定できる点滴監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、点滴筒内において輸液の液滴の滴下を監視する点滴監視装置であって、前記液滴に対して光を照射する発光部と、前記発光部から照射された光を受光する受光部と、前記受光部により受光された光の変化を信号の変化として検出する信号変化検出部と、前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化を、前記液滴として認識する液滴認識部と、前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化を前記液滴認識部により前記液滴として認識しないマスク期間を設定する液滴処理部と、前記液滴認識部により液滴として認識された信号の変化の間隔を滴間隔として測定する滴間隔測定部と、を備える。
【0009】
また、前記液滴処理部は、直前に測定された前記滴間隔に基づいて前記液滴認識部により前記液滴を認識しないマスク期間を設定する。
【0010】
また、点滴監視装置は、前記滴間隔測定部により測定された滴間隔に基づいて、前記輸液の流量を算出する流量算出部を更に備える。
【0011】
また、前記流量算出部は、一定期間内に前記液滴認識部により認識された前記液滴の前記滴間隔に基づいて、前記輸液の流量を算出する。
【0012】
また、前記点滴監視装置は、前記液滴認識部により前記液滴を認識すると、前記液滴の認識を報知するために、発光装置を発光させる報知制御部を更に備える。
【0013】
また、前記液滴処理部は、前記滴間隔が処理可能期間未満の場合、前記マスク期間を設定しない。
【0014】
本発明は、点滴筒内において輸液の液滴の滴下を監視する点滴監視装置であって、前記液滴に対して光を照射する発光部と、前記発光部から照射された光を受光する受光部と、前記受光部により受光された光の変化を信号の変化として検出する信号変化検出部と、前記信号変化検出部により検出された前記信号の変化を、前記液滴として認識する液滴認識部と、前記液滴認識部により液滴として認識された信号の変化の間隔を滴間隔として測定する滴間隔測定部と、前記滴間隔が所定期間以上の場合、当該滴間隔を前記輸液の流量算出の対象と判定し、前記滴間隔が前記所定期間未満の場合、当該滴間隔の測定に用いられた2つの信号の変化のうち、後に検出された信号の変化を前記滴間隔測定部による前記滴間隔の測定対象外と判定する液滴処理部と、を備える。
【0015】
また、前記液滴処理部は、直前に測定された前記滴間隔に基づいて前記所定期間を設定する。
【0016】
また、点滴監視装置は、前記液滴処理部によって流量算出の対象と判定された前記滴間隔に基づいて、前記輸液の流量を算出する流量算出部を更に備える。
【0017】
また、前記流量算出部は、一定期間内に前記液滴処理部によって流量算出の対象と判定された前記滴間隔に基づいて、前記輸液の流量を算出する。
【0018】
また、前記点滴監視装置は、前記液滴認識部により前記液滴を認識すると、前記液滴の認識を報知するために、発光装置に表示させる報知制御部を更に備える。
【0019】
また、前記液滴処理部は、前記滴間隔が処理可能期間未満の場合、前記流量算出の対象を判定する処理を実行しない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、滴間隔を正確に測定できる点滴監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る点滴監視装置の概要を示す図である。
【
図3】滴間隔と流量の算出との関係を示す図である。
【
図4】跳ね返りの液滴を液滴の滴下として認識した場合の滴間隔と流量の算出との関係を示す図である。
【
図5】跳ね返りの液滴をマスクする場合の滴間隔と流量の算出との関係を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る点滴監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】跳ね返りの液滴を流量の算出の対象外とする場合の滴間隔と流量の算出との関係を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る点滴監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、点滴監視装置1は、発光部5と、受光部6と、増幅回路7と、制御部8と、制御回路9と、LEDドライバ10と、LED11と、LCDドライバ12と、LCD13と、を備える。また、点滴監視装置1は、各構成要素に電力を供給するための電源(図示せず)を備える。
