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特開2023-84452形成支援システム、形成支援方法及び形成支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084452
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】形成支援システム、形成支援方法及び形成支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198635
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】大川 悠奈
(72)【発明者】
【氏名】中村 允哉
(72)【発明者】
【氏名】石関 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】金子 智弥
【テーマコード(参考)】
4G052
【Fターム(参考)】
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】傾斜部を有する構造物を的確に形成するための形成支援システム、形成支援方法及び形成支援プログラムを提供する。
【解決手段】作成支援サーバは、モルタルを吐出するノズルの移動を制御する制御部を備える。制御部は、ノズルを移動させながら吐出されるモルタルを積層させることにより、鉛直方向に対して傾斜した傾斜部を有し設計厚を有する構造体10の外形本体11を形成する。制御部は、設計厚に対応する傾斜部における水平方向のプリント幅を特定し、プリント幅に応じてモルタルの吐出条件を変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備え、ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出されるモルタルを積層させることにより、鉛直方向に対して傾斜した傾斜部を有し設計厚を有する構造物の形成を支援するシステムであって、
前記制御部は、
前記設計厚に対応する前記傾斜部における水平方向のプリント幅を特定し、
前記プリント幅に応じて前記モルタルの吐出条件を変更することを特徴とする形成支援システム。
【請求項2】
前記モルタルの吐出条件を、前記ノズルの移動速度を変更することにより変更することを特徴とする請求項1に記載の形成支援システム。
【請求項3】
制御部を備えた形成支援システムを用いて、ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出されるモルタルを積層させることにより、鉛直方向に対して傾斜した傾斜部を有し設計厚を有する構造物の形成を支援する方法であって、
前記制御部は、
前記設計厚に対応する前記傾斜部における水平方向のプリント幅を特定し、
前記プリント幅に応じて前記モルタルの吐出条件を変更することを特徴とする形成支援方法。
【請求項4】
制御部を備えた形成支援システムを用いて、ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出されるモルタルを積層させることにより、鉛直方向に対して傾斜した傾斜部を有し設計厚を有する構造物の形成を支援するプログラムであって、
前記制御部を、
前記設計厚に対応する前記傾斜部における水平方向のプリント幅を特定し、
前記プリント幅に応じて前記モルタルの吐出条件を変更する手段として機能させることを特徴とする形成支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動するノズルから吐出されるモルタルを積層させて形成する構造物の形成支援システム、形成支援方法及び形成支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の立体の構造物を形成する場合、3次元(3D)プリンタを利用することがある。この3Dプリンタにおいては、ノズルから材料を吐出させながらノズルを移動させて層を形成し、形成した層を徐々に積み重ねることにより立体形状を有する構造物を形成する。このような構造物においては、コンクリート等のセメント系材料は、高い圧縮強度を有するが、引張強度は低いため、高い引張強度を有する構造物を形成するための技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の構造物は、孔部を有し構造物の外形を構成する外形成体と、外形成体の孔部に第2モルタルを注入して形成される内構造体とを備える。外形成体は、3Dプリンタのノズルから第1モルタルを吐出させながら経路に沿って移動させて、奇数層部及び偶数層部を交互に積層させて形成する。内構造体は、外形成体を構成する第1モルタルよりも高強度の部材を構成する第2モルタルで構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-26686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように積層したモルタルにより形成する構造物が、傾斜した部分を有する形状の場合もある。例えば、図9及び図10に示すように、上部が斜めに傾斜した立設する形状の構造物60がある。この構造物60は、積層したモルタルによって構成される外形本体60bと、外形本体60bの内部空間に充填された内部構造体65とが一体化されて形成される。外形本体60bは、辺部61,62,63,64を有した平面断面形状が略長方形の枠形状を有する。外形本体60bの鉛直方向の断面は、上部が辺部63側に傾いた形状を有する。ここで、外形本体60bにおいて略垂直方向に立設する最下部の辺部61,63は、水平方向の幅が設計どおりの厚み(設計厚)w6と同じになるため、設計どおりに形成することができる。しかし、上部の大きく傾斜した部分における厚みw7は、傾斜形状のため、水平方向の幅w8よりも小さくなる。従って、モルタルの吐出条件(吐出量)が下部と同じままで上部を形成すると、実際には、構造物60の上部の辺部61,63が薄くなり、設計どおりの厚みw6で外形本体60bを形成することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する形成支援システムは、制御部を備え、ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出されるモルタルを積層させることにより、鉛直方向に対して傾斜した傾斜部を有し設計厚を有する構造物の形成を支援するシステムであって、前記制御部は、前記設計厚に対応する前記傾斜部における水平方向のプリント幅を特定し、前記プリント幅に応じて前記モルタルの吐出条件を変更する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、傾斜部を有する構造物を的確に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態における構造物の斜視図である。
図2】実施形態における構造物の側面図である。
図3】実施形態における形成支援システムの構造の説明図である。
図4】実施形態におけるハードウェア構成の説明図である。
図5】実施形態における構造物の一層における水平面を説明する説明図である。
図6】実施形態における設計厚とプリント幅との関係を説明する説明図である。
図7】実施形態における形成支援システムの吐出量のパラメータを説明する説明図である。
図8】実施形態における吐出経路生成処理の処理手順の流れ図である。
図9】従来における構造物の斜視図である。
図10】従来における構造物の側面図及び一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図8を用いて、形成支援システム、形成支援方法及び形成支援プログラムを具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、モルタルを3次元(3D)プリンタで積層する構造物として、構造体10の外形本体11を形成する。
【0009】
図1及び図2は、それぞれ構造物の斜視図及び右側面図である。なお、3次元プリンタを用いて積層させて構造物を形成した場合、水平方向に縞状の積層跡が残ることが多いが、図1及び図2では、簡略化により、この縞状の積層跡を省略している。
【0010】
図1に示すように、構造体10は、外形本体11と内部構造体15とを備える。構造体10の外形本体11の平面形状は、閉曲面形状を有している。外形本体11の内部には空間S1が形成されている。
【0011】
図2に示すように、外形本体11は、鉛直方向に対して全体的に傾斜し、上方に向かうに従って段々と傾斜角度が大きくなる形状を有する。すなわち、外形本体11の下部は、傾斜角度が小さくほぼ垂直方向に立設する形状を有し、外形本体11の上部は、下部の傾斜角度よりも大きい形状を有している。この外形本体11は、3次元プリンタを用いて、積層可能な硬化性を有するモルタル(セメント系材料)を積層させて形成される。
【0012】
内部構造体15は、外形本体11よりも高強度の部材であって、例えば、スリムクリート(登録商標)等、繊維を混合したセメント系材料(繊維補強コンクリート材料)で構成される。内部構造体15は、外形本体11の内部に形成された空間S1に充填された状態で外形本体11と一体化される。
【0013】
(3Dプリンタ20及び作成支援サーバ40の構成)
次に、図3及び図4を用いて、上述した構造体10の外形本体11を形成する3Dプリンタ20及び作成支援サーバ40について説明する。