【0023】
点滴監視装置1は、点滴を監視するための装置であり、例えば医療機関において輸液治療時に使用される。輸液は、輸液バッグ2から輸液チューブに供給され、輸液チューブの途中に設けられた点滴筒3へ入る。点滴監視装置1は、点滴筒3の滴下口に形成された液滴D(以下、単に液滴という)の滴下を監視する。また、輸液の量は、輸液チューブの中途部分を開閉するためのクレンメ4により調節される。
【0024】
発光部5は、点滴筒3内を滴下する液滴に対して光を照射する。発光部5から照射する光は、可視光であっても、赤外光であってもよい。本実施形態では、発光部5から照射する光として、赤外光を使用している。発光部5は、例えば、1又は複数のLEDで構成される。
【0025】
受光部6は、受光した光の強さに応じて出力電圧が変化するように構成された受光素子である。例えば、受光部6は、受光した光の強さが強ければ、出力電圧が高くなり、受光した光の強さが弱ければ、出力電圧が低くなる。
【0026】
受光部6は、発光部5に対向して配置される。発光部5から照射された光は、液滴を通過すると減衰され、受光部6において受光される。光が減衰されたため、受光した光の強さは弱くなり、受光部6からの出力電圧は、液滴が通過しない場合に比べて低くなる。このことを利用して点滴監視装置1は、液滴の滴下を検出する。
【0027】
増幅回路7は、受光部6からの出力電圧を増幅し、制御部8へ出力する。
【0028】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部8は、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)や、CPUがプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)等を備えてもよい。
制御回路9は、制御部8から制御信号に従い発光部5を制御する。
【0029】
LEDドライバ10は、制御部8からの制御信号に従いLED11を制御する。
LED(Light Emitting Diode)11は、LEDドライバ10の制御に従い発光する。LED11は、例えば、液滴が落下した場合に、一定時間点灯するように制御される。
【0030】
LCDドライバ12は、制御部8からの制御信号に従いLCD13を制御する。
LCD(Liquid Crystal Display)13は、LCDドライバ12の制御に従い画像を表示する。LCD13は、例えば、輸液の流量(mL/h)を表示するように制御される。
【0031】
図2に示すように、制御部8は、A/D変換部81と、信号変化検出部82と、液滴認識部83と、液滴処理部84と、滴間隔測定部85と、流量算出部86と、報知制御部87と、を備える。
【0032】
A/D変換部81は、増幅回路7から出力された電圧を、アナログ信号からデジタル信号に変換(A/D変換)する。
信号変化検出部82は、A/D変換部81から出力された信号の変化を検出する。すなわち、信号変化検出部82は、受光部5により受光された光の変化を信号の変化として検出する。
【0033】
液滴認識部83は、信号変化検出部82により検出された信号の変化を、輸液バッグ2からの液滴の滴下として認識する。
【0034】
液滴処理部84は、信号変化検出部82により検出された信号の変化を液滴認識部83により液滴として認識しないマスク期間を設定する。また、液滴処理部84は、後述の滴間隔測定部85において測定された滴間隔が処理可能期間未満の場合には、マスク期間を設定しない。
【0035】
滴間隔測定部85は、信号変化検出部82によって信号の変化を検出してから次の信号の変化を検出するまでの滴間隔を測定する。ここで、信号の変化及び次の信号の変化は、それぞれ、液滴認識部83によって認識された液滴に対応する信号の変化である、すなわち、滴間隔測定部85は、液滴認識部83によって認識された液滴に対応する信号の変化の間隔を滴間隔として測定する。
【0036】
流量算出部86は、液滴認識部83により認識された液滴の滴間隔に基づいて、輸液の流量を算出する。また、流量算出部86は、液滴処理部84によって流量算出の対象と判定された滴間隔に基づいて、輸液の流量を算出する。
【0037】
報知制御部87は、液滴認識部83により液滴を認識すると、液滴の認識を報知するために、LED11を発光させるための制御信号をLEDドライバ10へ出力する。
【0038】
次に、
図3から
図5を参照してマスク期間が設定されていない場合の制御部8の動作について詳述する。
図3は、滴間隔と流量の算出との関係を示す図である。
【0039】
まず、液滴認識部83は、信号変化検出部82により検出された信号の変化を、輸液バッグ2からの液滴の滴下として認識する。
滴間隔測定部85は、信号変化検出部82によって検出され液滴認識部83により液滴として認識された信号の変化を検出してから次の信号の変化を検出するまでの時間を測定し、測定した時間を滴間隔として抽出する。例えば、
図3に示すように、滴間隔測定部85は、信号変化検出部82によって検出され液滴認識部83により認識された5つの信号の変化に対応する液滴の滴間隔を抽出する。
【0040】
流量算出部86は、滴間隔測定部85によって抽出された5つの液滴の滴間隔に基づいて輸液の流量を算出する。
【0041】
具体的には、流量算出部86は、下記の式(1)を用いて輸液の流量を算出する(20滴で1mLを滴下する輸液セットを用いた場合)。
流量算出値A1(mL/h)=1(mL)×5(滴)/20(滴)/(滴間隔(秒))×3600(秒)・・・(1)
ここで、滴間隔は、
図3に示すように、
滴間隔=滴間隔D1+滴間隔D2+滴間隔D3+滴間隔D4+滴間隔D5・・・(2)
と示される。
【0042】
また、制御部8は、6滴目以降、液滴が落下するたびに、流量算出に使用する滴間隔を1つずつ新しい滴間隔に更新し、輸液の流量を算出する。具体的には、制御部8は、2滴目から6滴目では、更新された新たな滴間隔に基づいて、流量算出値A2を求め、3滴目から7滴目では、更新された新たな滴間隔に基づいて、流量算出値A3を求める。
【0043】
しかし、点滴筒3内で落下した液滴が液面に衝突すると、液面からの跳ね返りの液滴が、発光部5及び受光部6の位置まで到達する場合がある。この場合、点滴監視装置1は、上から落下してくる液滴と、下から跳ね返る液滴との両方を検出し、液滴の滴下として認識してしまう。
【0044】
図4は、跳ね返りの液滴を液滴の滴下として認識した場合の滴間隔と流量の算出との関係を示す図である。
図4において、液滴は、全て等間隔で落下している状態である。この状態において、3滴目に液面から跳ね返りが生じた場合、点滴監視装置1は、跳ね返りの液滴を液滴の滴下として認識してしまう。そのため、点滴監視装置1は、6滴目を待たずに、5つの滴間隔を抽出し、実際の流量よりも大きい流量算出値B1、B2、B3・・・を算出する。
【0045】
その結果、点滴監視装置1のLCD13に表示される流量算出値は、実際の流量値よりも大きい値となる。また、液滴の滴下間隔(流速)が相対的に遅い状態で、上記のように液面から跳ね返りが生じた場合、点滴監視装置1は、LCD13に表示される流量算出値が正しい値に更新されるまでに数十秒を要する。
【0046】
そこで、第1実施形態に係る点滴監視装置1は、信号変化検出部82により検出された信号の変化を液滴認識部83により液滴として認識しないマスク期間を設定する。これにより、点滴監視装置1は、跳ね返りの液滴による短い滴間隔が、流量算出値及びLCD13の表示に影響を与えることを防ぐことができる。
【0047】
図5は、跳ね返りの液滴をマスクする場合の滴間隔と流量の算出との関係を示す図である。
図5に示すように、液滴処理部84は、信号変化検出部82により検出された信号の変化を液滴認識部83により液滴として認識しないマスク期間を設定する。
【0048】