【0014】
(ハードウェア構成例)
図4は、3Dプリンタ20の制御装置30及び作成支援サーバ40等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
【0015】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0016】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0017】
入力装置H12は、利用者等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0018】
記憶装置H14は、制御装置30及び作成支援サーバ40の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶部(例えば、後述する吐出経路記憶部42)である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0019】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、ユーザ端末(図示せず)、制御装置30及び作成支援サーバ40における各処理(例えば、後述する制御部31,41における処理)を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、制御装置30及び作成支援サーバ40のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0020】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0021】
(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは
(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
【0022】
プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0023】
(3Dプリンタ20の機能)
図3に示す本実施形態の3Dプリンタ20は、吐出部としてのノズル21、ロボットアーム25及び制御装置30を備える。
【0024】
ノズル21は、その先端部が開口した吐出口21aを有している。本実施形態では、吐出口21aは、下方を向いている。ノズル21の吐出口21aと反対側の端部には、ホース22の端部が接続されている。ホース22は、圧送ポンプ(図示せず)に接続されている。この圧送ポンプの圧力により、ホース22を介してノズル21に供給されたモルタルは、吐出口21aから下方に吐出される。
【0025】
ノズル21には、取付部24を介してロボットアーム25が取り付けられる。ノズル21は、このロボットアーム25に支持され、このロボットアーム25の動きに従って水平方向や上下方向に移動する。ロボットアーム25は、制御装置30の制御部31からの指示によって移動が制御される。本実施形態の制御部31は、移動時においてもノズル21からのモルタルの吐出方向が常に下方になるように、ロボットアーム25を制御する。
【0026】
制御装置30は、構造物形成処理を実行する制御部31を備える。そのため、記憶部に格納された構造物形成プログラムを実行することにより、制御部31は、積層管理部311、移動制御部312及び吐出量制御部313として機能する。
【0027】
積層管理部311は、外形本体11を形成するために、積層させるモルタルの経路及び高さを管理する処理を実行する。積層管理部311は、積層した層数をカウントし、現在のモルタルの積層数を記憶し、構造物の最終的な積層数になった場合にノズル21の移動を停止する。
【0028】
移動制御部312は、経路に応じてノズル21を移動させるロボットアーム25の動きを制御する処理を実行する。
吐出量制御部313は、モルタルを圧送するポンプを制御して、ノズル21から吐出されるモルタルの吐出量を制御する処理を実行する。
【0029】
(作成支援サーバ40の構成)
次に、形成支援システムとしての作成支援サーバ40の構成について説明する。
作成支援サーバ40は、ノズル21の移動経路及び移動速度を決定するコンピュータ端末である。この作成支援サーバ40は、制御部41及び吐出経路記憶部42を備える。作成支援サーバ40は、3Dプリンタ20の制御装置30に接続され、作成が完了した経路データを制御装置30に送信する。
【0030】
制御部41は、記憶部に格納された形成支援プログラムを実行することにより、取得部411及び経路設定部412として機能する。
取得部411は、形成する外形本体11の形状及び設計厚を取得する。