具体的には、液滴処理部84は、直前に測定された滴間隔に基づいて、信号変化検出部82により検出された信号の変化を、液滴認識部83により液滴として認識しないマスク期間を設定する。例えば、液滴処理部84は、直前に測定された滴間隔の50%の期間をマスク期間として設定する。これにより、跳ね返りの液滴が直前の滴間隔の50%未満であれば、液滴認識部83は、跳ね返りの液滴を液滴の滴下として認識しない。また、液滴処理部84は、例えば、直前に測定された5つの滴間隔の平均値の50%の期間をマスク期間として設定してもよい。また、液滴処理部84は、初期値として所定のマスク期間を予め設定してもよい。
【0049】
滴間隔測定部85は、信号変化検出部82によって信号の変化を検出してから次の信号の変化を検出するまでの時間を測定し、測定した時間を滴間隔として抽出する。ここで、滴間隔測定部85は、液滴認識部83によって認識された液滴に対応する信号の変化の間隔を滴間隔として測定する。すなわち、設定されたマスク期間に検出される跳ね返りの液滴に対応する信号の変化は、液滴認識部83によって液滴として認識されないため、滴間隔の測定には用いられない。
【0050】
図5に示す例では、3滴目に跳ね返りの液滴が生じているが、跳ね返りの液滴に対応する信号の変化は、マスク期間内に信号変化検出部82によって検出される。そのため、液滴認識部83は、
図5において滴間隔D3-1として示される跳ね返りの液滴を液滴の滴下として認識しない。よって、流量算出部86による流量算出の対象となる滴間隔は、滴間隔D1、滴間隔D2、滴間隔D3-2、滴間隔D4及び滴間隔D5となる。
【0051】
したがって、流量算出部86は、滴間隔D1、滴間隔D2、滴間隔D3-2、滴間隔D4及び滴間隔D5、上述した式(1)及び式(2)を用いて、輸液の流量として流量算出値C1を算出する。
【0052】
また、6滴目では、流量算出部86は、新しい滴間隔D1~D5に更新し、輸液の流量として流量算出値C2を算出する。これにより、点滴監視装置1は、適切な流量値を算出し、算出した流量値をLCD13に表示することができる。
【0053】
なお、上述した
図3から
図5の例では、流量算出部86は、一定期間(例えば、5つの滴間隔)内に液滴認識部83により認識された液滴の滴間隔に基づいて、輸液の流量を算出しているが、滴間隔の数は、これに限定されず、5未満又は6以上であってもよい。
【0054】
更に、液滴処理部84は、滴間隔が処理可能期間(例えば、直前の滴間隔の30%)未満の場合、マスク期間を設定しない。これにより、点滴監視装置1は、滴間隔が非常に短い場合、マスク期間を設定せずに輸液の流量を算出することができる。
【0055】
図6は、第1実施形態に係る点滴監視装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1において、受光部6は、発光部5から照射された光を受光する。
ステップS2において、増幅回路7は、受光部6からの出力電圧を増幅する。
【0056】
ステップS3において、A/D変換部81は、増幅回路7から出力された電圧をA/D変換する。
ステップS4において、信号変化検出部82は、A/D変換部81から出力された信号の変化を検出する。
【0057】
ステップS5において、液滴処理部84は、信号変化検出部82によって信号の変化を検出したときに、信号の変化の検出がマスク期間内であるか否かを判定する。信号の変化の検出がマスク期間内であると判定された場合(YES)、信号変化検出部82により検出された信号の変化は、液滴認識部83によって認識されず、処理は、再度ステップS1へ戻る。一方、信号の変化の検出がマスク期間内でないと判定された場合(NO)、処理は、ステップS6へ移る。尚、マスク期間が設定されていない場合には、ステップS5において、液滴処理部84は、信号の変化の検出はマスク期間内でないと判定する(NO)。
【0058】
ステップS6において、液滴認識部83は、信号変化検出部82により検出された信号の変化を、輸液バッグ2からの液滴の滴下として認識する。
【0059】
ステップS7において、滴間隔測定部85は、信号変化検出部82により検出され液滴認識部83により液滴として認識された信号の変化の間隔を滴間隔として測定する。
【0060】
ステップS8において、液滴処理部84は、滴間隔が処理可能期間T1(例えば、直前の滴間隔の30%)以上であるか否かを判定する。滴間隔が処理可能期間T1以上である場合(YES)、処理は、ステップS9へ移る。一方、滴間隔が処理可能期間T1未満である場合(NO)、処理は、ステップS10へ移る。
【0061】
ステップS9において、液滴処理部84は、滴間隔測定部85により測定された滴間隔に基づいて、信号変化検出部82により検出された信号の変化を、液滴認識部83により液滴として認識しないマスク期間を設定する。その後、処理は、ステップS11へ移る。
【0062】
ステップS10において、液滴処理部84は、滴間隔が処理可能期間T1未満の場合、マスク期間を設定せず、その後、処理は、ステップS11へ移る。
ステップS11において、流量算出部86は、液滴認識部83によって認識された液滴の滴間隔(例えば、5滴の滴間隔)に基づいて輸液の流量を算出する。
【0063】
ステップS12において、報知制御部87は、液滴認識部83により液滴を認識すると、液滴の認識を報知するために、LED11を発光させるための制御信号をLEDドライバ10へ出力する。その後、制御部8は、液滴が認識されるたびに、流量算出に使用する滴間隔を1つずつ新しい滴間隔に更新し、輸液の流量を算出する。
【0064】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る点滴監視装置1について説明する。第2実施形態に係る点滴監視装置1は、主として、液滴処理部84の処理において第1実施形態と異なる。詳細には、第2実施形態の点滴監視装置1は、第1実施形態において設定されたマスク期間に代えて、短い滴間隔の液滴を滴間隔の測定対象外とする処理を行う点で第1実施形態に係る点滴監視装置1とは異なる。
【0065】
第2実施形態では、液滴処理部84は、滴間隔測定部85によって測定された滴間隔が所定期間以上の場合、当該滴間隔を輸液の流量算出の対象と判定し、滴間隔が所定期間未満の場合、当該滴間隔の測定に用いられた2つの信号の変化のうち、後に検出された信号の変化を滴間隔測定部85による滴間隔の測定対象外と判定する。これにより、点滴監視装置1は、跳ね返りの液滴による短い滴間隔が、流量算出値及びLCD13の表示に影響を与えることを防ぐことができる。
【0066】
図7は、跳ね返りの液滴を滴間隔の測定対象外とする場合の滴間隔と流量の算出との関係を示す図である。
図7に示すように、液滴処理部84は、滴間隔が所定期間以上の場合、当該滴間隔を輸液の流量算出の対象と判定し、滴間隔が所定期間未満の場合、当該滴間隔の測定に用いられた2つの信号の変化のうち、後に検出された信号の変化を滴間隔の測定対象外と判定する。
【0067】
具体的には、液滴処理部84は、直前の滴間隔に基づいて所定期間(例えば、直前の滴間隔の50%)を設定し、滴間隔が所定期間(直前の滴間隔の50%)以上の場合、当該滴間隔を輸液の流量算出の対象と判定する。一方、液滴処理部84は、滴間隔が所定期間(直前の滴間隔の50%)未満の場合、当該滴間隔の測定に用いられた2つの信号の変化のうち、後に検出された信号の変化を滴間隔測定部85による滴間隔の測定対象外と判定する。
【0068】
図7に示す例では、3滴目に跳ね返りの液滴が生じているが、跳ね返りの液滴による滴間隔D3-1が直前の滴間隔の50%未満である。そのため、液滴処理部84は、滴間隔D3-1の測定に用いられた2つの信号の変化のうち、後に検出された信号の変化(すなわち、跳ね返りの液滴に対応する信号の変化)を滴間隔測定部85による滴間隔の測定対象外と判定する。その結果、跳ね返りの液滴による滴間隔D3-1は、流量算出の対象外となる。よって、流量算出部86による流量算出の対象となる滴間隔は、滴間隔D1、滴間隔D2、滴間隔D3-2、滴間隔D4及び滴間隔D5となる。
【0069】
したがって、流量算出部86は、滴間隔D1、滴間隔D2、滴間隔D3-2、滴間隔D4及び滴間隔D5、上述した式(1)及び式(2)を用いて、輸液の流量として流量算出値C1を算出する。
【0070】
また、6滴目では、流量算出部86は、新しい滴間隔D1~D5に更新し、輸液の流量として流量算出値C2を算出する。これにより、点滴監視装置1は、適切な流量値を算出し、算出した流量値をLCD13に表示することができる。
【0071】
なお、上述した
図7の例では、流量算出部86は、一定期間(例えば、5つの滴間隔)内に液滴処理部84によって流量算出の対象と判定された滴間隔に基づいて、輸液の流量を算出するが、滴間隔の数は、これに限定されず、5未満又は6以上であってもよい。
【0072】