経路設定部412は、形成する外形本体11の形状から各階層の経路上の水平方向におけるプリント幅を算出する。このため、経路設定部412は、プリント幅の算出方法及び移動速度の算出方法等やこれらの算出方法に用いる形成する一層の厚み(高さ)及び基準点を定める外形線上の所定間隔等を予め記憶している。
【0031】
ここで、図5に示すように、経路設定部412は、外形を示す一対の外形線のうち曲率半径が小さい外形線11aから他の外形線11bまでの最小距離をプリント幅w2として算出する。このプリント幅w2は、外形本体11の設計厚w1を確保するために、設計厚w1に対応した積層されるモルタル部L1の水平方向の幅である。ここで、設計厚w1は、構造設計において、設計された外形本体11の厚さ(外形に対して直交する方向における厚み)である。
従って、図6に示すように、プリント幅w2は、外形本体11の各層のモルタル部L1において、設計厚w1を有し傾斜角度θ1で傾斜している部分の水平方向の長さである。
【0032】
更に、経路設定部412は、このプリント幅w2を実現するために、プリント幅w2に応じてモルタルの吐出条件DC1を変更する(調整する)。本実施形態では、モルタルの吐出量(単位時間当たりの吐出量)は一定にし、吐出条件DC1の変更として、ノズル21の移動速度(パラメータ値)を変更する。
【0033】
ここで、図7に示すように、モルタルの吐出量Q0は、以下の(1)式で示される。
Q0=t0×w0×V0×3600/10 …(1)
ここで、t0は積層厚(mm)、w0は積層幅(mm)、V0はノズル21の移動速度(mm/s)である。また、本実施形態では、モルタルの吐出量Q0は、一定であり、例えば、0.16m/hに設定している。
【0034】
図3に示す吐出経路記憶部42には、外形本体11を形成するノズル21の経路データが記録される。この経路データは、経路設定部412により経路及び速度を特定した場合に記録される。経路データには、構造物識別子、積層数、経路、移動速度に関するデータが含まれる。
【0035】
構造物識別子データ領域には、各構造体10を特定するための識別子に関するデータが記録される。
積層数データ領域には、各構造体10の外形本体11を構成する階層数を特定するための識別子に関するデータが記録される。ここでは、例えば、識別子として、最下層からの積層数を用いる。
【0036】
経路データ領域には、この階層における3Dプリンタ20のノズル21の経路が記録される。
移動速度データ領域には、この経路上の各地点の位置に関連付けて、この地点での移動速度に関するデータが記録される。
【0037】
(吐出経路生成処理)
次に、図8を用いて、形成支援処理としての吐出経路生成処理について説明する。
まず、作成支援サーバ40の制御部41は、構造物の形状及び設計厚の取得処理を実行する(ステップS1)。具体的には、制御部41の取得部411は、形成する構造体10の図面を取得し、積層により構成する外形本体11の形状及び各部分の設計厚w1(設計された厚み)を取得する。
【0038】
次に、作成支援サーバ40の制御部41は、構造物の高さ方向への分割処理を実行する(ステップS2)。具体的には、制御部41の経路設定部412は、取得した外形本体11の形状を、鉛直方向(高さ方向)に、記憶している一層の厚み(高さ位置)毎に、分割する。これにより、経路設定部412は、各階層の上面における水平形状を取得する。
【0039】
そして、作成支援サーバ40の制御部41は、分割した全階層のうちの1つを、順次、処理対象層として特定し、以下の処理を実行する。
まず、作成支援サーバ40の制御部41は、この層(水平面)における外形線の取得処理を実行する(ステップS3)。具体的には、制御部41の経路設定部412は、処理対象層の上面における外形本体11の形状(水平方向の平面形状)を特定し、この形状における内側の外形線と外側の外形線とを特定する。
具体的には、図5に示すように、処理対象層における外形本体11の一部において、内側の外形線11a及び外側の外形線11bを特定する。
【0040】
そして、外形本体11を構成する1対(2つ)の外形線のうち曲率半径が小さい外形線(11a)を基準にして、この基準にした外形線(11a)上における所定間隔毎の基準点(各点)について、以下の処理を繰り返して実行する。
【0041】
まず、作成支援サーバ40の制御部41は、プリント幅の算出処理を実行する(ステップS4)。具体的には、制御部41の経路設定部412は、特定した内側の外形線(11a)と外側の外形線(11b)までの最小距離を算出する。
【0042】
ここで、外形本体11は、内側の外形線11aが外形線11bよりも曲率半径が小さい形状を有する。そこで、経路設定部412は、基準にした点(基準点)で内側の外形線11aに内接し、かつ外側の外形線11bに内接する円C1(C2)を設定する。そして、経路設定部412は、設定した円C1(C2)の中心を、このときの経路上の地点P1(P2)として特定し、この円C1(C2)の直径D1(D2)を、最小距離として特定する。