更に、液滴処理部84は、滴間隔が処理可能期間T1(例えば、直前の滴間隔の30%)未満の場合、流量算出の対象を判定する処理を実行しない。これにより、点滴監視装置1は、滴間隔が非常に短い場合、短い滴間隔を流量算出の対象外とする処理を実行せずに、輸液の流量を算出することができる。
【0073】
図8は、第2実施形態に係る点滴監視装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS21において、受光部6は、発光部5から照射された光を受光する。
ステップS22において、増幅回路7は、受光部6からの出力電圧を増幅する。
【0074】
ステップS23において、A/D変換部81は、増幅回路7から出力された電圧をA/D変換する。
ステップS24において、信号変化検出部82は、A/D変換部81から出力された信号の変化を検出する。
【0075】
ステップS25において、液滴認識部83は、信号変化検出部82により検出された信号の変化を、輸液バッグ2からの液滴の滴下として認識する。
【0076】
ステップS26において、報知制御部87は、液滴認識部83により液滴を認識すると、液滴の認識を報知するために、LED11を発光させるための制御信号をLEDドライバ10へ出力する。
【0077】
ステップS27において、滴間隔測定部85は、信号変化検出部82により検出され液滴認識部83により液滴として認識された信号の変化の間隔を滴間隔として測定する。
【0078】
ステップS28において、液滴処理部84は、滴間隔が処理可能期間T1(例えば、直前の滴間隔の30%)以上であるか否かを判定する。滴間隔が処理可能期間T1以上である場合(YES)、処理は、ステップS30へ移る。一方、滴間隔が処理可能期間T1未満である場合(NO)、処理は、ステップS29へ移る。
【0079】
ステップS29において、液滴処理部84は、滴間隔が処理可能期間T1未満の場合、流量算出の対象を判定する処理を実行しない。すなわち、液滴処理部84は、滴間隔を流量算出の対象とし、処理は、ステップS33へ移る。
【0080】
ステップS30において、液滴処理部84は、滴間隔が所定期間T2(例えば、直前の滴間隔の50%)以上であるか否かを判定する。滴間隔が所定期間T2以上である場合(YES)、処理は、ステップS31へ移る。一方、滴間隔が所定期間T2未満である場合(NO)、処理は、ステップS32へ移る。
【0081】
ステップS31において、液滴処理部84は、滴間隔を輸液の流量算出の対象と判定し、その後、処理は、ステップS33へ移る。
ステップS32において、液滴処理部84は、当該滴間隔の測定に用いられた2つの信号の変化のうち、後に検出された信号の変化を滴間隔の測定対象外と判定し、その後、処理は、再度ステップS21へ戻る。
【0082】
ステップS33において、流量算出部86は、液滴処理部84によって流量算出の対象と判定された滴間隔、又はステップS28において液滴処理部84により滴間隔が処理可能期間T1未満であると判定された滴間隔に基づいて、輸液の流量を算出する。その後、制御部8は、液滴が落下するたびに、流量算出に使用する滴間隔を1つずつ新しい滴間隔に更新し、輸液の流量を算出する。
【0083】
以上説明したように、点滴監視装置1は、液滴に対して光を照射する発光部5と、発光部5から照射された光を受光する受光部6と、受光部6からの出力電圧を増幅する増幅回路7と、増幅回路7から出力された電圧をA/D変換するA/D変換部81と、A/D変換部81から出力された信号の変化を検出する信号変化検出部82と、信号変化検出部82により検出された信号の変化を、液滴として認識する液滴認識部83と、信号変化検出部82により検出された信号の変化を液滴認識部83により液滴として認識しないマスク期間を設定する液滴処理部84と、液滴認識部83により液滴として認識された信号の変化の間隔を滴間隔として測定する滴間隔測定部85と、を備える。
【0084】
これにより、点滴監視装置1は、液滴を検出後に、液滴を流速によって変動するマスク期間を設け、マスク期間において検出される跳ね返りの液滴を液滴の滴下として認識しない。したがって、点滴監視装置1は、跳ね返りの液滴による短い滴間隔を、輸液の流量の算出値に影響させず、滴間隔を正確に測定できる。
【0085】