【0043】
次に、作成支援サーバ40の制御部41は、プリント幅となるようにパラメータ値の調整処理を実行する(ステップS5)。具体的には、制御部41の経路設定部412は、特定した最小距離(プリント幅w2)を、上記(1)式の積層幅w0に代入することにより、この経路上の地点P1(P2)におけるノズル21の移動速度V0を算出する。
【0044】
次に、作成支援サーバ40の制御部41は、経路上の地点に関連付けた移動速度の記録処理を実行する(ステップS6)。具体的には、制御部41の経路設定部412は、特定した経路上の地点P1(P2)の位置に関連付けて、この地点における移動速度V0を記憶装置H14に記録する。
【0045】
そして、上記処理を、基準とした外形線上において始点から終点までの所定間隔毎の点(各点)について繰り返し実行する。ここで、外形本体11を構成する各層は一筆書きの経路で構成されるため、各外形線はループ形状になり、終点は始点と同じ位置になる。
【0046】
その後、作成支援サーバ40の制御部41は、各階層に関連付けた経路及び移動速度の記憶処理を実行する(ステップS7)。具体的には、制御部41の経路設定部412は、各経路上の地点(P1,P2)を全て結んだ線を、ノズル21の経路R1として特定する。更に、この経路R1を、処理対象層の階層数に関連付けて記憶装置H14に記録する。
そして、上記処理を、外形本体11を構成するすべての階層について、繰り返して実行する。
【0047】
次に、作成支援サーバ40の制御部41は、経路データの記憶処理を実行する(ステップS8)。具体的には、制御部41の経路設定部412は、構造物識別子を付与し、記憶装置H14に記憶していた処理層の階層数、経路(R1)、経路上の地点(P1,P2)における移動速度を関連付けて経路データを生成し、吐出経路記憶部42に記録する。
【0048】
そして、作成支援サーバ40の制御部41は、外形本体11を形成する前に、3Dプリンタ20の制御装置30に、吐出経路記憶部42に記憶した経路データを送信する。制御装置30の制御部31は、取得した経路データを記憶する。
【0049】
(構造体10の形成方法)
その後、3Dプリンタ20は、制御装置30の制御部31に応じて、構造物形成処理を実行する。具体的には、制御部31の積層管理部311は、記憶した経路データを用いて、移動制御部312及び吐出量制御部313を制御する。
ここで、制御部31の吐出量制御部313は、モルタルの吐出量が予め定めた吐出量となるように、ポンプの駆動を調整する。
【0050】
そして、移動制御部312は、ノズル21からモルタルを吐出させながらロボットアーム25を移動させる。この場合、移動制御部312は、積層数に応じた経路データの経路R1に沿ってノズル21を移動させるとともに、経路の各地点(P1,P2)において、各地点(P1,P2)に関連付けられた移動速度となるように、ノズル21の移動速度を変更(調整)する。従って、ノズル21の速度を遅くした地点では、設計厚w1よりも大きいプリント幅w2のモルタル部L1が形成される。
【0051】
その後、3Dプリンタ20によって、ノズル21から吐出されたモルタルが、最終高さまで積層されることにより、外形本体11が形成される。そして、外形本体11が硬化した後、この外形本体11を型枠として用いて、外形本体11の空間S1に、繊維補強コンクリート材料を充填する。その後、この繊維補強コンクリート材料を硬化させることにより、内部構造体15は、外形本体11と一体化されて、構造体10が完成する。
【0052】
(作用)
本実施形態では、設計厚w1を有する外形本体11の傾斜角度θ1に応じてプリント幅w2を変更する。これにより、設計厚w1を確保した状態で外形本体11を形成することができる。
【0053】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、作成支援サーバ40の制御部41は、設計厚w1を有する外形本体11の傾斜角度θ1に応じて、水平方向のプリント幅w2を変更する。これにより、積層するモルタル部L1の幅を、傾斜角度θ1に応じて広くすることができるので、設計した設計厚w1を確保した状態で傾斜部を有する外形本体11を形成することができる。
【0054】
(2)本実施形態では、作成支援サーバ40の制御部41は、ノズル21から吐出するモルタルの吐出量を変更せずに、ノズル21の移動速度を変更する。これにより、制御が容易な移動速度を調整してプリント幅w2を実現することができる。
【0055】
(3)本実施形態では、作成支援サーバ40の制御部41は、モルタル部L1の層の厚み毎に分割し、分割した各層における水平面における外形線11a,11b間の最小距離を用いてプリント幅w2を特定する。これにより、各層に対応させて的確なプリント幅w2を特定することができる。