また、点滴監視装置1は、滴間隔測定部85により測定された滴間隔に基づいて、輸液の流量を算出する流量算出部86を備える。これにより、正確に測定された滴間隔に基づいて輸液の流量を正確に算出することができる。
【0086】
また、液滴処理部84は、直前に測定された滴間隔に基づいて液滴認識部83により液滴を認識しないマスク期間を設定する。これにより、点滴監視装置1は、直前に測定された滴間隔に基づくマスク期間において、跳ね返りの液滴を液滴の滴下として認識せず、輸液の流量を正確に算出することができる。
【0087】
また、流量算出部86は、一定期間(例えば、5回分の滴間隔)内に液滴認識部83により認識された液滴の滴間隔に基づいて、輸液の流量を算出する。これにより、点滴監視装置1は、一定期間(例えば、5回分の滴間隔)内に認識された滴間隔を用いて、輸液の流量を正確に算出することができる。
【0088】
また、点滴監視装置1は、液滴認識部83により液滴を認識すると、液滴の認識を報知するために、LED11を発光させる報知制御部87を更に備える。これにより、点滴監視装置1は、液滴を認識したことを点滴監視装置1の使用者に報知することができる。
【0089】
また、液滴処理部84は、滴間隔が処理可能期間(例えば、直前の滴間隔の30%)未満の場合、マスク期間を設定しない。これにより、点滴監視装置1は、滴間隔が非常に短い場合、短い滴間隔を流量算出の対象外とする処理を実行せずに、輸液の流量を算出することができる。
【0090】
また、第2実施形態の点滴監視装置1では、液滴処理部84は、滴間隔が所定期間以上の場合、当該滴間隔を輸液の流量算出の対象と判定し、滴間隔が所定期間未満の場合、当該滴間隔の測定に用いられた2つの信号の変化のうち、後に検出された信号の変化を滴間隔測定部85による滴間隔の測定対象外と判定し、流量算出部86は、液滴処理部84によって流量算出の対象と判定された滴間隔に基づいて、輸液の流量を算出する。これにより、点滴監視装置1は、跳ね返りの液滴による短い滴間隔を、輸液の流量の算出値に影響させず、輸液の流量を正確に算出することができる。
【0091】
また、液滴処理部84は、直前に測定された滴間隔に基づいて所定期間を設定する。これにより、点滴監視装置1は、直前に測定された滴間隔を用いて、輸液の流量算出の対象とするか否かの判定を行うことができる。
【0092】
また、流量算出部86は、一定期間(例えば、5回分の滴間隔)内に液滴認識部83により認識された液滴の滴間隔に基づいて、輸液の流量を算出する。これにより、点滴監視装置1は、一定期間(例えば、5回分の滴間隔)内に認識された滴間隔を用いて、輸液の流量を正確に算出することができる。
【0093】
また、液滴処理部84は、滴間隔が処理可能期間(例えば、直前の滴間隔の30%)未満の場合、流量算出の対象を判定する処理を実行しない。点滴監視装置1は、滴間隔が非常に短い場合、短い滴間隔を流量算出の対象外とする処理を実行せずに、輸液の流量を算出することができる。
【0094】
以上、本発明の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0095】
例えば、第1実施形態では、報知制御部87によるLED11を発光させるための制御をステップS12にて説明しているが、これに限らない。報知制御部87によるLED11を発光させるための制御は、液滴認識部83により液滴を認識した場合に行えばよく、例えば、ステップS6とステップS7との間に報知制御部87によるLED11を発光させるための制御を行うものとしてもよい。
【0096】
また、第2実施形態では、信号変化検出部82及び液滴認識部83を異なる機能部として説明したが、これに限らない。すなわち、信号変化検出部及び液滴認識部を1つの機能部として構成し、A/D変換部81から出力された所定の信号の変化を液滴として認識させてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 点滴監視装置
2 輸液バッグ
3 点滴筒
4 クレンメ
5 発光部
6 受光部
7 増幅回路
8 制御部
9 制御回路
10 LEDドライバ
11 LED
12 LCDドライバ
13 LCD
81 A/D変換部
82 信号変化検出部
83 液滴認識部
84 液滴処理部
85 滴間隔測定部
86 流量算出部
87 報知制御部