【0056】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、作成支援サーバ40の制御部41は、プリント幅w2となる最小距離を、内接する円の直径D1,D2を用いて特定した。水平方向における構造物の幅(プリント幅w2)を特定できれば、プリント幅w2の特定方法は、内接円を用いる方法に限定されない。例えば、曲率半径が小さい外形線の地点を中心とし、この地点から最小の半径の円で、もう一方の外形線に当接させたときの半径をプリント幅w2として特定してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、作成支援サーバ40の制御部41は、外形本体11を高さ方向に、層の高さ毎に分割して、各階層の上面における水平形状を特定し、この水平形状からプリント幅w2を特定した。各階層に対応するプリント幅w2を特定するための高さは、各階層の上面に限らず、各階層の中間高さの平面を用いて算出してもよい。具体的には、制御部41は、外形本体11の最下部から、層の高さ(厚み)の半分の高さの位置において、最下層の平面を特定する。更に、制御部41は、外形本体11において、特定した最下層の平面の高さから、鉛直方向に、順次、層の高さ(厚み)に対応した平面を切り出す。そして、切り出した平面状においてプリント幅w2を特定する。
【0058】
・上記実施形態では、作成支援サーバ40の制御部41は、ノズル21の移動速度を変更することにより、プリント幅w2を実現する。プリント幅w2の実現方法は、ノズル21の移動速度V0を変更することにより、吐出条件DC1を変更する方法に限らない。上記(1)の積層幅w0がプリント幅w2となるために、例えば、ノズル21の移動速度V0を一定にし、吐出条件DC1の変更として、ノズル21から吐出されるモルタルの単時間当たりの吐出量Q0を変更してもよい。ここで、ノズル21から吐出されるモルタルの単位時間当たりの吐出量Q0は、例えば、ノズル21にホース22を介して接続されている圧送ポンプの圧力を変更させることにより変更する。
【0059】
・上記実施形態では、全体的に傾斜した形状の外形本体11を構造物として形成した。形成する構造物の形状は、この形状に限られず、一部に傾斜部を有していれば、どのような形状であってもよい。例えば、上述した薄い曲面板から構成されるシェル構造、垂直断面の一部が円弧やS字形状を有する構造物であってもよい。また、傾斜角度が大きい部分や傾斜部の範囲についてのみについてプリント幅を算出し、その部分を形成するときだけプリント幅に応じてノズル21の吐出条件DC1を変更してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、ノズル21を制御する制御装置30の制御部31と、吐出条件DC1の変更を決定する作成支援サーバ40の制御部41とを別体とした。制御部31に制御部41の機能を持たせて、制御部31において、プリント幅w2に応じて吐出条件DC1の変更を決定してもよい。
【0061】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記制御部は、
前記構造物を、鉛直方向において前記モルタルを積層する層の厚みに応じて分割し、
前記分割した水平面において前記構造物の外形線から外形線までの最小距離を、前記プリント幅として特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の形成支援システム。
(b)前記制御部は、前記最小距離を複数特定し、前記最小距離の中点を通る位置を、前記ノズルの移動経路として特定することを特徴とする請求項1、2又は前記(a)に記載の形成支援システム。
【符号の説明】
【0062】
θ1…傾斜角度、C1,C2…円、D1,D2…直径、DC1…吐出条件、L1…モルタル部、P1,P2…地点、Q0…吐出量、R1…経路、S1…空間、V0…移動速度、w0…積層幅、w1…設計厚、w2…プリント幅、10…構造体、11…構造物としての外形本体、11a,11b…外形線、15…内部構造体、20…3Dプリンタ、21…ノズル、21a…吐出口、22…ホース、24…取付部、25…ロボットアーム、30…制御装置、31,41…制御部、40…作成支援サーバ、42…吐出経路記憶部、311…積層管理部、312…移動制御部、313…吐出量制御部、411…取得部、412…経路設定部。
図1
図2
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図8
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図10